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特許7436755急速空気UV硬化用オルガノポリシロキサンクラスターポリマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】急速空気UV硬化用オルガノポリシロキサンクラスターポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/50 20060101AFI20240214BHJP
   C08G 77/20 20060101ALI20240214BHJP
   C08G 77/18 20060101ALI20240214BHJP
   C08L 83/07 20060101ALI20240214BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
C08G77/50
C08G77/20
C08G77/18
C08L83/07
C09D183/04
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023514013
(86)(22)【出願日】2021-08-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-25
(86)【国際出願番号】 US2021048160
(87)【国際公開番号】W WO2022051203
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-03-14
(31)【優先権主張番号】63/072,973
(32)【優先日】2020-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ウォーカー、ジェームズ エイ.
(72)【発明者】
【氏名】リウ、ジュンイン
(72)【発明者】
【氏名】ハンリー、パトリック エス.
(72)【発明者】
【氏名】トーマス、ライアン
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-511784(JP,A)
【文献】特表2016-506992(JP,A)
【文献】特表2016-512567(JP,A)
【文献】国際公開第2020/131367(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/084397(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/142443(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G77/00- 77/62
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
C09J 1/00- 5/10
C09J 9/00-201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造:
【化1】
[式中、
(a)
【化2】
(b)Rが、各出現において独立して、アリール基及び~6個の炭素を有するアルキル基からなる群から選択され、
(c)R’及び、R’’が、各出現において独立して、2~6個の炭素原子を含む二価炭化水素基から選択され、
(d)サンプルの平均n値は、50~200未満の範囲の値であり、
(e)Aが、各出現において独立して、アクリレート基、メタクリレート基及びトリアルコキシシリル基からなる群から選択され、但し、平均して、50~95モルパーセントの前記A基がアクリレート基及びメタクリレート基から選択され、5~50モルパーセントの前記A基がトリアルコキシシリル基から選択される]を有するクラスターオルガノポリシロキサンを含む、組成物。
【請求項2】
各Rがメチルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
各R’が、-(CH-であり、各R”が、アクリレート又はメタクリレートであるA基に連結している場合は、-(CH-であり、トリアルコキシシリルであるA基に連結している場合は、-(CH-である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記トリアルコキシシリル基のアルコキシ基が、各出現において独立して、メトキシ、エトキシ、及びプロポキシから選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
各Rがメチルであり、各R’が、-(CH-であり、各R”が、アクリレート又はメタクリレートであるA基に連結している場合は、-(CH-であり、トリアルコキシシリルであるA基に連結している場合は、-(CH-であり、前記トリアルコキシシリル基の各アルコキシ基がメトキシである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、オリゴマー及び/又は副生成物を更に含み、前記オリゴマーが、以下の構造を有し:
【化3】
前記副生成物が、以下の構造を有し:
【化4】
式中、95モルパーセント以上で同時に100モルパーセント未満の前記X基が、以下の構造を有し:
【化5】
式中、0モルパーセント超で同時に5モルパーセント以下の前記X基が、以下のX’構造を有し:
【化6】
式中、R、R’、R”、A、X、nが、先に定義したとおりであり、R’が、R’の末端炭素に隣接する炭素から水素を除去し、その炭素と末端炭素との間に二重結合を形成することによって形成されるR’の一価の末端不飽和前駆体に相当する、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、湿気硬化触媒及び紫外線活性化フリーラジカル開始剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の組成物を使用する方法であって、前記組成物を基材に塗布することと、次いで前記組成物を紫外線に曝露して、硬化組成物を含む物品を形成することと、を含む、方法。
【請求項9】
基材の表面上に請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物を含む、物品。
【請求項10】
前記組成物が硬化状態である、請求項9に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オルガノポリシロキサンクラスターポリマー、オルガノポリシロキサンクラスターポリマーを含む硬化性組成物、及び硬化又は未硬化形態のそのような硬化性組成物を含む物品に関する。
【0002】
序論
アクリレート又はメタクリレート(「(メタ)アクリレート」)官能性オルガノポリシロキサンは、フリーラジカル重合反応に関与するのに有用であり得る。(メタ)アクリレート官能性オルガノポリシロキサンの硬化は、UVラジカル開始剤を用いて紫外(「UV」)光によって開始することができる。アルコキシシリル官能基、又はアルコキシシリル官能基を有する他のオルガノポリシロキサンと組み合わせた場合、(メタ)アクリレート官能性オルガノポリシロキサンは、(メタ)アクリレート基を介するUV誘起フリーラジカル誘導重合、及びアルコキシシリル官能基を介する湿気硬化によって、部分的に硬化する二重硬化組成物の一部であり得る。フリーラジカル誘導重合は、多くの場合、組成物の表面の初期硬化を急速に得るために使用される。フリーラジカル重合は、乾燥した非粘着性表面を速やかに得て、接触時に組成物又は接触物体の損傷又は汚染を防止する一方で、組成物の他の部分は、長時間にわたって湿気硬化できるようにするために特に望ましい。1平方センチメートル当たり4ジュールのUV光に曝露されたとき、30秒未満で乾燥した非粘着性表面を達成するUV硬化を達成するUV/湿気二重硬化組成物を特定することが特に望ましい。
【0003】
(メタ)アクリレート官能性オルガノポリシロキサンのフリーラジカル硬化に伴う課題は、酸素阻害である。酸素の存在下でラジカル重合反応を行う場合、例えば反応が空気中で行われる場合、酸素は(メタ)アクリレートのフリーラジカル重合を阻害する。結果として、空気中での(メタ)アクリレート基のフリーラジカル反応によるラジカル硬化によって、典型的に、組成物の表面の遅くかつ/又は不十分なフリーラジカル硬化に起因する、湿潤性及び/又は粘着性組成物表面がもたらされる。(メタ)アクリレート基のフリーラジカル重合によって硬化する組成物は、典型的には、酸素が反応を妨害するのを防ぐために、不活性ガスのブランケット又は他の手段を必要とする。
【0004】
UV誘起フリーラジカル重合のための(メタ)アクリレート官能基及び湿気硬化のためのアルコキシシリル官能基の両方を有し、二重硬化組成物中で使用することができ、(メタ)アクリレート基のフリーラジカル重合によって組成物の硬化を促進して、空気中で1平方センチメートル当たり4ジュールのUV光によって硬化させたときに30秒以下、好ましくは20秒以下、より好ましくは15秒以下で乾燥した非粘着性表面をもたらすオルガノポリシロキサンを特定することが望ましい。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、UV誘起フリーラジカル重合のための(メタ)アクリレート官能基及び湿気硬化のためのアルコキシシリル官能基の両方を有し、二重硬化組成物中で使用することができ、(メタ)アクリレート基のフリーラジカル重合によって組成物の硬化を促進して、空気中で1平方センチメートル当たり4ジュールのUV光によって硬化させたときに30秒以下、好ましくは20秒以下、より好ましくは15秒以下で乾燥した非粘着性表面をもたらすオルガノポリシロキサンを提供する。
【0006】
本発明は、50~95モルパーセント(mol%)がアクリレート及びメタクリレート基から選択され、末端官能性の5~50mol%がトリアルコキシシリル基である、末端官能性を含有するクラスターオルガノポリシロキサンを見出した結果である。望ましくは、末端官能基の全てが、アクリレート、メタクリレート及びトリアルコキシシリル基から選択される。驚くべきことに、このクラスターオルガノポリシロキサンをUVフリーラジカル開始剤と組み合わせて含む組成物は、1平方センチメートル当たり4ジュールのUV光に曝露された場合、空気中で30秒以下、更には20秒以下、又は更には15秒以下で硬化して乾燥した非粘着性表面になり、湿気硬化触媒も存在する場合、二重硬化反応性ポリマーとして機能することができる。
【0007】
第1の態様では、本発明は、以下の構造:
【化1】

[式中、
【化2】

