IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オリンパス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-カーブジェネレータ 図1
  • 特許-カーブジェネレータ 図2
  • 特許-カーブジェネレータ 図3
  • 特許-カーブジェネレータ 図4
  • 特許-カーブジェネレータ 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】カーブジェネレータ
(51)【国際特許分類】
   B24B 13/00 20060101AFI20240214BHJP
   B24B 13/04 20060101ALI20240214BHJP
   B24B 49/10 20060101ALI20240214BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20240214BHJP
   B24B 11/10 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B24B13/00 C
B24B13/04 G
B24B49/10
B24B49/12
B24B11/10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022556334
(86)(22)【出願日】2020-10-22
(86)【国際出願番号】 JP2020039750
(87)【国際公開番号】W WO2022085159
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2022-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳山 正成
(72)【発明者】
【氏名】稲田 仁太
(72)【発明者】
【氏名】石崎 幸治
(72)【発明者】
【氏名】一山 洋
(72)【発明者】
【氏名】宮地 律明
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-150216(JP,A)
【文献】特開2010-094758(JP,A)
【文献】特開2018-069391(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0006764(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 13/00
B24B 13/04
B24B 49/10
B24B 49/12
B24B 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粗さの異なる二つのカップ型の砥石と、
前記砥石によって加工する被加工物を保持する保持機構と、
前記砥石が前記被加工物に接触する部位の、前記砥石の形状を計測する計測機構と、
前記保持機構および前記計測機構を、前記二つの砥石のいずれかと対向する位置に移動させる駆動機構と、
を備え
前記二つの砥石の回転軸は、第一の平面上に配置されており、
前記二つの砥石のうちの一方の回転軸は、前記第一の平面とは異なる第二の平面上を揺動可能であり、
前記二つの砥石のうちの他方の回転軸は、前記第一の平面とは異なり、かつ前記第二の平面と平行な第三の平面上を揺動可能であり、
前記保持機構の回転軸は、前記第二の平面および前記第三の平面のいずれかの位置に位置決め可能である、
ーブジェネレータ。
【請求項2】
前記駆動機構は、前記二つの砥石の回転軸の揺動軸に沿って、前記保持機構および前記計測機構を移動させる、
請求項1に記載のカーブジェネレータ。
【請求項3】
前記計測機構は、前記二つの砥石に対応して二つ設けられている、
請求項1または請求項2に記載のカーブジェネレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーブジェネレータおよび研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カップ型の砥石によって被加工物(例えばレンズ等の光学素子)の球面加工を行う場合、砥石の先端が摩耗すると所望の形状を得られなくなる。そこで、特許文献1では、予め砥石の形状データを計測し、その計測データを研削装置に反映することにより、高精度な加工を行う技術が提案されている。また、特許文献2では、砥石形状センサによって、砥石の形状をインラインで計測し、その計測データに基づいて加工条件を制御することにより、高精度な加工を行う技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-13998号公報
