IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニーの特許一覧

<>
  • 特許-樹状毛穴を識別するための方法 図1
  • 特許-樹状毛穴を識別するための方法 図2
  • 特許-樹状毛穴を識別するための方法 図3
  • 特許-樹状毛穴を識別するための方法 図4
  • 特許-樹状毛穴を識別するための方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】樹状毛穴を識別するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/107 20060101AFI20240214BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20240214BHJP
   G06T 7/44 20170101ALI20240214BHJP
【FI】
A61B5/107 800
A61B5/00 M
G06T7/44
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2022567032
(86)(22)【出願日】2021-05-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-07
(86)【国際出願番号】 US2021031206
(87)【国際公開番号】W WO2021226414
(87)【国際公開日】2021-11-11
【審査請求日】2022-11-02
(31)【優先権主張番号】63/021,689
(32)【優先日】2020-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE PROCTER & GAMBLE COMPANY
【住所又は居所原語表記】One Procter & Gamble Plaza, Cincinnati, OH 45202,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディサーナーヤカ ムディヤンセラゲ マハトマ バンダラ ディサーナーヤカ
(72)【発明者】
【氏名】宮本 直喜
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0065998(US,A1)
【文献】特開2015-080647(JP,A)
【文献】国際公開第2015/159767(WO,A1)
【文献】特開2018-005434(JP,A)
【文献】特開2018-122104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/107
A61B 5/00
G06T 1/00-1/40
G06T 7/00-7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像取込デバイスにより、皺が交差する毛穴である樹状毛穴(18)を識別する方法であって、前記画像取込デバイスが、
(a)被検体の皮膚のデジタル画像(300)を取得する工程と、
(b)前記取得されたデジタル画像(300)をセグメント処理することにより皺を有する皺画像(500)を生成する工程と、
(c)前記取得されたデジタル画像(300)をセグメント処理することにより毛穴を有する毛穴画像(700)を生成する工程と、
(d)前記皺画像(500)及び前記毛穴画像(700)を重ね合わせて、前記毛穴と交差する少なくとも1つの皺を有するそれらの毛穴を樹状毛穴(18)として識別する第1のオーバーレイ画像(900)を提供する工程と、を含む、方法。
【請求項2】
前記第1のオーバーレイ画像にモルフォロジー再構成を適用して、前記毛穴と交差する少なくとも1つの皺を有するそれらの毛穴を識別する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記毛穴画像(700)が、皮膚毛穴の境界を識別し、前記皺画像(500)及び前記毛穴画像(700)を重ね合わせる前記工程が、識別された前記皮膚毛穴の境界と交差する少なくとも1つの皺を有するそれらの毛穴を識別して、前記樹状毛穴(18)を識別する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記皺画像(500)が、皺の境界を識別し、前記皺画像(500)及び前記毛穴画像(700)を重ね合わせる前記工程が、識別された前記皮膚毛穴の境界と交差する少なくとも1つの皺の境界を有するそれらの毛穴を識別して、前記樹状毛穴(18)を識別する