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特許7436642水添石油樹脂及びそれを含むゴム組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】水添石油樹脂及びそれを含むゴム組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 240/00 20060101AFI20240214BHJP
   C08F 8/04 20060101ALI20240214BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20240214BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20240214BHJP
   C08L 57/02 20060101ALI20240214BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240214BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
C08F240/00
C08F8/04
C08L9/00
C08L7/00
C08L57/02
B60C1/00 A
C08L21/00
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022519209
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-30
(86)【国際出願番号】 KR2020018566
(87)【国際公開番号】W WO2021125837
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-03-25
(31)【優先権主張番号】10-2019-0168439
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】イ,サン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ミン シク
(72)【発明者】
【氏名】パク,ス ヨン
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/207925(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103319660(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106268725(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107778389(CN,A)
【文献】特表平05-504592(JP,A)
【文献】特開平08-208763(JP,A)
【文献】特開平11-130820(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0038404(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C
C08F
C08K
C08L
B60C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状ペンタジエン成分に由来する反復単位(A)、及びC留分に由来する反復単位(B)を含む水添石油樹脂であり、
下記数式1を満足する、水添石油樹脂の製造方法であって、
(S1)環状ペンタジエン成分とC留分とを混合して熱重合し、石油樹脂を製造する段階と、
(S2)前記石油樹脂を水素化触媒によって水添反応を行い、水添石油樹脂を製造する段階とを含む、水添石油樹脂の製造方法であって、
前記反復単位(A)が54ないし68重量%で、前記反復単位(B)が32ないし46重量%であり、
前記(S1)段階は、触媒を用いずに、277℃ないし288℃の温度で行われ、
前記(S2)段階は、50ないし150barの圧力下で、150℃ないし300℃の温度で遂行される
水添石油樹脂の製造方法:
<数式1>

前記数式1にて、
前記xは、軟化点(℃)であり、
前記yは、芳香族水素含量(モル%)であり、
前記zは、臭素価であり、
a=25,600、b=625、c=2,500である。
【請求項2】
前記環状ペンタジエン成分は、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン及びジメチルシクロペンタジエンからなる群のうちから選択される1種以上を含む、請求項1に記載の水添石油樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記C留分は、大気圧下において、100℃ないし300℃で沸騰する不飽和芳香族C,C及びC10留分からなる群のうちから選択される1種以上を含む、請求項1に記載の水添石油樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記C留分は、スチレン、ビニルトルエン、インデン、α-メチルスチレン及びベンゼン/トルエン/キシレンからなる群のうちから選択される1種以上を含む、請求項1に記載の水添石油樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記水添石油樹脂は、下記数式2を満足する、請求項1に記載の水添石油樹脂の製造方法:
<数式2>

前記数式2で、
前記xは、軟化点(℃)であり、
前記yは、芳香族水素含量(モル%)である。
【請求項6】
前記水添石油樹脂は、下記数式1-1を満足する、請求項5に記載の水添石油樹脂の製造方法:
<数式1-1>

前記数式1-1にて、
前記xは、軟化点(℃)であり、
前記yは、芳香族水素含量(モル%)であり、
前記zは、臭素価であり、
a=25,600、b=625、c=2,500である。
【請求項7】
前記水添石油樹脂の軟化点は、100℃ないし150℃である、請求項1に記載の水添石油樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記水添石油樹脂は、樹脂内水素の総モル数を基準に、6.0ないし14.0モル%の芳香族水素を含む、請求項1に記載の水添石油樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記水添石油樹脂は、臭素価が1ないし50である、請求項1に記載の水添石油樹脂の製造方法。
【請求項10】
前記C留分は、スチレン、ビニルトルエン、及びインデンを含む、請求項4に記載の水添石油樹脂の製造方法。
【請求項11】
前記水添石油樹脂は、重量平均分子量(Mw)が600ないし1,000g/molであり、
混合メチルシクロヘキサン・アニリンポイント(MMAP)は、35ないし50℃である、請求項1に記載の水添石油樹脂の製造方法。
【請求項12】
前記(S1)段階は、溶媒を用いた溶液重合で行われる、請求項1に記載の水添石油樹脂の製造方法。
【請求項13】
前記溶媒は、トルエン、塩化メチレン、ヘキサン、キシレン、卜リクロロベンゼン、アルキルベンゼン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ガンマ-ブチロラクトン、フルフラール、アセトン、及びそれらの混合溶媒からなる群のうちから選択された1種以上である、請求項12に記載の水添石油樹脂の製造方法。
【請求項14】
前記(S1)段階は、0.5ないし4時間遂行される、請求項12に記載の水添石油樹脂の製造方法。
【請求項15】
前記(S2)段階は、70ないし100barの圧力下で、200℃ないし300℃の温度で遂行される、請求項12に記載の水添石油樹脂の製造方法。
【請求項16】
前記水素化触媒は、ニッケル、パラジウム、コバルト、白金及びロジウムの触媒からなる群のうちから選択された1種以上である、請求項12に記載の水添石油樹脂の製造方法。
【請求項17】
請求項1ないし11のうちのいずれか1項に記載の水添石油樹脂の製造方法を含むゴム組成物の製造方法。
【請求項18】
請求項1ないし11のうちのいずれか1項に記載の水添石油樹脂の製造方法を含み、水添石油樹脂及び原料ゴムを含むタイヤトレッド用ゴム組成物の製造方法。
【請求項19】
前記タイヤトレッド用ゴム組成物は、補強剤、シランカップリング剤、加硫剤及び加硫促進剤からなる群のうちから選択される1種以上をさらに含む、請求項18に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物の製造方法。
【請求項20】
前記水添石油樹脂は、前記原料ゴム100重量部に対し、1ないし20重量部で含む、請求項18に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水添石油樹脂、及びそれを含むゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤは、車両の荷重を支持し、路面から生じる衝撃を緩和すると共に、自動車エンジンの動力、制動力などを路面に伝達し、自動車の運動を維持する役割を行う。車両用タイヤが満足させなければならない要求特性は、さまざまであるが、耐久性、耐磨耗性、回転抵抗、燃費、操縦安定性、乗り心地、制動、振動、騷音などを挙げることができる。
【0003】
最近、車両が高級化され、安全に対する要求事項が高まることにより、多様な路面及び気候において、最適の性能を維持することができる高性能タイヤの開発が要求されている。そのような要求に符合するように、タイヤエネルギー消費効率等級制が導入された。
【0004】
タイヤエネルギー消費効率表示は、燃費(効率)と安全との2種の性能を等級化させて表示するが、タイヤの回転抵抗が低いほど燃費性能にすぐれ、濡れた路面の制動力が高いほど、安全性にすぐれると評価されている。
【0005】
燃費効率は、回転抵抗(RR:rolling resistance)を基準にして測定するのであり、タイヤのような丸い物体が、平面において、一定速度で直線に運動する間に生じる抵抗を意味する。
【0006】
また、濡れた路面制動力(wet grip)は、ブレーキング性能を意味し、安全性に係わるタイヤ性能であり、グリップ(grip)力にすぐれるということは、タイヤと路面との付着力が高く、コーナリング時や停車時、制動性能が良好であるということを意味する。最近、車両に対する評価のうち、車両の制動距離が主要性能評価項目として注目されており、車両利用者も、車両の事故に係わる情報にしばしば接することにより、安全に対する認識が高まり、車両の制動性能に多くの関心を示している。
【0007】
すでに言及したように、グリップ力は、タイヤ表面をして、路面に良好に密着させる技術であり、タイヤの弾性は、可能である限り優秀であることが有利である。しかしながら、回転抵抗と共に考慮する場合、回転抵抗は、路面に対する密着力が低いほど有利であり、タイヤの回転抵抗とグリップ力は、互いに相反する特性を有する。
【0008】
すなわち、回転抵抗が低いタイヤは、燃費効率性においては有利であるが、道路が濡れているときに道路との密着性が弱いのである。そこで、最近、タイヤ開発は、回転抵抗を低めたり、グリップ力を高めたりする一次元的な方式から脱し、その両者を同時に調節する方式で進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】大韓民国登録特許第10-0227566号(1999.08.04.)
