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特許7436619ハンド装置およびワークハンドリングシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ハンド装置およびワークハンドリングシステム
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/00 20060101AFI20240214BHJP
   B25J 15/08 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B25J15/00 F
B25J15/08 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022501832
(86)(22)【出願日】2021-02-10
(86)【国際出願番号】 JP2021004926
(87)【国際公開番号】W WO2021166756
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2020024117
(32)【優先日】2020-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】飯島 浩
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-083837(JP,A)
【文献】特開2002-144186(JP,A)
【文献】特開2012-081564(JP,A)
【文献】特開昭60-025670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/00
B25J 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームに取り付けられ、ねじれ軸線回りにねじれたワークを把持するハンド装置であって、
前記ロボットアームに取り付けられるベースと、
該ベースに所定の回転軸線回りに回転自在に支持され前記ワークを把持する把持部と
前記所定の回転軸線に直交する径方向において前記把持部の外側に配置される可動部材と、
前記把持部に対して前記可動部材を前記所定の回転軸線に直交する所定の移動方向に移動させる駆動部と、
前記可動部材に設けられ、前記移動方向において前記把持部を隔てて相互に対向する位置に配置される一対のストッパおよびブレーキ部と、を備え、
前記把持部は、前記ねじれ軸線が前記所定の回転軸線に略沿うように前記ワークを前記所定の回転軸線上において把持し、前記ワークに作用する前記所定の回転軸線回りの接線方向の外力に従って該ワークのねじれ方向に回転し、
前記把持部の外面に、前記所定の回転軸線回りの円周の接線方向に相互に逆向きに前記外面から突出する一対の突出部が設けられ、
前記駆動部による前記可動部材の移動によって、原点復帰状態、自由回転状態および回転ロック状態が切り替えられ、
前記原点復帰状態は、前記一対のストッパが一対の突出部に同時に接触することによって前記所定の回転軸線回りの前記把持部の回転位置が所定の原点位置に復帰させられる状態であり、
前記自由回転状態は、前記一対のストッパが前記一対の突出部とそれぞれ周方向に突き当たることによって前記把持部の回転が所定の角度範囲内に制限される状態であり、
前記回転ロック状態は、前記ブレーキ部が前記把持部の外面に押し当てられることによって前記把持部の回転がロックされる状態である、ハンド装置。
【請求項2】
前記ベースに対する前記把持部の回転を所定の角度範囲内に制限する回転制限機構を備える請求項1に記載のハンド装置。
【請求項3】
前記所定の回転軸線回りの任意の回転位置に配置される前記把持部の回転をロックする回転ロック機構を備える請求項1または請求項2に記載のハンド装置。
【請求項4】
前記所定の回転軸線回りの前記把持部の回転位置を所定の原点位置に復帰させる原点復帰機構を備える請求項1から請求項3のいずれかに記載のハンド装置。
【請求項5】
第1のロボットアームに取り付けられ、ねじれ軸線回りにねじれたワークを把持するハンド装置と、
ワーク収容部の出入口の近傍に配置され、前記ワーク収容部から出し入れされる前記ワークを案内するガイド装置とを備え、
前記ハンド装置が、
