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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】袋入りゼリー食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 29/244 20160101AFI20240214BHJP
   A23L 21/00 20160101ALI20240214BHJP
   B65D 85/72 20060101ALI20240214BHJP
   B65D 77/30 20060101ALI20240214BHJP
   B65D 33/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A23L29/244
A23L21/00
B65D85/72
B65D77/30 C
B65D33/00 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022503758
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2021007445
(87)【国際公開番号】W WO2021172539
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-08-26
(31)【優先権主張番号】P 2020033176
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】506011021
【氏名又は名称】オリヒロプランデュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 織寛
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-213690(JP,A)
【文献】特開2009-291954(JP,A)
【文献】特開2000-014373(JP,A)
【文献】オリヒロプランデュ ぷるんと蒟蒻ゼリーパウチ アップル+グレープ 20g×12個×6袋,Amazon,2015年10月31日,p.1-8,https://www.amazon.co.jp/オリヒロプランデュ-ぷるんと蒟蒻ゼリーパウチ-アップル-グレープ-20gx12個×6袋/dp/B017EKX1D6, [検索日:2021年4月14日]
【文献】プラ知識 No.65/延伸フィルム,富士インパルスホームページ, プラスチックフィルムの基礎知識,2002年06月27日,p.1-2,https://www.fujiimpulse.co.jp/docs/clmn/pbk061_070/pbk065.html#:~:text=一軸延伸フィルムは、引っ張っ,カット性フィルムである。[検索日:2021年4月14日]
【文献】ポリ塩化ビニリデン製品に関するよくある質問 PDVC Q&A,塩化ビニリデン衛生協議会,Ver.2,2014年12月15日,p.1-14(計16枚)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L、B65D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムから形成された包装袋と、前記包装袋内に封入されたこんにゃく入りゼリーと、を有する袋入りゼリー食品において、
前記包装袋は、前記こんにゃく入りゼリーが封入されている封入部を通過する位置で前記フィルムが引き裂かれることによって開封されるように構成され、
前記フィルムは、一軸延伸ポリプロピレンフィルム/ガスバリア層/ヒートシール層の層構成を有し、
前記包装袋が開封されることによって形成される開口の部分の周方向全周の長さであって、前記こんにゃく入りゼリーが押し出されて扁平にされた状態の前記包装袋の表側および裏側について前記フィルムの破断線の前記封入部を通過する部分で測定された、引き裂き開始点と引き出し終点とを結ぶ線分の長さの合計を開口周長としたとき
前記開口周長の変動係数が0.04以下であることを特徴とする袋入りゼリー食品。
【請求項2】
前記ガスバリア層は、ナイロンを含む請求項1に記載の袋入りゼリー食品。
【請求項3】