【文献】大韓民国登録特許第10-1572106号(2015.11.20.)
【文献】大韓民国公開特許第2016-0002044号(2016.01.07.)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明が解決しようとする技術的課題は、グリップ力を向上させると共に、回転抵抗の低下を最小化させ、燃費効率性及び制動安定性を備えたタイヤ石油樹脂、及びそれを利用して製造されたタイヤトレッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面は、環状ペンタジエン成分に由来する反復単位(A)、及びC留分に由来する反復単位(B)を含む水添石油樹脂であり、下記数式1を満足する水添石油樹脂に係わるものである。
【0012】
<数式1>
【0013】
前記数式1で、
前述のxは、軟化点(℃)であり、
前述のyは、芳香族水素含量(モル%)であり、
前述のzは、臭素価(bromine value)であり、
前述のa=25,600、前述のb=625、前述のc=2,500である。
【0014】
本発明の他の側面は、前記水添石油樹脂を含むゴム組成物に係わるものである。
【0015】
本発明のさらに他の側面は、前記水添石油樹脂を含むタイヤトレッド用ゴム組成物に係わるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明による水添石油樹脂は、それを含むゴムの粘弾性特性を向上させるだけでなく、ゴムとの相溶性にすぐれ、ゴムの全般的な物性を改善させることができる。
【0017】
それにより、前記水添石油樹脂を含むゴム組成物から製造されたゴム成形品、例えば、タイヤは、グリップ力(wet/dry)が向上され、該グリップ力向上による回転抵抗の上昇幅を低くし、タイヤとして要求されるグリップ力と、回転抵抗との2つの物性を同時に満足させることにより、低燃費高性能タイヤを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下において、本発明のさまざまな側面、及び多様な具現例につき、さらに具体的に説明する。
【0019】
本明細書、及び特許請求の範囲に使用された用語や単語は、一般的であったり、辞書的であったりする意味に限定されて解釈されるものではなく、発明者は、その自身の発明を、最善とする方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に立脚し、本発明の技術的思想に符合する意味と概念とに解釈されなければならない。
【0020】
本発明で使用された用語は、単に、特定実施例についての説明に使用されたものであり、本発明を限定する意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本発明において、「含む」または「有する」というような用語は、明細書上に記載された特徴、数、段階、動作、構成要素、部品、またはそれらの組み合わせが存在するということを指定するものであり、1またはそれ以上の他の特徴、数、段階、動作、構成要素、部品、またはそれらの組み合わせの存在または付加の可能性を事前に排除するものではないと理解されなければならない。
【0021】
本発明で使用された用語「グリップ力」は、ウェット(wet)グリップ力及びドライ(dry)グリップ力のいずれも含む。ここで、ウェットグリップ力は、雪や雨水によって濡れている路面状態におけるグリップ性能を言い、ドライグリップ力は、一般路面状態におけるグリップ性能を言う。グリップ力にすぐれるということは、タイヤと路面との付着力が強く、コーナリング時や静置時の制動性にすぐれるということを意味する。
【0022】
本発明で使用された用語「転がり抵抗」は、タイヤにかかる荷重に対する回転抵抗の比を意味し、本発明において、転がり抵抗特性にすぐれるということは、自動車走行時、タイヤ自体、またはタイヤと路面との間におけるエネルギー損失が少ないか、あるいは転がり抵抗の上昇幅が小さいということを意味する。
【0023】
本発明で使用された用語「芳香族水素(aromatic hydrogen)」は、芳香族環に直接連結されている水素原子を意味し、H-核磁気共鳴(H-NMR:H-nuclear magnetic resonance)によって測定することができ、樹脂の芳香族性(aromaticity)を判断することができる。
【0024】
タイヤを構成するゴムは、回転しながら路面と摩擦することになり、弾性により、変形と回復とを周期的に反復することになる。その際、ゴムの粘性により、変形時のエネルギーが完全に回復せず、一部は、熱エネルギーとして消耗されるのであり、その際に消耗された熱エネルギーをヒステリシスロス(hysterisis loss)と言い、ロス(loss)が大きいことを、ヒステリシス(hysterisis)が高いと表現する。すでに言及されたように、グリップ力にすぐれるというのは、タイヤと路面との密着力が強く、コーナリング時や制動時、制動性能にすぐれるというのである。しかしながら、それは、ゴム組成物のヒステリシスが高く、外部から受けた変形エネルギーを吸収し、熱エネルギーとして多く消耗させるということであり、熱エネルギーとして消耗するほど、駆動力への転換率は、低下してしまい、転がり抵抗が大きくなってしまう。
【0025】
従って、タイヤは、走行中、熱エネルギー損失が最小化され、すぐれた燃費を有し、発熱が抑制されるように、転がり抵抗性が低くなければならず、乾燥路面に比べ、湿潤路面において、自動車の速度が増大するにつれて、すべり抵抗も大幅に小さくなるために、制動性と運転安定性とのために、グリップ力が高くなければならないというように、動的性質に影響を与える粘弾性特性にすぐれなければならない。しかしながら、グリップ力と転がり抵抗は、互いに相反するものであり、グリップ力が高くなれば、転がり抵抗も高くなり、燃費が増大するという問題がある。すなわち、グリップ力と転がり抵抗とのいずれも同時に調節することは、タイヤ性能向上のための課題である。
【0026】
そこで、本発明は、低い回転抵抗、及び高いグリップ力を同時に有するすぐれた水添石油樹脂を提供する。
【0027】
具体的には、本発明の一側面は、環状ペンタジエン成分に由来する反復単位(A)、及びC留分に由来する反復単位(B)を含む水添石油樹脂であり、下記数式1を満足する水添石油樹脂を提供する。
【0028】
<数式1>
【0029】
前記数式1で、前述のxは、軟化点(℃)であり、前述のyは、芳香族水素含量(モル%)であり、前述のzは、臭素価(bromine value)であり、上記にてa=25,600、b=625、c=2,500である。
【0030】
前記水添石油樹脂は、下記化学式1に示されているように、2種類の反復単位が、共重合により、共重合体に製造された後、水添反応を経て製造されたものでありうる:
【0031】
【化1】
【0032】
前記化学式1で、Aは、環状ペンタジエン成分に由来する反復単位(A)であり、
BはC留分に由来する反復単位(B)であり、
m及びnは、それぞれ反復単位のモルの比率であり、m+n=100である。
【0033】
ここで、該共重合体の形態は、便宜上、前述のように表現されているが、特別に限定されるものではなく、ランダム共重合体(random copolymer)、交互共重合体(alternative copolymer)、ブロック共重合体(block copolymer)、グラフト共重合体(graft copolymer)及びスターブロック共重合体(starblock copolymer)のように、多様な形態が可能であり、望ましくは、ランダム共重合体でありうる。
