(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】画像処理装置、作業指示作成システム、作業指示作成方法
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20240214BHJP
G06T 7/70 20170101ALI20240214BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20240214BHJP
【FI】
G06T7/00 610Z
G06T7/70 A
G06T7/00 350B
G06Q50/04
(21)【出願番号】P 2022504359
(86)(22)【出願日】2021-03-01
(86)【国際出願番号】 JP2021007765
(87)【国際公開番号】W WO2021177245
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-11-21
(31)【優先権主張番号】P 2020038065
(32)【優先日】2020-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169856
【氏名又は名称】尾山 栄啓
(72)【発明者】
【氏名】鴻巣 有史
【審査官】小池 正彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-37392(JP,A)
【文献】特開2018-149677(JP,A)
【文献】特開平7-108426(JP,A)
【文献】特開2018-207360(JP,A)
【文献】特開2019-161606(JP,A)
【文献】特開2019-101516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
G06T 7/70
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業対象物を含むように第1の画角で撮像された第1の画像を第1の機械学習により解析し、前記第1の画像内での前記作業対象物の位置を検出する作業対象物検出部と、
検出された前記作業対象物の位置に基づき、前記作業対象物を含むように前記第1の画角よりも狭い第2の画角で撮像された第2の画像を第2の機械学習で解析し、前記作業対象物の作業状態を検出する作業状況検出部と、
検出された前記作業状態に基づいて前記作業対象物に対する作業指示内容を表す作業指示情報を生成する作業指示作成部と、を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記作業状況検出部は、前記第2の機械学習により前記第2の画像内における前記作業対象物上のボルト及びボルト締結用の孔の位置を検出することで、前記作業対象物に対する前記ボルトの締結状態を前記作業状態として検出する、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記作業指示作成部は、前記孔にボルト締結を行うことを指示する情報を前記作業指示情報として生成する、請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の画像処理装置と、
パン、チルト及びズーム機能を有する撮像装置と、
出力機器と、を備え、
前記作業対象物検出部は、前記撮像装置に前記作業対象物を前記第1の画角で撮像させることで前記第1の画像を取得し、
前記作業状況検出部は、前記作業対象物検出部により検出された前記作業対象物の位置に基づいて、前記撮像装置のパン、チルト及びズーム機能を制御することで前記撮像装置に前記作業対象物を前記第2の画角で撮像させることで前記第2の画像を取得し、
前記作業指示作成部は、前記作業指示情報を前記出力機器に出力する、作業指示作成システム。
【請求項5】
作業空間内の複数の作業場にそれぞれ配置された複数の前記出力機器を備え、
複数の前記作業対象物が複数の前記作業場にそれぞれ配置され、
前記作業対象物検出部は、複数の前記作業対象物の各々の前記作業空間内での配置位置情報及び前記撮像装置の前記作業空間内での配置位置情報に基づいて、前記撮像装置のパン、チルト及びズーム機能を制御することで、複数の前記作業対象物の各々について前記撮像装置に前記第1の画像を撮像させて複数の前記作業対象物の各々について前記第1の画像内での位置を検出し、
前記作業状況検出部は、複数の前記作業対象物の各々について検出された前記第1の画像内での位置に基づいて、前記撮像装置のパン、チルト及びズーム機能を制御することで、複数の前記作業対象物の各々について前記撮像装置に前記第2の画像を撮像させて複数の前記作業対象物の各々について前記作業状態を検出し、
前記作業指示作成部は、検出された各々の前記作業対象物の作業状態に基づいて、各々の前記作業対象物に対する前記作業指示情報を生成して、前記出力機器の各々に出力する、請求項4に記載の作業指示作成システム。