及びRは、各出現において独立して、アリール基及び2~6個の炭素を有するアルキル基からなる群から選択され、R’及びR”は、各出現において独立して、2~6個の炭素原子を含む二価炭化水素基から選択され、サンプルの平均n値は、50~200未満の範囲の値であり、Aは、各出現において独立して、アクリレート、メタクリレート及びトリアルコキシシリル基からなる群から選択され、但し、平均して、50~95モルパーセントのA基がアクリレート基及びメタクリレート基から選択され、5~50モルパーセントのA基がトリアルコキシシリル基から選択される]を有するクラスターオルガノポリシロキサンを含む組成物である。
【0008】
組成物は、UVフリーラジカル開始剤を更に含み得、望ましくは更に含み、その上湿気硬化触媒を更に含み得る。ラジカル開始剤及び/又は湿気硬化触媒を含有する場合、組成物は、硬化性組成物である。
【0009】
第2の態様では、本発明は、第1の態様の硬化性組成物を使用する方法であって、組成物を基材の表面に塗布することと、組成物を硬化させて、硬化組成物を含む物品を形成することと、を含む、方法である。
【0010】
第3の態様において、本発明は、基材の表面上に第1の態様の組成物を含む物品である。望ましくは、組成物は、硬化性組成物であり、物品は、硬化状態の組成物を含む。
【発明を実施するための形態】
【0011】
試験方法は、日付が試験方法の番号と共に示されていない場合、本文書の優先日に直近の試験方法を指す。試験方法への言及は、試験の協会及び試験方法番号への参照の両方を含む。以下の試験方法の略語及び識別名が本明細書に適用される:ASTMは米国試験材料協会(American Society for Testing and Materials)を指し、ENは、欧州規格(European Norm)を指し、DINは、ドイツ規格協会(Deutsches Institut fur Normung)を指し、ISOは、国際標準化機構(International Organization for Standards)を指し、ULは、米国保険業者安全試験所(Underwriters Laboratory)を指す。
【0012】
商品名で識別される製品は、本文書の優先日において、それらの商品名で入手可能な組成物を指す。
【0013】
「複数の」とは、2つ以上を意味する。「及び/又は」とは、「及び、又は代替として」を意味する。全ての範囲は、特に指示がない限り、終点を含む。特に明記しない限り、全ての重量パーセント(重量%)値は組成物の重量に対するものであり、全ての体積パーセント(体積%)の値は組成物の体積に対するものである。
【0014】
「アルキル基」とは、1個の水素が、アルキル基が結合している原子への結合で置換されたアルカンを指す。
【0015】
「アクリレート基」とは、以下の構造:-O-C(=O)-CH=CHを有する基を指す。
【0016】
「メタクリレート基」とは、以下の構造:-O-C(=O)-C(CH)=CHを有する基を指す。
【0017】
「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレート又はアクリレートを意味する。
【0018】
「トリアルコキシシリル基」とは、ケイ素原子に結合している水素が、トリアルコキシシリル基が結合している原子への結合で置換されたトリアルコキシシラン(HSi(OR))を指し、-Si(OR)、式中、Rは、酸素に結合しているアルキル基である。
【0019】
ニトリル手袋中で硬化した組成物の表面を指で拭い、組成物のいずれかがニトリル手袋をした指に付着するかどうかを判定することによって、組成物が硬化して乾燥した非粘着性表面を形成したかどうかを評価する。硬化した組成物を拭いた後にニトリル手袋をした指に組成物がある場合には、組成物は乾燥して非粘着性であるとは見なされない。しかし、硬化した組成物を拭いた後にニトリル手袋をした指に組成物がない場合、組成物は乾燥して非粘着性であると見なされる。UV硬化試料の具体的な試験方法は、以下の実施例の項にある。
【0020】
クラスターオルガノポリシロキサン
本発明は、以下の構造(I):
【化3】

[式中、
(a)
【化4】

(b)Rは、各出現において独立して、アリール基及び2~6個の炭素を有するアルキル基からなる群から選択され、好ましくはRはメチルであり、
(c)R’及びR”は、各出現において独立して、2~6個の炭素原子を含有する二価炭化水素基、好ましくは二価直鎖状炭化水素基、より好ましくは2個の炭素原子(-(CH-)又は3個の炭素原子(-(CH-)を含有する二価直鎖状炭化水素基から選択され、
(d)サンプルnの平均n値は、50~200未満の範囲の値であり、50以上、75以上、100以上、110以上、125以上、150以上、更には175以上であり得ると同時に、典型的には、200未満であり、190以下、180以下、170以下、160以下、150以下、125以下、110以下、更には100以下であり得、