前記第1のロボットアームに取り付けられるベースと、
該ベースに所定の回転軸線回りに回転自在に支持され前記ワークを把持する把持部とを備え、
該把持部は、前記ねじれ軸線が前記所定の回転軸線に略沿うように前記ワークを前記所定の回転軸線上において把持し、前記ワークに作用する前記所定の回転軸線回りの接線方向の外力に従って該ワークのねじれ方向に回転し、
前記ガイド装置が、
第2のロボットアームに取り付けられるベースと、
該ベースに支持され、前記出入口の両側に配置される一対のガイド部材とを備えるワークハンドリングシステム。
【請求項6】
前記ハンド装置が取り付けられた前記第1のロボットアームの動作を制御する制御装置を備え、
該制御装置は、前記把持部によって把持されている前記ワークを前記ワーク収容部から出し入れするとき、前記ハンド装置が取り付けられている前記第1のロボットアームの先端を前記ワークの出し入れ方向に並進移動させる請求項に記載のワークハンドリングシステム。
【請求項7】
前記ワーク収容部の前記出入口および前記ワーク収容部に収容されている前記ワークを検出するための視覚センサを備え、
前記制御装置が、前記視覚センサを使用して検出された前記出入口および前記ワークの位置に基づいて前記第1のロボットアームを制御する請求項に記載のワークハンドリングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンド装置およびワークハンドリングシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、弾性部材によって相互に接続され、弾性部材の弾性変形によって相互に変位可能である第1のハンド部および第2のハンド部を備えるロボットハンドが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-150915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば航空機用ジェットエンジンのタービンブレードのようなねじれたワークを狭いワーク収容部から出し入れする場合、ワーク収容部の周囲の物体とのワークの接触によるワークの損傷を防止するために、ワークのねじれ形状に応じてワークを回転させながらワーク収容部から出し入れする必要がある。ねじれ形状が異なる様々なワークを取り扱う場合には、ワーク収容部から出し入れする際のワークの回転動作がワーク毎に異なる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、ロボットアームに取り付けられ、ねじれ軸線回りにねじれたワークを把持するハンド装置であって、前記ロボットアームに取り付けられるベースと、該ベースに所定の回転軸線回りに回転自在に支持され前記ワークを把持する把持部と、前記所定の回転軸線に直交する径方向において前記把持部の外側に配置される可動部材と、前記把持部に対して前記可動部材を前記所定の回転軸線に直交する所定の移動方向に移動させる駆動部と、前記可動部材に設けられ、前記移動方向において前記把持部を隔てて相互に対向する位置に配置される一対のストッパおよびブレーキ部とを備え、前記把持部は、前記ねじれ軸線が前記所定の回転軸線に略沿うように前記ワークを前記所定の回転軸線上において把持し、前記ワークに作用する前記所定の回転軸線回りの接線方向の外力に従って該ワークのねじれ方向に回転し、前記把持部の外面に、前記所定の回転軸線回りの円周の接線方向に相互に逆向きに前記外面から突出する一対の突出部が設けられ、前記駆動部による前記可動部材の移動によって、原点復帰状態、自由回転状態および回転ロック状態が切り替えられ、前記原点復帰状態は、前記一対のストッパが一対の突出部に同時に接触することによって前記所定の回転軸線回りの前記把持部の回転位置が所定の原点位置に復帰させられる状態であり、前記自由回転状態は、前記一対のストッパが前記一対の突出部とそれぞれ周方向に突き当たることによって前記把持部の回転が所定の角度範囲内に制限される状態であり、前記回転ロック状態は、前記ブレーキ部が前記把持部の外面に押し当てられることによって前記把持部の回転がロックされる状態である、ハンド装置である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】一実施形態に係るワークハンドリングシステムの全体構成図である。
