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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】移相装置
(51)【国際特許分類】
   H01P 1/185 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
H01P1/185
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023137589
(22)【出願日】2023-08-25
【審査請求日】2023-10-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】上道 雄介
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】特許第7326645(JP,B1)
【文献】特許第7314385(JP,B1)
【文献】特許第7168817(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0158068(US,A1)
【文献】YAHYA TOUSI,"A Ka-band Digitally-Controlled Phase Shifter with sub-degree Phase Precision",2016 IEEE Radio Frequency Integrated Circuits Symposium,2016年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/185
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号線路と、前記信号線路と平行に延びる第1平行線路を含む第1線路と、前記信号線路と平行に延びる第2平行線路、および、前記第2平行線路の一方の端部から前記第2平行線路の他方の端部付近まで延びるとともに前記信号線路の長手方向と交差する交差方向において前記信号線路から遠ざかる方向に凸状となるループ状のループ線路、を含む第2線路と、前記第1平行線路の一方の端部および前記第2平行線路の一方の端部に電気的に接続された第1接地導体と、前記第2線路の一方の端部に接続された第2接地導体と、前記第1平行線路の他方の端部と前記第2接地導体との間に設けられた第1電子スイッチと、前記第2平行線路の他方の端部と前記第2接地導体との間に設けられた第2電子スイッチと、前記第1電子スイッチおよび前記第2電子スイッチを制御する制御回路と、を備え、前記第1平行線路と前記第2平行線路との間に前記信号線路が位置するデジタル移相回路が、前記長手方向において複数縦続接続された第1列と、
前記デジタル移相回路が前記長手方向において複数縦続接続され、前記交差方向から見て前記第1列と重なるように前記第1列と平行に延びる第2列と、
前記第1列の一方の端部と前記第2列の一方の端部とを電気的に接続する接続部と、
平面視において前記第1列と前記第2列と前記接続部とを取り囲む、凹部が形成された第1グランドプレーンと、を備え、
前記第1グランドプレーンと前記ループ線路とは、互いに接触していない、
移相装置。
【請求項2】
少なくとも一部が前記凹部の内縁に沿って延び、前記制御回路に電源を供給する、平面視においてU字状の電源配線と、
前記第1グランドプレーンと前記電源配線との間に配されたデカップリングコンデンサと、をさらに備える、
請求項1に記載の移相装置。
【請求項3】
複数の前記デジタル移相回路の各々において、前記ループ線路は、前記第2平行線路の一方の端部から前記交差方向において前記信号線路から遠ざかるように延びる第1交差線路と、前記第1交差線路の一方の端部から前記信号線路と平行に延び、前記第2平行線路の長さよりも短い第3平行線路と、前記第3平行線路の一方の端部に接続され、前記交差方向において前記信号線路に近づくように前記第1交差線路の長さより短く延びてから前記信号線路と平行に延びる屈曲部が形成された屈曲線路と、を含み、
複数の前記デジタル移相回路の各々において、前記制御回路は、平面視において、前記屈曲線路と、隣接する前記デジタル移相回路が有する前記第1交差線路と、の間に形成された隙間に位置している、
請求項1または2に記載の移相装置。
【請求項4】
前記接続部は、第2グランドプレーンを有し、
前記第1グランドプレーンと前記第2グランドプレーンとは、互いに接触していない、
請求項1または2に記載の移相装置。
【請求項5】
前記第1列と前記第2列との間には、グランドプレーンが配置されない、
請求項1または2に記載の移相装置。
【請求項6】
前記第1列の他方の端部に電気的に接続された、GNDを有する入力伝送線路と、
前記第2列の他方の端部に電気的に接続された、GNDを有する出力伝送線路と、をさらに備え、
前記入力伝送線路のGNDおよび前記出力伝送線路のGNDは、前記第1グランドプレーンに電気的に接続されている、
請求項1または2に記載の移相装置。
【請求項7】
前記入力伝送線路および前記出力伝送線路の各々は、前記信号線路と電気的に接続される信号線と、前記信号線の両側に間隔を空けて配された一対の接地線と、を有する、
請求項6に記載の移相装置。
【請求項8】
前記入力伝送線路および前記出力伝送線路の各々は、前記信号線および前記一対の接地線の上方および下方の少なくとも一方に配置されるグランド層と、前記一対の接地線と前記グランド層とを接続する接続導体と、をさらに有する、
請求項7に記載の移相装置。
【請求項9】
前記信号線と前記接地線との間の距離をS1とし、前記信号線と前記グランド層との間の距離をH1とするとき、H1≧3×S1が成立する、
請求項8に記載の移相装置。
【請求項10】
前記第1列の他方の端部と前記入力伝送線路とを電気的に接続し、平面視において屈曲した形状を有する第1ベンド接続部と、
前記第2列の他方の端部と前記出力伝送線路とを電気的に接続し、平面視において屈曲した形状を有する第2ベンド接続部と、をさらに備え、
前記入力伝送線路および前記出力伝送線路の各々は、前記交差方向に延びている、
請求項6に記載の移相装置。
【請求項11】
前記第1列の他方の端部と前記入力伝送線路とを電気的に接続し、平面視において屈曲した形状を有する第1ベンド接続部と、
前記第2列の他方の端部と前記出力伝送線路とを電気的に接続し、平面視において屈曲した形状を有する第2ベンド接続部と、をさらに備え、
前記第1ベンド接続部および前記第2ベンド接続部の各々は、前記信号線路と電気的に接続される信号線接続路と、前記一対の接地線と電気的に接続される一対の接地線接続路と、を有する、
請求項7に記載の移相装置。
【請求項12】
前記第1ベンド接続部および前記第2ベンド接続部の各々は、前記信号線接続路および前記一対の接地線接続路の上方および下方の少なくとも一方に配置される接続グランド層と、前記一対の接地線接続路と前記接続グランド層とを接続する接続導体と、をさらに有する、
請求項11に記載の移相装置。
【請求項13】
前記信号線接続路と前記接地線接続路との間の距離をS2とし、前記信号線接続路と前記接続グランド層との間の距離をH2とするとき、H2≧3×S2が成立する、
請求項12に記載の移相装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移相装置に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の非特許文献1には、マイクロ波、準ミリ波あるいはミリ波を対象とするデジタル制御型の移相回路(デジタル移相回路)が開示されている。このデジタル移相回路は、非特許文献1の図2に示されているように、信号線路(signal line)、一対の内側線路(inner lines)、一対の外側線路(outer lines)、第1接地バー、第2接地バー、および一対のNMOSスイッチ等を備える。一対の内側線路は、信号線路の両側に設けられる。一対の外側線路は、一対の内側線路の外側に設けられる。第1接地バーは、各内側線路および各外側線路の一端に接続される。第2接地バーは、各外側線路の他端に接続される。各NMOSスイッチは、各内側線路の他端と第2接地バーとの間に設けられる。
【0003】
このようなデジタル移相回路は、信号線路における信号波の伝送に起因して一対の内側線路あるいは一対の外側線路に流れるリターン電流を一対のNMOSスイッチの開/閉に応じて切り替えることにより、動作モードを低遅延モードと高遅延モードとに切り替える。すなわち、デジタル移相回路は、一対の内側線路にリターン電流が流れる場合に動作モードが低遅延モードとなり、一対の外側線路にリターン電流が流れる場合に動作モードが高遅延モードとなる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】A Ka-band Digitally-Controlled Phase Shifter with sub-degree Phase Precision (2016,IEEE,RFIC)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のデジタル移相回路は、例えばフェイズドアレイアンテナを用いた基地局等に適用される。この場合、デジタル移相回路は、複数のデジタル移相回路が縦続接続された状態で半導体基板上に実装される。すなわち、上記のデジタル移相回路は、実際の移相装置の構成における単位ユニットであり、複数のデジタル移相回路が縦続接続されることによって移相装置を構成する。この移相装置は、複数のデジタル移相回路の各々が独立に高遅延モードと低遅延モードとの間で切り替わることにより、移相装置全体として複数の移相量を実現する。
【0006】
このような移相装置を半導体基板上に実装する場合、複数のデジタル移相回路を多列状に配置する場合がある。すなわち、半導体基板上に、縦続接続された複数のデジタル移相回路を有する列(単位列)が複数列、互いに平行に配置される場合がある。そして、各単位列の周囲に、グランドプレーン等のグランド導体を配置する場合がある。このグランド導体の配置によっては、各単位列(移相装置)の移相特性に悪影響を及ぼす場合があり得る。
【0007】
また、上述したようなデジタル移相回路において、限られた面積で移相量を確保するには、回路定数の1つであるインダクタンスについて、高遅延モード時のインダクタンス値を低遅延モード時のインダクタンス値に対して十分に大きくすることが望ましい。しかしながら、上述した従来のデジタル移相回路において、高遅延モード時のインダクタンス値を大きくするためには、信号線路に対して外側線路を離す(あるいは、外側線路の長さを長くする)必要がある。そのため、デジタル移相回路のサイズが大きくなってしまう。上述した移相装置は複数のデジタル移相回路が縦続接続された構成であるため、デジタル移相回路のサイズが大きくなると移相装置も大型化してしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、このような事情を考慮してなされ、従来よりも小型で所望の移相特性を実現可能な移相装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の態様1に係る移相装置は、信号線路と、前記信号線路と平行に延びる第1平行線路を含む第1線路と、前記信号線路と平行に延びる第2平行線路、および、前記第2平行線路の一方の端部から前記第2平行線路の他方の端部付近まで延びるとともに前記信号線路の長手方向と交差する交差方向において前記信号線路から遠ざかる方向に凸状となるループ状のループ線路、を含む第2線路と、前記第1平行線路の一方の端部および前記第2平行線路の一方の端部に電気的に接続された第1接地導体と、前記第2線路の一方の端部に接続された第2接地導体と、前記第1平行線路の他方の端部と前記第2接地導体との間に設けられた第1電子スイッチと、前記第2平行線路の他方の端部と前記第2接地導体との間に設けられた第2電子スイッチと、前記第1電子スイッチおよび前記第2電子スイッチを制御する制御回路と、を備え、前記第1平行線路と前記第2平行線路との間に前記信号線路が位置するデジタル移相回路が、前記長手方向において複数縦続接続された第1列と、前記デジタル移相回路が前記長手方向において複数縦続接続され、前記交差方向から見て前記第1列と重なるように前記第1列と平行に延びる第2列と、前記第1列の一方の端部と前記第2列の一方の端部とを電気的に接続する接続部と、平面視において前記第1列と前記第2列と前記接続部とを取り囲む、凹部が形成された第1グランドプレーンと、を備え、前記第1グランドプレーンと前記ループ線路とは、互いに接触していない。
【0010】
本発明の態様1によれば、各デジタル移相回路の第2線路がループ線路を含んでいるため、各デジタル移相回路を小型化しても、必要な移相量を確保することができる。そして、各デジタル移相回路を小型化することで、2つの列のみで必要な移相量を確保することができ、移相装置の小型化を図ることができる。また、第1グランドプレーンとループ線路とが互いに接触していないため、第1グランドプレーンが各デジタル移相回路の移相特性に与える影響を抑制し、所望の移相特性を実現できる。
【0011】
また、本発明の態様2は、態様1の移相装置において、少なくとも一部が前記凹部の内縁に沿って延び、前記制御回路に電源を供給する、平面視においてU字状の電源配線と、前記第1グランドプレーンと前記電源配線との間に配されたデカップリングコンデンサと、をさらに備える。
【0012】
また、本発明の態様3は、態様1または態様2の移相装置において、複数の前記デジタル移相回路の各々において、前記ループ線路は、前記第2平行線路の一方の端部から前記交差方向において前記信号線路から遠ざかるように延びる第1交差線路と、前記第1交差線路の一方の端部から前記信号線路と平行に延び、前記第2平行線路の長さよりも短い第3平行線路と、前記第3平行線路の一方の端部に接続され、前記交差方向において前記信号線路に近づくように前記第1交差線路の長さより短く延びてから前記信号線路と平行に延びる屈曲部が形成された屈曲線路と、を含み、複数の前記デジタル移相回路の各々において、前記制御回路は、平面視において、前記屈曲線路と、隣接する前記デジタル移相回路が有する前記第1交差線路と、の間に形成された隙間に位置している。
【0013】
また、本発明の態様4は、態様1から態様3のいずれか一つの移相装置において、前記接続部は、第2グランドプレーンを有し、前記第1グランドプレーンと前記第2グランドプレーンとは、互いに接触していない。
【0014】
また、本発明の態様5は、態様1から態様4のいずれか一つの移相装置において、前記第1列と前記第2列との間には、グランドプレーンが配置されない。
【0015】
また、本発明の態様6は、態様1から態様5のいずれか一つの移相装置において、前記第1列の他方の端部に電気的に接続された、GNDを有する入力伝送線路と、前記第2列の他方の端部に電気的に接続された、GNDを有する出力伝送線路と、をさらに備え、前記入力伝送線路のGNDおよび前記出力伝送線路のGNDは、前記第1グランドプレーンに電気的に接続されている。