【文献】特開平8-19948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で提案された技術では、砥石の形状データの計測と、砥石による研削とを別々の装置によって行う。そのため、形状データを計測した砥石を研削装置に付け替える必要があり、砥石の付け替えによる研削位置の誤差が発生するおそれがあった。
【0005】
また、特許文献2で提案された技術では、例えばカップ型の砥石で研削する場合は、加工面(砥石が被加工物に接触する部位)が露出しないため、研削中に形状データを測定することができない。従って、特許文献2で提案された技術では、カップ型の砥石を用いた場合、その形状データに基づいて加工条件を制御することができず、高精度な加工を行うことができないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、カップ型の砥石を用いた加工において、高精度な加工を安定して行うことができるカーブジェネレータおよび研削方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るカーブジェネレータは、粗さの異なる二つのカップ型の砥石と、前記砥石によって加工する被加工物を保持する保持機構と、前記砥石が前記被加工物に接触する部位の、前記砥石の形状を計測する計測機構と、前記保持機構および前記計測機構を、前記二つの砥石のいずれかと対向する位置に移動させる駆動機構と、を備える。
【0008】
また、本発明に係るカーブジェネレータは、上記発明において、前記二つの砥石の回転軸が、第一の平面上に配置されており、前記二つの砥石のうちの一方の回転軸が、前記第一の平面とは異なる第二の平面上を揺動可能であり、前記二つの砥石のうちの他方の回転軸が、前記第一の平面とは異なり、かつ前記第二の平面と平行な第三の平面上を揺動可能であり、前記保持機構の回転軸が、前記第二の平面および前記第三の平面のいずれかの位置に位置決め可能である。
【0009】
また、本発明に係るカーブジェネレータは、上記発明において、前記駆動機構が、前記二つの砥石の回転軸の揺動軸に沿って、前記保持機構および前記計測機構を移動させる。
【0010】
また、本発明に係るカーブジェネレータは、上記発明において、前記計測機構が、前記二つの砥石に対応して二つ設けられている。
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るカーブジェネレータは、粗さの異なる二つのカップ型の砥石と、前記砥石によって加工する被加工物を保持する保持機構と、前記砥石が前記被加工物に接触する部位の、前記砥石の形状を計測する計測機構と、前記保持機構および前記計測機構を、前記二つの砥石のいずれかと対向する位置に移動させる駆動機構と、前記砥石、前記保持機構、前記計測機構および前記駆動機構を制御する制御装置と、所定の情報を表示する表示装置と、を備え、前記制御装置が、前記計測機構によって計測した前記砥石の形状データから前記砥石の劣化状態を判定し、前記被加工物の加工可否を前記表示装置に表示し、前記被加工物を加工可能である場合、前記砥石の形状データから加工条件を生成し、生成した加工条件に従って、前記砥石および前記保持機構を動作させることにより、前記被加工物を加工する。
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る研削方法は、計測機構によって第一の砥石の形状を計測し、前記計測機構によって計測した前記第一の砥石の形状データから加工条件を生成し、生成した加工条件に従って、前記第一の砥石によって被加工物を研削し、前記計測機構によって、前記第一の砥石とは粗さの異なる第二の砥石の形状を計測し、前記計測機構によって計測した前記第二の砥石の形状データから加工条件を生成し、生成した加工条件に従って、前記第二の砥石によって前記被加工物を研削する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るカーブジェネレータおよび研削方法では、粗さの異なる砥石が予め装置に取り付けられ、砥石の付け替えが不要となるため、砥石の取り付け時における研削位置の誤差を抑制することができ、被加工物を安定して加工することができる。また、本発明に係るカーブジェネレータおよび研削方法では、計測機構および被加工物が、複数のカップ型の砥石と対向する位置まで移動可能であるため、加工前の砥石の複雑な曲面形状を正確に計測することができる。そして、その計測結果に基づいて、例えば砥石の位置、揺動、回転速度等の加工条件の制御を行うことができるため、高精度な加工を安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係るカーブジェネレータの構成の一例を示す概略図である。