前記ヒートシール層は、直鎖状低密度ポリエチレンを含む請求項1または2に記載の袋入りゼリー食品。
【請求項4】
前記包装袋は、開封時の前記フィルムの引き裂き位置を示す開封補助構造を有する請求項1から3のいずれか一項に記載の袋入りゼリー食品。
【請求項5】
前記開封補助構造は切り欠きである請求項4に記載の袋入りゼリー食品。
【請求項6】
前記包装袋は、前記包装袋の幅方向に張り出すタブを有する請求項1から5のいずれか一項に記載の袋入りゼリー食品。
【請求項7】
前記タブは、前記包装袋の幅方向両側に形成されている請求項6に記載の袋入りゼリー食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装袋内にこんにゃく入りゼリーが封入された袋入りゼリー食品に関する。
【背景技術】
【0002】
こんにゃく入りゼリーは、ゼラチンを原料とするゼリーと比べて弾力が高く、口腔内の温度でも溶解しないため、幼児や老人が誤って噛まずに飲み込むと喉に詰まらせる恐れが指摘されている。そこで、このような事故を防止するための様々な工夫がなされている。
【0003】
例えば特許文献1には、こんにゃく入りゼリーが包装袋内に充填封入されたゼリー食品において、包装袋を構成するフィルムを引き裂いて包装袋の一部を切除することによって開封口が形成され、包装袋を手で押し潰すと、この開封口からこんにゃく入りゼリーが押し出されるようにしたことが開示されている。特許文献1に開示されたゼリー食品では、開封口のサイズおよびこんにゃく入りゼリーの「かたさ」や「弾力性」をある程度制限することで、消費者が包装袋を押し潰したときに、こんにゃく入りゼリーが包装袋から一気に飛び出ないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特許文献1;特許第4988882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の袋入りゼリー食品は、内容物であるこんにゃく入りゼリーの「かたさ」や「弾力性」を制限したとしても、消費者が包装袋を開封する際にフィルムを直線的に引き裂くことを意識しないとフィルムが直線的に引き裂かれず斜め方向に引き裂かれることがあった。フィルムが斜め方向に引き裂かれると開封口が大きく形成され、包装袋を押し潰したときにこんにゃく入りゼリーが大きな塊となって一気に押し出されてしまう。その結果、こんにゃく入りゼリーを噛まずに飲み込んでしまう可能性が高くなる。
【0006】
本発明は、包装袋を開封する際に、消費者がフィルムを直線的に引き裂くことを意識しなくてもフィルムが所望の方向に直線的に引き裂かれることによって所望のサイズで開封口が形成され、その結果、こんにゃく入りゼリーが開封口から一気に飛び出して、噛まずに飲み込むことによる喉への詰まりを抑制し得る袋入りゼリー食品を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のゼリー食品は、フィルムから形成された包装袋と、前記包装袋内に封入されたこんにゃく入りゼリーと、を有する袋入りゼリー食品において、
前記包装袋は、前記こんにゃく入りゼリーが封入されている封入部を通過する位置で前記フィルムが引き裂かれることによって開封されるように構成され、
前記フィルムは、一軸延伸ポリプロピレンフィルム/ガスバリア層/ヒートシール層の層構成を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フィルムとして特定構造のフィルムを用いることで、開封する際に消費者がフィルムを直線的に引き裂くことを意識しなくても所望のサイズで開封口が形成され、その結果、こんにゃく入りゼリーが開封口から一気に飛び出して噛まずに飲み込むことによる喉への詰まりを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一形態によるゼリー食品の正面図である。
図2】本発明の一形態によるゼリー食品の側面図である。
図3】包装袋の開口周長の測定を説明する図である。
図4図1に示すゼリー食品に用いられるフィルム一形態の模式的断面図である。
図5】本発明の他の形態によるゼリー食品の正面図である。
図6】包装袋の開封時に生じるタブ残りを説明する図である。
