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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】無人車両の制御システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20240214BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20240214BHJP
【FI】
G08G1/09 V
G08G1/09 F
G05D1/02 H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023022578
(22)【出願日】2023-02-16
(62)【分割の表示】P 2018144450の分割
【原出願日】2018-07-31
(65)【公開番号】P2023057144
(43)【公開日】2023-04-20
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬場 昭典
(72)【発明者】
【氏名】山村 龍
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/084981(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/013687(WO,A1)
【文献】特開2013-196051(JP,A)
【文献】特開2017-206969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
G05D 1/02
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人車両を発進させるための規定指令値を算出する規定指令値算出部と
発進前の前記無人車両の状態データを取得するデータ取得部と、
前記状態データに基づいて、前記無人車両の走行速度の制限が要求されているか否かを判定して、前記走行速度の制限が要求されていると判定したときに、前記規定指令値を補正して、前記規定指令値よりも小さい補正指令値を算出する補正指令値算出部と、
前記走行速度の制限が要求されたときに前記補正指令値に基づいて前記無人車両の発進を制御する走行制御部と、を備える、
無人車両の制御システム。
【請求項2】
前記状態データは、前記無人車両のダンプボディセンサの検出データであり、
前記補正指令値算出部は、前記検出データに基づいてダンプボディがダンプ姿勢であると判定して、前記補正指令値を算出する、
請求項1に記載の無人車両の制御システム。
【請求項3】
前記状態データは、前記無人車両の油温センサの検出データであり、
前記補正指令値算出部は、前記検出データに基づいて作動油の温度が温度閾値よりも低いと判定して、前記補正指令値を算出する、
請求項1に記載の無人車両の制御システム。
【請求項4】
前記状態データは、前記無人車両の油圧センサの検出データであり、
前記補正指令値算出部は、前記検出データに基づいて作動油の圧力が圧力閾値よりも低いと判定して、前記補正指令値を算出する、
請求項1に記載の無人車両の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人車両の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉱山のような広域の作業現場において、無人で走行する無人車両が使用される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/080555号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無人車両は、管制施設から送信される走行条件データに基づいて作業現場を走行する。走行条件データは、無人車両の目標走行速度及び目標走行コースを含む。例えば無人車両の発進直後の目標走行速度が低速度に制限される場合、無人車両は目標走行速度に追従しきれず、無人車両の実際の走行速度が目標走行速度をオーバーシュートしてしまう可能性がある。その結果、無人車両が目標走行コースから逸脱してしまう可能性がある。無人車両が目標走行コースから逸脱し、無人車両の稼働が停止すると、作業現場の生産性が低下する可能性がある。
【0005】
本発明の態様は、無人車両が稼働する作業現場の生産性の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に従えば、無人車両を発進させるための規定指令値を算出する規定指令値算出部と、前記無人車両の走行速度の制限を要求する要求データが取得されたときに、前記要求データに基づいて前記規定指令値を補正して、補正指令値を算出する補正指令値算出部と、前記要求データが取得されたときに前記補正指令値に基づいて前記無人車両の発進を制御する走行制御部と、を備える無人車両の制御システムが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の態様によれば、無人車両が稼働する作業現場の生産性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る管理システム及び無人車両の一例を模式的に示す図である。
図2図2は、実施形態に係る無人車両及び走行路を模式的に示す図である。
図3図3は、実施形態に係る無人車両の制御システムを示す機能ブロック図である。
図4図4は、実施形態に係る指令値の算出方法を説明するための模式図である。
図5図5は、実施形態に係る無人車両の発進制御を説明するための模式図である。
図6図6は、実施形態に係る無人車両の発進制御を説明するための模式図である。