図2図2は、本発明の実施の形態1に係るカーブジェネレータにおいて、砥石の揺動軸および第二の平面を説明するための図である。
図3図3は、図1のカーブジェネレータにおいて、保持機構と計測機構の位置を入れ替えた様子を示す図である。
図4図4は、本発明の実施の形態2に係るカーブジェネレータの構成の一例を示す概略図である。
図5図5は、本発明の実施の形態2に係るカーブジェネレータにおいて、第二の砥石によって被加工物を加工し、かつ第二の計測機構によって第一の砥石の形状を計測する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るカーブジェネレータおよび研削方法の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、以下の実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものも含まれる。
【0016】
(実施形態1)
本発明の実施の形態1に係るカーブジェネレータの構成について、図1図3を参照しながら説明する。本実施の形態に係るカーブジェネレータは、粗さの異なる二つのカップ型の砥石を用いて、被加工物の加工を行うためのものである。カーブジェネレータでは、砥石および被加工物をそれぞれ回転させ、かつ砥石および被加工物を相対的に移動および揺動させることにより、被加工物の曲面(球面または非球面)加工を行う。
【0017】
なお、図1では、本発明の説明に必要な構成のみを図示し、その他の構成(例えば加工時に被加工物にエアを噴射するエアブローノズル、加工時に被加工物に研削液を噴射する研削液ノズル等)は図示を省略している。また、図2および図3では、図1の駆動機構21、制御装置22および表示装置23等の図示は省略している。
【0018】
カーブジェネレータ1は、図1に示すように、第一の砥石11と、第二の砥石13と、保持機構16と、計測機構17と、駆動機構21と、制御装置22と、表示装置23と、を備えている。カーブジェネレータ1は、同図に示すように、被加工物Wを加工する機構(第一の砥石11および第二の砥石13)と、第一の砥石11および第二の砥石13の形状を計測する計測機構17とが、同一の装置内に配置されている。また、カーブジェネレータ1は、二つの砥石(第一の砥石11および第二の砥石13)を備えているが、三つ以上の砥石を備えていてもよい。
【0019】
ここで、図1では、第一の砥石11の回転軸Ax1および第二の砥石13の回転軸Ax2の方向をZ方向とし、第一の砥石11および第二の砥石13の揺動軸Ax3の方向をX方向とし、紙面と直行する方向をY方向とする。
【0020】
第一の砥石11は、被加工物Wを研削するためのものである。第一の砥石11は、第二の砥石13とは粗さの異なる、例えば粗研削用のカップ型砥石で構成されている。また、第一の砥石11は、取付台12に取り付けられている。この取付台12は、一端側に第一の砥石11を着脱可能に構成されている。また、取付台12は、第一の砥石11が取り付けられた状態で、第一の砥石11の回転軸Ax1を中心に回転可能に構成されている。また、取付台12は、第二の砥石13が取り付けられた取付台14とともに、ベース15に設置されている。
【0021】
第二の砥石13は、被加工物Wを研削するためのものである。第二の砥石13は、第一の砥石11とは粗さの異なる、例えば精研削用のカップ型砥石で構成されている。また、第二の砥石13は、取付台14に取り付けられている。この取付台14は、一端側に第二の砥石13を着脱可能に構成されている。また、取付台14は、第二の砥石13が取り付けられた状態で、第二の砥石13の回転軸Ax2を中心に回転可能に構成されている。また、取付台14は、第一の砥石11が取り付けられた取付台12とともに、ベース15に設置されている。
【0022】
ここで、第一の砥石11の回転軸Ax1および第二の砥石13の回転軸Ax2は、図1に示すように、第一の平面Pl1上に配置されている。この第一の平面Pl1は、同図におけるXZ平面に平行な面である。
