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特許7436681たばこ製品用の香味成分含有溶液の製造方法及び製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】たばこ製品用の香味成分含有溶液の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   A24B 15/24 20060101AFI20240214BHJP
   A24B 15/167 20200101ALI20240214BHJP
   B01D 1/00 20060101ALI20240214BHJP
   B01D 8/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A24B15/24
A24B15/167
B01D1/00 Z
B01D8/00 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022541522
(86)(22)【出願日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 JP2021028547
(87)【国際公開番号】W WO2022030426
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2022-10-31
(31)【優先権主張番号】P 2020131388
(32)【優先日】2020-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉村 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】宮前 博一
(72)【発明者】
【氏名】山田 学
(72)【発明者】
【氏名】井上 康信
(72)【発明者】
【氏名】松本 光史
【審査官】吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/129098(WO,A1)
【文献】特表2020-519274(JP,A)
【文献】国際公開第2020/245410(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24B 15/24
A24B 15/167
B01D 1/00
B01D 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセリン及びプロピレングリコールの少なくとも一方を含むエアロゾル基材から構成されるエアロゾルを、180℃~220℃に加熱された植物材料に接触させる工程と、前記植物材料に接触させた後のエアロゾルを捕集する工程と、を含む、たばこ製品用の香味成分含有溶液の製造方法。
【請求項2】
前記エアロゾル基材が、グリセリン、プロピレングリコール及びこれらの混合物から選ばれる1種以上である、請求項1に記載のたばこ製品用の香味成分含有溶液の製造方法。
【請求項3】
前記エアロゾル基材が、グリセリン及びプロピレングリコールの混合物である、請求項2に記載のたばこ製品用の香味成分含有溶液の製造方法。
【請求項4】
前記植物材料が、ハーブ材料、たばこ材料およびこれらの混合物から選ばれる1種以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載のたばこ製品用の香味成分含有溶液の製造方法。
【請求項5】
前記植物材料が、植物の葉肉、葉脈、茎、根、花、種子および果実から選ばれる1種以上を含む、請求項4に記載のたばこ製品用の香味成分含有溶液の製造方法。
【請求項6】
前記植物材料が、香味発現助剤を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のたばこ製品用の香味成分含有溶液の製造方法。
【請求項7】
前記植物材料が、ポリオールを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のたばこ製品用の香味成分含有溶液の製造方法。
【請求項8】
前記植物材料が、刻まれた状態、または、粉砕された状態である、請求項1~7のいずれか一項に記載のたばこ製品用の香味成分含有溶液の製造方法。
【請求項9】
前記植物材料が、刻まれた状態、または、粉砕された後に顆粒形状もしくはシート形状に再構成されたものである、請求項8に記載のたばこ製品用の香味成分含有溶液の製造方法。
【請求項10】
前記たばこ材料に接触させるエアロゾルの温度が、20℃以上、180℃未満である、請求項1~9のいずれか一項に記載のたばこ製品用の香味成分含有溶液の製造方法。
【請求項11】
グリセリン及びプロピレングリコールの少なくとも一方を含むエアロゾル基材からエアロゾルを生成させる装置と、
植物材料が内部に配置され、前記生成したエアロゾルが該内部を通過することで、該植物材料とエアロゾルが接触する、植物材料充填層と、
前記植物材料充填層を180℃~220℃に加熱するヒーターと、