図7図7は、実施形態に係る無人車両の制御方法を示すフローチャートである。
図8図8は、実施形態に係るコンピュータシステムの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0010】
[管理システム]
図1は、本実施形態に係る管理システム1及び無人車両2の一例を模式的に示す図である。無人車両2とは、運転者による運転操作によらずに、制御指令に基づいて無人で走行する作業車両をいう。
【0011】
無人車両2は、作業現場において稼働する。本実施形態において、作業現場は、鉱山又は採石場である。無人車両2は、作業現場を走行して積荷を運搬するダンプトラックである。鉱山とは、鉱物を採掘する場所又は事業所をいう。採石場とは、石材を採掘する場所又は事業所をいう。無人車両2に運搬される積荷として、鉱山又は採石場において掘削された鉱石又は土砂が例示される。
【0012】
管理システム1は、管理装置3と、通信システム4とを備える。管理装置3は、コンピュータシステムを含み、作業現場の管制施設5に設置される。管制施設5に管理者が存在する。通信システム4は、管理装置3と無人車両2との間で通信を実施する。管理装置3に無線通信機6が接続される。通信システム4は、無線通信機6を含む。管理装置3と無人車両2とは、通信システム4を介して無線通信する。無人車両2は、管理装置3から送信された走行条件データに基づいて、作業現場の走行路HLを走行する。
【0013】
[無人車両]
無人車両2は、車両本体21と、車両本体21に支持されるダンプボディ22と、車両本体21を支持する走行装置23と、位置センサ41と、傾斜センサ42と、方位センサ43と、速度センサ44と、ダンプボディセンサ45と、油圧センサ46と、油温センサ47と、無線通信機28と、制御装置10とを備える。
【0014】
車両本体21は、車体フレームを含み、ダンプボディ22を支持する。また、車両本体21は、油圧ポンプ(不図示)と、油圧ポンプから吐出される作動油により作動する複数の油圧シリンダ(不図示)と、を有する。
【0015】
ダンプボディ22は、積荷が積み込まれる部材である。ダンプボディ22は、油圧シリンダであるホイストシリンダの作動により昇降する。ダンプボディ22は、ホイストシリンダの作動により、積載姿勢及びダンプ姿勢の少なくとも一方の姿勢に調整される。積載姿勢は、積荷を積み込み可能な姿勢であり、ダンプボディ22が下降している姿勢である。ダンプ姿勢は、積荷を排土する姿勢であり、ダンプボディ22が上昇している姿勢である。
【0016】
走行装置23は、車輪27を含み、走行路HLを走行する。車輪27は、前輪27Fと後輪27Rとを含む。車輪27にタイヤが装着される。走行装置23は、駆動装置23Aと、ブレーキ装置23Bと、操舵装置23Cとを有する。
【0017】
駆動装置23Aは、無人車両2を加速させるための駆動力を発生する。駆動装置23Aは、ディーゼルエンジンのような内燃機関を含む。なお、駆動装置23Aは、電動機を含んでもよい。駆動装置23Aで発生した駆動力が後輪27Rに伝達され、後輪27Rが回転する。後輪27Rが回転することにより、無人車両2は自走する。
【0018】
ブレーキ装置23Bは、無人車両2を減速又は停止させるための制動力を発生する。
【0019】
操舵装置23Cは、無人車両2の走行方向を調整可能である。無人車両2の走行方向は、車両本体21の前部の方位を含む。操舵装置23Cは、前輪27Fを操舵することによって、無人車両2の走行方向を調整する。操舵装置23Cは、油圧シリンダであるステアリングシリンダを有する。ステアリングシリンダが発生する動力により、前輪27Fが操舵される。
【0020】
位置センサ41は、走行路HLを走行する無人車両2の位置を検出する。位置センサ41の検出データは、無人車両2の絶対位置を示す絶対位置データを含む。無人車両2の絶対位置は、全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)を利用して検出される。全地球航法衛星システムは、全地球測位システム(GNSS:Global Positioning System)を含む。位置センサ41は、GNSS受信機を含む。全地球航法衛星システムは、経度、緯度、及び高度の座標データで規定される無人車両2の絶対位置を検出する。全地球航法衛星システムにより、グローバル座標系において規定される無人車両2の絶対位置が検出される。グローバル座標系とは、地球に固定された座標系をいう。
【0021】
傾斜センサ42は、走行路HLを走行する無人車両2の傾斜角度を検出する。無人車両2の傾斜角度は、ロール角及びピッチ角を含む。ロール角とは、無人車両2の前後方向に延在する回転軸を中心とする無人車両2の傾斜角度をいう。ピッチ角とは、無人車両2の左右方向に延在する回転軸を中心とする作業機械の傾斜角度をいう。傾斜センサ42の検出データは、無人車両2の傾斜角度を示す傾斜角度データを含む。傾斜センサ42は、例えば、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)を含む。
【0022】
方位センサ43は、無人車両2の方位を検出する。無人車両2の方位は、無人車両2のヨー角を含む。ヨー角とは、無人車両2の上下方向に延在する回転軸を中心とする無人車両2の傾斜角度をいう。方位センサ43の検出データは、無人車両2の方位を示す方位データを含む。無人車両2の方位は、無人車両2の走行方向である。方位センサ43は、例えばジャイロセンサを含む。なお、無人車両2のヨー角が傾斜センサ42によって検出されてもよい。
【0023】
速度センサ44は、無人車両2の走行速度を検出する。速度センサ44の検出データは、走行装置23の走行速度を示す走行速度データを含む。
【0024】
