(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】LEDドライバモジュール及びLEDドライバモジュールによるPWM信号の補正方法
(51)【国際特許分類】
G09G 3/32 20160101AFI20240214BHJP
G09F 9/33 20060101ALI20240214BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20240214BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20240214BHJP
【FI】
G09G3/32 A
G09F9/33
G09G3/20 631V
G09G3/20 641A
G09G3/20 641P
G09G3/20 642L
H01L33/00 J
(21)【出願番号】P 2022529180
(86)(22)【出願日】2020-06-02
(86)【国際出願番号】 JP2020021798
(87)【国際公開番号】W WO2021245794
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】591128453
【氏名又は名称】株式会社メガチップス
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100109715
【氏名又は名称】塩谷 英明
(72)【発明者】
【氏名】野並 拓矢
(72)【発明者】
【氏名】曾 醒基
(72)【発明者】
【氏名】角田 護
【審査官】石本 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-221125(JP,A)
【文献】特開2006-126609(JP,A)
【文献】特開2005-352443(JP,A)
【文献】特開2005-309068(JP,A)
【文献】特開2012-042611(JP,A)
【文献】特開2005-037711(JP,A)
【文献】特開2006-195306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F9/30-9/46
G09G3/00-3/08
3/12-3/16
3/19-3/26
3/30-3/34
3/38
H01L33/00-33/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレイ状に配列されたピクセル群を備える少なくとも1つのLEDパネルを制御するLEDドライバモジュールであって、
画像信号に基づく前記LEDパネルの少なくとも1ラインにおける前記
ピクセル群の各ピクセルを構成するサブピクセルごとのPWM信号を保持するPWM信号保持部と、
前記PWM信号保持部に保持された前記サブピクセルごとの前記PWM信号を補正量に基づいて補正し、出力する補正処理部と、を備え、
前記補正処理部は、前記LEDパネルの1ラインにおける補正対象サブピクセルのPWM値を、前記1ラインにおける
前記補正対象サブピクセル以外の各サブピクセルである参照サブピクセルのPWM値を用いて前記補正量を決定し、補正する、
LEDドライバモジュール。
【請求項2】
複数の前記補正量を定義した補正量テーブル部を更に備え、
前記補正処理部は、前記補正量テーブル部を参照し、前記PWM信号を前記補正量テーブル部に定義された前記補正量で補正する、
請求項1に記載のLEDドライバモジュール。
【請求項3】
前記補正対象サブピクセルのPWM値と前記参照サブピクセルのPWM値とに基づいて、前記補正量を算出する補正量算出部を更に備え、
前記補正処理部は、前記PWM信号を前記補正量算出部により算出された前記補正量で補正する、
請求項1に記載のLEDドライバモジュール。
【請求項4】
前記補正処理部は、
前記補正対象サブピクセルのPWM値と前記参照サブピクセルのPWM値との間の差分値に基づいて前記補正量を決定し、決定した前記補正量に基づいて、前記補正対象サブピクセルのPWM値を補正する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のLEDドライバモジュール。
【請求項5】
前記補正処理部は、
前記補正対象サブピクセルのPWM値が前記参照サブピクセルのPWM値よりも小さい場合に、前記補正量を0にセットする、
請求項4に記載のLEDドライバモジュール。
【請求項6】
前記補正処理部は、
前記補正対象サブピクセルのPWM値と前記参照サブピクセルのPWM値との差分値が実質的に0である場合に、前記補正量を0にセットする、
請求項4又は5に記載のLEDドライバモジュール。
【請求項7】
前記補正処理部は、
前記参照サブピクセルのPWM値が実質的に0である場合に、前記補正量を最大値にセットする、
請求項4乃至6の何れか一項に記載のLEDドライバモジュール。
【請求項8】
前記補正処理部は、
前記1ラインにおける各前記参照サブピクセルの補正量を累積して累積補正量を算出し、算出した前記累積補正量に基づいて、前記補正対象サブピクセルのPWM値を補正する、
請求項1乃至6の何れか一項に記載のLEDドライバモジュール。
【請求項9】
複数の前記補正量を、前記参照サブピクセルのPWM値と
、前記補正対象サブピクセルのPWM値と前記参照サブピクセルとの間の差分値との関係におい
て規定するテーブルを含む
補正量テーブル部を更に備え、
前記補正処理部は、前記差分値に基づいて前記補正量を決定し、決定した前記補正量に基づいて、前記補正対象サブピクセルのPWM値を補正する、
請求項
1に記載のLEDドライバモジュール。
【請求項10】
前記補正処理部は、
前記1ライン分の前
記サブピクセルのそれぞれに対応するように複数の演算回路を備え、
前記複数の演算回路のそれぞれは
、対応する前記補正対象サブピクセルのPWM値を補正する、
請求項1乃至
9の何れか一項に記載のLEDドライバモジュール。
【請求項11】
アレイ状に配列されたピクセル群を備える少なくとも1つのLEDパネルを制御するLEDドライバモジュールによるPWM信号の補正方法であって、
受信した画像信号に基づく前記LEDパネルのピクセルを構成するサブピクセルごとのPWM信号を生成することと、
生成された少なくとも1ライン分の前記サブピクセルごとのPWM信号を保持することと、
保持された前記PWM信号を補正量で補正することと、
補正された前記PWM信号を出力することと、を含み、
前記補正することは、前記LEDパネルの1ラインにおける補正対象サブピクセルのPWM値を、前記1ラインにおける
