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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】レーザ装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/02 20060101AFI20240214BHJP
   B23K 26/70 20140101ALI20240214BHJP
【FI】
H01S3/02
B23K26/70
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022528792
(86)(22)【出願日】2021-05-28
(86)【国際出願番号】 JP2021020380
(87)【国際公開番号】W WO2021246307
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2020097016
(32)【優先日】2020-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】森 敦
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-071320(JP,A)
【文献】特開2016-015435(JP,A)
【文献】特開2011-198857(JP,A)
【文献】特開2006-281308(JP,A)
【文献】特開平07-276072(JP,A)
【文献】特開平05-192782(JP,A)
【文献】国際公開第2008/105631(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00 - 5/50
B23K 26/00 - 26/70
B01D 53/26 - 53/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項10】
前記透過材料は、有機材料からなるシール材によって構成される、請求項1~6のいずれか1項に記載のレーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ装置において、レーザ発振器から出力されたレーザ光は、光ファイバ等からなる光伝送ケーブルを介してレーザ加工ヘッドに伝送される。レーザ加工ヘッドは、集光したレーザ光を被加工物に照射することによって、被加工物に対するレーザ加工を行う。
【0003】
レーザ発振器で生成されたレーザ光は、レーザ加工ヘッドに伝送される過程で、光学部品を透過したり、光学部品で反射したりする。レーザ光が固体と気体との境界を通過するとき、又はレーザ光が固体中を通過するとき等に、エネルギーの損失が発生する。損失したエネルギーは熱に変換される。そのため、レーザ装置には、過熱を防止し、正常な動作温度に保つために、冷却水等を用いて適切な温度に維持する冷却装置が設けられている。
【0004】
しかし、レーザ装置の設置環境の温度及び湿度は様々である。レーザ装置の筐体内部の温度が、レーザ装置の設置環境の露点よりも低い場合、レーザ装置の筐体内部に収容される光学部品に結露が発生する。光学部品に結露が発生すると、レーザ装置は本来の特性を失い、正常に機能しなくなるおそれがある。
【0005】
従来、結露を防止する技術としては、筐体内に乾燥剤を設置する技術(例えば、特許文献1参照)、筐体内に乾燥装置を設置する技術(例えば、特許文献2参照)、筐体内に低露点のドライエアを供給する技術(例えば、特許文献3参照)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-201641号公報
【文献】特開2005-61731号公報
【文献】特開2013-239696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
