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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】リチウム-硫黄電池用正極の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/1395 20100101AFI20240214BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20240214BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
H01M4/1395
H01M4/38 Z
H01M4/36 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022578726
(86)(22)【出願日】2021-11-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-20
(86)【国際出願番号】 KR2021016823
(87)【国際公開番号】W WO2022114651
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2022-12-19
(31)【優先権主張番号】10-2020-0160370
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】502032105
【氏名又は名称】エルジー エレクトロニクス インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】LG ELECTRONICS INC.
【住所又は居所原語表記】128, Yeoui-daero, Yeongdeungpo-gu, 07336 Seoul,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ホボム・クワク
(72)【発明者】
【氏名】ユン・キョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヒュン・ミン・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ユン・ヒョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ウォン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ドンソク・シン
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-2042755(KR,B1)
【文献】特開2015-230852(JP,A)
【文献】国際公開第2010/122601(WO,A1)
【文献】特開2002-237434(JP,A)
【文献】国際公開第2018/225619(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/1395
H01M 4/38
H01M 4/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)硫黄-炭素複合体及びバインダーを混合して正極活物質スラリーを製造する段階;
(2)前記正極活物質スラリーを集電体の一面に塗布する段階;
(3)前記スラリーが塗布された集電体を熱風及び中波の赤外線(Medium Infra-red)を利用して乾燥させる1次乾燥段階;及び
(4)前記1次乾燥段階以後、レーザー(Laser)熱源を利用して追加乾燥させる2次乾燥段階;を含む、リチウム-硫黄電池用正極の製造方法。
【請求項2】
前記(4)段階は、
レーザー熱源を面発光形態で照射して乾燥させる段階である、請求項1に記載のリチウム-硫黄電池用正極の製造方法。
【請求項3】
前記(4)段階は、
横5ないし20cm及び縦3ないし10cm大きさの面発光レーザー熱源を照射して乾燥させる段階である、請求項1または2に記載のリチウム-硫黄電池用正極の製造方法。
【請求項4】
前記(4)段階は、
レーザー熱源を160ないし750Wの出力で照射する段階である、請求項1から3のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用正極の製造方法。
【請求項5】
前記(4)段階は、
