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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】工作機械の数値制御装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/4093 20060101AFI20240214BHJP
   B23Q 15/28 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
G05B19/4093 F
B23Q15/28
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022501979
(86)(22)【出願日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 JP2021006168
(87)【国際公開番号】W WO2021167013
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2020027175
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】長沼 佳介
(72)【発明者】
【氏名】平内 和弘
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-307263(JP,A)
【文献】特開平03-073253(JP,A)
【文献】特開平05-108123(JP,A)
【文献】特開平03-234443(JP,A)
【文献】特開平01-092052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/4093
B23Q 15/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械の数値制御装置であって、
加工プログラムを実行する実行部と、
加工プログラム毎に、使用される各工具に対して、該加工プログラムを実行したときの該各工具の摩耗量を工具オフセット量として記憶する記憶部と、
ワークの加工終了または加工開始のタイミングを監視する監視部と、
前記加工プログラム毎に、現在の工具オフセット量を、前記監視部が監視する前記ワークの加工終了または加工開始のタイミングで、前記記憶部に記憶された該加工プログラムの前記工具オフセット量に基づいて変更する変更部と、
を備え
前記記憶部は、使用される各工具に対して、前記摩耗量と、前記工具オフセット量と、前記工具の加工誤差を示すトレランス量とを各加工プログラムに対応付けて記憶し、
さらに、ワーク加工数をカウントするカウント部と、
前記カウント部がカウントしたワーク加工数を前記記憶部に設定する設定部と、
を備え、
前記変更部は、現在の工具オフセット量を、前記記憶部に設定される前記工具の摩耗量と前記ワーク加工数とを用いて算出した推定摩耗量が前記トレランス量を超える場合、前記記憶部に記憶した前記工具オフセット量に基づいて変更する、工作機械の数値制御装置。
【請求項2】
前記加工プログラムは、前記工具オフセット量を変更するタイミングを指定するコードが設定される、
請求項1記載の工作機械の数値制御装置。
【請求項3】
加工プログラム毎に、使用する各工具を抽出して表示する表示部と、
を備える、請求項1または2に記載の工作機械の数値制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の数値制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、量産部品の機械加工は、数値制御装置を備える工作機械を用いて行われている。この量産部品の機械加工は繰り返し行われるため、工具の摩耗が生じ、加工精度が悪化する。
【0003】
そこで、特許文献1に記載される技術では、摩耗時期を、1加工当たりの工具摩耗量が第1の基準値Q1よりも大となる初期摩耗発生期、1加工当たりの工具摩耗量が第1の基準値Q1よりも小、第2の基準値Q2(Q2<Q1)よりも大となる中間摩耗発生期、1加工当たりの工具摩耗量が第2の基準値Q2よりも小となる安定期の3期に分け、それぞれの期の工具摩耗量に応じた工具位置の補正間隔と補正量を設定し、その設定に基づく工具位置の補正を行って加工を進める。この際、あくまでも工具位置の補正は、作業者が手動で行っている。
【0004】