前記補正対象サブピクセル以外の各サブピクセルである参照サブピクセルのPWM値を用いて前記補正量を決定し、補正する、
PWM信号の補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDドライバモジュール及びLEDドライバモジュールによるPWM信号の補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LEDディスプレイは、画素にLED素子を用いた自発光型ディスプレイである。一般に、大画面のLEDディスプレイは、複数のLEDパネルを組み合わせることによって構成される。各LEDパネルにおける各LED素子は、1つ又は複数のICチップとして構成されるLEDドライバモジュールにおける対応する各駆動回路によって駆動制御される。すなわち、LEDドライバモジュールは、画像信号(映像信号)に基づいて、画面上に意図した画像が表示されるように、単位時間当たりのオン時間(デューティ比)が調整されたパルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)信号を生成し、該生成したPWM信号に従って、該LED素子の発光を制御する。
【0003】
このような駆動回路は、PWM信号に依存してオン状態からオフ状態へ遷移する際の内部の電圧降下速度が遅いために、PWM信号がすでにオフ状態であるにも拘わらず、LED素子には電流が未だ流れており、LED素子が微かに点灯してしまうゴーストと呼ばれる現象が起こる。したがって、このようなゴースト点灯を防ぐために、LED素子のアノード側にスイッチを設けてGND側に電荷を引き抜くアクティブ・ディスチャージ(Active Discharge)と呼ばれる技術が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、回路の配線等の寄生容量に起因して生じる誤点灯を防止し表示品質を向上する技術が開示されている。具体的には、特許文献1には、走査部で選択されたコモンラインに接続された任意の発光素子を、駆動部で駆動して点灯させる点灯期間と、該点灯期間に続いて、該コモンラインを選択状態としたまま、任意の発光素子が接続された駆動ラインの駆動を非駆動状態とし、該駆動ラインの寄生容量を充電するための充電期間を設ける充電手段を備える発光装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、アクティブ・ディスチャージを可能にするように構成されたLEDドライバを用いた場合、画面の表示に意図しない「縞現象」(“Discontinuous Grayscale”や“Banding”と称されることもある。)や「赤み現象」(“Reddish”や“Color Shift”と称されることもある。)が発生してしまうという問題がある。
【0007】
「縞現象」は、画面上にグラデーション画像のようなある方向に輝度が連続的に変化する画像が表示される場合、不連続な領域又は筋が発生する現象である。1つのLEDパネルの同一ラインにおいて、デューティ比が大きいPWM信号により駆動されるLED素子とデューティ比が小さいPWM信号により駆動されるLED素子とが存在する場合、デューティ比が小さいLED素子に対するLED駆動回路が先にオン状態からオフ状態に遷移し、その瞬間、デューティ比が大きいLED素子に本来流れ込むべき電荷が、別のLED素子に流れ込んでしまう。そのため、デューティ比が大きいLED素子の発光時間が短くなってしまい、該LED素子の輝度値が低下し、その結果、LEDパネルの表示において縞として認識される。
【0008】
一方、「赤み現象」は、画面上に低輝度画像が表示される場合、画面全体に赤みがかかる現象である。このような「赤み現象」は、ホワイトバランスの崩れとしても認識される。一般的に、LED素子の特性として、赤色LED素子の発光電圧は、他の2色(すなわち、緑色LED素子及び青色LED素子)よりも低い。このため、赤色LED素子には電荷がチャージされ易く、アクティブ・ディスチャージによってもチャージされた電荷の引き抜きを十分に行い難かった。一方、発光電圧が相対的に高い緑色及び青色LED素子には電荷がチャージされ難い特性がある。したがって、LED駆動回路が赤色、緑色及び青色のLED素子の全てを同時にオフ状態に遷移させた場合、赤色LED素子のみが発光し続けてしまい、これにより、画面全体の色度が赤色領域にシフトする現象が発生する。とりわけ、低輝度画像では、赤色LED素子に対する電荷のチャージ及びディスチャージの影響を受け易く、「赤み現象」が発生し易い。
【0009】
そこで、本発明は、PWM信号で駆動されるLED素子群からなるLEDディスプレイにおいて、意図した画像を再現するための該PWM信号の補正技術を提供することを目的とする。
【0010】
より具体的には、本発明の一つの目的は、LEDディスプレイの表示における「縞現象」及び/又は「赤み現象」の発生を抑制するためのLEDドライバ及びPWM信号の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明は、以下に示す発明特定事項乃至は技術的特徴を含んで構成される。
【0012】
ある観点に従う本発明は、アレイ状に配列されたピクセル群を備える少なくとも1つのLEDパネルを制御するLEDドライバモジュールであり得る。前記LEDドライバモジュールは、画像信号に基づく前記LEDパネルの少なくとも1ラインにおける前記ピクセルを構成するサブピクセルごとのPWM信号を保持するPWM信号保持部と、前記PWM信号保持部に保持された前記サブピクセルごとの前記PWM信号を補正量に基づいて補正し、出力する補正処理部とを備え得る。そして、前記補正処理部は、前記LEDパネルの1ラインにおける補正対象サブピクセルのPWM値を、前記1ラインにおける参照サブピクセルのPWM値を用いて前記補正量を決定し、補正し得る。
【0013】
また、前記LEDドライバモジュールは、前記複数の前記補正量を定義した補正量テーブル部を更に備え得る。このような構成により、前記補正処理部は、前記補正量テーブル部を参照し、前記PWM信号を前記補正量テーブル部に定義された前記補正量で補正し得る。
【0014】
また、前記LEDドライバモジュールは、前記補正対象サブピクセルのPWM値と前記参照サブピクセルのPWM値とに基づいて、前記補正量を算出する補正量算出部を更に備え得る。このような構成により、前記補正処理部は、前記PWM信号を前記補正量算出部により算出された前記補正量で補正し得る。
