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特許7436639顆粒の製造のための水蒸気分解されたバイオマスとリグニンとの混合物
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  • 特許-顆粒の製造のための水蒸気分解されたバイオマスとリグニンとの混合物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】顆粒の製造のための水蒸気分解されたバイオマスとリグニンとの混合物
(51)【国際特許分類】
   C10L 5/44 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
C10L5/44
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022512482
(86)(22)【出願日】2020-04-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(86)【国際出願番号】 FR2020050731
(87)【国際公開番号】W WO2020225506
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-02-10
(31)【優先権主張番号】1904684
(32)【優先日】2019-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】521480477
【氏名又は名称】ユーロペエンヌ ドゥ ビオマス
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】マラン,ジャン-パプティストゥ
(72)【発明者】
【氏名】アバ,トマ
(72)【発明者】
【氏名】カンテロ-マルケス,アドゥリアナ
(72)【発明者】
【氏名】マーテル,フレデリック
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/054913(WO,A1)
【文献】特開2015-091996(JP,A)
【文献】国際公開第2014/210252(WO,A1)
【文献】特表2012-512270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 5/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペレット化燃料製品を製造するためバイオマスを活用する方法であって
中間粉末製品を製造するためのバイオマス水蒸気分解のステップを含み、
前記方法は、以下を含むことを特徴とする、方法:
-水蒸気分解由来の前記中間粉末製品を第1の部分と第2の部分の2つに分離するステップ、
-一方で化学化合物または生化学化合物を、他方で少なくとも50重量%のリグニンを有する材料を製造するための、水蒸気分解由来の前記中間粉末製品の前記第1の部分の第1の化学的処理または生化学的処理、
-前記中間粉末製品の前記第2の部分と前記第1の化学的処理または生化学的処理により得られた少なくとも50重量%のリグニンを有する前記材料とを混合することにより混合物を得る第2の処理であって、前記材料の2~30重量%が、前記中間粉末製品の前記第2の部分と混合される、前記第2の処理、
-前記混合物をペレット化するためのペレット化ステップ。
【請求項2】
前記ペレット化燃料製品は、初期のバイオマスの発熱量の10%より大きい発熱量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
なくとも50重量%のリグニンを含有する前記材料が、前記バイオマスに含まれるリグニンのレベルより大きい含有量を有する固体であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、特に、高い発熱量を有する「黒色ペレット」の燃料の製造のための、リグノセルロースのバイオマスの活用の分野に関する。
【0002】
〔技術分野〕
リグノセルロースのバイオマス(木材、農業廃棄物、農業および産業的農業の副産物)の、エネルギー密度が高く、輸送可能で、容易に貯蔵可能な化合物への変換は、静的エネルギー産業分野(バイオ燃料オイルに対して、家庭において、決まった時点で使用されるバイオ燃料)の開発および強化を可能にし、環境負荷を軽減する(CO化石排出、肥料または植物衛生製品を含まないバイオマスを用いる)。