(e)Aは、各出現において独立して、アクリレート基、メタクリレート基及びトリアルコキシシリル基からなる群から選択される]を有するクラスターオルガノポリシロキサンを含む(からなり得る)組成物である。平均して、50モルパーセント(mol%)以上、又は55mol%以上、60mol%以上、65mol%以上、70mol%以上、75mol%以上、80mol%以上、85mol%以上、更には90mol%以上の、同時に95mol%以下、又は90mol%以下、85mol%以下、80mol%以下、75mol%以下、70mol%以下、65mol%以下、又は更には60mol%以下のA基が、アクリレート基及びメタクリレート基から選択される。同時に、5mol%以上、場合により10mol%以上、15mol%以上、20mol%、25mol%以上、30mol%以上、35mol%以上、40mol%以上、更には45mol%以上の、同時に50mol%以下、場合により45mol%以下、40mol%以下、35mol%以下、30mol%以下、25mol%以下、20mol%以下、15mol%以下、更には10mol%以下のA基が、トリアルコキシシリル基である。望ましくは、Aがトリアルコキシシリル基である場合、トリアルコキシシリルのアルコキシ基は、メトキシ、エトキシ及びプロポキシ基からなる群から選択される。
【0021】
望ましくは、R’は、-(CH-であり、その上R”は、アクリレート又はメタクリレートであるA基に連結している場合は、-(CH-であり、トリアルコキシシリルであるA基に連結している場合は、-(CH-である。トリアルコキシシリル基のアルコキシ基がメトキシであることが更に望ましい。
【0022】
クラスターオルガノポリシロキサンは、末端基をそれぞれ3つの末端官能基で分離する直鎖状ポリシロキサン鎖を有するダンベル構造である。末端官能基は、前述の濃度範囲のアクリレート基、メタクリレート基及びトリアルコキシシリル基から選択される。驚くべきことに、このクラスターオルガノポリシロキサン及びラジカル開始剤を含有する配合物は、空気中でラジカル硬化を受け、これにより、30秒以下、更には20秒以下、又は更には15秒以下の間、1平方センチメートル当たり4ジュールのUV光曝露下で空気中で硬化された場合に、乾燥した非粘着性表面を得ることができる。
【0023】
クラスターオルガノポリシロキサン中の平均で50mol%未満のA基がアクリレート基及びメタクリレート基から選択される場合、硬化性組成物は、1平方センチメートル当たり4ジュールのUV光曝露下で30秒以下硬化させたときに、乾燥した非粘着性表面に硬化しないことが発見された。
【0024】
クラスターオルガノポリシロキサンがA基としてアクリレート基及び/又はメタクリレート基のみを含有する場合、湿気硬化を受けることができず、これには、A基の一部がトリアルコキシシリル基によって提供されるようなアルコキシシリル官能基を有することが必要である。したがって、クラスターオルガノポリシロキサンの95mol%以上のA基がアクリレート基及びメタクリレート基から選択される場合、クラスターオルガノポリシロキサンは、ラジカル硬化及び湿気硬化の両方による有効な二重硬化を受けない。クラスターオルガノポリシロキサンは、UV硬化性成分及び湿気硬化性成分の両方として機能するために、いくつかのトリアルコキシシリル基を含有する必要がある。
【0025】
クラスターオルガノポリシロキサンは、2工程のヒドロシリル化反応プロセスによって合成することができる。第1の工程(工程1)は、白金触媒及び熱の存在下で、構造(II)を有する直鎖状水素末端ポリオルガノシロキサンと、構造(III)を有するビニル官能化ネオペンタマーの過剰モル濃度とを反応させて、構造(IV)の官能化直鎖状オルガノポリシロキサンを生成することであり、
【化5】

【化6】

【化7】

式中、R、R’及びnは、上記のとおりであり、R’は、R’の末端炭素に隣接する炭素から水素を除去し、その炭素と末端炭素との間に二重結合を形成することによって形成されるR’の一価の末端不飽和前駆体に相当する。例えば、2つの炭素原子を含有するR’のR’はビニル基(-CH=CH)であり、-CHCHCH-であるR’のR’は、以下の構造:-CH-CH=CHを有する基である。
【0026】
第2の工程(工程2)は、構造(IV)の直鎖状オルガノポリシロキサンを含有する工程1の生成物と、構造(V):
【化8】

の分子構造を有する官能化ジシロキサンとを、白金触媒及び熱の存在下で、反応させて、加熱して、本発明のクラスターオルガノポリシロキサンを含む反応生成物を生成することであり、式中、R、R”、及びAは、前述のとおりである。
【0027】
オリゴマー及び副生成物
合成の工程2は、典型的には、構造(IV)の官能化直鎖状オルガノポリシロキサンを単離することなく、2段階合成の工程1に続いて行われる。したがって、過剰のビニル官能化ネオペンタマーは、構造(IV)の直鎖状オルガノポリシロキサンとともに存在し、工程2の間に更に反応して、オリゴマーを形成する。合成の工程2の反応生成物は、オリゴマーとクラスターオルガノポリシロキサンとの合計の重量に対して、最大25重量パーセント(重量%)のオリゴマーを有することが一般的である。実際、多くの場合、工程2の反応生成物は、オリゴマーとクラスターオルガノポリシロキサンの合計に対して、10重量%以上、15重量%以上、更に20重量%以上のオリゴマーを含み、同時に、典型的には、25重量%以下のオリゴマーを含有する。オリゴマーは、以下の分子構造を有する化合物であるか、又はそれを含み得る:
【化9】

式中、R、R”、及びAは、前述のとおりである。
【0028】
反応生成物中のオリゴマーに加えて、又はオリゴマーの代わりに存在し得る副生成物は、構造(IV)のR’基の全てが工程2の反応で消費されない、構造(I)のクラスターオルガノポリシロキサンの形態である。このような副生成物は、構造X’を有するX基を有する:
【化10】

式中、R、R’及びR’は上記のとおりである。典型的には、副生成物は、X基の総モルに基づく平均で5mol%以下、好ましくは4mol%以下、3mol%以下、2mol%以下、1mol%以下を含有し、X’構造を有するX基を含まなくてもよい。同時に、このような副生成物は、典型的には5mol%以下、好ましくは4mol%以下、3mol%以下、2mol%以下、1mol%以下の濃度で存在し、反応生成物に全く存在しなくてもよく、ここでmol%は、反応生成物中の成分のモルに対する相対値である。
【0029】
本発明の組成物は、クラスターオルガノポリシロキサン及び存在し得る任意のオリゴマー及び/又は副生成物を含む、クラスターオルガノポリシロキサンを作製するための2工程反応の反応生成物であり得るか、又はそれを含み得る。
【0030】
硬化性組成物
本発明の組成物は、クラスターオルガノポリシロキサン及び他の成分に加えて、紫外(UV)光活性化フリーラジカル開始剤を含む硬化性組成物であり得る。好適な紫外線活性化開始剤の例としては、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ジエトキシキサントン、クロロ-チオキサントン、アゾビスイソブチロニトリル、N-メチルジエタノールアミンベンゾフェノン4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキシド、及びこれらの組み合わせが挙げられる。UV光活性化開始剤が存在する場合、それは、典型的には、組成物の重量に基づいて、0.1重量%以上、更には1重量%以上、同時に典型的には、10重量%以下、又は更に3重量%以下の濃度で存在する。
【0031】
本発明のUV硬化性組成物は、驚くべきことに、空気中で1平方センチメートル当たり4ジュールのUV光に曝露されると、30秒以下、又は更に20秒以下、又は更に15秒以下で空気中で硬化して、乾燥した非粘着性表面を形成する。
【0032】
硬化性組成物は、湿気硬化触媒を更に含んで、二重硬化組成物を形成し得る。湿気硬化触媒は、クラスターオルガノポリシロキサン上のアルコキシシリル基の湿気誘導硬化を促進し、これは、UV光誘導硬化に加えて起こり得る。好適な湿気硬化触媒としては、チタン(IV)イソプロポキシド、チタン(IV)n-ブトキシド、チタン(IV)t-ブトキシド、チタン(IV)、チタンジ(イソプロポキシ)ビス(エチルアセトアセテート)、チタンジ(イソプロポキシ)ビス(メチルアセトアセテート)、チタンジ(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウム(IV)イソプロポキシド、ジルコニウム(IV)n-ブトキシド、ジルコニウム(IV)t-ブトキシド、ジルコニウムジ(イソプロポキシ)ビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムジ(イソプロポキシ)ビス(メチルアセトアセテート)、ジルコニウムジ(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセトネート、ジメチルスズジネオデカノエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクトエート、及びオクタン酸第一スズ、並びにこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0033】
硬化性組成物の使用方法
本発明の硬化性組成物は、接着剤、シーラントとして、又はコーティングとして、を含む多くの異なる用途において使用され得る。そのような用途では、組成物の使用は、組成物を基材に塗布し、次いで、組成物を硬化させて、基材上に硬化した組成物を有する物品を形成する工程を含む。例えば、本方法は、硬化性組成物を基材に塗布し、基材上の組成物をUV光に曝露することを含み得る。
【0034】
任意選択成分
本発明の組成物は、任意選択で、2つ以上の任意選択成分のうちのいずれか1つ又はその組み合わせを含んでも含まなくてもよい。すなわち、組成物は、任意のカテゴリーの任意選択成分を含んでも含まなくてもよく、又は任意選択成分のカテゴリー内に入る任意の特定の材料を含んでも含まなくてもよい。任意選択成分のカテゴリーには、アルケニル官能性アルコキシ非含有オルガノポリシロキサン、(ii)アルキルトリアルコキシシラン、(iii)ラジカル捕捉剤、及び(iv)充填剤が含まれる。
【0035】
アルケニル官能性アルコキシ非含有オルガノポリシロキサンは、UV光誘発ラジカル硬化反応を加速させ、硬化した組成物の最終的な機械的特性を調整するために、組成物において望ましい場合がある。例えば、アルケニル(ビニルなど)で末端キャップされた長鎖ポリジメチルシロキサンなどの、長鎖アルケニル官能性アルコキシ非含有オルガノポリシロキサンを含めることによって、最終硬化組成物の破断点伸びが増大し得る。アルケニル官能性アルコキシ非含有オルガノポリシロキサンの例としては、一端又は両端がビニルなどのアルケニルでキャップされたポリジメチルシロキサンが挙げられる。アルケニル官能性アルコキシ非含有オルガノポリシロキサンは、0重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、更には15重量%以上の濃度で存在し得ると同時に、典型的には、50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、更には10重量%以下の濃度で存在し、重量%は、組成物重量に対するものである。