また、加工プログラム実行中に、画面上から工具の摩耗量に対応するオフセット量を変更する技術が知られている。特に自動盤等では、生産性を上げるため、ワークに対する加工を停止することなく、作業者が工具の摩耗量を、表示画面を介して入力する場合がある。この場合、入力する工具の摩耗量は、加工したワークの寸法から推定している。さらには、工具の切削時間や使用回数から工具の摩耗量を推定する技術も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-309304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術では、以下の(1)~(4)に示す課題が挙げられる。
(1)手動で工具オフセット量を変更すると、加工の途中で工具オフセット量が変わる可能性があり、加工不良が生じるおそれがある。具体的には、加工の途中で工具オフセット量を変えてしまうと、ワークに不適切な段差が生じる場合がある。
【0007】
(2)工具の切削時間や使用回数で工具の摩耗量を推定する技術は提案されているが、工具の摩耗量は工具軌跡や使用方法(荒加工や仕上げ加工)等にも起因して変化するため、加工プログラム毎に各工具の摩耗量を推定する必要がある。
【0008】
(3)使用される工具に対する摩耗量のオフセット補正処理は、あらかじめ設定された推定値を用いて演算するため、ワーク加工で実際に摩耗する工具の摩耗量と正確には一致しておらず、加工されたワークが不良ワークとなってしまう場合がある。
【0009】
(4)作業者が加工作業中に手動で工具オフセット量を変更する際に、使用する工具数が多いと、作業者が工具オフセット量を変更すべき工具そのものを間違えてしまう可能性がある。
【0010】
(5)また、ワーク加工を途中で停止せずに連続してワーク加工を実行させるような環境においては、ワーク加工そのものを停止して、ワーク加工で使用する工具のオフセットをユーザが変更するように制御することは部品加工の生産性が低下して現実的でない。
【0011】
このため、ワーク加工を実行した際に、実際のワーク加工で使用した工具のオフセット量を適正なタイミングで自動補正できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の工作機械の数値制御装置は、加工プログラムを実行する実行部と、加工プログラム毎に、使用される各工具に対して、該加工プログラムを実行したときの該各工具の摩耗量を工具オフセット量として記憶する記憶部と、ワークの加工終了または加工開始のタイミングを監視する監視部と、前記加工プログラム毎に、現在の工具オフセット量を、前記監視部が監視する前記ワークの加工終了または加工開始のタイミングで、前記記憶部に記憶された該加工プログラムの前記工具オフセット量に基づいて変更する変更部と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本開示の一態様によれば、実際のワーク加工で使用した工具のオフセット量を適正なタイミングで自動補正できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】工作機械の数値制御装置のハードウェアを示すブロック図である。
図2】表示部に表示するプログラム管理画面の一例を示す図である。
図3】工作機械の数値制御装置の制御手順を示すフローチャートである。
図4】工作機械の数値制御装置のハードウェアを示すブロック図である。
図5】工作機械の数値制御装置の制御手順を示すフローチャートである。
図6】ワーク加工で使用した工具のオフセット量を補正するための指示コード例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。
〔第1実施形態〕
【0016】
図1は、本実施形態を示す工作機械の数値制御装置(CNC)のハードウェアを示すブロック図である。
図1において、加工プログラム2を処理する数値制御装置(CNC)20は、実行部のとしてプログラム実行部21、監視部としてのプログラム監視部22、記憶部としての工具摩耗量記憶部23、変更部としての工具補正量変更部24、表示部25、入力部26を備える。
【0017】
ここで、ユーザは、ワーク加工を開始する前に、入力部26から計測した工具の摩耗量をプログラム毎に、かつ、1つのワーク加工を行う際に使用する複数の工具(T1~TN)のそれぞれの摩耗量をオフセット量として工具摩耗量記憶部23に設定して管理している。これにより、工具摩耗量記憶部23には図1に示すオフセット量を管理するテーブルが作成される。なお、同じ工具であっても、加工プログラムが異なると、初期設定すべき摩耗量が異なる場合がある。
【0018】
プログラム実行部21は、入力される加工プログラムに従い加工工具の加工経路を制御する。ここで、図示しない加工部は、プログラム実行部21に従い選択した工具を加工経路に従い移動させてワーク台にセットされたワークに対して、加工処理を施す。
【0019】
監視部としてのプログラム監視部22は、プログラム実行部21が実行する加工プログラムに従い、いずれかの工具がセットされた加工部がワーク加工するタイミング、例えばワークの加工終了、または加工開始のタイミングを監視している。