【0015】
また、前記補正処理部は、前記補正対象サブピクセルのPWM値と前記参照サブピクセルのPWM値との間の差分値に基づいて前記補正量を決定し、決定した前記補正量に基づいて、前記補正対象サブピクセルのPWM値を補正し得る。
【0016】
また、前記補正処理部は、前記補正対象サブピクセルのPWM値が前記参照サブピクセルのPWM値よりも小さい場合に、前記補正量による補正がなされないように制御し得る(例えば前記補正量を0にセットする。)。
【0017】
また、前記補正処理部は、前記補正対象サブピクセルのPWM値と前記参照サブピクセルのPWM値との差分値が実質的に0である場合に、前記補正量による補正がなされないように制御する(例えば前記補正量を0にセットする。)。
【0018】
また、前記補正処理部は、前記参照サブピクセルのPWM値が実質的に0である場合に、前記補正量を最大値にセットし得る。
【0019】
また、前記補正処理部は、前記1ラインにおける各前記参照サブピクセルの補正量を累積して累積補正量を算出し、算出した前記累積補正量に基づいて、前記補正対象サブピクセルのPWM値を補正し得る。
【0020】
また、前記補正処理部は、前記1ラインにおける少なくとも補正対象サブピクセル以外の各サブピクセルのPWM値を前記参照サブピクセルのPWM値として取得し得る。
【0021】
また、前記補正量テーブル部は、前記参照サブピクセルのPWM値と前記差分値との関係において前記補正量を規定するテーブルを含み得る。
【0022】
また、前記補正処理部は、前記1ライン分の前記補正対象サブピクセルのそれぞれに対応するように複数の演算回路を備え得る。前記複数の演算回路のそれぞれは、並列的に動作することにより、対応する前記補正対象サブピクセルのPWM値を補正し得る。
【0023】
また、別の観点に従う本発明は、アレイ状に配列されたピクセル群を備える少なくとも1つのLEDパネルを制御するLEDドライバモジュールによるPWM信号の補正方法であり得る。前記補正方法は、受信した画像信号に基づく前記LEDパネルのピクセルを構成するサブピクセルごとのPWM信号を生成することと、生成された少なくとも1ライン分の前記サブピクセルごとのPWM信号を保持することと、保持された前記PWM信号を、補正量を定義した補正量テーブルに従って、補正することと、補正された前記PWM信号を出力することとを含む。そして、前記補正することは、前記LEDパネルの1ラインにおける補正対象サブピクセルのPWM値を、前記1ラインにおける参照サブピクセルのPWM値を用いて前記補正量を決定し、補正することを含む。
【0024】
なお、本明細書等において、「手段」とは、単に物理的手段を意味するものではなく、その手段が有する機能をソフトウェアによって実現する場合も含む。また、1つの手段が有する機能が2つ以上の物理的手段により実現されても、2つ以上の手段の機能が1つの物理的手段により実現されてもよい。また、「システム」とは、複数の装置(又は特定の機能を実現する機能モジュール)が論理的に集合した物のことを言い、各装置や機能モジュールが単一の筐体内にあるか否かは特に問わない。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、LEDディスプレイの表示における「縞現象」及び/又は「赤み現象」の発生を抑制するためのLEDドライバ及びPWM信号の制御方法を提供することを目的とする。
【0026】
本発明の他の技術的特徴、目的、及び作用効果又は利点は、添付した図面を参照して説明される以下の実施形態により明らかにされる。本明細書に記載された作用効果又は利点はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また他の作用効果又は利点があってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像表示システムの概略的構成の一例を示すブロックダイアグラムである。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係るLEDドライバモジュールの概略的構成の一例を示すブロックダイアグラムである。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係るLEDドライバモジュールの詳細を説明するためのブロックダイアグラムである。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態に係るLEDドライバモジュールの補正量テーブル部における補正量テーブルの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態に係るLEDドライバモジュールによる補正処理の対象である補正対象サブピクセルを説明するための図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態に係るLEDドライバモジュールのPWM値保持部の記憶内容を説明するための図である。
【
図7A】
図7Aは、本発明の一実施形態に係るLEDドライバモジュールの補正処理部による補正処理を説明するためのフローチャートである。
【
図7B】
図7Bは、本発明の一実施形態に係るLEDドライバモジュールの補正処理部による補正処理を説明するためのフローチャートである。
【
図8】
図8は、補正対象サブピクセルのPWM値に対して必要な補正量ΔPWMを差分値ごとに示したグラフである。
【
図9】
図9は、
図8に示したグラフの領域Bにおける差分値に対する必要な補正量の変化を示すグラフである。
【
図10】
図10は、
図8に示したグラフの領域Cにおける差分値に対する必要な補正量の変化を示すグラフである。
【
図11】
図11は、本発明の一実施形態に係るLEDドライバモジュールの概略的構成の他の例を示すブロックダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形(例えば各実施形態を組み合わせる等)して実施することができる。また、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付して表している。図面は模式的なものであり、必ずしも実際の寸法や比率等とは一致しない。図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることがある。
