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特許7436648半導体スイッチデバイス、その製造方法、およびソリッドステート移相器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】半導体スイッチデバイス、その製造方法、およびソリッドステート移相器
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/861 20060101AFI20240214BHJP
   H01L 29/868 20060101ALI20240214BHJP
   H01L 21/329 20060101ALI20240214BHJP
   H04B 7/0413 20170101ALI20240214BHJP
【FI】
H01L29/91 C
H01L29/91 A
H04B7/0413 300
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022524009
(86)(22)【出願日】2020-10-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-10
(86)【国際出願番号】 CN2020123374
(87)【国際公開番号】W WO2021078280
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】201911019107.X
(32)【優先日】2019-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503433420
【氏名又は名称】華為技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI TECHNOLOGIES CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Huawei Administration Building, Bantian, Longgang District, Shenzhen, Guangdong 518129, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133569
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 進
(72)【発明者】
【氏名】周 ▲遠▼涛
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ ▲鳴▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲鵬▼宇
【審査官】石塚 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-534622(JP,A)
【文献】特開昭61-091969(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103066072(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0208517(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109742161(CN,A)
【文献】特開2004-014658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/861
H01L 21/329
H04B 7/0413
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体スイッチデバイスであって、サンドイッチ構造に積層された、第1の半導体層と、真性層と、第2の半導体層とを含み、少なくとも2つの真性層があり、前記少なくとも2つの真性層は厚さが同じであり、かつ使用材料のドーピング密度係数が同じであり、
前記第2の半導体層は、前記真性層と1対1の対応関係にあり、前記第2の半導体層のそれぞれは、対応する真性層の前記第1の半導体層から遠い側に積層され、
前記第1の半導体層は、真性層のそれぞれと、第2の半導体層のそれぞれとともに1つのPINダイオードを形成し、2つの隣接するPINダイオードは第1の半導体層を共有しているが、対応する真性層は互いに電気的に絶縁され、対応する第2の半導体層は互いに電気的に絶縁されており、それにより2つの隣接するPINダイオードは電気的に絶縁され、
前記第1の半導体層はN+半導体層であり、前記第2の半導体層はP+半導体層である、または
前記第1の半導体層はP+半導体層であり、前記第2の半導体層はN+半導体層であ
前記第2の半導体層のそれぞれ、および対応する前記真性層の形状が、中心対称の形状である、
半導体スイッチデバイス。
【請求項2】
少なくとも2つのPINダイオードがあり、前記少なくとも2つのPINダイオードは、少なくとも1つの第1のPINダイオードと、少なくとも1つの第2のPINダイオードとを含む、請求項1に記載の半導体スイッチデバイス。
【請求項3】
前記第1のPINダイオードのそれぞれの第1の面対前記第2のPINダイオードのそれぞれの第2の面の面積比が1:Nであり、
Nは1以上の有理数であり、
前記第1の面は、前記第1のPINダイオードの第2の半導体層の、前記第1の半導体層から遠い方の面の、ドープされた粒子の有効面積であり、
前記第2の面は、前記第2のPINダイオードの第2の半導体層の、前記第1の半導体層から遠い方の面の、ドープされた粒子の有効面積である、
請求項に記載の半導体スイッチデバイス。
【請求項4】
前記半導体スイッチデバイスは、前記第1の半導体層に埋め込まれた第1の絶縁層をさらに備え、前記第1の絶縁層は、隣接するPINダイオードを電気的に絶縁する、請求項1からのいずれか一項に記載の半導体スイッチデバイス。
【請求項5】
第2の絶縁層をさらに含み、前記第2の絶縁層は前記第1の絶縁層に結合されて、任意のPINダイオードの真性層および第2の半導体層の側壁を覆う、請求項に記載の半導体スイッチデバイス。
【請求項6】
ソリッドステート移相器であって、請求項1からのいずれか一項に記載の、複数の分岐回路に配置された複数の半導体スイッチデバイスを含み、
各分岐回路は、少なくとも1つの半導体スイッチデバイスを含み、前記半導体スイッチデバイスは、前記複数の分岐回路でそれぞれ送信された無線周波数信号間に位相差を生成するために、接続されたり切断されたりする、
ソリッドステート移相器。
【請求項7】
大規模多入力多出力(Massive MIMO)アンテナアレイであって、請求項に記載の前記ソリッドステート移相器と、複数のアンテナユニットとを備え、前記ソリッドステート移相器は、前記複数のアンテナユニット間の位相関係を変更するように構成される、大規模多入力多出力(Massive MIMO)アンテナアレイ。
【請求項8】
通信デバイスであって、請求項に記載の前記大規模多入力多出力アンテナアレイと、無線周波数信号送受信機とを備え、前記大規模多入力多出力アンテナアレイは、前記無線周波数信号送受信機によって送信された無線周波数信号を受信するように構成される、または前記無線周波数信号送受信機に無線周波数信号を送信するように構成される、通信デバイス。
【請求項9】
半導体スイッチデバイス製造方法であって、
第1の半導体層および真性層を製造するステップであって、前記第1の半導体層および前記真性層が積層される、ステップと、
前記真性層の前記第1の半導体層から遠い方の面に、第2の半導体層を形成するステップと、
少なくとも2つの真性層と、各前記真性層に対応する第2の半導体層とを形成するために、前記第2の半導体層および前記真性層をエッチングするステップであって、前記少なくとも2つの真性層は厚さが同じであり、かつ使用材料のドーピング密度係数が同じであるステップと、を含み、
前記第1の半導体層は、真性層のそれぞれと、第2の半導体層のそれぞれとともに1つのPINダイオードを形成し、2つの隣接するPINダイオードは第1の半導体層を共有しているが、対応する真性層は互いに電気的に絶縁され、対応する第2の半導体層は互いに電気的に絶縁されており、それにより2つの隣接するPINダイオードが電気的に絶縁され、
前記第1の半導体層はN+半導体層であり、前記第2の半導体層はP+半導体層である、または
前記第1の半導体層はP+半導体層であり、前記第2の半導体層はN+半導体層であ