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記皺画像(500)が2値皺画像であり、及び/又は前記毛穴画像(700)が2値毛穴画像である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記皺画像(500)及び前記毛穴画像(700)を生成する前に、前記被検体の皮膚の前記取得されたデジタル画像に形状フィルタを適用する工程を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記形状フィルタが、毛穴形状パラメータによって前記毛穴を画定することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記毛穴形状パラメータが、毛穴面積が、25,000~1×10 6 μm 2 、直径が、175~1100μm、もしくは、幅/長さアスペクト比が、0.3~1、又はこれらの組み合わせである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記形状フィルタが、皺形状パラメータによって前記皺を画定することを含む、請求項6ないし8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記皺形状パラメータが、皺の太さから選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記皺の太さが、35μmより大きく、もしくは、皺の長さが、200μmより大きく、又は、これらの組み合わせである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
被検体の皮膚のデジタル画像を取得する前記工程が、ヒストグラム等化を実行して、ヒストグラム等化画像を取得する工程を更に含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
1つ以上の非関連皮膚特徴部を除去するために前記取得されたデジタル画像(300)、前記皺画像(500)、及び前記毛穴画像(700)のうちのいずれか1つをフィルタリングする工程を更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記非関連皮膚特徴部が、しみ、毛、ほくろ、吹き出物、ざ瘡、毛穴の黒い詰まり、及び毛穴の白い詰まり、並びにこれらの組み合わせから選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記フィルタリングする工程が、少なくとも周波数フィルタを使用することを含み、前記周波数フィルタが、高速フーリエ変換フィルタ及びバンドパスフィルタ、ガウス差分フィルタ、並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記フィルタリングする工程が、少なくとも周波数フィルタを使用することを含み、前記周波数フィルタが、ガウス差分フィルタである、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つの前記樹状毛穴を所定のクラスに分類することを更に含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記所定のクラスが、1つの皺を有する樹状毛穴、2つの皺を有する樹状毛穴、少なくとも3つの皺を有する樹状毛穴、少なくとも1つの皺を介して別の樹状毛穴に接続された樹状毛穴、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
識別された前記樹状毛穴を前記被検体に表示する工程を更に含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記表示する工程が、スマートフォンを介する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
識別された前記樹状毛穴の数に関連付けられた数値化された重症度を決定する工程を更に含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記被検体の前記数値化された重症度と、前記被検体の年齢、地理的場所、又は、種族的出身に特有な人々の集団関連付けられた前記数値化された重症度の所定の値との間の比較を生成する工程を更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