【0029】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の一実施形態に係る画像表示システムの概略的構成の一例を示すブロックダイアグラムである。同図に示すように、本実施形態の画像表示システム1は、送信装置10と、受信装置20とを含み構成され得る。送信装置10と受信装置20とは、典型的には、信号伝送チャネルを介して接続される。本例の画像表示システム1では、送信装置10と受信装置20とが別体として構成されているが、これに限られるものでなく、1つの電子機器における送信装置10及び受信装置20として構成されても良い。
【0030】
送信装置10は、例えば、信号伝送システムにおけるソース機器である。一例として、送信装置10は、パーソナルコンピュータや映像制御装置等であり得る。送信装置10は、表示装置に表示されるべき画像の画像データ信号を生成し、これを受信装置20に送信する。本開示では、送信装置10は、生成した画像データ信号を受信装置20に送信する。
【0031】
受信装置20は、例えば、信号伝送システムにおけるシンク機器である。受信装置20は、例えば、表示装置として機能するLEDディスプレイ22と、LEDディスプレイ22を制御するLEDドライバモジュール21とを含み構成され得る。受信装置20は、LEDドライバモジュール21の制御の下、送信装置10から送信される画像データ信号を受信し、該受信した画像データ信号に基づく画像をLEDディスプレイ22に表示する。
【0032】
LEDディスプレイ22は、複数のLEDパネル(図示せず)から構成される自発光型ディスプレイである。LEDディスプレイ22は、既知のものを用いることができる。各LEDパネルは、アレイ状に配列された複数のピクセルを含み構成される。各ピクセルは、異なる色、例えば、赤色、緑色、及び青色のLED素子からなる。本開示では、各LEDパネルの1ラインは例えば16個のピクセル(すなわち、48個のサブピクセル)で構成されているものとする。なお、本開示では、ピクセルを構成する各色のLED素子のそれぞれをサブピクセルと称することもある。図中、LEDディスプレイ22は、受信装置20の一部として示されているが、受信装置20とは別体に構成されても良い。また、本開示では、表示装置としてLEDディスプレイ22を例に説明するが、これに限られず、直下型カラーLEDバックライトを採用した液晶ディスプレイであっても良い。
【0033】
LEDドライバモジュール21は、送信装置10から受信した画像データ信号に基づいて、LED素子の発光を制御するためのPWM信号(パルス幅変調信号)を生成し、該生成されるPWM信号に従ってLEDディスプレイ22の駆動を制御する。以下で詳述されるように、本開示のLEDドライバモジュール21は、LEDディスプレイ22に表示されるべき画像に依存した「縞現象」や「赤み現象」の発生を抑制するために、PWM信号を補正する機能を含み構成されている。
【0034】
図2は、本発明の一実施形態に係るLEDドライバモジュールの概略的構成の一例を示すブロックダイアグラムである。同図に示すように、LEDドライバモジュール21は、例えば、PWM信号生成部210と、PWM値保持部220と、補正処理部230と、ピクセルカウンタ部240と、補正量テーブル部250と、出力選択部260と、LED駆動部270といったコンポーネントを含み構成され得る。LEDドライバモジュール21は、図示しないクロック回路から供給される動作クロック信号に従って動作する。
【0035】
PWM信号生成部210は、図示しないインターフェース回路を介して送信装置10から受信する画像データ信号に基づいて、各LED素子(サブピクセル)を駆動するためのPWM信号を生成する。LED素子の輝度(発光量)は、PWM信号の値(以下「PWM値」という。)に応じて決定される。PWM値とは、ある時間(動作クロックタイミング)における値、すなわちデューティ比である。PWM値は、例えば10ビットで表現される。PWM信号生成部210は、生成したPWM信号を順次にPWM値保持部220に出力する。
【0036】
PWM値保持部220は、PWM信号生成部210により生成されたサブピクセルごとのPWM値を一時的に記憶する。PWM値保持部220は、例えば、複数のシフトレジスタにより構成される。本開示では、補正対象である1つのサブピクセルの補正量を算出するために、LEDパネルにおける1ライン分のサブピクセルのPWM値が用いられる。このため、各シフトレジスタは、LEDパネルにおける1ライン分のサブピクセルに対するPWM値を記憶することができるように構成される。各シフトレジスタの記憶素子は、PWM信号のビット幅と等しいか又は大きいビット幅を有するように構成される。動作クロックに従ってPWM値保持部220の先頭段の記憶素子に記憶されたPWM値は、動作クロックに従って、順次に最終段の記憶素子まで移動する。
【0037】
補正処理部230は、PWM値保持部220から読み出したPWM信号(PWM値)を補正する。後述するように、補正処理部230は、動作クロックに従いピクセルカウンタ部240が示すカウント値に従って、該読み出したPWM値に対する補正量を算出し、更に、該算出した補正量に基づいて該PWM値を補正するための演算回路232を含む(
図3参照)。ピクセルカウンタ部240は、動作クロックに従って、0からn-1(本例ではn=16)のピクセルカウンタ値を循環的に出力する。
【0038】
本開示では、補正処理部230は、例えば、補正量テーブル部250を参照することにより得られる補正量(補正パラメータ)に基づいて、補正量を算出する。後述するように、補正処理部230は、1ライン分のピクセルのそれぞれを構成するサブピクセルごとに割り当てられた演算回路を含み構成される(
図3参照)。補正処理部230は、LEDパネルの1ラインあたり並列的に演算処理可能なn個(本例では48個)の演算回路から構成されている。補正処理部230は、各演算回路において算出した補正量に基づいて得られる補正されたPWM信号(以下「補正PWM信号」といい、その値を「補正PWM値」という。)を出力選択部260に出力する。本実施形態の補正処理部230は、補正量テーブル部250を参照することにより補正量を取得する構成であるが、他の実施形態で説明されるように、補正処理部230は、所定の近似式を用いて、補正量を算出するように構成されても良い。
【0039】