図7】一軸延伸PP/K-Ny/LLDPEの3層フィルムを用いて製造した袋入りゼリー食品であるサンプル1の開封試験結果の表である。
図8】開封後のいくつかのサンプル1の、開口部近傍の写真である。
図9】二軸延伸PP/K-Ny/LLDPEの3層フィルムを用いて製造した袋入りゼリー食品であるサンプル2の開封試験結果の表である。
図10】開封後のいくつかのサンプル2の、開口部近傍の写真である。
図11】サンプル1およびサンプル2の開封試験における開口周長の正規分布曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1および図2を参照すると、本発明の一実施形態による袋入りゼリー食品100の正面図および側面図が示されている。袋入りゼリー食品100は、熱融着性を有するフィルムから作られた包装袋110と、包装袋110内に充填封入されたこんにゃくゼリー120とを有し、側方から見たとき、図2に示すように全体として扁平状とされている。
【0011】
包装袋110は、折り合わせた1枚のフィルム、または向かい合わせて配置された2枚のフィルムをその外縁部で熱融着することによって熱シール部111が形成されており、熱融着されていない部分は、こんにゃく入りゼリー120が充填封入されている封入部112となっている。フィルムとしては、上記のシート状のフィルムだけでなく、チューブ状に成形されたインフレーションフィルムを使用することもできる。
【0012】
包装袋110の開封は、フィルムを引き裂くことよって行うことができる。そのため、包装袋110には、包装袋110を開封する際、フィルムの引き裂き開始位置を示す切り欠き113が形成されている。切り欠き113は、開封のためにフィルムを引き裂いたとき、図1に破線で示すように、封入部112を通る位置でフィルムの引き裂きが進行する位置に形成されている。切り欠き113が形成されることにより、包装袋110には、フィルムを引き裂く際の「つまみ」となるタブ114が形成される。切り欠き113からフィルムを引き裂いて包装袋110を開封すると、タブ114は包装袋110から分離される。封入部112を通ってフィルムが引き裂かれた部分が、開封口となる。開封口は、包装袋110が開封される前は、フィルムを引き裂いたときに封入部112を通過する部分であるということができる。フィルムの引き裂きによって開封口が形成された後、包装袋110を押しつぶすことによって、開封口からこんにゃく入りゼリー120が押し出される。
【0013】
図1では、包装袋110の上端部において幅方向両側にそれぞれ、開封時のフィルムの引き裂き開始位置を示す開封補助構造として切り欠き113が形成されているが、片側のみに切り欠き113が形成されていてもよい。開封補助構造は、切り欠き113に限られるものではなく、その他に、例えば、切り込み、包装袋の外形状に対して凹んで形成された凹部、または包装袋110に印刷されたマークであってもよい。ただし、開封補助構造を切り欠き113や切り込みとすることで、開封補助構造とタブ114を同時に形成することができ、また、開封時のためにフィルムを引き裂くと切り欠き113や切り込みの先端に応力集中が生じるため、少ない力でフィルムの引き裂きが開始する。なお、引き裂き開始位置を示す構造がなくてもフィルムを引き裂くことは可能であるので、この引き裂き開始位置を示す構造は、本発明にとって必須の構成ではない。
【0014】
こんにゃく入りゼリー120は、ゲル化剤などを含有するゼリー溶液をゲル化剤の作用によって固化させることによって得られている。ゼリー溶液はこんにゃく精粉を含有しており、これにより、得られたこんにゃく入りゼリー120は、弾力性の高い独特の歯ごたえを有する。
【0015】
このような独特の歯ごたえを有するこんにゃく入りゼリー120の物性は、例えば、「かたさ」および「弾力性」で表すことができる。こんにゃく入りゼリー120の「かたさ」および「弾力性」は、例えばレオメーターを用いて測定することができる。具体的には、試料台に乗せた試料(こんにゃく入りゼリー120)に一定速度でプランジャーを押し込み、試料が抵抗を失って破断したときの荷重量(gf)およびひずみ率(圧縮率)(%)を、それぞれ「かたさ」および「弾力性」とする。
【0016】