筐体内に乾燥剤を設置する技術は、定期的に乾燥剤を交換する必要がある。筐体内に乾燥装置を設置する技術は、凝集した水分を筐体外に排出することが困難である。しかも、乾燥装置の停止時に、凝集した水分が筐体内に再度拡散するおそれがある。筐体内に低露点のドライエアを供給する技術は、ドライエアの清浄度を保つことが難しく、光学部品を汚染するおそれがある。
【0008】
結露を防止するために、冷却水の温度を露点よりも高い温度に保つ方法も知られている。しかし、レーザ加工による加工形態によっては、露点が40℃を超過する場合がある。仮に、冷却水温度が45℃に設定される場合、レーザ照射時の筐体内部の温度は部分的に75℃を超えてしまい、筐体内部の樹脂部品が長期間の運転に耐えられない問題がある。
【0009】
さらに、結露を防止するために、乾燥空気、窒素もしくはアルゴン等の気体を乾燥対象部位の閉空間内に充填して密封する方法も知られている。しかし、レーザ装置は、保守作業等による部品の組立てのために、樹脂製シール材を用いて封止されるシール部位を有する。このようなシール部位には、微小な隙間が発生し得る。隙間をパッキンやOリング等のシール材によって封止したとしても、長期的には水蒸気が侵入し、結露を発生させるおそれがある。
【0010】
また、乾燥空気等の気体を乾燥対象部位の閉空間内に常時流入させる方法も知られている。しかし、乾燥空気等の気体から塵埃やオイルミストを完全に除去するのは技術的・経済的に困難である。そのため、乾燥空気等の気体を実用的な水準に清浄化した状態で閉空間内に常時流入させても、長時間の流入によって、結局、乾燥対象部位の閉空間は塵埃やオイルミスト等によって汚染されてしまう。
【0011】
したがって、これらの従来の問題点を解消でき、簡単な構造で閉空間の結露を抑制できるレーザ装置が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の一態様は、レーザ光を伝送する光学系を収容する閉空間と、水蒸気を含む気体分子を透過し、かつ、塵埃及びオイルミストを透過しない透過材料によって構成される流路壁部を少なくとも一部に有する露点調整流路と、を備え、前記透過材料は、前記露点調整流路の内部と前記閉空間とを隔てている、レーザ装置である。
【発明の効果】
【0013】
一態様によれば、簡単な構造で閉空間の結露を抑制できるレーザ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】レーザ装置の実施形態の概略構成を示す模式図である。
図2】レーザ装置のレーザ光源装置の第1実施形態を示す模式図である。
図3】レーザ装置のレーザ加工ヘッドの第1実施形態を示す模式図である。
図4】レーザ装置のレーザ加工ヘッドの第2実施形態を示す模式図である。
図5】レーザ装置のレーザ加工ヘッドの第3実施形態を示す模式図である。
図6】レーザ装置のレーザ加工ヘッドの第4実施形態を示す模式図である。
図7】レーザ装置のレーザ光源装置の第2実施形態を示す模式図である。
図8】レーザ装置のレーザ光源装置の第3実施形態を示す模式図である。
図9】レーザ装置のレーザ加工ヘッドの第5実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の一態様に係るレーザ装置について図面を参照して説明する。まず、レーザ装置の概略構成について、図1及び図2を参照して説明する。図1に示すレーザ装置1は、レーザ光を生成するレーザ光源装置2と、被加工物Wに対してレーザ加工を行うレーザ加工ヘッド3と、レーザ光を伝送する光路を構成する第1光伝送ケーブル4と、を備える。
【0016】
レーザ光源装置2によって生成されたレーザ光は、第1光伝送ケーブル4によってレーザ加工ヘッド3に伝送される。第1光伝送ケーブル4は、光ファイバ等からなり、レーザ光源装置2とレーザ加工ヘッド3とに亘って設けられる。第1光伝送ケーブル4の入射端は、入射コネクタ41を介してレーザ光源装置2に接続される(図2参照)。第1光伝送ケーブル4の出射端は、出射コネクタ42を介してレーザ加工ヘッド3に接続される(図3図6参照)。入射コネクタ41及び出射コネクタ42は、例えば、無反射コーティングが施された石英ガラスのブロックによって構成される。