【0023】
また、第一の砥石11の回転軸Ax1は、図2に示すように、第一の平面Pl1とは異なる第二の平面Pl2上を揺動可能に構成されている。この第二の平面Pl2は、例えば第一の平面Pl1に対して直交する面であり、かつ同図におけるYZ平面に平行な面である。第一の砥石11は、具体的には揺動軸Ax3を中心に、第二の砥石13とともに、ベース15ごと揺動する。
【0024】
また、図示は省略したが、第二の砥石13の回転軸Ax2は、第一の平面Pl1とは異なる第三の平面を揺動可能に構成されている。この第三の平面は、例えば第一の平面Pl1に対して直交する面であり、かつ図2におけるYZ平面に平行な面である。また、第三の平面は、同図に示した第二の平面Pl2と平行な面であり、当該第二の平面Pl2のX方向における奥側に配置される。第二の砥石13は、具体的には揺動軸Ax3を中心に、第一の砥石11とともに、ベース15ごと揺動する。
【0025】
保持機構16は、被加工物Wを保持するためのものである。保持機構16は、図1のX方向およびZ方向に移動可能に構成されている。すなわち、保持機構16は、一端側に被加工物Wが取り付けられた状態で、第一の砥石11が揺動する第二の平面Pl2(図2参照)および第二の砥石13が揺動する第三の平面のいずれかの位置に位置決め可能に構成されている。また、保持機構16は、一端側に被加工物Wが取り付けられた状態で、第一の砥石11および第二の砥石13のいずれかと対向する位置に移動可能に構成されている。また、保持機構16は、一端側に被加工物Wが取り付けられた状態で、回転可能に構成されている。
【0026】
計測機構17は、第一の砥石11および第二の砥石13の形状を計測するためのものである。計測機構17は、具体的には、第一の砥石11および第二の砥石13が被加工物Wに接触する部位の、第一の砥石11および第二の砥石13の形状を計測する。計測機構17としては、接触式(メカ式)センサ、非接触の光学式センサ、静電容量式センサ等を用いることができるが、三次元測定が可能な光学式センサを用いることが好ましい。光学式センサでは、砥石を回転させて所定の角度における断面を測定する代わりに、全範囲を計測することができるため、砥石の欠けや傷等の局所的な不具合の発生も検知することが可能である。
【0027】
駆動機構21は、保持機構16および計測機構17を駆動するためのものである。駆動機構21は、具体的には、保持機構16および計測機構17を、図1のX方向およびZ方向に移動させる。すなわち、駆動機構21は、第一の砥石11によって被加工物Wを研削する際に、保持機構16を、揺動軸Ax3に沿って第二の平面Pl2(図2参照)の位置に移動させた後、第一の砥石11と対向する位置に移動させる。また、駆動機構21は、第二の砥石13によって被加工物Wを研削する際に、保持機構16を、揺動軸Ax3に沿って第三の平面の位置に移動させた後、第二の砥石13と対向する位置に移動させる。
【0028】
また、駆動機構21は、第一の砥石11による粗研削の後に、保持機構16と計測機構17の位置を入れ替えて、第二の砥石13による精研削を行う。すなわち、駆動機構21は、図1に示すように、第一の砥石11によって被加工物Wの粗研削が行われた後、図3に示すように、保持機構16と計測機構17の位置を入れ替える。これにより、第二の砥石13による被加工物Wの精研削が実施される。
【0029】
制御装置22は、第一の砥石11、第二の砥石13、保持機構16、計測機構17および駆動機構21の動作を制御するためのものである。制御装置22は、具体的には、計測機構17によって計測した第一の砥石11および第二の砥石13の形状データから、第一の砥石11および第二の砥石13の劣化状態を判定する。そして、制御装置22は、第一の砥石11および第二の砥石13によって被加工物Wを加工できるか否かに関する加工可否に関する情報を、表示装置23に表示する。
【0030】
また、制御装置22は、第一の砥石11および第二の砥石13によって被加工物Wを加工可能であると判定した場合、第一の砥石11および第二の砥石13の形状データから加工条件を生成する。制御装置22は、具体的には、第一の砥石11および第二の砥石13の形状データと、予め用意された被加工物Wの目標加工形状データとをもとに、被加工物Wに対する第一の砥石11および第二の砥石13の接触点の座標を算出する。続いて、制御装置22は、算出した接触点の座標をもとに、第一の砥石11および第二の砥石13の位置、揺動、回転速度等の加工条件を生成する。そして、制御装置22は、生成した加工条件に従って、第一の砥石11、第二の砥石13および保持機構16を動作させることにより、被加工物Wを加工する。