前記植物材料充填層を通過したエアロゾルを捕集する捕集装置と、を備える、たばこ製品用の香味成分含有溶液の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たばこ製品用の香味成分含有溶液の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たばこ製品の香味を変えるために、種々の香味成分を含有する溶液が用いられることが多い。香味成分としては、たばこ材料に由来するものを挙げることができる。たばこ材料に由来する香味成分を含有する溶液を得るために、いくつかの方法が提案されている。
例えば特許文献1は、たばこ風味抽出物を得るためのプロセスを開示し、該プロセスはたばこの混合物を約30℃~約90℃の温度へと約30秒~約1時間の間加熱してコンディショニングをする工程を含む。また、特許文献2は、たばこ材料から揮発成分を抽出する方法と、抽出された揮発成分を含むプレベイパー製剤を作製する方法を開示しており、該方法はたばこ材料を約50℃~約250℃の範囲の温度に加熱することと、加熱されたたばこ材料から揮発分を回収すること、回収する工程の後で揮発分をプレベイパー製剤と化合することとを含むことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2018-537082号公報
【文献】特表2019-507592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の方法では、たばこ材料の加熱を低温(約30℃~約90℃)で行っており、たばこ材料に含まれる香味成分を十分に回収できないことが予想される。また、特許文献2の方法では、たばこ材料を加熱することにより生成する揮発成分の回収を、例えば、活性炭吸収材またはその他の微小孔性材料のような吸収材に、揮発成分を吸着、吸収させるか、あるいは揮発成分を凝縮させることで行う。このような方法では、吸収材が別途必要になったり、凝縮させる途中の段階で、揮発成分がロスしたりすることがある。また、加熱温度が高温であることで、望ましくない香味成分が発生することがある。
【0005】
そこで、本発明では、植物材料に由来する香味成分を効率よく収集できるとともに、不所望の香味成分を極力含むことのない、たばこ製品用の香味成分含有溶液の製造方法と、その製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討した結果、グリセリン及びプロピレングリコールの少なくとも一方を含むエアロゾル基材から構成されるエアロゾルを、180℃~220℃に加熱された植物材料に接触させる工程と、前記植物材料に接触させた後のエアロゾルを捕集する工程と、を含む方法によれば、植物材料に由来する香味成分を効率よく収集できるとともに、不所望の香味成分を極力含むことのない、たばこ製品用の香味成分含有溶液を提供できることを見出し、本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
[1] グリセリン及びプロピレングリコールの少なくとも一方を含むエアロゾル基材から構成されるエアロゾルを、180℃~220℃に加熱された植物材料に接触させる工程と、前記植物材料に接触させた後のエアロゾルを捕集する工程と、を含む、たばこ製品用の香味成分含有溶液の製造方法。
[2] 前記エアロゾル基材が、グリセリン、プロピレングリコール及びこれらの混合物から選ばれる1種以上である、[1]に記載のたばこ製品用の香味成分含有溶液の製造方法。
[3] 前記エアロゾル基材が、グリセリン及びプロピレングリコールの混合物である、[2]に記載のたばこ製品用の香味成分含有溶液の製造方法。
[4] 前記植物材料が、ハーブ材料、たばこ材料およびこれらの混合物から選ばれる1種以上である、[1]~[3]のいずれかに記載のたばこ製品用の香味成分含有溶液の製造方法。
[5] 前記植物材料が、植物の葉肉、葉脈、茎、根、花、種子および果実から選ばれる1種以上を含む、[4]に記載のたばこ製品用の香味成分含有溶液の製造方法。
[6] 前記植物材料が、香味発現助剤を含む、[1]~[5]のいずれかに記載のたばこ製品用の香味成分含有溶液の製造方法。
[7] 前記植物材料が、ポリオールを含む、[1]~[6]のいずれかに記載のたばこ製品用の香味成分含有溶液の製造方法。
[8] 前記植物材料が、刻まれた状態、または、粉砕された状態である、[1]~[7]のいずれかに記載のたばこ製品用の香味成分含有溶液の製造方法。
[9] 前記植物材料が、刻まれた状態、または、粉砕された後に顆粒形状もしくはシート形状に再構成されたものである、[8]に記載のたばこ製品用の香味成分含有溶液の製造方法。
[10] 前記たばこ材料に接触させるエアロゾルの温度が、20℃以上、180℃未満である、[1]~[9]のいずれかに記載のたばこ製品用の香味成分含有溶液の製造方法。
[11] グリセリン及びプロピレングリコールの少なくとも一方を含むエアロゾル基材からエアロゾルを生成させる装置と、
植物材料が内部に配置され、前記生成したエアロゾルが該内部を通過することで、該植物材料とエアロゾルが接触する、植物材料充填層と、
前記植物材料充填層を180℃~220℃に加熱するヒーターと、
前記植物材料充填層を通過したエアロゾルを捕集する捕集装置と、を備える、たばこ製品用の香味成分含有溶液の製造装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、植物材料に由来する香味成分を効率よく収集できるとともに、不所望の香味成分を極力含むことのない、たばこ製品用の香味成分含有溶液を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】植物材料(たばこ)の加熱温度と、香味成分(ニコチン)の回収量の関係を示す図である。