ダンプボディセンサ45は、昇降するダンプボディ22の位置を検出する。ダンプボディセンサ45は、ダンプボディ22が積載姿勢であるかダンプ姿勢であるかを検出する。ダンプボディセンサ45の検出データは、ダンプボディ22の姿勢を示すダンプボディデータを含む。
【0025】
油圧センサ46は、操舵装置23Cのステアリングシリンダの油圧を検出する。油圧シリンダであるステアリングシリンダは、作動油が供給されることにより作動する。油圧センサ46は、ステアリングシリンダの作動油の圧力を検出する。油圧センサ46の検出データは、作動油の圧力を示す油圧データを含む。
【0026】
油温センサ47は、油圧ポンプから吐出された作動油の温度を検出する。油温センサ47の検出データは、作動油の温度を示す油温データを含む。
【0027】
無線通信機28は、管理装置3に接続された無線通信機6と無線通信する。通信システム4は、無線通信機28を含む。
【0028】
制御装置10は、コンピュータシステムを含み、車両本体21に配置される。制御装置10は、無人車両2の走行装置23の走行を制御する制御指令を出力する。制御装置10から出力される制御指令は、駆動装置23Aを作動するためのアクセル指令、ブレーキ装置23Bを作動するためのブレーキ指令、及び操舵装置23Cを作動するためのステアリング指令を含む。駆動装置23Aは、制御装置10から出力されたアクセル指令に基づいて、無人車両2を加速させるための駆動力を発生する。ブレーキ装置23Bは、制御装置10から出力されたブレーキ指令に基づいて、無人車両2を減速又は停止させるための制動力を発生する。操舵装置23Cは、制御装置10から出力されたステアリング指令に基づいて、無人車両2を直進又は旋回させるために前輪27Fの向きを変えるための旋回力を発生する。
【0029】
[走行路]
図2は、本実施形態に係る無人車両2及び走行路HLを模式的に示す図である。走行路HLは、鉱山の複数の作業場PAに通じる。作業場PAは、積込場PA1及び排土場PA2の少なくとも一方を含む。走行路HLに交差点ISが設けられる。
【0030】
積込場PA1とは、無人車両2に積荷を積載する積込作業が実施されるエリアをいう。積込場PA1において、油圧ショベルのような積込機7が稼働する。排土場PA2とは、無人車両2から積荷が排土される排土作業が実施されるエリアをいう。排土場PA2には、例えば破砕機8が設けられる。
【0031】
管理装置3は、走行路HLにおける無人車両2の走行条件を設定する。無人車両2は、管理装置3から送信された走行条件を規定する走行条件データに基づいて、走行路HLを走行する。
【0032】
無人車両2の走行条件を規定する走行条件データは、無人車両2の目標位置x,y、目標走行速度Vr、目標方位θr、及び目標走行コースCSを含む。
【0033】
図2に示すように、走行条件データは、走行路HLに間隔をあけて設定された複数の走行点PIを含む。走行点PIの間隔は、例えば1[m]以上5[m]以下に設定される。走行点PIは、無人車両2の目標位置x,yを規定する。
【0034】
目標走行速度Vr及び目標方位θrは、複数の走行点PIのそれぞれに設定される。目標走行コースCSは、複数の走行点PIを結ぶ線によって規定される。
【0035】
すなわち、無人車両2の走行条件を規定する走行条件データは、無人車両2の目標位置x,yを示す複数の走行点PIと、複数の走行点PIのそれぞれに設定された無人車両2の目標走行速度Vr及び目標方位θrとを含む。
【0036】
無人車両2の目標位置x,yとは、グローバル座標系において規定される無人車両2の目標位置をいう。すなわち、目標位置x,yは、経度、緯度、及び高度で規定される座標データにおける目標位置をいう。目標位置xは、経度(x座標)における目標位置をいう。目標位置yは、緯度(y座標)における目標位置をいう。なお、無人車両2の目標位置x,yは、無人車両2のローカル座標系において規定されてもよい。
【0037】
無人車両2の目標走行速度Vrとは、走行点PIを走行(通過)するときの無人車両2の目標走行速度をいう。第1の走行点PI1における目標走行速度Vrが第1の目標走行速度Vr1に設定されている場合、第1の走行点PI1を走行するときの無人車両2の実際の走行速度Vsが第1の目標走行速度Vr1になるように、無人車両2の駆動装置23A又はブレーキ装置23Bが制御される。第2の走行点PI2における目標走行速度Vrが第2の目標走行速度Vr2に設定されている場合、第2の走行点PI2を走行するときの無人車両2の実際の走行速度Vsが第2の目標走行速度Vr2になるように、無人車両2の駆動装置23A又はブレーキ装置23Bが制御される。
【0038】
無人車両2の目標方位θrとは、走行点PIを走行(通過)するときの無人車両2の目標方位をいう。また、目標方位θrとは、基準方位(例えば北)に対する無人車両2の方位角をいう。換言すれば、目標方位θrは、車両本体21の前部の目標方位であり、無人車両2の目標走行方向を示す。第1の走行点PI1における目標方位θrが第1の目標方位θr1に設定されている場合、第1の走行点PI1を走行するときの無人車両2の実際の方位θsが第1の目標方位θr1になるように、無人車両2の操舵装置23Cが制御される。第2の走行点PI2における目標方位θrが第2の目標方位θr2に設定されている場合、第2の走行点PI2を走行するときの無人車両2の実際の方位θsが第2の目標方位θr2になるように、無人車両2の操舵装置23Cが制御される。
【0039】
[制御システム]
図3は、本実施形態に係る無人車両2の制御システムを示す機能ブロック図である。制御システムは、管理装置3と制御装置10とを含む。制御装置10は、通信システム4を介して管理装置3と通信可能である。
【0040】