本発明で用いるこんにゃく入りゼリー120の「かたさ」は、好ましくは80~1000gf、より好ましくは400~500gfであり、「弾力性」は、好ましくは30~60%、より好ましくは45~55%である。ただし、上記の値は、常温(例えば、温度24℃、湿度38%)の雰囲気下で、株式会社山電製レオメーター(品番:RE-33005C)を用い、くさび形のプランジャー(試料と接する先端面の寸法が、幅1mm、長さ30mm)によって、試料を1mm/secの速度で圧縮した場合の値である。
【0017】
さらに、こんにゃく入りゼリー120は、ゼリー溶液の状態で包装袋110内に充填封入され、その後、固化されているので、こんにゃく入りゼリー120は、全体として見れば、包装袋110の封入部112の形状とほぼ等しい形状をしている。好ましくは、封入部112内に気泡は存在していない。
【0018】
本発明で重要なことは、開封のためにフィルムを引き裂いたとき、直線的に引き裂くことを意識しなくても安定したサイズで開封口が形成されること、すなわち、フィルムが引き裂かれる方向が特定の方向で安定し、かつ直線的に引き裂かれるようにすることである。ここで、「安定したサイズで開封口が形成される」とは、複数のサンプルについてフィルムを引き裂いて開封口を形成したとき、形成された開封口の周長(以下、「開口周長」という)のばらつきが小さいことを意味する。ばらつきを表す指標として具体的には変動係数(いわゆるCV値)を挙げることができる。変動係数は0.05未満であることが好ましく、より好ましくは0.04以下である。
【0019】
ここで、「開口周長」とは、フィルムを引き裂くことによって開封された包装袋において、フィルムの破断面のうち開口を形成する部分(したがって熱シール部は含まない)の周方向全周の長さをいう。ただし、実際の測定は、以下に図3を参照して説明する手順で行う。
【0020】
まず、開封した包装袋から中身を押し出し、包装袋を偏平にした状態とする。次に、引き裂かれたフィルムの破断縁における、熱シール部111を含まない、封入部112を通過する部分の引き裂き開始点SPおよび引き裂き終点EPを定め、これら引き裂き開始点SPと引き出し終点EPとを結ぶ線分の長さを測定する。次に、包装袋を裏返し、包装袋の裏側についても同様に引き裂き開始点SPと引き裂き終点EPとを結ぶ線分の長さを測定する。そして、表側について測定した線分の長さと裏側について測定した線分の長さを加算した値を「開口周長」とする。
【0021】
安定したサイズで開封口が形成されることによって、開封口からこんにゃく入りゼリーを押し出したときに、適度な力で、かつ、開封口から一気に飛び出ることなくこんにゃく入りゼリーを押し出すことができる。
【0022】
安定したサイズで開封口が形成されるようにするためには、包装袋を構成するフィルムとしてどのようなフィルムを用いるかが重要である。図4に、本発明において包装袋を構成すのに用いられるフィルムの断面図を示す。
【0023】
図4に示すように、フィルム200は、ヒートシール層201、ガスバリア層202およびポリプロピレン層203がこの順に積層された構成を有している。
【0024】
ヒートシール層201は、フィルムにヒートシール性を付与するものであり、特に限定されるものではないが、ポリオレフィン樹脂を含むことができる。ポリオレフィン樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)およびポリプロピレン(PP)からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。これらの中でも、ヒートシール層201として、PP、LDPE、LLDPEを好ましく用いることができる。
【0025】
ガスバリア層202は、フィルムにガスバリア性を付与するためのものであり、例えば、ナイロン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、およびポリビニルアルコール(PVA)などを用いることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を積層して用いてもよい。これらの中でもナイロンは、フィルム200に耐突き刺し性、耐熱性、難燃性、耐薬品性、耐寒冷性などを付与することができるため、好ましく用いることができる。また、ガスバリア層202としては、アルミニウム蒸着フィルム、シリカ蒸着フィルムおよび酸化アルミニウム蒸着フィルムなどを用いることもできる。