図2】植物材料(たばこ)の加熱温度と、外香スコアの関係を示す図である。
図3】本発明の製造装置の一態様の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、これらの説明は本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
本明細書において、「たばこ製品用」とは、いわゆる従来からのシガレット、非燃焼加熱式たばこまたは電気加熱式たばこ製品に用いられることを意味する。
また、本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
【0011】
[たばこ製品用の香味成分含有溶液の製造方法]
本発明の一実施形態である、たばこ製品用の香味成分含有溶液の製造方法(以下、単に本発明の製造方法ともいう)は、グリセリン及びプロピレングリコールの少なくとも一方を含むエアロゾル基材から構成されるエアロゾルを、180℃~220℃に加熱された植物材料に接触させる工程と、前記植物材料に接触させた後のエアロゾルを捕集する工程と、を含む。
<エアロゾル>
本発明の製造方法では、グリセリン及びプロピレングリコールの少なくとも一方を含むエアロゾル基材から構成されるエアロゾルを、所定の温度に加熱された植物材料に接触させる。上記エアロゾルは、エアロゾル基材を適当なエアロゾル生成装置によりエアロゾル化することにより生成することができる。
エアロゾル基材は、加熱されることでエアロゾルを生成する液体であり、グリセリン及びプロピレングリコールの少なくとも一方を含む。グリセリン及びプロピレングリコールの少なくとも一方とは、グリセリン単独、プロピレングリコール単独及びこれらの混合物から選ばれる態様であることを意味する。エアロゾル基材におけるグリセリン及びプロピレングリコールの合計の含有量は90重量%以上であることが好ましく、95重量%以上であることがより好ましく、100重量%であることが特に好ましい。なお、上記の重量%は不純物としての水については考慮しない。
エアロゾル基材におけるグリセリン及びプロピレングリコールの合計の含有量が100重量%である場合、エアロゾル基材がグリセリン単独、プロピレングリコール単独、またはグリセリン及びプロピレングリコールの混合物から構成されるということである。これらの中でも、エアロゾル基材がグリセリン及びプロピレングリコールの混合物であることが好ましい。この場合のグリセリンとプロピレングリコールの混合比については特に制限はないが、グリセリンの重量を1としたときにプロピレングリコールの重量が1~9となるように混合することが好ましく、1~2.5となるように混合することがより好ましい。
【0012】
エアロゾル生成装置としては、上記のエアロゾル基材をエアロゾル化できるものであれば特に制限はないが、例えば、生成基材を貯留するリザーバと、エアロゾル基材を霧化する電気的な負荷と、リザーバから負荷へエアロゾル基材を引き込むウィックと、エアロゾル基材が霧化されることで発生したエアロゾルが流れ、後述する植物材料を充填した植物材料充填層に繋がるエアロゾル流路と、を構成として含むものを挙げることができる。
上記リザーバは、エアロゾル基材を貯留する。リザーバには、樹脂ウェブや綿等の多孔体が収容されてもよく、且つ、エアロゾル基材が多孔体に含浸されていてもよい。リザーバには、樹脂ウェブ又は綿上の多孔質体が収容されず、エアロゾル基材のみが貯留されていてもよい。
上記負荷は、適当な電源から供給される電力によって燃焼を伴わずにエアロゾル基材を霧化する部材である。上記負荷は、所定ピッチで巻き回される電熱線(コイル)によって構成されているものを例示できる。なお、上記負荷は、エアロゾル基材を霧化してエアロゾルを発生可能な素子であればよく、例えば、発熱素子、又は超音波発生器である。発熱素子としては、発熱抵抗体、セラミックヒーター、及び誘導加熱式のヒーター等が挙げられる。
【0013】
エアロゾル基材を霧化したエアロゾルの温度は、通常20℃以上、290℃未満である。その中でも特に30℃以上であることが好ましく、38℃以上であることがより好ましい。上限については、エアロゾル基材の沸点よりも低い温度であることが好ましい。例えば、エアロゾル基材としてグリセリンを単独で含む場合を想定すると、上限として290℃未満を挙げることができる。一方、エアロゾル基材としてプロピレングリコールを単独で含む場合を想定すると、上限として188℃未満を挙げることができる。エアロゾル基材がこれらの混合物である場合、霧化されたエアロゾルの上限の温度としては、例えばプロピレングリコールの沸点である188℃未満を挙げることができる。さらに、エアロゾルの温度の上限として180℃未満を挙げることもできる。
また、植物材料の温度が設定した加熱温度よりも高くならないように、エアロゾルの温度を植物材料の加熱温度よりも低く設定することが好ましい。
上記ウィックは、リザーバから毛管現象を利用してエアロゾル基材を負荷へ引き込む液保持部材であってよく、例えば、ガラス繊維や多孔質セラミックなどによって構成されてもよい。