【0034】
また、前記共重合体は、前述の反復単位以外に、追加の反復単位をさらに含んでもよい。
【0035】
以下、それぞれの反復単位について詳細に説明する。
【0036】
前記環状ペンタジエン成分は、ナフサクラッキングから得られる脂肪族環状単量体であり、五角形の環構造の基本骨格に、重合可能な官能基のエチレン性不飽和基を2つ以上含み、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、及びジメチルシクロペンタジエンからなる群のうちから選択される1種以上を含んでもよい。
【0037】
前記C留分は、炭素原子が8個以上である炭化水素の混合物を意味し、大気圧下において、約100℃ないし300℃で沸騰する不飽和の芳香族C,C及びC10の留分からなる群のうちから選択される1種以上を含む。前記C留分は、前述の環状ペンタジエンと共に共重合される。
【0038】
前記C留分は、スチレン(styrene)、ビニルトルエン(vinyl toluene)、インデン(indene)、α-メチルスチレン(α-methyl styrene)及びベンゼン/トルエン/キシレン(BTX:benzene/toluene/xylene)などを含むのでありうる。ここで、該ベンゼン/トルエン/キシレン(BTX)は、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン及びp-キシレンの混合物である。一例として、前記C留分は、C留分の全体の重量を基準にして、スチレン10ないし20重量%、ビニルトルエン10ないし20重量%、インデン10ないし20重量%、α-メチルスチレン1ないし7重量%及びBTX 40ないし60重量%を含んでもよい。望ましくは、前記C留分は、C留分の全体の重量を基準にして、スチレン10ないし30重量%、インデン10ないし20重量%、α-メチルスチレン1ないし7重量%及びBTX 50ないし80重量%を含む混合留分でありうる。
【0039】
前記水添石油樹脂が、前記反復単位A及び前記反復単位Bを含むと共に、軟化点、芳香族水素含量、臭素価の物性が、前記数式1を満足する場合、ゴム組成物への導入時、最終的に得られるゴムの粘弾性特性を適切に調節し、濡れた路面と一般路面とに対するグリップ力の均衡を維持しながら、全体的な向上効果と共に、転がり抵抗の増大を最小化させることができ、制動性能と燃費性能とを同時に改善させることができることを確認した。
【0040】
さらに具体的には、前記水添石油樹脂が、前記数式1を満足する場合、製造されるゴム組成物を、動的機械分析法を利用して11Hzで測定した損失係数において、グリップ力、特に、濡れた路面制動力(wet grip)と係わる損失係数であるtanδ(0℃)がすぐれた値を有し、転がり抵抗と係わる損失係数であるtanδ(70℃)の増大は、最小化されるということを確認した。一方、水添石油樹脂が、数式1の範囲を外れる場合、数式1の範囲を境界に、tanδ(0℃)値、すなわち、濡れた路面制動力が急激に低下したのであり、転がり抵抗と係わるtanδ(70℃)値は、前記数式1の範囲に属する石油樹脂と類似した値を有した。
【0041】
また、前記数式1を満足する場合、数式1による結果値が増大することにより、tanδ(0℃)も増大するという比例の傾向を示したが、前記数式1の範囲を外れる場合、数式1による結果値が増大することにより、tanδ(0℃)値が低下するという反比例の傾向を示した。
【0042】
望ましい具現例によれば、前記水添石油樹脂は、前記数式1を満足すると共に、下記数式2を満足することができる。
【0043】
<数式2>
【0044】
前記数式2で、前述のxは軟化点(℃)であり、前述のyは芳香族水素含量(モル%)である。
【0045】
前記数式2をさらに満足する水添石油樹脂の場合、製造されるゴム組成物の濡れた路面制動力と係わる損失係数であるtanδ(0℃)が、転がり抵抗と係わる損失係数であるtanδ(70℃)値との対比で、110%以上の値を有することを確認することができた。
【0046】
最も望ましい具現例によれば、前記水添石油樹脂は、前記数式1及び2を満足すると共に、下記数式1-1をさらに満足することができる。
【0047】
<数式1-1>
【0048】
前記数式1-1で、前述のxは、軟化点(℃)であり、前述のyは、芳香族水素含量(モル%)であり、前述のzは、臭素価であり、前述のa=25,600、前述のb=625、前述のc=2,500である。
【0049】
前記数式1-1をさらに満足する水添石油樹脂は、前述の前記数式1及び数式2を満足する水添石油樹脂の特徴を保有すると共に、制動力、特に、濡れた路面制動力と係わる損失係数の値が最もすぐれている。
【0050】
前記軟化点は、熱によって変形されて軟化を起こす温度を意味する。前記数式1と別個に、前記軟化点は、望ましくは、100℃ないし150℃、より望ましくは、110℃ないし120℃でありうる。前記軟化点が前記範囲未満である場合、石油樹脂の保管時、石油樹脂自体が融着するという問題点が生じ、それと反対に、前記範囲を超える場合には、粘弾性特性が低下されるという問題点が生じてしまう。
【0051】
前記芳香族水素の比率は、H-NMR(nuclear magnetic resonance)測定によって得られるピークの分析を通じて確認することができるのであり、樹脂内に含まれた水素の総モル数を基準にする。
【0052】
H-NMR分析は、化合物内の水素原子がどの原子と結合をしているか、さらには、どの作用基に含まれているか、空間的配列は、どうであるかということについて知り得る分析方法である。そのような方法は、化合物の同定及び確認のために使用する方法であり、混合物の定量分析、及び分子構造の推定だけではなく、結合状態変化測定に利用することができる。
【0053】
H-NMRスペクトルにおいて、分子中に同じ関係にあるプロトン(H)は1個のピークで示されるのであり、近くの他の核と互いに影響があれば、分裂して多重線で示される。ここで、該ピークは、存在するプロトンの種類により、ケミカルシフトの位置(すなわち、周波数の間隔:ppm)が異なり、その強度も、異なるように示される。すなわち、ケミカルシフトデータを通じて、分子内にいかなる種類のプロトンが存在するかについての、強度(integral)を通じて、各プロトンがいかなる比率で存在するかについての、カップリングを通じて、どのプロトンが互いに隣接するかについての、情報を抽出することができる。
【0054】
本発明で提示する水添石油樹脂は、前記反復単位(A)及び前記反復単位(B)を含み、ここで、環状ペンタジエン成分由来の脂肪族環構造と、C留分に由来する芳香族環構造とが同時に存在する。その結果、C留分に由来する反復単位(B)に該当する芳香族環構造に直接結合されている水素原子、すなわち、芳香族水素に該当するピークを確認し、石油樹脂を特定することができる。
【0055】
本発明の水添石油樹脂のH-NMRスペクトルを、0.0ないし9.0ppmまで測定するとしたとき、本発明で提示する水添石油樹脂に、C留分に由来する反復単位(B)が導入されることを確認するためには、芳香族水素に該当する6.5ないし8.0ppmの範囲におけるピークの分析が非常に重要である。一般的に、該ピーク分析は、ピーク面積をパラメータにする場合と、ピーク幅をパラメータにする場合とに分けられる。すなわち、ピーク面積及びピーク幅と係わるパラメータを解釈することにより、定量分析及び定性分析が可能であり、本発明で提示する水添石油樹脂を特定することができる。
【0056】