【0026】
ポリプロピレン層203には、一軸延伸されたポリプロピレンフィルムが用いられる。ポリプロピレンフィルムは、延伸方向が、製造される包装袋の幅方向と平行になるように使用される。このように、一軸延伸されたポリプロピレンフィルムからなるポリプロピレン層203をヒートシール層201およびガスバリア層202に積層することで、フィルムを引き裂いた際に、直線的に引き裂くことを意識しなくても直線的に引き裂くことができ、その結果、開封口を所望の周長で、かつより小さなばらつきで形成することができる。
【0027】
本形態の袋入りゼリー食品100は、例えば以下のようにして製造することができる。
【0028】
まず、通常のこんにゃく入りゼリーを作る場合と同様、ゲル化剤およびこんにゃく粉を含有したこんにゃく入りゼリー溶液を調製する。こんにゃく入りゼリー溶液には、ゲル化剤およびこんにゃく粉の他に、糖類、果汁、香料、酸味料、着色料などを、必要に応じて添加することができる。
【0029】
次いで、調製したこんにゃく入りゼリー溶液を加熱殺菌する。加熱殺菌は、例えばチューブ式の加熱殺菌装置を用いるなど、任意の方法で行うことができる。殺菌条件は、例えば、120~140℃、約3分とすることができる。
【0030】
殺菌が終了したこんにゃく入りゼリー溶液は、冷却装置により約60~70℃まで冷却されて、適宜の充填包装機を用いて充填包装される。充填包装は、殺菌した内容物(本発明の場合はこんにゃく入りゼリー溶液)および殺菌した包装材(本発明の場合はフィルム)を用いて無菌環境下で包装を行う無菌充填包装であることが好ましい。これにより、こんにゃく入りゼリー溶液が充填された包装袋110が得られる。
【0031】
次いで、ゼリー溶液が充填された包装袋110を25℃以下まで冷却してゼリー溶液を固化させる。これによって、図1に示すような、こんにゃく入りゼリー120が包装袋110内に充填封入されたゼリー食品100が得られる。
【0032】
ここではこんにゃく入りゼリー溶液を殺菌した後に充填包装する例を示したが、こんにゃく入りゼリー溶液を充填包装した後に殺菌してもよい。
【0033】
消費者がこんにゃく入りゼリー120を食べるとき、包装袋110の開封口が形成された部分を口に入れて食べる可能性があることを考えると、フィルムが引き裂かれる部分での、熱シール部111および開封口を含む全体の幅W1(図1参照)は、30mm以下であることが好ましい。また、フィルムの引き裂きによって形成される開封口の幅W2(図1参照)は、開封のためにフィルムが引き裂かれる長さの範囲内で、こんにゃく入りゼリー120が押し出されることができる長さであれば特に制限はない。ただし、開封口の幅W2が短すぎるとこんにゃく入りゼリー120を開封口から押し出すことができず、また、開封口の幅W2が長すぎると一度に多量のこんにゃく入りゼリー120が押し出されてしまう可能性がある。よって、開封口の幅W2は、例えば、8~20mmであることが好ましい。なお、図1において、切り欠き113の位置でフィルムを引き裂いたとき、フィルムが包装袋110の幅方向に一直線に引き裂かれた場合、開口周長は、開封口の幅W2×2となる。
【0034】
また、本形態では、包装袋110は、こんにゃく入りゼリー120を主に封入している部分である主封入部112aの幅W3より、開封口の幅W2が狭くなっている。そのため、こんにゃく入りゼリー120が押し出されるとき、主封入部112aから開封口へのこんにゃく入りゼリー120の移動が制限される。
【0035】
一方、包装袋110の中では、こんにゃく入りゼリー120は、一つの塊として存在しており、また、こんにゃく入りゼリー120は、こんにゃく由来の弾力性を有している。そのことにより、こんにゃく入りゼリー120は、開封口から押し出される際に圧縮され、かつ、部分的に引きちぎられながら分離することなく押し出される。
【0036】