上記エアロゾル流路は、上記負荷の下流側に配置され、後述する植物材料に接触するように植物材料が充填された充填層に繋がる。上記のエアロゾルの温度は、エアロゾル生成装置と植物材料が充填された充填層とを繋ぐエアロゾル流路の、植物材料が充填された充填層の入口直前の位置に、流路外側より熱電対を差し込んで求めることができる。この方法によれば、エアロゾルと空気の混合流体の温度を測定することになるが、本明細書ではこの温度をエアロゾルの温度とする。
【0014】
本発明の製造方法では、上記エアロゾル基材から生成したエアロゾルを所定の温度に加熱された植物材料に接触させる。エアロゾルに所定温度の植物材料を接触させることで、植物材料に含まれる香味成分をエアロゾルに移行させることができる。植物材料へのエアロゾルの接触は、例えば後述するように植物材料が充填された充填層を準備し、その充填層の中にエアロゾルを流通させるという方法を用いることができる。充填層を形成する場合、下記で説明する種々の形態の植物材料を、エアロゾルを流通するための入口と出口を有する筒状の容器に充填したものを充填層とする態様を挙げることができる。筒状の容器の断面(横断面)形状は、円、楕円、多角形等を挙げることができる。
また、植物材料へのエアロゾルの接触は、流動床のように、容器内にエアロゾルを下部から噴射して植物材料がエアロゾルと容器内で高頻度に接触する環境で行われてもよい。
なお、エアロゾルに接触させる植物材料は、180℃~220℃に加熱されたものであることが必要である。植物材料が180℃未満である場合、植物材料に含まれる香味成分が十分にエアロゾルに移行しない。植物材料が220℃を超える場合、不所望の成分までもエアロゾルに移行してしまい、得られる香味成分含有溶液の香味が望ましくないものになる。
たばこ材料の温度調節は、エアロゾルの接触を植物材料の充填層に流通させる場合には、その充填層の周囲にヒーターを配置して行うヒーター加熱により行うことができる。
一方、流動床の場合には、エアロゾルと植物材料が接触する容器の温度を調節することでたばこ材料の温度を調節できる。
【0015】
本発明の製造方法は、植物材料に接触させた後のエアロゾルを捕集する工程を含む。エアロゾルを捕集する工程は、例えばエアロゾルを凝縮して液体にして捕集する工程であってもよい。エアロゾルを凝縮して液体にするために、エアロゾルを冷却する手段によりエアロゾルを凝縮してもよい。
冷却する手段としては公知の冷媒を用いた冷却装置を用いたり、液体窒素、ドライアイスなどの冷却剤を用いる手段を挙げることができ、その温度としては-200℃~10℃程度を挙げることができる。
エアロゾルを捕集する工程では、系を陰圧にすることで、植物材料に接触したエアロゾルが捕集工程で効率よく捕集されるようにしてもよい。
【0016】
<植物材料>
本発明の製造方法では、エアロゾルを植物材料に接触させることで植物材料に含まれる香味成分をエアロゾルに移行させる。植物材料としては、たばこ材料、アサイベリー、アルファルファ、オールスパイス、アナトーシード、あんず油、バジル、ビーバーム、野生ベルガモット、黒こしょう、ブルーベリー、ボラージオイル、蝦夷白根、カカオ、カラマスルート、イヌハッカ、カツアバ、カイエンペッパー、チャーガ、チャービル、シナモン、ダークチョコレート、ジャガイモ皮、チョウセンニンジン、イチョウ、セイヨウオトギリ、ノコギリヤシ、緑茶、紅茶、ブラックコホッシュ、カイエン、カモミール、丁子、ココア、クランベリー、タンポポ、グレープフルーツ、ハニーブッシュ、エキナセア、ニンニク、マツヨイグサ、ナツシロギク、ショウガ、ゴールデンシール、サンザシ、ハイビスカスの花、甘葛、カヴァ、ラベンダー、カンゾウ、マヨラナ、オオアザミ、ミント(メンテ)、ウーロン茶、オレンジ、オレガノ、パパイヤ、ペニーロイヤル、ペパーミント、レッドクローバー、ルイボス(レッドまたはグリーン)、ローズヒップ、ローズマリー、セージ、クラリーセージ、セイボリー、スペアミント、スピルリナ、ソルガムブラン高タンニン種、ソルガム穀粒高タンニン種、ウルシブラン、ゴジベリー、ゴツコーラ、タイム、ウコン、ウワウルシ、カノコソウ、ワイルドヤムの根、ウィンターグリーン、ヤーコンの根、イエロードック、イェルバマテ、イェルバサンタ、バコパモニエラ、アシュワガンダ、ナス、ピーマン、トマト、ジャガイモ、唐辛子、ほおずき、ならびにマリアアザミが挙げられる。
【0017】
上記の植物材料の中で、オールスパイス、オールスパイス、黒こしょう、蝦夷白根、カラマスルート、イヌハッカ、カツアバ、カイエンペッパー、チャーガ、チャービル、シナモン、チョウセンニンジン、セイヨウオトギリ、緑茶、紅茶、ブラックコホッシュ、カイエン、カモミール、丁子、ココア、ハニーブッシュ、エキナセア、ナツシロギク、ショウガ、ゴールデンシール、ラベンダー、カンゾウ、マヨラナ、オオアザミ、ミント(メンテ)、ウーロン茶、オレガノ、ペニーロイヤル、ペパーミント、レッドクローバー、ルイボス(レッドまたはグリーン)、ローズヒップ、ローズマリー、セージ、クラリーセージ、セイボリー、スペアミント、ゴツコーラ、タイム、ウコン、カノコソウ、ウィンターグリーン、イエロードック、イェルバマテ、イェルバサンタ、バコパモニエラ、アシュワガンダ、唐辛子、ほおずき、及びマリアアザミはハーブ材料に該当する。