本発明の水添石油樹脂は、芳香族水素に該当する範囲のピーク面積のパラメータにも限定される。具体的には、芳香族水素と係わるピークは、6.5ないし8.0ppmの範囲で示されるので、H-NMR測定後に得られる当該範囲のピーク面積を測定し、全体のピーク面積に対する当該範囲のピーク面積の比率を計算することにより、石油樹脂内の芳香族水素の含量を推定することができる。ここで、全体のピーク面積は、石油樹脂に含まれた水素の総モル数を意味する。
【0057】
望ましくは、前記水添石油樹脂は、樹脂内水素の総モル数を基準に、6.0ないし14.0モル%、より望ましくは、8.0ないし14.0モル%、最も望ましくは、8.0ないし12.0モル%含んでもよい。前記芳香族水素の含量が、前記6.0ないし14.0モル%の範囲未満である場合、ゴム組成物との十分な相溶性が確保されず、グリップ力及び転がり抵抗の向上効果を得ることができないのであり、それと反対に、前記範囲を超える場合、増大する分子量により、相溶性が劣化され、グリップ力が低下してしまうという問題があり得る。
【0058】
臭素価は、試料100g中の不飽和成分に添加される臭素のg数を意味し、臭素価が高いほど、試料中に不飽和成分が多いということを意味する。臭素価は、試料を四塩化炭素に溶解し、酢酸を加え、そこに臭素化カリウム・臭素酸カリウムの標準混合溶液を一滴ずつ落とし、遊離する臭素からの添加反応を起こさせ、十分に反応させた後、ヨウ化カリウム溶液を加え、過剰の臭素をヨウ素で置換し、そのヨウ素を、標準チオ硫酸ナトリウム溶液で逆滴定して求めることができる。
【0059】
望ましくは、前記臭素価は、1ないし50、より望ましくは、1ないし20、最も望ましくは、1ないし5でありうる。もし臭素価が1未満である場合、配合に必要な最小限の不飽和基がなく、グリップ向上効果に問題がありうるのであり、臭素価が50超過の場合、ゴム組成物の配合の架橋を妨げて、転がり抵抗物性に悪影響を与えうる。
【0060】
前述したところの反復単位を含む本発明による水添石油樹脂は、タイヤ製造のためのゴム組成物に適用するとき、転がり抵抗、制動力、耐磨耗性のようなタイヤ性能特性向上を確保するために、各反復単位の含量の限定が要求されうる。そのような含量範囲は、石油樹脂自体の基本物性を維持するが、前記C留分に由来する芳香族単量体の導入を通じて、得ようとする効果、すなわち、ゴムの粘性・弾性特性の向上を極大化させるための範囲である。もし前記C留分に由来する反復単位の含量が、本発明で提示する範囲を外れる場合、樹脂内の芳香族水素の含量を始めとする分子量、重合度が異なるものとなり、前述の効果を十分に確保することができない。
【0061】
具体的には、前記水添石油樹脂は、反復単位の全体100重量%を基準に、前記環状ペンタジエン成分に由来する反復単位(A)を50重量%超過で含んでもよく、さらに望ましくは、52ないし70重量%、最も望ましくは、55ないし65重量%含んでもよい。もし前記反復単位(A)の含量が50重量%範囲未満である場合、相対的に、反復単位(B)の含量が増加することになり、軟化点が低くなることにより、ゴム組成物に導入するとき、ゴムの粘性・弾性物性を低下させるだけではなく、相溶性が大きく低下する。それと反対に、前記反復単位(A)の含量が70重量%範囲を超えれば、相対的に、反復単位(B)の含量が低減し、前述したところのような目的とした効果を確保することができないので、前記範囲内において適切に使用する。
【0062】
前記水添石油樹脂は、重量平均分子量が600ないし1,000g/mol、望ましくは、750ないし1,000g/molでありうるのであり、MMAP(mixed methylcyclohexane-aniline point)は、35℃ないし50℃、望ましくは、35℃ないし40℃でありうる。前記分子量と前記MMAPは、ゴム組成物に導入するとき、相溶性に直接の影響を与えるパラメータであり、グリップ力と転がり抵抗とに影響を及ぼし、前記範囲を有する場合、最適の効果を確保することができる。
【0063】
本発明による水添石油樹脂は、前述したところの環状ペンタジエン成分とC留分との共重合を通じて製造することができる。ここで、該共重合は、各単量体内に存在する二重結合間の付加重合反応によって進められる。
【0064】
本発明の一具現例による水添石油樹脂は、
(S1)環状ペンタジエン成分とC留分とを混合し、熱重合して石油樹脂を製造する段階、及び(S2)前記石油樹脂を、水素化触媒によって水添反応を行い、水添石油樹脂を製造する段階を含んで製造する。
【0065】
以下、各段階別に詳細に説明する。
【0066】
(S1)熱重合反応段階
まず、環状ペンタジエン成分とC留分とを混合して熱重合し、石油樹脂を製造する。
【0067】
その際、使用可能な環状ペンタジエン成分とC留分は、前述したところによる。
【0068】
特に、本発明の石油樹脂は、環状ペンタジエン成分とC留分との重合を、触媒重合ではなく、熱重合を通じて行う。
【0069】
前記環状ペンタジエン成分と前記C留分とに、一定レベル以上の熱を加えることになれば、それら自体がラジカルを形成し、開始反応が起こり、持続的な単量体間の重合反応を通じて、石油樹脂を製造する。そのような熱重合は、開始剤を使用しないので、開始剤使用によるコスト上昇及び石油樹脂の純度の問題を解消することができる。
【0070】
前記熱重合時、前記C留分は、環状ペンタジエン成分100重量部に対し、10ないし90重量部、望ましくは、20ないし80重量部で使用する。それは、最終的に得られる石油樹脂の物性と係わるものであって、前記範囲未満であるならば、C留分を過度に少なく使用して、目的とする効果を確保することができないのであり、それと反対に、前記範囲を超える場合、環状ペンタジエン成分の含量が相対的に少なくなり、最終製造された石油樹脂の軟化点が低下するので、物性が低下しうる。
【0071】
また、前記熱重合は、本発明で特別に限定されるものではなく、バルク重合の方法及び溶液重合の方法が使用されうる。望ましくは、溶液重合が使用されうる。
【0072】
前記溶液重合のために、溶媒を使用し、溶液重合でもって本段階を遂行する場合には、環状ペンタジエン成分を溶媒に溶解させ、環状ペンタジエン成分を含む溶液を製造し、得られた環状ペンタジエン成分を含む溶液に、C留分を添加した後、熱重合を行う。
【0073】
そのとき、該溶媒は、前記提示された環状ペンタジエン成分を十分に溶解させることができるものであるならば、いずれも可能であり、本発明で限定されるものではない。一例として、トルエン、塩化メチレン、ヘキサン、キシレン、卜リクロロベンゼン、アルキルベンゼン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ガンマ-ブチロラクトン、フルフラール、アセトン、及びそれらの混合溶媒からなる群のうちから選択された1種以上が可能である。
【0074】
前記溶媒の含量は、環状ペンタジエン成分を十分に溶解させることができるレベルであるならば、可能であり、一例として、環状ペンタジエン成分1モルに対し、2ないし10モルの範囲で使用する。
【0075】
本発明における熱重合は、環状ペンタジエン成分とC留分との開始反応及び重合反応が十分に起きりうる温度で行い、前記環状ペンタジエン成分と前記C留分との種類により、その温度が変更可能である。
【0076】
望ましくは、250℃ないし300℃で行い、さらに望ましくは、270℃ないし290℃で行い、最も望ましくは、277℃ないし288℃で行うが、その反応時間は、0.5ないし4時間、望ましくは、1ないし3時間で行う。
【0077】
前記温度は、開始反応及び重合反応と直接に関連性があり、前記範囲未満の温度においては、開始が起こらず、それと反対に、前記範囲超過の温度においては、原料である環状ペンタジエン成分またはC留分の分解やゲル形成が発生し、重合速度の制御が容易ではない。