補正量テーブル部250は、PWM値に対する補正量を算出するための補正量を定義したテーブルである。具体的には、補正量テーブル部250は、補正対象であるサブピクセルについて、該補正対象サブピクセルのPWM値(PWMtarget)と該参照サブピクセルのPWM値との間の差分値(d)と、参照されるべきサブピクセルのPWM値(PWMref)とに基づいて補正量を規定している。補正量テーブル部250は、例えば、不揮発性メモリ上にデータ構造として実装され得る。なお、補正量テーブル部250は、補正処理部230の一部として構成されても良い。
【0040】
出力選択部260は、補正処理部230の各演算回路から並列的に出力される補正PWM信号を、ピクセルカウンタ部240が示すカウント値に従ってピクセルごとに順番に選択的に出力する選択回路である。出力選択部260は、選択したピクセルの補正PWM信号をLED回路に出力する。
【0041】
LED駆動部270は、補正処理部230から出力される補正PWM信号に従って、LED素子に供給すべき電流を制御することにより、LED素子の発光を制御する。LED駆動部270は、例えば、動作クロックに従って、1ラインごとに各LED素子を時分割で制御し得る。
【0042】
図3は、本発明の一実施形態に係るLEDドライバモジュールの詳細を説明するためのブロックダイアグラムである。同図は、
図2に示したLEDドライバモジュール21の構成の一部をより詳細に示している。
【0043】
すなわち、同図に示すように、補正処理部230は、各LEDパネルの1ラインにおけるピクセルを構成するサブピクセルに対応する演算回路232(R0~Rn-1,G0~Gn-1,B0~Bn-1)を含み構成される。各演算回路232には、動作クロックに従ってピクセルカウンタ部240からカウント値が入力される。各演算回路232は、ピクセルカウンタ部240から出力されるカウント値に従って、PWM値保持部220からサブピクセルのPWM値を順次に読み出して、該読み出したPWM値に対する補正量を算出し、更に、該算出した補正量に基づいて該PWM値を補正する。
【0044】
補正量テーブル部250は、各色に対応した補正量テーブル252(R,G,B)を含み構成される。各補正量テーブル252(R,G,B)は、対応する色の演算回路232(R0~Rn-1,G0~Gn-1,B0~Bn-1)によって参照される。
【0045】
図4は、本発明の一実施形態に係るLEDドライバモジュールの補正量テーブル部における補正量テーブルの一例を示す図である。上述したように、補正量テーブル252は、各色について、補正対象サブピクセルのPWM値(PWMtarget)と該参照サブピクセルのPWM値との間の差分値(d)と、参照されるべきサブピクセルのPWM値(PWMref)との関係において補正量を規定している。また、本例では、補正量テーブル252は、差分値と参照サブピクセルのPWM値との関係の例外として、差分値が0の場合の補正量(すなわち、この場合の補正量ΔPWMは0)、及び補正対象サブピクセルのPWM値が参照サブピクセルのPWM値よりも小さい場合の補正量(すなわち、この場合の補正量ΔPWMは0)を含み構成されている。なお、補正量テーブル252に定義される補正量は、例えば、図示しないレジスタの値に従って、変更可能に設定されても良い。例えば、補正量は、周囲の温度に依存して変化するため、温度ごとに参照されるべき補正量を記録した補正量テーブル252を用意し、測定された周囲の温度に依存して補正量テーブル252を選択的に変更しても良い。
【0046】
図3に戻り、出力選択部260もまた、各色に対応する出力選択回路262(R,G,B)を含み構成される。各出力選択回路262(R,G,B)は、ピクセルカウンタ部240から出力されるカウント値に従って、対応する補正PWM値を選択し、LED駆動部270に出力する。
【0047】
次に、補正処理部230による具体的な補正処理について説明する。上述したように、1つのLEDパネルの同一ラインにおいて、デューティ比が大きいPWM信号により駆動されるLED素子(サブピクセル)は、デューティ比が小さいLED素子の影響を受けることにより、その発光時間が短くなってしまい、該LED素子の輝度値が低下するため、いわゆる「縞現象」が発生する。加えて、画面上に低輝度画像が表示される場合、いわゆる「赤み現象」が発生する。このような「縞現象」や「赤み現象」の度合いは、(1)サブピクセル間のPWM値の差、(2)デューティ比が小さいサブピクセルの数、及び(3)デューティ比が相対的に小さいサブピクセルのPWM値に依存することを本発明者らは見出した。
【0048】
したがって、補正処理部230の各演算回路232は、例えば
図5に示すように、補正対象のサブピクセル(同図(a)の例ではピクセル番号「0」の赤色サブピクセル)に対して、LEDパネルの同一ライン内の他のサブピクセルのそれぞれのPWM値を用いて、個々の補正量を算出する。そして、各演算回路232は、算出した補正量を累積することによって累積補正量を算出し、該算出した累積補正量に基づいて補正対象サブピクセルのPWM値を補正する。
【0049】
図6は、本発明の一実施形態に係るLEDドライバモジュールのPWM値保持部の記憶内容を説明するための図である。すなわち、同図は、ピクセルカウンタ部240のピクセルカウンタ値i(i=0~N-1)ごとに、PWM値保持部220の赤色サブピクセル用の記憶素子#0~#N-1に保持されたPWM値を示している。例えば、ピクセルカウンタi=0のとき、記憶素子#0には補正対象サブピクセルR(0)のPWM値が保持されている。同図から明らかなように、補正対象サブピクセルR(0)のPWM値は、ピクセルカウンタ値iの増加に従って記憶素子#0から#N-1まで移動する。したがって、補正処理部230の演算回路232は、ピクセルカウンタ値iに従って、PWM値保持部220の対応する記憶素子を特定し、そこに保持されたPWM値を読み出す。後述するように、各演算回路232は、対応するサブピクセルごとに、記憶素子からの読み出し開始及び終了のタイミングが異なるように構成されている。
【0050】
例えば、サブピクセルR(0)に対して補正を行う演算回路232(R0)は、ピクセルカウンタ値i=0のとき、PWM値保持部220の記憶素子#0に保持されたPWM値を補正対象サブピクセルのPWM値として読み出し、ピクセルカウンタ値i=1のとき、記憶素子#1に保持されたPWM値を補正対象サブピクセルのPWM値として読み出し、同様にして、ピクセルカウンタ値i=n-1のとき、記憶素子#n-1に保持されたPWM値を補正対象サブピクセルのPWM値として読み出す。つまり、補正対象サブピクセルのPWM値は、動作クロックに従ってPWM値保持部220の記憶素子を順次に移動するため、演算回路232(R0)は、これに同期させて、読み出し元の記憶素子から補正対象サブピクセルのPWM値を読み出す。