上記の植物材料の中でも、ハーブ材料、たばこ材料およびこれらの混合物から選ばれる1種以上であることが好ましい。また、上記植物材料が、上記の植物の葉肉、葉脈、茎、根、花、種子および果実から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
上記に加え、ブドウ種子、ビートの根、アカニレの樹皮、コンフリーの葉及び根、ワイルドヤムの根、ヤーコンの根を用いることもできる。
植物材料としてたばこ材料を用いる場合、使用するたばこの種類は、様々なものを用いることができる。例えば、黄色種、バーレー種、オリエント種、在来種、その他のニコチアナ-タバカム系品種、ニコチアナ-ルスチカ系品種、及びこれらの混合物を挙げることができる。また、これらの種類のたばこのラミナ、中骨、茎、花または根等を用いることができる。植物材料としてたばこ材料を用いる場合、主な香味成分としてニコチンを挙げることができる。
【0018】
これらの植物材料が、刻まれた状態、または、粉砕された状態であるものであることが、エアロゾルと接触する表面積を大きくする観点で好ましい。刻まれた状態であるものとは、植物材料を適当な手段により刻んだものであり、その大きさとしては、例えば、幅0.5mm以上、2.0mm以下を挙げることができる。また刻まれた植物材料の長さは0.5mm以上、30.0mm以下程度の範囲を挙げることができる。
粉砕された状態であるものとは、適当な手段により植物材料の個々の大きさが上記の刻んだ状態よりも小さい状態にまで粉砕されたものであり、その粒径としては、例えば200μm以上、300μm以下の平均粒径であることが好ましい。この平均粒径は、粒度分布測定装置(例えば、Spectris社製のマスターサイザー)を用いて測定することができる。粉砕は、粗粉砕した後に微粉砕するといったように複数ステップを介することもできる。複数の植物材料を混合して使用する際は粗粉砕した後で植物材料を混合し、微粉砕することで、植物材料の混合状態を簡易に均一化できる。粗粉砕後の平均粒径は例えば300μm以上、2mm以下とすることができる。粗粉砕した際の平均粒径は多段篩を用いて測定することができる。微粉砕ステップ介さずに粗粉砕した後の植物材料を使用することもできる。
上記の刻まれた状態、または、粉砕された状態であるものは、後述するシート状に再構成されたものを加工したものであってもよい。その場合、その大きさは上記で説明した範囲と同様の範囲を適用できる。
【0019】
植物材料はポリオールをさらに含むことが好ましい。植物材料が、ポリオールをさらに含むことで、植物材料に含まれる香味成分をより効率よくエアロゾルに移行させることができる。これは、ポリオールを含むことで抽出する際に植物材料充填層内のポリオール分圧が上昇し、香味成分の揮発が促進されて抽出効率が増大するためである。ポリオールは、植物材料に対して外添により添加されたものであることが好ましい。ポリオールとしては、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール等を挙げることができ、グリセリンとプロピレングリコールの組み合わせが好ましい。ポリオールの添加量は、上記で例示したもののいずれか、またはそれらの混合物を用いる場合でも、乾燥重量の植物材料に対して1~20重量%添加することが好ましく、5~10重量%添加することがより好ましい。
なお、ポリオールを含むことが好ましい植物材料は、以下で説明する、刻まれた状態、粉砕された状態、顆粒の形態、またはシートの形態のいずれの態様でも同様である。
【0020】
植物材料には、香味発現助剤を添加することができる。この香味発現助剤は、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の炭酸塩、炭酸水素塩、酸化物及び水酸化物のうちの少なくとも1つを含むことができる。好ましくは、香味発現助剤は炭酸カリウムもしくは炭酸ナトリウムである。香味発現助剤を添加することで、アミン類を含む植物内容成分の揮発が確保され、香味成分の収率を上げることができる。
香味発現助剤を添加することで、植物材料のpHが7~9になってもよい。
pHは、pHメーター(例えば、IQ Scientific InstrumentsInc.製のIQ240)で測定することができ、例えば、植物材料2~10gに重量比で10倍の蒸留水を加え、室温(例えば25℃)で水と植物材料との混合物を200rpmで10分間振盪し5分間静置した後、得られた抽出液のpHをpHメーターで測定することができる。
【0021】
香味発現助剤としては、さらに、糖類、塩類、アミノ酸類を含むこともできる。これら成分を香味発現助剤として含むことで、植物材料を本願実施形態の処理温度にした際に、成分の揮発のみならず、成分の反応も生じやすくするため、好適な香味成分が揮発することができる。
香味発現助剤の添加量は、乾燥重量の植物材料に対して1~20重量%であることが好ましく、5~10重量%であることがより好ましい。
【0022】
少なくとも一つの例示的な実施形態において、たばこ材料は加熱する前に湿らせるか、または添加物で処理してもよく、またスラリーまたは湿潤したたばこの塊の形態でもよい。添加物は溶媒、香味発現助剤、および風味剤のうちの少なくとも一つを含みうる。塩に結合した風味剤を解除するため、風味剤の先駆物質の加水分解を起こさせるため、またはこれら両方のために、香味発現助剤をたばこ材料に添加しうる。香味発現助剤は植物に含まれている成分の反応を促進することもできる。前記反応の例としてはメイラード反応などが挙げられる。