図2】ワークの一例であるブレードを示す図である。
図3】コンテナ内に収容されているワークを示す図である。
図4】一実施形態に係るハンド装置の部分側面図である。
図5図4のハンド装置のI-I線における断面図である。
図6】ハンド装置の動作を説明する図であり、グリッパが原点復帰機構によって原点位置に位置決めされる原点復帰状態を示す図である。
図7A】ハンド装置の動作を説明する図であり、グリッパが回転制限機構によって制限される所定の角度範囲内で回転自在である自由回転状態の一例を示す図である。
図7B】自由回転状態の他の例を示す図である。
図7C】自由回転状態の他の例を示す図である。
図8A】ハンド装置の動作を説明する図であり、グリッパの回転が回転ロック機構によってロックされる回転ロック状態の一例を示す図である。
図8B】回転ロック状態の他の例を示す図である。
図8C】回転ロック状態の他の例を示す図である。
図9】ワークハンドリングシステムによって行われるワークのハンドリングを説明する図である。
図10】ワークハンドリングシステムによって行われるワークのハンドリングを説明する図である。
図11】ワークハンドリングシステムによって行われるワークのハンドリングを説明する図である。
図12】ワークハンドリングシステムによって行われるワークのハンドリングを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、一実施形態に係るハンド装置およびワークハンドリングシステムについて図面を参照して説明する。
ワークハンドリングシステム100は、図1に示されるように、2台の産業用のロボット2,3と、ロボット2,3を制御する制御装置4とを備えるロボットシステムである。ロボット2,3の近傍には、多数のワークWを収容するためのコンテナ20が配置されている。第1のロボット2は、多数のワークWを1つずつコンテナ20から出し入れし、第2のロボット3は、コンテナ20から出し入れされるワークWを案内する。
【0008】
ロボット2,3は、例えば6軸の垂直多関節ロボットであり、ロボットアーム2a,3aと、ロボットアーム2a,3aの先端に設けられた取付面2b,3bとをそれぞれ有する。ロボット2,3は、6軸以外の軸数の垂直多関節ロボットまたは他の種類のロボットであってもよい。
【0009】
図2に示されるように、ワークWは、ねじれた湾曲形状のねじれ部Waを有する。図2に示されるワークWは、飛行機のエンジンのブレードの一例であり、先端側の翼部Waおよび基端側の基部Wbを有する。翼部Waは、ブレードWの基端側から先端側に向かって延びるねじれ軸線B回りにねじれたねじれ部である。基部Wbは、エンジンの円盤状のディスクに連結される部分であり、ディスクの外周部に形成された溝内に嵌合する。寸法およびねじれ形状が相互に異なる多種のブレードWが1つのエンジンに使用される。
【0010】
例えば、エンジンのオーバーホール時、分解された多数のブレードWがコンテナ20に収容される。コンテナ20の上方の開口には複数のワイヤ21が相互に平行に張られており、コンテナ20の開口は複数のワイヤ21によって複数の出入口22に区画されている。図3に示されるように、各ブレードWは、出入口22の下方のワーク収容部23に収容され、基部Wbが一対のワイヤ21に引っ掛かることによってブレードWはワーク収容部23内で吊り下げられている。ブレードWがねじれ形状であるので、ブレードWを鉛直上方に並進移動させるとブレードWはワイヤ21に干渉する。
【0011】
ワークハンドリングシステム100は、ロボットアーム2aの取付面2bに取り付けられるハンド装置1と、ロボットアーム3aの取付面3bに取り付けられるガイド装置5および視覚センサ6とを備える。ハンド装置1、ガイド装置5および視覚センサ6は、ロボットアーム2a,3aの動作によってそれぞれ3次元的に移動させられる。ハンド装置1、ガイド装置5および視覚センサ6は、取付面2b,3bの回転によって取付面2b,3bに直交する軸線回りに回転可能である。ハンド装置1、視覚センサ6およびガイド装置5は、制御装置4によって制御される。
【0012】
図1図4および図5に示されるように、ハンド装置1は、ワークWを把持するグリッパ(把持部)11と、取付面2bに取り付けられグリッパ11を所定の回転軸線A回りに回転自在に支持するベース12と、グリッパ11によって把持されたワークWの重量を測定する重量センサ13とを備える。