【0003】
黒色ペレットは、湿度による劣化に耐性を示す円柱であり、長さが1~3cmであり、炭素と類似の貯蔵およびハンドリングを可能とする良好な機械抵抗を有する。黒色ペレットの燃焼は、灰をほとんど生成せず、18~20ジュール/グラム(乾燥材料のグラム)に近い低発熱量(LCV)を有する。
【0004】
黒色ペレットは、熱処理後に急激な減圧に供されたリグノセルロースのバイオマスから製造される。急激な減圧は、ペレットまたはコンパクトを製造するために成形するときに材料に耐水性を付与することを可能にする。実際に、最初の材料は、水蒸気に曝露されてより細かい粒子を放出する。これにより、材料が、凝集または成形する段階で著しい結合力を示す。
【0005】
〔先行技術〕
欧州特許EP2373767B1は、先行技術として公知であり、リグニン含有材料から黒色ペレットを製造するための不連続的な方法を記載している。
【0006】
この方法は、以下のステップを含む:
(a)相対湿度が0~20重量%であるリグニン含有材料を、反応器内に通すステップ;
(b)反応器内へ水蒸気を噴射することによって、リグニン含有材料を180~235℃に加熱するステップ
(c)材料を軟化して、リグニンを放出するために、到達温度で、1~12分間、材料を反応器に保持するステップ
(d)少なくとも1つのステップにおいて、反応器内の圧力を低減するステップ;および
(e)タブレットまたはコンパクトを形成するために、処理された材料を成形するステップ。
【0007】
リグニン含有材料は、リグノセルロース材料であり、長さが25mmのかんな屑形態の木材、竹材、バガス、わらまたは草本(grass)を含む材料である。反応器の最終減圧が、水蒸気爆発によって突然行われることで、材料の繊維が離解する。
【0008】
国際特許WO2019/054913A1は、木材からのタブレットまたはコンパクト燃料の製造を可能にするパルプを製造するための方法を開示している。当該方法は、ペレット化の前に、水蒸気を用いた高温高圧での樹皮の連続的な熱処理を含む。当該熱処理は、5~30バール、または好ましくは15~25バールの圧力で実施され得、150~240℃の温度で実施され得る。当該熱処理は、25分間未満、またはより好ましくは15分間未満に渡って実施され得る。
【0009】
米国特許US2015/361367A1もまた、バイオマスからペレットを製造するための方法を記載しており、当該バイオマスは、水蒸気分解ステップを含む濃縮サブシステム由来の非変換バイオマスと、ペレット化サブシステム由来の変換バイオマスとの両方から形成される。
【0010】
最後に、米国特許US2018/334630A1は、生バイオマスから人工土を製造するための方法に関する。当該方法は、水蒸気を用いた材料の濃縮ステップ、次いで水蒸気分解ステップを含む。
【0011】
〔先行技術の問題点〕
黒色ペレットを製造するための先行技術の解決手段は有望である。しかし、これらには制限があり、特に、ペレットの体積当たりのエネルギー供給量は、同じ体積または重量である場合、バー形態または白色ペレット形態のバイオマスの体積当たりのエネルギー供給量より大きいが、それでも炭素の体積当たりのエネルギー供給量より、30~40%小さい。
【0012】
さらに、異なる方法のステップ由来のバイオマス、または水蒸気分解ステップ後の処理されたバイオマス由来でないリグニンを混合するリグニン濃縮は、先行技術として公知である。
【0013】
〔本発明により提供される解決手段〕
これらの問題点を克服するために、本発明は、本発明のもっとも一般的な意義に従って、バイオマスを活用する方法に関し、当該方法は、ペレット化燃料製品を製造するための水蒸気分解ステップを含み、前記ペレット化ステップの前に、バイオマスの水蒸気分解由来の中間粉末製品と、高いリグニン含有量を有する粉末材料と、を混合するステップを含むことを特徴とする。
【0014】
有利には、バイオマスの活用方法は、中間粉末製品を製造するための、水蒸気分解のステップを含み、前記方法は、以下を含むことを特徴とする:
-一方で化学化合物または生化学化合物を、他方でリグニンを製造するための、水蒸気分解由来の前記中間製品の第1の化学的処理または生化学的処理
-前記中間製品と、第1の処理によって少なくとも一部が得られたリグニンと、を混合することによる、第2の処理