0.1ないし2秒間レーザー熱源を照射する段階である、請求項1から4のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用正極の製造方法。
【請求項6】
前記(4)段階は、
950ないし1000nmの波長を持つレーザー熱源を照射する段階である、請求項1から5のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用正極の製造方法。
【請求項7】
前記(4)段階は、
累積エネルギー密度が3ないし6J/cmであるレーザー熱源を照射する段階である、請求項1から6のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用正極の製造方法。
【請求項8】
前記(3)段階の1次乾燥を終えたリチウム-硫黄電池用正極と対比するとき、
前記(4)段階の2次乾燥を終えたリチウム-硫黄電池用正極の硫黄損失率は0.1ないし1.1重量%である、請求項1から7のいずれか一項に記載のリチウム-硫黄電池用正極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウム-硫黄電池用正極の製造方法に係り、具体的にはレーザー熱源を利用した乾燥段階を含むリチウム-硫黄電池用正極の製造方法に関する。
【0002】
本出願は2020年11月25日付出願された韓国特許出願第10-2020-0160370号に基づく優先権の利益を主張し、前記韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容を本明細書の一部として組み込む。
【背景技術】
【0003】
二次電池が活用される範囲が小型の携帯型電子機器から中大型の電気自動車(Electric vehicle;EV)、エネルギー貯蔵装置(Energy Storage System、ESS)、電気船舶などに拡張されながら、高容量、高エネルギー密度及び長い寿命を持つリチウム二次電池に対する需要が急増している。
【0004】
その中でもリチウム-硫黄電池は、「S-S結合(Sulfur-Sulfur Bond)」を持つ硫黄系列物質を正極活物質で、リチウム金属を負極活物質で使用する電池システムを意味する。前記正極活物質の主材料である硫黄は単位原子当たり低い重さを持ちながらも資源が豊かで、需給が容易なだけなく、安価であるため、電池の製造単価を下げることができるし、毒性がないため環境にやさしいという点で特性を持つ。
【0005】
特に、リチウム-硫黄電池は、理論放電容量が1,675mAh/g-硫黄(sulfur)で、理論上では重さ対比2,600Wh/kgの高いエネルギー貯蔵密度を具現することができて、現在研究されている他の電池システム(Ni-MH電池:450Wh/kg、Li-FeS電池:480Wh/kg、Li-MnO電池:1,000Wh/kg、Na-S電池:800Wh/kg)及びリチウムイオン電池(250Wh/kg)の理論エネルギー密度に対比して非常に高い数値を持つので、現在まで開発されている中大型の二次電池市場で大きい注目を引いている。
【0006】
前記リチウム-硫黄電池は正極、負極、分離膜及び電解液を基本的な構成要素にして、その中でも正極は正極活物質が電池性能に大きい影響を及ぼすことができるという点でリチウム-硫黄電池の主要構成にあたる。前記正極は先ず、正極活物質にバインダー及び溶媒を添加して流動性ある形態の正極活物質スラリーを製造した後、前記スラリーを集電体上に塗布して乾燥することで製造することができる。
【0007】
前記リチウム-硫黄電池の製造工程と係って、負極で反応性が大きいリチウム金属を使用する際に電極内の水分が充分除去されなかった場合は負極と電解液の副反応がもたらされ、電池の退化が加速化されるし、電池内でガスが発生することがあるという点でリチウム-硫黄電池の安定性に対する疑問が提起されてきた。
【0008】
これを解決するために、前記リチウム-硫黄電池の正極内に含まれた水分を取り除くため、様々な試みがあった。
【0009】
一例として、リチウムイオン電池に使われる真空乾燥をそのまま適用する試みがあったが、活物質である硫黄の損失率が大きく、これを防止するために温度や真空度を下げる場合は電極内の水分を充分取り除くことが難しかった。また、高温での乾燥方法は硫黄が融点と揮発点が低いという点で活物質が容易に損失されるか、溶けて電極の形状自体が変形する問題点が発生した。
【0010】