管理装置3は、走行条件データ生成部31と、インターフェース部32とを有する。走行条件データ生成部31は、無人車両2の走行条件を規定する走行条件データを生成する。インターフェース部32は、入力装置33、出力装置34、及び無線通信機6のそれぞれに接続される。入力装置33、出力装置34、及び無線通信機6のそれぞれは、管制施設5に設置される。走行条件データ生成部31は、インターフェース部32を介して、入力装置33、出力装置34、及び無線通信機6のそれぞれと通信する。
【0041】
入力装置33は、管制施設5の管理者に操作されることにより、入力データを生成する。入力装置33で生成された入力データは、管理装置3に出力される。管理装置3は、入力装置33から入力データを取得する。入力装置33として、コンピュータ用キーボード、マウス、タッチパネル、操作スイッチ、及び操作ボタンのような、管理者の手によって操作される接触式入力装置が例示される。なお、入力装置33は、管理者の音声によって操作される音声入力装置でもよい。
【0042】
出力装置34は、管制施設5の管理者に出力データを提供する。出力装置34は、表示データを出力する表示装置でもよいし、印刷データを出力する印刷装置でもよいし、音声データを出力する音声出力装置でもよい。表示装置として、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)又は有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electroluminescence Display)のようなフラットパネルディスプレイが例示される。
【0043】
走行条件は、例えば管制施設5に存在する管理者により決定される。管理者は、管理装置3に接続されている入力装置33を操作する。走行条件データ生成部31は、入力装置33が操作されることにより生成された入力データに基づいて、走行条件データを生成する。インターフェース部32は、通信システム4を介して、走行条件データを無人車両2に送信する。無人車両2の制御装置10は、通信システム4を介して、管理装置3から送信された走行条件データを取得する。
【0044】
制御装置10は、インターフェース部11と、データ取得部12と、規定指令値算出部13Aと、補正指令値算出部13Bと、走行制御部14とを有する。
【0045】
インターフェース部11は、位置センサ41、傾斜センサ42、方位センサ43、速度センサ44、ダンプボディセンサ45、油圧センサ46、油温センサ47、走行装置23、及び無線通信機28のそれぞれに接続される。インターフェース部11は、位置センサ41、傾斜センサ42、方位センサ43、速度センサ44、ダンプボディセンサ45、油圧センサ46、油温センサ47、走行装置23、及び無線通信機28のそれぞれと通信する。
【0046】
データ取得部12は、インターフェース部11を介して、管理装置3から送信された無人車両2の走行条件を規定する走行条件データを取得する。また、データ取得部12は、インターフェース部11を介して、発進前の無人車両2の状態データを取得する。無人車両2の状態データとは、無人車両2の状態を示すデータをいう。状態データは、無人車両2に搭載されているセンサの検出データを含む。
【0047】
規定指令値算出部13Aは、無人車両2を発進させるための規定指令値S0を算出する。規定指令値算出部13Aは、データ取得部12により取得された走行条件データに基づいて、規定指令値S0を算出する。規定指令値S0は、規定アクセル指令値を含む。アクセル指令値とは、駆動装置23Aを駆動するための指令値をいう。規定指令値算出部13Aは、管理装置3から送信された走行点PI0における目標走行速度Vr0と、速度センサ44によって検出された現時点の無人車両2の走行速度Vs及び加速度とに基づいて、規定時間後(例えば1秒後)の無人車両2の位置及び目標走行速度Vr1を算出する。現時点が発進時点である場合、無人車両2の走行速度Vsはゼロである。規定指令値算出部13Aは、規定時間後の無人車両2の走行速度Vsが目標走行速度Vr1になるように、規定のアクセル指令値である規定指令値S0を算出する。なお、現時点の無人車両2の走行速度Vsは、速度センサ44の検出データによらずに、走行条件データから導出されてもよい。
【0048】
補正指令値算出部13Bは、データ取得部12により取得された走行条件データ及び状態データの少なくとも一方に基づいて、無人車両2の発進前において無人車両2の走行速度Vsの制限を要求する要求データが取得されたか否かを判定する。補正指令値算出部13Bは、要求データが取得されたと判定したときに、要求データに基づいて、規定指令値S0を補正して、無人車両2を発進させるための補正指令値Saを算出する。補正指令値Saは、規定アクセル指令値が補正された補正アクセル指令値を含む。補正指令値Sa(補正アクセル指令値)は、規定指令値S0(規定アクセル指令値)よりも小さい。
【0049】
図4は、本実施形態に係るアクセル指令値S0の算出方法を説明するための模式図である。無人車両2の重量をGv、重力加速度をG、ダンプトラックの目標加速度をat、無人車両2の車輪27に装着されたタイヤの転がり抵抗係数をCrr、水平面に対する走行路HLの傾斜角度をθとしたとき、無人車両2の目標加速度成分Ft、重力成分Fg、及び転がり抵抗Frのそれぞれは、以下の(1)式、(2)式、及び(3)式のそれぞれによって表される。
【0050】
【数1】
【数2】
【数3】
【0051】
走行路HLに停車状態の無人車両2が発進するために必要な力Fdは、以下の(4)式によって表される。
【0052】
【数4】
【0053】
走行路HLに停車状態の無人車両2が発進するための推進力をFn、ゲインをGaとしたとき、アクセル指令値S0は、以下の(5)式によって表される。なお、推進力Fnは、無人車両2の仕様により予め決められている固有値である。