【0051】
また、サブピクセルR(1)に対して補正を行う演算回路232(R1)は、ピクセルカウンタ値i=0のときは、1サイクル前の処理の記憶素子#N-1に保持されたPWM値を補正対象サブピクセルのPWM値として読み出し、ピクセルカウンタ値i=1のとき、PWM値保持部220の記憶素子#0に保持されたPWM値を補正対象サブピクセルのPWM値として読み出し、ピクセルカウンタi=2のとき、記憶素子#1に保持されたPWM値を補正対象サブピクセルのPWM値として読み出し、同様に、ピクセルカウンタi=n-1のとき、記憶素子#n-2に保持されたPWM値を補正対象サブピクセルのPWM値として読み出す。
【0052】
同様に、サブピクセルR(2)に対して補正を行う演算回路232(R2)は、ピクセルカウンタ値i=0及びi=1のときは、それぞれ、1サイクル前の処理の記憶素子#N-2及び#N-1に保持されたPWM値を補正対象サブピクセルのPWM値として読み出し、ピクセルカウンタ値i=2のとき、PWM値保持部220の記憶素子#0に保持されたPWM値を補正対象サブピクセルのPWM値として読み出し、ピクセルカウンタ値i=3のとき、記憶素子#1に保持されたPWM値を補正対象サブピクセルのPWM値として読み出し、同様に、ピクセルカウンタ値i=n-1のとき、記憶素子#n-3に保持されたPWM値を補正対象サブピクセルのPWM値として読み出す。
【0053】
なお、上記の例では、サブピクセルR(0)以外のサブピクセルに対応する演算回路232は、ピクセルカウンタ値iが自身のピクセル番号よりも小さいときは、1サイクル前の記憶素子からPWM値を読み出すように構成されているが、これに限られず、休止状態にしても良い。
【0054】
また、補正処理部230の各演算回路232は、ピクセルカウンタ値iの各サイクルで、補正対象サブピクセル以外のサブピクセル(これらを「参照サブピクセル」と称するものとする。)のPWM値PWMrefを取得し、補正量を算出する。各演算回路232は、PWM値保持部220の対応する番号の記憶素子からPWM値PWMrefを取得する。例えば、サブピクセルR(0)に対して補正を行う演算回路232(R0)は、各サイクルで、PWM値保持部220の赤色、緑色及び青色用の各記憶素子#0からPWM値PWMrefを取得する。また、同様に、サブピクセルR(1)に対して補正を行う演算回路232(R1)は、各サイクルで、PWM値保持部220の赤色、緑色及び青色用の各記憶素子#1からPWM値PWMrefを取得する。
【0055】
図7A及び7Bは、本発明の一実施形態に係るLEDドライバモジュールの補正処理部による補正処理を説明するためのフローチャートである。補正処理部230の各演算回路232は、ピクセルカウンタ値iに従って、かかる処理を実行する。なお、ピクセルカウンタ部240によるピクセルカウンタ値iのカウントは、演算回路232は、ステップS702からS715までの処理に同期している。ピクセルカウンタ部240によりカウントされるピクセルカウンタ値iは、LEDパネルの1ライン分の最初のピクセル(ピクセル番号0)のPWM値に対する補正処理を開始するタイミングで、初期値(i=0)にリセットされる。
【0056】
同
図Aに示すように、演算回路232は、ピクセルカウンタ部240からピクセルカウンタ値iを取得し(S701)、ピクセルカウンタ値iが補正対象のピクセルの番号mと一致するか否かを判断する(S702)。演算回路232は、ピクセルカウンタ値iが補正対象のピクセルの番号mと一致すると判断する場合(S702のYes)、新しいラインの補正処理を開始するために、累積補正量ΔPWMallの値をリセットする(S703)。続いて、演算回路232は、ピクセル番号m及びピクセルカウンタ値iに従って、PWM値保持部220の対応する記憶素子から補正対象サブピクセルのPWM値PWMtargetを取得する(S704)。
【0057】
一方、演算回路232は、ピクセルカウンタ値iが補正対象のピクセルの番号mと一致しないと判断する場合(S702のNo)、現在のラインでの補正処理を継続中であるため、ピクセル番号m及びピクセルカウンタ値iに従って、PWM値保持部220の対応する記憶素子から補正対象サブピクセルのPWM値PWMtargetを取得する(S704)。例えば、演算回路232(R0)は、ピクセルカウンタ値i=0のとき、PWM値保持部220の記憶素子#0に保持されたPWM値PWMtargetを取得する。
【0058】
続いて、演算回路232は、ピクセル番号mに従って、参照サブピクセルのPWM値PWMrefを取得する(S705)。例えば、演算回路232(R0)は、ピクセルカウンタ値iの各サイクルで、PWM値保持部220の赤色、緑色及び青色用の記憶素子#0のそれぞれからPWM値を取得する。
【0059】
次に、演算回路232は、補正対象サブピクセルのPWM値PWMtargetと参照サブピクセルのPWM値PWMrefとを比較する(S706)。演算回路232は、該比較の結果、補正対象サブピクセルのPWM値PWMtargetが参照サブピクセルのPWM値PWMrefよりも小さいと判断する場合(S706のYes)、補正量ΔPWMを0にセットする(S709)。これは、補正対象サブピクセルのPWM値PWMtargetが参照サブピクセルのPWM値PWMrefよりも小さければ、補正対象サブピクセルは参照サブピクセルの影響を受けないか又は無視できる程度に小さいからである。
【0060】
一方、演算回路232は、該比較の結果、補正対象サブピクセルのPWM値PWMtargetが参照サブピクセルのPWM値PWMrefよりも小さくないと判断する場合(S706のNo)、補正対象サブピクセルのPWM値PWMtargetと参照サブピクセルのPWM値PWMrefとの差分値dを算出し(S707)、続いて、演算回路232は、差分値dが0であるか否かを判断する(S708)。
【0061】
演算回路232は、差分値dが0である(実質的に0とみなすことができる)と判断する場合(S708のYes)、補正量ΔPWMを0にセットする(S709)。なお、差分値dが「実質的に0」とは、例えば、差分値dの下限しきい値を超えない値の範囲を含み得る又は差分値dを無視し得るほど小さいという意味である。一方、演算回路232は、差分値dが0でないと判断する場合(S708のNo)、続いて、参照サブピクセルのPWM値PWMrefが0であるか否かを判断する(S710)。
【0062】