エッチングによって形成された前記真性層および前記第2の半導体層の形状が、中心対称の形状である、方法。
【請求項10】
2つの隣接するPINダイオードが電気的に絶縁されていることが、具体的には、
隣接するPINダイオード同士の隙間が第1の絶縁層で埋められることであって、前記第1の絶縁層は、隣接する真性層を電気的に絶縁し、かつ隣接する第2の半導体層を電気的に絶縁する、
請求項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記第1の半導体層は、第1の真性層のそれぞれと、第2の半導体層のそれぞれとともに1つのPINダイオードを形成し、このことは、
少なくとも2つのPINダイオードがあり、前記少なくとも2つのPINダイオードは、少なくとも1つの第1のPINダイオードと少なくとも1つの第2のPINダイオードとを含んでいる、
ことを特に含む、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記第1のPINダイオードのそれぞれの第1の面対前記第2のPINダイオードのそれぞれの第2の面の面積比が1:Nであり、
Nは1以上の有理数であり、
前記第1の面は、前記第1のPINダイオードの第2の半導体層の、前記第1の半導体層から遠い方の面の、ドープされた粒子の有効面積であり、
前記第2の面は、前記第2のPINダイオードの第2の半導体層の、前記第1の半導体層から遠い方の面の、ドープされた粒子の有効面積である、
請求項11に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
出願は、ダイオードの技術分野に関し、具体的には、半導体スイッチデバイス、その製造方法、およびソリッドステート移相器に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、業界で主流になっているPINダイオードデバイスの形態は個別デバイスであり、言い換えれば、各デバイスのパッケージが単一のPINダイを含んでいる。しかしながら、線形性を最適化するために個別デバイスを使用することにより、デバイスのコスト、サイズ、および素子の整合に多くの問題が生じている。加えて、個別ダイオード素子は、直列/並列接続でPINダイオードを使用するために、正確に整合するパラメータを有する必要がある。しかしながら、実際には、半導体加工がロットごとに、ウェハごとに、またウェハサイズ内でも変動するために、パラメータの包括的な誤差範囲が±20%と高く、不整合によって、回路の線形性向上の効率が大きく下がることにつながっている。
【0003】
ユーザの簡素な直列/並列接続を容易にするために、製造者は2つのPINダイオードのダイを1つのチップパッケージにパッケージングしており、共通陽極接続、共通陰極接続、直列接続などを含む複数の接続形式がある場合がある。共通陽極接続および共通陰極接続は、並列接続または反転直列接続をさらに実施し得る。2つの分離した個別PINダイオードが使用される従来技術と比較して、一体型のデバイスは実質的な改善がみられない。
【発明の概要】
【0004】
本出願は、半導体スイッチデバイスの性能を改善するために、半導体スイッチデバイス、その製造方法、およびソリッドステート移相器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様によれば、半導体スイッチデバイスが提供される。半導体スイッチデバイスは、サンドイッチ構造に積層された、第1の半導体層と、真性層と、第2の半導体層とを含む。少なくとも2つの真性層が存在する。少なくとも2つの真性層は厚さが同じであり、かつ使用材料のドーピング密度係数が同じである。第2の半導体層を配置する際、第2の半導体層は真性層と1対1の対応関係にあり、第2の半導体層のそれぞれは、対応する真性層の、第1の半導体層から遠い方の側面に積層される。第1の半導体層の極性と第2の半導体層の極性とは逆である。例えば、第1の半導体層がN+半導体層のときは、第2の半導体層はP+半導体層であり、あるいは第1の半導体層がP+半導体層のときは、第2の半導体層はN+半導体層である。本出願で提供する半導体スイッチデバイスは、少なくとも2つのPINダイオードを含むことに留意されたい。例えば、第1の半導体層は、第1の真性層のそれぞれと、第2の半導体層のそれぞれとともに、1つのPINダイオードを形成する。少なくとも2つの真性層があるときは、これに対応して2つのPINダイオードがあり、2つの隣接するPINダイオードは電気的に絶縁される。本出願で提供される半導体スイッチデバイスに基づけば、真性層のエピタキシャル成長の際、ならびに第1の半導体層および第2の半導体層の成長の際に加工差は発生せず、その結果、異なるPINダイオード間で自動的なパラメータ整合が実施され、2つのPINダイオード間で自動的なパラメータ整合を実施できることで線形性が向上する。加えて、半導体スイッチデバイス全体の構造が小型で、チップパッケージング面積が小さく、かつコストが低い。
【0006】
特定の実行可能な解決策では、第2の半導体のそれぞれ、および対応する真性層の形状は、中心対称の形状である。
【0007】
特定の実行可能な解決策では、第2の半導体層のそれぞれと、対応する真性層の形状とは同じであり、それぞれが円または正方形などの対称形であってもよい。
【0008】
特定の実行可能な解決策では、少なくとも2つのPINダイオードがあり、少なくとも2つのPINダイオードは、少なくとも1つの第1のPINダイオードと、少なくとも1つの第2のPINダイオードとを含み、その結果、半導体スイッチデバイス全体が小型の構造を有する。
【0009】
特定の実行可能な解決策では、それぞれの第1のPINダイオードの第1の面対それぞれの第2のPINダイオードの第2の面の面積比は1:Nであり、ここでNは1以上の有理数であり、例えば、1、2、3、または5などの正の有理数である。第1の面は、第1のPINダイオードの第2の半導体層の、第1の半導体層から遠い方の面の、ドープされた粒子の有効面積であり、第2の面は、第2のPINダイオードの第2の半導体層の、第1の半導体層から遠い方の面の、ドープされた粒子の有効面積である。比を指定した領域は、半導体スイッチデバイスが適用される回路の線形性が向上する。
【0010】
特定の実現可能な解決策では、半導体スイッチデバイスは、第1の半導体層に埋め込まれた第1の絶縁層をさらに備え、第1の絶縁層は、隣接するPINダイオードを電気的に絶縁する。隣接するPINダイオードは、第1の絶縁層で電気的に絶縁される。
【0011】
特定の実現可能な解決策では、第1の絶縁層に使用される材料は、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、その他の絶縁材料であってよい。半導体スイッチデバイスは、配置された絶縁層で保護される。
【0012】
特定の実現可能な解決策では、第2の絶縁層がさらに含まれ、第2の絶縁層は第1の絶縁層に結合され、任意のPINダイオードの真性層および第2の半導体層の側壁を覆って、半導体スイッチデバイスの安全性を高める。
【0013】
特定の実現可能な解決策では、第1の半導体層の、真性層から遠い側に背面金属層が配置され、背面金属層は、チタンニッケル金材料、チタンプラチナ金材料、チタン金材料、またはアルミニウム材料であってもよく、あるいは別の材料であってもよい。PINダイオードは、パッドを使用して外部に電気的に接続される。
【0014】
第2の態様によれば、本出願はソリッドステート移相器を提供する。ソリッドステート移相器は、前述した解決策のいずれか1つで説明され、かつ複数の分岐回路に配置された半導体スイッチデバイスを含み、各分岐回路は少なくとも1つの半導体スイッチデバイスを含み、半導体スイッチデバイスは、複数の分岐回路にそれぞれ送信される無線周波数信号間に位相差を生成するために、接続されたり切断されたりする。使用される半導体スイッチデバイスは、2つのPINダイオードの、中央が揃えられた幾何学的に対称な形状を使用して、2つのPINダイオード間で自動的なパラメータ整合を実施することによって線形性を向上させ、ソリッドステート移相器の効果を向上させる。
【0015】
第3の態様によれば、大規模多入力多出力(Massive MIMO)アンテナアレイが提供される。アンテナアレイは、前述したソリッドステート移相器と、複数のアンテナユニットとを備え、ソリッドステート移相器は、複数のアンテナユニット間の位相関係を変更するように構成される。使用されるソリッドステート移相器の半導体スイッチデバイスは、2つのPINダイオードの、中央が揃えられた幾何学的に対称な形状を使用して、2つのPINダイオード間で自動的なパラメータ整合を実施することによって線形性を向上させ、アンテナアレイの使用効果を向上させる。