【0016】
また、本発明の態様7は、態様6の移相装置において、前記入力伝送線路および前記出力伝送線路の各々は、前記信号線路と電気的に接続される信号線と、前記信号線の両側に間隔を空けて配された一対の接地線と、を有する。
【0017】
また、本発明の態様8は、態様7の移相装置において、前記入力伝送線路および前記出力伝送線路の各々は、前記信号線および前記一対の接地線の上方および下方の少なくとも一方に配置されるグランド層と、前記一対の接地線と前記グランド層とを接続する接続導体と、をさらに有する。
【0018】
また、本発明の態様9は、態様8の移相装置において、前記信号線と前記接地線との間の距離をS1とし、前記信号線と前記グランド層との間の距離をH1とするとき、H1≧3×S1が成立する。
【0019】
また、本発明の態様10は、態様6から態様9のいずれか一つの移相装置において、前記第1列の他方の端部と前記入力伝送線路とを電気的に接続し、平面視において屈曲した形状を有する第1ベンド接続部と、前記第2列の他方の端部と前記出力伝送線路とを電気的に接続し、平面視において屈曲した形状を有する第2ベンド接続部と、をさらに備え、前記入力伝送線路および前記出力伝送線路の各々は、前記交差方向に延びている。
【0020】
また、本発明の態様11は、態様7から態様9のいずれか一つの移相装置において、前記第1列の他方の端部と前記入力伝送線路とを電気的に接続し、平面視において屈曲した形状を有する第1ベンド接続部と、前記第2列の他方の端部と前記出力伝送線路とを電気的に接続し、平面視において屈曲した形状を有する第2ベンド接続部と、をさらに備え、前記第1ベンド接続部および前記第2ベンド接続部の各々は、前記信号線路と電気的に接続される信号線接続路と、前記一対の接地線と電気的に接続される一対の接地線接続路と、を有する。
【0021】
また、本発明の態様12は、態様11の移相装置において、前記第1ベンド接続部および前記第2ベンド接続部の各々は、前記信号線接続路および前記一対の接地線接続路の上方および下方の少なくとも一方に配置される接続グランド層と、前記一対の接地線接続路と前記接続グランド層とを接続する接続導体と、をさらに有する。
【0022】
また、本発明の態様13は、態様12の移相装置において、前記信号線接続路と前記接地線接続路との間の距離をS2とし、前記信号線接続路と前記接続グランド層との間の距離をH2とするとき、H2≧3×S2が成立する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の上記態様によれば、従来よりも小型で所望の移相特性を実現可能な移相装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係る移相装置を示す平面図である。
図2】本発明の実施形態に係る単位列を示す平面図である。
図3】本発明の実施形態に係るデジタル移相回路を示す平面図である。
図4図3に示すIV-IV線に沿う断面図である。
図5図3に示すV-V線に沿う断面図である。
図6】本発明の実施形態に係る接続部の周辺を示す平面図である。
図7】本発明の実施形態に係る入口伝送線路、第1ベンド接続部、および入力回路の周辺を示す平面図である。
図8】本発明の実施形態に係る出口伝送線路、第2ベンド接続部、および出力整合回路の周辺を示す平面図である。
図9図7に示すIX-IX線に沿う断面図である。
図10図7に示すX-X線に沿う断面図である。
図11】本発明の実施形態に係る電源配線とスイッチ制御部との接続関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る移相装置について説明する。
【0026】
<移相装置の概要>
本実施形態に係る移相装置Aは、マイクロ波、準ミリ波、あるいはミリ波等の高周波信号を入力とし、所定の移相量だけ位相シフトした高周波信号を外部に出力する高周波回路である。
【0027】
図1は、本実施形態に係る移相装置Aを示す平面図である。図1に示すように、本実施形態に係る移相装置Aは、第1列R1と、第2列R2と、接続部90と、入力伝送線路100Aと、出力伝送線路100Bと、第1ベンド接続部110Aと、第2ベンド接続部110Bと、電源配線120と、複数のデカップリングコンデンサ130と、入力回路140と、出力整合回路150と、第1グランドプレーンG1と、を備える。
【0028】
本実施形態に係る移相装置Aにおいては、高周波信号が、入力伝送線路100A、第1ベンド接続部110A、入力回路140、第1列R1(デジタル移相回路B1~Bn)、接続部90、第2列R2(デジタル移相回路B1~Bn)、出力整合回路150、第2ベンド接続部110B、出力整合回路150の順に流れる。すなわち、本実施形態に係る移相装置Aにおいては、高周波信号が入力伝送線路100Aから入力され、所定の移相量だけ位相シフトした高周波信号が出力伝送線路100Bから出力される。
【0029】
第1列R1および第2列R2は互いに平行に延びている。また、本実施形態において、第1列R1は、第2列R2を平面視において180°回転させた形状を有する。本明細書では、第1列R1と第2列R2とを特に区別しない場合、各列R1、R2を「単位列R」と称する場合がある。単位列R(各列R1、R2)は、高周波信号の位相を所定の移相量だけシフトさせるための複数のデジタル移相回路Bを有する。図2は、本実施形態に係る第2列R2を示す平面図である。
【0030】
<デジタル移相回路>
図3は、本実施形態に係るデジタル移相回路Bを示す平面図である。図4は、図3に示すIV-IV線に沿う断面図である。図5は、図3に示すV-V線に沿う断面図である。以下の説明では、特段の言及がない限り、第2列R2に属するデジタル移相回路Bの説明を行うものとする。第1列R1に属するデジタル移相回路Bは、第2列R2に属するデジタル移相回路Bを平面視において180°回転させた形状を有する。
【0031】
図3に示すように、デジタル移相回路Bは、信号線路10と、第1線路21と、第2線路22と、上側パッド24と、上側パッド25と、第1接地導体31と、第2接地導体32と、スイッチ制御部80(制御回路)と、を備える。本実施形態に係る第1線路21は、第1平行線路21p1と、一対の上側パッド21d1、21d2と、を含む。本実施形態に係る第2線路22は、第2平行線路22p2と、第1交差線路22c1と、第3平行線路22p3と、屈曲線路22bと、第2交差線路22c2と、一対の上側パッド22d1、22d2と、を含む。また、本実施形態に係るデジタル移相回路Bは、4つの電子スイッチ41~44と、複数の接続導体50と、コンデンサ60と、複数の接続パッドP1~P4と、を備える(図4および図5も参照)。
【0032】
信号線路10は、図3に示すように、一方向に延在する直線状の帯状導体である。すなわち、信号線路10は、一定の幅、一定の厚さおよび所定の長さを有する長尺板状の導体である。信号線路10には、図3における紙面右側から紙面左側に向かって、つまり紙面右側の端部(入力端)から紙面左側の端部(出力端)に向かって信号電流が流れる。この信号電流は、上述したマイクロ波、準ミリ波、あるいはミリ波の波長域を有する高周波信号である。
【0033】
(方向定義)
ここで、本実施形態では、信号線路10の長手方向(信号線路10が延在する方向)を、単に長手方向Xという。第2列R2に属するデジタル移相回路Bにおいて、長手方向Xに沿って、信号線路10の入力端から出力端に向かう向きを、+Xの向きまたは左方という。左方とは反対の向きを、右方または-Xの向きという。信号線路10に交差する(例えば、直交する)方向を、交差方向Yという。交差方向Yに沿う一つの向きを、奥側または+Yの向きという。奥側とは反対の向きを、手前側または-Yの向きという。長手方向Xおよび交差方向Yの双方に交差する(例えば、直交する)方向を、上下方向Zという。上下方向Zに沿う一つの向きを、上方または+Zの向きという。上方とは反対の向きを、下方または-Zの向きという。上下方向Zから見ることを、平面視という。
【0034】
信号線路10は、電気的には集中定数回路素子としてのインダクタンスL1を有する。このインダクタンスL1は、信号線路10の長さ等、信号線路10の形状に応じた大きさを有する寄生インダクタンスである。また、信号線路10は、電気的には集中定数回路素子としての静電容量C1をも有する。この静電容量C1は、信号線路10と第1平行線路21p1(詳細は後述)との間、信号線路10と第2平行線路22p2(詳細は後述)との間、信号線路10と第3平行線路22p3(詳細は後述)との間、または信号線路10とシリコン基板(不図示)との間等における寄生容量である。
【0035】
第1平行線路21p1は、信号線路10の他方の側方(-Y側)に設けられた直線状の帯状導体である。第1平行線路21p1は、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する長尺板状の導体である。第1平行線路21p1は、信号線路10と平行(長手方向X)に延びている。第1平行線路21p1と信号線路10とは、交差方向Yに間隔を空けて配されている。
【0036】
上側パッド21d1は、第1平行線路21p1の一端(-X側)に接続された長方形状の平板導体である。上側パッド21d1の長辺は交差方向Yに延びており、上側パッド21d1の短辺は長手方向Xに延びている。上側パッド21d1の一方の短辺(+Y側)は、第1平行線路21p1の一方の側縁(+Y側)と交差方向Yにおいて略同一の位置にある。また、上側パッド21d1の他方の短辺(-Y側)は、第1平行線路21p1の他方の側縁(-Y側)よりも手前側(-Y側)に位置する。つまり、上側パッド21d1の交差方向Yにおける寸法は、第1平行線路21p1の幅(交差方向Yにおける寸法)よりも大きい。
【0037】
上側パッド21d2は、第1平行線路21p1の他端(+X側)に接続された長方形状の平板導体である。上側パッド21d2の長辺は交差方向Yに延びており、上側パッド21d2の短辺は長手方向Xに延びている。上側パッド21d2の一方の短辺(+Y側)は、第1平行線路21p1の一方の側縁(+Y側)と交差方向Yにおいて略同一の位置にある。また、上側パッド21d2の他方の短辺(-Y側)は、第1平行線路21p1の他方の側縁(-Y側)よりも手前側(-Y側)に位置する。つまり、上側パッド21d2の交差方向Yにおける寸法は、第1平行線路21p1の幅(交差方向Yにおける寸法)よりも大きい。
【0038】
第2平行線路22p2は、信号線路10の一方の側方(+Y側)に設けられた直線状の帯状導体である。第2平行線路22p2は、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する長尺板状の導体である。第2平行線路22p2は、信号線路10と平行(長手方向X)に延びている。第2平行線路22p2と信号線路10とは、交差方向Yに間隔を空けて配されている。
【0039】
第2平行線路22p2は、信号線路10に対して第1平行線路21p1とは逆側に設けられている。言い換えれば、第2平行線路22p2は、信号線路10が交差方向Yにおいて第1平行線路21p1および第2平行線路22p2の間に位置するように、配置されている。
【0040】
上側パッド22d1は、第2平行線路22p2の一端(-X側)に接続された長方形状の平板導体である。上側パッド22d1の長辺は交差方向Yに延びており、上側パッド22d1の短辺は長手方向Xに延びている。上側パッド22d1の他方の短辺(-Y側)は、第2平行線路22p2の他方の側縁(-Y側)と交差方向Yにおいて略同一の位置にある。また、上側パッド22d1の一方の短辺(+Y側)は、第2平行線路22p2の一方の側縁(+Y側)よりも奥側(+Y側)に位置する。つまり、上側パッド22d1の交差方向Yにおける寸法は、第2平行線路22p2の幅(交差方向Yにおける寸法)よりも大きい。
【0041】
上側パッド22d2は、第2平行線路22p2の他端(+X側)に接続された長方形状の平板導体である。上側パッド22d2の長辺は交差方向Yに延びており、上側パッド22d2の短辺は長手方向Xに延びている。上側パッド22d2の他方の短辺(-Y側)は、第2平行線路22p2の他方の側縁(-Y側)と交差方向Yにおいて略同一の位置にある。また、上側パッド22d2の一方の短辺(+Y側)は、第2平行線路22p2の一方の側縁(+Y側)よりも奥側(+Y側)に位置する。つまり、上側パッド22d2の交差方向Yにおける寸法は、第2平行線路22p2の幅(交差方向Yにおける寸法)よりも大きい。
【0042】
第1交差線路22c1は、第2平行線路22p2の一端(-X側)に電気的に接続された帯状導体である。この第1交差線路22c1には、屈曲部CR1が形成されており、第2平行線路22p2に近い側(例えば、Y方向における第1交差線路22c1の中点の位置よりも第2平行線路22p2側)がクランク形状である。第1交差線路22c1は、平面視において、第2平行線路22p2の一端(-X側)から、交差方向Yにおいて信号線路10から遠ざかるように延び、屈曲部CR1において左側(+X側)に折り曲がった後に、再び交差方向Yにおいて信号線路10から遠ざかるように延びている。
【0043】
第3平行線路22p3は、第1交差線路22c1の一端(+Y端)に接続された直線状の帯状導体である。第3平行線路22p3は、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する長尺板状の導体である。第3平行線路22p3は、第1交差線路22c1の一端(+Y側)から、信号線路10と平行(長手方向X)に延びている。つまり、本実施形態における第3平行線路22p3は、第1交差線路22c1の一端(+Y側)から左側(+X側)に向けて延びている。第3平行線路22p3の長さは第2平行線路22p2の長さより短い。
【0044】
第3平行線路22p3は、信号線路10の一方側(+Y側)において、第2平行線路22p2よりも信号線路10から遠い位置に設けられている。言い換えれば、第3平行線路22p3は、第2平行線路22p2が交差方向Yにおいて信号線路10と第3平行線路22p3との間に位置するように、配置されている。
【0045】
図3に示すように、交差方向Yにおいて、第2平行線路22p2の中心線と第3平行線路22p3の中心線との間の距離D1は、第2平行線路22p2の中心線と第1接地導体31(後述)の奥側の外縁(第3平行線路22p3側の外縁)との間の距離D2よりも大きい。
【0046】
屈曲線路22bは、第3平行線路22p3の一端(+X側)に接続され、屈曲部CRが形成された帯状導体である。屈曲線路22bは、第3平行線路22p3の一端(+X側)から、交差方向Yにおいて信号線路10に近づくように延びる部分線路22b1と、この部分線路22b1の一端(-Y側)から信号線路10と平行に長手方向X(左側(+X側))に延びる部分線路22b2とからなる。屈曲線路22bをなす部分線路22b1、22b2はそれぞれ、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する長尺板状の導体である。部分線路22b1の長さは第1交差線路22c1の長さより短い。なお、屈曲線路22bには、屈曲部CRが複数形成されていてもよい。