なお、香味発現助剤を含むことが好ましい植物材料は、以下で説明する、刻まれた状態、粉砕された状態、またはシートの形態のいずれの態様でも同様である。以下で説明するたばこ顆粒の形態では成分(c)として香味発現助剤を含む態様を例示できる。
【0023】
植物材料は、粉砕された後に顆粒もしくはシート形状に再構成された状態であることが好ましい。
<シート>
シートは、抄造、スラリー、圧延、等の公知の方法で適宜製造できる。なお、以下で示す全ての方法はたばこを植物材料として用いた場合に好適に適用できる。
抄造の場合は、以下の工程を含む方法で製造できる。1)植物材料を粗砕し、水で抽出して水抽出物と残渣に分離する。2)水抽出物を減圧乾燥して濃縮する。3)残渣にパルプを加え、リファイナで繊維化した後、抄紙する。4)抄紙したシートに水抽出物の濃縮液を添加して乾燥し、シートとする。
スラリー法の場合は、以下の工程を含む方法で製造できる。1)水、パルプ及びバインダと、砕いた植物材料を混合する。2)当該混合物を薄く延ばして(キャストして)乾燥する。
【0024】
この他、国際公開第2014/104078号に記載されているように、以下の工程を含む方法によって製造された不織布状のシートを用いることもできる。1)粉粒状の植物材料と結合剤を混合する。2)当該混合物を不織布によって挟む。3)当該積層物を熱溶着によって一定形状に成形し、不織布状のシートを得る。この場合の植物材料はたばこを例示できる。
シートの組成は特に限定されないが、例えば、植物材料の含有量はシート全重量に対して50~95重量%であることが好ましい。また、シートはバインダを含んでもよく、係るバインダとしては、例えば、グアーガム、キサンタンガム、CMC(カルボキシメチルセルロース)、CMC-Na(カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩)等が挙げられる。バインダ量としては、シート全重量に対して1~20重量%であることが好ましい。シートはさらに他の添加物を含んでもよい。添加物としては、例えばパルプなどのフィラーを挙げることができる。フィラーの含有量は、特に限定されないが、たばこシートの全重量に対して1重量%以上、10重量%以下であることが好ましい。
また、シートはポリオールを含んでもよく、ポリオールとしては、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール等を挙げることができ、グリセリンとプロピレングリコールの組み合わせが好ましい。ポリオールの添加量は、上記で例示したもののいずれか、またはそれらの混合物を用いる場合でも、乾燥重量のシートに対して1~20重量%添加することが好ましい。ポリオールを含むことで抽出する際に植物材料充填層内のポリオール分圧が上昇しシート内容成分の揮発が促進されて抽出効率が増大する。
【0025】
<顆粒>
植物材料は、顆粒の状態であってもよい。以下、単に顆粒ともいう。
顆粒の原料は、例えば、(a)粉砕された植物材料、(b)水分、(c)炭酸カリウムおよび炭酸水素ナトリウムからなる群の中から選ばれる少なくとも1種の香味発現助剤、並びに(d)プルランおよびヒドロキシプロピルセルロースからなる群の中から選ばれる少なくとも1種のバインダーを挙げることができる。植物材料はたばこであることが好ましい。
【0026】
顆粒の原料に含まれる、粉砕された植物材料(成分(a))には、植物材料や粉砕された上記のシート、が含まれる。植物材料がたばこ材料である場合、たばこの種類には、バーレー種、黄色種、オリエンタル種が含まれる。粉砕された植物材料は、20μm以上、300μm以下のサイズに粉砕されていることが好ましい。この平均粒径は、粒度分布測定装置(例えば、Spectris社製のマスターサイザー)を用いて測定することができる。
【0027】
顆粒に含まれる、水分(成分(b))は、顆粒の一体性を維持するためのものである。
顆粒の原料混合物は、水分を、通常、3重量%以上、13重量%以下の量で含有する。また、顆粒は、水分を、通常、乾燥減量の値が5重量%以上、17重量%以下となるような量で含有し得る。乾燥減量とは、試料の一部を測定のために採取し、採取された試料中の全水分を蒸発させることにより試料を完全乾燥させたとき(例えば、一定の温度(105℃)で15分間乾燥させたとき)の乾燥前後での重量変化を指し、具体的には、試料に含まれている水分の量および上記乾燥条件で揮発する揮発性成分の量の合算値の、試料重量に対する割合(重量%)を指す。すなわち、乾燥減量(重量%)は、以下の式(1)で表すことができる。
乾燥減量(重量%)={(完全乾燥前の試料の重量)-(完全乾燥後の試料の重量)}×100/完全乾燥前の試料の重量 (1)
【0028】
顆粒に含まれてもよい香味発現助剤(成分(c))は、上記で例示したものを用いることができる。これら香味発現助剤は、顆粒に含まれる香味成分を顆粒から放出させることを促進し、使用者に満足され得る喫味をもたらす。
顆粒の原料混合物は、香味発現助剤を、通常、5重量%以上、20重量%以下の量で含有し得る。
【0029】