【0054】
【数5】
【0055】
規定指令値算出部13Aは、(1)式から(5)式に従って、アクセル指令値S0を算出する。例えば、走行路HLの傾斜角度θが大きいとき(走行路HLが上り坂のとき)には、アクセル指令値S0は大きい値となり、走行路HLの傾斜角度θが小さいとき(走行路HLが平坦又は下り坂のとき)には、アクセル指令値S0は小さい値となる。また、例えば、無人車両2の重量Gv大きいときには、アクセル指令値S0は大きい値となり、無人車両2の重量Gvが小さいときには、アクセル指令値S0は小さい値となる。
【0056】
走行制御部14は、走行条件データに基づいて、無人車両2の走行を制御する。走行制御部14は、走行速度Vsの制限を要求する要求データが取得されないときに、規定指令値算出部13Aにより算出された規定指令値S0に基づいて、無人車両2の発進を制御する。走行制御部14は、走行速度Vsの制限を要求する要求データが取得されたときに、補正指令値算出部13Bにより算出された補正指令値Saに基づいて、無人車両2の発進を制御する。走行制御部14は、走行装置23の駆動装置23Aに規定アクセル指令値又は補正アクセル指令値を出力する。駆動装置23Aは、規定アクセル指令値又は補正アクセル指令値に基づいて動力を発生する。
【0057】
[発進制御]
図5及び図6は、本実施形態に係る無人車両2の発進制御を説明するための模式図である。図5に示すグラフにおいて、横軸は、停車状態の無人車両2からの前方の距離を示し、縦軸は、無人車両2の走行速度を示す。
【0058】
図5は、無人車両2の発進において走行速度Vsを制限する走行条件データの一例を示す。図6は、無人車両2の発進において走行速度Vsを制限しない走行条件データの一例を示す。図5及び図6のそれぞれにおいて、無人車両2は、走行点PI0において停車状態である。目標走行速度Vrは、複数の走行点PI(PI0、PI1、PI2、…)のそれぞれに設定される。
【0059】
図5に示す例において、走行点PI0から走行点PI5の間において無人車両2が加速するように、走行条件データが設定される。走行点PI5よりも前方の走行点PI6、PI7、…においては、速度閾値Vshよりも低い走行速度Vrlで無人車両2が走行するように、走行条件データが設定される。
【0060】
すなわち、図5に示す例において、無人車両2の発進において、無人車両2の走行速度Vsは、速度閾値Vshよりも低い走行速度Vrlに制限される。以下の説明において、走行速度Vrlを適宜、走行速度Vsの制限値Vrl、と称する。
【0061】
図6に示す例において、走行点PI0から走行点PI5の間において無人車両2が加速するように、走行条件データが設定される。また、図6に示す例においては、走行点PI5よりも前方の走行点PI6、PI7、…においても、無人車両2が加速するように、走行条件データが設定される。速度閾値Vshよりも高い走行速度Vsで無人車両2が走行するように、走行条件データが設定される。
【0062】
すなわち、図6に示す例において、無人車両2の発進において、無人車両2の走行速度Vsは、制限されず、速度閾値Vshよりも高い走行速度Vsまで加速するように、走行条件データが設定される。
【0063】
無人車両2の発進において無人車両2の走行速度Vsの制限を要求する要求データは、走行速度Vsの制限値Vrlを含む。補正指令値算出部13Bは、走行条件データに基づいて、無人車両2の発進において無人車両2の走行速度の制限が要求されているか否かを判定する。補正指令値算出部13Bは、停車状態の無人車両2から規定距離だけ前方の走行点に設定された目標走行速度Vrに基づいて、走行速度Vsの制限が要求されているか否かを判定し、走行速度Vsの制限が要求されていると判定した場合、補正指令値Saを算出する。
【0064】
一例として、補正指令値算出部13Bは、走行点PI0において停車状態の無人車両2から10点分だけ前方の走行点PI10に設定された目標走行速度Vrに基づいて、走行速度Vsの制限が要求されているか否かを判定する。例えば、補正指令値算出部13Bは、走行点PI10に設定された目標走行速度Vrが速度閾値Vsh未満であるとき、走行速度Vsの制限が要求されていると判定する。補正指令値算出部13Bは、走行点PI10に設定された目標走行速度Vrが速度閾値Vsh以上であるとき、走行速度Vsの制限が要求されていないと判定する。すなわち、図5に示す走行条件データが設定されている場合、補正指令値算出部13Bは、走行速度Vsの制限が要求されていると判定する。図6に示す走行条件データが設定されている場合、補正指令値算出部13Bは、走行速度Vsの制限が要求されていないと判定する。このように、補正指令値算出部13Bは、走行条件データで規定される目標走行速度Vrと速度閾値Vshとを比較して、目標走行速度Vrに速度閾値Vshよりも低い制限値Vrlが設定されていると判定したとき、走行速度Vsの制限が要求されていると判定し、目標走行速度Vrに速度閾値Vshよりも低い制限値Vrlが設定されていないと判定したとき、走行速度Vsの制限が要求されていないと判定する。
【0065】
走行速度Vsの制限が要求されている場合において、補正指令値算出部13Bは、制限値Vrlに基づいて、(5)式に示したゲインGaを調整して、補正指令値Saを算出する。すなわち、補正指令値算出部13Bは、走行条件データで規定される走行速度Vsの制限値Vrlが低いほど、補正指令値Saを小さくする(ゲインGaを小さくする)。補正指令値算出部13Bは、走行条件データで規定される制限値Vrlが高いほど、補正指令値Saを大きくする(ゲインGaを大きくする)。
【0066】
なお、補正指令値Sa(補正アクセル指令値)は、制限値Vrlに比例しなくてもよく、制限値Vrlに基づいて予備試験により予め設定された設定値でもよい。