【0020】
工具補正量変更部24は、加工プログラム毎に、プログラム監視部22が監視するワークの加工終了または加工開始のタイミングで、現在の工具オフセット量を、工具摩耗量記憶部23に記憶された該加工プログラムの工具オフセット量に基づいて自動変更する。
【0021】
表示部25は、1つの加工プログラムを実行して使用した工具と使用していない工具一覧表示する管理画面(図2に示すプログラム管理画面25A)または1つの加工プログラムを実行する際、使用する工具のみを抽出したプログラム管理画面(図2に示すプログラム管理画面25B)を表示する。なお、表示部25が表示するプログラム管理画面では、工具名称、補正番号、形状、摩耗X軸を表示する例を示す。
【0022】
図2は、図1に示した表示部25に表示するプログラム管理画面の一例を示す図である。本例の表示画面は、一例であり、使用するリスト形式は本実施形態に限定されるものではない。
【0023】
図2において、プログラム管理画面25Aは、現在選択された加工プログラムが「01000」で、工具名称が連続した工具番号NO.1~NO.11に対応する管理情報を一覧表示した状態に対応する。プログラム管理画面25Aでは、ワーク加工で使用しない工具番号の管理情報と、使用する工具の工具番号の管理情報とを同時に一覧表示した例である。このため、ユーザがワーク加工で使用する工具のうち、オフセット値を設定すべき工具番号を誤認する可能性がある。
本実施形態において、表示部25は、プログラム管理画面25Aに代えて、プログラム管理画面25Bを表示することも可能である。プログラム管理画面25Bは、各工具番号NO.1~NO.11の中からプログラム毎に使用する工具のみを抽出して表示部25に強調表示した例である。
【0024】
現在のプログラム管理画面25Bでは、加工に使用する工具として、工具番号NO.1、NO.2、NO.6、NO.8、NO.9の工具のみを抽出して、加工プログラム毎に対応づけた一覧形式で強調表示した例である。
【0025】
本実施形態における強調表示例は、工具番号を作業者が視認し易くするため、他のセルの表示色と、工具番号のセルの表示色を異なるように表示し、作業者の視認性を向上させた例である。なお、強調表示自体の形態(図中、斜線で示す)は、本例に限定されるものではない。
【0026】
図3は、本実施形態を示す工作機械の数値制御装置(CNC)の制御手順を示すフローチャートである。本例は、現在の工具オフセット量を、工具摩耗量記憶部23に記憶された該加工プログラムの工具オフセット量に基づいて自動変更する例である。
【0027】
なお、S1~S6は各ステップを示し、数値制御装置(CNC)20がプログラマブルな記憶部(EEPROM)に記憶された制御プログラムを読み出して実行することで実現される。また、本実施形態では、加工プログラムの終了するタイミングを捉えて工具のオフセット量を変更する場合を説明するが、加工プログラムの開始するタイミングで実行させてもよい。さらに、オフセット量を変更するタイミングは、加工プログラム中であって、工具を使用しない非切削ブロックであれば、加工プログラムの開始または終了するタイミングに限定されることはない。
【0028】
ユーザからの加工処理開始指示を受けて、プログラム実行部21が開始した1つの加工プログラム終了をプログラム監視部22が検出する(S1)。次に、プログラム実行部21は、S1で実行した加工プログラムで使用した工具のうち、オフセット量を変更すべき工具のみを算出する(S2)。
【0029】
次に、工具補正量変更部24は、使用した工具が摩耗しているかどうかを判断し(S3)、いずれかの工具も摩耗していないと判断した場合は、S1へ戻り、いずれかの工具が摩耗していると判断した場合は、S4へ進む。なお、通常、ワーク加工に使用した工具は摩耗すると判断する(計測工具等は除く)。
【0030】
次に、入力部26から工具摩耗量記憶部23に工具摩耗量を設定する(S4)。これにより、工具摩耗量記憶部23には、図1に示すオフセット量を管理するテーブルが作成される。次に、プログラム実行部21は、加工プログラムを実行して終了する(S5)。次に、工具補正量変更部24は、現在の工具オフセット量を、工具摩耗量記憶部23に記憶された工具オフセット量に基づいて変更して(S6)、本処理をエンドする。
【0031】
なお、S4において、入力部26が設定する摩耗量は、工具の摩耗量そのものでもいいし、前回測定した値からの変化量(差分量)であってもよい。
【0032】
〔第1実施形態の効果〕
本実施形態によれば、実際のワーク加工で使用した工具のオフセット値を適正なタイミングで自動的に変更できる。
【0033】
また、プログラム管理画面にワーク加工で使用する工具一覧を表示するので、ユーザがオフセット量を設定すべき工具を取り違え、意図しない工具のオフセット値を変更してしまうことも回避できる。