【0017】
レーザ加工ヘッド3は、第1光伝送ケーブル4を介して伝送されたレーザ光を集光し、被加工物Wにレーザ光LBを照射することによって、被加工物Wに対する溶接、切断等の加工を行う。被加工物Wは、例えばXYの2軸方向に沿って移動可能なテーブル(図示せず)に載置される。
【0018】
本実施形態のレーザ装置1は、1つのレーザ光源装置2によって生成されたレーザ光を、2本の第1光伝送ケーブル4,4によって、2つのレーザ加工ヘッド3,3に独立して伝送するように構成される。なお、レーザ装置1は、少なくとも1つずつのレーザ加工ヘッド3及び第1光伝送ケーブル4を有するものであればよい。
【0019】
レーザ光源装置2は、図2に示すように、筐体20の内部の閉空間S1に、レーザ発振器21と、光分岐装置22と、光ファイバ等からなる第2光伝送ケーブル23と、を有する。第2光伝送ケーブル23は、レーザ発振器21と光分岐装置22とに亘って設けられ、レーザ光をレーザ発振器21から光分岐装置22に伝送する。第2光伝送ケーブル23の入射端は、入射コネクタ231を介してレーザ発振器21に接続される。第2光伝送ケーブル23の出射端は、出射コネクタ232を介して光分岐装置22に接続される。入射コネクタ231及び出射コネクタ232は、例えば、無反射コーティングが施された石英ガラスのブロックによって構成される。
【0020】
レーザ発振器21は、筐体210の内部の閉空間S2に、複数のレーザ光源部211と、集光部212と、を有する。レーザ光源部211には、例えば、COレーザ、半導体レーザ、YAGレーザ、ファイバレーザ等の種々のレーザ光源が使用され得る。しかし、レーザ光源部211は、これらの例示に限定されない。レーザ光源部211から出射されたレーザ光は、集光部212に設けられた集光レンズ212aによって、第2光伝送ケーブル23の入射コネクタ231に集光される。第2光伝送ケーブル23は、入射コネクタ231に入射されたレーザ光を出射コネクタ232に向けて伝送する。レーザ光は、出射コネクタ232から光分岐装置22に出射される。
【0021】
光分岐装置22は、筐体220の内部の閉空間S3に、第2光伝送ケーブル23の出射コネクタ232から出射されるレーザ光の進行方向に沿って、コリメータレンズ221と、可動鏡223と、固定鏡224と、集光レンズ222a,222bと、を有する。
【0022】
出射コネクタ232から光分岐装置22の閉空間S3に出射されたレーザ光は、コリメータレンズ221によって平行光に変換され、可動鏡223に向けて照射される。可動鏡223は、コリメータレンズ221からのレーザ光を遮ることによって反射させる位置と、コリメータレンズ221からのレーザ光を遮らない位置とに移動可能に設けられている。可動鏡223がレーザ光を遮る位置に配置されているときに、可動鏡223で反射したレーザ光は、集光レンズ222aを介して、一方の第1光伝送ケーブル4の入射コネクタ41に入射する。可動鏡223がレーザ光を遮らない位置に移動すると、コリメータレンズ221からのレーザ光は固定鏡224に入射する。固定鏡224で反射したレーザ光は、集光レンズ222bを介して、他方の第1光伝送ケーブル4の入射コネクタ41に入射する。これによって、光分岐装置22は、第2光伝送ケーブル23を介してレーザ発振器21から伝送されるレーザ光を、2つのレーザ加工ヘッド3,3のいずれかに時分割で分岐して供給することができる。
【0023】
図1に示すように、レーザ装置1は、冷却水供給装置100、エアドライヤ101、エアコンプレッサ102、及びガス供給装置103をさらに備える。冷却水供給装置100は、一定の温度に管理された冷却水を、レーザ装置1の冷却対象部位に供給する。これによって、冷却対象部位で発生する熱が除去され、冷却対象部位が一定の温度に保たれる。冷却対象部位は、具体的には、レーザ発振器21、光分岐装置22、第1光伝送ケーブル4、第2光伝送ケーブル23、及びレーザ加工ヘッド3のうちの少なくともいずれか1つである。