その結果、開封された包装袋を強く押し潰したり、こんにゃく入りゼリー120を強く吸い込んだりした場合でも、こんにゃく入りゼリー120が大きな塊のまま開封口から飛び出すことはない。押し出されたこんにゃく入りゼリー120を食べるためには、歯で噛み切る必要がある。よって、包装袋110から押し出されたこんにゃく入りゼリー120が大きな塊のまま消費者の口の中に飛び込み噛まずに飲み込むことによる喉への詰まりを防止することができる。しかも、包装袋110から押し出されたこんにゃく入りゼリー120を食べるためには、こんにゃく入りゼリー120を噛み切る必要があるため、こんにゃく入りゼリー120の独特の歯ごたえを楽しむことができる。
【0037】
上述したとおり、本形態の包装袋110は、開封口の幅W2が主封入部112aの幅W3より狭くなるように構成して開封口から押し出されるこんにゃく入りゼリー120の移動を抑制している。ただし、開封口の幅W2が極端に狭い場合は、こんにゃく入りゼリー120を押し出すことが困難になる。そこで、例えば本形態のように、封入部112が、主封入部112aと開封口との間に、主封入部112aと開封口とを、主封入部112aの幅W3から開封口の幅W2まで漸次狭くなるようにつなぐ導出部112bを有するように形成することが好ましい。これによって、開封口の幅W2が狭い場合であってもこんにゃく入りゼリー120を容易に押し出すことができるようになる。
【0038】
以上、本発明について、好ましい一実施形態を用いて説明したが、本発明は上述した形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更が可能である。
【0039】
上述した形態では、本発明を三方シールタイプの包装袋110に適用した例を示した。しかし、包装袋の形態は、図5に示すような四方シールタイプの包装袋210であってもよいし、ピロータイプの包装袋(不図示)であってもよい。さらには、ガゼットタイプやスタンディングタイプなど、マチ付きの包装袋であってもよい。
【0040】
包装袋110の外形状は任意であり、例えば、三角形、四角形、五角形またはそれ以上の多角形としたり、円形や楕円形など曲線のみで囲まれた形状としたり、あるいは直線と曲線を組み合わせた形状であってもよい。封入部112の形状も、例えば、包装袋を正面からみたとき、包装袋の外形と相似形であったり、包装袋の外形と異なる形状であったり、任意の形状とすることができる。
【0041】
以下に、本発明の効果を確認するために行なった実験例を説明する。
【0042】
<実験例1>
[フィルムの用意]
包装袋に使用するフィルムとして、以下の層構成を有する3層フィルムを用意した。
ポリプロプレン層:一軸延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ:25μm)
ガスバリア層:K(PVDC)コートナイロンフィルム(厚さ:15μm)
ヒートシール層:LLDPE(厚さ:50μm)
【0043】
[袋入りゼリー食品の製造]
用意したフィルムと、予め調製したこんにゃく入りゼリー溶液を、充填包装機(オリヒロ株式会社製、ONPACK-TPC6)に供給して、こんにゃく入りゼリー溶液が充填された包装袋を製造し、さらにこんにゃく入りゼリー溶液をゲル化させることで、袋入りこんにゃく入りゼリー食品(以下、「サンプル1」という)を得た。用いたこんにゃく入りゼリー溶液は、オリヒロプランデュ株式会社から市販されているこんにゃく入りゼリーを得るためのこんにゃく入りゼリー溶液と同等の材料を同等の割合で混合したものであった。こんにゃく入りゼリー溶液の殺菌は、こんにゃく入りゼリー溶液を充填包装した後に、80℃で約30分間行った。フィルムは、延伸方向が包装袋の幅方向と平行になるように、充填包装機に供給した。包装袋の形状は、図1に示したとおりであった。得られた袋入りゼリー食品は、内容量が20g、図1に示した各部の寸法が、W1=26mm、W2=16mm、W3=42mmであった。
【0044】
[開封試験]
得られたサンプル1から50個を抜き取り、5人の被験者A~Eでそれぞれ10個ずつ開封試験を行った。袋入りゼリー食品の開封は、図1において切り欠き113の上下で熱シール部111を両手で持ち、フィルムを包装袋110の幅方向に引き裂くことによって行った。開封に際して、被験者には「普通に開封してください」と伝えただけで、「真っ直ぐに引き裂くように」等の注意事項は伝えなかった。フィルムの引き裂き速度は、個人差はあるもののおおよそ1cm/秒であった。
【0045】