【0078】
また、前記反応時間は、収率と係わっており、前記時間未満であるならば、収率が低くなる心配があり、それと反対に、長期間反応を行っても、収率の大きい上昇がなく、非経済的であるので、前記範囲で適切に使用する。
【0079】
特に、本発明は、環状ペンタジエン成分とC留分とを熱重合することにより、従来の石油樹脂の製造方法である陽イオン触媒法において必須工程であった、触媒除去の工程を必要とせず、特に、収率を、触媒重合との対比で、5%以上向上させることができることから望ましい。
【0080】
前記熱重合の後に、得られた石油樹脂の濃縮工程を遂行する。
【0081】
前記濃縮工程は、石油樹脂と、未反応物、及び副生成物であるオリゴマーとを分離するための工程であり、高温で遂行し、必要な場合、高圧下で遂行する。
【0082】
前記濃縮工程は、石油樹脂の収率及び軟化点と直接の関連性があり、温度が高いほど、収率が低下し、軟化点は、上昇する傾向を示す。しかしながら、温度が過度に低い場合、未反応物及び副生成物の除去が困難であるので、石油樹脂の純度が大きく低下してしまう。従って、収率が低下し、かつ軟化点が上昇しない条件において、脱気工程を遂行しなければならない。
【0083】
望ましくは、本発明においては、220℃ないし260℃、望ましくは、230℃ないし250℃の温度範囲で、1分間ないし10分間遂行する。もし濃縮工程を、前述の温度範囲未満の温度で遂行することになれば、前述したように、石油樹脂の純度が低くなり、それと反対に、前記温度以上で遂行すれば、収率が低下し、軟化点が上昇し、最終的に得られる石油樹脂の物性が低下してしまうので、前記範囲内において、適切に使用する。
【0084】
(S2)水添反応段階
次に、前述のところで製造された石油樹脂に、水素化触媒を添加し、水添反応を遂行し、水添石油樹脂を製造する。
【0085】
前記水添反応は、環状ペンタジエン成分内に存在する二重結合に水素が添加され、単一結合を形成する反応であり、そのような水添反応を介し、前述の段階から製造された石油樹脂を構成する反復単位(A)内の二重結合が、いずれもまたは一部が消えた水添石油樹脂を製造する。
【0086】
本発明において、水添反応は、水素化触媒の添加によって進められ、高度の発熱過程を伴うために、温度制御要件がややこしく、高圧力を維持せねばならない。望ましくは、前記水添反応は、50ないし150barの圧力下にて150℃ないし300℃の温度で、0.5ないし4時間遂行し、さらに望ましくは、70ないし100の圧力下にて200℃ないし300℃の温度で、1ないし3時間遂行することができる。
【0087】
もしその温度及びその圧力が、前記範囲未満であるならば、十分に水添反応が遂行されず、それと反対に、前記範囲を超えれば、苛酷な反応条件により、分子構造が破壊されてしまうので、前記範囲内において、適切に調節する。
【0088】
その際に使用する水素化触媒は、本発明で特別に限定されるものではなく、公知された水素化触媒であるならば、いずれも使用可能である。例えば、前記水素化触媒は、ニッケル、パラジウム、コバルト、白金及びロジウムの触媒からなる群のうちから選択された1種以上が可能であり、望ましくは、パラジウム触媒を使用する。
【0089】
前記水素化触媒は、石油樹脂単量体1モルに対し、0.001ないし0.5モル、望ましくは、0.05ないし0.2モルのモル比で使用する。もし石油樹脂単量体1モルに対し、0.001モル未満で使用する場合、反応性が不足し、0.5モルを超える場合には、多量の触媒の使用により、経済的ではないという短所がある。
【0090】
本発明の他の側面は、前記水添石油樹脂を含むゴム組成物を提供する。
【0091】
前記水添石油樹脂は、原料ゴム100重量部に対し、1ないし20重量部、望ましくは、5ないし15重量部、さらに望ましくは、7ないし12重量部で含まれうる。もしその含量が前記範囲未満であるならば、転がり抵抗性とグリップ力との同時向上の効果を期待することができず、それと反対に、前記範囲を超える場合、ゴム組成物の粘度を低下させ、工程条件を再設計しなければならない煩わしさと共に、加工性が低下し、最終製造される製品の引っ張り強度及び硬度といった機械的物性の低下を引き起こしてしまうので、前記範囲内において、適切に使用する。
【0092】
本発明によるゴム組成物は、前記水添石油樹脂以外の組成として、原料ゴム、補強剤、シランカップリング剤、加硫剤及び加硫促進剤からなる群のうちから選択される1種以上をさらに含んでもよい。
【0093】
前記原料ゴムは、オレフイン性二重結合(炭素・炭素二重結合)を有するものであるならば、特別に制限はなく、天然ゴム、合成ゴム、またはそれらを混合して使用することができる。一例として、前記原料ゴムとしては、天然ゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、シリコンゴム、イソプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、イソプレン・ブタジエンゴム、スチレン・イソプレン・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ハロゲン化ブチルゴム、ハロゲン化イソプレンゴム、ハロゲン化イソブチレン共重合体、クロロプレンゴム、ブチルゴム及びハロゲン化イソブチレン-p-メチルスチレンゴムからなるグループから選択される1種以上であることが望ましい。
【0094】
前記補強剤としては、カーボンブラックとシリカとを使用することができる。
【0095】
前記カーボンブラックは、耐磨耗性の向上、回転抵抗特性の向上、紫外線による亀裂や、亀裂の防止(紫外線劣化防止)などの効果を得る。本発明において使用可能なカーボンブラックは、特別に限定されるものではなく、当該技術分野で一般的に使用されるものであるならば、いずれも使用が可能である。一例として、前記カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャネルブラック、グラファイトといったカーボンブラックを使用することができる。また、該カーボンブラックの粒子径、細孔容積、比表面積といった物理的特性についても、特別に限定されるものではなく、従来、ゴム工業で使用されている各種のカーボンブラック、例えば、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF(いずれも、米国のASTM規格D-1765-82aで分類されたカーボンブラックの略称)などを適切に使用することができる。
【0096】
前記カーボンブラックは、原料ゴム100重量部に対し、40ないし80重量部、望ましくは、40ないし65重量部で含まれることが望ましい。前記カーボンブラックは、補強性充填剤として、ゴム配合に必須な要素であり、もしその含量が、前記範囲未満である場合には、補強効果が低下してしまい、それと反対に、前記範囲を超える場合には、分散の困難さが伴う。
【0097】
また、前記シリカは、ゴム用補強剤として使用されているものを、特別に制限なしに使用することができ、例えば、乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、合成ケイ酸塩系ホワイトカーボン、コロイド性シリカ、沈降シリカなどを挙げることができる。シリカの比表面積は、特別に制限はないが、一般的に、40ないし600m/gの範囲、望ましくは、70ないし300m/gのものを使用することができ、一次粒子径は、10ないし1,000nmであるものを使用することができる。それらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0098】