【請求項6】
前記作業対象物検出部は、定期的に循環する形式で複数の前記作業対象物の各々について前記撮像装置に前記第1の画像を撮像させて複数の前記作業対象物の各々について前記第1の画像内での位置を検出する、請求項5に記載の作業指示作成システム。
【請求項7】
作業対象物が入る第1の画角で該作業対象物を撮像して第1の画像を取得し、
前記第1の画像を第1の機械学習により解析し、前記第1の画像内で前記作業対象物の位置を検出し、
検出された前記作業対象物の位置に基づき、前記作業対象物を含むように前記第1の画角よりも狭い第2の画角で前記作業対象物を撮像して第2の画像を取得し、
前記第2の画像を第2の機械学習により解析し、前記作業対象物の作業状態を検出し、
検出された前記作業状態に基づいて前記作業対象物に対する作業指示内容を表す作業指示情報を生成して出力機器に出力する、作業指示作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、作業指示作成システム及び作業指示作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撮像対象物を固定カメラで観察して撮像対象物の状態を確認することが行われている。例えば、特許文献1は、「ケーシングと、前記ケーシングの本体に着脱可能に設けられる構成部品と、前記ケーシングの内部の所定の撮像対象の画像データを取得する撮像装置とを備え、前記撮像装置は、前記撮像対象を撮像可能な位置となるように前記構成部品に支持されることを特徴とする空気処理装置」を記載する(請求項1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、人手作業の工程でカメラの画像を解析して作業状況を確認したり、作業状況から作業指示を作成するためには、作業対象物の厳密な位置決めが必要となる。しかしながら、作業対象物の厳密な位置決めは、作業者の作業の妨げとなったり、作業対象物の位置決めのための専用の固定器具が必要になるなど、カメラを用いた作業状況の解析のためのシステムを導入する障壁となっていた。また、作業対象物の厳密な位置決めをしても、作業対象物の個体差(例えば、プリント基板上の部品の実装位置の個体差)により画像解析が困難な場合もあった。また作業対象物によってはその外観の固定ができないものもあった(例えば、作業対象物としての産業用ロボットの各軸の位置姿勢)。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、作業対象物を含むように第1の画角で撮像された第1の画像を第1の機械学習により解析し、前記第1の画像内での前記作業対象物の位置を検出する作業対象物検出部と、検出された前記作業対象物の位置に基づき、前記作業対象物を含むように前記第1の画角よりも狭い第2の画角で撮像された第2の画像を第2の機械学習で解析し、前記作業対象物の作業状態を検出する作業状況検出部と、検出された前記作業状態に基づいて前記作業対象物に対する作業指示内容を表す作業指示情報を生成する作業指示作成部と、を備える画像処理装置である。
【0006】
本開示の別の態様は、上記画像処理装置と、パン、チルト及びズーム機能を有する撮像装置と、出力機器と、を備え、前記作業対象物検出部は、前記撮像装置に前記作業対象物を前記第1の画角で撮像させることで前記第1の画像を取得し、前記作業状況検出部は、前記作業対象物検出部により検出された前記作業対象物の位置に基づいて、前記撮像装置のパン、チルト及びズーム機能を制御することで前記撮像装置に前記作業対象物を前記第2の画角で撮像させることで前記第2の画像を取得し、前記作業指示作成部は、前記作業指示情報を前記出力機器に出力する、作業指示作成システムである。
【0007】
本開示の更に別の態様は、作業対象物が入る第1の画角で該作業対象物を撮像して第1の画像を取得し、前記第1の画像を第1の機械学習により解析し、前記第1の画像内で前記作業対象物の位置を検出し、検出された前記作業対象物の位置に基づき、前記作業対象物を含むように前記第1の画角よりも狭い第2の画角で前記作業対象物を撮像して第2の画像を取得し、前記第2の画像を第2の機械学習により解析し、前記作業対象物の作業状態を検出し、検出された前記作業状態に基づいて前記作業対象物に対する作業指示内容を表す作業指示情報を生成して出力機器に出力する、作業指示作成方法である。
【発明の効果】
【0008】
上記構成によれば、作業対象物を厳密に位置決めできなかったり、作業対象物に個体差が有ったり、作業対象物の外観が固定されないような状況においても作業状態の確認及びそれに基づく作業指示の作成を確実に行うことができる。
【0009】