既存の中波の赤外線(Medium Wave Infrared)を使用して乾燥する場合は、硫黄損失防止に効果的ではないことは勿論、数分の長い乾燥時間が必要となって、これを改善させるためには乾燥区間及び走行速度の改善が必要であるが、乾燥区間を増やすためには、さらに空間的な制約を考慮しなければならない限界点が指摘されてきた。
【0011】
したがって、正極内で均一な熱伝達及び広い面積を一度に照射して水分含量の減少効果が優秀で、乾燥時間の短縮を通じて正極生産速度を向上させながらも、正極活物質内に含まれた硫黄の損失を最小化することができるように乾燥方法が改善されたリチウム-硫黄電池用正極の製造方法に対する研究開発が必要な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】韓国公開特許公報第10-2018-0010862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は正極活物質に含まれた硫黄の損失を最小化しながらも、正極内に含まれた水分を効果的に取り除いて乾燥時間を縮めることができる乾燥方法を含むリチウム-硫黄電池用正極の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1側面によると、
(1)硫黄-炭素複合体及びバインダーを混合して正極活物質スラリーを製造する段階;(2)前記正極活物質スラリーを集電体の一面に塗布する段階;(3)前記スラリーが塗布された集電体を熱風及び中波の赤外線(Medium Infra-red)を利用して乾燥させる1次乾燥段階;及び(4)前記1次乾燥段階以後、レーザー(Laser)熱源を利用して追加乾燥させる2次乾燥段階;を含む、リチウム-硫黄電池用正極の製造方法を提供する。
【0015】
本発明の一具体例において、前記(4)段階はレーザー熱源を面発光形態で照射して乾燥させる段階である。
【0016】
本発明の一具体例において、前記(4)段階は横5ないし20cm及び縦3ないし10cm大きさの面発光レーザー熱源を照射して乾燥させる段階である。
【0017】
本発明の一具体例において、前記(4)段階はレーザー熱源を160ないし750Wの出力で照射する段階である。
【0018】
本発明の一具体例において、前記(4)段階は0.1ないし2秒間レーザー熱源を照射する段階である。
【0019】
本発明の一具体例において、前記(4)段階は950ないし1000nmの波長を持つレーザー熱源を照射する段階である。
【0020】
本発明の一具体例において、前記(4)段階は累積エネルギー密度が3ないし6J/cmであるレーザー熱源を照射する段階である。
【0021】
本発明の一具体例において、前記(3)段階の1次乾燥を終えたリチウム-硫黄電池用正極と対比すると、前記(4)段階の2次乾燥を終えたリチウム-硫黄電池用正極の硫黄損失率は0.1ないし1.1重量%である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によるリチウム-硫黄電池用正極の製造方法は、広い面積に対する均一な照射が可能な面発光レーザー熱源を使用して乾燥時間の短縮を通じた正極の製造工程速度を向上させる効果を持つ。
【0023】
また、本発明によるリチウム-硫黄電池用正極の製造方法は、短い乾燥時間にも正極活物質内に含まれた硫黄の損失を最小化しながら正極内水分除去効果に優れる長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施例によるリチウム-硫黄電池用正極製造の2次乾燥の時に使われる面発光レーザーを含む乾燥装置を示す模式図である。
図2】本発明の実施例及び比較例によるリチウム-硫黄電池用正極の製造方法によって製造された正極内水分含量を示すグラフである。
図3】本発明の実施例及び比較例によるリチウム-硫黄電池用正極の製造方法によって製造された正極内硫黄の含量を示すグラフである。
図4】本発明の実施例及び比較例によるリチウム-硫黄電池用正極の製造方法によって製造された正極内硫黄の含量を示すグラフである。
図5】本発明の実施例及び比較例によるリチウム-硫黄電池用正極の製造方法によって製造された正極内硫黄の含量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明によって提供される具体例は下記説明によって全て達成されることができる。下記説明は本発明の好ましい具体例を記述するものとして理解されるべきであり、本発明が必ずこれに限定されることではないことを理解しなければならない。
【0026】