1日当たり1回より多く、1日当たり2~10回、又は、少なくとも1時間間隔の頻度で、被検体における樹状毛穴を識別する工程を更に含む請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
識別された前記樹状毛穴の面積を決定する追加工程を含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、皮膚上の樹状毛穴を識別するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
毛穴及び皺などの皮膚特徴部は、美容皮膚科学産業及び非医療美容産業において共通の関心事である。例えば、拡大された皮膚毛穴の存在は、皮膚の弾性に悪影響を与える可能性があり、次いで、特に個体の顔の鼻及び頬領域の周りの皮膚の垂れに繋がる。これは、皮膚毛穴に関連する問題に対処するために様々な治療選択肢を求めている多くの個体、特により若い個体を導いている。微細な皺(line)及び皺(wrinkle)は、老化した皮膚の古典的な症状であるが、より若い個体において識別するには特に困難である。より若い個体において老化している皮膚の皮膚特徴部をより良好に識別する機会があるため、予防治療尺度は、加齢関連症状を予防又は発生から遅延させ、任意の2つの化粧療法間の有効性をより良好に評価することができる。ダーマスコープ又は共焦点レーザー顕微鏡などの非侵襲的方法が、典型的には、皮膚特徴部を評価するために使用される。しかしながら、このような方法の限界は、各々の測定において、非常に小さい又は狭い面積(例えば、直径15mm)しか検査することができない点である。したがって、複数の測定値が取得されなければならないと考えられるため、頬領域全体又は顔領域全体のようなより大きな面積を測定するのに好適ではない場合がある。更に、これらのアプローチは、多くのユーザーには容易にアクセス可能ではなく、動作させるのにある程度の訓練を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ユーザーフレンドリーである、皮膚特徴部を識別するためのより正確なかつ/又は高精度の方法をより良好に開発するための継続的な機会があるため、最適化された非医療用美容スキンケア治療レジメンを、個体、特に、より高齢の個体と比較して通常有する皮膚特徴部がより顕著ではないより若い個体のために推奨及び/又は開発することができる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、少なくとも部分的に、樹状毛穴、更には、皮膚、結果として個体のスキンケアニーズを評価する際の役割樹状毛穴の発見に基づいている。方法はまた、スキンケア治療アプローチの開発に役立つように適用され得る。樹状毛穴は、皺(line)又は皺(wrinkle)が毛穴と交差する毛穴である。本発明の一態様は、樹状毛穴を識別する方法であって、被検体の皮膚のデジタル画像を取得する工程と、取得されたデジタル画像から皺を有する皺画像を生成する工程と、取得されたデジタル画像から毛穴を有する毛穴画像を生成する工程と、皺画像及び毛穴画像を第1のオーバーレイ画像に重ね合わせて、毛穴と交差する少なくとも1つの皺を有する毛穴を識別し、それによって樹状毛穴を識別する工程と、を含む、樹状毛穴を識別する方法を提供する。
【0005】
利点は、他の方法に比べて、特に、より若い老化被検体において、皮膚特徴部を評価するための方法の感度の増加である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本発明は、これより添付の図面を参照して、単なる例証として説明される。
図1】樹状皮膚毛穴を識別するための方法の一般的なフロー図を示す。
図2図1に示す方法のより詳細なバージョンを示す。
図3】互いに接続されたこれらの樹状毛穴のクラスタを含む複数の樹状毛穴を識別するために、チェック画像に適用された、頬の画像、並びに図1及び図2に示される方法の対応する出力である。
図4図3の樹状毛穴クラスタのうちの1つの拡大図である。
図5】20~80歳未満のユーザーの平均樹状毛穴面積を測定したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の様々な実施形態の特徴及び利点は、本発明の幅広い表現を与えるように意図される特定の実施形態の例を含む、以下の明細書から明らかになるであろう。様々な修正が本明細書及び本発明の実施から当業者には明白となるであろう。本発明の範囲は、開示される特定の形態に限定されることを意図せず、また本発明は、「特許請求の範囲」により定義されるような本発明の趣旨及び範囲に当てはまる全ての変形形態、等価物、及び代替物を網羅する。