【0047】
第2交差線路22c2は、屈曲線路22bを構成する部分線路22b2の一端(+X側)に接続された帯状導体である。この第2交差線路22c2には、屈曲部CR2が形成されており、第2平行線路22p2に近い側(例えば、Y方向における第2交差線路22c2の中点の位置よりも第2平行線路22p2側)がクランク形状である。第2交差線路22c2は、平面視において、屈曲線路22bを構成する部分線路22b2の一端(+X側)から、交差方向Yにおいて信号線路10に近づくように延び、屈曲部CR2において左側(+X側)に折り曲がった後に、再び交差方向Yにおいて信号線路10に近づくように延びている。
【0048】
本実施形態における第2交差線路22c2の一端縁(-Y側)は、上側パッド22d1、22d2の他方の短辺(-Y側)および第2平行線路22p2の他方の側縁(-Y側)と交差方向Yにおいて略同一の位置にある。また、上側パッド22d2と第2交差線路22c2とは、長手方向Xにおいて間隔を空けて配されている。
【0049】
また、本実施形態における第2交差線路22c2の一端(-Y側)は、不図示の導体によって、第2接地導体32(後述)と常時電気的に接続されている。言い換えれば、ループ線路RP(後述)の一端は、不図示の導体によって、第2接地導体32と常時電気的に接続されている。
【0050】
以上説明した第1交差線路22c1、第3平行線路22p3、屈曲線路22b、および第2交差線路22c2は、奥側(+Y側)に凸となるループ線路RPを構成している。
【0051】
ループ線路RPは、信号線路10、第1線路21、第2平行線路22p2、および上側パッド22d1、22d2、24、25が形成された層、ならびに、第1接地導体31および第2接地導体32が形成された層とは異なる層に形成されている。例えば、ループ線路RPは、図4および図5に示す第2中間パッド71b、72b、73b、74b(詳細は後述する)が形成された層に形成されている。なお、ループ線路RPは、図4および図5に示す第3中間パッド71c、72c、73c、74c(詳細は後述する)が形成された層に形成されていてもよい。
【0052】
ループ線路RPをこのような層に形成するのは、ループ線路RPの厚み(断面積)を、信号線路10、第1線路21、第2平行線路22p2、および上側パッド22d1、22d2の厚み(断面積)よりも小さくするためである。一般的に、多層構造の半導体では、表面よりも内層に行くほど配線の厚みが小さくなるように形成される。このため、本実施形態では、信号線路10、第1線路21、第2平行線路22p2、および上側パッド22d1、22d2、24、25が形成された層よりもループ線路RPを下の層(内層)に形成することで、ループ線路RPの厚み(断面積)を、信号線路10、第1線路21、第2平行線路22p2、および上側パッド22d1、22d2の厚み(断面積)よりも小さくしている。
【0053】
詳細は後述するが、ループ線路RPの厚みを、信号線路10、第1線路21、第2平行線路22p2、および上側パッド22d1、22d2の厚みよりも小さくするのは、ループ線路RPを流れる電流(第3リターン電流)によって発生する磁界の強度を高めるとともに、ループ線路RPの抵抗を大きくするためである。ループ線路RPの厚みは、ループ線路RPの断面積が、信号線路10、第1線路21、第2平行線路22p2、および上側パッド22d1、22d2の断面積の1/5未満となるように設定するのが望ましい。
【0054】
上側パッド24は、第1線路21の一部をなす上側パッド21d1、21d2と同様の長方形状の平板導体である。上側パッド24の長辺は交差方向Yに延びており、上側パッド24の短辺は長手方向Xに延びている。上側パッド24の一方の短辺(+Y側)は、第1平行線路21p1の一方の側縁(+Y側)と交差方向Yにおいて略同一の位置にある。また、上側パッド24の他方の短辺(-Y側)は、第1平行線路21p1の他方の側縁(-Y側)よりも手前側(-Y側)に位置する。つまり、上側パッド24の交差方向Yにおける寸法は、第1線路21の一部をなす上側パッド21d1、21d2と同様に、第1平行線路21p1の幅(交差方向Yにおける寸法)よりも大きい。また、上側パッド24は、第2交差線路22c2の一端(-Y側)と同様に、不図示の導体によって、第2接地導体32と常時電気的に接続されている。
【0055】
上側パッド25は、第2線路22の一部をなす上側パッド22d1、22d2と同様の長方形状の平板導体である。上側パッド25の長辺は交差方向Yに延びており、上側パッド25の短辺は長手方向Xに延びている。上側パッド25の他方の短辺(-Y側)は、第2平行線路22p2の他方の側縁(-Y側)と交差方向Yにおいて略同一の位置にある。また、上側パッド25の一方の短辺(+Y側)は、第2平行線路22p2の一方の側縁(+Y側)よりも奥側(+Y側)に位置する。つまり、上側パッド25の交差方向Yにおける寸法は、第2線路22の一部をなす上側パッド22d1、22d2と同様に、第2平行線路22p2の幅(交差方向Yにおける寸法)よりも大きい。また、上側パッド25は、第2交差線路22c2の一端(-Y側)と同様に、不図示の導体によって、第2接地導体32と常時電気的に接続されている。
【0056】
第1接地導体31は、信号線路10の入力端側(-X側)に設けられる板状の導体である。第1接地導体31は、電気的に接地されている。第1接地導体31は、長辺が交差方向Yに延び、短辺が長手方向Xに延びる長方形状を有する。また、第1接地導体31は、上側パッド21d1、22d1および第1交差線路22c1の手前側(-Y側)端部と上下方向Zにおいて重なっている。第1接地導体31は、図4に示すように、信号線路10、第1線路21(上側パッド21d1)、および第2線路22(上側パッド22d1)よりも下方(-Z側)に位置する。
【0057】
第2接地導体32は、信号線路10の出力端側(+X側)に設けられる板状の導体である。第2接地導体32は、電気的に接地されている。詳細な図示は省略するが、第2接地導体32は、信号線路10、第1線路21、第2線路22、および上側パッド24、25よりも下方(-Z側)に位置する。
【0058】
第1接続パッドP1は、図4に示すように、上述した上側パッド21d1と、第1中間パッド71aと、第2中間パッド71bと、第3中間パッド71cと、第1接地導体31と、を含む。上側パッド21d1、第1中間パッド71a、第2中間パッド71b、第3中間パッド71c、および第1接地導体31は、平面視において互いに重なっている。また、上側パッド21d1、第1中間パッド71a、第2中間パッド71b、第3中間パッド71c、および第1接地導体31は、上側(+Z側)から下側(-Z側)に向けてこの順に並んでおり、上下方向Zにおいて間隔を空けて配されている。
【0059】
図4に示すように、上側パッド21d1と第1中間パッド71aとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。また、第1中間パッド71aと第2中間パッド71bとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。また、第2中間パッド71bと第3中間パッド71cとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。また、第3中間パッド71cと第1接地導体31とは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。これにより、第1接続パッドP1は、第1平行線路21p1の一端(-X側)と第1接地導体31とを、常時電気的に接続している。
【0060】
なお、本明細書において「接続導体50」は、上下方向Zに延在する導体であり、接続導体50の上端に接続される部材と接続導体50の下端に接続される部材とを電気的かつ機械的に接続する部材である。接続導体50は、例えば絶縁層(不図示)を上下方向Zに貫通するビアである。
【0061】
第2接続パッドP2は、図4に示すように、上側パッド22d1と、第1中間パッド72aと、第2中間パッド72bと、第3中間パッド72cと、第1接地導体31と、を含む。上側パッド22d1、第1中間パッド72a、第2中間パッド72b、第3中間パッド72c、および第1接地導体31は、平面視において互いに重なっている。また、上側パッド22d1、第1中間パッド72a、第2中間パッド72b、第3中間パッド72c、および第1接地導体31は、上側(+Z側)から下側(-Z側)に向けてこの順に並んでおり、上下方向Zにおいて間隔を空けて配されている。
【0062】
図4に示すように、上側パッド22d1と第1中間パッド72aとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。また、第1中間パッド72aと第2中間パッド72bとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。また、第2中間パッド72bと第3中間パッド72cとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。また、第3中間パッド72cと第1接地導体31とは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。これにより、第2接続パッドP2は、第2平行線路22p2の一端(-X側)と第1接地導体31とを、常時電気的に接続している。
【0063】
ここで、図4に示すように、第2接続パッドP2に含まれる第2中間パッド72bには、第1交差線路22c1の手前側(-Y側)端部が接続されている。これにより、第2接続パッドP2は、ループ線路RPと第1接地導体31とを、常時電気的に接続している。なお、第1交差線路22c1の手前側(-Y側)端部は、第2接続パッドP2に含まれる第3中間パッド72cに接続されていてもよい。
【0064】
第3接続パッドP3は、図5に示すように、上述した上側パッド21d2と、第1中間パッド73aと、第2中間パッド73bと、第3中間パッド73cと、下側パッド33aと、を含む。上側パッド21d2、第1中間パッド73a、第2中間パッド73b、第3中間パッド73c、および下側パッド33aは、平面視において互いに重なっている。また、上側パッド21d2、第1中間パッド73a、第2中間パッド73b、第3中間パッド73c、および下側パッド33aは、上側(+Z側)から下側(-Z側)に向けてこの順に並んでおり、上下方向Zにおいて間隔を空けて配されている。
【0065】
ここで、下側パッド33aは、図3に示すように、長辺が交差方向Yに延び、短辺が長手方向Xに延びる長方形状の平板導体である。下側パッド33aは、第2接地導体32とは別体に設けられる。下側パッド33aと第2接地導体32とは、第1電子スイッチ41(後述)の状態に応じて、電気的接続の有無が切り替わる。従って、下側パッド33aは、第1電子スイッチ41の状態に応じて、電気的接地の有無が切り替わる。
【0066】
図5に示すように、上側パッド21d2と第1中間パッド73aとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。また、第1中間パッド73aと第2中間パッド73bとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。また、第2中間パッド73bと第3中間パッド73cとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。また、第3中間パッド73cと下側パッド33aとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。これにより、第3接続パッドP3は、第1平行線路21p1の他端(+X側)と第1電子スイッチ41とを、常時電気的に接続している。
【0067】
第4接続パッドP4は、図5に示すように、上述した上側パッド22d2と、第1中間パッド74aと、第2中間パッド74bと、第3中間パッド74cと、下側パッド33bと、を含む。上側パッド22d2、第1中間パッド74a、第2中間パッド74b、第3中間パッド74c、および下側パッド33bは、平面視において互いに重なっている。また、上側パッド22d2、第1中間パッド74a、第2中間パッド74b、第3中間パッド74c、および下側パッド33bは、上側(+Z側)から下側(-Z側)に向けてこの順に並んでおり、上下方向Zにおいて間隔を空けて配されている。
【0068】
ここで、下側パッド33bは、図3に示すように、長辺が交差方向Yに延び、短辺が長手方向Xに延びる長方形状の平板導体である。下側パッド33bは、第2接地導体32および下側パッド33aとは別体に設けられる。下側パッド33bと第2接地導体32とは、第2電子スイッチ42(後述)の状態に応じて、電気的接続の有無が切り替わる。従って、下側パッド33bは、第2電子スイッチ42の状態に応じて、電気的接地の有無が切り替わる。
【0069】
図5に示すように、上側パッド22d2と第1中間パッド74aとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。また、第1中間パッド74aと第2中間パッド74bとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。また、第2中間パッド74bと第3中間パッド74cとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。また、第3中間パッド74cと下側パッド33bとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。これにより、第4接続パッドP4は、第2平行線路22p2の他端(+X側)と第2電子スイッチ42とを、常時電気的に接続している。
【0070】
コンデンサ60は、例えば、図4に示すように、上部電極が信号線路10に接続され、下部電極が第3電子スイッチ43を介して第1接地導体31に接続される平行平板である。コンデンサ60は、平行平板の対向面積に応じた静電容量Caを有する。すなわち、この静電容量Caは、信号線路10と第1接地導体31との間に設けられる回路定数である。但し、コンデンサ60は櫛歯型コンデンサであってもよい。
【0071】
第1電子スイッチ41は、図3に示すように、第3接続パッドP3の下側パッド33aと第2接地導体32とを開閉自在に接続するトランジスタである。本実施形態における第1電子スイッチ41は、図1に示すように、例えばMOS型FETであり、ドレイン端子が第3接続パッドP3の下側パッド33aに接続され、ソース端子が第2接地導体32に接続され、またゲート端子がスイッチ制御部80に接続されている。
【0072】
第1電子スイッチ41は、スイッチ制御部80からゲート端子に入力されるゲート信号に基づいて、ドレイン端子とソース端子との導通状態を開状態あるいは閉状態に切り替える。すなわち、第1電子スイッチ41は、スイッチ制御部80によって、第1平行線路21p1の他端(+X側)と第2接地導体32との間を導通状態または遮断状態にする。