グリッパ11は、グリッパ本体11aと、グリッパ本体11aと固定されグリッパ本体11aの基端面から突出する円柱状のシャフト11bと、グリッパ本体11aの先端側に配置され相互に開閉可能な複数の指11cとを有する。シャフト11bの中心軸線が、所定の回転軸線Aである。
【0013】
ハンド装置1は、1つのシャフト11bを共有し相互に逆方向を向く2つのグリッパ11を有するダブルハンドである。図4には、2つのグリッパ11のうち一方のみが示されている。ハンド装置1は、グリッパ11を1つのみ有するシングルハンドであってもよい。
【0014】
複数の指11cは、回転軸線A回りの周方向に相互に間隔を空けて配列している。参照する図面に示されるグリッパ11は2つの指11cを有するが、グリッパ11は3つ以上の指11cを有していてもよい。複数の指11cが回転軸線Aに近接することによって複数の指11cが閉じ、複数の指11cが回転軸線Aから離間することによって複数の指11cが開く。ワークWは、閉じた複数の指11cによって回転軸線A上において把持され、グリッパ11の回転によって回転軸線A上において回転軸線A回りに回転する。
【0015】
ベース12は、ロボットアーム2aの取付面2bに固定される固定部12aと、シャフト11bを支持する少なくとも1つの支持部12bとを有する。支持部12bは、シャフト11bが貫通する穴を有し、シャフト11bの外周面11fと穴の内周面との間に配置されたベアリング(図示略)によって、グリッパ11を回転軸線A回りに回転自在に支持する。したがって、複数の指11cおよび複数の指11cによって把持されたワークWは、ベース12に対して回転軸線A回りに自由に回転することはできるが、ベース12に対して回転軸線Aに沿う方向および回転軸線Aに直交する方向に変位することはできない。
一例において、ベース12は、相互に平行な2つの平板状の支持部12bと、2つの支持部12bの一端部同士を連結する平板状の固定部12aとを有するU字ブラケットであり、回転軸線Aが取付面2bと平行になるように2つのグリッパ11を支持する。
【0016】
さらに、ハンド装置1は、シャフト11bの径方向外側に配置された可動部材14と、可動部材14に設けられた一対のストッパ(原点復帰機構、回転制限機構)15a,15bおよびブレーキ部(回転ロック機構)16と、可動部材14をグリッパ11およびベース12に対して回転軸線Aに直交する所定の移動方向Pに移動させるエアシリンダ(駆動部)17とを備える。参照する図面において、移動方向Pは、ロボットアーム2aの取付面2bに平行な方向である。
【0017】
図5に示されるように、可動部材14は、シャフト11bを隔てて移動方向Pに相互に対向する第1部分14aおよび第2部分14bを有し、第1部分14aに一対のストッパ15a,15bが設けられ、第2部分14bにブレーキ部16が設けられている。第1部分14aと第2部分14bとの間の距離はシャフト11bの直径よりも大きく、一対のストッパ15a,15bおよびブレーキ部16の両方がシャフト11bから離間した状態に可動部材14を配置可能である。
【0018】
一対のストッパ15a,15bは、回転軸線A回りの周方向に相互に間隔をあけて配列し、第1部分14aの内側面からシャフト11bに向かって移動方向Pに突出している。一対のストッパ15a,15bは、後述するように、可動部材14の位置に応じて、グリッパ11の回転を所定の角度範囲内に制限する回転制限機構および回転軸線A回りのグリッパ11の回転位置を所定の原点位置に復帰させる原点復帰機構として択一的に機能する。
【0019】
シャフト11bの外周面11fには、一対のストッパ15a,15bと共に原点復帰機構および回転制限機構として機能する一対の突出部11d,11eが設けられている。一対の突出部11d,11eは、回転軸線Aに対して相互に同一側に設けられ、回転軸線A回りの円周の接線方向に相互に逆向きに外周面11fから突出している。図5に示されるように、シャフト11bは、一対の突出部11d,11eが第1部分14a側に配置される姿勢に配置され、一対の突出部11d,11eは、一対のストッパ15a,15bと移動方向Pに対向する。一対の突出部11d,11eの先端は一対のストッパ15a,15bの先端よりも周方向において外側に配置される。