【0016】
第4の態様によると、通信デバイスが提供される。通信デバイスは、大規模多入力多出力アンテナアレイと、無線周波数信号送受信機とを備える。大規模多入力多出力アンテナアレイは、無線周波数信号送受信機によって送信された無線周波数信号を受信するように構成される、または無線周波数信号送受信機に無線周波数信号を送信するように構成される。アンテナアレイを使用することによって、通信デバイスの通信効率が向上する。
【0017】
第5の態様によれば、半導体スイッチデバイス製造方法が提供される。製造方法は、第1の半導体層および真性層を製造するステップであって、第1の半導体層と真性層とが積層される、ステップと、
真性層の第1の半導体層から遠い方の面に、第2の半導体層を形成するステップと、
少なくとも2つの真性層と、各真性層に対応する第2の半導体層とを形成するために、第2の半導体層および真性層をエッチングするステップであって、少なくとも2つの真性層は厚さが同じであり、かつ使用材料のドーピング密度係数が同じであり、第1の半導体層は、第1の真性層のそれぞれと、第2の半導体層のそれぞれとともに1つのPINダイオードを形成し、2つの隣接するPINダイオードは電気的に絶縁され、
第1の半導体層がN+半導体層であり、第2の半導体層がP+半導体層である、または
第1の半導体層がP+半導体層であり、第2の半導体層がN+半導体層である、ステップと
を含む。
【0018】
本出願で提供される半導体スイッチデバイスに基づく前述の製造方法では、真性層のエピタキシャル成長の際、ならびに第1の半導体層および第2の半導体層の成長の際に加工差は発生せず、その結果、異なるPINダイオード間で自動的なパラメータ整合が実施され、2つのPINダイオード間で自動的なパラメータ整合を実施できることによって線形性が向上する。加えて、半導体スイッチデバイス全体の構造が小型で、チップパッケージング面積が小さく、かつコストが低い。
【0019】
特定の実現可能な解決策では、2つの隣接するPINダイオードが電気的に絶縁されていることは、具体的には、隣接するPINダイオード間の隙間が第1の絶縁層で埋められることであり、第1の絶縁層が、隣接する真性層を電気的に絶縁し、かつ隣接する第2の半導体層を絶縁する。隣接するPINダイオードは、配置された第1の絶縁層で電気的に絶縁される。
【0020】
特定の実現可能な解決策では、エッチングによって形成された真性層および第2の半導体層の形状は、中心対称の形状である。
【0021】
特定の実現可能な解決策では、第1の半導体層は、第1の真性層のそれぞれと、第2の半導体層のそれぞれとともに1つのPINダイオードを形成し、このことは、
少なくとも2つのPINダイオードがあり、少なくとも2つのPINダイオードは、少なくとも1つの第1のPINダイオードと少なくとも1つの第2のPINダイオードとを含んでいる、ことを特に含む。
【0022】
特定の実現可能な解決策では、製造方法は、第1のPINダイオードのそれぞれの第1の面対第2のPINダイオードのそれぞれの第2の面の面積比が1:Nであることをさらに含み、
Nは1以上の有理数であり、
第1の面は、第1のPINダイオードの第2の半導体層の、第1の半導体層から遠い方の面の、ドープされた粒子の有効面積であり、
第2の面は、第2のPINダイオードの第2の半導体層の、第1の半導体層から遠い方の面の、ドープされた粒子の有効面積である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1a】本出願の一実施形態による半導体スイッチデバイスの上面図である。
図1b図1aのA-Aでの断面図である。
図2a】順バイアス状態の、単一のPINダイオードの高調波シミュレーション回路を示す。
図2b】順バイアス状態の、本出願のこの実施形態における半導体スイッチデバイスの高調波シミュレーション回路を示す。
図3a】高調波バランス(Harmonic Balance)における、単一のPINダイオードのシミュレーション結果を示す。
図3b】第2高調波で順バイアス電流を流した単一のPINダイオードの変化傾向を示す。
図4a】高調波バランスにおける、本出願のこの実施形態における半導体スイッチデバイスの高調波シミュレーション結果を示す。
図4b】第2高調波で順バイアス電流を流した、本出願のこの実施形態における半導体スイッチデバイスの変化傾向を示す。
図5a】逆バイアス状態の、単一のPINダイオードの高調波シミュレーション回路を示す。
図5b】逆バイアス状態の、本出願のこの実施形態における半導体スイッチデバイスの高調波シミュレーション回路を示す。
図6a】高調波バランスにおける、単一のPINダイオードのシミュレーション結果を示す。
図6b】第2高調波で逆バイアス電圧をかけた単一のPINダイオードの変化傾向を示す。
図7a】高調波バランスにおける、本出願のこの実施形態における半導体スイッチデバイスの高調波シミュレーション結果を示す。
図7b】第2高調波で逆バイアス電圧をかけた、本出願のこの実施形態における半導体スイッチデバイスの変化傾向を示す。
図8】順バイアス電流不整合の場合の、本出願のこの実施形態における半導体スイッチデバイスの高調波シミュレーション回路を示す。
図9】第2高調波で逆バイアス電圧をかけた半導体スイッチデバイスの変化傾向を示す。
図10】順バイアス電流不整合の場合に、PIN接合部のサイズ比を使用して線形性を高めるための高調波シミュレーション回路を示す。
図11】順バイアス電流不整合Iratio=1.1の場合のPIN接合部のサイズ比による、第2高調波の変化傾向を示す。
図12a】本出願の一実施形態による半導体スイッチデバイス製造のフローチャートである。
図12b】本出願の一実施形態による半導体スイッチデバイス製造の別のフローチャートである。
図12c】本出願の一実施形態による半導体スイッチデバイス製造のさらに別のフローチャートである。
図12d】本出願の一実施形態による半導体スイッチデバイス製造のさらに別のフローチャートである。
図12e】本出願の一実施形態による半導体スイッチデバイス製造のさらに別のフローチャートである。
図12f】本出願の一実施形態による半導体スイッチデバイス製造のさらに別のフローチャートである。
図12g】本出願の一実施形態による半導体スイッチデバイス製造のさらに別のフローチャートである。
図13a】本出願の一実施形態による別の半導体スイッチデバイス製造のフローチャートである。
図13b】本出願の一実施形態による別の半導体スイッチデバイス製造の別のフローチャートである。
図13c】本出願の一実施形態による別の半導体スイッチデバイス製造のさらに別のフローチャートである。
図13d】本出願の一実施形態による別の半導体スイッチデバイス製造のさらに別のフローチャートである。
図13e】本出願の一実施形態による別の半導体スイッチデバイス製造のさらに別のフローチャートである。
図13f】本出願の一実施形態による別の半導体スイッチデバイス製造のさらに別のフローチャートである。
図14a】本出願の一実施形態による第3の半導体スイッチデバイス製造のフローチャートである。
図14b】本出願の一実施形態による第3の半導体スイッチデバイス製造の別のフローチャートである。
図14c】本出願の一実施形態による第3の半導体スイッチデバイス製造のさらに別のフローチャートである。
図14d】本出願の一実施形態による第3の半導体スイッチデバイス製造のさらに別のフローチャートである。
図14e】本出願の一実施形態による第3の半導体スイッチデバイス製造のさらに別のフローチャートである。
図14f】本出願の一実施形態による第3の半導体スイッチデバイス製造のさらに別のフローチャートである。
図14g】本出願の一実施形態による第3の半導体スイッチデバイス製造のさらに別のフローチャートである。
図15】本出願の一実施形態による別の半導体スイッチデバイスの上面図である。
図16】本出願の一実施形態による別の半導体スイッチデバイスの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本出願の目的、技術的解決策、および利点をより明確にするために、以下でさらに、添付図面を参照して本出願を詳細に記載する。
【0025】