添付図面に示される本発明の典型的な実施形態の詳細な説明から、本発明のこれらの目的、特徴および利点ならびに他の目的、特徴および利点がさらに明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る画像処理装置を含む作業指示作成システムのシステム構成図である。
【
図3A】ワークを広角で撮影した画像からワークを検出した例を示す図である。
【
図3B】
図3Aのワークを望遠で撮影した画像からワークの作業状態を検出した例を示す図である。
【
図4A】ワークを広角で撮影した画像からワークを検出した例を示す図である。
【
図4B】
図4Aのワークを望遠で撮影した画像からワークに対する作業指示を作成して表示した例を示す図である。
【
図5A】ワークを広角で撮影した画像からワークを検出した例を示す図である。
【
図5B】
図5Aのワークを望遠で撮影した画像からワークに対する作業指示を作成して表示した例を示す図である。
【
図6】畳み込みニューラルネットワークの構成例を表す図である。
【
図7】作業指示作成処理を表すフローチャートである。
【
図8】複数の作業場所にあるワークに対して作業指示を出すように構成された作業指示作成システムの構成を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。参照する図面において、同様の構成部分または機能部分には同様の参照符号が付けられている。理解を容易にするために、これらの図面は縮尺を適宜変更している。また、図面に示される形態は本発明を実施するための一つの例であり、本発明は図示された形態に限定されるものではない。
【0012】
図1は本実施形態に係る画像処理装置10を含む作業指示作成システム1のシステム構成図である。
図1に示されるように、作業指示作成システム1は、画像処理装置10と、出力機器20と、パン、チルト、及びズーム機能を有する撮像装置30とを備える。作業指示作成システム1は、作業対象物(以下、ワークと記す)Wの厳密な位置決めを要することなく、撮像装置30により取得した作業対象物Wの画像を解析してワークWに対する作業状態を確認し、作業者に対して出力機器20を介して作業指示を出すように構成される。
【0013】
画像処理装置10は、CPU、ROM、RAM、記憶装置、操作部、入出力インタフェース、ネットワークインタフェース等を有する一般的なコンピュータとしての構成を有していても良い。出力機器20は、作業者に対する作業指示を出力する機として、表示装置、音声出力装置、印刷装置等の様々な機器を用いることが可能である。本実施形態では出力機器20として表示モニタを用いるものとする。出力機器20は、作業台26上に配置され、作業対象物Wに対し行うべき作業指示を表示する。撮像装置30は、作業台26が設置されている作業空間内において、ワークWを撮像可能な位置に配置されていれば良い。
【0014】
図2は、画像処理装置10の機能ブロック図を示す。
図2に示されるように、画像処理装置10は、画像取得部11、作業対象物検出部12、作業状況検出部13、及び作業指示作成部14を備える。画像取得部11は、撮像装置30が撮像した画像を取得する。作業対象物検出部12は、ワークWを含むように第1の画角(広角)で撮像された第1の画像を第1の機械学習により解析し、第1の画像内でのワークWの位置を検出する。
【0015】
作業状況検出部13は、作業対象物検出部12により検出されたワークWの位置に基づき、ワークWを含むように(例えばワークWが画像の中心付近に来るように)第1の画角よりも狭い(望遠側の)第2の画角で撮像された第2の画像を第2の機械学習で解析し、ワークWの作業状態を検出する。作業指示作成部14は、検出された作業状態に基づいてワークWに対す作業指示内容を表す作業指示情報を生成し出力機器20に出力させる。
【0016】
このように、本実施形態の画像処理装置10は、まず作業空間を広角で撮影した画像を解析することにより画像内でのワークの位置を特定し、次に、特定されたワークWの位置に基づいて、例えばワークが画像の中央に映るように望遠で撮影する。そして、画像処理装置10は、望遠で大きく撮影されたワークの画像を解析することでワークに対する作業状況を確認し、作業指示情報を生成する。このような構成により、作業状況をカメラで確認するためにワークを厳密に位置決めする必要がなくなる。
【0017】
以下では、作業内容としてワークに対するネジ締め作業の場合を例として画像処理装置10の動作の詳細について説明する。
図3Aは、撮像装置30が、ワークW1を含む作業空間を広角で撮影した画像101である。ワークW1の広角画像を撮影するために、作業対象物検出部12は、作業空間内でのワークW1の配置情報と撮像装置30の作業空間内での配置情報とを用いて、撮像装置30のパン、チルト、及びズーム機能を制御するようにしてもよい。作業対象物検出部12は、画像取得部11を介して画像101を取得する。
【0018】
作業対象物検出部12は、機械学習を行う機能を有し、画像101を機械学習(第1の機械学習)により解析してワークW1の位置を検出する。