【0024】
エアドライヤ101は、露点調整用媒体を生成し、レーザ装置1の露点調整対象部位に供給する。露点調整用媒体としては、例えば、乾燥気体Gが使用され得る。エアドライヤ101は、エアコンプレッサ102から供給される気体から清浄で乾燥した乾燥気体Gを生成する。乾燥気体Gは、露点がレーザ装置1の露点調整対象部位に設けられる筐体内の閉空間の温度よりも低い空気、窒素等の気体である。レーザ装置1の露点調整対象部位は、具体的には、レーザ発振器21、光分岐装置22、及びレーザ加工ヘッド3のうちの少なくともいずれか1つに設けられる筐体内の閉空間である。エアドライヤ101から露点調整対象部位への乾燥気体Gの具体的な供給構造については、後で詳細に説明する。
【0025】
ガス供給装置103は、レーザ加工ヘッド3によって被加工物Wに溶接、切断等のレーザ加工を行う際に必要となるアルゴン、ヘリウム、窒素等のアシストガスを供給する。
【0026】
次に、図3図6を参照して、乾燥気体Gをレーザ加工ヘッド3に供給する場合の具体的な構成について説明する。本実施形態のレーザ装置1における2つのレーザ加工ヘッド3,3は同一構造であるため、図3図6では、1つのレーザ加工ヘッド3について説明する。
【0027】
図3は、乾燥気体Gが供給されるレーザ加工ヘッド3の第1の実施形態を示している。レーザ加工ヘッド3は、筐体30の内部の閉空間S4に、レーザ光を伝送する光学系を収容する。具体的には、閉空間S4には、複数のレンズによって構成される集光光学系31と、集光光学系31を保護する保護ガラス32と、が収容される。筐体30の上端には、第1光伝送ケーブル4と接続される出射コネクタ42が、接続される。筐体30の下端には、レーザ光を出射するノズル33が設けられる。閉空間S4は、出射コネクタ42と保護ガラス32との間で密封された空間である。レーザ光源装置2から第1光伝送ケーブル4によって伝送されるレーザ光は、出射コネクタ42からレーザ加工ヘッド3の閉空間S4に出射される。レーザ光は、閉空間S4に収容される集光光学系31によって集光され、保護ガラス32を透過してノズル33から被加工物Wに照射される。
【0028】
筐体30には、露点調整流路を構成する配管5が取り付けられている。配管5は、金属材料又は樹脂材料によって形成される。配管5は、エアドライヤ101と接続され、エアドライヤ101から供給される乾燥気体Gを内部に通流させる。配管5は、筐体30の外部から筐体30の内部の閉空間S4を通り、再び筐体30の外部に向けて延びている。したがって、配管5は、筐体30を貫通している。
【0029】
配管5は、透過材料51によって構成される流路壁部を少なくとも一部に有する。具体的には、筐体30内の閉空間S4に配置される配管5の少なくとも一部の流路壁部が、透過材料51によって構成されている。したがって、透過材料51は、乾燥気体Gが流れる配管5の内部と閉空間S4とを隔てている。
【0030】
透過材料51は、水蒸気を含む気体分子を透過し、かつ、塵埃及びオイルミストを透過しない材料からなる。水蒸気を含む気体分子は、水蒸気を含む酸素、窒素、二酸化炭素、アルゴン等の気体分子である。透過材料51は、これらの水蒸気を含む気体分子よりも分子量の大きい塵埃及びオイルミストは透過しない。
【0031】
このような透過材料51としては、有機材料又は無機材料を使用することができる。有機材料としては、例えば、中空糸膜や平膜等の膜材料を構成する機能性樹脂材料、樹脂製シール材等を使用することができる。無機材料としては、例えば、多数の微小な空孔を有するセラミックス又は金属からなる焼結体、多数の微小な空孔を有する金属薄膜等を使用することができる。
【0032】