本出願の実施形態で提供される半導体スイッチデバイスを理解しやすくするために、まず本出願の実施形態で提供される半導体スイッチデバイスの適用シナリオが以下で説明される。制御スイッチとしての半導体スイッチデバイスは、信号送受信用のソリッドステート移相器で使用される。
【0026】
図1aは、本出願の一実施形態による半導体スイッチデバイスの上面図であり、図1bは、図1aのA-Aでの断面図である。本出願のこの実施形態では、半導体スイッチデバイスは積層構造で配置されて、2つの電気的に絶縁されたPINダイオードが形成される。説明を簡単にするために、2つのPINダイオードは、それぞれ第1のPINダイオード100および第2のPINダイオード200と命名される。図1aおよび図1bを引き続き参照すると、第1のPINダイオード100および第2のPINダイオード200のそれぞれが、サンドイッチ構造に積層されている。第1のPINダイオード100は、積層された第1の半導体層10と、真性層と、第2の半導体層a102とを含む。説明を簡単にするために、第1のPINダイオード100の真性層は、第1の真性層103と命名される。第1の真性層103は、第1の半導体層10と第2の半導体層a102との間に配置されることが図1bからわかる。第1の半導体層10と第2の半導体層a102とは逆極性を有する。例えば、第1の半導体層10がP+半導体層で第2の半導体層a102がN+半導体層であり、あるいは第1の半導体層10がN+半導体層で第2の半導体層a102がP+半導体層である。
【0027】
図1bを引き続き参照すると、第2のPINダイオード200と第1のPINダイオード100とは並べて配置され、第2のPINダイオード200は、サンドイッチ構造に積層された第1の半導体層10と、真性層と、第2の半導体層b202とを含み、真性層は第1の半導体層10と第2の半導体層b202との間に配置される。説明を簡単にするために、第2のPINダイオード200の真性層は、第2の真性層203と命名される。本出願における半導体スイッチデバイスを形成する際は、第2の半導体層b202の極性は第2の半導体層a102の極性と同じであり、第1の半導体層10の極性とは逆である。例えば、第1の半導体層10がP+半導体層で第2の半導体層b202はN+半導体層であり、あるいは第1の半導体層10がN+半導体層のときは、第2の半導体層b202はP+半導体層である。第2のPINダイオード200と第1のPINダイオード100とは1つの第1の半導体層10を共有しているが、第1の真性層103は第2の真性層203から電気的に絶縁され、第2の半導体層a102は第2の半導体層b202から電気的に絶縁されていることが図1bからわかる。
【0028】
図1aおよび図1bを引き続き参照すると、第1の真性層103と第2の真性層203とは同じ層に配置され、かつ第1の半導体層10の同じ表面に配置され、第2の半導体層b202と第2の半導体層a102とは同じ層に配置される。第1の真性層103と第2の真性層203とは厚さが同じであり、かつ使用材料のドーピング密度係数が同じである。第1の真性層103および第2の真性層203を製造する際は、第1の真性層103および第2の真性層203に使用される材料はドーピング密度が同じであり、ドーピング密度は真性層の厚さによって変化する。
【0029】
図1aおよび図1bを引き続き参照すると、第1のPINダイオード100の第2の半導体層a102、および対応する第1の真性層103の形状は中心対称の円であり、かつ第2のPINダイオード200の第2の半導体層b202、および対応する第2の真性層203の形状もまた中心対称の円である。もちろん、図1aは単なる一例である。本出願のこの実施形態における、第1のPINダイオード100および第2のPINダイオード200の、第2の半導体層a102、第2の半導体層b202、第1の真性層103、および第2の真性層203は円に限定されず、あるいはそれぞれが正方形、正多角形その他の中心対称の形状などの、別の中心対称の形状であってもよく、第2の半導体層a102、および対応する第1のPINダイオード100の第1の真性層103の形状が中心対称の形状であれば、第2の半導体層a102、および第1の真性層103の形状およびサイズは同じであり、第2の半導体層b202、および対応する第2のPINダイオード200の第2の真性層203の形状およびサイズもまた中心対称の形状であり、第2の半導体層b202および第2の真性層203の形状およびサイズは同じである。図1aは、第2の半導体層a102および第2の半導体層b202が円である一例を示しているが、本出願のこの実施形態において、第2の半導体層a102の形状と第2の半導体層b202の形状とは、同じであることに限定されないことを理解されたい。例えば、第2の半導体層a102が円で、第2の半導体層b202が正方形である、あるいは第2の半導体層a102が正方形で、第2の半導体層b202が正五角形である。
【0030】
第1のPINダイオード100の第2の半導体層a102、および対応する第1の真性層103の形状が中心対称の形状であり、かつ第2のPINダイオード200の第2の半導体層b202、および対応する第2の真性層203の形状もまた中心対称の形状のとき、これに応答して形成される第1のPINダイオード100および第2のPINダイオード200の形状は中心対称の構造になる。
【0031】
第1の真性層103および第2の真性層203の具体的な配置の際は、第1の真性層103および第2の真性層203は、第1の半導体層10の同じ面に配置される。ウェハのロット間の差分によって生じる影響を除くために、2つの真性層は同じウェハからのものである。しかしながら、従来技術で使用されるウェハのパラメータ間の差分の理由は、ロット間の差分、および同ロットの異なるウェハ同士の間の差分を含む。従来の方法では、チップが同ロットの同じウェハからのものであることを保証できない。複雑かつ高価な高精度の材料制御によって、ベアダイが同じウェハから選択されたとしても、同じウェハの違う場所にあるベアダイ間の差分は克服できず、結果として回路の不整合および性能低下は避けられない。本出願では、並べて結合された第1のPINダイオード100と第2のPINダイオード200とは、同じウェハからのものである。したがって、ウェハロット間の差分、およびウェハ間の差分を少なくすることができる。
【0032】
PINダイオードを製造する際は、ウェハ平面上の位置によって半導体加工が変動するため、パラメータ間に差分が生じやすい。具体的な配置の際は、図1aに示す半導体スイッチデバイスの配置方向が基準方向として使用され、第1の真性層103、第2の真性層203、第1の半導体層10、第2の半導体層a102、および第2の半導体層b202の垂直軸線は同じ軸線である。半導体加工の不均一性によるパラメータ差分がウェハで生じると、第1のPINダイオード100と第2のPINダイオード200とが中央揃えされているために、第1のPINダイオード100の加工変動と第2のPINダイオード200の加工変動もまた同じになって生成されたパラメータ差分を打ち消し、その結果、第1のPINダイオード100と第2のPINダイオード200とのパラメータが一致して整合を自動的に実施することによって、第1のPINダイオード100と第2のPINダイオード200とを整合する際の問題が解決する。
【0033】
第1のPINダイオード100と第2のPINダイオード200との整合時に、異なる面積比が使用されてもよい。半導体スイッチデバイスの場合、面積比は第1の面対第2の面の面積比に対応する。第1の面は、第1のPINダイオード100の第2の半導体層a102の、第1の半導体層10から遠い方の面の、ドープされた粒子の有効面積である。第2の半導体層a102がN+半導体層のときは、ドープされた粒子はN+粒子であり、あるいは第2の半導体層a102がP+半導体層のときは、ドープされた粒子はP+粒子である。第2の面は、第2のPINダイオード200の第2の半導体層b202の、第1の半導体層10から遠い方の面の、ドープされた粒子の有効面積である。第2の半導体層b202がN+半導体層のときは、ドープされた粒子はN+粒子であり、あるいは第2の半導体層b202がP+半導体層のときは、ドープされた粒子はP+粒子である。第1の面対第2の面の比は1:Nであり、ここでNは1以上の有理数であり、例えば、1、2、3、または5などの正の有理数である。理解しやすくするために、第1のPINダイオード100対第2のPINダイオード200の面積比が異なる場合について、以下でシミュレーション処理が行われる。
【0034】