本発明者らの実験結果、リチウム-硫黄電池用正極に対する既存の製造方法は、電極内に含まれた水分を取り除くために効果的ではないため、残存水分と負極で使われるリチウム金属の間の反応によって電池の退化が容易に加速化される点、長時間が必要となる乾燥工程によって正極生産工程が効率的ではない点、及び乾燥時の硫黄の損失が伴われる点で限界点が存在した。
【0027】
本発明の発明者らは、前記のような問題点を解決するために、1次乾燥後にレーザー熱源を使用して2次乾燥を実施し、活物質の硫黄の損失を減らしながらも効果的に短時間で正極内の水分を取り除くことができるリチウム-硫黄電池用正極の製造方法について発明するに至った。
【0028】
本発明によるリチウム-硫黄電池用正極の製造方法は、(1)硫黄-炭素複合体及びバインダーを混合して正極活物質スラリーを製造する段階;(2)前記正極活物質スラリーを集電体の一面に塗布する段階;(3)前記スラリーが塗布された集電体を熱風及び中波の赤外線(Medium Infra-red)を利用して乾燥させる1次乾燥段階;及び(4)前記1次乾燥段階以後、レーザー(Laser)熱源を利用して追加乾燥させる2次乾燥段階;を含む。
【0029】
(1)正極活物質スラリーを製造する段階
前記リチウム-硫黄電池用正極の製造方法は、(1)硫黄-炭素複合体及びバインダーを混合して正極活物質スラリーを製造する段階;を含む。
【0030】
前記硫黄-炭素複合体に含まれる硫黄の場合、単独では電気伝導性がないため、炭素材のような伝導性素材と複合化して使われることができるし、これによって前記硫黄は硫黄-炭素複合体の形態で含まれることができる。
【0031】
前記正極の硫黄ローディング量は1mAh/cm以上、2mAh/cm以上または3mAh/cm以上であって、10mAh/cm以下、9mAh/cm以下または8mAh/cm以下である。
【0032】
前記硫黄-炭素複合体に含まれる炭素は多孔性炭素材で、前記硫黄が均一で安定的に固定されることができる骨格を提供し、硫黄の低い電気伝導率を補完して電気化学的反応が円滑に行われるようにする。前記多孔性炭素材は一般的に多様な炭素材質の前駆体を炭化させることで製造されることができ、前記多孔性炭素材は内部に一定しない気孔を含むことができる。
【0033】
前記多孔性炭素材の形態は、球形、棒形、針状、板状、チューブ型またはバルク型でリチウム-硫黄電池に通常使われるものであれば制限せずに使われることができる。前記多孔性炭素材は多孔性構造であるか、比表面積が高いもので、当業界で通常使われるものであれば、いずれもかまわない。例えば、前記多孔性炭素材としては、グラファイト(graphite);グラフェン(graphene);デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)などのカーボンナノチューブ(CNT);グラファイトナノファイバー(GNF)、カーボンナノファイバー(CNF)、活性化炭素ファイバー(ACF)などの炭素繊維;天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛などの黒鉛及び活性炭素からなる群から選択された1種以上であるが、これに制限されない。
【0034】
前記硫黄-炭素複合体の製造方法は本発明で特に限定せず、当業界で通常使われる方法が利用される。
【0035】
前記(1)段階は、正極活物質スラリー総重量対比硫黄-炭素複合体は、85重量%以上、86重量%以上、87重量%以上、88重量%以上、89重量%以上または90重量%以上、91重量%以上、92重量%以上であって、98重量%以下、97重量%以下、96重量%以下である。
【0036】
前記バインダーは正極活物質を集電体に維持させ、正極活物質の間を有機的に連結させてこれらの間の結着力をより高めるもので、当該業界で公知された全てのバインダーを使用することができる。
【0037】
例えば、前記バインダーはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルピロリドン、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブチジエンゴム、スチレン-イソプレンゴム、カルボキシメチルセルロース、リチウムポリアクリレート(Lithium Polyacrylate)及びこれらの組み合わせからなる群から選択されたものを含むことができる。
【0038】
前記(1)段階は正極活物質スラリー総重量対比バインダーは2重量%以上、2.5重量%以上、3重量%以上または3.5重量%以上であって、6重量%以下、5.5重量%以下、5重量%以下または 4.5重量%以下である。