エアドライヤ101からの乾燥気体Gは、配管5内を常時流れる。配管5によってレーザ加工ヘッド3に供給される乾燥気体Gは、配管5を通ってレーザ加工ヘッド3の筐体30内の閉空間S4を通過する。このとき、配管5の内部の乾燥気体Gと閉空間S4中の気体との水蒸気分圧の差によって、閉空間S4中の気体に含まれる水分は、透過材料51を透過して配管5内の乾燥気体Gに徐々に拡散する。その後、乾燥気体Gは、配管5を通ってレーザ加工ヘッド3から排出される。
【0033】
これによって、閉空間S4中の気体は徐々に乾燥し、閉空間S4の露点が下がる。その結果、閉空間S4における結露の発生が抑制される。乾燥気体Gは、配管5を通るだけであり、閉空間S4に直接供給されない。しかも、透過材料51は、塵埃及びオイルミストを透過し得ない。そのため、閉空間S4に収容される集光光学系31、保護ガラス32等の光学部品が乾燥気体Gによって汚染されるおそれはない。
【0034】
一般に、レーザ加工ヘッド3は小型軽量であるため、筐体30の内部に乾燥剤や乾燥装置を装備することが困難である。しかも、レーザ加工ヘッド3は、加工点に設置されるために苛酷な環境に置かれることが多い。上記構成によれば、レーザ加工ヘッド3の筐体30内の閉空間S4を乾燥状態にするために、閉空間S4に乾燥剤及び乾燥装置のいずれも収容する必要がなく、レーザ加工ヘッド3の結露を容易に抑制することができる。さらに、レーザ加工ヘッド3の筐体30内に配管5が配置されるだけで、レーザ加工ヘッド3の閉空間S4の乾燥を容易に実現することができる。
【0035】
さらに、筐体30の内部の閉空間S4の露点が下がることによって、レーザ加工ヘッド3を冷却するために冷却水供給装置100から供給される冷却水の温度を、周囲環境に応じて高める必要がなくなる。そのため、レーザ加工中のレーザ加工ヘッド3の温度上昇を抑えることができ、故障確率の低減及び部品劣化の遅延を図ることができる。
【0036】
図4は、乾燥気体Gが供給されるレーザ加工ヘッド3の第2の実施形態を示している。このレーザ加工ヘッド3には、露点調整流路を構成する露点調整室(第1の露点調整室)6が、筐体30に隣接して設けられている。露点調整室6は、筐体30の壁部を挟んで筐体30内の閉空間S4に隣接している。露点調整室6の内部は、エアドライヤ101と接続され、エアドライヤ101から供給される乾燥気体Gで満たされている。乾燥気体Gは、露点調整室6に流入した後、露点調整室6から外部に排出される。
【0037】
露点調整室6の内部と閉空間S4とを隔てている筐体30の壁部は、乾燥気体Gの流路壁部を構成する。この流路壁部の少なくとも一部は、透過材料61によって構成されている。したがって、透過材料61は、乾燥気体Gが流れる露点調整室6の内部と閉空間S4とを隔てている。透過材料61は、上述した透過材料51と同じである。
【0038】
エアドライヤ101からの乾燥気体Gは、露点調整室6に常時流入し、露点調整室6内に充満した後、露点調整室6から外部に排出される。このとき、露点調整室6の内部の乾燥気体Gと閉空間S4中の気体との水蒸気分圧の差によって、閉空間S4中の気体に含まれる水分は、透過材料61を透過して露点調整室6内の乾燥気体Gに徐々に拡散する。その後、乾燥気体Gは、露点調整室6の外部に排出される。
【0039】
これによって、図3に示すレーザ加工ヘッド3と同様の効果が得られる。しかも、筐体30に隣接する露点調整室6は、配管5のように筐体30を貫通しないため、レーザ加工ヘッド3に容易に設置可能である。
【0040】
図5は、乾燥気体Gが供給されるレーザ加工ヘッド3の第3の実施形態を示している。このレーザ加工ヘッド3には、露点調整流路を構成する露点調整室(第2の露点調整室)7が、筐体30の周囲を覆うように設けられている。露点調整室7は、少なくとも筐体30の内部の閉空間S4が設けられる領域に亘って筐体30の外側を覆っている。これによって、露点調整室7は、閉空間S4の外殻をなしている。露点調整室7は、レーザ加工ヘッド3の保護ガラス32から出射コネクタ42に亘って、筐体30の外側を包囲している。露点調整室7の内部は、エアドライヤ101と接続され、エアドライヤ101から供給される乾燥気体Gで満たされている。乾燥気体Gは、露点調整室7に流入した後、露点調整室7から外部に排出される。