図3A中には、機械学習による物体検出結果として、ワークW1の領域を示す枠線(バウンディングボックス)201、物体検出結果を示すラベル301が表示されている。検出結果を示すラベル301は、カテゴリ分類の結果である部品(“parts”)と、その確率“1.00”とを含む。作業対象物検出部12は、このように画像101内に物体検出結果が重畳された画像を出力機器20に表示するようにしても良い。
【0019】
次に、作業状況検出部13は、作業対象物検出部12により検出されたワークW1の位置に基づいて、撮像装置30のパン、チルト、及びズーム機能を制御することで、例えば、ワークW1が画像の中心に写るように撮像装置30に望遠でワークW1を撮影させる。
図3Bは、撮像装置30によりワークW1が画像の中心に写るように望遠で撮影されたワークW1の画像102である。そして、作業状況検出部13は、画像102を機械学習(第2の機械学習)で解析することによりワークW1上のボルト及びボルト締結用の孔の位置を検出する。
【0020】
画像102内には、機械学習による物体検出結果として、ボルトの領域を示すバウンディングボックス211と、そのカテゴリ分類の結果のラベル311、及び孔の領域を示すバウンディングボックス212と、そのカテゴリ分類の結果であるラベル312とが示されている(一部にのみ符号を付す)。作業状況検出部13は、このように画像102内に物体検出結果が重畳された画像を出力機器20に表示するようにしても良い。
【0021】
本実施形態では、画像中の物体の検出に深層学習、具体的には、畳み込みニューラルネットワーク(CNN;Convolutional Neural Network)を用いた物体検出アルゴリズムを使用する。一般に、このような物体検出アルゴリズムは、
(1)物体を含む領域(バウンディングボックスと呼ばれる)の抽出
(2)領域のCNN特徴の演算
(3)領域のカテゴリ分類及び正確な位置の回帰
のタスクを含む。
【0022】
このような物体検出アルゴリズムで用いられるCNNの基本的な構成を
図6に示す。
図6に示すように、CNNは、入力画像251にフィルタ(カーネル)を適用して畳み込み演算を行う畳み込み層261、262と、ダウンサンプリングを行うプーリング層271、272の組み合わせから構成される。
図6に示した例では、畳み込み層とプーリング層を2つずつ積み重ねることで、特徴マップ281、282、283、284が段階的に生成される様子を図示した。このようにCNNにより得られた特徴マップに出力層として全結合層291を適用してカテゴリ分類、或いはバウンディングボックスの位置の回帰を行う。
【0023】
畳み込み層261、261における畳み込みの演算は、以下の数式で表される順伝播をフィルタ(カーネル)のチャンネル数毎に行う処理に対応する。
【0024】
【数1】
ここで、zは畳み込み層ユニットの出力、w
iはフィルタの重みパラメータ、x
iは入力(局所領域)、hは活性化関数、bはバイアスである。活性化関数hとしては、例えば、ロジスティックシグモイド関数、ReLU(Rectified Linear Unit)等を用いることができる。
【0025】
プーリング層271、272における演算として、例えば、入力データ中の最大値を出力する最大値プーリング、或いは入力データの平均値を出力する平均値プーリングを用いることができる。
【0026】
これらのCNNを用いた物体検出の機械学習の学習段階では、入力画像とそれに対する正解のバウンディングボックス及び物体カテゴリを与える。そして、入力画像から得られる出力と正解との間の、損失関数により定義される損失を最小化するパラメータを誤差逆伝搬法により学習する。
【0027】
上述のようなCNNを用いた物体検出アルゴリズムとして、RCNN(Region with CNNfeatures)、YOLO(You Only Look Once)、SSD(Single Shot Multibox Detector)等が当分野において知られている。これらの中で、RCNNは、はじめに選択的探索法を用いて領域候補を抽出し、抽出した領域にCNNを適用するアプローチに属し、YOLO,SSDは、CNNにより物体らしさとバウンディングボックスの位置の推定を一度に実行するアプローチに属する。
【0028】
なお、本実施形態では、上述した例に限らず、機械学習による各種物体検出手法を用いることができる。
【0029】
作業状況検出部13における学習の段階では、
図3Aで例示したようなワークW1の画像と、正解としてワークW1の領域(バウンディングボックス)及び物体のカテゴリを与えて学習を実行しておく。作業状況検出部13における学習の段階では、
図3Bに例示したようなワークW1の画像と、正解としてのボルトの領域(バウンディングボックス)及び物体カテゴリ、及び、正解としての孔の領域(バウンディングボックス)及び物体カテゴリを与えて学習を行っておく。