【0067】
図5に示した例において、無人車両2の発進直後の目標走行速度Vrに制限値Vrlが設定されているにもかかわらず、走行制御部14が、規定指令値S0に基づいて無人車両2の発進を制御してしまうと、ラインVsoで示すように、無人車両2の実際の走行速度Vsが目標走行速度Vrをオーバーシュートしてしまう可能性がある。その結果、無人車両2が目標走行コースCSから逸脱してしまう可能性がある。無人車両2が目標走行コースCSから逸脱し、無人車両2の稼働が停止すると、作業現場の生産性が低下する可能性がある。
【0068】
本実施形態においては、無人車両2の発進直後の目標走行速度Vrに制限値Vrlが設定されている場合、すなわち、走行速度Vsの制限が要求されている場合、補正指令値算出部13Bは、制限値Vrlに基づいて、無人車両2の発進時の補正指令値Saを算出し、算出した補正指令値Saを走行制御部14に出力する。走行制御部14は、補正指令値Saに基づいて、駆動装置23Aを制御する。これにより、図5のラインVsで示すように、無人車両2の走行速度Vsは、目標走行速度Vrをオーバーシュートすることなく、目標走行速度Vrに追従することができる。また、無人車両2の不要な加速が抑制されるので、無人車両2の燃料消費率の悪化を抑制することができる。
【0069】
一方、図6に示した例のように、無人車両2の発進直後の目標走行速度Vrに制限値Vrlが設定されていない場合、すなわち、走行速度Vsの制限が要求されない場合、規定指令値算出部13Aは、走行条件データに基づいて規定指令値S0を算出し、算出した規定指令値S0を走行制御部14に出力する。走行制御部14は、規定指令値S0に基づいて、駆動装置23Aを駆動する。これにより、無人車両2は、発進時において高い加速度で加速することができる。そのため、作業現場の生産性の低下が抑制される。
【0070】
以上、補正指令値算出部13Bが、走行条件データに基づいて、走行速度Vsの制限が要求されているか否かを判定する例について説明した。補正指令値算出部13Bは、発進前の無人車両2の状態データに基づいて、走行速度Vsの制限が要求されているか否かを判定してもよい。上述のように、無人車両2の状態データとは、無人車両2の状態を示すデータをいう。状態データは、無人車両2に搭載されているセンサの検出データを含む。補正指令値算出部13Bは、無人車両2の状態データに基づいて、無人車両2の発進において無人車両2をゆっくりと走行する必要があると判定したとき、規定指令値S0よりも小さい補正指令値Saを算出する。
【0071】
以下、発進前の無人車両2の状態データに基づいて、走行速度Vsの制限が要求されているか否かを判定する例について説明する。
【0072】
例えば、ダンプボディ22に積み込まれている積荷をダンプボディ22から排土する場合、無人車両2が停車状態で、ダンプボディ22が積載姿勢からダンプ姿勢に変化するようにホイストシリンダが作動する。ダンプボディ22がダンプ姿勢になった後、ダンプボディ22から積荷が全て排土されるように、無人車両2は走行を開始する。ダンプボディ22がダンプ姿勢の状態で停車状態の無人車両2が発進する場合、無人車両2の走行速度Vsの制限が要求される。ダンプボディ22の位置は、ダンプボディセンサ45によって検出される。データ取得部12は、インターフェース部11を介して、ダンプボディセンサ45の検出データを取得する。補正指令値算出部13Bは、ダンプボディセンサ45の検出データに基づいて、ダンプボディ22がダンプ姿勢か否かを判定することができる。要求データは、ダンプボディセンサ45の検出データを含む。補正指令値算出部13Bは、無人車両2が発進前において、ダンプボディセンサ45の検出データに基づいて、無人車両2の走行速度Vsの制限が要求されているか否かを判定する。ダンプボディ22がダンプ姿勢の状態で停車状態の無人車両2が発進する場合、補正指令値算出部13Bは、無人車両2の走行速度Vsが制限されるように、補正指令値Saを算出する。走行制御部14は、補正指令値算出部13Bにより算出された補正指令値Saに基づいて、無人車両2の発進を制御する。
【0073】
また、例えば、停車状態の無人車両2が発進する場合において、作動油の温度が低く、目標走行コースCSが急峻なカーブを含む場合、作動油の温度が低いことに起因してステアリングシリンダの応答性が悪化するため、無人車両2の走行速度Vsの制限が要求される。作動油の温度は、油温センサ47によって検出される。データ取得部12は、インターフェース部11を介して、油温センサ47の検出データを取得する。補正指令値算出部13Bは、油温センサ47の検出データに基づいて、作動油の温度が温度閾値よりも低いか否かを判定することができる。要求データは、油温センサ47の検出データを含む。補正指令値算出部13Bは、無人車両2が発進前において、油温センサ47の検出データに基づいて、無人車両2の走行速度Vsの制限が要求されているか否かを判定する。作動油の温度が温度閾値よりも低い状態で停車状態の無人車両2が発進する場合、補正指令値算出部13Bは、無人車両2の走行速度Vsが制限されるように、補正指令値Saを算出する。走行制御部14は、補正指令値算出部13Bにより算出された補正指令値Saに基づいて、無人車両2の発進を制御する。
【0074】
また、例えば、停車状態の無人車両2が発進する場合において、作動油の圧力が低い場合、無人車両2の走行速度Vsの制限が要求される。作動油の圧力は、油圧センサ46によって検出される。データ取得部12は、インターフェース部11を介して、油圧センサ46の検出データを取得する。補正指令値算出部13Bは、油圧センサ46の検出データに基づいて、作動油の圧力が圧力閾値よりも低いか否かを判定することができる。要求データは、油圧センサ46の検出データを含む。補正指令値算出部13Bは、無人車両2が発進前において、油圧センサ46の検出データに基づいて、無人車両2の走行速度Vsの制限が要求されているか否かを判定する。作動油の圧力が圧力閾値よりも低い状態で停車状態の無人車両2が発進する場合、補正指令値算出部13Bは、無人車両2の走行速度Vsが制限されるように、補正指令値Saを算出する。走行制御部14は、補正指令値算出部13Bにより算出された補正指令値Saに基づいて、無人車両2の発進を制御する。