最初に、第1のPINダイオード100対第2のPINダイオード200の面積比が1:1の場合のシミュレーションが行われる。
【0035】
半導体スイッチデバイスの非線形モデルがADSソフトウェアにインポートされ、高調波バランス(Harmonic Balance)シミュレーションエンジンが使用されて、順バイアス状態および逆バイアス状態でPIN接合部のシミュレーションを行い、その第2高調波、第3高調波、第4高調波、および第5高調波非線形産物スペクトルなどを取得する。シミュレーションは、モノラル信号源が2 GHz 38 dBm、入出力インピーダンスが50オーム、順バイアス電流のスキャン範囲が10 mA~100 mA、逆バイアス電圧のスキャン範囲が50 V~150 Vに設定される。まず順バイアス状態については、図2aは、順バイアス状態になっている単一のPINダイオードの高調波シミュレーション回路を示し、図2bは、順バイアス状態になっている、本出願のこの実施形態における半導体スイッチデバイスの高調波シミュレーション回路を示す。シミュレーションが行われると、図3a~図4bのシミュレートされた構造が得られる。図3aは、高調波バランスにおける単一のPINダイオードのシミュレーション結果を示し、図3bは、第2高調波で順バイアス電流を流した単一のPINダイオードの変化傾向を示す。図4aは、高調波バランスにおける、本出願のこの実施形態における半導体スイッチデバイスのシミュレーション結果を示し、図4bは、第2高調波で順バイアス電流を流した、本出願のこの実施形態における半導体スイッチデバイスの変化傾向を示す。図3aは図4aと比較され、図3bは図4bと比較される。シミュレーション結果を比較することによって、理想的な場合の、本出願のこの実施形態における、面積比が1:1の単一のPINダイオードと半導体スイッチデバイスとの、高調波非線形産物の打ち消し効果および補償効果がわかる。
【0036】
逆バイアス状態については、図5aで逆バイアス状態の単一のPINダイオードの高調波シミュレーション回路を示し、図5bは、逆バイアス状態の、本出願のこの実施形態における半導体スイッチデバイスの高調波シミュレーション回路を示す。シミュレーションが行われると、図6a~図7bのシミュレートされた構造が得られる。図6aは、高調波バランスにおける単一のPINダイオードのシミュレーション結果を示し、図6bは、第2高調波で逆バイアス電圧をかけた単一のPINダイオードの変化傾向を示す。図7aは、高調波バランスにおける、本出願のこの実施形態における半導体スイッチデバイスのシミュレーション結果を示し、図7bは、第2高調波で逆バイアス電圧をかけた、本出願のこの実施形態における半導体スイッチデバイスの変化傾向を示す。図6aは図7aと比較され、図6bは図7bと比較される。シミュレーション結果から、本出願のこの実施形態における半導体スイッチデバイスの偶高調波、特に第2高調波は、単一のPINダイオードのものよりも170 dB~200 dB低いことがわかる。ソフトウェアの浮動小数点計算の丸め誤差を考慮すると、この結果は偶高調波産物が完全に打ち消されていることを意味している。本出願のこの実施形態における第1のPINダイオード100と第2のPINダイオード200とのパラメータは完全に整合可能なので、本出願のこの実施形態における半導体スイッチデバイスは、従来技術のPINダイオードと比較して20 dB改善されており、非線形打ち消しを本質的に改善する。
【0037】
第1のPINダイオード100対第2のPINダイオード200の特定の面積比は製造工程で正確に制御でき、この比はデバイスの非線形補償の係数を調節するための自由因子として使用されてもよく、これによって、半導体スイッチデバイス全体の設計の柔軟性が向上する。Nの値を具体的に設定する際、Nの値は半導体スイッチデバイスの適用シナリオに基づいて決定される。具体的には、Nの値は実験計画法(DoE、Design of Experiments)の実験データに基づいて最終的に決定される。適切なNの値を設定することで、回路の他の部分のパラメータが整合していないときでも良好な線形性を実現することができる。
【0038】
半導体スイッチデバイスを適用する際は、並べて配置された第1のPINダイオード100と第2のPINダイオード200とのパラメータが完全に整合している場合であっても、モジュール回路の他の部分に不整合がまだ存在する場合がある。結果として、第1のPINダイオード100と第2のPINダイオード200とのパラメータ間の完全整合によって達成された線形性向上ゲインが低下する。他の部分の不整合は、回路レイアウトの不整合、表面実装デバイス(SMD、Surface Mounted Devices)の不整合、PIN接合部のバイアス回路の不整合などを含む。PIN接合部のバイアス回路の電流不整合が一例として使用される。先進型設計システム(ADS、Advanced Design System)ソフトウェアで、線形性向上ゲインが不整合により低下することがシミュレーションされる。図8は、順バイアス電流不整合の場合の、本出願のこの実施形態における半導体スイッチデバイスの高調波シミュレーション回路を示す。シミュレーションの際は、PIN接合部のバイアス電流の基準値は10 mAに設定されるが、2つのPINダイオード(第1のPINダイオード100および第2のPINダイオード200であって、第1のPINダイオード100対第2のPINダイオード200の比は1:1)のバイアス電流間には比差(Iratio)がある。シミュレーションのスキャン範囲は、1.0~2.0(Iratioの値)に設定される。図9は、第2高調波で逆バイアス電圧をかけた半導体スイッチデバイスの変化傾向を示す。シミュレーションの際は、Iratioが1.0から偏移するとき、言い換えればバイアス電流の不整合が存在するときは、線形性向上ゲインは急速に低下する。Iratio=1.1のとき、第2高調波は-54 dBmである。これは、10 mAバイアスされた単一のPINダイオード(すなわち従来の単一のPINダイオード)の-45 dBと比較して20 dB近くまで改善しているが、Iratio=1.0の場合の理想的な整合状態には遠い。したがって、モジュール回路の他の部分の不整合が避けられないときは、第1のPINダイオード100対第2のPINダイオード200の面積比は、補償を実施するために能動的に調節されてもよい。例えば、順バイアス電流不整合比Iratioは1.1である。図10は、順バイアス電流不整合の場合に、PIN接合部のサイズ比を使用して線形性を向上させるための高調波シミュレーション回路を示す。第2高調波における、第1のPINダイオード100対第2のPINダイオード200のスキャンする面積比の変化傾向は、ADSソフトウェアでシミュレートされる。図11に示すように、第1のPINダイオード100対第2のPINダイオード200の面積比が1.2にほぼ等しいとき、第2高調波は最適で-69.569dBmであり、これは基準値-54 dBm(面積比が1.0)と比較してほぼ5 dB改善されており、これによってモジュール回路全体の整合効果が向上する。
【0039】
第1のPINダイオード100および第2のPINダイオード200を形成する際、第1のPINダイオード100と第2のPINダイオード200との距離は、第1のPINダイオード100と第2のPINダイオード200との電気絶縁の効果が確実になるように、0.1 μm~5000 μmである。第1のPINダイオード100と第2のPINダイオード200との距離とは、第2の半導体層a102と第2の半導体層b202との間の最短距離、ならびに第1の真性層103と第2の真性層203との間の最短距離のことをいう。半導体スイッチデバイスの第1のPINダイオード100と第2のPINダイオード200との電気絶縁の効果を高めるために、本出願のこの実施形態における半導体スイッチデバイスは、第1の半導体層10に埋め込まれた第1の絶縁層40をさらに含む。第1の絶縁層40は、隣接するPINダイオードを電気的に絶縁する。図1bに示すように、第1の絶縁層40は、第1の半導体層10の中に部分的に挿入され、挿入深さはhである。第1の真性層103と第2の真性層203との絶縁を確実にするために、hの値は0μm~1000μm、例えば、0μm、10μm、100μm、500μm、800μm、または1000μmなどの深さであってよい。第1の絶縁層40の幅dは、0.1μm~5000μmの範囲であり、例えば、幅が0.1μm、10μm、50μm、100μm、500μm、1000μm、3000μmまたは5000μmである。当然ながら、第1の絶縁層40は任意選択の構成要素であって、選択的に配置されてよく、あるいは配置されなくてもよい。