【0030】
次に、作業指示作成部14による作業指示作成の詳細について説明する。作業指示作成の第1の例について説明する。
図4Aに示すように撮像装置30が広角で撮影したワークW1を含む画像401を作業対象物検出部12が解析することによりワークW1の位置が検出されたとする。
図4Aには、作業対象物検出部12によるワークW1の検出結果としてのバウンディングボックス441も示されている。次に、作業状況検出部13は、ワークW1を含むように望遠で撮影された画像402(
図4B)を解析してワークW1上のボルト及び孔の検出を行う。この場合、ワークW1にはまだボルトが締結されていない状態であるため、作業状況検出部13は、ワークW1上で9個の孔h(一部にのみ符号hを付す)及びその位置を検出する。
【0031】
次に、作業指示作成部14は、作業状況検出部13による検出結果(ボルトの締結状態)と、予め保持していた作業内容情報とを対比する。作業内容情報が、
図4BのようにワークW1を見た場合に「左下の孔から順に時計回りに全ての孔にボルトを締結すること」であるとする。作業指示作成部14は、作業状況検出部13から取得した情報(9個の孔に未だボルトが締結されていない状態)と上記作業内容情報とを対比することで、左下の孔にボルトを締結する指示を作成する。
図4Bには、このような指示の一例が表されている。
図4Bに示されるように、作業指示作成部14は、次にボルト締結をすべき左下の孔hを囲む四角の枠線461の表示色を、他の孔hを囲む四角の枠線462の表示色と変えることによって枠線461で囲まれた左下の孔hに対して締結指示が出ていることを視覚的に把握できるようにする。作業指示作成部14は、このように作業指示を示す枠線461及び462が重畳された画像402を出力機器20に表示させる。
【0032】
作業指示を作成するために、ワークW1を基準とした各孔hの位置を知る必要がある場合には、作業指示作成部14は、次のような手法でワークW1を基準とした各孔hの位置を特定することができる。
(1)作業状況検出部13が検出した画像402内での孔hの配列(この場合は逆Uの字状の配列)に基づいてワークW1の幾何学的中心を推定することにより、ワークW1を基準とした各孔hの位置を特定する。
(2)作業対象物検出部12により検出された画像401内でのワークW1の位置と、作業状況検出部13が検出した画像402内での孔hの位置と、画像402を取得するためにパン、チルト及びズーム機能がどのように制御されたかを表す情報とに基づいてワークW1を基準とした各孔hの位置を特定する。
【0033】
作業指示作成の第2の例について説明する。
図5Aに示すように撮像装置30が広角で撮影したワークW1を含む画像501を作業対象物検出部12が解析することによりワークW1の位置が検出されたとする。
図5Aには、作業対象物検出部12によるワークW1の検出結果としてのバウンディングボックス541も示されている。次に、作業状況検出部13は、ワークW1を含むように望遠で撮影された画像502(
図5B)を解析してワークW1上のボルト及び孔の検出を行う。この場合、ワークW1の9つの孔のうち、左下の2つの孔にはボルトが締結されている状態であるため、作業状況検出部13は、ワークW1の9つの孔の位置のうち左下の2箇所の位置にボルトbを検出し、それ以外の7か所の位置に孔hを検出する。
【0034】
次に、作業指示作成部14は、作業状況検出部13による検出結果と、予め保持していて作業内容情報とを対比する。作業内容情報は、上述の
図4Bの場合と同じであるものとする。作業指示作成部14は、作業状況検出部13から取得した情報(9個の孔のうち左下の2箇所にボルトが締結されている)と上記作業内容情報とを対比することで、左下から3番目の孔にボルトを締結する指示を作成する。
図5Bには、このような指示の一例が表されている。
図5Bに示されるように、作業指示作成部14は、次にボルト締結をすべき左下から三番目の孔hを囲む四角の枠線561の表示色を、他の孔hを囲む四角の枠線562の表示色と変えることによって枠線561で囲まれた孔hに対して締結指示が出ていることを視覚的に把握できるようにする。さらに、作業指示作成部14は、ボルトbが締結済みの位置を囲む枠線560については枠線561及び562と異なる表示色を用いて締結済みであることを示すようにしても良い。作業指示作成部14は、このように作業指示を示す枠線560-562が重畳された画像502を出力機器20に表示させる。
【0035】
図7は、画像処理装置10による作業指示作成処理(作業指示作成方法)をフローチャートとして表したものである。はじめに、画像処理装置10(作業対象物検出部12)は、撮像装置30が広角(第1の画角)で撮影した第1の画像を取得する(ステップS1)。次に、作業対象物検出部12は、第1の画像を機械学習(第1の機械学習)により解析し、作業対象物の位置を検出する(ステップS2)。次に、作業状況検出部13は、作業対象物検出部12により検出された作業対象物の位置に基づいて、例えば作業対象物が中心に写るように作業対象物を望遠(第2の画角)で撮影した第2の画像を取得する(ステップS3)。