【0020】
可動部材14に対して各ストッパ15a,15bの位置を移動方向Pに調整可能であってもよい。例えば、一対のストッパ15a,15bは、第1部分14aに形成された一対のねじ穴にシャフト11bに向かって移動方向Pに差し込まれた一対のねじであってもよい。各ねじ15a,15bの回転によって各ねじ15a,15bの先端の位置を移動方向Pに微調整することができる。
【0021】
ブレーキ部16は、第2部分14bの内側面に設けられ、シャフト11bの外周面11fと移動方向Pに対向する。ブレーキ部16は、可動部材14の移動によってロック位置とロック解除位置との間で移動可能である。ロック位置において、ブレーキ部16は、外周面11fに押し付けられ、ブレーキ部16と外周面11fとの間の摩擦によってグリッパ11のベース12に対する回転をロックする。ロック解除位置において、ブレーキ部16は、外周面11fから離間し、グリッパ11の回転をロック解除する。
【0022】
ブレーキ部16と外周面11fとの間の接触面積を増大し摩擦力を増大するために、ブレーキ部16は、円筒状の外周面11fと相補的な形状を有し外周面11fと密着する凹面を有していてもよい。また、ブレーキ部16は、摩擦力を増大するために、外周面11fと接触する部分に高摩擦性の部材を有していてもよい。
【0023】
エアシリンダ17は、移動方向Pに伸縮するピストンロッド17aを有し、後退端、前進端、および、後退端と前進端との間の中間位置にピストンロッド17aを位置決め可能である。可動部材14は、ピストンロッド17aの先端に固定されている。図6図7Aから図7Cおよび図8Aから図8Cに示されるように、エアシリンダ17は、ピストンロッド17aの伸縮によって可動部材14を原点復帰位置、自由回転位置およびロック位置の間で移動方向Pに変位させ、それにより、図6図7Aから図7C、および図8Aから図8Cに示される3つの状態を切り替えることができる。
【0024】
図6は、ピストンロッド17aが前進端に配置され可動部材14が原点復帰位置に配置される原点復帰状態を示している。原点復帰状態において、ブレーキ部16はロック解除位置に配置され、一対のストッパ15a,15bは原点復帰機構として機能する。すなわち、一対のストッパ15a,15bの先端が一対の突出部11d,11eと同時に接触し、回転軸線A回りのグリッパ11の回転位置が所定の原点位置に位置決めされる。図6の例において、所定の原点位置は、一対の突出部11d,11eが突出する接線方向が一対のストッパ15a,15bの先端同士を結ぶ直線と平行になる位置である。一対のストッパ15a,15bがねじである場合、ねじの先端の位置の移動方向Pの調整によって、所定の原点位置を変更することができる。
【0025】
図7Aから図7Cは、ピストンロッド17aが中間位置に配置され可動部材14が原点復帰位置とロック位置との間の自由回転位置に配置される自由回転状態を示している。自由回転状態において、ブレーキ部16はロック解除位置に配置され、一対のストッパ15a,15bは回転制限機構として機能する。すなわち、一対のストッパ15a,15bの先端は、原点位置の一対の突出部11d,11eから移動方向Pに離間した位置に配置され、グリッパ11は、一方の突出部11dが一方のストッパ15aに周方向に突き当たる回転位置と他方の突出部11eが他方のストッパ15bに突き当たる回転位置との間で、回転自在である。一対のストッパ15a,15bがねじである場合、ねじの先端の位置の移動方向Pの調整によって、所定の角度範囲を変更することができる。
【0026】
図8Aから図8Cは、ピストンロッド17aが後退端に配置され可動部材14がロック位置に配置される回転ロック状態を示している。回転ロック状態において、ブレーキ部16は回転ロック位置に配置され、回転軸線A回りのグリッパ11の回転がロックされる。図8Aから図8Cに示されるように、ブレーキ部16は、外周面11fの周方向の一部分において外周面11fと密着し、所定の角度範囲内の任意の回転位置に配置されるグリッパ11の回転をロックすることができる。
【0027】
図1に示されるように、ガイド装置5は、ロボットアーム3aの取付面3bに固定されるベース5aと、ベース5aに支持された一対のガイド部材5b,5cと、一対のガイド部材5b,5cを相対移動させる駆動部5dとを備える。