前記シリカは、原料ゴム100重量部に対し、40ないし80重量部、望ましくは、40ないし65重量部で含まれることが望ましい。もしその含量が前記範囲未満であるならば、回転抵抗が高くて燃費効率が低下し、それと反対に、前記範囲を超えれば、グリップ力の低下を引き起こしてしまうので、前記範囲内において、適切に使用する。
【0099】
前記補強剤として、前記カーボンブラック及びシリカ以外に、クレイや滑石などの鉱物の粉末類、炭酸マグネシウムや炭酸カルシウムなどの炭酸塩類、水酸化アルミニウムなどのアルミナ水和物などを使用することができる。
【0100】
前記シランカップリング剤は、シリカを配合させるために使用する。
【0101】
使用可能なシランカップリング剤としては、ビニル卜リクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシ-エトキシ)シラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィドなどがあり、それらは、単独または2種以上混合使用し、望ましくは、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィドを使用することができる。
【0102】
前記シランカップリング剤の使用含量は、シリカの含量によって異なり、望ましくは、原料ゴム100重量部に対し、5ないし20重量部で使用することができる。もしその含量が前記範囲未満であるならば、シリカの均一な混合が困難であり、ゴムの物性が低下してしまう心配があり、それと反対に、前記範囲を超えて使用する場合、ゴムのゲル化が生じてしまうので、前記範囲内において、適切に使用することができる。
【0103】
前記架橋剤は、ゴムの架橋に通常使用されるものを、特別な制限なしに使用することができ、ゴム成分及びイソブチレン系重合体によって適切に選択することができる。
【0104】
前記架橋剤としては、例えば、硫黄、モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィドなどの硫黄架橋剤;シクロヘキサノンペルオキシド、メチルアセトアセテートペルオキシド、3級ブチルペルオキシイソブチレート、3級ブチルペルオキシベンゾエート、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ3級ブチルペルオキシド、1,3-ビス(3級ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンなどの有機過酸化物架橋剤などを挙げることができる。
【0105】
前記架橋剤は、原料ゴム100重量部に対し、0.1ないし5重量部で使用し、もしその含量が前記範囲未満であるならば、架橋が不十分なことから所望する物性(例:耐磨耗性)のタイヤ製造が困難であり、それと反対に、前記範囲を超える場合、過度の架橋により、やはりタイヤ物性(例:弾性)が低下するので、前記範囲内において、適切に使用する。
【0106】
前記架橋剤と共に、本発明によるタイヤトレッド用ゴム組成物は、加硫促進剤や加硫助剤を含む。該加硫促進剤や該加硫助剤としては、特別に限定されるものではなく、ゴム組成物が含むゴム成分、イソブチレン系重合体、架橋剤によって適切に選択して使用することができる。また、「加硫」とは、硫黄原子を少なくとも1個介在させる架橋を示す。
【0107】
前記加硫促進剤としては、例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィドなどのチウラム系促進剤;2-メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィドなどのチアゾール系促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドなどのスルフェンアミド系促進剤;n-ブチルアルデヒド・アニリン縮合品、ブチルアルデヒド・モノブチルアミン縮合品などのアルデヒド・アミン係促進剤;ヘキサメチレンテトラミンなどのアルデヒド・アンモニア系促進剤;チオカルバニリドなどのチオ尿素系促進剤などを挙げることができる。それら加硫促進剤を配合する場合には、1種類を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0108】
前記加硫促進剤の含量は、原料ゴム100重量部に対し、0.1ないし10重量部で使用することが、物性向上面で望ましい。
【0109】
前記加硫助剤としては、酸化亜鉛(亜鉛華)、酸化マグネシウムなどの金属酸化物;水酸化カリウムなどの金属水酸化物;炭酸亜鉛、塩基性炭酸亜鉛などの金属炭酸塩;ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪酸;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪族金属塩;n-ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミンなどのアミン類;エチレンジメタクリレート、ジアリルフタレート、N,N-m-フェニレンジマレイミド、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどを挙げることができる。それら加硫助剤を配合する場合には、1種類を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0110】
前記加硫助剤の含量は、原料ゴム100重量部に対し、0.1ないし10重量部で使用することが、物性向上面で望ましい。
【0111】
さらには、本発明によるゴム組成物は、またゴム工業の分野で使用される各種添加剤、例えば、老化防止剤、加硫遅延剤、解膠(かいこう)剤、プロセス油、可塑剤などの1種または2種以上を必要に応じて含んでいてもよい。それら添加剤の配合量は、原料ゴム100重量部に対し、0.1ないし10重量部であることが望ましい。
【0112】
同時に、本発明は、前記ゴム組成物から製造されたゴム成型品を提供する。
【0113】
本発明の一具現例によるゴム成型品は、タイヤでもあり、望ましくは、タイヤトレッドでもある。そのとき、前述のところの組成を含むゴム組成物は、公知の方法を経て、タイヤに製造される。
【0114】
一例として、本発明によるゴム組成物は、前述の各成分を、例えば、プラストミル(plastomill)、バンバリミキサ(Banbury mixer)、ロール、インターナルミキサなどの混錬機を利用して混錬することによって調製することができる。具体的には、前述の各成分において、架橋剤及び加硫促進剤以外の成分を混錬し、その後、得られた混錬物に架橋剤及び加硫促進剤を添加し、さらに混錬することが望ましい。
【0115】
前述の方法によって製造されたゴム組成物は、路面と接するトレッド部(及び、トレッド部を含むキャップ部)を構成する材料として使用することができる。その製造方法について述べれば、前記ゴム組成物を形成しなければならないタイヤの形状(具体的には、トレッドの形状)にしたがって押出加工し、タイヤ成形機上において、一般的な方法によって成形することにより、タイヤ用未架橋成形体を製造する。該タイヤ用未架橋成形体を、例えば、加硫機中で加熱加圧することにより、タイヤトレッドを製造し、該タイヤトレッドと他の部品とを組み合わせることにより、目的とするタイヤを製造することができる。
【0116】