【0041】
レーザ加工ヘッド3に接続される第1光伝送ケーブル4の出射コネクタ42と筐体30との間の隙間は、樹脂製シール材であるパッキン34によって封止されている。保護ガラス32と筐体30との間の隙間は、樹脂製シール材であるパッキン35によって封止されている。これらのパッキン34,35は、水蒸気を含む気体分子を透過し、かつ、塵埃及びオイルミストを透過しない透過材料である。パッキン34,35は、露点調整室7と筐体30の内部の閉空間S4とを隔てている。
【0042】
エアドライヤ101からの乾燥気体Gは、露点調整室7内に常時流入し、露点調整室7内に充満した後、露点調整室7から外部に排出される。このとき、露点調整室7の内部の乾燥気体Gと閉空間S4中の気体との水蒸気分圧の差によって、閉空間S4中の気体に含まれる水分は、透過材料であるパッキン34,35を透過して露点調整室7内の乾燥気体Gに徐々に拡散する。その後、乾燥気体Gは、露点調整室7の外部に排出される。
【0043】
これによって、図3に示すレーザ加工ヘッド3と同様の効果が得られる。しかも、レーザ加工ヘッド3の筐体30の外側が露点調整室7によって包囲されるため、外部からレーザ加工ヘッド3への塵埃、水分等の侵入も一層防止される。さらに、レーザ加工ヘッド3にもともと備えられるパッキン34,35が透過材料として利用可能であるため、新たに透過材料を設ける必要がない。
【0044】
図6は、乾燥気体Gが供給されるレーザ加工ヘッド3の第4の実施形態を示している。このレーザ加工ヘッド3には、露点調整流路を構成する露点調整室(第3の露点調整室)8,9が、出射コネクタ42と筐体30との間の隙間を封止するパッキン34及び保護ガラス32と筐体30との間の隙間を封止するパッキン35をそれぞれ個別に覆うように設けられている。これによって、パッキン34,35は、露点調整室8,9の内部にそれぞれ収容されている。パッキン34,35は、露点調整室8,9と筐体30の内部の閉空間S4とを隔てている。露点調整室8,9の内部は、エアドライヤ101と接続され、エアドライヤ101から供給される乾燥気体Gで満たされている。乾燥気体Gは、露点調整室8,9にそれぞれ流入した後、露点調整室8,9から外部に排出される。
【0045】
エアドライヤ101からの乾燥気体Gは、露点調整室8,9内に常時流入し、露点調整室8,9から外部に排出される。このとき、露点調整室8,9の内部の乾燥気体Gと閉空間S4中の気体との水蒸気分圧の差によって、閉空間S4中の気体に含まれる水分は、透過材料であるパッキン34,35を透過して露点調整室8,9内の乾燥気体Gに徐々に拡散する。その後、乾燥気体Gは、露点調整室8,9の外部に排出される。
【0046】
これによって、レーザ加工ヘッド3の閉空間S4中の気体は徐々に乾燥し、閉空間S4の露点が下がる。その結果、閉空間S4における結露の発生が抑制される。したがって、図3に示すレーザ加工ヘッド3と同様の効果が得られる。例えば、露点-15℃の乾燥気体Gを、露点調整室8,9にそれぞれ1L/min流し続けた場合、5日後には、閉空間S4の露点は-5℃まで下げることができた。しかも、露点調整室8,9は、パッキン34,35を収容し得る程度の大きさで済むため、レーザ加工ヘッド3の大型化を招くことはない。さらに、透過材料は、レーザ加工ヘッド3にもともと備えられるパッキン34,35を利用しているため、レーザ加工ヘッド3に新たに透過材料を設ける必要がない。
【0047】
図7は、乾燥気体Gが供給されるレーザ光源装置2の第2の実施形態を示している。このレーザ光源装置2には、レーザ発振器21及び光分岐装置22に露点調整流路を構成する配管24,25がそれぞれ取り付けられている。配管24,25は、図3に示す配管5と同様の構成を有する。配管24,25は、それぞれエアドライヤ101と接続され、エアドライヤ101から供給される乾燥気体Gを内部に通流させる。配管24は、レーザ光源装置2の筐体20の外部から閉空間S1を通ってレーザ発振器21の筐体210を貫通し、再び筐体210の外部に向けて延びている。配管25は、レーザ光源装置2の筐体20の外部から閉空間S1を通って光分岐装置22の筐体220を貫通し、再び筐体220の外部に向けて延びている。配管24,25から排出される乾燥気体Gは、レーザ光源装置2の筐体20の内部の閉空間S1を通って筐体20の外部に排出される。