【0039】
前記正極活物質スラリーは導電材をさらに含むことができる。
【0040】
前記導電材は電解液と正極活物質を電気的に連結させて集電体(Current Collector)から電子が正極活物質まで移動する経路の役目をする物質であって、導電性を持つものであれば制限せずに使用することができる。
【0041】
例えば、前記導電材としては、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛;スーパーP(Super-P)、デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;カーボンナノチューブ、フラーレンなどの炭素誘導体;炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン;アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末またはポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロールなどの伝導性高分子を単独または混合して使用することができる。
【0042】
前記正極活物質スラリーは溶媒をさらに含むことができる。
【0043】
前記溶媒としては、硫黄-炭素複合体及びバインダーを均一に分散させることができるものを使用することができる。このような溶媒としては、水系溶媒として水が最も好ましく、この時、水は蒸留水(distilled water)、脱イオン水(deionzied water)である。ただし、必ずこれに限定するものではなく、必要な場合、水と容易に混合可能な低級アルコールが使われることができる。前記低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール及びブタノールなどがあり、好ましくは、これらを水とともに混合して利用することができる。
【0044】
(2)正極活物質スラリーを集電体の一面に塗布する段階
前記リチウム-硫黄電池用正極の製造方法は、前記正極活物質スラリーを集電体の一面に塗布する段階を含む。
【0045】
前記(1)段階を通じて製造された正極活物質スラリーを集電体の一面上に塗布することができる。
【0046】
前記集電体は電池に化学的変化を引き起こさずに導電性を持つものであれば特に制限されず、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素またはアルミニウムやステンレススチール表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使用されることができる。また、前記正極集電体は通常3ないし500μm厚さを持つことができ、前記集電体の表面上に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもできる。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態で使われることができる。
【0047】
正極活物質スラリーを塗布する厚さは50ないし300μm、好ましくは100ないし250μm、より好ましくは150ないし200μmであって、前記集電体上にコンマコッターを利用する方法を通じて前記正極活物質スラリーを塗布することが好ましい。
【0048】
(3)1次乾燥段階
前記リチウム-硫黄電池用正極の製造方法は、(3)前記スラリーが塗布された集電体を熱風及び中波の赤外線(Medium Infra-red)を利用して乾燥させる1次乾燥段階;を含む。
【0049】
前記リチウム-硫黄電池用正極の製造時、前記集電体上に塗布されたスラリー上の水分を取り除くために、1次乾燥段階で熱風及び中波の赤外線を同時に利用して乾燥工程を行うことができる。
【0050】
前記熱風乾燥は対流乾燥方式を利用して水分を取り除く乾燥方法であって、閉鎖的な乾燥空間内に熱風を照射、または加熱された空気を乾燥空間内に供給して空気媒質を加熱させて熱を伝達する方法で行われることができる。
【0051】
前記熱風乾燥を通じてスラリー内の水分を効果的に取り除くために、熱風乾燥装置の温度は70ないし100℃、好ましくは80ないし90℃であって、風量は3ないし10m/min、好ましくは4ないし6m/minである。
【0052】