そのように製造されたタイヤは、タイヤとして有さなければならない機械的物性(硬度、引っ張り強度、モジュラス(modulus)など)、チップ切断耐性及び粘着性能にすぐれる。特に、グリップ性(ウェット/ドライ)が高く、自動車の走行安定性及びブレーキ制動性にすぐれ、転がり抵抗が低く、自動車の低燃費化を具現することができる。
【0117】
従って、本発明のゴム組成物は、低燃費タイヤ及び高性能タイヤのようなタイヤのトレッドを得るためのゴム組成物として適する。
【0118】
以下、実施例を介し、本発明についてさらに詳細に説明する。それら実施例は、単に、本発明について、さらに具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例によって制限されるものではないということは、本発明が属する技術分野で当業者において自明であろう。
【0119】
<実施例1ないし11:石油樹脂の製造>
<実施例1>
1Lオートクレーブに、ジシクロペンタジエン(DCPD、コーロンインダストリー(株)、純度80.21%)27wt%を、溶媒であるトルエン50wt%に溶解させた混合物を作り、そこに、C留分(スチレン20重量%、インデン18重量%、ビニルトルエン16重量%、アルファメチルスチレン5重量%)23wt%を添加し、反応器の締結後、反応温度を279℃に維持し、1時間熱重合反応させた後、反応を終結させた。
【0120】
反応完了後、得られた生成物を、1Lガラス4口ケトルに投入し、常温で真空とした。真空度は、10torrに維持し、真空となれば、撹拌すると共に、260℃まで昇温させた。260℃に至れば、濃縮時間を測り始め、10分間維持させた。濃縮が完了すれば、その状態で真空を解いて、内部の溶融された石油樹脂を得た。
【0121】
前記得られた石油樹脂に、水添溶媒として、トルエンを1.5倍で投入し、完全に溶解させ、1Lオートクレーブに投入した。
【0122】
そこに、パラジウム触媒0.2molを投入し、反応器締結後、水素圧力80bar及び温度275℃で、90分間、部分水添反応を行った。反応終結後、反応生成液を、10torrの真空状態にて260℃で10分間蒸溜させ、部分水添石油樹脂を製造した。
【0123】
<実施例2ないし14>
下記表1に記載されているように、ジシクロペンタジエン、C留分及びトルエンの含量を異ならせ、熱重合時の反応温度、水添時の反応温度をそれぞれ異ならせたことを除いては、前記実施例1と同一の方法により、部分水添石油樹脂を製造した。
【0124】
【表1】
【0125】
<比較例1ないし12:石油樹脂の製造>
下記表2に記載されているように、ジシクロペンタジエン、C留分及びトルエンの含量を異ならせ、熱重合の反応温度、水添時の反応温度をそれぞれ異ならせたことを除いては、前記実施例1と同一の方法によって部分水添石油樹脂を製造した。
【0126】
【表2】
【0127】
<実験例1:樹脂特性評価方法>
前記実施例及び前記比較例による石油樹脂の分子量、軟化点、芳香族水素の含量、MMAP及び臭素値を測定した。前記実施例1ないし14の物性測定結果は、下記表3に示し、前記比較例1ないし12の物性測定結果は、下記表4に示す。該物性評価方法は、次の通りである。
【0128】
(1)分子量
ゲル透過クロマトグラフィ(ヒューレットパッカード社製、モデルHP-1100)により、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及びZ平均分子量(Mz)を求めた。測定重合体は、4,000ppmの濃度になるように、テトラヒドロフランに溶解させ、GPCに100μLを注入した。GPCの移動相としては、テトラヒドロフランを使用して1.0mL/分の流速で流入させ、分析は30℃で行った。カラムとしては、アジレント社のPIgel(1,000+500+100Å)3個を直列に連結した。検出器としては、RI検出器(ヒューレットパッカード社製、HP-1047A)を利用し、30℃で測定した。
【0129】
(2)軟化点(℃)測定
軟化点は、環球式軟化点試験法(ring and ball softening method)(ASTM E 28)を利用して測定した。環状のフレームに樹脂を溶かして投入し、グリセリンが入れられたビーカに据え置いた後、樹脂が入れられた環を加熱し始めて温度を分当たり5℃で昇温させ、樹脂が溶けてボールが落ちるときの温度(軟化点)を測定した。
【0130】
(3)MMAP(mixed methylcyclohexane-aniline point(℃))測定
前記実施例及び前記比較例で製造した樹脂2gを試験管に入れた。ピペットを利用し、試験管にメチルシクロヘキサン溶液を入れて加熱して溶解させた。樹脂が溶けたことを確認してアニリン溶液を4g入れ、曇りがかかる時点の温度(cloud point)を測定した。
【0131】
(4)臭素価(bromine value、臭素g/100g)測定
前記実施例及び前記比較例で製造した樹脂0.5gを、シクロヘキサン40mlに溶解させた後、酢酸50mlを加え、臭素化カリウム・臭素酸カリウムの標準混合溶液で滴定して遊離する臭素で添加反応を起こした。十分に反応させた後、ヨウ化カリウム溶液5mlを加え、過剰の臭素をヨウ素で置換し、該ヨウ素を標準チオ硫酸ナトリウム溶液で逆滴定して測定した。
【0132】
すなわち、臭素価は、二重結合に反応する臭素の量を言い、樹脂の二重結合が多いほど、反応する臭素の量が増加し、臭素価が高くなる。
【0133】
(5)芳香族水素含量(モル%)分析
核磁気共鳴分光器機(Bruker社500 NMR、14.1telsa)を通じたH-NMRスペクトル結果から、前記実施例及び前記比較例で製造された水添石油樹脂内芳香族水素の含量を、下記式によって計算した。
【0134】
芳香族水素含量(モル%)=[H-NMRスペクトルにおける6.5ないし8.0ppmのピーク面積]/[H-NMRスペクトル全体面積]*100
【0135】
【表3】
【0136】
【表4】
【0137】
前記表3及び前記表4に示されているように、前記実施例1ないし14によって製造された水添石油樹脂の場合、下記数式1を満足した。
【0138】
<数式1>
【0139】
前記数式1で、前述のxは、軟化点(℃)であり、前述のyは、芳香族水素含量(モル%)であり、前述のzは、臭素価であり、前述のa=25,600、前述のb=625、前述のc=2,500である。
【0140】
また、前記実施例1ないし14によって製造された水添石油樹脂の場合、軟化点は、100℃ないし150℃であり、芳香族水素含量は、8.0ないし14.0モル%であり、臭素価は、1ないし20を有することを確認することができ、それに加え、前記実施例1ないし14によって製造された水添石油樹脂は、重量平均分子量が600ないし1,000g/molであり、MMAPが35℃ないし50℃を有することを確認した。
【0141】
一方、比較例1ないし12によって製造された水添石油樹脂の場合、前記数式1を満足することができなかった。前記比較例1ないし9は、数式1による結果値が、0.610以下であり、比較例11ないし12は、数式1による結果値が、1.004以上であった。
【0142】
一方、前記実施例7ないし12及び14の場合、その他実施例1ないし6、13、及び比較例1ないし12とは異なり、前記数式1及び下記数式2をいずれも満足した。
【0143】
<数式2>
【0144】
前記数式2で、前述のxは、軟化点(℃)であり、前述のyは、芳香族水素含量(モル%)である。
【0145】
また、前記実施例10ないし12、及び14の場合、その他実施例1ないし9、13、及び比較例1ないし12とは異なり、前記数式1と前記数式2を満足すると共に、下記数式1-1を満足した。