【0034】
〔第2実施形態〕
上記実施形態では、加工プログラムの開始または終了するタイミングを捉えて、使用した工具のオフセット量をプログラム毎に自動的に変更する例を説明した。
しかしながら、使用した工具のオフセット量をプログラム毎に変更するタイミングは、実際にワークを加工するワーク工数の進捗状態に合わせて工具のオフセット量をプログラム毎に変更する構成としてもよい。以下、その実施形態について詳述する。
【0035】
図4は、本実施形態を示す工作機械の数値制御装置(CNC)のハードウェアを示すブロック図である。なお、図1と同一のものには同一の符号を付してその説明を省略する。また、本実施形態では、工具補正量変更部24は、ワーク加工数監視部27が監視するワーク加工数と、工具摩耗量記憶部23に記憶した工具の摩耗量とを用いて算出した推定摩耗量が加工誤差トレランス部28に記憶したトレランス量を超える場合、現在の工具オフセット量を、工具摩耗量記憶部23に記憶した工具のオフセット量に基づいて変更する。
図4において、カウント部としてのワーク加工数カウント部29は、実行部としてのプログラム実行部21が開始した加工プログラムによりワークがいくつ加工されたかを示す値をカウントする。設定部としてのワーク加工数監視部27は、ワーク加工数カウント部29がカウントするカウント数を監視し、ワーク加工数を工具摩耗量記憶部23に設定して管理する。
【0036】
また、記憶部としての加工誤差トレランス部28は、メインプログラムに対応づけて、工具補正量変更部24が参照する各工具のトレランス量をプログラム毎に記憶している。ここで、トレランス量とは、加工精度を規定するパラメータであって、ワークの加工誤差の許容範囲を管理する数値データである。なお、加工誤差トレランス部28と工具摩耗量記憶部23とを同一の記憶媒体で構成してもよい。
【0037】
工具摩耗量記憶部23は、プログラム実行部21が加工プログラム2を一度実行する毎にその加工プログラム2で使用した工具毎の摩耗量と加工したワーク加工数を記憶している。ここで、ワーク加工数は、ワーク加工数監視部27が工具摩耗量記憶部23に設定する。
【0038】
工具補正量変更部24は、1つのワーク加工が終了した時点で、次のワーク加工を終了するタイミングで算出する推定摩耗量と加工誤差トレランス部28に記憶されるトレランス量とを比較して、算出した推定摩耗量がトレランス量を超えていると判断した場合、現在の工具のオフセット量を、工具摩耗量記憶部23に記憶された対応する工具のオフセット値に基づいて自動変更する。なお、推定摩耗量は、工具摩耗量記憶部23に記憶された摩耗量とワーク加工数との積で算出される。
【0039】
〔オフセット量を変更する数値例〕
図4では、加工誤差トレランス部28が加工プログラム毎に対応づけてトレランス量が0.2と記憶され、工具摩耗量記憶部23に、加工ワーク数が3個、工具長T1が0.3mm摩耗することが加工プログラム毎に記憶されている場合を例示する。
【0040】
工具補正量変更部24は、工具摩耗量記憶部23に記憶された加工ワーク数が3個、工具長T1が0.3mmから1ワーク当たりの推定摩耗量は、0.1(1×0.1)mmとして以下の演算を行う。
【0041】
ワーク加工数カウント部29が最初のワーク加工を実行してカウント値が「1」にカウントアップされた時点では、加工部3が次のワーク加工を行っても工具摩耗量は(0.1+0.1)となり、加工誤差トレランス部28に記憶されたトレランス量0.2を超えない。
【0042】
しかし、次のワーク加工を終了した場合、ワーク加工数カウント部29のカウント値が「2」に変化し、工具摩耗量は0.1(2×0.1)mmとなり、次のワーク加工を終了した時点での推定摩耗量は、0.2(2×0.1)mm+0.1=0.3となり、加工誤差トレランス部28に記憶されたトレランス量の0.2mmを超えてしまうので(後述する図5に示すS26)、問題ありと判断される。
【0043】
そこで、工具補正量変更部24は、上記トレランス量を超えないように、工具摩耗量記憶部23に記憶しているワーク加工に使用する工具のオフセット量に基づいて現在の工具オフセット量を自動変更する。
【0044】
これにより、加工部3が次のワーク加工で使用する工具のオフセット量を最適なタイミングで変更できる。これにより、オフセット値を変更するタイミングがずれることによる、不良ワークの発生を削減できる。
【0045】
図5は、本実施形態を示す工作機械の数値制御装置(CNC)の制御手順を示すフローチャートである。本例は、実際にワークを加工するワーク工数の進捗状態に合わせて、各工具の摩耗推定量を算出して、工具摩耗量記憶部23が記憶する各プログラムで使用する使用工具のオフセット量を自動変更する例である。
【0046】