前記中波の赤外線を通じた乾燥はスラリーの表面だけでなく、内部に含まれた水分まで気化させることで、電極内の水分含量を取り除くことができるという点で効果的である。
【0053】
前記中波の赤外線を通じた乾燥工程は、ヒーター形態の乾燥装置を利用することができ、70ないし100℃、好ましくは80ないし90℃温度で1ないし5μm、好ましくは1ないし3μmの波長を持つ中波の赤外線を1ないし6分間照射して乾燥することができる。
【0054】
前記(3)段階は「正極活物質スラリーの塗布後1次乾燥した集電体」を圧搾する段階をさらに含むことができる。
【0055】
前記圧搾する段階では「正極活物質スラリーの塗布後1次乾燥した集電体」をロールプレス(Roll-Press)に投入してロールによって一定した厚さを持つように圧搾させることができる。またロールギャップ(Roll Gap)を調節することで正極の気孔率(porosity)を調節することができる。
【0056】
また、前記圧搾する段階以前に離型フィルムを「正極活物質スラリーの塗布後1次乾燥した集電体」上に位置させることができる。前記離型フィルムを位置させた後で圧搾すれば、ロールプレスのロール(Roll)に正極活物質がくっついて落ちないことを防ぐことができる。
【0057】
(4)2次乾燥段階
前記リチウム-硫黄電池用正極の製造方法は、(4)前記1次乾燥段階以後、レーザー(Laser)熱源を利用して追加乾燥させる2次乾燥段階;を含む。
【0058】
前記熱風乾燥を通じた1次乾燥を通じて、スラリー内に含まれた水分を一定部分取り除くことができるが、残存水分によってリチウム金属との副反応による電池駆動の不安定性を引き起こすことができるところ、追加的な2次乾燥工程が必要なことがある。
【0059】
前記(4)段階はレーザー熱源を面発光形態で照射して乾燥させる段階である。また、前記(4)段階は横5ないし20cm及び縦3ないし10cm、好ましくは横10ないし16cm及び縦4ないし7cm大きさの面発光レーザー熱源を照射して乾燥させる段階である。
【0060】
前記面発光形態のレーザーは、ラインビーム(line beam)またはスポットビーム(spot beam)形態のレーザー熱源と対比して、大面積を均一に照射して早い乾燥速度、均一な乾燥効果及び乾燥時の硫黄損失量の減少効果を持つことができる長所がある。
【0061】
具体的に、ロールツーロール工程(Roll-to-roll processing)を利用して製作された電極を乾燥する場合は、面発光形態のレーザーを通じて大面積を同時に均一に照射するので、ロールツーロール工程を通じた電極の移動が連続的に行われ、一つのラインだけでも電極の全体面積に対する乾燥が行われることができる。
【0062】
一方、ラインビームまたはスポットビームの場合は、面発光形態のレーザーと対比してビームの幅が小さいので、同一時間内にレーザーの照射される面積が相対的に小さいという点で、一つのラインでレーザーを照射した後、次のラインに電極を移動させた後で照射されていない電極の部分に対してレーザーを照射して乾燥させなければならない工程上の短所を持つ。また、スポットビームレーザーを連続的に配置させて大面積の照射が可能な形態を取り揃えることはできるが、面発光形態のレーザー対比全体面積に対して均一に熱を伝達する効果が落ちる。
【0063】
前記(4)段階はレーザー熱源を160W以上、180W以上、200W以上、220W以上、240W以上、260W以上または280W以上の出力や750W以下、700W以下、650W以下、600W以下、550W以下、500W以下、450W以下、400W以下、380W以下、360W以下、340W以下または320W以下の出力で照射する段階である。前記出力範囲未満の場合は、レーザー熱源を通じて電極内に残存する水分を取り除くに十分なでないこともあって、前記出力範囲を超える場合は、高い出力によって正極内の硫黄が炭素担持体に溶け出て均一な電気伝導率を失うことがあるし、より高い出力によって硫黄が損失されて電極の性能を低下させることができる。
【0064】
前記(4)段階は、0.1秒以上または0.15秒以上であるか、2秒以下、1.8秒以下、1.6秒以下、1.4秒以下、1.2秒以下、1秒以下、0.9秒以下、0.8秒以下、0.7秒以下または0.6秒以下の時間にレーザー熱源を照射する段階である。前記時間未満の間に照射する場合は、レーザー熱源を通じて電極内に残存する水分を取り除くに十分でないこともあって、前記時間を超えて照射する場合は高い出力によって正極内の硫黄がカーボン担持体から溶け出て均一な電気伝導率を失うことがあるし、もっと高い出力によって硫黄が損失され、電極の性能を低下させることができる。