演算回路232は、参照サブピクセルのPWM値PWMrefが0であると判断する場合(S710のYes)、補正量ΔPWMをYzにセットする(S711)。Yzは、実験等により得られた値であり、例えば、当該補正処理における最大補正量である。一方、演算回路232は、参照サブピクセルのPWM値PWMrefが0でないと判断する場合(S710のNo)、補正量テーブル252を参照し、参照サブピクセルのPWM値PWMrefと算出した差分値dとの関係から、補正量ΔPWMを決定する(S712)。
【0063】
上述のように補正量ΔPWMを取得した演算回路232は、続いて、取得した補正量ΔPWMを用いて、累積補正量ΔPWMallを算出する(S713)。演算回路232は、例えば下記の式を用いて、累積補正量ΔPWMallを算出し、更新する。
ΔPWMall_*=ΔPWMall_*+ΔPWM_R+ΔPWM_G+ΔPWM_B
ただし、ΔPWMall_*は、ΔPWMall_R、ΔPWMall_G、及びΔPWMall_Bのいずれかであり、ΔPWM_R、ΔPWM_G及びΔPWM_Bは、それぞれ、赤色の参照サブピクセルとの比較から得られる補正量ΔPWM、緑色の参照サブピクセルとの比較から得られる補正量ΔPWM、及び青色の参照サブピクセルとの比較から得られる補正量ΔPWMである。
【0064】
例えば、演算回路232(R0)は、ピクセルカウンタ値i=0のとき、ΔPWMall_R(0)=0にリセット後、これにサブピクセルR(0)、G(0)及びB(0)のPWM値による補正量を加算する。なお、補正対象サブピクセルR(0)については、PWM値PWMtargetはそのPWM値そのものであるため、補正量ΔPWMは0である。また、演算回路232(R0)は、ピクセルカウンタ値i=1のとき、現在のΔPWMall_R(0)にサブピクセルR(1)、G(1)及びB(1)のPWM値による補正量を累積的に加算する。同様にして、演算回路232(R0)は、ピクセルカウンタ値i=n-1のとき、現在のΔPWMall_R(0)にサブピクセルR(n-1)、G(n-1)及びB(n-1)のPWM値による補正量を累積的に加算する。
【0065】
また、演算回路232(R1)は、ピクセルカウンタ値i=1のとき、ΔPWMall_R(1)=0にリセット後、これにサブピクセルR(0)、G(0)及びB(0)のPWM値による補正量を加算する。また、演算回路232(R1)は、ピクセルカウンタ値i=2のとき、現在のΔPWMall_R(1)にサブピクセルR(1)、G(1)及びB(1)のPWM値による補正量を累積的に加算する。なお、補正対象サブピクセルR(1)については、PWM値PWMtargetはそのPWM値そのものであるため、補正量ΔPWMは0である。同様にして、演算回路232(R1)は、ピクセルカウンタ値i=n-1のとき、現在のΔPWMall_R(1)にサブピクセルR(n-2)、G(n-2)及びB(n-2)のPWM値による補正量を累積的に加算する。
【0066】
続いて、演算回路232は、ピクセルカウンタ値iがm-1に達したか否かを判断する(S714)。演算回路232は、ピクセルカウンタ値iがm-1に達していないと判断する場合(S714のNo)、ステップS702の処理に戻る。これにより、演算回路232は、ピクセルカウンタ部240から入力される次のピクセルカウンタ値iに従って、補正処理を繰り返す。つまり、ピクセルカウンタ値i=mの時点で(S702のYes)、ΔPWMall_R(1)はリセットされているので(S703)、S714においてYes(ピクセルカウンタ値i=m-1)の場合には、m番目のサブピクセルについての1ライン分の補正量の累積が完了したことを意味し、S714においてNo(ピクセルカウンタ値i≠m-1)の場合には、補正量が累積している最中であることを意味している。
【0067】
一方、演算回路232は、ピクセルカウンタ値iがm-1に達したと判断する場合(S714のYes)、1ライン分の算出された累積補正量ΔPWMallに基づいて、補正対象サブピクセルのPWM値PWMtargetを補正する。すなわち、演算回路232は、補正対象サブピクセルのPWM値PWMtargetに累積補正量ΔPWMallを加算して、補正PWM値PWMcorrectを算出する。演算回路232は、算出した補正PWM値PWMcorrectを出力選択部260に出力する(S715)。
【0068】
以上のようにして、1ライン分のピクセルのPWM値を補正した演算回路232は、次のラインのピクセルのPWM値を補正する。これにより、本実施形態の補正処理部230は、LEDパネルの同一ラインにおいて、デューティ比が大きいサブピクセルのPWM値は、デューティ比が小さいサブピクセルのPWM値による影響を受けるような場合であっても、他のサブピクセルのPWM値との差分値及びデューティ比が小さいサブピクセルの数等を考慮して決定した補正量により補正されるため、いわゆる「縞現象」の発生を抑制することができるようになる。加えて、補正処理部230は、各色別に当該補正処理を行っているため、効率よくホワイトバランスを補正することができるようになる。
【0069】
次に、補正量テーブル252における各補正量について説明する。上述したように、本開示では、補正量ΔPWMは、実験により得られたデータに基づいて、定義されている。
図8は、補正対象サブピクセルのPWM値に対して必要な補正量ΔPWMを差分値ごとに示したグラフである。同図に示したグラフの領域Aでは、参照サブピクセルのPWM値が0の場合、補正対象サブピクセルのPWM値及び/又は差分値に拘わらず、補正量ΔPWMは約1(他の参照ピクセルと比較した値である。)となっている。したがって、本開示の補正量テーブル252は、参照サブピクセルのPWM値が0の場合、補正量ΔPWMは最大値Yzとして定義している(
図4参照)。
【0070】
また、
図9は、
図8に示したグラフの領域Bにおける差分値に対する必要な補正量の変化を示すグラフである。同図に示すように、領域Bでは、差分値の増加に伴い、必要な補正量が非線形的に増加している。これより、本開示の補正量テーブル252は、差分値の増分を幾つかのレンジに分けて定義している(
図4参照)。
【0071】
また、
図8に示したグラフの領域Cは、参照サブピクセルのPWM値が1~64である場合の領域である。同図からわかるように、この領域では、参照サブピクセルのPWM値が小さければ小さいほど補正量△PWMが大きくなり、参照サブピクセルのPWM値が大きくなると補正量△PWMが小さくなる。また、領域Cでは、補正量ΔPWMが、領域Bにおけるそれよりも大きい。したがって、領域Cについて、補正対象サブピクセルのPWM値と参照サブピクセルのPWM値と差分値と、必要な補正量ΔPWMは、