【0031】
表示装置23は、被加工物Wの加工に関する所定の情報を表示するためのものである。表示装置23は、例えば計測機構17によって計測された第一の砥石11および第二の砥石13の形状データや、第一の砥石11および第二の砥石13による被加工物Wの加工可否に関する情報等を、表示する。
【0032】
以上のような構成を備えるカーブジェネレータ1では、第一の計測ステップ、第一の判定ステップ、第一の加工条件生成ステップ、第一の加工ステップ、第二の計測ステップ、第二の判定ステップ、第二の加工条件生成ステップおよび第二の加工ステップからなる研削方法が実施される。
【0033】
第一の計測ステップでは、計測機構17によって、第一の砥石11の形状を計測する。続いて、第一の判定ステップでは、第一の砥石11の形状データから、第一の砥石11の劣化状態および加工可否を判定する。第一の判定ステップにおいて、第一の砥石11による加工が可能であると判定された場合、第一の加工条件生成ステップに進み、第一の砥石11の形状データから加工条件を生成する。続いて、第一の加工ステップでは、生成した加工条件に従って、第一の砥石11によって被加工物Wを研削する。
【0034】
第二の計測ステップでは、駆動機構21によって保持機構16および計測機構17の位置を入れ替えた後、計測機構17によって、第二の砥石13の形状を計測する。続いて、第二の判定ステップでは、第二の砥石13の形状データから、第二の砥石13の劣化状態および加工可否を判定する。第二の判定ステップにおいて、第二の砥石13による加工が可能であると判定された場合、第二の加工条件生成ステップに進み、第二の砥石13の形状データから加工条件を生成する。続いて、第二の加工ステップでは、生成した加工条件に従って、第二の砥石13によって被加工物Wを研削する。このように、第一の砥石11および第二の砥石13を脱着させるステップを行わずに研削を行うことにより、第一の砥石11および第二の砥石13の摩耗にかかわらず高精度な研削を実現できる。また、砥石交換時期も把握することができるため、加工不良を抑制することができる。
【0035】
以上説明したような本実施の形態1に係るカーブジェネレータ1および当該カーブジェネレータ1を用いた研削方法では、粗さの異なる第一の砥石11および第二の砥石13が予め装置に取り付けられ、砥石の付け替えが不要となるため、砥石の取り付け時における研削位置の誤差を抑制することができ、被加工物Wを安定して加工することができる。
【0036】
また、本実施の形態1に係るカーブジェネレータ1および研削方法では、計測機構17および被加工物Wが、カップ型の第一の砥石11および第二の砥石13と対向する位置まで移動可能であるため、加工前の第一の砥石11および第二の砥石13の複雑な曲面形状を正確に計測することができる。そして、その計測結果に基づいて、例えば第一の砥石11および第二の砥石13の位置、揺動、回転速度等の加工条件の制御を行うことができるため、高精度な加工を安定して行うことができる。
【0037】
また、本実施の形態1に係るカーブジェネレータ1および研削方法では、例えば第一の砥石11および第二の砥石13の摩耗の絶対量の推移についても、計測機構17による繰り返しの計測によって把握することができるため、加工中における第一の砥石11および第二の砥石13の摩耗変化を予測することができ、より適切な加工条件を生成・制御して高精度な加工を実現することができる。
【0038】
また、本実施の形態1に係るカーブジェネレータ1および研削方法では、被加工物Wが微小(例えばφ2mm以下)である場合においても、高精度に加工を安定的に行うことができるため、タクトタイムを短縮することができ、かつコストダウンを図ることができる。
【0039】
また、本実施の形態1に係るカーブジェネレータ1および研削方法では、第一の砥石11および第二の砥石13を搭載したまま、これらの先端形状を計測することができるため、計測後の形状データをもとに、被加工物Wを精度よく研削することができる。特に、被加工物Wの回転軸、第一の砥石11の回転軸Ax1、第二の砥石13の回転軸Ax2および計測機構17の傾きを厳密に合わせることができるため、例えば計測機構17による計測中に被加工物Wの付け外し等も行うことができる。
【0040】