【0048】
配管5の場合と同様に、筐体210,220内の閉空間S2,S3に配置される配管24,25の少なくとも一部の流路壁部が、透過材料241,251によって構成されている。したがって、透過材料241,251は、乾燥気体Gが流れる配管24,25の内部と閉空間S2,S3とをそれぞれ隔てている。
【0049】
エアドライヤ101からの乾燥気体Gは、レーザ光源装置2の配管24,25内を常時流れる。配管24,25によってレーザ発振器21及び光分岐装置22に供給される乾燥気体Gは、配管24,25を通ってレーザ発振器21の筐体210内の閉空間S2及び光分岐装置22の筐体220内の閉空間S3を通過する。このとき、配管24,25の内部の乾燥気体Gと閉空間S2,S3中の気体との水蒸気分圧の差によって、閉空間S2,S3中の気体に含まれる水分は、透過材料241,251を透過して配管24,25内の乾燥気体Gに徐々に拡散する。乾燥気体Gは、配管24,25を通ってレーザ光源装置2の筐体20内の閉空間S1に一旦排出された後、レーザ光源装置2の外部に排出される。
【0050】
これによって、レーザ発振器21及び光分岐装置22の閉空間S2,S3を乾燥気体Gによって汚染することなく、閉空間S2,S3における結露の発生を抑制することができる。例えば、露点-18℃の乾燥気体Gを、配管24,25を通って閉空間S3,S4にそれぞれ5L/min流し続けた場合、周囲環境の露点が27℃であっても、閉空間S2,S3中の気体の露点は-15℃まで下げることができた。
【0051】
図8は、乾燥気体Gが供給されるレーザ光源装置2の第3の実施形態を示している。このレーザ光源装置2の筐体20には、露点調整流路を構成する配管26が取り付けられている。配管26は、図3に示す配管5と同様の構成を有し、それぞれエアドライヤ101と接続され、エアドライヤ101から供給される乾燥気体Gを内部に通流させる。配管26は、レーザ光源装置2の筐体20を貫通し、再び筐体20の外部に向けて延びている。
【0052】
配管5の場合と同様に、筐体20内の閉空間S1に配置される配管26の少なくとも一部の流路壁部が、透過材料261によって構成されている。したがって、透過材料261は、乾燥気体Gが流れる配管26の内部と閉空間S1とを隔てている。
【0053】
エアドライヤ101からの乾燥気体Gは、レーザ光源装置2の配管26内を常時流れる。配管26によってレーザ光源装置2に供給される乾燥気体Gは、配管26を通ってレーザ光源装置2の筐体20内の閉空間S1を通過する。このとき、配管26の内部の乾燥気体Gと閉空間S1中の気体との水蒸気分圧の差によって、閉空間S1中の気体に含まれる水分は、透過材料261を透過して配管26内の乾燥気体Gに徐々に拡散する。乾燥気体Gは、配管26を通ってレーザ光源装置2の外部に排出される。これによって、レーザ光源装置2の閉空間S1を乾燥気体Gによって汚染することなく、閉空間S1における結露の発生を抑制することができる。
【0054】
図9は、乾燥気体Gが供給されるレーザ加工ヘッド3の第5の実施形態を示している。図9に示すレーザ装置1Aにおいて、レーザ加工ヘッド3は、図5に示したレーザ加工ヘッド3と同様に、レーザ加工ヘッド3の筐体30の外側に、筐体30の周囲を覆うことによって閉空間S4の外殻をなす露点調整室7が設けられている。しかし、レーザ光源装置2からレーザ加工ヘッド3にレーザ光を伝送する第1光伝送ケーブル4には、第1光伝送ケーブル4の外側を覆う鞘部材10が設けられている点で、図5に示したレーザ加工ヘッド3と相違する。
【0055】