開封試験では、「開口周長」および「タブ残り」を評価した。「開口周長」は、前述した手順で測定した(単位:mm)。「タブ残り」は、フィルムの引き裂き方向が安定しない場合に生じることがあり、その有無(タブ残りが発生したサンプルの数)を、直線引き裂き性を表す指標の一つとした。
【0046】
以下に、「タブ残り」について説明する。包装袋の開封時にフィルムの引き裂きが開封開始側と反対側の熱シール部まで進行すると、その部分で熱シール部が大きな抵抗となることがある。例えば、図6において白抜き矢印方向にフィルムを引き裂いたとき、包装袋の表側のフィルムは一点鎖線で示すように引き裂きが進行し、裏側のフィルムは二点鎖線で示すように引き裂きが進行した場合を考える。この場合、フィルムは表側と裏側で別々のルートを辿って引き裂かれて封入部112を通過し、それぞれ異なる位置R、Sで開封開始側と反対側の熱シール部111に到達する。そのため、熱シール部111ではフィルムを引き裂く力が2か所に分散され、結果的に、フィルムを引き裂くためには通常より大きな力が必要となる。本実験例では、フィルムを引き裂いている途中で大きな抵抗力を感じた場合はそこで引き裂きを中断し、「タブ残り」が生じたと判定した。
【0047】
<実験例2>
包装袋に使用したフィルムとして以下の層構成を有する3層フィルムを用いた以外は実験例1と同様に袋入りゼリー食品を製造し、得られた袋入りゼリー食品(以下、「サンプル2」という)の開封試験を行い、「開口周長」を測定するとともに、「タブ残り」の有無を調べた。
【0048】
実験例2で使用したフィルムの構成は以下のとおりであった。
ポリプロピレン層:二軸延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ:25μm)
ガスバリア層:K(PVDC)コートナイロンフィルム(厚さ:15μm)
ヒートシール層:LLDPE(厚さ:50μm)
【0049】
サンプル1の開封試験による開口周長の測定結果およびタブ残りの有無の確認結果を図7に示し、開封されたサンプル1のうちいくつかについての開口部近傍の写真を図8に示す。サンプル2についても同様に、開口周長の測定結果およびタブ残りの有無の確認結果を図9に示し、開口部近傍の写真を図10に示す。また、サンプル1およびサンプル2の開口周長の正規分布曲線を図11に示す。
【0050】
これらの結果より、以下のことがいえる。
(1)サンプル1は、全体的に真っ直ぐ引き裂かれ、一人の被験者を除いてはタブ残りも殆ど生じなかった。タブ残りの発生率は、全体では14%であったが、特定の一人の被験者を除くと5%であった。また、真っ直ぐ引き裂かれることから、開口周長のばらつきも小さかった。
(2)サンプル2は、サンプル1と比較して引き裂き方向が安定せず、波打つように引き裂かれたものが多く見られた。そのため、タブ残りの発生率も全体で80%以上、最低の被験者でも50%と高く、開口周長のばらつきも、図11から明らかなように、サンプル1と比較して大きいものとなった。
(3)サンプル1およびサンプル2について、それぞれ開口周長の変動係数を求めた。変動係数は、標準偏差を平均値で割った値であり、データのばらつきの関係を相対的に評価する際に用いられる。サンプル1の変動係数は0.033であり、サンプル2の変動係数は0.050であった。
(4)サンプル1とサンプル2との間で、開口周長のばらつきの大小の違いに有意差があるかを検証するため、有意水準5%としてF検定を行った結果、F値の限界値は1.61、F値は2.27となり、サンプル1とサンプル2との間に有意差が認められた。
(5)サンプル1とサンプル2との違いは、使用したフィルムのポリプロピレン層が、一軸延伸ポリプロピレンフィルムであるか、二軸延伸ポリプロピレンフィルムであるか、のみである。よって、サンプル1およびサンプル2の開封試験結果より、一軸延伸ポリプロピレンフィルムは、二軸延伸ポリプロピレンフィルムと比較して、フィルムの直線引き裂き性に大きく寄与しているといえる。
【符号の説明】
【0051】
100 袋入りゼリー食品
110、210 包装袋
111 熱シール部
112 封入部
113 切り欠き
114 タブ
120 こんにゃく入りゼリー
200 フィルム
201 ヒートシール層
202 ガスバリア層
203 ポリプロピレン層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11