また、本実施の形態1に係るカーブジェネレータ1および研削方法では、第一の砥石11の回転軸Ax1および第二の砥石13の回転軸Ax2が整列され、保持機構16の回転軸と同一の平面(第二の平面Pl2または第三の平面)上に配置されるため、保持機構16および計測機構17の位置制御が容易となる。その結果、第一の砥石11、第二の砥石13、保持機構16および計測機構17の位置決めを、より高精度かつ再現性よく行うことができる。従って、第一の砥石11および第二の砥石13の計測精度、保持機構16と第一の砥石11および第二の砥石13との相対位置精度、被加工物Wの加工精度を向上させることができる。
【0041】
また、本実施の形態1に係るカーブジェネレータ1および研削方法では、駆動機構21によって、揺動軸Ax3に沿って、保持機構16および計測機構17を移動させることにより、第一の砥石11、第二の砥石13、保持機構16および計測機構17の位置決めを、より高精度かつ再現性よく行うことができる。従って、第一の砥石11および第二の砥石13の計測精度、保持機構16と第一の砥石11および第二の砥石13との相対位置精度、被加工物Wの加工精度を向上させることができる。
【0042】
(実施形態2)
本発明の実施の形態2に係るカーブジェネレータの構成について、図4および図5を参照しながら説明する。なお、以下では、実施の形態1と同様の構成については説明を省略する。
【0043】
カーブジェネレータ1Aは、図4に示すように、第一の砥石11と、第二の砥石13と、保持機構16と、計測機構17,18と、仕切り板19と、を備えている。カーブジェネレータ1Aは、計測機構18および仕切り板19を更に備える点を除いて、カーブジェネレータ1と同様の構成を備えている。なお、図4および図5では図示を省略したが、カーブジェネレータ1Aは、カーブジェネレータ1と同様に、駆動機構21、制御装置22および表示装置23を備えている。
【0044】
カーブジェネレータ1Aは、二つの砥石(第一の砥石11および第二の砥石13)に対応して、二つの計測機構17,18を備えている。計測機構17は、第二の砥石13の形状を計測するためのものである。また、計測機構18は、第一の砥石11の形状を計測するためのものである。仕切り板19は、第一の砥石11および第二の砥石13によって被加工物Wを研削する際に、計測機構17,18に研削液が付着することを防ぐためのものである。
【0045】
カーブジェネレータ1Aでは、例えば図4に示すように、第一の砥石11によって被加工物Wを研削(粗研削)しつつ、計測機構17によって第二の砥石13の形状を計測する。そして、粗研削および第二の砥石13の計測が終了すると、図5に示すように、保持機構16、計測機構17,18をX方向(揺動軸Ax3(図2参照)の方向)に移動させる。続いて、第二の砥石13によって被加工物Wを研削(精研削)しつつ、計測機構18によって第一の砥石11の形状を計測する。
【0046】
以上説明したような本実施の形態2に係るカーブジェネレータ1Aおよび当該カーブジェネレータ1Aを用いた研削方法では、カーブジェネレータ1の効果に加えて、第一の砥石11および第二の砥石13の計測機構17,18をそれぞれ独立して設け、被加工物Wおよび計測機構17,18を往復動作で駆動させることにより、被加工物Wの加工時と、第一の砥石11および第二の砥石13の計測時とにおける、機械的な精度をより向上させることができる。
【0047】
本実施の形態2に係るカーブジェネレータ1Aおよび研削方法では、第一の砥石11および第二の砥石13ごとに、専用の計測機構17,18を備えているため、個別に校正が可能であり、第一の砥石11および第二の砥石13の計測精度を向上させることができる。また、第一の砥石11および第二の砥石13の一方で研削をしている際に、他方の形状を計測することが可能であるため、粗研削および精研削を高精度かつ連続的に行うことができる。
【0048】
以上、本発明に係るカーブジェネレータおよび研削方法について、発明を実施するための形態により具体的に説明したが、本発明の趣旨はこれらの記載に限定されるものではなく、請求の範囲の記載に基づいて広く解釈されなければならない。また、これらの記載に基づいて種々変更、改変等したものも本発明の趣旨に含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0049】
1,1A カーブジェネレータ
11 第一の砥石
12,14 取付台
13 第二の砥石
15 ベース
16 保持機構
17,18 計測機構
19 仕切り板
21 駆動機構
22 制御装置
23 表示装置
Ax1,Ax2 回転軸
Ax3 揺動軸
Pl1 第一の平面
Pl2 第二の平面
W 被加工物
図1
図2
図3
図4
図5