【0036】
アルキルトリアルコキシシランは、架橋剤として組成物中で望ましい場合がある。架橋剤は、硬化後の組成物を強化、強靭化、及び/又はより剛性にすることができる。好適なアルキルトリアルコキシシランの例としては、1~6個の炭素原子を有するアルキル基及び1~6個の炭素原子を有するアルコキシ基を有するものが挙げられる。好適なアルキルトリアルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリエトキシシラン、及びエチルトリプロポキシシランが挙げられる。アルキルトリアルコキシシランは、0重量%以上、0.1重量%以上、0.5重量%以上、1.0重量%以上、2.0重量%以上、更には5.0重量%以上の濃度で存在し得ると同時に、典型的には、10重量%以下、8重量%以下、5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、又は更には1.0重量%以下の濃度で存在し、重量%は、組成物重量に対するものである。
【0037】
ラジカル捕捉剤は、組成物の貯蔵寿命を向上させるのに望ましい場合がある。好適なラジカル捕捉剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(butylated hydroxytoluene、BHT)、4-メトキシフェノール、tert-ブチルヒドロキノン、6-tert-ブチル-2,4-キシレノール、2-tert-ブチル-1,4-ベンゾキノン、4-tert-ブチルピロカテコール、及び2,6-ジ-tert-ブチルフェノールのうちのいずれか1つ、又はこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。ラジカル捕捉剤は、0重量%以上、0.1重量%以上、0.5重量%以上、1.0重量%以上、更には2.0重量%以上の濃度で存在し得ると同時に、典型的には、3.0重量%以下、2.0重量%以下、又は更には1.0重量%以下の濃度で存在し、重量%は、組成物重量に対するものである。
【0038】
充填剤は、組成物のレオロジ特性を変性するため、及び/又は硬化後の組成物の機械的特性を変性するために、組成物中で望ましい場合がある。好適な充填剤の例としては、ヒュームドシリカなどのシリカ、及び石英が挙げられる。充填剤は、0重量%以上、1重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、更には20重量%以上の濃度で存在し得ると同時に、典型的には、30重量%以下、20重量%以下、10重量%以下、又は更には5重量%以下の濃度で存在し、重量%は、組成物重量に対するものである。
【実施例
【0039】
表1は、以下の実施例(Exs)及び比較例(Comp Exs)において使用される成分を列挙する。「Vi」は、ビニル基(-CH=CH)を指す。
【表1】

【0040】
ポリオルガノシロキサンクラスターポリマー(「CP」)の合成
CP1:90%メタクリレート/10%エチレントリメトキシシリル官能化末端基。250mLの三つ口丸底フラスコに撹拌棒を取り付ける。フラスコに59.1gのSiH末端シロキサン1及び13.0gのテトラキス-ジメチルビニルシロキシシランを加える。溶液を撹拌し、60℃に加熱する。加熱した溶液に0.04gのKarstedt触媒を加え、1時間撹拌を続ける。0.03gのブチル化ヒドロキシトルエンを添加し、続いて3.0gのETMコンバータを滴下し、次いで更に0.04gのKarstedt触媒を添加する。24.9gのメタクリレートコンバータをゆっくりと添加し、これは温度上昇を伴う。組成物を23~25℃に冷却して、クラスターポリマーCP1及びオリゴマーを含むCP1生成混合物を得る。
【0041】
CP1は、構造(I)[式中、下付き文字nは120であり、各Rはメチルであり、各R’は-(CH-であり、平均して90mol%のA基はメタクリレートであり、関連するR’’は-(CH-であり、10mol%のA基はトリメトキシシリル基であり、関連するR”は-(CH-である]の構造を有する。CP1生成混合物はオリゴマーを更に含み、その主成分は以下の構造:Si(-OSiR-R’-SiROSi(R)-R’’-A)[式中、R、R’、R’’及びAはCP1について記載したとおりである]を有する。CP1生成混合物は、約12.8重量%のオリゴマーであり、オリゴマーとCP1とのモル比は約2.2:1である。
【0042】
CP1は、トリメトキシシリル(湿気硬化性)及びメタクリレート(UV硬化性)官能基の存在により、二重硬化が可能である。
【0043】
CP2:70%メタクリレート/30%エチレントリメトキシシリル官能化末端基。250mLの三つ口丸底フラスコに撹拌棒を取り付ける。フラスコに58.8gのSiH末端シロキサン1及び12.9gのテトラキス-ジメチルビニルシロキシシランを加える。溶液を撹拌し、60℃に加熱する。加熱した溶液に0.04gのKarstedt触媒を加え、1時間撹拌を続ける。0.03gのブチル化ヒドロキシトルエンを添加し、続いて9.0gのETMコンバータを滴下し、次いで更に0.04gのKarstedt触媒を添加する。19.3gのメタクリレートコンバータをゆっくりと添加し、これは温度上昇を伴う。組成物を23~25℃に冷却して、クラスターポリマーCP2及びオリゴマーを含むCP2生成混合物を得る。