【0075】
また、鉱山の作業現場においては、無人車両2のみならず、有人車両も走行する。有人車両は、作業現場を管理又は監視するために、作業現場を走行する。例えば、停車状態の無人車両2が発進する場合において、無人車両2の近くに有人車両が存在する場合、無人車両2の走行速度Vsの制限が要求される。無人車両2の位置データ及び有人車両の位置データは、管理装置3に送信される。そのため、管理装置3は、無人車両2の近くに有人車両が存在するか否かを判定することができる。また、無人車両2の近くに別の無人車両2が存在する場合においても、無人車両2の走行速度Vsの制限が要求される。無人車両2の近くに有人車両又は別の無人車両2が存在すると判定した場合、管理装置3は、発進時において無人車両2の走行速度Vsが制限されるように走行条件データを生成し、無人車両2に送信する。走行条件データは、図5を参照して説明したような制限値Vrlを含む。要求データは、制限値Vrlを含む。データ取得部12は、インターフェース部11を介して、走行条件データを取得する。補正指令値算出部13Bは、無人車両2が発進前において、無人車両2の走行速度Vsが制限されるように、補正指令値Saを算出する。走行制御部14は、補正指令値算出部13Bにより算出された補正指令値Saに基づいて、無人車両2の発進を制御する。
【0076】
また、例えば、停車状態の無人車両2が発進する場合において、目標走行コースCSの位置と無人車両2の実際の位置とがずれていたり、走行点PIに設定されている目標方位θrと無人車両2の実際の方位とがずれていたりする場合、無人車両2の走行速度Vsの制限が要求される。すなわち、位置又は方位のずれ量が大きい状態で、停車状態の無人車両2が急加速したり高速で走行したりした場合、ずれ量が更に大きくなってしまう可能性がある。そのため、停車状態の無人車両2が発進する場合において、位置又は方位のずれ量が大きい場合、無人車両2の走行速度Vsの制限が抑制される。無人車両2の位置及び方位は、位置センサ41及び方位センサ43によって検出される。データ取得部12は、インターフェース部11を介して、位置センサ41の検出データ及び方位センサ43の検出データを取得する。補正指令値算出部13Bは、位置センサ41の検出データ及び方位センサ43の検出データに基づいて、目標走行コースCSの位置と無人車両2の実際の位置とのずれ量、又は目標方位θrと無人車両2の実際の方位とのずれ量がずれ量閾値も大きいかを判定することができる。要求データは、位置センサ41の検出データ及び方位センサ43の検出データを含む。補正指令値算出部13Bは、無人車両2が発進前において、位置センサ41の検出データ及び方位センサ43の検出データに基づいて、無人車両2の走行速度Vsの制限が要求されているか否かを判定する。ずれ量がずれ量閾値よりも大きい状態で停車状態の無人車両2が発進する場合、補正指令値算出部13Bは、無人車両2の走行速度Vsが制限されるように、補正指令値Saを算出する。走行制御部14は、補正指令値算出部13Bにより算出された補正指令値Saに基づいて、無人車両2の発進を制御する。
【0077】
また、例えば、無人車両2が作業現場において走行条件データに基づいて稼働を開始する前に、無人車両2のテスト走行が実施される場合がある。テスト走行において、無人車両2の走行速度Vsの制限が要求される。要求データは、無人車両2がテスト走行することを示すテスト走行データを含む。補正指令値算出部13Bは、テスト走行において、無人車両2の走行速度Vsが制限されるように、補正指令値Saを算出する。走行制御部14は、補正指令値算出部13Bにより算出された補正指令値Saに基づいて、無人車両2の発進を制御する。
【0078】
また、例えば、発進前に無人車両2の異常が検出された場合、無人車両2の走行速度Vsの制限が要求される。要求データは、無人車両2の異常を示す異常データを含む。発進前に無人車両2の異常が検出された場合、補正指令値算出部13Bは、無人車両2の走行速度Vsが制限されるように、補正指令値Saを算出する。走行制御部14は、補正指令値算出部13Bにより算出された補正指令値Saに基づいて、無人車両2の発進を制御する。
【0079】
[制御方法]
図7は、本実施形態に係る無人車両2の制御方法を示すフローチャートである。停車状態の無人車両2が発進する前に、データ取得部12は、インターフェース部11を介して、無人車両2の走行条件データ及び状態データを取得する(ステップST1)。
【0080】
補正指令値算出部13Bは、データ取得部12により取得された走行条件データ及び状態データに基づいて、走行速度Vsの制限が要求されているか否かを判定する(ステップST2)。
【0081】
ステップST2において、走行速度Vsの制限が要求されていると判定した場合(ステップST2:Yes)、補正指令値算出部13Bは、発進直後の無人車両2の走行速度Vsが制限されるように、補正指令値Saを算出する(ステップST3)。
【0082】
例えば、図5を参照して説明したように、走行条件データが制限値Vrlを含む場合、補正指令値算出部13Bは、走行条件データに基づいて、走行速度Vsが制限値Vrlを超えないように、最大値よりも小さい補正指令値Saを算出する。
【0083】