【0040】
図1bを引き続き参照すると、半導体スイッチデバイスを保護するために、本出願のこの実施形態における半導体スイッチデバイスには第2の絶縁層30がさらに配置され、第2の絶縁層30は第1の絶縁層40に結合され、任意のPINダイオードの真性層および第2の半導体層の側壁を覆う。具体的な製造の際は、第1の絶縁層40と第2の絶縁層30とは一体構造で製造されてもよく、あるいは分割構造で製造されてもよい。一体構造が使用されるときは、第1の絶縁層40と第2の絶縁層30とは絶縁層と総称され、絶縁層の材料は、二酸化ケイ素、あるいは二酸化ケイ素と窒化ケイ素など、異なる材料を使用して作られてもよい。当然のことながら、絶縁層は別の絶縁材料を使用して作られてもよい。一具体的実施形態では、絶縁層に窓が形成されてもよい。第1のPINダイオード100対第2のPINダイオード200の面積比が異なる場合は、第1のPINダイオード100および第2のPINダイオード200に対応する絶縁層の窓同士の面積比もまた異なる。
【0041】
図1bに示すように、第1のPINダイオード100および第2のPINダイオード200が外部回路に接続されるときは、第1のパッド101が、第2の半導体層a102の、第1の真性層103から遠い側に配置され、第2のパッド201が、第2の半導体層b202の、第2の真性層203から遠い側に配置され、背面金属層20が、第1の半導体層10の、第1の真性層103および第2の真性層203から遠い方の面に配置される。第1のパッド101、第2のパッド201、および背面金属層20は電極として引き出され、その結果、半導体スイッチデバイスは、共通の陰極または共通の陽極の3ポートのダイを形成し、次に、一体的な3ポートの構成部品の製品形態を最終的に形成するために、パッケージング加工が行われる。第1のパッド101、第2のパッド201、および背面金属層20は、チタンニッケル金材料、チタンプラチナ金材料、チタン金材料、またはアルミニウム材料を使用して製造されてよく、あるいは別の導電性材料を使用して製造されてもよい。
【0042】
当然ながら、前述した3ポートデバイスに基づく構造に加えて、第1のPINダイオード100および第2のPINダイオード200をパッケージングして外部との電気的接続を実施するために、表面実装(Surface Mount)型(QFNまたはDFNなど)、フリップチップ(Flip Chip)型、またはビームリード(Beam Lead)型などの別のパッケージング形態が使用されてもよい。
【0043】
前述の説明から、本出願のこの実施形態で提供される半導体スイッチデバイスを使用することによって、3ポートデバイス構造が形成されることがわかる。一体構造では、第1のPINダイオード100と第2のPINダイオード200とを並べて配置することにより、第1のPINダイオード100と第2のPINダイオード200との整合の効果が向上する。加えて、この全体統合方式が使用されると、従来技術のディスクリート部品またはマルチダイ素子と比較して、集積度が向上しコストが削減される。
【0044】
理解しやすくするために、この出願の一実施形態は、半導体スイッチデバイス製造方法をさらに提供する。製造方法は、
第1の半導体層および真性層を製造するステップであって、第1の半導体層と真性層とは積層され、具体的な製造の際は、まず第1の半導体層が製造されてよく、次に、第1の半導体層の表面に真性層が製造される、あるいは、まず真性層が製造されてもよく、次に、真性層の表面に第1の半導体層が製造される、ステップと、
真性層の第1の半導体層から遠い方の面に、第2の半導体層を形成するステップと、
少なくとも2つの真性層と、各真性層に対応する第2の半導体層とを形成するために、第2の半導体層および真性層をエッチングするステップであって、少なくとも2つの真性層は厚さが同じであり、かつ使用材料のドーピング密度係数が同じであり、第1の半導体層は、第1の真性層のそれぞれ、および第2の半導体層のそれぞれとともに1つのPINダイオードを形成し、2つの隣接するPINダイオードは電気的に絶縁され、
第1の半導体層はN+半導体層であり、第2の半導体層はP+半導体層である、または
第1の半導体層はP+半導体層であり、第2の半導体層はN+半導体層である、ステップと
を含む。
【0045】
第1の半導体層10が異なる層状構造を使用しているときは、これに対応して形成された半導体スイッチデバイスもまた異なる。これについては以下で相応に説明される。
【0046】
図12a~図12gに示すように、第1の半導体はN+半導体であり、これが一例として使用される。
【0047】
ステップ1において、第1の半導体層10が製造され、第1の半導体層10はN+半導体層である。
【0048】
具体的には、図12aに示すように、N型ウェハが製造の基板として使用される。N+ドープ層を形成するために、リンがドープされて、第1の半導体層10が得られる。
【0049】
ステップ2において、真性層50を製造する。
【0050】
具体的には、図12bに示すように、化学気相蒸着、拡散、分子線エピタキシーなどによって、単結晶で軽くN型にドープされた層である真性層50が形成され、真性層50の厚さは正確に制御されなければならない。
【0051】
ステップ3において、第1の真性層103の上に第2の半導体層60を形成する。
【0052】
具体的には、図12cに示すように、化学気相蒸着による高温で、真性層50の上に多結晶シリコンの層が形成され、次に、B材料を使用して、ホウ素が高温でウェハの中に拡散されて、P+ドープ層を形成する。あるいは、第2の半導体層60は、拡散またはエピタキシャル成長によって真性層50の上に形成される。第2の半導体層60と第1の半導体層10とは対向する半導体層であり、その加工実施方法は、これに限定されないが、拡散またはエピタキシャル成長であってよいことが前述の説明からわかる。
【0053】
ステップ4において、エッチングによって真性層および第2の半導体層に窓を形成する。
【0054】
具体的には、図12dに示すように、窓70はエッチングによって真性層および第2の半導体層に形成され、窓のために第1の半導体層10がわずかにオーバーエッチングされる必要がある。オーバーエッチングされた第1の半導体層10は、0マイクロメートル~1000マイクロメートルになり得る。エッチング方式は、ドライエッチングであってもウェットエッチングであってもよい。真性層は、窓によって第1の真性層103と第2の真性層203とに分割され、第2の半導体層は、窓によって第2の半導体層a102と第2の半導体層b202とに分割される。第1の半導体層10と、第1の真性層103と、第2の半導体層a102とは、第1のPINダイオードを形成する。第1の半導体層10と、第2の真性層203と、第2の半導体層b202とは、第2のPINダイオードを形成する。加えて、エッチングされた窓は、第1のPINダイオードと第2のPINダイオードとを確実に電気的に絶縁する必要がある。
【0055】
ステップ5において、窓内に絶縁層を堆積する。
【0056】
具体的には、図12eに示すように、絶縁層を形成するために、二酸化ケイ素または窒化ケイ素がlift-offによって窓内に堆積されてもよく、あるいはガラス粉末がコーティングされてもよい。絶縁層は、第1のPINダイオード100を第2のPINダイオード200から絶縁する第1の絶縁層40と、第1のPINダイオード100および第2のPINダイオード200の露出した側壁を保護するために使用される、第2の絶縁層30とを含む。
【0057】
ステップ5は任意選択のステップである。本出願のこの実施形態で提供される半導体スイッチでは、絶縁層は必ずしも配置されない。
【0058】
ステップ6において、第2の半導体層の上方の窓にパッドを堆積する。
【0059】
具体的には、図12fに示すように、パッドは、蒸着、マグネトロンスパッタリング、または電気めっきによって堆積され、高温で窒素と水素との混合ガス内でアニーリングが行われる。第1のPINダイオードに対応するパッドは第1のパッド101であり、第2のPINダイオードに対応するパッドは第2のパッド201である。
【0060】
ステップ7において、第1の半導体層10の下部に背面金属を堆積する。
【0061】