【0044】
CP2は、構造(I)[式中、下付き文字nは120であり、各Rはメチルであり、各R’は-(CH-であり、平均して70mol%のA基はメタクリレートであり、関連するR’’は-(CH-であり、30mol%のA基はトリメトキシシリル基であり、関連するR’’は-(CH-である]の構造を有する。CP2生成混合物はオリゴマーを更に含み、その主成分は以下の構造:Si(-OSiR-R’-SiROSi(R)-R”-A)[式中、R、R’、R”及びAはCP2について記載したとおりである]を有する。CP2生成混合物は、約12.8重量%のオリゴマーであり、オリゴマーとCP2とのモル比は約2.2:1である。
【0045】
CP2は、トリメトキシシリル(湿気硬化性)及びメタクリレート(UV硬化性)官能基の存在により、二重硬化が可能である。
【0046】
CP3:50%メタクリレート/50%エチレントリメトキシシリル官能化末端基。250mLの三つ口丸底フラスコに撹拌棒を取り付ける。フラスコに58.5gのSiH末端シロキサン1及び12.9gのテトラキス-ジメチルビニルシロキシシランを加える。溶液を撹拌し、60℃に加熱する。加熱した溶液に0.04gのKarstedt触媒を加え、1時間撹拌を続ける。0.03gのブチル化ヒドロキシトルエンを添加し、続いて14.9gのETMコンバータを滴下し、次いで更に0.04gのKarstedt触媒を添加する。13.7gのメタクリレートコンバータをゆっくりと添加し、これは温度上昇を伴う。組成物を23~25℃に冷却して、クラスターポリマーCP3及びオリゴマーを含むCP3生成混合物を得る。
【0047】
CP3は、構造(I)[式中、下付き文字nは120であり、各Rはメチルであり、各R’は-(CH-であり、平均して90mol%のA基はメタクリレートであり、関連するR’’は-(CH-であり、10mol%のA基はトリメトキシシリル基であり、関連するR”は-(CH-である]の構造を有する。CP3生成混合物はオリゴマーを更に含み、その主成分は以下の構造:Si(-OSiR-R’-SiROSi(R)-R”-A)[式中、R、R’、R”及びAはCP3について記載したとおりである]を有する。CP3生成混合物は、約12.8重量%のオリゴマーであり、オリゴマーとCP3とのモル比は約2.1:1である。
【0048】
CP3は、トリメトキシシリル(湿気硬化性)及びメタクリレート(UV硬化性)官能基の存在により、二重硬化が可能である。
【0049】
CP4:30%メタクリレート/70%エチレントリメトキシシリル官能化末端基。250mLの三つ口丸底フラスコに撹拌棒を取り付ける。フラスコに58.3gのSiH末端シロキサン1及び12.8gのテトラキス-ジメチルビニルシロキシシランを加える。溶液を撹拌し、60℃に加熱する。加熱した溶液に0.04gのKarstedt触媒を加え、1時間撹拌を続ける。0.03gのブチル化ヒドロキシトルエンを添加し、続いて20.7gのETMコンバータを滴下し、次いで更に0.04gのKarstedt触媒を添加する。8.2gのメタクリレートコンバータをゆっくりと添加し、これは温度上昇を伴う。組成物を23~25℃に冷却して、クラスターポリマーCP4及びオリゴマーを含むCP4生成混合物を得る。
【0050】
CP4は、構造(I)[式中、下付き文字nは120であり、各Rはメチルであり、各R’は-(CH-であり、平均して30mol%のA基はメタクリレートであり、関連するR’’は-(CH-であり、70mol%のA基はトリメトキシシリル基であり、関連するR”は-(CH-である]の構造を有する。CP4生成混合物はオリゴマーを更に含み、その主成分は以下の構造:Si(-OSiR-R’-SiROSi(R)-R”-A)[式中、R、R’、R”及びAはCP4について記載したとおりである]を有する。CP4生成混合物は、約12.8重量%のオリゴマーであり、オリゴマーとCP4とのモル比は約2.1:1である。
【0051】
以下のデータに示されるように、CP4は、所望のUV硬化を受けるのに十分なメタクリレート基を含有していない。
【0052】
CP5:10%メタクリレート/90%エチレントリメトキシシリル官能化末端基。250mLの三つ口丸底フラスコに撹拌棒を取り付ける。フラスコに58.0gのSiH末端シロキサン1及び12.7gのテトラキス-ジメチルビニルシロキシシランを加える。溶液を撹拌し、60℃に加熱する。加熱した溶液に0.04gのKarstedt触媒を加え、1時間撹拌を続ける。0.03gのブチル化ヒドロキシトルエンを添加し、続いて26.6gのETMコンバータを滴下し、次いで更に0.04gのKarstedt触媒を添加する。2.7gのメタクリレートコンバータをゆっくりと添加し、これは温度上昇を伴う。組成物を23~25℃に冷却して、クラスターポリマーCP5及びオリゴマーを含むCP5生成混合物を得る。
【0053】
CP5は、構造(I)[式中、下付き文字nは120であり、各Rはメチルであり、各R’は-(CH-であり、平均して10mol%のA基はメタクリレートであり、関連するR”は-(CH-であり、90mol%のA基はトリメトキシシリル基であり、関連するR”は-(CH-である]の構造を有する。CP5生成混合物はオリゴマーを更に含み、その主成分は以下の構造:Si(-OSiR-R’-SiROSi(R)-R”-A)[式中、R、R’、R”及びAはCP8について記載したとおりである]を有する。CP5生成混合物は、約12.8重量%のオリゴマーであり、オリゴマーとCP5とのモル比は約2.1:1である。