また、上述のように、例えばダンプボディセンサ45の検出データに基づいてダンプボディ22がダンプ姿勢であると判定したり、油温センサ47の検出データに基づいて作動油の温度が温度閾値よりも低いと判定したり、油圧センサ46の検出データに基づいて作動油の圧力が圧力閾値よりも低いと判定したり、無人車両2の近くに有人車両又は別の無人車両2が存在すると判定したり、目標走行コースCSの位置と無人車両2の実際の位置とがずれていると判定したり、目標方位θrと無人車両2の実際の方位とがずれていると判定したり、無人車両2がテスト走行すると判定したり、無人車両2に異常が発生したと判定したりした場合、補正指令値算出部13Bは、状態データに基づいて、走行速度Vsが制限されるように、規定指令値S0よりも小さい補正指令値Saを算出する。
【0084】
走行制御部14は、ステップST3において算出された補正指令値Saに基づいて、無人車両2の発進を制御する。駆動装置23Aは、制限された補正指令値Saに基づいて作動する。無人車両2は、ゆっくりと発進する(ステップST4)。
【0085】
ステップST2において、走行速度Vsの制限が要求されないと判定した場合(ステップST2:No)、規定指令値算出部13Aは、走行条件データに基づいて算出された規定指令値S0を走行制御部14に出力する(ステップST5)。
【0086】
走行制御部14は、ステップST5において出力された規定指令値S0に基づいて、無人車両2の発進を制御する。駆動装置23Aは、規定指令値S0に基づいて作動する。無人車両2は、高い加速度で発進する(ステップST4)。
【0087】
[コンピュータシステム]
図8は、コンピュータシステム1000の一例を示すブロック図である。上述の管理装置3及び制御装置10のそれぞれは、コンピュータシステム1000を含む。コンピュータシステム1000は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサ1001と、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリ及びRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含むメインメモリ1002と、ストレージ1003と、入出力回路を含むインターフェース1004とを有する。上述の管理装置3の機能及び制御装置10の機能は、プログラムとしてストレージ1003に記憶されている。プロセッサ1001は、プログラムをストレージ1003から読み出してメインメモリ1002に展開し、プログラムに従って上述の処理を実行する。なお、プログラムは、ネットワークを介してコンピュータシステム1000に配信されてもよい。
【0088】
[効果]
以上説明したように、本実施形態によれば、無人車両2の発進前において、無人車両2の走行速度Vsの制限を要求する要求データを取得したときに、補正指令値算出部13Bは、無人車両2の発進において走行速度Vsが制限されるように、無人車両2を発進させるための補正指令値Saを算出する。走行制御部14は、算出された補正指令値Saに基づいて、無人車両2の発進を制御する。これにより、無人車両2の発進後において、無人車両2の実際の走行速度Vsが目標走行速度Vrをオーバーシュートしてしまうことが抑制される。そのため、無人車両2が目標走行コースCSから逸脱してしまうことが抑制される。したがって、作業現場の生産性の低下が抑制される。また、走行速度Vsの制限が要求された場合、無人車両2の不要な加速が抑制されるので、無人車両2の燃料消費率の悪化を抑制することができる。
【0089】
また、走行速度Vsの制限が要求されない場合、規定指令値算出部13Aは、走行条件データに基づいて算出された規定指令値S0を走行制御部14に出力する。走行制御部14は、規定指令値S0に基づいて駆動装置23Aを駆動する。これにより、無人車両2は、発進時において高い加速度で加速することができる。そのため、作業現場の生産性の低下が抑制される。
【0090】
[他の実施形態]
なお、上述の実施形態において、指令値(規定指令値S0、補正指令値Sa)は、駆動装置23Aを駆動するためのアクセル指令値であることとした。指令値は、走行点PIにおける目標走行速度Vr0でもよいし、現時点から規定時間後の目標走行速度Vr1でもよい。
【0091】
なお、上述の実施形態において、制御装置10の機能の少なくとも一部が管理装置3に設けられてもよいし、管理装置3の機能の少なくとも一部が制御装置10に設けられてもよい。例えば、上述の実施形態において、管理装置3が、補正指令値算出部13Bの機能を有し、管理装置3において算出された補正指令値Saが、通信システム4を介して、無人車両2の制御装置10に送信されてもよい。制御装置10の走行制御部14は、管理装置3から送信された補正指令値Saに基づいて、無人車両2の発進を制御する。
【符号の説明】
【0092】
1…管理システム、2…無人車両、3…管理装置、4…通信システム、5…管制施設、6…無線通信機、7…積込機、8…破砕機、10…制御装置、11…インターフェース部、12…データ取得部、13A…規定指令値算出部、13B…補正指令値算出部、14…走行制御部、21…車両本体、22…ダンプボディ、23…走行装置、23A…駆動装置、23B…ブレーキ装置、23C…操舵装置、27…車輪、27F…前輪、27R…後輪、28…無線通信機、31…走行条件データ生成部、32…インターフェース部、33…入力装置、34…出力装置、41…位置センサ、42…傾斜センサ、43…方位センサ、44…速度センサ、45…ダンプボディセンサ、46…油圧センサ、47…油温センサ、CS…目標走行コース、HL…走行路、IS…交差点、PA…作業場、PA1…積込場、PA2…排土場、PI…走行点。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8