【0073】
第2電子スイッチ42は、図3に示すように、第4接続パッドP4の下側パッド33bと第2接地導体32とを開閉自在に接続するトランジスタである。本実施形態における第2電子スイッチ42は、図1に示すように、例えばMOS型FETであり、ドレイン端子が第4接続パッドP4の下側パッド33bに接続され、ソース端子が第2接地導体32に接続され、またゲート端子がスイッチ制御部80に接続されている。
【0074】
第2電子スイッチ42は、スイッチ制御部80からゲート端子に入力されるゲート信号に基づいて、ドレイン端子とソース端子との導通状態を開状態あるいは閉状態に切り替える。すなわち、第2電子スイッチ42は、スイッチ制御部80によって、第2平行線路22p2の他端(+X側)と第2接地導体32との間を導通状態または遮断状態にする。
【0075】
第3電子スイッチ43は、図4に示すように、コンデンサ60の下部電極と第1接地導体31とを開閉自在に接続するトランジスタである。第3電子スイッチ43は、例えばMOS型FETであり、ドレイン端子がコンデンサ60の下部電極に接続され、ソース端子が第1接地導体31に接続され、またゲート端子がスイッチ制御部80に接続されている。
【0076】
ここで、第3電子スイッチ43は、図4に示すように、信号線路10から奥側(+Y側)に離れた位置に配置されている。また、第1接地導体31の一端(+Y側)は、交差方向Yにおいて、信号線路10から遠ざかるように延びて第3電子スイッチ43に接続されている。このような配置にするのは、特定の半導体製造工程において、コンデンサ60の下部電極の接続には設計ルール上の制約があるためである。
【0077】
具体的には、コンデンサ60の下部電極は、一旦、接続配線およびビアを介して上の配線層(例えば、信号線路10が形成されている層)に接続し、その配線層からビアを介して下の配線層に接続しなければならないという制約である。なお、図4においては、コンデンサ60の下部電極と第3電子スイッチ43との接続経路を簡略化して図示している。この制約のために、第3電子スイッチ43を、コンデンサ60が形成されている位置(例えば、図3に示す信号線路10の入力端側(-X側))の近傍に配置することはできず、信号線路10から奥側(+Y側)に離れた位置に配置しなければならない。第1接地導体31は、このような位置に配置された第3電子スイッチ43のソース端子に接続されるために、交差方向Yにおいて、信号線路10から遠ざかるように延びている。
【0078】
第3電子スイッチ43は、スイッチ制御部80からゲート端子に入力されるゲート信号に基づいて、ドレイン端子とソース端子との導通状態を開状態あるいは閉状態に切り替える。すなわち、第3電子スイッチ43は、スイッチ制御部80によって、コンデンサ60の下部電極と第1接地導体31との間を導通状態または遮断状態にする。
【0079】
第4電子スイッチ44は、図4に示すように、信号線路10の入力端側(-X側)と第1接地導体31とを開閉自在に接続するトランジスタである。この第4電子スイッチ44は、上述した第1電子スイッチ41、第2電子スイッチ42、および第3電子スイッチ43と同様に、MOS型FETであり、ドレイン端子が信号線路10の入力端側(-X側)に接続され、ソース端子が第1接地導体31に接続され、またゲート端子がスイッチ制御部80に接続されている。なお、第4電子スイッチ44は、信号線路10の入力端側(-X側)と第1接地導体31との間ではなく、信号線路10の出力端側(+X側)と第2接地導体32との間に設けてもよい。
【0080】
第4電子スイッチ44は、スイッチ制御部80からゲート端子に入力されるゲート信号に基づいて、ドレイン端子とソース端子との導通状態を開状態あるいは閉状態に切り替える。すなわち、第4電子スイッチ44は、スイッチ制御部80によって、信号線路10の入力端側(-X側)と第1接地導体31との間を導通状態または遮断状態にする。
【0081】
スイッチ制御部80は、上述した第1電子スイッチ41、第2電子スイッチ42、第3電子スイッチ43、および第4電子スイッチ44を制御する制御回路である。スイッチ制御部80は、4つの出力ポートを備えており、各出力ポートから第1電子スイッチ41、第2電子スイッチ42、第3電子スイッチ43、および第4電子スイッチ44の各ゲート端子にゲート信号を個別に出力する。すなわち、スイッチ制御部80は、上記ゲート信号によって、第1電子スイッチ41、第2電子スイッチ42、第3電子スイッチ43、および第4電子スイッチ44を開状態または閉状態にする。
【0082】
次に、以上のように構成されたデジタル移相回路Bの作用について説明する。
【0083】
本実施形態におけるデジタル移相回路Bは、第1~第3電子スイッチ41~43の導通状態に応じて動作モードが切り替えられる。すなわち、デジタル移相回路Bの動作モードには、スイッチ制御部80によって第1電子スイッチ41および第2電子スイッチ42が閉状態に設定され、第3電子スイッチ43が開状態に設定される低遅延モードと、スイッチ制御部80によって第1電子スイッチ41および第2電子スイッチ42が開状態に設定され、第3電子スイッチ43が閉状態に設定される高遅延モードと、がある。
【0084】
低遅延モードにおいて、スイッチ制御部80は、第1電子スイッチ41および第2電子スイッチ42を閉状態に設定し、第3電子スイッチ43を開状態に設定する。すなわち、低遅延モードでは、高周波信号が信号線路10の入力端(右端)から出力端(左端)まで伝播するまでの第1伝搬遅延時間TLによって、出力端(左端)における位相が、高遅延モードにおける第2の位相θHよりも小さな第1の位相θLとなる。以下、低遅延モードについて更に詳しく説明する。
【0085】
第1電子スイッチ41が閉状態に設定されることにより、第1平行線路21p1の他端(+X側)は、第3接続パッドP3を介して、第2接地導体32と接続される(図3参照)。一方、第1平行線路21p1の一端(-X側)は、第1接続パッドP1を介して、第1接地導体31と常時接続されている(図3および図4参照)。従って、第1平行線路21p1は、他端(+X側)が第1電子スイッチ41を介して第2接地導体32に接続されることによって、一端(-X側)と他端(+X側)との間に電流が流れ得る第1通電経路を形成する。
【0086】
また、第2電子スイッチ42が閉状態に設定されることにより、第2平行線路22p2の他端(+X側)は、第4接続パッドP4を介して、第2接地導体32と接続される(図3参照)。一方、第2平行線路22p2の一端(-X側)は、第2接続パッドP2を介して、第1接地導体31と常時接続されている(図3および図4参照)。従って、第2平行線路22p2は、他端(+X側)が第2電子スイッチ42を介して第2接地導体32に接続されることによって、一端(-X側)と他端(+X側)との間に電流が流れ得る第2通電経路を形成する。
【0087】
そして、第1平行線路21p1および第2平行線路22p2の両端接続状態において、信号線路10に入力端から出力端に向けた信号電流が流れると、当該信号電流の伝播に起因して、第1平行線路21p1および第2平行線路22p2にリターン電流が生じる。当該リターン電流は、第1平行線路21p1および第2平行線路22p2を、他端(+X側)から一端(-X側)に向かって流れる。
【0088】
すなわち、第1通電経路を形成する第1平行線路21p1には、信号線路10における信号電流の通電によって、信号電流の通電の向きとは逆向きの第1リターン電流が流れる。また、第2通電経路を形成する第2平行線路22p2には、信号線路10における信号電流の通電によって、信号電流の通電の向きとは逆向き、つまり第1リターン電流と同じ向きの第2リターン電流が流れる。
【0089】
ここで、第1平行線路21p1に流れる第1リターン電流および第2平行線路22p2に流れる第2リターン電流は、何れも、信号電流の通電の向きとは逆向きである。従って、第1リターン電流および第2リターン電流は、信号線路10と第1平行線路21p1との電磁気的な結合(相互誘導)および信号線路10と第2平行線路22p2との電磁気的な結合(相互誘導)に起因して、デジタル移相回路Bの全体のインダクタンスを減少させるように作用する。信号線路10のインダクタンスをLslow、リターン経路(第1平行線路21p1および第2平行線路22p2)のインダクタンスをLglow、信号線路10とリターン経路との相互インダクタンスをMlowとする。低遅延モードにおけるデジタル移相回路Bの全体のインダクタンスLlowは、Lslow+Lglow-Mlowとなる。
【0090】
また、信号線路10は、上述した通り寄生容量としての静電容量C1を有している。低遅延モードでは、第3電子スイッチ43が開状態に設定されるので、コンデンサ60は、信号線路10と第1接地導体31との間に接続されていない。すなわち、コンデンサ60の静電容量Caは、信号線路10を伝播する高周波信号に影響を与えない。従って、信号線路10を伝播する高周波信号には、(Llow×C1)1/2に比例した第1伝搬遅延時間TLが作用する。
【0091】
そして、信号線路10の出力端における高周波信号は、このような第1伝搬遅延時間TLに起因して、信号線路10の入力端における高周波信号より位相が第1の位相θLだけ遅れたものとなる。すなわち、低遅延モードでは、第1リターン電流および第2リターン電流に起因してデジタル移相回路Bの全体のインダクタンスがインダクタンスLlowになることによって、伝搬遅延時間が減少する。
【0092】
一方、高遅延モードにおいて、スイッチ制御部80は、第1電子スイッチ41および第2電子スイッチ42を開状態に設定し、第3電子スイッチ43を閉状態に設定する。なお、第4電子スイッチ44は、閉状態に設定される。すなわち、高遅延モードでは、高周波信号が信号線路10の入力端(右端)から出力端(左端)まで伝播するまでの第2伝搬遅延時間THによって、出力端(左端)における位相が、低遅延モードにおける第1の位相θLよりも大きな第2の位相θHとなる。以下、高遅延モードについて更に詳しく説明する。
【0093】
上述した通り、高遅延モードでは、第1電子スイッチ41および第2電子スイッチ42が開状態に設定される。よって、第1平行線路21p1には上述した第1導電経路が形成されず、また、第2平行線路22p2には上述した第2導電経路が形成されない。従って、第1平行線路21p1に流れる第1リターン電流は極めて小さくなり、また、第2平行線路22p2に流れる第2リターン電流は極めて小さくなる。
【0094】
これに対して、ループ線路RPの一部をなす第1交差線路22c1の手前側(-Y側)端部は、第2接続パッドP2を介して、第1接地導体31と常時接続されている(図4参照)。また、ループ線路RPの一部をなす第2交差線路22c2の一端(-Y側)は、上述した通り、第2接地導体32と常時接続されている。従って、ループ線路RPには、第2交差線路22c2の一端(-Y側)と第1交差線路22c1の手前側(-Y側)端部との間に電流が流れ得る第3通電経路が予め形成されている。このため、高遅延モードでは、信号線路10における信号電流に起因して、第2交差線路22c2の一端(-Y側)から屈曲線路22bおよび第3平行線路22p3を経由して第1交差線路22c1の手前側(-Y側)端部に向かう第3リターン電流が流れる。
【0095】
ここで、第3リターン電流は、信号線路10と平行な第3平行線路22p3および屈曲線路22bの部分線路22b2において、信号線路10における信号電流の通電の向きとは逆向きに流れる。また、屈曲線路22bの部分線路22b1、第3平行線路22p3、および第1交差線路22c1は、信号線路10とは反対側(+Y側)に凸となるループ線路RPを構成している。従って、リターン経路(第3リターン電流が流れる経路)がループ線路RPを構成していない従来の構成と比較してリターン経路のインダクタンスを増大させることができる。しかも、本実施形態では、ループ線路RPの厚み(第1交差線路22c1、第3平行線路22p3、屈曲線路22b、および第2交差線路22c2の厚み)が、信号線路10、第1線路21、第2平行線路22p2、および上側パッド22d1、22d2の厚みよりも小さい。
【0096】
これにより、デジタル移相回路Bの全体のインダクタンスを格段に増加させることができ、移相量が小さくなる低周波においても所望の移相量を確保することができる。信号線路10のインダクタンスをLshigh、リターン経路(第2交差線路22c2、屈曲線路22b、第3平行線路22p3、第1交差線路22c1)のインダクタンスをLghigh、信号線路10とリターン経路との相互インダクタンスをMhighとする。なお、Lshigh=Lslowである。高遅延モードにおけるデジタル移相回路Bの全体のインダクタンスLhighは、Lshigh+Lghigh-Mhighとなる。ここで、明らかに、Lglow<LghighおよびMlow>Mhighが成り立つから、Lhigh>Llowが成り立つ。
【0097】
なお、第3リターン電流がリターン経路のインダクタンスを増加させるように作用する原理は次のように説明できる。つまり、第3リターン電流が屈曲線路22bの部分線路22b1を流れる際に発生させる磁界、第3リターン電流が第3平行線路22p3を流れる際に発生させる磁界、および第3リターン電流が第1交差線路22c1を流れる際に発生させる磁界は、何れも、上記ループ線路内において同一の向き(-Zの向き)である。このため、これらの磁界は互いに強め合う。従って、第3リターン電流が流れる線路がループ線路を構成していない従来の構成と比較して、第3リターン電流が生じさせる磁界を大きくし、リターン経路のインダクタンスを増大させることができる。また、ループの高さ(すなわち、第3平行線路22p3の交差方向Yにおける位置、ならびに、第1交差線路22c1および屈曲線路22bの部分線路22b1)を調整することにより、リターン経路のインダクタンスの値を大きく変化させることができる。
【0098】
一方、信号線路10は寄生容量としての静電容量C1を有している。また、高遅延モードでは、第3電子スイッチ43が閉状態に設定されるので、信号線路10と第1接地導体31との間には、コンデンサ60が接続されている。すなわち、信号線路10は、コンデンサ60の静電容量Caと静電容量C1(寄生容量)とを合算した静電容量Cbを有する。従って、信号線路10を伝播する高周波信号には、伝送系のインダクタンスの増加と、合算した静電容量Cbと、に係る第2伝搬遅延時間THが作用する。
【0099】
そして、信号線路10の出力端における高周波信号は、このような第2伝搬遅延時間THに起因して、信号線路10の入力端における高周波信号より位相が第2の位相θHだけ遅れたものとなる。すなわち、高遅延モードでは、第3リターン電流に起因して伝送系のインダクタンスが増大されることによって、伝搬遅延時間が増大する。
【0100】
ここで、高遅延モードでは、第4電子スイッチ44を閉状態に設定することにより、信号線路10の損失を意図的に増加させてもよい。この損失付与は、高遅延モードにおける高周波信号の損失を、低遅延モードにおける高周波信号の損失と同程度にしようとするためのものである。
【0101】