鞘部材10は、金属材料又は樹脂材料によって管状に形成される。鞘部材10は、第1光伝送ケーブル4の延在方向に沿って、レーザ光源装置2の筐体20と、レーザ加工ヘッド3に設けられる露点調整室7との間を連結している。鞘部材10の内側と第1光伝送ケーブル4の外側との間の空間は、レーザ加工ヘッド3の露点調整室7の内部と連通している。この空間は、エアドライヤ11から供給される乾燥気体Gの流路を構成する。鞘部材10の途中には、エアドライヤ11から供給される乾燥気体Gを鞘部材10の内側に導入させる導入口10aが設けられている。
【0056】
エアドライヤ101からの乾燥気体Gは、鞘部材10の導入口10aから鞘部材10の内側に導入され、鞘部材10と第1光伝送ケーブル4との間を通って、露点調整室7内に常時流入する。露点調整室7内に流入した乾燥気体Gは、露点調整室7内に充満した後、露点調整室7から外部に排出される。したがって、図9に示すレーザ加工ヘッド3は、図5に示したレーザ加工ヘッド3と同様の効果が得られる。第1光伝送ケーブル4は、露点調整室7と連通する鞘部材10の内側を通って出射コネクタ42と接続されるため、第1光伝送ケーブル4が露点調整室7を貫通する部位からの外気の侵入を防止することできる。露点調整室7には、露点調整室7内に乾燥気体Gを導入するための配管等を別途設ける必要がない。しかも、鞘部材10は、第1光伝送ケーブル4の延在方向に沿って第1光伝送ケーブル4の外側を覆っているため、第1光伝送ケーブル4の設置スペースの他に乾燥気体Gの流路の設置スペースを設ける必要もない。
【0057】
なお、鞘部材10の内側を流れる乾燥気体Gは、鞘部材10に沿ってレーザ光源装置2にも供給され得る。鞘部材10は、レーザ光源装置2の筐体20の内部において、図7に示した配管24,25と連通することによって、配管24,25に乾燥気体Gを供給することができる。また、鞘部材10は、レーザ光源装置2の筐体20の内部において、図8に示した配管26と連通することによって、配管26に乾燥気体Gを供給することができる。
【0058】
また、鞘部材10の内側をレーザ光源装置2の筐体20の内部と連通させることによって、筐体20は、レーザ発振器21及び光分岐装置22の外殻をなす露点調整室(露点調整流路)を構成することができる。その場合は、レーザ発振器21の筐体210及び光分岐装置22の筐体220の少なくとも一部に、図4に示した透過材料61と同様に透過材料を設けてもよい。これによれば、鞘部材10の内側を通って筐体20内の閉空間S1に乾燥気体Gを導入することによって、レーザ発振器21の閉空間S2中の気体及び光分岐装置22の閉空間S3中の気体にそれぞれ含まれる水分を、各透過材料を透過して閉空間S1の乾燥気体Gに徐々に拡散させ、閉空間S2,S3の露点を下げることができる。鞘部材10は、レーザ光源装置2とレーザ加工ヘッド3との両方に共通に乾燥気体Gを供給できるため、乾燥気体Gを供給するための流路の設置数を削減することができる。
【0059】
本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、変形、改良等は本開示に含まれる。例えば、図7及び図8に示すレーザ光源装置2に設けられる配管24,25,26の構成に代えて、図4及び図5に示す露点調整室6,7の構成を適用してもよい。
【0060】
エアドライヤ101から供給される乾燥気体Gの圧力は、透過材料の性質に応じて適宜加減してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1,1A レーザ装置
3 レーザ加工ヘッド
34,35 パッキン(透過材料)
4 第1光伝送ケーブル(光路)
5,24,25,26 配管(露点調整流路)
51,61,241,251,261 透過材料
6 第1の露点調整室(露点調整流路)
7 第2の露点調整室(露点調整流路)
8,9 第3の露点調整室(露点調整流路)
10 鞘部材
S1,S2,S3,S4 閉空間
W 被加工物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9