【0065】
前記(4)段階は好ましくは950ないし1000nmの波長を持つレーザー熱源を照射する段階である。前記波長未満のレーザーを照射する場合は、高すぎるエネルギーによって正極内の硫黄が溶けたり損失されて電極の機能を喪失することがあるし、前記波長を超えるレーザーを照射する場合は、レーザー熱源を通じて電極内の残存する水分を取り除くに十分でないこともある。
【0066】
前記(4)段階は累積エネルギー密度が3.0J/cm以上、3.2J/cm以上、3.4J/cm以上、3.6J/cm以上、3.8J/cm以上、4.0J/cm以上、4.2J/cm以上、4.4J/cm以上、4.6J/cm以上であって、6.0J/cm以下、5.8J/cm以下、5.6J/cm以下、5.4J/cm以下、5.2J/cm以下であるレーザー熱源を照射する段階である。前記累積エネルギー密度未満の場合は、伝達されるエネルギー量が微々たるもので乾燥効果が小さいことがあり、前記累積エネルギー密度を超える場合は、大きすぎるエネルギーを持つレーザー熱源が短時間に照射されて硫黄が昇華し、損失される割合が大きい問題点を持つ。
【0067】
前記(4)段階以後、前記リチウム-硫黄電池用正極内の水分含量が10ppm以上、20ppm以上、30ppm以上、40ppm以上、50ppm以上、60ppm以上、70ppm以上、80ppm以上、90ppm以上または100ppm以上であって、500ppm以下、490ppm以下、480ppm以下、470ppm以下または460ppm以下である。前記範囲を満たす場合は、正極内に残存する水分とリチウム金属間の副反応をもたらす可能性を下げることができて電池の退化を予防し、電池駆動間の安定性を高めることができる長所がある。また、ポーチセル内でガスを発生させる水分を制御することで、ガス発生を最小化することができる長所がある。
【0068】
前記(3)段階の1次乾燥を終えたリチウム-硫黄電池用正極と対比した時、前記(4)段階の2次乾燥を終えたリチウム-硫黄電池用正極の硫黄損失率は、0.1重量%以上、0.2重量%以上または0.3重量%以上であって、1.1重量%以下、1.0重量%以下、0.9重量%以下、0.8重量%以下、0.7重量%以下、0.6重量以下または0.5重量%以下である。前記範囲を満たす場合は、乾燥工程間硫黄の減少率が微々たるもので、リチウム-硫黄電池が要求されるエネルギーを発現するに十分な硫黄ローディング量を示すことができる。本明細書上で前記硫黄損失率は2次乾燥以前の正極の硫黄含量と2次乾燥以後の正極の硫黄含量の間の重量%の差で定義されることができる。
【0069】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、下記の実施例は本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、本発明がこれに限定されるものではない。
【0070】
実施例:リチウム-硫黄電池用正極の製造
[実施例1]
硫黄-炭素複合体(S:C=75:25(重量比))96重量%、バインダーとしてリチウムポリアクリレート(LiPAA:Lithium Polyacrylate)4重量%を混合して、正極活物質スラリーを製造した。
【0071】
前記正極活物質スラリーをアルミニウム集電体の一面に塗布した以後、80℃の熱風及び90℃の中波の赤外線ランプが作動する乾燥器を同時に使用して6分間乾燥する1次乾燥を実施した。
【0072】
前記1次乾燥を終えた後、970nmの波長及び300Wの出力を持つ面発光レーザー(Laser)熱源を0.2秒間照射して追加的な2次乾燥を実施して最終的にリチウム-硫黄電池用正極を製造した。
【0073】
[実施例2]
リチウム-硫黄電池用正極製造工程において、2次乾燥時にレーザー熱源を0.5秒間照射したことを除いては、前記実施例1と同様の方法でリチウム-硫黄電池用正極を製造した。
【0074】
[比較例1]
リチウム-硫黄電池用正極製造工程において、追加的な2次乾燥を実施せずに1次乾燥のみを実施して乾燥工程を進めたことを除いては、前記実施例1と同様の方法でリチウム-硫黄電池用正極を製造した。
【0075】
[比較例2ないし4]
リチウム-硫黄電池用正極製造工程において、1次乾燥以後さらに90℃の中波の赤外線ランプが作動する乾燥器を通じて下記表1のように一定時間2次乾燥を実施したことを除いては、前記実施例1と同様の方法でリチウム-硫黄電池用正極を製造した。
【0076】
【表1】