一対のガイド部材5b,5cは、相互に平行な円柱状の部材である。一対のガイド部材5b,5cは、出入口22の長手方向と平行に出入口22の両側に配置され、ワークWがねじれ方向に回転しながらワーク収容部23から出し入れされるようにワークWを案内する(図9から図12参照。)。すなわち、ワークWのねじれ部Waが回転軸線Aに沿って昇降しながらガイド部材5bまたは5cに接触すると、ガイド部材5b,5cからワークWおよびグリッパ11に回転軸線A回りの接線方向の外力が作用し、グリッパ11が外力に従ってワークWのねじれ方向に回転する。
【0028】
ワークWがガイド部材5b,5cと接触しながら滑らかに昇降するように、ガイド部材5b,5cは、ガイド部材5b,5cの長手軸回りに回転する円筒状のローラを有していてもよい。あるいは、ワークWとガイド部材5b,5cとの間の摩擦を低減するために、ガイド部材5b,5cの外周面には、ポリテトラフルオロエチレンのような低摩擦の材料が使用されていてもよい。
【0029】
駆動部5dは、例えば、一対のガイド部材5b,5cの各々と接続された電動アクチュエータである。駆動部5dは、一対のガイド部材5b,5cを相互に近接または離間する方向に移動させることによって、一対のガイド部材5b,5c間の間隔を調整する。
【0030】
視覚センサ6は、例えば、2次元カメラである。視覚センサ6は、コンテナ20内のワークWの画像を取得し、画像を制御装置4に送信する。
制御装置4は、2台のロボット2,3、ハンド装置1、ガイド装置5、視覚センサ6および重量センサ13と接続されている。制御装置4は、視覚センサ6によって取得された画像に基づいてロボット2,3、ハンド装置1およびガイド装置5を制御し、コンテナ20からワークWを取り出す取出動作およびコンテナ20にワークWを挿入する挿入動作をロボット2,3、ハンド装置1およびガイド装置5に実行させる。例えば、制御装置4は、プロセッサと、動作プログラムを記憶する記憶装置とを備え、プロセッサが動作プログラムに従って処理を実行することによってワークWの取出動作および挿入動作が実現される。
【0031】
次に、ワークハンドリングシステム100の作用について説明する。
図9から図12は、コンテナ20に収容されている多数のワークWの重量を1つずつ測定する作業を説明している。図9から図12において、ワイヤ21および出入口22の図示は省略されている。
まず、図9に示されるように、制御装置4は、ロボットアーム3aを動作させることによって、視覚センサ6の視野が一の出入口22を含む位置に視覚センサ6を移動させる。次に、制御装置4は、視覚センサ6に画像の取得を実行させる。取得される画像には、ワークWの基部Wbの底面が含まれる。
【0032】
次に、制御装置4は、画像に基づいてワークWの有無およびワークWの位置を検出する。例えば、制御装置4は、画像内の基部Wbの底面を認識することによってワークWを検出する。次に、制御装置4は、画像内の基部Wbの底面に隣接する4つの側面を認識し、相互に対向する一対の側面間の中心線と相互に対向する他の一対の側面間の中心線とを算出し、2本の中心線の交点である底面の中心位置をワークWの位置として検出する。
【0033】
次に、図10に示されるように、制御装置4は、検出されたワークWの位置に基づいてロボットアーム2a,3aを動作させ、ハンド装置1およびガイド装置5をワークWの近傍に移動させる。このときに、制御装置4は、エアシリンダ17の作動によって可動部材14を原点復帰位置へ移動させ、グリッパ11を原点位置に復帰させる。そして、制御装置4は、検出されたワークWの位置である底面の中心位置に回転軸線Aが一致するように、また、複数の指11cがワークWの幅方向の両側に配置されるように、ハンド装置1を配置する。
【0034】
そして、制御装置4は、ハンド装置1を制御することによってグリッパ11にワークWの基部Wbを把持させる。ワークWは、ねじれ部Waのねじれ軸線Bが回転軸線Aに沿うようにグリッパ11によって把持される。また、制御装置4は、一対のガイド部材5b,5cを出入口22の両側に配置することによってねじれ部Waの基端部分を一対のガイド部材5b,5c間に挟み、一対のガイド部材5b,5c間の間隔を出入口22の幅と同等に調整する。このとき、ハンド装置1を少しだけ上昇させることによってねじれ部Waの基端部分をワイヤ21よりも上方に引き出してもよい。