【0008】
本明細書で使用するとき、「美容」という用語は、人体の領域に所望の視覚的効果を提供する非医学的方法を意味する。視覚的な美容効果は、一時的、半永久的、又は永久的なものであってもよい。
【0009】
本明細書で使用するとき、「顔領域」という用語は、使用者の顔全体又は使用者の顔の一部分を指し、以下の領域、すなわち頬、鼻、額、口、顎、眼窩周囲領域、及び頸部のうちの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。
【0010】
本明細書で使用するとき、「画像取込デバイス」という用語は、画像(例えば、静止画像又はビデオ)、好ましくはデジタル画像を取り込み、かつ/又は記録することができるデバイス、システム、又は器具を指す。デバイスは、臨床撮像システム又は美容カウンタ皮膚評価システムの一部であってもよい。デバイスは、携帯電話、スマートフォン、タブレット、ラップトップ、腕時計、携帯情報端末を含むモバイル機器又はスマートデバイスの一部であってもよく、又はパーソナルコンピュータの一部であってもよく、又はハンドヘルドカメラなどのスタンドアロンカメラであってもよい。デバイスはまた、光を放出するための内蔵光源(例えば、フラッシュ)を含んでもよい。
【0011】
本明細書で使用するとき、「皮膚」という用語は、ケラチノサイト、繊維芽細胞、及びメラノサイトなどの細胞で構成される、哺乳類の最も外側の保護被覆を意味する。皮膚は、外側の表皮層及びその下の真皮層を含む。好ましくは、皮膚は、顔領域の皮膚である。
【0012】
本明細書で使用するとき、「皮膚特徴部」という用語は、被験体の皮膚上の特徴を指し、毛穴、てかり、皺(ひだを含む)、しみ、毛、ほくろ、吹き出物、ざ瘡、毛穴の黒い詰まり、毛穴の白い詰まり、及びこれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
本明細書で使用するとき、「被験体」という用語は、本明細書に記載される方法(及びシステム)が使用される人を指す。
【0014】
図1は、樹状毛穴(1)を識別する方法の一般的なフロー図である。第1の工程は、被検体(3)のデジタル画像を取得することである。このデジタル画像から、皺画像(5)が生成される(5)。また、このデジタル画像(3)から、毛穴画像(7)が生成される。最後に、皺画像(5)及び毛穴画像(7)を互いに重ね合わせて、第1のオーバーレイ画像(9)を提供して、毛穴と交差する少なくとも1つの皺を有するそれらの毛穴を識別し、それによって樹状毛穴を識別する。
【0015】
図2は、図1(1000)のより詳細なフロー図である。同様に、方法(31)は、被検体(300)のデジタル画像を提供する。画像は、画像取込デバイスから取得されてもよい。例えば、画像取込デバイスは、Canon(登録商標)5D Mark II DSLRカメラを含むVisia(登録商標)-CR撮像システム(Canfield Scientific、New Jersey,USA)などの、特注ライト設定及び偏光フィルタを備えるCanon(登録商標)5D Mark IIフルサイズデジタル一眼レフ(DSLR)カメラを使用する撮像システムである。画像が人体の顔全体又は他の広い領域の画像である場合、関心領域は、そのような画像の一部分のみに関係する。代替的に、画像は、コンピュータメモリから取り出されてもよい(記憶された画像は、画像取込デバイスによって初期時点から取り込まれる)。
【0016】
被検体(300)のデジタル画像は、複数の皮膚特徴部を示し得る。これらの皮膚特徴部は、例えば、しみ(12)及びほくろ(14)などを含み得る。特に、皮膚特徴部は、独立した毛穴(16)、皺(20)、及び樹状毛穴(18)も含む。これらの皮膚特徴部のいくつかは、肉眼では見えない。これらの皮膚特徴部の全てが、後に記載されるデジタル処理工程なしで、被検体(300)のデジタル画像において容易に明らかでないことが理解される。
【0017】