【0077】
[比較例5]
前記比較例1と同様に1次乾燥のみを終えた後、外気に長時間露出された状態で保管して吸湿が進行されたことを除いては、前記比較例1と同様の方法でリチウム-硫黄電池用正極を製造した。
【0078】
[実施例3]
前記比較例5に対してレーザー熱源を出力384Wで0.2秒間照射して2次乾燥を実施したことを除いては、前記比較例5と同様の方法でリチウム-硫黄電池用正極を製造した。
【0079】
[実施例4及び5]
2次乾燥時に下記表2のようにレーザー熱源を通じた乾燥時間を異にして2次乾燥を実施したことを除いては、前記実施例3と同様の方法でリチウム-硫黄電池用正極を製造した。
【0080】
【表2】
【0081】
実験例1:正極内の水分含量評価
前記実施例1及び2、比較例1ないし4によって製造されたリチウム-硫黄電池用正極に対し、水分含量測定装置(Metrohm、831 KF Coulometer)を利用して電極内の水分含量を測定し、下記表3及び図2のように示す。また、実施例3ないし5及び比較例5に対しても同様に水分含量を測定し、その結果を表3に示す。
【0082】
【表3】
【0083】
前記表3及び図2のように、実施例1及び2の場合は2次乾燥でレーザー熱源を利用して0.2ないし0.5秒の短い時間乾燥したにもかかわらず、1次乾燥のみを実施した比較例1と対比して19.4ppm以上の水分含量が減少されたことが分かった。
【0084】
特に、実施例2はレーザー熱源で0.5秒の短時間2次乾燥させたにもかかわらず、比較例1対比水分含量の減少量が188.4ppmに至るほど電極内の水分を取り除く乾燥効果に優れることを確認することができた。
【0085】
一方、中波の赤外線を利用した比較例2ないし3の場合は、それぞれ5、10分間乾燥させたにもかかわらず、水分含量の減少量がただ0.2秒レーザー乾燥させた実施例1と大差を持つことができず、30分間乾燥させた比較例4の場合もただ0.5秒レーザー乾燥させた実施例2と対比して著しく下がる乾燥効果を示すことを分かった。
【0086】
前記結果を通じて、1次乾燥以後、面発光レーザー熱源を利用して2次乾燥時に広い面積を均一で数秒の短い時間内で乾燥させる効果があるということを確認することができた。
【0087】
また、1次乾燥以後、電極内の水分含量が高い比較例5のような正極を対象にして出力と乾燥時間を異にした実施例3ないし5の実験結果、3ないし6J/cmの累積エネルギー密度を持つ実施例4の場合、優れる乾燥効果を持つことを確認することができた。実施例3は短い過ぎる乾燥時間で乾燥効果が微々たるものであって、返って速い再吸湿が発生することを確認することができ、実施例5は累積エネルギー密度は相対的に大きいが、乾燥以後、速く再吸湿が進行されることを確認することができた。
【0088】
実験例2:正極内の硫黄含量の損失有無評価
前記実施例1ないし5及び比較例1、4、5によって製造されたリチウム-硫黄電池用正極に対し、熱重量分析機(Thermogravimetric analyzer、Mettler Toledo、TGA/DSC2)を通じた熱重量分析(TGA)によって電極内の硫黄含量を測定し、下記表4、5及び図3、4のように示す。
【0089】
【表4】
【0090】
前記表4のように、レーザー熱源を通じた2次乾燥を実施した実施例1及び2は2次乾燥を全然実施していない比較例1と対比して、それぞれ0.7、0.5重量%の硫黄含量損失率を持つ一方、中波の赤外線を通じた2次乾燥を実施した比較例4は、0.8重量%の硫黄含量損失率を持つことを確認することができた。
【0091】
前記比較例4は30分の長い乾燥時間を持って実施例対比硫黄含量損失が相対的に大きい一方、実施例1及び2は2次乾燥による硫黄損失が起きても0.7重量%以下で相対的に小さな損失を示し、前記実験例1と同様に0.5秒以下の短い乾燥でも優れる乾燥効果を示すという点で、リチウム-硫黄電池用正極の効果的な乾燥方法であることを確認することができた。
【0092】
また、1次乾燥以後、電極内の水分含量が高い比較例5のような正極を対象にして出力と乾燥時間を異にした実施例3ないし5の実験結果、3ないし6J/cmの累積エネルギー密度を持つ実施例4の場合は硫黄損失率が1%未満で損失が少ないながらも0.5秒という短い時間内に水分含量を効果的に減らす効果を持つことが分かった。
【0093】
本発明の単純な変形ないし変更は、全て本発明の領域に属するものであり、本発明の具体的な保護範囲は添付の特許請求範囲によって明確になる。
図1
図2
図3
図4
図5