<第1列および第2列>
図1および図2に示すように、本実施形態に係る単位列R(各列R1、R2)は、複数のデジタル移相回路B(B1、B2、B3、…、Bn-1、Bn)を長手方向Xに縦続接続したものである。図1に示すように、第1列R1と第2列R2とは、交差方向Yから見て互いに重なるように平行に延びている。
【0102】
単位列Rは、デジタル移相回路B1から入力された高周波信号をデジタル移相回路Bnから出力する。なお、見やすさのため、図1および図2においては、第1電子スイッチ41、第2電子スイッチ42、およびスイッチ制御部80の図示は省略している。前述したように、第1列R1は、第2列R2を平面視において180°回転させた形状を有する。そのため、以下の説明では、特段の言及がない限り第2列R2の説明のみを行い、第2列R2の説明を第1列R1の説明に代えるものとする。
【0103】
図2に示すように、第2列R2は、第1線路21が信号線路10の他方側(-Y側)にのみ位置し、第2線路22が信号線路10の一方側(+Y側)にのみ位置するように長手方向Xに縦続接続されている。つまり、第2列R2は、信号線路10の一方側(+Y側)にのみループ線路RPが配置された構成である。このような構成にするのは、単位列Rの小型化および移相装置Aの小型化を図るためである。
【0104】
本実施形態に係る第2列R2において、デジタル移相回路B(kは1≦k≦n-1を満たす任意の自然数。以下においても同様。)は、左側(+X側)に隣接するデジタル移相回路Bk+1に対し、一部が入り込むように接続されている。なお、本実施形態に係る第2列R2において、デジタル移相回路Bk+1は、右側(-X側)に隣接するデジタル移相回路Bに対し、一部が入り込むように接続されているということもできる。
【0105】
より具体的には、デジタル移相回路が隣り合う部分において、第1接地導体31と第2接地導体32とが共通化されており、第1交差線路22c1の一部と第2交差線路22c2の一部とが共通化されており、上側パッド21d1と上側パッド24とが共通化されており、上側パッド22d1と上側パッド25とが共通化されている。図2に示す例では、例えば、デジタル移相回路Bの第2接地導体32と、デジタル移相回路Bk+1の第1接地導体31とが共通化されており、デジタル移相回路Bの第2交差線路22c2の一部と、デジタル移相回路Bk+1の第1交差線路22c1の一部とが共通化されており、デジタル移相回路Bの上側パッド24と、デジタル移相回路Bk+1の上側パッド21d1とが共通化されており、デジタル移相回路Bの上側パッド25と、デジタル移相回路Bk+1の上側パッド22d1とが共通化されている。
【0106】
このため、デジタル移相回路Bk+1の第1接地導体31は、デジタル移相回路Bの第2接地導体32としても機能する。また、デジタル移相回路Bk+1の第1交差線路22c1の一部は、デジタル移相回路Bの第2交差線路22c2の一部としても機能する。また、デジタル移相回路Bk+1の上側パッド21d1は、デジタル移相回路Bの上側パッド24としても機能する。また、デジタル移相回路Bk+1の上側パッド22d1は、デジタル移相回路Bの上側パッド25としても機能する。
【0107】
ここで、ループ線路RPをなす第1交差線路22c1には、屈曲部CR1が形成されており、第2平行線路22p2に近い側がクランク形状である。また、ループ線路RPをなす第2交差線路22c2には、屈曲部CR2が形成されており、第2平行線路22p2に近い側がクランク形状である。このため、デジタル移相回路Bが隣り合う部分において、共通化された第1交差線路22c1および第2交差線路22c2は、平面視において、第2平行線路22p2の一端(-X側)から、交差方向Yにおいて信号線路10から遠ざかるように延び、屈曲部CR1において左側(+X側)に折り曲がり、屈曲部CR2において右側(-X側)に折り曲がるT字形状となっている。
【0108】
このような接続を行うことで、隣り合うデジタル移相回路Bが互いに干渉し合うことで生ずる磁界の低下を軽減することができる。その結果、隣り合うデジタル移相回路Bの間における相互インダクタンスを小さくすることができる。
【0109】
このように、本実施形態の単位列Rでは、前述した通り、デジタル移相回路B1~Bnの各々において、第3リターン電流が流れる線路が、信号線路10とは反対側(第2列R2においては+Y側、第1列R1においては-Y側)に凸となるループ線路RPを構成しており、かつ、厚み(断面積)が、信号線路10、第1線路21、第2平行線路22p2、および上側パッド22d1、22d2の厚み(断面積)よりも小さい。このため、従来に比べて磁界の発生効率を格段に高めることができる。また、本実施形態の単位列Rでは、上述の通り、隣り合うデジタル移相回路B間における相互インダクタンスを小さくすることができる。これにより、本実施形態の単位列Rは、信号線路10の一方側(第2列R2においては+Y側、第1列R1においては-Y側)にのみループ線路RPが配置された構成であっても、必要な移相量を確保することができる。
【0110】
また、本実施形態の単位列Rでは、例えば、デジタル移相回路B1を除き、隣接するデジタル移相回路が高遅延モードに設定された場合に、第3リターン電流が第2接続パッドP2を介さない経路(図中の経路PT)を流れる。すなわち、デジタル移相回路B1を除き、第3リターン電流が、第2接続パッドP2および第1接地導体31(第2接地導体32)等のロスの大きい障害物を介さない経路PTを流れる。このため、本実施形態の単位列Rは、高遅延モードにおいて、高周波信号の損失を格段に低減することができる。
【0111】
<接続部>
図6は、本実施形態に係る接続部90の周辺を示す平面図である。
【0112】
図6に示すように、接続部90は、第1列R1の一端(デジタル移相回路Bが位置する端部)と、第2列R2の一端(デジタル移相回路Bが位置する端部)と、を電気的に接続している。接続部90は、第1列R1の一端(デジタル移相回路B)から入力された高周波信号を第2列R2の一端(デジタル移相回路B)に伝送する役割を有する。本実施形態に係る接続部90は、長手方向Xにおいて列R1、R2から遠ざかる向きに凸となるU字状の形状を有する。
【0113】
具体的に、本実施形態に係る接続部90は、いわゆるグランドつきコプレナ線路を構成しており、信号線接続路91と、一対の接地線接続路92a、92bと、下側グランド層(第2グランドプレーンG2)と、複数の接続導体50と、を有する。一対の接地線接続路92a、92bは、信号線接続路91の両側に間隔を空けて配されている。ただし、接続部90はいわゆるコプレナ線路またはマイクロストリップ線路を構成していてもよい。
【0114】
信号線接続路91は、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する長尺板状の導体である。信号線接続路91は、第1列R1が有する信号線路10と第2列R2が有する信号線路10とを接続する。なお、図6に示す例において信号線接続路91は5つの直線部からなる形状を有しているが、信号線接続路91の形状はこれに限られない。例えば、信号線接続路91は4つ以下または6つ以上の直線部を含んでいてもよいし、曲線部を含んでいてもよい。
【0115】
一対の接地線接続路92a、92bのうち、第1接地線接続路92aは、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する長尺板状の導体である。第1接地線接続路92aは、信号線接続路91と平行に延び、信号線接続路91よりも内側に位置する。第1接地線接続路92aは、第1列R1のデジタル移相回路Bが有する上側パッド24と、第2列R2のデジタル移相回路Bが有する上側パッド21d1とを接続する。
【0116】
一対の接地線接続路92a、92bのうち、第2接地線接続路92bは、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する長尺板状の導体である。第2接地線接続路92bは、信号線接続路91と平行に延び、信号線接続路91よりも外側に位置する。第2接地線接続路92bは、第1列R1のデジタル移相回路Bが有する上側パッド25と、第2列R2のデジタル移相回路Bが有する上側パッド22d1とを接続する。
【0117】
第2グランドプレーンG2は、長手方向Xおよび交差方向Yに延在する矩形板状の導体である。第2グランドプレーンG2は、信号線接続路91および一対の接地線接続路92a、92bから所定距離隔てた下方に配置されている。第2グランドプレーンG2は、一対の接地線接続路92a、92bに対して複数の接続導体50を介して接続されている。複数の接続導体50は、第1接地線接続路92aに沿って複数配列されているとともに、第2接地線接続路92bに沿って複数配列されている。
【0118】
なお、接続部90は、上述した下側グランド層(第2グランドプレーンG2)に加えて、信号線接続路91および一対の接地線接続路92a、92bから所定距離隔てた上方に配置された上側グランド層を有していてもよい。すなわち、接続部90は、信号線接続路91が2つのグランド層で挟まれたトリプレート線路構造を形成していてもよい。あるいは、接続部90は、上側グランド層および下側グランド層のうち一方のみを有していてもよい。すなわち、信号線接続路91および一対の接地線接続路92a、92bの上方および下方の少なくとも一方にグランド層が配置されていればよい。
【0119】
<入力回路>
図7は、本実施形態に係る入力伝送線路100A、第1ベンド接続部110A、および入力回路140の周辺を拡大して示す図である。
【0120】
図7に示すように、入力回路140は、第1列R1の他端(デジタル移相回路Bが位置する端部)に対して電気的に接続されている。入力回路140は、第1ベンド接続部110Aを介して入力伝送線路100Aから入力された高周波信号を第1列R1の他端(デジタル移相回路B)に伝送する役割を有する。
【0121】
具体的に、本実施形態に係る入力回路140は、いわゆるグランドつきコプレナ線路を構成しており、信号線路141と、一対の平行線路142a、142bと、グランド層143(下側グランド層)と、複数の接続導体50と、を有する。一対の平行線路142a、142bは、信号線路141の両側に間隔を空けて配されている。ただし、入力回路140はいわゆるコプレナ線路またはマイクロストリップ線路を構成していてもよい。
【0122】
信号線路141は、長手方向Xに延在する直線状の帯状導体である。すなわち、信号線路141は、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する帯状導体である。信号線路141は、第1列R1が有する信号線路10に対して接続されている。
【0123】
一対の平行線路142a、142bのうち、一方の平行線路142aは、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する帯状導体である。平行線路142aは、信号線路141と平行に延びている。平行線路142aは、第1列R1のデジタル移相回路Bが有する上側パッド21d1に対して接続されている。
【0124】
一対の平行線路142a、142bのうち、他方の平行線路142bは、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する帯状導体である。平行線路142bは、信号線路141と平行に延びている。平行線路142bは、第1列R1のデジタル移相回路Bが有する上側パッド22d1に対して接続されている。
【0125】
グランド層143は、長手方向Xおよび交差方向Yに延在する板状の導体である。グランド層143は、信号線路141および一対の平行線路142a、142bから所定距離隔てた下方に配置されている。グランド層143は、一対の平行線路142a、142bに対して複数の接続導体50を介して接続されている。複数の接続導体50は、平行線路142aに沿って複数配列されているとともに、平行線路142bに沿って複数配列されている。
【0126】
なお、入力回路140は、上述したグランド層143(下側グランド層)に加えて、信号線路141および一対の平行線路142a、142bから所定距離隔てた上方に配置された上側グランド層を有していてもよい。すなわち、入力回路140は、信号線路141が2つのグランド層で挟まれたトリプレート線路構造を形成していてもよい。あるいは、入力回路140は、上側グランド層および下側グランド層のうち一方のみを有していてもよい。すなわち、信号線路141および一対の平行線路142a、142bの上方および下方の少なくとも一方にグランド層が配置されていればよい。
【0127】
<出力整合回路>
図8は、本実施形態に係る出力伝送線路100B、第2ベンド接続部110B、および出力整合回路150の周辺を拡大して示す図である。
【0128】
図8に示すように、出力整合回路150は、第2列R2の他端(デジタル移相回路Bが位置する端部)に対して電気的に接続されている。出力整合回路150は、第2列R2の他端(デジタル移相回路B)から入力された高周波信号を、第2ベンド接続部110Bを介して出力伝送線路100Bに伝送する役割を有する。
【0129】
また、本実施形態に係る出力整合回路150は、入出力インピーダンスを実数負荷に整合させる役割も有する。一般に、入出力インピーダンスを実数負荷に整合させる方法として、出力ユニットに誘導成分(インダクタ)を直列接続することが知られている。しかしながら、本実施形態においては、出力ユニット(第2列R2のデジタル移相回路B)、ならびにその出力先である出力伝送線路100Bおよび第1ベンド接続部110Aの各々が、複数の導体によって構成されている。そのため、集中定数素子であるインダクタをこれらの間に直列接続することが難しい。本実施形態に係る出力整合回路150によれば、集中定数素子であるインダクタをこれらの間に直列接続することが難しい移相装置Aにおいても、入出力インピーダンスを実数負荷に整合させることができる。
【0130】
具体的に、本実施形態に係る出力整合回路150は、信号線路151と、リターン線路152と、を備える。本実施形態に係るリターン線路152は、交差線路152c1と、平行線路152p1と、屈曲線路152bと、交差線路152c2と、を含む。
【0131】
信号線路151は、例えば信号線路10と同じ層に形成される。リターン線路152は、信号線路151が形成された層とは異なる層に形成されている。例えば、リターン線路152は、信号線路151が形成された層よりも下の層に形成されている。ただし、信号線路151とリターン線路152とが同じ層に形成されていてもよい。
【0132】
信号線路151は、長手方向Xに延在する直線状の帯状導体である。すなわち、信号線路151は、一定の幅、一定の厚さおよび所定の長さを有する長尺板状の導体である。信号線路151は、第2列R2のデジタル移相回路Bが有する信号線路10に電気的に接続されている。信号線路151の幅(断面積)は、信号線路10の幅(断面積)よりも小さい。
【0133】