樹状毛穴(18)は、少なくとも1つの皺と接続されたそれらの毛穴である。樹状毛穴は、皺が毛穴と交差する毛穴である。例えば、交差する皺は、毛穴の外側境界に触れるか、又は毛穴を通過するもののいずれかであり得る。樹状毛穴は、2、3、4、又はそれ以上の皺によって交差され得る。1つの樹状毛穴は、他の樹状毛穴(共有皺(line)(又は皺(wrinkle))を介して)に接続され得る。次に、これらの相互接続された樹状毛穴は、クラスタを形成し得る(クラスタは互いに分離され得る)。理論に拘束されることを望むわけではないが、樹状毛穴は、経時的な老化と相関する。樹状毛穴は、顔領域において、顔の表情の頻繁な動きによる身体的に負荷された応力、及び/又は老化による弾性の低下によって、経時的に発生し得る。この相関関係は、実施例1に示されている。すなわち、被検体の年齢が増加するにつれて、定義された単位面積内の樹状毛穴の平均数が増加する。美容研究における樹状毛穴を皮膚の健康及び老化の表現型として研究することは重要である。更に、理論に拘束されることを望むわけではないが、独立した毛穴(16)(すなわち、任意の皺によって交差されていない毛穴)からの樹状毛穴(18)のセグメント化は、皮膚老化の早期兆候及びその認識について若年ユーザー(例えば、18~25歳)に伝える際に重要である可能性がある。本明細書の方法は、革新的な新しい美容スキンケア製品又はレジメン、及び皮膚美容診断の開発を可能にするのに役立ち得る。
【0018】
更に図2を参照すると、被検体(300)のデジタル画像から、毛穴画像(700)が生成される。毛穴画像(700)は、被検体(300)のデジタル画像から毛穴(16、18A)を抽出することによって生成される。これらの毛穴は、独立した毛穴(16)又は樹状毛穴(18A)に由来し得る。生成された毛穴画像(700)内にあるが、交差する皺(18B)がない樹状毛穴(18A)がある。図示されていないが、好ましい例では、抽出された毛穴画像(700)により、毛穴(16、18A、18B)の各々の境界が識別される。毛穴画像(700)は、被検体のデジタル画像(300)をセグメント化することによって抽出され得る。被検体のデジタル画像(300)のセグメント化は、閾値処理法、色を基準としたセグメンテーション法、変換法、テクスチャ法、又はこれらの組み合わせなどの1つ以上の方法によって実行されてもよい。好ましくは、被検体のデジタル画像(300)のセグメント化は、閾値処理法によって実行され、より好ましくは、適応閾値処理法によって実行される。
【0019】
同様に、被検体(300)のデジタル画像から、皺画像(500)が生成される。皺画像(500)は、被検体(300)のデジタル画像から皺(18B、20)を抽出して生成される。皺は、独立した皺(20)(すなわち、毛穴と交差しない)又は毛穴と交差することによって1つ以上の樹状毛穴(18B)と関連付けられた皺に由来し得る。図示されていないが、好ましい実施例では、抽出された皺画像(500)により、皺(18B、20)の各々の境界が識別される。皺画像(500)は、被検体のデジタル画像(300)をセグメント化することによって抽出され得る。セグメント化は、前述の方法に従い得る。
【0020】
任意選択的に、毛穴(16、18A)及び/又は皺(18B、20)の各々の境界を識別する精度を増加させるために、被検体のデジタル画像(300)は、毛穴画像(700)及び/又は皺画像(500)を抽出する前に処理され得る。例えば、ヒストグラム均等化は、画像(300)のコントラストを強化し、かつ/又は画像(300)の照明を改善するために、被検体のデジタル画像(300)に対して実行されて、ヒストグラム均等化された画像を取得してもよい。ヒストグラム均等化された画像又は未処理画像(300)を、所望に応じて、1つ以上の皮膚特徴部(例えば、しみ(12)及びほくろ(14))を除去するためにフィルタリングして、フィルタリングされた画像を取得してもよい。周波数フィルタなどのフィルタを使用して、ヒストグラム均等化された画像又はフィルタリングされていない画像(300)をフィルタリングしてもよい。周波数フィルタの例としては、バンドパスフィルタとともに使用される高速フーリエ変換フィルタ、及びガウス差分フィルタが挙げられる。好ましくは、ガウス差分フィルタを使用して、画像(300)のヒストグラム均等化された画像をフィルタリングする。ヒストグラム均等化された画像又はフィルタリングされた画像を取得した後、セグメント化を、ヒストグラム均等化された画像又はフィルタリングされた画像上で行って、毛穴画像(700)及び/又は皺画像(500)を抽出する。
【0021】
任意選択的に、1つ以上の追加のフィルタを使用して、皮膚の毛穴(16、18A)及び/又は皺(18B、20)の各々の境界を識別する精度を更に増加させることができる。例えば、流域変換フィルタを使用して、接続された皮膚の毛穴(16、18A)を分割してもよく、そうでなければ境界の皺(図示せず)として識別してもよい。類推によって、同じ流域フィルタを使用して、皺(18B、20)を分割することができる。フィルタの別の例は、形状フィルタである。形状フィルタは、毛穴形状パラメータによって毛穴を画定することを含み得、好ましくは、毛穴形状パラメータは、毛穴面積(好ましくは、25,000~1×10μm)、直径(好ましくは、175~1100μm)、幅/長さアスペクト比(好ましくは、0.3~1)及びこれらの組み合わせである。