-第2の処理の最後に、混合物をペレット化するためのペレット化ステップ。
【0015】
よって、本発明は、ペレット化燃料製品を製造するための水蒸気分解ステップを含む、バイオマスを活用する方法に関し、当該方法は、前記ペレット化ステップの前に、バイオマスの水蒸気分解由来の中間粉末製品と、高いリグニン含有量を有する粉末材料と、を混合するステップを含み、かつ中間粉末製品を製造するための水蒸気分解ステップを含み、かつ以下を含むことを特徴とする:
-水蒸気分解されたバイオマスを製造するための、水蒸気分解ステップであって、前記水蒸気分解されたバイオマスの少なくとも50重量%が、前記水蒸気分解されたバイオマスの残留部の化学的処理または生化学的処理によって得られるリグニン画分と混合される。
-前記混合物をペレット化するためのペレット化ステップ。
【0016】
本発明の好ましい実施形態は、第1の処理の前に水蒸気分解由来のリグニンを使用する。
【0017】
この解決手段は、バイオマスに追加のエネルギー成分を加えることなく、黒色ペレットを濃縮するために、バイオマス中に元来存在する副産物、すなわちリグニンを利用する。リグニンは、バイオマスの質量の20%~30%を占め、初期のバイオマスよりも50%よりも高いまとまった発熱量、および多数の疎水性および結合特性を有する。
【0018】
本発明の意味において、「高いリグニン含有量を有する材料」とは、少なくとも50%のリグニンを含有する材料を意味する。
【0019】
当該方法は、有利には、前記ペレット化ステップの前に、水蒸気分解されたリグニン材料と、第2の処理由来の高いリグニン含有量を有する材料と、を混合するステップを含む。
【0020】
実施形態によれば、前記高いリグニン含有量を有する材料は、バイオマスに含まれるリグニンのレベルよりも多い含有量を有する固体の副産物である。この種の材料は、例えば、初期のバイオマスの発熱量よりも少なくとも10%大きい発熱量を有する。
【0021】
特定の実施形態によれば、前記高い含有量の材料は、製紙業における黒液の処理のリグニン副産物である。
【0022】
好ましくは、前記高いリグニン含有量を有する材料の2~30%は、追加量の水蒸気分解されたバイオマスと混合される。
【0023】
よって、本発明に係るペレット化燃料製品は、リグニンを豊富にすることによって増加した発熱量を有し、2種類の粉末製品間の結合力が、リグニンの構造を改変する水蒸気分解によって達成される。
【0024】
本発明はまた、水蒸気分解器と、ペレット化部と、水蒸気分解された製品の一部を変換してリグニンを製造するための変換部と、によって構成される、バイオマスの活用のための装置に関し、当該装置は、水蒸気分解された製品の一部および前記変換部により製造されたリグニンの少なくとも一部を、前記ペレット化部へと供給するための供給手段を含むことを特徴とする。
【0025】
〔本発明の非限定的な実施形態の詳細な説明〕
以下の本発明の非限定的な実施形態の詳細な説明を、添付の図面を参照しながら読むことで、本発明をより明確に理解できるであろう。
【0026】
図1図1は、本発明の概略図である。
【0027】
〔本発明の一般的概念〕
図1は、本発明を実施するための装置のフローダイアグラムである。
【0028】
装置は、リグニンを含有するバイオマスから、タブレットまたはコンパクト(「黒色ペレット」とも称される)を製造するための方法を実施する。当該方法は、以下のステップを含む:
(a)微粒子、おが屑、かんな屑、断片、セルロースのかんな屑、薄片、トリミング(trimming)、または小片の形態を達成するために、設備機器(10)において、バイオマス(1)を前処理して数cmの粒子を減らすステップ、および任意で部分的乾燥を実施するステップ。
(b)次いで、前処理されたバイオマスを、反応器(20)内に通し、反応器(20)内へ水蒸気(21)を噴射することで、バイオマスの粒子を180~235℃の温度に加熱するステップ。第1の供給チャンバ(22)は、バイオマスを反応チャンバ(20)へと運ぶ。反応チャンバ(20)は、連続スクリューを含むか、または重力の影響での通過を可能にし、到達温度で、1~12分間、加水分解された材料を反応器へと運び、水蒸気分解されたバイオマスが低圧力区間を通過した後にバルブ(24)を有する出口区間(23)によって取り出されるまで、材料を軟化してリグニンを放出する。
【0029】
任意で、排ガス(25)の一部は、さらなる利用のために回収される。
【0030】