なお、S1~S3は、図3に示したステップと同一ステップであり、S21~S26、本実施形態における各ステップを示す。なお、各ステップは、数値制御装置(CNC)20がプログラマブルな記憶部(例えばEEPROM)に記憶された制御プログラムを読み出して実行することで実現される。
【0047】
S1~S3を実行し、S3で、使用した工具が摩耗していると判断した場合、S21移行を実行する。
まず、工具摩耗量記憶部23に工具摩耗量を設定するとともに、加工誤差トレランス部28にトレランス量をそれぞれ設定する(S21)。
【0048】
次に、プログラム実行部21は、加工プログラム2を開始して(S22)、開始した加工プログラム2を終了する(S23)。この間、ワーク加工数カウント部29は、ワーク加工を実行する毎に、ワーク加工数をカウントすると、ワーク加工数監視部27が工具摩耗量記憶部23に記憶しているワーク加工数を更新する(S24)。
【0049】
次に、工具補正量変更部24は、ワーク加工数カウント部29がカウントするカウント値が加算される毎に、次のワーク加工が終了した時点における工具の推定摩耗量を工具摩耗量記憶部23に設定される加工ワーク数と工具摩耗量とに基づいて算出する(S25)。
【0050】
次に、工具補正量変更部24は、加工ワーク数と工具摩耗量を用いて算出した工具の推定摩耗量と、加工誤差トレランス部28に記憶したトレランス量とを比較して、次のワーク加工が終了した時点で、算出した推定摩耗量がトレランス量を超えてしまうかどうかを判断する(S26)。ここで、工具補正量変更部24が算出した推定摩耗量がトレランス量を超えない(問題ない)と判断した場合、S22へ戻る。
【0051】
一方、S26で、工具補正量変更部24が算出した推定摩耗量がトレランス量を超えている(問題あり)と判断した場合、工具補正量変更部24は、現在の工具オフセット量を、工具摩耗量記憶部23で記憶管理されているオフセット値に基づいて自動変更して(S27)、S22へ戻る。
【0052】
これにより、実際にワーク加工を開始して終了する毎に、ワーク加工数をカウントし、現在のワーク加工が終了する次のワーク加工で工具が摩耗する推定摩耗量を算出し、算出した推定摩耗量が記憶された使用している工具のトレランス量を超えてしまうと判断したタイミングで、現在の工具オフセット量を、記憶している工具のオフセット量に基づいて自動的に変更することができる。
【0053】
〔第2実施形態の効果〕
本実施形態によれば、一連のワーク加工が開始してから終了する毎に、次に開始される一連のワーク加工で使用される工具の加工誤差を一定に保つことができる。
【0054】
〔第3実施形態〕
上記実施形態では、一連のワーク加工が開始して終了する毎に、ワーク加工に使用した工具のオフセット量を変更する場合について説明した。
【0055】
しかしながら、ワーク加工に使用した工具のオフセット量を変更するタイミングをユーザが加工プログラム中で指定する任意のタイミングで実行できるように構成してもよい。ここで、任意のタイミングとは、加工プログラム中であって、工具を使用していないタイミングであればよい。
【0056】
図6は、ワーク加工で使用した工具のオフセット量を補正するための指示コード例を示す図である。
図6において、CNCプログラム61には、加工プログラムが指定回数分、実行されたタイミングでオフセット量を変更する命令62が挿入されている。図1に示したプログラム実行部21は、CNCプログラム61を実行してオフセット量の設定用のコード、例えばコード「Gxxxx」に対応する位置にプログラムカウンタの値が進むと、オフセット量を変更するコマンドを実行する。これを受けて、工具補正量変更部24は現在の工具オフセット量を、工具摩耗量記憶部23に記憶された工具のオフセット量に基づいて自動変更する。
【0057】
〔第3実施形態の効果〕
本実施形態によれば、CNCプログラム61中に、使用した工具のオフセット量を変更するコマンド(例えばコード「Gxxxx」)を挿入しておくことで、ユーザが指定するタイミングにおいて、ワーク加工で使用した工具のオフセット量を自動的に変更することができる。
【0058】
なお、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的を達成できる範囲での変更、改良は本開示に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
20 数値制御装置
21 プログラム実行部(実行部)
22 プログラム監視部(監視部)
23 工具摩耗量記憶部(記憶部)
24 工具補正量変更部(変更部)
25 表示部
26 入力部
27 ワーク加工数監視部(設定部)
28 加工誤差トレランス部(記憶部)
29 ワーク加工数カウント部(カウント部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6