【0035】
次に、制御装置4は、エアシリンダ17の作動によって可動部材14を自由回転位置へ移動させ、グリッパ11を回転自在な状態とする。そして、図11に示されるように、制御装置4は、ロボットアーム2aの動作によって取付面2bを鉛直方向上方へ並進移動させ、ワークWを把持するハンド装置1を鉛直方向に上昇させる。ワークWの上昇の過程において、ねじれ部Waのガイド部材5bまたは5cとの接触によってグリッパ11およびワークWは一体的に滑らかに回転する。したがって、ワークWは、ねじれ方向に回転しながらワーク収容部23から取り出される。
【0036】
次に、制御装置4は、エアシリンダ17の作動によって可動部材14をロック位置へ移動させ、ワークWを把持するグリッパ11の回転をロックする。そして、制御装置4は、重量センサ13にワークWの重量の測定を実行させ、重量の測定値を記憶する。
次に、制御装置4は、エアシリンダ17の作動によって可動部材14を自由回転位置へ移動させ、グリッパ11を回転自在な状態とする。そして、制御装置4は、ロボットアーム2aの動作によって取付面2bを鉛直方向下方へ並進移動させ、ワークWを把持するハンド装置1を鉛直方向に下降させる。ワークWの下降の過程において、ねじれ部Waのガイド部材5bまたは5cとの接触によってグリッパ11およびワークWが一体的に滑らかに回転する。したがって、ワークWは、ねじれ方向に回転しながら出入口22を通ってワーク収容部23へ挿入される。このときのワークWおよびグリッパ11の回転方向は、取り出し時のワークWおよびグリッパ11の回転方向とは逆方向である。
【0037】
ここで、従来、ねじれたワークWを回転させながら狭いワーク収容部23から出し入れするために、ワークWのねじれ形状に応じた多数の教示位置を有する動作プログラムが使用されていた。取り扱うワークWが同一のねじれ形状を有する1種類のみである場合、作成する動作プログラムは1種類で足りる。取り扱うワークWが異なるねじれ形状を有する多種類である場合、教示位置が異なる多種類の動作プログラムを作成する必要がある。この場合、教示作業に多くの工数が必要であり、また、多種類のプログラムの管理が困難である。
【0038】
本実施形態によれば、グリッパ11に把持されたワークWは、ねじれ軸線Bに沿う方向の回転軸線A回りにグリッパ11と一体的に回転自在であり、ガイド部材5b,5cとの接触によってねじれ形状に応じて回転しながら昇降する。したがって、ねじれ形状が異なる様々なワークWを、ロボットアーム2aの先端の取付面2bの鉛直方向の並進移動という共通の単純な動作によって、幅の狭いワーク収容部23から出し入れすることができる。すなわち、様々なワークWのワーク収容部23からの出し入れに共通の動作プログラムを使用することができるので、教示作業の工数を削減することができるとともに動作プログラムの管理が容易になる。
【0039】
また、視覚センサ6を使用して、ワークWの有無およびワークWの位置の情報が取得される。したがって、複数の出入口22が所定のピッチで配列している場合には、重量が測定された一のワークWをワーク収容部23に戻した後、ハンド装置1およびガイド装置5を所定のピッチだけ移動させ、続いて図9から図12の動作を繰り返すことによって、他のワークWの重量測定を行うことができる。すなわち、1つの基本動作パターンのみで、コンテナ20に収容された複数のワークWの出し入れが可能である。
また、グリッパ11を回転自在に支持する支持機構は、簡単な機械的構成によって実現される。したがって、ねじれ形状に応じたワークWの適切な回転を高い信頼性でかつ低コストで実現することができる。
【0040】
上記実施形態において、視覚センサ6を使用して出入口22をさらに検出してもよい。
例えば、空のワーク収容部23にワークWを挿入する場合、制御装置4は、視覚センサ6によって取得された画像に基づいて空のワーク収容部23の出入口22の位置を検出し、検出された出入口22の位置に基づいてロボットアーム2a,3aを制御することによってハンド装置1およびガイド装置5を空のワーク収容部23の出入口22の近傍に配置する。これにより、空のワーク収容部23へのワークWの挿入を自動で実行することができる。
【0041】