【0054】
以下のデータに示されるように、CP5は、所望のUV硬化を受けるのに十分なメタクリレート基を含有していない。
【0055】
直鎖状ポリオルガノシロキサン(LP)の合成
LP1:90%メタクリレート/10%エチレントリメトキシシリル官能化末端基。250mLの三つ口丸底フラスコに撹拌棒を取り付ける。フラスコに96.4gのビニル末端シロキサン2及び0.4gのETMコンバータを加える。次いで、0.03gのKarstedt触媒を添加し、60℃に加熱し、10分間撹拌する。加熱した溶液に3.59gのメタクリレートコンバータを加え、更に20分間撹拌する。組成物を23~25℃に冷却してLP1を得る。LP1の平均分子構造は以下とおりである:
【化11】

式中、平均して、90mol%のB基はメタクリレート基であり、10mol%のB基はエチレントリメトキシシリル基である。
【0056】
UV硬化性配合物
以下の手順を使用して、ポリシロキサンCP1~CP5及びLP1のそれぞれについて1つの組成物で、UV硬化性組成物を調製する。
【0057】
50mLの歯科用カップに、20gのポリシロキサンの1つ及び0.4gの2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(Sigma AldrichからDarocur 1173の名称で市販されている)を添加する。歯科用ミキサー中、2000回転/分で45秒間混合する。この混合物に、0.2gの市販のトリメトキシ(メチル)シラン(The Dow Chemical CompanyからDOWSIL(商標)SX 6070シランとして入手可能、DOWSILはThe Dow Chemical Companyの商標である)を添加する。歯科用ミキサー中、2000回転/分で45秒間混合する。0.06gのチタンジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)(「TDIDE」)を添加し、再び歯科用ミキサー内で2000回転/分で45秒間混合する。試料を30立方センチメートルのシリンジに入れ、気泡を先端まで上昇させ、空気を排出することによって試料から空気を除去し、その後すぐに蓋をする。
【0058】
以下の硬化表面湿潤性評価手順を用いて、各UV硬化性配合物が硬化に伴う表面湿潤性に対してどの程度迅速に機能するかを評価する。ドローダウンバーを使用してポリテトラフルオロエチレンシート上に各試料の0.889ミリメートル(35mil)厚のフィルムを調製する。コーティングされたポリテトラフルオロエチレンシートをColight UV-6オーブンのコンベヤベルト上に置くことにより、UV光でフィルムを硬化させ、1平方センチメートル当たり300ミリワットの強度のUV光で、1平方センチメートル当たり4ジュールの光を試料フィルムに照射する(照射時間13.3秒に相当)。その直後に、フィルムの表面をニトリル手袋でコーティングされた指と接触させ、ニトリル手袋でコーティングされた指をフィルム上で拭くことによって、表面湿潤性/粘着性を評価する。試料材料がニトリル手袋でコーティングされた指に転写さる場合、フィルムは湿潤/粘着性である(不合格)と見なされる。試料がニトリルコーティングされた指に転写されない場合、フィルムは乾燥/非粘着性(合格)であると見なされる。転写はないが、フィルムが粘着性である場合、フィルムは「かろうじて要件を満たす」である。
【0059】
表2は、UV硬化性配合物の硬化表面湿潤性評価の結果を示す。ポリシロキサンの下の比は、メタクリレートのエチレントリメトキシシリルエンドキャッピングに対するモル比を示す。
【0060】
表2はまた、湿気硬化によって表面が乾燥して非粘着性になるまでどれだけの時間がかかったかを評価するために、フィルムをUV光曝露にかけるのではなく、相対湿度40~50%の暗所に置いた試料の硬化表面湿潤性評価を示す。試料が乾燥した非粘着性表面を形成するのに要した時間を表2に示す。
【表2】
【0061】
表2のデータは、メタクリレートがエンドキャッピング官能基の少なくとも50mol%を占めている限り、クラスターオルガノポリシロキサンが、空気中で1平方センチメートル当たり4ジュールのUV曝露下で約13.3秒で、乾燥/非粘着性表面にUV硬化することを明らかにする。データはまた、90mol%のエンドキャッピング官能基がメタクリレートである場合であっても、直鎖状ポリシロキサンは、同じUV硬化条件下で乾燥/非粘着性表面に硬化しないことを明らかにする。したがって、本発明のクラスターオルガノポリシロキサンは、直鎖状ポリシロキサンよりも迅速に乾燥/非粘着性表面にUV硬化する。特に、直鎖状ポリシロキサンは、1平方センチメートル当たり12ジュールのUV曝露(40秒間、1平方センチメートル当たり0.300ワットの曝露)の後でも湿った表面を有していた。
【0062】
メトキシ末端基の存在により、クラスターオルガノポリシロキサンは湿気硬化性でもある。これは、周囲湿気硬化湿潤性評価の結果から明らかであり、この結果は、存在するメトキシ基が多いほど、湿気硬化が速くなり、乾燥した非粘着性表面が得られることを示す。