顆粒に含まれるバインダー(成分(d))は、顆粒の原料を結着させて顆粒の一体性を保持するものである。バインダーは、プルラン、ジェランガム、カラギーナン、寒天、グアガム、ローストビーンガム、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱でんぷん、修飾でんぷん、またはこれらの混合物から構成される。
顆粒の原料混合物は、バインダーを、通常、0.5重量%以上、15重量%以下の量で含有し得る。
【0030】
顆粒は、上記成分(a)、(b)、(c)および(d)から構成することができるが、さらに追加の成分を包含してもよい。
【0031】
顆粒は、上記成分(a)、(b)、(c)、及び(d)からなる場合、その顆粒の原料混合物は、成分(a)を、通常、約20重量%以上(約80重量%以下)の量で含有し得る。
【0032】
顆粒は、例えば、成分(a)、(c)および(d)を混合し、その混合物に成分(b)を加えて混練し、得られた混練物を湿式押出し造粒機で造粒(長柱状)した後、短柱状あるいは球状に整粒することによって得られる。
押出し造粒に際しては、混練物を周囲温度で、2kN以上の圧力で押出すことが好ましい。この高圧での押出しにより、押出し造粒機出口での混練物は温度が周囲温度から例えば90℃以上、100℃以下まで瞬間的に急激に上昇し、水分および揮発性成分が2重量%以上、4重量%以下で蒸発する。したがって、混練物を作るために配合する水は、得られるたばこ顆粒中の所望水分よりも上記蒸発量だけ多くの量で用いることができる。
【0033】
押出し造粒により得られた顆粒は、水分調整のために、必要に応じてさらに乾燥させてもよい。たとえば、押出し造粒により得られた顆粒の乾燥減量を測定し、それが、所望の乾燥減量(たとえば5重量%以上、17重量%以下)より高い場合、所望の乾燥減量を得るためにたばこ顆粒をさらに乾燥させてもよい。所望の乾燥減量を得るための乾燥条件(温度および時間)は、乾燥減量を所定の値だけ減少させるために必要な乾燥条件(温度および時間)を予め決定し、その条件に基づいて設定することができる。
【0034】
[香味成分含有溶液の製造装置]
本発明のたばこ製品用の香味成分含有溶液の製造装置は、グリセリン及びプロピレングリコールの少なくとも一方を含むエアロゾル基材からエアロゾルを生成させる装置と、植物材料が内部に配置され、前記生成したエアロゾルが該内部を通過することで、該植物材料とエアロゾルが接触する、植物材料充填層と、前記植物材料充填層を180℃~220℃に加熱するヒーターと、前記植物材料充填層を通過したエアロゾルを捕集する捕集装置と、を備える。製造装置の一態様の概略を図3に示す。エアロゾル生成装置1、植物材料充填層4及び捕集装置5は、エアロゾル生成装置1により生成したエアロゾル3が、ヒーター2で加熱された植物材料充填層4を通過し、植物材料充填層4を通過したエアロゾル3が捕集装置5により捕集されるように接続される。
【0035】
グリセリン及びプロピレングリコールの少なくとも一方を含むエアロゾル基材からエアロゾルを生成させる装置は、上記の製造方法で説明した構成を有するエアロゾル生成装置を挙げることができる。エアロゾル生成装置の各構成についても、上記の製造方法で説明した構成を用いることができる。
【0036】
上記植物材料充填層には、植物材料がその内部に配置されている。充填される植物材料は、上記の製造方法で説明した各種の態様のものを用いることができる。植物材料としてはたばこが好ましい。
植物材料は刻まれた状態、粉砕された状態、顆粒の形態、またはシートの形態でエアロゾルに接触することが好ましく、これらのいずれの態様でも、充填層を形成することができる。そして、その充填層の中にエアロゾルを流通させることが好ましい。
充填層の大きさ、形状は特に制限されない。充填層の大きさや形状は、植物材料を充填するための容器の大きさ、形状に依存してもよい。植物材料を充填するための容器としては、筒状の容器を挙げることができ、筒状の容器の底面と上面のそれぞれにエアロゾルの流入口と出口が設けられたものを挙げることができる。筒状の容器の断面(横断面)形状は、円、楕円、多角形等を挙げることができる。
【0037】
植物材料充填層を構成する植物材料が刻まれた状態または粉砕された状態のものである場合、または、それらの状態のものから作製した顆粒である場合、その充填密度は、通常150mg/cm以上であり250mg/cm以上が好ましく、また、通常600mg/cm以下であり、好ましくは350mg/cm以下である。植物材料の形状によるが、充填密度が高すぎると、エアロゾルの充填層内の流通が妨げられる。充填密度が低すぎると容器の大きさに対して抽出される対象物の量が少ないことになり非効率である。
【0038】
植物材料充填層は、ヒーターにより180℃~220℃に加熱される。ヒーターは、植物材料充填層を直接または間接的に加熱できるものである。例えばシート状ヒーター、赤外線ヒーター、IHヒーターであってよい。シート状ヒーターとは柔軟なシート形のヒーターであり、電気抵抗により発熱するリボンヒーター等があげられる。IHヒーターを用いる際は、植物材料充填層内に金属粉等のサセプターを混在させることで充填層を挿入する金属容器だけでなく充填層内部からも加熱できる。
植物材料充填層の外周面を加熱する態様である場合、上記のシート状ヒーター、赤外線ヒーター、IHヒーターを用いることができる。一方で、植物材料充填層内部から加熱する態様の場合は、IHヒーター等を用いることができる。その際、抽出操作中に植物材料充填層内部をエアロゾルが効率的に通過できるようにすると抽出効率向上のために好ましい。