交差線路152c1は、第2列R2のデジタル移相回路Bが有する上側パッド25に電気的に接続された帯状導体である。交差線路152c1には、屈曲部CRが形成されており、信号線路151に近い側(例えば、Y方向における交差線路152c1の中点の位置よりも信号線路151側)がクランク形状である。交差線路152c1は、平面視において、第2列R2のデジタル移相回路Bが有する上側パッド25から、交差方向Yにおいて信号線路151から遠ざかるように延び、屈曲部CRで長手方向Xにおいて第2列R2から遠ざかるように折り曲がった後に、再び交差方向Yにおいて信号線路151から遠ざかるように延びている。
【0134】
平行線路152p1は、交差線路152c1の一端(交差方向Yにおいて上側パッド25とは反対側の端部)に接続された直線状の帯状導体である。平行線路152p1は、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する長尺板状の導体である。平行線路152p1は、交差線路152c1の一端から、信号線路151と平行(長手方向X)に延びている。つまり、本実施形態における平行線路152p1は、交差線路152c1の一端から、長手方向Xにおいて第2列R2から離れるように延びている。平行線路152p1の長さは信号線路151の長さより短い。
【0135】
屈曲線路152bは、平行線路152p1の一端(長手方向Xにおいて交差線路152c1とは反対側の端部)に接続され、屈曲部CRが形成された帯状導体である。屈曲線路152bは、平行線路152p1の一端から、交差方向Yにおいて信号線路151に近づくように延びる部分線路152b1と、この部分線路152b1の一端(交差方向Yにおいて平行線路152p1とは反対側の端部)から信号線路151と平行に、長手方向Xにおいて第2列R2から遠ざかるように延びる部分線路152b2とからなる。屈曲線路152bをなす部分線路152b1、152b2はそれぞれ、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する長尺板状の導体である。部分線路152b1の長さは交差線路152c1の長さよりも短い。なお、屈曲線路152bには、屈曲部CRが複数形成されていてもよい。
【0136】
交差線路152c2は、屈曲線路152bを構成する部分線路152b2の一端(長手方向Xにおいて部分線路152b1とは反対側の端部)に接続された帯状導体である。この交差線路152c2には、屈曲部CRが形成されており、信号線路151に近い側(例えば、Y方向における交差線路152c2の中点の位置よりも信号線路151側)がクランク形状である。交差線路152c2は、平面視において、屈曲線路152bを構成する部分線路152b2の一端から、交差方向Yにおいて信号線路151に近づくように延び、屈曲部CRで長手方向Xにおいて第2列R2から遠ざかるように折り曲がった後に、再び交差方向Yにおいて信号線路151に近づくように延びている。
【0137】
以上説明したリターン線路152は、交差方向Yにおいて信号線路151から遠ざかる向きに凸となるループ線路を構成している。リターン線路152の形状は、デジタル移相回路Bのループ線路RPの形状と対応している。具体的に、交差線路152c1は、ループ線路RPの幅(断面積)を小さくした形状を有する。
【0138】
なお、リターン線路152の形状は適宜変更可能である。例えば、リターン線路152の形状はループ線路RPの形状と対応していなくてもよい。あるいは、リターン線路152はループ線路を構成していなくてもよい。この場合、リターン線路152は、信号線路151と平行に、直線状に延びていてもよい。
【0139】
<入力伝送線路および出力伝送線路>
図1および図7に示すように、本実施形態に係る入力伝送線路100Aは、第1ベンド接続部110Aおよび入力回路140を介して、第1列R1の他端(デジタル移相回路Bが位置する端部)に電気的に接続されている。入力伝送線路100Aは、交差方向Yに延びている。入力伝送線路100Aは、移相装置Aの外部から入力された高周波信号を、移相装置Aの内部(例えば、列R1、R2)へと伝送する役割を有する。ただし、移相装置Aが第1ベンド接続部110Aおよび入力回路140を備えず、入力伝送線路100Aが第1列R1に対して直接接続されていてもよい。この場合、入力伝送線路100Aは長手方向Xに延びていてもよい。
【0140】
図1および図8に示すように、本実施形態に係る出力伝送線路100Bは、第2ベンド接続部110Bおよび出力整合回路150を介して、第2列R2の他端(デジタル移相回路Bが位置する端部)に電気的に接続されている。出力伝送線路100Bは、交差方向Yに延びている。出力伝送線路100Bは、移相装置Aの内部(例えば、列R1、R2)において位相シフトされた高周波信号を、移相装置Aの外部へと伝送する役割を有する。ただし、移相装置Aが第2ベンド接続部110Bおよび出力整合回路150を備えず、出力伝送線路100Bが第2列R2に対して直接接続されていてもよい。この場合、出力伝送線路100Bは長手方向Xに延びていてもよい。
【0141】
図7および図8に示すように、本実施形態に係る入力伝送線路100Aおよび出力伝送線路100Bの各々は、いわゆるグランドつきコプレナ線路を構成しており、信号線101と、一対の接地線102a、102bと、グランド層103(下側グランド層)と、複数の接続導体50と、を有する。一対の接地線102a、102bは、信号線101の両側に間隔を空けて配されている。ただし、伝送線路100A、100Bはいわゆるコプレナ線路を構成していてもよい。この場合、伝送線路100A、100Bは、グランド層103および接続導体50を有していなくてもよい。あるいは、伝送線路100A、100Bはいわゆるマイクロストリップ線路を構成していてもよい。
【0142】
図9は、図7に示すIX-IX線に沿う断面図である。図9に示すように、本実施形態に係る入力伝送線路100Aは、一対の中間導体層104a、104bをさらに有する。詳細な図示は省略するが、出力伝送線路100Bも、入力伝送線路100Aと同様に一対の中間導体層104a、104bを有する。
【0143】
信号線101は、図7および図8に示すように、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する長尺板状の導体である。入力伝送線路100Aの信号線101は、図7に示すように、第1ベンド接続部110Aの信号線接続路111(詳細は後述)および入力回路140の信号線路141を介して、第1列R1の信号線路10と電気的に接続されている。出力伝送線路100Bの信号線101は、図8に示すように、第2ベンド接続部110Bの信号線接続路111(詳細は後述)および出力整合回路150の信号線路151を介して、第2列R2の信号線路10と電気的に接続されている。
【0144】
一対の接地線102a、102bのうち、第1接地線102aは、図7および図8に示すように、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する長尺板状の導体である。第1接地線102aは、信号線101と平行に延び、長手方向Xにおいて信号線101よりも外側(列R1、R2から遠い側)に位置する。
【0145】
一対の接地線102a、102bのうち、第2接地線102bは、図7および図8に示すように、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する長尺板状の導体である。第2接地線102bは、信号線101と平行に延び、長手方向Xにおいて信号線101よりも内側(列R1、R2に近い側)に位置する。
【0146】
グランド層103は、図9に示すように、信号線101および一対の接地線102a、102bから所定距離隔てた下方に配置されている。グランド層103は、伝送線路100A、100BのGNDとして機能する。
【0147】
一対の中間導体層104a、104bのうち、第1中間導体層104aは、図9に示すように、上下方向Zにおいて第1接地線102aとグランド層103との間に位置する。また、第1中間導体層104aは、第1接地線102aおよびグランド層103の双方から所定距離隔てた位置に配置されている。
【0148】
第1接地線102aと第1中間導体層104aとは、接続導体50によって接続されている。また、第1中間導体層104aとグランド層103とは、接続導体50によって接続されている。これにより、グランド層103は、接続導体50および第1中間導体層104aを介して、第1接地線102aに対して接続されている。複数の接続導体50は、図7および図8に示すように、第1接地線102aに沿って配列されている。詳細な図示は省略するが、第1中間導体層104aは、第1接地線102aに沿って延びている。
【0149】
一対の中間導体層104a、104bのうち、第2中間導体層104bは、図9に示すように、上下方向Zにおいて第2接地線102bとグランド層103との間に位置する。また、第2中間導体層104bは、第2接地線102bおよびグランド層103の双方から所定距離隔てた位置に配置されている。
【0150】
第2接地線102bと第2中間導体層104bとは、接続導体50によって接続されている。また、第2中間導体層104bとグランド層103とは、接続導体50によって接続されている。これにより、グランド層103は、接続導体50および第2中間導体層104bを介して、第2接地線102bに対して接続されている。複数の接続導体50は、図7および図8に示すように、第2接地線102bに沿って配列されている。詳細な図示は省略するが、第2中間導体層104bは、第2接地線102bに沿って延びている。
【0151】
ここで、伝送線路100A、100Bにおける高周波信号の伝送を良好に行うためには、信号線101と接地線102a、102bとの間で高周波電流が流れ、信号線101とグランド層103との間では高周波電流が流れないことが望ましい。すなわち、信号線101と接地線102a、102bとの間の距離S1が、信号線101とグランド層103との間の距離H1と比較して十分大きいことが望ましい。例えば、距離S1、H1について、H1≧3×S1が成立することが望ましい。
【0152】
なお、伝送線路100A、100Bは、上述した下側グランド層(グランド層103)に加えて、信号線101および一対の接地線102a、102bから所定距離隔てた上方に配置された上側グランド層を有していてもよい。すなわち、伝送線路100A、100Bは、信号線101が2つのグランド層で挟まれたトリプレート線路構造を形成していてもよい。あるいは、信号線101は、上側グランド層および下側グランド層のうち一方のみを有していてもよい。すなわち、信号線101および一対の接地線102a、102bの上方および下方の少なくとも一方にグランド層が配置されていればよい。
【0153】
<第1ベンド接続部および第2ベンド接続部>
図1および図7に示すように、本実施形態に係る第1ベンド接続部110Aは、入力回路140を介して、第1列R1の他端(デジタル移相回路Bが位置する端部)と入力伝送線路100Aとを電気的に接続している。第1ベンド接続部110Aは、入力伝送線路100Aから入力された高周波信号を、入力回路140を介して第1列R1の他端(デジタル移相回路B)に伝送する役割を有する。ただし、移相装置Aが入力回路140を備えず、第1ベンド接続部110Aが第1列R1および入力伝送線路100Aの双方に対して直接接続されていてもよい。
【0154】
本実施形態に係る第1ベンド接続部110Aは、平面視において屈曲した形状を有する。より具体的に、本実施形態に係る第1ベンド接続部110Aは、長手方向Xにおいて第1列R1および入力回路140から遠ざかる向きに延びてから、交差方向Yにおいて移相装置Aの中心線M(図1参照)から遠ざかるように屈曲した形状を有する。なお、「(移相装置A)の中心線M」は、第1列R1が有する信号線路10の中心線と、第2列R2が有する信号線路10の中心線と、から等距離に位置する、長手方向Xに延びる仮想的な線である。
【0155】
図1および図8に示すように、本実施形態に係る第2ベンド接続部110Bは、出力整合回路150を介して、第2列R2の他端(デジタル移相回路Bが位置する端部)と出力伝送線路100Bとを電気的に接続している。第2ベンド接続部110Bは、出力整合回路150を介して第2列R2の他端(デジタル移相回路B)から入力された高周波信号を、出力伝送線路100Bに伝送する役割を有する。ただし、移相装置Aが出力整合回路150を備えず、第2ベンド接続部110Bが第2列R2および出力伝送線路100Bの双方に対して直接接続されていてもよい。
【0156】
本実施形態に係る第2ベンド接続部110Bは、平面視において屈曲した形状を有する。より具体的に、本実施形態に係る第2ベンド接続部110Bは、長手方向Xにおいて第2列R2および出力整合回路150から遠ざかる向きに延びてから、交差方向Yにおいて移相装置Aの中心線M(図1参照)から遠ざかるように屈曲した形状を有する。
【0157】
図7および図8に示すように、本実施形態に係る第1ベンド接続部110Aおよび第2ベンド接続部110Bの各々は、いわゆるグランドつきコプレナ線路を構成しており、信号線接続路111と、一対の接地線接続路112a、112bと、接続グランド層113(下側グランド層)と、複数の接続導体50と、を有する。一対の接地線接続路112a、112bは、信号線接続路111の両側に間隔を空けて配されている。ただし、ベンド接続部110A、110Bはいわゆるコプレナ線路を構成していてもよい。この場合、ベンド接続部110A、110Bは、接続グランド層113および接続導体50を有していなくてもよい。あるいは、ベンド接続部110A、110Bはいわゆるマイクロストリップ線路を構成していてもよい。
【0158】
図10は、図7に示すX-X線に沿う断面図である。図10に示すように、本実施形態に係る第1ベンド接続部110Aは、一対の中間導体層114a、114bをさらに有する。詳細な図示は省略するが、第2ベンド接続部110Bも、第1ベンド接続部110Aと同様に一対の中間導体層114a、114bを有する。
【0159】
信号線接続路111は、図7および図8に示すように、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する長尺板状の導体である。第1ベンド接続部110Aの信号線接続路111は、図7に示すように、入力回路140の信号線路141を介して、第1列R1の信号線路10と入力伝送線路100Aの信号線101とを電気的に接続する。第2ベンド接続部110Bの信号線接続路111は、図8に示すように、出力整合回路150の信号線路151を介して、第2列R2の信号線路10と出力伝送線路100Bの信号線101とを電気的に接続する。なお、図7および図8に示す例において信号線接続路111は3つの直線部からなる形状を有しているが、信号線接続路111の形状はこれに限られない。例えば、信号線接続路111は2つ以下または4つ以上の直線部を含んでいてもよいし、曲線部を含んでいてもよい。
【0160】