図10に示すようなグラフになる。これより、本開示の補正量テーブル252は、参照サブピクセルのPWM値を幾つかのレンジに分けて定義している(
図4参照)。
【0072】
以上のように、本実施形態によれば、LEDドライバモジュール21は、LEDパネルの1ラインにおける各サブピクセル(補正対象サブピクセル)のPWM値を、当該ラインの他のサブピクセル(参照サブピクセル)のPWM値を用いて補正量を決定し、決定した補正量に基づいて補正しているので、「縞現象」の発生を抑制することができるようになる。とりわけ、本実施形態によれば、補正対象サブピクセルのPWM値と参照サブピクセルのPWM値との差分値、PWM値が相対的に小さい参照サブピクセルの数、及び/又はPWM値が相対的に小さい参照ピクセルのPWM値を考慮して、補正量を決定しているため、より効率的に「縞現象」の発生を抑制することができる。また、本実施形態によれば、サブピクセルごとに補正処理を行っているため、「縞現象」の発生を抑制すると同時に、「赤み現象」の発生を抑制することができる。
【0073】
[第2の実施形態]
上記実施形態では、補正量テーブル部250を参照することにより補正量が取得される態様が説明されたが、本実施形態では、所定の近似式を用いて、補正量が算出される態様が説明される。
【0074】
図12は、本発明の一実施形態に係るLEDドライバモジュールの概略的構成の一例を示すブロックダイアグラムである。本実施形態のLEDドライバモジュール21は、補正処理部230及び補正量テーブル部250に代え、補正量算出部231を含む補正処理部230’を備える点で、
図2に示したものと異なっている。同図では、上記実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付しており、適宜、その説明を省略する。
【0075】
すなわち、補正量算出部231は、例えば、差分値に対する補正量の変化(特徴1)及び比較対象である参照サブピクセルのPWM値に対する補正量の変化(特徴2)のそれぞれについて、下記に示す近似多項式を実現する回路を含み構成され得る。
y=anxn+an-1xn-1+an-2xn-2+ … +a1x+a0
ただし、a及びbは定数である。
【0076】
補正量算出部231は、上述したような差分値(d)と、参照されるべきサブピクセルのPWM値(PWMref)との関係に従って、特徴1及び2のいずれかの近似多項式を用いて、補正量を算出する。なお、近似式は、上記に限られず、適宜のものを採用し得る。
【0077】
このように、補正処理部230’は、補正量テーブル部250を用いずに、画像データ信号に基づいて生成されるPWM値に基づいて、補正対象サブピクセルのPWM値に対する補正量を算出し、該算出した補正量に従ってPWM値を補正することができる。したがって、上記実施形態と同様に、「縞現象」及び「赤み現象」の発生を抑制することができる。
【0078】
上記各実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな形態で実施することができる。
【0079】
例えば、本明細書に開示される方法においては、その結果に矛盾が生じない限り、ステップ、動作又は機能を並行して又は異なる順に実施しても良い。説明されたステップ、動作及び機能は、単なる例として提供されており、ステップ、動作及び機能のうちのいくつかは、発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略でき、また、互いに結合させることで一つのものとしてもよく、また、他のステップ、動作又は機能を追加してもよい。
【0080】
また、本明細書では、さまざまな実施形態が開示されているが、一の実施形態における特定のフィーチャ(技術的事項)を、適宜改良しながら、他の実施形態に追加し、又は該他の実施形態における特定のフィーチャと置換することができ、そのような形態も本発明の要旨に含まれる。
【0081】
例えば、本開示では、画像表示システム1は、各サブピクセルを駆動するためのPWM信号の値を補正するように構成されたが、これに限られず、例えば、各サブピクセルに対するRGB信号の値や電流量を補正するように構成されても良い。例えば、送信装置1が、各サブピクセルに対するRGB信号の値を補正するように構成されても良いし、或いは、本開示に係る技術に従ってRGB信号の値を補正する補正処理装置が送信装置1と受信装置2との間に設けられても良い。或いは、表示装置として機能するLEDディスプレイ21が、各サブピクセルに対する電流量を補正するように構成されても良いし、或いは、LEDドライバモジュール21とLEDディスプレイ22との間にそのような補正処理装置が設けられても良い。このような構成においても、上記実施形態と同様の利点又は作用効果を奏し得る。
【0082】
また、ここに開示される要素の機能は、当該開示される要素を実行するように構成された、あるいは当該開示される機能を実行するようにプログラミングされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(「特定用途向け集積回路」)、従来の回路構成及び/又はそれらの組み合わせを含む回路構成あるいは処理回路構成が用いられて実装されても良い。プロセッサは、それが、その中にトランジスタ及び他の回路構成を含むとき、処理回路構成あるいは回路構成としてみなされる。本開示において、回路構成、ユニットあるいは手段は、挙げられた機能を実行するハードウェア、あるいは当該機能を実行するようプログラミングされた、あるいは当該機能を実行するように構成された、ここで開示されるいかなるハードウェアあるいは既知の他のものであってもよい。ハードウェアが、あるタイプの回路構成としてみなされるかもしれないプロセッサであるとき、回路構成、手段あるいはユニットは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせ、ハードウェアを構成するために用いられるソフトウェアおよび/またはプロセッサである。
【符号の説明】
【0083】
1…画像表示システム
10…送信装置
20…受信装置
21…LEDドライバモジュール
210…PWM信号生成部
220…PWM値保持部
230…補正処理部
231…補正量算出部
232…演算回路
240…ピクセルカウンタ部
250…補正量テーブル部
260…出力選択部
262…出力選択回路
270…LED駆動部
22…LEDディスプレイ