ヒーターの設定温度としては、植物材料充填層が180℃~220℃に加熱される温度であれば特に制限はない。なお、植物材料充填層の温度(品温)は、温度計を植物材料充填層に挿入することで測定できる。
【0039】
エアロゾル生成装置で生成したエアロゾルが、180℃~220℃に加熱された植物材料充填層の内部を通過することで、該植物材料とエアロゾルが接触する。そして、植物材料に含まれる香味成分がエアロゾルに移行し、そのエアロゾルが下記で説明する捕集装置により捕集される。
エアロゾルを捕集する装置は、植物材料充填層を通過したエアロゾルを捕集する。エアロゾルを捕集する装置としては、エアロゾルを冷却する手段と、冷却により凝縮した液体を収容する容器とを備える装置を挙げることができる。そのような装置として、いわゆるコールドトラップを挙げることもできる。コールドトラップでは例えばエバポレーターを用いて系内を減圧して陰圧にする態様が好ましいが、減圧による陰圧は必ずしも必要ではない。冷却する手段に特に制限はないが、例えば公知の冷媒を用いた冷却装置を用いたり、液体窒素、ドライアイスなどの冷却剤を用いた方法を挙げることができる。冷却時の温度としては-200℃~10℃程度を挙げることができる。凝縮したエアロゾルは液体となり、捕集装置が備える収容溶液に捕集される。
【実施例
【0040】
<実験例1>
シートたばこの裁刻物(厚さ約300μm、裁刻幅0.8mm、長さ0.5~30.0mm程度の抄造シートの裁刻物:抄造シートの原料構成は、粉砕たばこ66重量%、木材パルプ7重量%、グリセリン15重量%、水分12重量%、ニコチン含有率:1.32重量%)からなるたばこ原料250mgを内径7.2mmのアルミパイプに長さ20mm分充填してたばこ充填層を形成し、それを内径9.2mmの電気炉(王子商会製)に挿入して外周から加熱した。加熱温度は温度コントローラー(AS ONE製Temperature controller TJA-50)により制御し、所定温度になったところで55mL/2secの流量でたばこ充填層に表1に記載の所定のキャリアが流通するようにした。実施例1~3において、たばこ充填層に流通させたエアロゾルの温度は30℃であった。エアロゾルの温度は、エアロゾル生成装置とたばこ充填層とを接続する配管のたばこ充填層入口直前の位置に、配管外側より熱電対を差し込み、エアロゾルと空気の混合流体の温度を測定すること求めた。
また、実施例1~3では、キャリア中のエアロゾル濃度が略均一になるように調整して実験を行った。たばこ充填層を流通した空気、蒸気またはエアロゾルを、氷浴したチューブでトラップし、液体を回収し、分析に供した。
【0041】
回収した液体に含まれるニコチンはGC-MS(Agilent製7890B)を用いて定量した。また、たばこ充填層中のニコチンは溶媒(メタノール)でたばこ充填物を抽出した後、ニコチンはGC-MS(Agilent製7890B)を用いて定量した。各キャリアおよび各温度におけるニコチンの回収率について表1に示す。結論として、空気と比較してプロピレングリコールとグリセリンのエアロゾルを流通させることが最も効率良くニコチンを回収できることが分かった。
なお、ニコチンの回収率は、処理前のたばこ充填層中のニコチン重量と処理後のたばこ充填層中のニコチン重量を用いて下記式で計算した。
ニコチン回収率(%)
= 100-(処理後のたばこ充填層中のニコチン重量÷処理前のたばこ充填層中のニコチン重量)×100
【0042】
【表1】
【0043】
また、各キャリアを用いた場合の、充填層の加熱温度とニコチン回収量の関係を図1に示した。横軸は充填層の加熱温度を示し、縦軸はニコチンの回収量を示す。図1の結果から、ニコチンの回収量は充填層の温度が180℃以上の場合に増加することが分かる。
各試験で用いた充填層は同一のたばこ原料を同一の充填量で充填して作製したものである。なお、ニコチン回収量は、前記の氷冷されたチューブでトラップされた液体中のニコチン重量である。たばこ充填層から抽出されたニコチンは、捕集装置である氷冷されたチューブと充填層とをつなぐ配管内壁に一部付着するため、本実験においては、たばこ充填層から抽出されたニコチンのすべてがニコチン回収量としてカウントはされなかった。
【0044】
<実験例2:外香スコア判定>
実験例1と同様の操作により、実施例1と同様のキャリアを用いて、各温度に加熱した充填層を通過させて回収した凝縮液1gをスクリュー管に入れ、担当者(n=3)にて外香についてスコアをつけた。100点を満点として、10点刻みにてスコアをつけ、平均値を外香スコアとした。結果を図2に示す。高得点となったものは外香がたばこ様の香ばしさであり、得点が低いものは炭化に伴う不快臭が生成した場合に見られた。
これにより、温度が220℃よりも高くなるにつれ、不快な焦げ臭が生成することを確認した。したがって、香味成分(ニコチン)の回収量と、良好な香味成分を効率的に取得するには、プロピレングリコールとグリセリンのエアロゾルを、200±20℃に加熱した植物材料の充填層を通過させることが望ましいことが分かった。
【符号の説明】
【0045】
1 エアロゾル生成装置
2 ヒーター
3 エアロゾル
4 植物材料充填層
5 捕集装置
図1
図2
図3