具体的には、図12gに示すように、半導体スイッチデバイスが薄くされた後で、チタンニッケル金層、チタン金層、アルミニウム層、その他の金属層が、背面金属層20を形成するように、第1の半導体層10(真性層から遠い側)の下部に堆積される。背面金属層20に異なる材料が使用されるときは、異なる厚さが選択されてもよい。例えば、チタンの場合は厚さが0ナノメートル~500ナノメートルであり、ニッケルの場合は厚さが0ナノメートル~100ナノメートルであり、金の場合は厚さが0マイクロメートル~500マイクロメートルである。
【0062】
前述した具体的な製造方法は、Si加工による半導体スイッチデバイス製造の単なる例として使用されており、具体的な半導体材料(例えば、GaAs、GaN、またはSiC)、および具体的なドープ材料(例えば、リン)などの詳細は限定されないことを理解されたい。
【0063】
製造された半導体スイッチデバイスでは、線形性を向上させるために、2つのPINダイオードの、中央が揃えられた幾何学的に対称な形状を使用して、2つのPINダイオード間で自動的なパラメータ整合が実施されることが前述の説明からわかる。加えて、半導体スイッチデバイス全体の構造が小型で、チップパッケージング面積が小さく、かつコストが低い。加えて、本出願では、PINダイオードの真性層のエピタキシャル成長、ならびに第1の半導体層および第2の半導体層の成長の際に加工差が発生せず、かつ2つのPINダイオード間で自動的なパラメータ整合が実施されて、線形性が向上し、ソリッドステート移相器の効果が高まる。PINダイオードの加工がもう少し複雑で、かつ加工のデバイスパラメータに特定の要件が課される従来技術と比較して、本出願では、PINダイオードの加工の解決策がより簡素であり、単一のPINダイオードの製造工程と互換可能であり、製造コストが低く、かつPINダイオードおよびソリッドステート移相器の線形性を向上させる目的を達成することもできる。
【0064】
図13a~図13fに示すように、本出願の一実施形態は、別の半導体製造方法をさらに提供する。この方法は、具体的には以下のステップを含む。
【0065】
第1の半導体はN+半導体であり、これが一例として使用される。
【0066】
ステップ1において、第1の半導体層10が製造され、第1の半導体層10はN+半導体層である。
【0067】
具体的には、図13aに示すように、N型ウェハが製造の基板として使用される。N+ドープ層を形成するために、リンがドープされて、第1の半導体層10が得られる。
【0068】
ステップ2において、第1の半導体層10の表面に絶縁層を堆積し、絶縁層上に、PINダイオードのための窓を形成する。
【0069】
具体的には、図13bに示すように、熱化学気相蒸着によって、ウェハの上層に比較的厚い二酸化ケイ素絶縁層が形成される。二酸化ケイ素は、窓を形成するために、真性層の形成が必要な領域で、マスクおよびフォトレジストを使用して選択的に除去される。図13bでは2つの窓が形成され、2つの窓は、第1のPINダイオードおよび第2のPINダイオードを収容するのにそれぞれ使用され、絶縁層は、第1のPINダイオードを第2のPINダイオードから絶縁するために使用される第1の絶縁層40と、第1のPINダイオードおよび第2のPINダイオードの露出した側壁を保護するために使用される第2の絶縁層30とに分割される。
【0070】
ステップ3において、窓内に真性層を製造する。
【0071】
具体的には、図13cに示すように、lift-off後に、化学気相蒸着、拡散、分子線エピタキシーなどによって、ウェハの上層にある絶縁層の2つの窓のそれぞれの中に、単結晶で軽くN型にドープされた層である真性層が形成される。真性層の厚さは、正確に制御される必要がある。第1のPINダイオードに対応する真性層は第1の真性層103であり、第2のPINダイオードに対応する真性層は第2の真性層203である。
【0072】
ステップ4において、真性層の上に第2の半導体層を形成する。
【0073】
具体的には、図13dに示すように、lift-off後に、化学気相蒸着による高温で、それぞれの真性層(第1の真性層103および第2の真性層203)の上に多結晶シリコンの層が形成され、次に、B材料を使用して、ホウ素が高温でウェハの中に拡散されて、P+ドープ層を形成する。あるいは、第2の半導体層は、拡散またはエピタキシャル成長によってそれぞれの真性層(第1の真性層103および第2の真性層203)の上に形成される。加えて、第2の半導体層と第1の半導体層10とは対向する半導体層であり、その加工実施方法は、これに限定されないが、拡散およびエピタキシャル成長であってよい。第1のPINダイオードに対応する第2の半導体層は第2の半導体層a102であり、第2のPINダイオードに対応する半導体層は第2の半導体層b202である。
【0074】
ステップ5において、第2の半導体層の上方の窓にパッドを堆積する。
【0075】
具体的には、図13eに示すように、第1のパッド101および第2のパッド201は、蒸着、マグネトロンスパッタリング、または電気めっきによって堆積され、高温で窒素と水素との混合ガス内でアニーリングが行われる。第1のパッド101は、第2の半導体層a102の、第1の真性層103から遠い側に堆積され、第2のパッド201は、第2の半導体層b202の、第2の真性層203から遠い側に堆積される。
【0076】
ステップ6において、第1の半導体層10の下部に背面金属を堆積する。
【0077】
具体的には、図13fに示すように、半導体スイッチデバイスが薄くされた後で、チタンニッケル金層、チタン金層、アルミニウム層、その他の金属層が、背面金属層20を形成するように、第1の半導体層10(真性層から遠い側)の下部に堆積される。背面金属層20に異なる材料が使用されるときは、異なる厚さが選択されてもよい。例えば、チタンの場合は厚さが0ナノメートル~500ナノメートルであり、ニッケルの場合は厚さが0ナノメートル~100ナノメートルであり、金の場合は厚さが0マイクロメートル~500マイクロメートルである。
【0078】
前述した具体的な製造方法は、Si加工による半導体スイッチデバイス製造の単なる例として使用されており、具体的な半導体材料(例えば、GaAs、GaN、またはSiC)、および具体的なドープ材料(例えば、リン)などの詳細は限定されないことを理解されたい。
【0079】
理解しやすくするために、一例として図14a~図14gに示す半導体スイッチデバイス製造方法を使用して、再度詳細な説明が提供される。
【0080】
第1の半導体はN+半導体であり、これが一例として使用される。
【0081】
ステップ1において、第1の半導体層10が製造され、第1の半導体層10はN+半導体層である。
【0082】
具体的には、図14aに示すように、N型ウェハが製造の基板として使用される。N+ドープ層を形成するために、リンがドープされて、第1の半導体層10が得られる。
【0083】
ステップ2において、第1の半導体層10の表面に真性層50を堆積する。
【0084】
具体的には、図14bに示すように、化学気相蒸着、拡散、分子線エピタキシーなどによって、ウェハの上層にある絶縁層の窓内に、単結晶で軽くN型にドープされた層である真性層50が形成される。真性層50の厚さは、正確に制御される必要がある。
【0085】
ステップ3において、真性層50の上に第2の半導体層60を形成する。
【0086】
具体的には、図14cに示すように、化学気相蒸着による高温で、真性層50の上に多結晶シリコンの層が形成され、次に、B材料を使用して、ホウ素が高温でウェハの中に拡散されて、P+ドープ層を形成する。あるいは、第2の半導体層60は、拡散、エピタキシャル成長、またはイオン注入によって真性層50上に形成される。第2の半導体層60と第1の半導体層10とは対向する半導体層であり、その加工実施方法は、これに限定されないが、拡散またはエピタキシャル成長であってよいことが前述の説明からわかる。
【0087】
ステップ4において、lift-off後のエッチングによって、第2の半導体層60および真性層50に窓70を形成して、第1のPINダイオードおよび第2のPINダイオードを形成する。
【0088】
具体的には、図14dに示すように、第2の半導体層および真性層は、lift-off後に窓でエッチングされ(真性層はオーバーエッチングされてもよく、オーバーエッチング深さは0 μm~1000 μm)、エッチング方式は、ドライエッチングまたはウェットエッチングであってよい。真性層は、窓70によって第1の真性層103と第2の真性層203とに分割され、第2の半導体層は、窓70によって第2の半導体層a102と第2の半導体層b202とに分割される。第1の半導体層10と、第1の真性層103と、第2の半導体層a102とは、第1のPINダイオードを形成する。第1の半導体層10と、第2の真性層203と、第2の半導体層b202とは、第2のPINダイオードを形成する。加えて、エッチングされた窓70は、第1のPINダイオード100と第2のPINダイオード200とを確実に電気的に絶縁する必要がある。