形状フィルタは、皺形状パラメータによって皺を画定することを含み、好ましくは、皺形状パラメータは、皺の太さ(好ましくは、皺の太さが35μmより大きく、より好ましくは、40μm~1cmである)、皺の長さ(好ましくは、200μmより大きく、より好ましくは、250μm~5cm未満、好ましくは、3cm未満、より好ましくは、250μm~1cm)、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0022】
図示されていないが、好ましくは、被検体のデジタル画像は、(前述の工程のうちの1つ以上に従って)処理される。より好ましくは、皺画像及び毛穴画像は、処理された画像から生成される。更に、2値皺画像及び/又は2値毛穴画像が生成される。任意選択的に、しかし好ましくは、交差工程を毛穴及び/又は皺2値画像に適用して、皺2値画像内の皺として検出された非常に小さい毛穴を識別するのを助けることができる。組織化工程は、2値皺及び/又は毛穴2値画像の両方における皺及び毛穴をそれぞれ識別するのに役立つ。例えば、MATLAB(登録商標)、Python(商標)、OpenCV、Java(商標)、ImageJの画像処理プログラム及びプログラミング言語を使用して、上記の工程を実施することができる。
【0023】
最後に、図2を更に参照すると、皺画像(5)及び毛穴画像(7)は互いに重ね合わされて、毛穴と交差する少なくとも1つの皺を有するそれらの毛穴を識別し、それによって第1の重ね合わせ画像内の樹状毛穴(18)を識別する。第2のオーバーレイ画像(19)は、独立した毛穴(16)を提供する。第3のオーバーレイ画像(23)は、独立した皺(20)を提供する。好ましくは、モルフォルジー再構成が第1のオーバーレイ画像に適用されて、毛穴と交差する少なくとも1つの皺を有するそれらの毛穴を識別する。非限定的な一例では、MATLAB(登録商標)は、モルフォルジー再構成の実施に使用される。
【0024】
図3は、樹状毛穴クラスタ(31)を識別する方法を示す。被検体の顔領域の頬の画像が提供される(3000)。図1及び図2に記載される方法を適用することにより、複数の樹状毛穴を含む第1のオーバーレイ画像が識別される(9000)。一例の樹状毛穴クラスタ(1800)が、第1のオーバーレイ画像(9000)内で識別される。57個の異なる樹状クラスタが、図3の第1のオーバーレイ画像(1800)において番号付けされる。これらの識別された樹状毛穴は、1つ以上の所定のクラスに分類され得る。そのようなクラスは、1つの皺を有する樹状毛穴、2つの皺を有する樹状毛穴、少なくとも3つの皺を有する樹状毛穴、少なくとも1つの皺を介して別の樹状毛穴に接続された樹状毛穴、及びこれらの組み合わせを含み得る。
【0025】
図4は、図3の樹状毛穴クラスタ(1800)の拡大図である。クラスタは、6つの異なる樹状毛穴で構成される。このクラスタのこれらの毛穴は、少なくとも1つの皺によって接続される。
【0026】
本明細書の方法は、追加の表示工程を提供することができる。すなわち、識別された樹状毛穴又は樹状毛穴クラスタを被検体に表示することができる。表示は、コンピュータを通して視認可能なウェブサイト又はアプリを含む様々な周知の様式を介して作製され得る。好ましくは、表示は、可視スクリーンを有するモバイルスマートフォンの様式である。
【0027】
本明細書の方法はまた、少なくとも部分的に、被検体についての識別された樹状毛穴に関連付けられた数値化された重症度を決定する(及び被検体に決定された数値化された重症度を表示する)追加工程を提供し得る。そのような数値化された重症度の非限定的な例は、1~5のスケールに基づくものである。1は、定義された単位の顔面積内の樹状毛穴の最小数を表し、5は、より多くの樹状毛穴である。代替的に、数値化された重症度は、他の皮膚パラメータに関連付けられて、被検体のより広い全体的な数値化された重症度を提供することができる。限定するものではないが、これらの他の皮膚パラメータは、少なくとも部分的に、しみ、テクスチャ、皺、独立した毛穴、皮膚の色調、放射輝度、及び他の撮像測定値に基づくものを含み得る。更に他の皮膚パラメータには、乾燥、水和、バリア機能、水和、及び皮脂分泌などのインビボ身体的測定値に基づくものが含まれ得る。
【0028】
本明細書の方法は、被検体の数値重症度と人々の集団に関連付けられた所定の値との比較を生成する更なる追加工程を提供し得る。使用される集団データは、被検体の年齢、地理的場所、種族的出身、又は任意の他の因子に特有であり得る。参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,571,003(B1)号、第9欄、5~47行を参照されたい。