【0146】
<数式1-1>
【0147】
前記数式1-1で、前述のxは、軟化点(℃)であり、前述のyは、芳香族水素含量(モル%)であり、前述のzは、臭素価であり、前述のa=25,600、前述のb=625、前述のc=2,500である。
【0148】
<実験例2:タイヤ物性測定>
<タイヤトレッド製造>
スチレン・ブタジエンゴム(製品名:SSBR-3323、錦湖石油化学)とブタジエンゴム(製品名:BR-01、錦湖石油化学)とを、11:2の比率で混用したゴム100重量部に対し、分散剤(製品名:40MS、STRUKTOL)2重量部、カーボンブラック25重量部、シリカ25重量部、シランカップリング剤5重量部、ステアリン酸2重量部、酸化亜鉛3重量部、硫黄2重量部、n-シクロヘキシルベンゾチアジル-2-スルフィド(TBBS、Miwon chem.)1.5重量部、DPG 1重量部、及び実施例及び比較例の水添石油樹脂10重量部を添加し、バンバリミキサにてコンパウンディング作業を行った。
【0149】
次に、オープンミルを利用し、コンパウンドシートを製造した。160℃で20分間加硫し、試験用ゴム試片を製造した。
【0150】
<タイヤ物性測定>
前記実施例及び前記比較例の水添石油樹脂を含むゴム試片につき、動的機械分析法(dynamic mechanical analysis、モデル:TA-DMA Q800)を利用し、11Hzでグリップ力(W/G:wet grip)と転がり抵抗(R/R:rolling resistance)と係わる損失係数(Tanδ)を測定し、その結果を、下記表5及び下記表6に示した。ここで、tanδ(0℃)の数値が高いほど、グリップ力にすぐれるということを意味し、tanδ(70℃)の数値が低いほど、転がり抵抗特性にすぐれるということを意味する。
【0151】
前記比較例1のtanδ(0℃)値である0.5855、及びtanδ(70℃)値である0.06905をそれぞれ100に設定し、それを基準に、前記実施例1ないし12、及び比較例2ないし12の値を計算した。例えば、実施例1のtanδ(0℃)値は、0.5855X101%=0.5914であり、tanδ(70℃)値は0.06905X96%=0.06629である。
【0152】
【表5】
【0153】
【表6】
【0154】
一般的に、グリップ力は、ブレーキ制動性に関与し、動的粘弾性試験により、周波数10ないし100Hz、0℃、25℃の近辺で測定される損失係数(Tanδ)によって示され、当該損失係数が大きいほど、ブレーキ制動性は、良好になる。ドライグリップ力にすぐれるという意味は、ゴム組成物の動的粘弾性試験により、周波数10ないし100Hz、25℃近辺で測定される損失係数(tanδ)が大きいことを意味し、ウェットグリップ力にすぐれるという意味は、ゴム組成物の動的粘弾性試験により、周波数10ないし100Hz、0℃近辺で測定される損失係数(tanδ)が大きいことを意味する。
【0155】
転がり抵抗(R/R)は、ゴム組成物の動的粘弾性試験により、周波数10ないし100Hz、70℃近辺で測定される損失係数(tanδ)によって示され、当該損失係数が小さいほど、転がり抵抗特性は、良好になる。すなわち、転がり抵抗特性にすぐれるということの意味は、ゴム組成物の動的粘弾性試験により、周波数10ないし100Hz、70℃近辺で測定される損失係数(tanδ)が小さいことを意味する。
【0156】
ここで、tanδ(0℃)数値、tanδ(25℃)数値及びtanδ(70℃)数値は、同じ傾向で動く値である。望ましくは、軟化点が同一または類似したレベルで維持された状態において、転がり抵抗(R/R、tanδ(70℃))またはウェットグリップ力(tanδ(0℃))が向上しなければならない。理想的には、転がり抵抗は、低くなり、ウェットグリップ力は、高くなる方向が望ましい。しかしながら、転がり抵抗とウェットグリップ力は、互いに相補的な関係にあるので、2つの物性をいずれも向上させることは、容易ではない。それにより、実質的に、転がり抵抗は、維持されるか、あるいは最小限だけ低下されるとともに、ウェットグリップ力を高めるということが、最も理想的であると言うことができる。
【0157】
前記表5及び前記表6に示されているように、実施例1ないし14のグリップ力、特に、ウェットグリップ力と係わる損失係数であるtanδ(0℃)数値について述べれば、比較例との対比で、高い値を有し、本発明による水添石油樹脂を含む場合、ゴム組成物のグリップ力を向上させることができるということが分かる。特に、最も望ましい実施例に該当する実施例8ないし12は、110を超える非常にすぐれた値を有し、それを除いた残り実施例も、いずれも100を超えることを確認した。
【0158】
一方、転がり抵抗と係わる損失係数であるtanδ(70℃)の数値の場合、実施例1ないし14のゴム組成物の場合、グリップ力向上により、若干上昇したが、現在、産業界において、一般的で汎用的に使用されているゴムと類似したレベルであり、本発明の水添石油樹脂の使用によるグリップ力上昇による回転抵抗の増加幅を効果的に低くすることができることが分かった。
【0159】
一方、比較例1ないし12の場合、グリップ力と係わる損失係数であるtanδ(0℃)の数値のうち、ほとんどが100以下の値を有し、転がり抵抗と係わる損失係数であるtanδ(70℃)の数値は、実施例と類似しているか、あるいはさらに高い値を有することを確認することができた。
【0160】
一方、実施例1ないし14の場合、前記数式1の結果値が増大するにつれ、tanδ(0℃)の値が増大する比例傾向を示した。しかしながら、前記数式1の結果値が0.610以下である比較例1ないし10の場合、実施例の場合とは反対に、数式1による結果値が増大するにつれ、tanδ(0℃)の値が低減する反比例の傾向を示した。また、前記数式1の結果値が1.004以上である比較例11ないし12の場合も、数式1による結果値が増大するにつれ、tanδ(0℃)の値が低減する反比例の傾向を示した。また、数式1の範囲を境界に、tanδ(0℃)値が急激に低減することを確認することができた。
【0161】
一方、前記数式1及び2を満足する前記実施例7ないし12の場合、グリップ力と係わる損失係数であるtanδ(0℃)が、転がり抵抗と係わる損失係数であるtanδ(70℃)値対比で、110%以上の値を有することを確認することができた。
【0162】
また、前記数式1,1-1及び2をいずれも満足する実施例10ないし12の場合、tanδ(0℃)値がtanδ(70℃)値の114%以上である値を有するだけではなく、非常に高いtanδ(0℃)値を有し、非常にすぐれたグリップ力、及び低い転がり抵抗を示し、最も優秀であることを確認することができた。
【0163】
そのような結果から、本発明による水添石油樹脂を含むゴム組成物は、すぐれたグリップ力と転がり抵抗とを同時に満足させる効果を確保することが分かる。
【0164】
従って、本発明による水添石油樹脂は、それを含むゴムの粘性・弾性特性を向上させるだけではなく、ゴムとの相溶性にすぐれ、ゴムの全般的な物性を改善させることができる。それにより、前記水添石油樹脂を含むゴム組成物から製造されたゴム成型品、例えば、タイヤは、燃費性能、制動性能及び寿命性能を同時に満足させ、高性能タイヤとして製品競争力を高めることができる。
【0165】
前述の実施例及び比較例は、本発明について説明するための例示であり、本発明が、それらに限定されるものではない。本発明が属する技術分野で当業者であるならば、それらから、多様に変形し、本発明を実施することが可能であり、本発明の技術的保護範囲は、特許請求の範囲によって定められるものである。