前記反応器(20)の出口では、分離が行われ、水蒸気分解されたバイオマスの一部が、第2反応器(30)に導入され、付加価値を有する化合物、例えば高分子糖類(セルロースおよびヘミセルロース)またはグルコースもしくはキシロースなどの糖類、およびさらにはリグニン高含有副産物、を取り出すための処理が確実に行われる。
【0031】
前記リグニン高含有副産物は、ミキサー(40)において、水蒸気分解バイオマスと混合され、次いで、ペレット化プレス(50)において圧縮されて、リグニン高含有燃料ペレットに成形される。
【0032】
水蒸気分解処理の効果は、バイオマス繊維母材を破壊する効果であり、この効果により発酵性単糖類を容易に放出することができる。
【0033】
この効果は、ヘミセルロース画分の分離をもたらし、繊維構造中に大きな孔を形成することによって、セルロース画分の入手性を増大することができ、その結果として、加水分解反応が起こる。またその効果は、セルロースの結晶化度の減少を促進する。種々の研究は、熱化学処理が、セルロース画分の結晶化度指標を増加させる傾向にあり、その結果として基材の入手性が低減されることを示している。
【0034】
最後に、セルロース繊維の入手は、セルロース画分を取り囲む母材である、リグニンの存在によって大幅に制限される。前記リグニンの排除は、加水分解操作を実施するために重要である。
【0035】
本装置はまた、水蒸気分解された材料においてリグニンを豊富にするために、離れた製造場所由来のリグニンを、ミキサー(40)に導入すること可能にする。
【0036】
本目的は、初期のバイオマスの5000kWh/トンであるのに対して、少なくとも5300kWh/トンの発熱量を有するペレット化燃料を製造することである。
【0037】
水蒸気分解は、固体残留物から、低エネルギーの揮発性酸化分子を取り出すことによって、前記ペレット化燃料の発熱量を増加させる。水蒸気分解によって、前記ペレット化燃料の発熱量が算術的に増加し、経済的条件として許容可能な5200~5400kWh/トンに達する。約2重量%~30重量%のレベルで、第2の反応の副産物由来の7500kWh/トンの発熱量を有するリグニンを追加することで、ペレットの質を向上させることができる。
【0038】
〔黒液のリグニン副産物の追加〕
有利な変形例によれば、水蒸気分解されたバイオマスに混合されるリグニンは、製紙業で製造される黒液の処理の副産物から回収され、液体リグニン相を形成する。
【0039】
従来、製紙業で使用される黒液からリグニンを回収するための3つの方法が使用されている。1つ目の方法は、チャールストン(South Carolina)に位置するホストクラフト紙工場の近くで1940年代に実施された方法であって、粉末状のリグニンを製造することを可能にするが塩含有量が高いという問題点を有する。塩は、炉内の石炭殻の濃度が高くなるという問題を生じさせる。さらに、高い石炭殻の含有量は、リグニンを含む環境保護化学の利用の特性にマイナスの影響を与え得る。それにもかかわらず、水蒸気分解の結果に伴うこの2~5%のリグニンの混合物は、重大な問題点を有することなく、発熱量を豊富にすることを可能とする。
【0040】
2つ目の方法は、1990年代から開発され、プリマス(North Carolina)のホストパルプ工場で使用されている。この2つ目の方法は、燃料として使用することができる低い塩含有量を有するリグニンを製造する。3つ目の方法は、過去10年間に渡って開発され、アルバータのヒントンの製紙用パルプ工場における製造装置に端を発する。
【0041】
3つの技術は、強酸として硫酸を使用する。硫酸は、ブラインフロー(brine flow)形態の著しいレベルの硫酸ナトリウムを製造する。ナトリウムを回収するために、電荷へ硫黄を加えることによって、硫酸ナトリウムは、製紙回収システムに組み込まれなければならない。製紙に硫黄を加えないために、リグニンを取り出す工程が必要である。
【0042】
リグニンの画分は、パルプおよび製紙工場の回収ボイラーにおいて最大生産高に到達する。黒液からリグニンの画分を排除(最大30%)することで、パルプおよび製紙工場が、同量のリグニン画分の製造を増加させることを可能にし、前記リグニン画分は、回収されミキサー(40)に注入され、水蒸気分解されたバイオマスの発熱量を改善する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1図1は、本発明の概略図である。
図1