【実施例1】
【0029】
図5は、異なる年齢のユーザーにわたって測定される平均樹状毛穴面積をプロットした表である。これらのユーザーは、20~80歳未満の暦年齢の範囲であった。線形回帰により、樹状毛穴面積が2.14任意単位で毎年増加したことが決定される。被検体の顔領域の皮膚のデジタル画像は、iPhone(登録商標)7のメインカメラを使用することによって取得される。上記の方法を使用して、表1のデータを生成する。
【0030】
表1.第1及び第2のユーザー人口統計にわたる樹状毛穴面積、並びに第2のユーザーの人口統計における日中の樹状毛穴面積の変化を識別する。
【0031】
【表1】
【0032】
驚くべき発見は、少なくとも第1のユーザー人口統計において、日中を通して起こる樹状毛穴面積の大きな増加にある。具体的には、同じ日の朝と夕方とで測定される場合、19.39任意単位を超える平均変化がある。19.39の2.14での除算、すなわち、(全てのユーザーにわたる線形回帰によって決定される)年間基準で増加する樹状毛穴面積は、9.07年相当の変化を表す。これは、少なくとも第1のユーザー人口統計について、日中を通して発生する「皮膚年齢」の劇的な増加である。したがって、これは、この毎日の変化(少なくとも第1のユーザー人口統計)に対処するための非医療用スキンケア製品及び治療レジメンを開発する機会を提供する。したがって、本発明の一態様は、樹状毛穴及び/又は樹状毛穴の領域に対してこれらの変化を追跡するために、1日1回を超える頻度で、被検体における樹状毛穴を識別するこれらの方法を使用することを提供する。例えば、本明細書の樹状毛穴を識別する方法は、これらの変化、及び製品又は治療がこれらの変化をもたらし得る方法を理解するために、1日に2~10回被検体に適用される。好ましくは、方法は、少なくとも30分間、好ましくは、少なくとも1時間、間隔を開け、より好ましくは、少なくとも朝に1回及び夕方に1回、間隔を開ける。方法はまた、識別された樹状毛穴の面積を測定することができる(識別された樹状毛穴の面積のいかなる変化も評価することができる)。
【0033】
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。その代わりに、特に指示がない限り、そのような寸法は各々、列挙された値とその値を囲む機能的に同等な範囲との両方を意味することが意図される。例えば、「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味することを意図する。本明細書に記載される全ての数値範囲はより狭い範囲を包含する。区切られた上下の範囲制限は、明示的に区切られていない更なる範囲を作るうえで互換性がある。本明細書に記載する実施形態は、本明細書に記載の必須構成要素並びに任意成分を含み得る、それらから本質的になり得る、又はそれらからなり得る。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかに他の意味を示さない限り、複数形も含むことが意図される。
【0034】
相互参照される又は関連するあらゆる特許又は特許出願、及び本願が優先権又はその利益を主張する任意の特許出願又は特許を含む、本明細書に引用される全ての文書は、除外又は限定することを明言しない限りにおいて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、本明細書中で開示若しくは特許請求されるいかなる発明に対する先行技術であるとはみなされず、又はそれを単独で若しくは他の任意の参考文献(単数又は複数)と組み合わせたときに、そのようないかなる発明も教示、示唆若しくは開示するとはみなされない。更に、本文書における用語の任意の意味又は定義が、参照により組み込まれた文書内の同じ用語の任意の意味又は定義と矛盾する場合、本文書においてその用語に与えられた意味又は定義が適用されるものとする。
【0035】
本発明の特定の実施形態を例示及び説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な他の変更及び修正を行うことができる点は当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にある全てのそのような変更及び修正を添付の特許請求の範囲に網羅することが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5