上記実施形態において、可動部材14を移動させる駆動部としてエアシリンダ17を用いることとしたが、これに代えて、可動部材14を3つの位置に位置決めすることができる他の装置を用いてもよい。例えば、駆動部は、電動シリンダであってもよい。
【0042】
上記実施形態において、ガイド装置5が、一対のガイド部材5b,5c間のワークWを非接触で検知する非接触センサをさらに備えていてもよい。例えば、非接触センサは、一方のガイド部材5bに設けられ一方のガイド部材5bから他方のガイド部材5cに向かってレーザ光を射出する光源と、他方のガイド部材5cに設けられレーザ光を検出する光検出器とを有する。
【0043】
ワークWの取出動作において、ワークWの少なくとも一部分がワーク収容部23に収容されている間は非接触センサによってワークWが検知され、ワークWが完全にワーク収容部23から取り出されたときに非接触センサによってワークWが検知されなくなる。このワークWの検知から非検知への変化に基づいて、制御装置4は、ワークWが完全にワーク収容部23から取り出されたことを検知し、ハンド装置1の上昇を停止させる。
例えば、飛行機のエンジンには、様々な長さのブレードWが使用される。非接触センサを設けることによって、ワークWの長さが異なる場合であっても、ワークW毎に適切な位置でハンド装置1の上昇を停止させることができる。
【0044】
上記実施形態において、原点復帰機構、回転制限機構および回転ロック機構が、共通の可動部材14の移動によって択一的に機能することとしたが、これに代えて、相互に独立に動作するように構成されていてもよい。この場合、原点復帰機構、回転制限機構および回転ロック機構の各々の具体的な構成は、上述した構成に限定されず、任意の構成を採用することができる。
【0045】
例えば、一対のストッパ15a,15bとブレーキ部16とが別々の可動部材に設けられ、別々の駆動部によって移動させられるように構成されていてもよい。
また、原点復帰機構のストッパと回転制限機構のストッパとが別々に設けられていてもよい。この場合、回転制限機構のストッパおよび突出部の構成を変更してもよい。例えば、1つの突出部が一対のストッパ間で周方向に移動するように構成されていてもよく、外周面11fから径方向外方に突出する一対の突出部の間に1つのストッパが配置されるように構成されていてもよい。
【0046】
上記実施形態において、ワークハンドリングシステム100が、2台のロボット2,3およびガイド装置5を備えることとしたが、第2のロボット3およびガイド装置5は必ずしも備えていなくてもよい。
例えば、視覚センサ6が第1のロボット2のロボットアーム2aの先端に取り付けられていてもよい。この場合、ワークWは、ガイド部材5b,5cではなく、出入口22またはワーク収容部23の周囲の物体との接触によって回転させられる。例えば、出入口22を取り囲む縁部またはワーク収容部23を取り囲む壁が存在する場合、縁部または壁をガイド部材5b,5cの代わりとして使用してもよい。
【0047】
上記実施形態において、把持部が、複数の指によってワークWを挟むグリッパ11であることとしたが、把持部は、他の方式でワークWを把持してもよい。例えば、把持部は、真空圧または磁力によってワークWを吸着する吸着式であってもよい。
上記実施形態において、ワーク収容部23へのワークWの出し入れ方向が鉛直方向であり、ロボットアーム2aの先端の取付面2bを鉛直方向に並進移動させることとしたが、これに代えて、出し入れ方向が他の方向であってもよい。例えば、ワーク収容部から水平方向にワークWを出し入れしてもよい。この場合、取付面2bの水平方向の並進移動によってワークWがワーク収容部から出し入れされる。
【符号の説明】
【0048】
1 ハンド装置
2,3 ロボット
2a,3a ロボットアーム
2b,3b 取付面
4 制御装置
5 ガイド装置
5b,5c ガイド部材
6 視覚センサ
11 グリッパ(把持部)
11d,11e 突出部(原点復帰機構、回転制限機構)
12 ベース
14 可動部材
15a,15b ストッパ(原点復帰機構、回転制限機構)
16 ブレーキ部(回転ロック機構)
17 エアシリンダ(駆動部)
22 出入口
23 ワーク収容部
100 ワークハンドリングシステム
A 回転軸線
B ねじれ軸線
P 移動方向
W ワーク、ブレード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12