一対の接地線接続路112a、112bのうち、第1接地線接続路112aは、図7および図8に示すように、信号線接続路111と平行に延び、信号線接続路111よりも外側に位置する板状の導体である。第1ベンド接続部110Aの第1接地線接続路112aは、図7に示すように、入力回路140の平行線路142aと、入力伝送線路100Aの第1接地線102aとを接続する。第2ベンド接続部110Bの第1接地線接続路112aは、出力伝送線路100Bの第1接地線102aと電気的に接続されている。
【0161】
一対の接地線接続路112a、112bのうち、第2接地線接続路112bは、図7および図8に示すように、信号線接続路111と平行に延び、信号線接続路111よりも内側に位置する板状の導体である。第1ベンド接続部110Aの第2接地線接続路112bは、図7に示すように、入力回路140の平行線路142bと、入力伝送線路100Aの第2接地線102bとを接続する。第2ベンド接続部110Bの第2接地線接続路112bは、出力伝送線路100Bの第2接地線102bと電気的に接続されている。
【0162】
第2ベンド接続部110Bが有する第1接地線接続路112aの一端(第1接地線102aとは反対側の端部)には、パッド115が設けられている。また、第2ベンド接続部110Bが有する第2接地線接続路112bの一端(第2接地線102bとは反対側の端部)には、パッド116が設けられている。パッド116は、出力整合回路150のリターン線路152と第2ベンド接続部110Bの第2接地線接続路112bとを電気的に接続する。
【0163】
接続グランド層113は、図10に示すように、信号線接続路111および一対の接地線接続路112a、112bから所定距離隔てた下方に配置されている。接続グランド層113は、ベンド接続部110A、110BのGNDとして機能する。
【0164】
一対の中間導体層114a、114bのうち、第1中間導体層114aは、図10に示すように、上下方向Zにおいて第1接地線接続路112aと接続グランド層113との間に位置する。また、第1中間導体層114aは、第1接地線接続路112aおよび接続グランド層113の双方から所定距離隔てた位置に配置されている。
【0165】
第1接地線接続路112aと第1中間導体層114aとは、接続導体50によって接続されている。また、第1中間導体層114aと接続グランド層113とは、接続導体50によって接続されている。これにより、接続グランド層113は、接続導体50および第1中間導体層114aを介して、第1接地線接続路112aに対して接続されている。複数の接続導体50は、図7および図8に示すように、第1接地線接続路112aに沿って配列されている。詳細な図示は省略するが、第1中間導体層114aは、第1接地線接続路112aに沿って延びている。
【0166】
一対の中間導体層114a、114bのうち、第2中間導体層114bは、図10に示すように、上下方向Zにおいて第2接地線接続路112bと接続グランド層113との間に位置する。また、第2中間導体層114bは、第2接地線接続路112bおよび接続グランド層113の双方から所定距離隔てた位置に配置されている。
【0167】
第2接地線接続路112bと第2中間導体層114bとは、接続導体50によって接続されている。また、第2中間導体層114bと接続グランド層113とは、接続導体50によって接続されている。これにより、接続グランド層113は、接続導体50および第2中間導体層114bを介して、第2接地線接続路112bに対して接続されている。複数の接続導体50は、図7および図8に示すように、第2接地線接続路112bに沿って配列されている。詳細な図示は省略するが、第2中間導体層114bは、第2接地線接続路112bに沿って延びている。
【0168】
ここで、ベンド接続部110A、110Bにおける高周波信号の伝送を良好に行うためには、信号線接続路111と接地線接続路112a、112bとの間で高周波電流が流れ、信号線接続路111と接続グランド層113との間では高周波電流が流れないことが望ましい。すなわち、信号線接続路111と接地線接続路112a、112bとの間の距離S2が、信号線接続路111と接続グランド層113との間の距離H2と比較して十分大きいことが望ましい。例えば、距離S2、H2について、H2≧3×S2が成立することが望ましい。
【0169】
なお、ベンド接続部110A、110Bは、上述した下側グランド層(接続グランド層113)に加えて、信号線接続路111および一対の接地線接続路112a、112bから所定距離隔てた上方に配置された上側グランド層を有していてもよい。すなわち、ベンド接続部110A、110Bは、信号線接続路111が2つのグランド層で挟まれたトリプレート線路構造を形成していてもよい。あるいは、信号線接続路111は、上側グランド層および下側グランド層のうち一方のみを有していてもよい。すなわち、信号線接続路111および一対の接地線接続路112a、112bの上方および下方の少なくとも一方にグランド層が配置されていればよい。
【0170】
なお、本実施形態において、伝送線路100A、100Bが有するグランド層103と、ベンド接続部110A、110Bが有する接続グランド層113と、入力回路140が有するグランド層143とは、互いに電気的に接続されている。例えば、グランド層103と、接続グランド層113と、グランド層143とは、共通化されていてもよい。言い換えれば、グランド層103と、接続グランド層113と、グランド層143とは、同一の導体であってもよい。あるいは、互いに別体に設けられたグランド層103、接続グランド層113、およびグランド層143が、ビアやパッド等の導体を介して互いに電気的に接続されていてもよい。
【0171】
<第1グランドプレーン>
図1に示すように、第1グランドプレーンG1は、凹部RCが形成された、長手方向Xおよび交差方向Yに延在する板状の導体である。本実施形態に係る、凹部RCが形成された第1グランドプレーンG1は、平面視において、第1列R1と、第2列R2と、接続部90と、入力回路140と、出力整合回路150と、を取り囲んでいる。すなわち、本実施形態では、平面視において、第1列R1と、第2列R2と、接続部90と、入力回路140と、出力整合回路150とが、凹部RC(の領域)に配置されている。
【0172】
以下、第1グランドプレーンG1が有する縁のうち、凹部RCの内縁に相当する部分を「(第1グランドプレーンG1の)内縁EA」といい、内縁EA以外の部分を「(第1グランドプレーンG1の)外縁EB」という。本実施形態において、内縁EAは、一対の第1縁E1a、E1bと、一対の第2縁E2a、E2bと、一対の第3縁E3a、E3bと、第4縁E4と、を含む。本実施形態において、外縁EBは、一対の第5縁E5a、E5bを含む。
【0173】
一対の第1縁E1a、E1bの各々は、長手方向Xに延びている。一対の第1縁E1a、E1bは、交差方向Yにおいて、第1列R1、第2列R2、入力回路140、および出力整合回路150の外側に位置する。一対の第1縁E1a、E1bのうち、一方の縁E1aは、交差方向Yにおいて、入力回路140および第1列R1と対向している。一対の第1縁E1a、E1bのうち、他方の縁E1bは、交差方向Yにおいて、出力整合回路150および第2列R2と対向している。
【0174】
一対の第2縁E2a、E2bの各々は、交差方向Yに延びている。一対の第2縁E2a、E2bのうち、一方の縁E2aは、縁E1aの一端(長手方向Xにおいて入力伝送線路100Aから遠い側の端部)から、交差方向Yにおいて中心線Mに向かうように延びている。一対の第2縁E2a、E2bのうち、他方の縁E2bは、縁E1bの一端(長手方向Xにおいて出力伝送線路100Bから遠い側の端部)から、交差方向Yにおいて中心線Mに向かうように延びている。
【0175】
一対の第3縁E3a、E3bの各々は、長手方向Xに延びている。一対の第3縁E3a、E3bは、交差方向Yにおいて、接続部90の外側に位置する。一対の第3縁E3a、E3bのうち、一方の縁E3aは、縁E2aの一端(交差方向Yにおいて中心線Mに近い側の端部)から、長手方向Xにおいて入力伝送線路100Aから遠ざかるように延びている。一対の第3縁E3a、E3bのうち、他方の縁E3bは、縁E2bの一端(交差方向Yにおいて中心線Mに近い側の端部)から、長手方向Xにおいて出力伝送線路100Bから遠ざかるように延びている。
【0176】
第4縁E4は、交差方向Yに延びている。第4縁E4は、一対の第3縁E3a、E3bの一端(長手方向Xにおいて伝送線路100A、100Bから遠い側の端部)同士を結んでいる。第4縁E4および一対の第3縁E3a、E3bは、第2グランドプレーンG2の外縁に沿って延びている(図6も参照)。
【0177】
一対の第5縁E5a、E5bの各々は、交差方向Yに延びている。一対の第5縁E5a、E5bのうち、一方の縁E5aは、縁E1aの他端(長手方向Xにおいて入力伝送線路100Aに近い側の端部)から、交差方向Yにおいて中心線Mから離れるように延びている。一対の第5縁E5a、E5bのうち、他方の縁E5bは、縁E1bの他端(長手方向Xにおいて出力伝送線路100Bに近い側の端部)から、交差方向Yにおいて中心線Mから離れるように延びている。
【0178】
ここで、一対の第1縁E1a、E1bは、図1に示すように、第1列R1、第2列R2、入力回路140、出力整合回路150から交差方向Yにおいて所定距離隔てて配されている。これにより、第1グランドプレーンG1と、列R1、R2が有するデジタル移相回路Bのループ線路RPとが、互いに接触していない。したがって、第1グランドプレーンG1が各デジタル移相回路Bの移相特性に与える影響を抑制しつつ広く安定したGNDを確保でき、所望の移相特性を実現できる。また、第1グランドプレーンG1と、出力整合回路150が有するリターン線路152と、が互いに接触していないため、第1グランドプレーンG1が出力整合回路150の特性に与える影響を抑制できる。
【0179】
また、第1列R1と第2列R2との交差方向Yにおける間には、グランドプレーン(板状のグランド導体)が配置されない。仮に列R1、R2の間にグランドプレーンが配置されているとすると、このグランドプレーンが各デジタル移相回路Bの移相特性に影響を与える可能性がある。列R1、R2の間にグランドプレーンを配置しないことで、このような移相特性への影響を除去し、所望の移相特性を実現できる。
【0180】
また、図1および図6に示すように、一対の第3縁E3a、E3bは、第2グランドプレーンG2から交差方向Yにおいて所定距離隔てて配されている。また、第4縁E4は、第2グランドプレーンG2から長手方向Xにおいて所定距離隔てて配されている。これにより、第1グランドプレーンG1と第2グランドプレーンG2とは、互いに接触していない。
【0181】
言い換えれば、第1グランドプレーンG1と第2グランドプレーンG2との間に、スリットSLが形成されている(図6参照)。スリットSLは、長手方向Xにおいて列R1、R2から遠ざかる向きに凸となるU字状の形状を有する。このようなスリットSLを設けることで、接続部90における高周波信号の伝送を良好に行うことができる。
【0182】
また、図1および図7に示すように、縁E5aは、入力伝送線路100Aのグランド層103に接触している。同様に、図1および図8に示すように、縁E5bは、出力伝送線路100Bのグランド層103に接触している。なお、図7および図8においては、見やすさのため、電源配線120およびデカップリングコンデンサ130の図示を省略している。
【0183】
つまり、第1グランドプレーンG1の外縁EBの少なくとも一部が、伝送線路100A、100Bのグランド層103に接触している。これにより、入力伝送線路100AのGNDおよび出力伝送線路100BのGNDが、第1グランドプレーンG1に電気的に接続されている。伝送線路100A、100BのGNDと第1グランドプレーンG1とを電気的に接続することで、伝送線路100A、100BのGNDを安定させることができる。
【0184】
なお、伝送線路100A、100BのGNDと第1グランドプレーンG1とは直接接触していなくてもよい。すなわち、伝送線路100A、100BのGNDと第1グランドプレーンG1とがビアやパッド等の導体を介して接続されていてもよい。
【0185】
<電源配線およびデカップリングコンデンサ>
図1に示すように、電源配線120は、長手方向Xにおいて伝送線路100A、100Bから遠ざかる向きに凸となるU字状の形状を有する。電源配線120は、各デジタル移相回路Bのスイッチ制御部80(図3等を参照)に電源を供給するためのものである。電源配線120は、いずれの層に形成されていてもよく、例えば信号線路10が形成された層に形成されていてもよいし、信号線路10が形成された層以外の層に形成されていてもよい。本実施形態に係る電源配線120は、一対の並行部121a、121bと、迂回部122と、を有する。
【0186】
一対の並行部121a、121bのうち、第1並行部121aは、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する長尺板状の導体である。第1並行部121aは、第1グランドプレーンG1の縁E1a(内縁EA)に沿って長手方向Xに延びている。図示の例における第1並行部121aは、平面視において第1グランドプレーンG1(縁E1a)と重なっている。より具体的には、第1並行部121aが有する、交差方向Y内側(中心線M側)の側縁が、平面視において、縁E1aと一致している。図示の例において、第1並行部121aの長さ(長手方向Xにおける寸法)は、縁E1aの長さ(長手方向Xにおける寸法)と等しい。
【0187】
一対の並行部121a、121bのうち、第2並行部121bは、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する長尺板状の導体である。第2並行部121bは、第1グランドプレーンG1の縁E1b(内縁EA)に沿って長手方向Xに延びている。図示の例における第2並行部121bは、平面視において第1グランドプレーンG1(縁E1b)と重なっている。より具体的には、第2並行部121bが有する、交差方向Y内側(中心線M側)の側縁が、平面視において、縁E1bと一致している。図示の例において、第2並行部121bの長さ(長手方向Xにおける寸法)は、縁E1bの長さ(長手方向Xにおける寸法)と等しい。
【0188】
迂回部122は、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する長尺板状の導体である。迂回部122は、一対の並行部121a、121bの一端(長手方向Xにおいて伝送線路100A、100Bから遠い側の端部)同士を接続している。迂回部122は、長手方向Xにおいて伝送線路100A、100Bから遠ざかる向きに凸となるU字状の形状を有する。また、迂回部122は、平面視において接続部90と重なっておらず、接続部90の外側に位置する。つまり、迂回部122は、平面視において接続部90を迂回するように延びている。
【0189】
複数のデカップリングコンデンサ130は、各並行部121a、121bに沿って設けられている。各デカップリングコンデンサ130は、電源配線120と第1グランドプレーンG1との間に配されている。すなわち、電源配線120が第1グランドプレーンG1よりも上層の場合、デカップリングコンデンサ130の上部電極は電源配線120に接続され、デカップリングコンデンサ130の下部電極は第1グランドプレーンG1に接続されている。