【0036】
次に、作業状況検出部13は、第2の画像を機械学習(第2の機械学習)により解析し、作業対象物の作業状態を確認する(ステップS4)。次に、作業指示作成部14は、作業状況検出部13により検出された作業状態に基づき、作業対象物に対する作業指示を作成し、出力機器20に出力する(ステップS5)。
【0037】
実際の作業現場では、複数の作業者により作業工程が並行して行われる状況が想定される。
図8に示すように、三人の作業者81、82、83がそれぞれ作業を行う状況を想定する。この場合、
図1に示した構成の作業指示作成システム1において画像処理装置10に複数の出力機器20を接続する構成とする。複数の出力機器20を作業者81-83の位置にそれぞれ配置する。画像処理装置10は、例えば、定期的に巡回する形で、或いは作業者側のイベント(例えば作業完了を示す信号)に応じて、それぞれの作業者81-83の作業状況を確認して作業指示を出す。
【0038】
具体的には、この場合、作業対象物検出部12にワークW21-W23の作業空間内での配置位置情報(或いは作業者81、82、83それぞれの作業場の配置位置情報)と、撮像装置30の作業空間内での配置位置情報とを記憶させておく。作業者81-83の作業状況を循環して確認する動作を想定する。はじめに、作業対象物検出部12は、ワークW21の配置位置情報と、撮像装置30の配置位置情報とに基づいて撮像装置30をパン及びチルトさせて作業者81の作業対象であるワークW21を広角で撮影し、ワークW21の画像内での位置を検出する。そして、作業状況検出部13は作業者81によるワークW21に対する作業状況を確認する。そして、作業指示作成部14は、ワークW21の作業状況を、予め記憶しておいたワークW21の作業内容情報と対比することで、作業者81に対する作業指示を作成し作業者81の位置の出力機器20に出力する。作業者82、83に関しても同様の動作で順に作業指示の作成及び出力が行われる。
【0039】
ここでは、作業者81-83を定期的に循環する形式で作業状況を確認する動作例を説明したが、例えば、各作業者が自動締結機を用いている場合に自動締結機からネジ締め動作完了を示す信号を画像処理装置10に送信する構成とすることで、作業者81-83側からのネジ締め完了を示す信号の到来に応じて作業状況を確認して次の作業指示を出す構成とすることができる。以上の構成によれば、従来構成であれば作業者三人に対して固定カメラが3台必要であったような状況に対しても、撮像装置30一台で三人の作業者に対する作業指示を出すことができる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態によれば、作業対象物を厳密に位置決めできなかったり、作業対象物に個体差が有ったり、作業対象物の外観が固定されないような状況においても作業状態の確認及びそれに基づく作業指示の作成を確実に行うことができる。
【0041】
以上、典型的な実施形態を用いて本発明を説明したが、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなしに、上述の各実施形態に変更及び種々の他の変更、省略、追加を行うことができるのを理解できるであろう。
【0042】
上述の実施形態では作業確認の内容としてワークのボルトの締結状態を確認する例を記載したが、作業確認の内容としては、プリント基板の部品の実装状態の確認、産業用ロボットについての組立状況の確認、バリ取り作業におけるバリ取り状態の確認、研磨作業における作業状態の確認など、画像解析により作業状態を確認し得る様々な作業が含まれ得る。
【0043】
図2に示した画像処理装置10の機能ブロックは、画像処理装置10のCPUが、記憶装置に格納された各種ソフトウェアを実行することで実現されても良く、或いは、ASIC(Application Specific Integrated IC)等のハードウェアを主体とした構成により実現されても良い。
【0044】
上述した実施形態における作業指示作成処理等の各種の処理を実行するプログラムは、コンピュータに読み取り可能な各種記録媒体(例えば、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ、磁気記録媒体、CD-ROM、DVD-ROM等の光ディスク)に記録することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 作業指示作成システム
10 画像処理装置
11 画像取得部
12 作業対象物検出部
13 作業状況検出部
14 作業指示作成部
20 出力機器
26 作業台
30 撮像装置