【0089】
ステップ5において、半導体スイッチデバイスの表面に絶縁層80を形成し、次に、第1のPINダイオードおよび第2のPINダイオードのそれぞれの表面に、lift-off後のエッチングによって、パッドのための窓を形成する。
【0090】
具体的には、図14eに示すように、熱酸化または化学気相蒸着によって、半導体スイッチデバイスの表面に絶縁層80が形成される。次に、lift-off後のエッチングによって、第1のPINダイオードおよび第2のPINダイオードのそれぞれの表面に、パッドを堆積するための窓が形成される。絶縁層の組成は、SiO2、Si4、またはSiO2、Siを含む多層構造であってもよい。
【0091】
ステップ5は任意選択のステップである。本出願のこの実施形態で提供される半導体スイッチでは、絶縁層は必ずしも配置されない。
【0092】
ステップ6において、第1のPINダイオードおよび第2のPINダイオードの窓内にパッドを堆積する。
【0093】
具体的には、図14fに示すように、lift-off後に第1のパッド101および第2のパッド201は、蒸着、マグネトロンスパッタリング、または電気めっきによって第1のPINダイオードおよび第2のPINダイオードの表面の上に堆積され、高温で窒素と水素との混合ガス内でアニーリングが行われる。
【0094】
ステップ7において、第1の半導体層10の下部に背面金属を堆積する。
【0095】
具体的には、図14gに示すように、半導体スイッチデバイスが薄くされた後で、チタンニッケル金層、チタン金層、アルミニウム層、その他の金属層が、背面金属層20を形成するように、第1の半導体層10(真性層から遠い側)の下部に堆積される。背面金属層20に異なる材料が使用されるときは、異なる厚さが選択されてもよい。例えば、チタンの場合は厚さが0ナノメートル~500ナノメートルであり、ニッケルの場合は厚さが0ナノメートル~100ナノメートルであり、金の場合は厚さが0マイクロメートル~500マイクロメートルである。
【0096】
前述した具体的な製造方法は、Si加工による半導体スイッチデバイス製造の単なる例として使用されており、具体的な半導体材料(例えば、GaAs、GaN、またはSiC)、および具体的なドープ材料(例えば、リン)などの詳細は限定されないことを理解されたい。
【0097】
前述した製造方法では、第1のPINダイオードおよび第2のPINダイオードの具体的な製造の際は、第1のPINダイオードのそれぞれの第1の面対第2のPINダイオードのそれぞれの第2の面の面積比は1:Nであり、Nは1以上の有理数である。第1の面は、第1のPINダイオードの第2の半導体層の、第1の半導体層から遠い方の面の、ドープされた粒子の有効面積である。第2の面は、第2のPINダイオードの第2の半導体層の、第1の半導体層から遠い方の面の、ドープされた粒子の有効面積である。詳細については、図2の関連説明を参照されたい。
【0098】
前述した具体的な製造方法から、本出願のこの実施形態で提供される半導体スイッチデバイスを使用して、3ポートデバイス構造が形成されることがわかる。一体構造では、第1のPINダイオードと第2のPINダイオードとを並べて配置することにより、第1のPINダイオードと第2のPINダイオードとの整合の効果が高まる。加えて、この統合方式が使用されると、従来技術のディスクリート部品またはマルチダイ素子と比較して、集積度が向上しコストが削減される。
【0099】
加えて、本出願はソリッドステート移相器をさらに提供する。ソリッドステート移相器は、複数の分岐回路に配置された、前述した半導体スイッチデバイスを含み、各分岐回路は少なくとも1つの半導体スイッチデバイスを含む。2つ以上の半導体スイッチデバイスが使用されるとき、2つ以上の半導体スイッチデバイスは直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、あるいは部分的に直列に接続され、かつ部分的に並列に接続されてもよい。これは、本明細書では具体的に限定されない。加えて、半導体スイッチデバイスは、複数の分岐回路で送信された無線周波数信号間の位相差を生成するために、接続されたり切断されたりする。使用される半導体スイッチデバイスは、2つのPINダイオードの、中央が揃えられた幾何学的に対称な形状を使用して、2つのPINダイオード間で自動的なパラメータ整合を実施することによって線形性を向上させ、ソリッドステート移相器の効果を向上させる。
【0100】
上記の説明は、本願の特定の実施態様にすぎず、本願の保護範囲はそれに限定されない。本出願の保護範囲は、アレイ構造の複数のPINダイオードでもあり得る。アレイ構造の複数のPINダイオードが使用されるときは、少なくとも2つの真性層が第1の半導体層の同じ面に配置され、第2の半導体層は各真性層に配置される。少なくとも2つの真性層は厚さが同じであり、かつ使用材料のドーピング密度係数が同じである。第2の半導体層は真性層と1対1の対応関係にあり、それぞれの対応する第2の半導体層および真性層と、第1の半導体層とが1つのPINダイオードを形成する。
【0101】
加えて、本出願の一実施形態は大規模多入力多出力(Massive MIMO)アンテナアレイをさらに提供する。アンテナアレイは、前述したソリッドステート移相器と、複数のアンテナユニットとを備え、ソリッドステート移相器は、複数のアンテナユニット間の位相関係を変更するように構成される。使用されるソリッドステート移相器の半導体スイッチデバイスは、2つ以上のPINダイオードの、中央が揃えられた幾何学的に対称な形状を使用して、複数のPINダイオード間で自動的なパラメータ整合を実施することによって線形性を向上させ、アンテナアレイの使用効果を向上させる。PINダイオードは、例えば、2つ、4つ、8つ、または複数のPINダイオードを統合したアレイモードになっていてもよく、その上面図が図15に示されている。図15は、4-PINダイオードモードである。aとdとの開口面積は等しく、bとcとの開口面積は等しく、a対bの開口面積比は1:Nであり、d対cの開口面積比は1:Nであり、Nは正の実数である。図16は、8-PINダイオードモードを示す。aとdとの開口面積は等しく、bとcとの開口面積は等しく、e対hの開口面積は等しく、f対gの開口面積は等しく、a対bの面積比は1:Nであり、d対cの開口面積比は1:Nであり、e対fの開口面積比は1:Nであり、h対gの開口面積比は1:Nであり、Nは正の実数である。
【0102】
本願の一実施形態は通信デバイスを提供する。通信デバイスは、大規模多入力多出力アンテナアレイと、無線周波数信号送受信機とを備える。大規模多入力多出力アンテナアレイは、無線周波数信号送受信機によって送信された無線周波数信号を受信するように構成される、または無線周波数信号送受信機に無線周波数信号を送信するように構成される。アンテナアレイを使用することによって、通信デバイスの通信効率が向上する。
【0103】
前述の説明は、本出願の特定の実装形態にすぎず、本出願の保護範囲を限定するものではない。本出願に開示されている技術的範囲内で当業者によって容易に考え出されるいかなる変形または置換も、本出願の保護範囲内にあるものとする。したがって、本出願の保護範囲は、特許請求の範囲の保護範囲に従うものとする。
【符号の説明】
【0104】
10 第1の半導体層
20 背面金属層
30 第2の絶縁層
40 第1の絶縁層
50 真性層
60 第2の半導体層
70 窓
80 絶縁層
100 第1のPINダイオード
101 第1のパッド
102 第2の半導体層
103 第1の真性層
200 第2のPINダイオード
201 第2のパッド
202 第2の半導体層
203 第2の真性層
d 第1の絶縁層の幅
h 挿入深さ
a~h ダイオード
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図6a
図6b
図7a
図7b
図8
図9
図10
図11
図12a
図12b
図12c
図12d
図12e
図12f
図12g
図13a
図13b
図13c
図13d
図13e
図13f
図14a
図14b
図14c
図14d
図14e
図14f
図14g
図15
図16