【0190】
本実施形態に係る移相装置Aにおいては、複数のデカップリングコンデンサ130と複数のデジタル移相回路Bとが一対一に対応している。各デカップリングコンデンサ130は、対応するデジタル移相回路Bと交差方向Yに並ぶ位置に設けられている。ただし、デカップリングコンデンサ130の数および配置は適宜変更可能である。
【0191】
このように、電源配線120の少なくとも一部(並行部121a、121b)が第1グランドプレーンG1の内縁EA(第1縁E1a、E1b)に沿って延びているため、電源配線120と第1グランドプレーンG1との間に多数のデカップリングコンデンサ130を設けることが容易となる。これにより、安定した電源配線120が実現できる。
【0192】
また、電源配線120の少なくとも一部(並行部121a、121b)が第1グランドプレーンG1の内縁EA(第1縁E1a、E1b)に沿って延びているため、電源配線120と第1グランドプレーンG1とが近接する。これにより、デカップリングコンデンサ130による接続経路を短くすることができる。これにより、安定した電源配線120が実現できる。
【0193】
なお、電源配線120と第1グランドプレーンG1との間にデカップリングコンデンサ130を配置することが可能であれば、並行部121a、121bと第1縁E1a、E1bとが交差方向Yにおいてずれていてもよい。すなわち、並行部121a、121bが、第1縁E1a、E1bの近傍において第1縁E1a、E1bと平行に延びていればよい。
【0194】
図11は、本実施形態に係る電源配線120とスイッチ制御部80との接続関係を示す図である。図11に示すように、電源配線120は、電源供給経路123を介して、スイッチ制御部80に電源を供給する。なお、電源配線120がスイッチ制御部80に電源を供給可能であれば、電源供給経路123の具体的態様は特に限定されず、適宜設計可能である。
【0195】
ここで、図11に示すように、隣接する2つのデジタル移相回路Bの間には、平面視において、隙間GPが形成される。これは、デジタル移相回路Bが上述した屈曲線路22bを有しているためである。具体的に、隙間GPは、デジタル移相回路Bが有する屈曲線路22bと、隣接するデジタル移相回路Bk+1が有する第1交差線路22c1と、の間に形成される。言い換えれば、隙間GPは、デジタル移相回路Bの屈曲線路22bと、デジタル移相回路Bk+1の第1交差線路22c1と、によって囲まれた領域である。
【0196】
そして、デジタル移相回路Bのスイッチ制御部80は、この隙間GPに位置している。隙間GPにスイッチ制御部80を配置することで、半導体基板上のスペースを有効に活用し、移相装置Aのさらなる小型化を図ることができる。
【0197】
<総括>
以上説明したように、本実施形態に係る移相装置Aは、信号線路10と、信号線路10と平行に延びる第1平行線路21p1を含む第1線路21と、信号線路10と平行に延びる第2平行線路22p2、および、第2平行線路22p2の一方の端部から第2平行線路22p2の他方の端部付近まで延びるとともに信号線路10の長手方向Xと交差する交差方向Yにおいて信号線路10から遠ざかる方向に凸状となるループ状のループ線路RP、を含む第2線路22と、第1平行線路21p1の一方の端部および第2平行線路22p2の一方の端部に電気的に接続された第1接地導体31と、第2線路22の一方の端部に接続された第2接地導体32と、第1平行線路21p1の他方の端部と第2接地導体32との間に設けられた第1電子スイッチ41と、第2平行線路22p2の他方の端部と第2接地導体32との間に設けられた第2電子スイッチ42と、第1電子スイッチ41および第2電子スイッチ42を制御する制御回路(スイッチ制御部80)と、を備え、第1平行線路21p1と第2平行線路22p2との間に信号線路10が位置するデジタル移相回路Bが、長手方向Xにおいて複数縦続接続された第1列R1と、デジタル移相回路Bが長手方向Xにおいて複数縦続接続され、交差方向Yから見て第1列R1と重なるように第1列R1と平行に延びる第2列R2と、第1列R1の一方の端部と第2列R2の一方の端部とを電気的に接続する接続部90と、平面視において第1列R1と第2列R2と接続部90とを取り囲む、凹部RCが形成された第1グランドプレーンG1と、を備え、第1グランドプレーンG1とループ線路RPとは、互いに接触していない。
【0198】
この構成によれば、各デジタル移相回路Bの第2線路22がループ線路RPを含んでいるため、各デジタル移相回路Bを小型化しても、必要な移相量を確保することができる。そして、各デジタル移相回路Bを小型化することで、2つの列R1、R2のみで(すなわち、3つ以上の単位列Rを設けなくても)必要な移相量を確保することができ、移相装置Aの小型化を図ることができる。また、第1グランドプレーンG1とループ線路RPとが互いに接触していないため、第1グランドプレーンG1が各デジタル移相回路Bの移相特性に与える影響を抑制し、所望の移相特性を実現できる。
【0199】
また、本実施形態に係る移相装置Aは、少なくとも一部(並行部121a、121b)が凹部RCの内縁EA(第1縁E1a、E1b)に沿って延び、スイッチ制御部80に電源を供給する、平面視においてU字状の電源配線120と、第1グランドプレーンG1と電源配線120との間に配されたデカップリングコンデンサ130と、をさらに備える。この構成により、安定した電源配線120が実現できる。
【0200】
また、複数のデジタル移相回路Bの各々において、ループ線路RPは、第2平行線路22p2の一方の端部から交差方向Yにおいて信号線路10から遠ざかるように延びる第1交差線路22c1と、第1交差線路22c1の一方の端部から信号線路10と平行に延び、第2平行線路22p2の長さよりも短い第3平行線路22p3と、第3平行線路22p3の一方の端部に接続され、交差方向Yにおいて信号線路10に近づくように第1交差線路22c1の長さより短く延びてから信号線路10と平行に延びる屈曲部CRが形成された屈曲線路22bと、を含み、複数のデジタル移相回路Bの各々において、スイッチ制御部80は、平面視において、屈曲線路22bと、隣接するデジタル移相回路Bが有する第1交差線路22c1と、の間に形成された隙間GPに位置している。この構成により、半導体基板上のスペースを有効に活用し、移相装置Aのさらなる小型化を図ることができる。
【0201】
また、接続部90は、第2グランドプレーンG2を有し、第1グランドプレーンG1と第2グランドプレーンG2とは、互いに接触していない。この構成により、接続部90における高周波信号の伝送を良好に行うことができる。
【0202】
また、第1列R1と第2列R2との間には、グランドプレーンが配置されない。この構成により、列R1、R2の間に配置されるグランドプレーンが各デジタル移相回路Bの移相特性に与える悪影響を除去し、所望の移相特性を実現できる。
【0203】
また、本実施形態に係る移相装置Aは、第1列R1の他方の端部に電気的に接続された、GNDを有する入力伝送線路100Aと、第2列R2の他方の端部に電気的に接続された、GNDを有する出力伝送線路100Bと、をさらに備え、入力伝送線路100AのGNDおよび出力伝送線路100BのGNDは、第1グランドプレーンG1に電気的に接続されている。この構成により、伝送線路100A、100BのGNDを安定させることができる。
【0204】
また、入力伝送線路100Aおよび出力伝送線路100Bの各々は、信号線路10と電気的に接続される信号線101と、信号線101の両側に間隔を空けて配された一対の接地線102a、102bと、信号線101および一対の接地線102a、102bの上方および下方の少なくとも一方に配置されるグランド層103と、一対の接地線102a、102bとグランド層103とを接続する接続導体50と、を有し、信号線101と接地線102a、102bとの間の距離をS1とし、信号線101とグランド層103との間の距離をH1とするとき、H1≧3×S1が成立する。この構成により、信号線101と接地線102a、102bとの間で高周波電流が流れやすくし、信号線101とグランド層103との間では高周波電流が流れにくくすることができる。これにより、伝送線路100A、100Bにおける高周波信号の伝送を良好に行うことができる。また、信号線101からグランド層103への高周波電流の流出を抑制することで、グランド層103に接続された第1グランドプレーンG1への高周波電流の流出も抑制できる。これにより、第1グランドプレーンG1への高周波電流の流出に起因した、移相特性への悪影響を抑制することができる。
【0205】
また、本実施形態に係る移相装置Aは、第1列R1の他方の端部と入力伝送線路100Aとを電気的に接続し、平面視において屈曲した形状を有する第1ベンド接続部110Aと、第2列R2の他方の端部と出力伝送線路100Bとを電気的に接続し、平面視において屈曲した形状を有する第2ベンド接続部110Bと、をさらに備え、入力伝送線路100Aおよび出力伝送線路100Bの各々は、交差方向Yに延びている。このようなベンド接続部110A、110Bを導入することで、伝送線路100A、100Bを、各列R1、R2の他端から交差方向Yにおける外側に向けて延ばすことができる。これにより、伝送線路100A、100Bに接続される他の回路が列R1、R2の交差方向Yにおける両側に位置するような半導体パッケージに対して、本実施形態に係る移相装置Aを好適に適用することができる。
【0206】
また、第1ベンド接続部110Aおよび第2ベンド接続部110Bの各々は、信号線路10と電気的に接続される信号線接続路111と、一対の接地線102a、102bと電気的に接続される一対の接地線接続路112a、112bと、信号線接続路111および一対の接地線接続路112a、112bの上方および下方の少なくとも一方に配置される接続グランド層113と、一対の接地線接続路112a、112bと接続グランド層113とを接続する複数の接続導体50と、を有し、信号線接続路111と接地線接続路112a、112bとの間の距離をS2とし、信号線接続路111と接続グランド層113との間の距離をH2とするとき、H2≧3×S2が成立する。この構成により、信号線接続路111と接地線接続路112a、112bとの間で高周波電流が流れやすくし、信号線接続路111と接続グランド層113との間では高周波電流が流れにくくすることができる。これにより、ベンド接続部110A、110Bにおける高周波信号の伝送を良好に行うことができる。また、信号線接続路111から接続グランド層113への高周波電流の流出を抑制することで、グランド層103を介して接続グランド層113に接続された第1グランドプレーンG1への高周波電流の流出も抑制できる。これにより、第1グランドプレーンG1への高周波電流の流出に起因した、移相特性への悪影響を抑制することができる。
【0207】
<変形例>
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0208】
例えば、各デジタル移相回路Bが有するループ線路RPの構成は適宜変更可能である。
一例として、ループ線路RPは、信号線路10が形成された層に形成されていてもよい。
また、交差線路22c1、22c2は、屈曲部CR1、CR2を有していなくてもよい。この場合、デジタル移相回路Bが有する屈曲線路22b(部分線路22b2)が、隣接するデジタル移相回路Bk+1が有する第1交差線路22c1に対して直接接続されていてもよい。すなわち、デジタル移相回路Bの部分線路22b2とデジタル移相回路Bk+1の第1交差線路22c1とがT字状に接続されていてもよい。
また、ループ線路RPが屈曲線路22bを有さず、第2交差線路22c2と第3平行線路22p3とが直接接続されていてもよい。
また、ループ線路RPは、複数の層にわたって形成されていてもよい。より具体的に、ループ線路RPは、第1層(例えば、信号線路10等が形成された層)に形成された第1ループ線路部と、第1層とは異なる第2層に形成された第2ループ線路部と、を含んでいてもよい。第1ループ線路部と第2ループ線路部とは、ビア等を介して電気的に接続されていてもよい。
ループ線路RPの構成は上記の例に限られず、交差方向Yにおいて信号線路10から遠ざかる方向に凸状となるループ形状を有していれば、適宜変更可能である。同様に、出力整合回路150が有するリターン線路152の構成も適宜変更可能である。
【0209】
また、上記実施形態では、各列R1、R2において、複数のデジタル移相回路Bが、第1線路21が信号線路10の他方側(第2列R2においては-Y側、第1列R1においては+Y側)にのみ位置し、第2線路22が信号線路10の一方側(第2列R2においては+Y側、第1列R1においては-Y側)にのみ位置するように縦続接続されていると説明したが、縦続接続の態様はこれに限られない。例えば、長手方向Xに見て、第2線路22が信号線路10の一方側(+Y側)と他方側(-Y側)とに交互に配置されるよう、複数のデジタル移相回路Bが縦続接続されていてもよい。より具体的には、デジタル移相回路Bと、デジタル移相回路Bを信号線路10の中心線に対して反転させた反転デジタル移相回路rB(不図示)と、が交互に縦続接続されていてもよい。
【0210】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0211】
A…移相装置 R1…第1列 R2…第2列 B…デジタル移相回路 10…信号線路 21…第1線路 21p1…第1平行線路 22…第2線路 RP…ループ線路 22p2…第2平行線路 22c1…第1交差線路 22p3…第3平行線路 22b…屈曲線路 31…第1接地導体 32…第2接地導体 41…第1電子スイッチ 42…第2電子スイッチ 50…接続導体 80…スイッチ制御部(制御回路) 90…接続部 100A…入力伝送線路 100B…出力伝送線路 101…信号線 102a、102b…接地線 103…グランド層 110A…第1ベンド接続部 110B…第2ベンド接続部 111…信号線接続路 112a、112b…接地線接続路 113…接続グランド層 120…電源配線 130…デカップリングコンデンサ G1…第1グランドプレーン RC…凹部 EA…内縁 G2…第2グランドプレーン
【要約】
【課題】従来よりも小型で所望の移相特性を実現可能な移相装置を提供する。
【解決手段】移相装置は、ループ線路を含むデジタル移相回路が長手方向において複数縦続接続された第1列と、前記デジタル移相回路が長手方向において複数縦続接続され、交差方向から見て前記第1列と重なるように前記第1列と平行に延びる第2列と、前記第1列の一方の端部と前記第2列の一方の端部とを電気的に接続する接続部と、平面視において前記第1列と前記第2列と前記接続部とを取り囲む、凹部が形成された第1グランドプレーンと、を備え、前記第1グランドプレーンと前記ループ線路とは、互いに接触していない。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11