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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】差動式移動装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 17/00 20060101AFI20240214BHJP
   B65G 15/28 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B25J17/00 G
B65G15/28
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023546099
(86)(22)【出願日】2023-07-24
(86)【国際出願番号】 JP2023026938
【審査請求日】2023-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2023064192
(32)【優先日】2023-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183276
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 裕三
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼本 力
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-94937(JP,A)
【文献】特開2011-240444(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0136886(US,A1)
【文献】実開昭58-58134(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
B65G 9/00-11/26
B65G 17/00-17/26
F16H 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状の経路を構成する無端部材であって、内側に配置される第1経路部と、外側に配置される第2経路部と、前記第1経路部と前記第2経路部を接続する接続経路部とを有する、無端部材と、
前記第1経路部に連結される第1駆動ローラと、
前記第2経路部に連結される第2駆動ローラと、
前記第1駆動ローラを回転駆動させる第1駆動モータと、
前記第2駆動ローラを回転駆動させる第2駆動モータと、
前記第1駆動モータおよび前記第2駆動モータを制御する制御部と、
前記接続経路部に連結され、前記第1経路部および前記第2経路部の動きに伴って第1軸方向に沿って直線移動および/又は回転する動滑車と、前記動滑車の直線移動に伴って前記第1軸方向に沿って移動する第1移動部材と、前記第1移動部材に保持され、前記動滑車の回転に伴って移動する第2移動部材とを有する、動滑車ユニットと、を備える、
差動式移動装置。
【請求項2】
前記第2移動部材は、前記動滑車の回転に伴って第2軸方向に沿って直線移動する、
請求項1に記載の差動式移動装置。
【請求項3】
前記第1軸方向と前記第2軸方向は、互いに交差する方向に延びる、
請求項2に記載の差動式移動装置。
【請求項4】
前記第1軸方向と前記第2軸方向は、互いに平行な方向に延びる、
請求項2に記載の差動式移動装置。
【請求項5】
前記第2移動部材は、前記動滑車の回転に伴って回転移動する、
請求項1に記載の差動式移動装置。
【請求項6】
前記第2移動部材は、前記動滑車の回転に伴って回転するベルトを有したベルトコンベアである、
請求項5に記載の差動式移動装置。
【請求項7】
前記接続経路部は、前記第1経路部の第1端と前記第2経路部の第1端を接続する第1接続経路部と、前記第1経路部の第2端と前記第2経路部の第2端を接続する第2接続経路部とを有し、
前記動滑車は、前記第1接続経路部に連結される第1動滑車と、前記第2接続経路部に連結される第2動滑車とを有し、
前記第1動滑車および前記第2動滑車は、前記第1軸方向に沿って一体的に移動する、
請求項1に記載の差動式移動装置。
【請求項8】
前記第2移動部材は、前記第1動滑車又は前記第2動滑車のいずれか一方に係合する、
請求項7に記載の差動式移動装置。
【請求項9】
前記第1駆動ローラおよび前記第2駆動ローラをそれぞれ回転可能な状態で支持する支持部材をさらに備える、
請求項1に記載の差動式移動装置。
【請求項10】
前記支持部材は、前記第1移動部材の前記第1軸方向に沿った移動をガイドする第1ガイド部を備える、
請求項9に記載の差動式移動装置。
【請求項11】
前記第1移動部材は、前記第2移動部材の移動をガイドする第2ガイド部を備える、
請求項10に記載の差動式移動装置。
【請求項12】
前記第1駆動ローラは、前記第1経路部の内側に配置され、
前記第2駆動ローラは、前記第2経路部の内側に配置される、
請求項1に記載の差動式移動装置。
【請求項13】
前記無端部材は、前記第1駆動ローラが連結される第1主面と、前記第2駆動ローラが連結される第2主面とを有する、
請求項1に記載の差動式移動装置。
【請求項14】
前記第1駆動ローラおよび前記第2駆動ローラは、前記動滑車ユニットに対して一方側に配置される、
請求項1に記載の差動式移動装置。
【請求項15】
前記第1駆動ローラは、前記動滑車ユニットに対して一方側に配置され、
前記第2駆動ローラは、前記動滑車ユニットに対して他方側に配置される、
請求項1に記載の差動式移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、差動式移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、差動式移動装置として、ベルトやローラを保持するためのフレームとしてH型フレームを用いたものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭58-59777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、H型フレームを用いることで、移動装置が大型化しやすいという課題がある。
【0005】
従って、本開示の目的は、前記課題を解決することにあって、小型化を実現することができる差動式移動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本開示の差動式移動装置は、無端状の経路を構成する無端部材であって、内側に配置される第1経路部と、外側に配置される第2経路部と、前記第1経路部と前記第2経路部を接続する接続経路部とを有する、無端部材と、前記第1経路部に連結される第1駆動ローラと、前記第2経路部に連結される第2駆動ローラと、前記第1駆動ローラを回転駆動させる第1駆動モータと、前記第2駆動ローラを回転駆動させる第2駆動モータと、前記第1駆動モータおよび前記第2駆動モータを制御する制御部と、前記接続経路部に連結され、前記第1経路部および前記第2経路部の動きに伴って第1軸方向に沿って直線移動および/又は回転する動滑車と、前記動滑車の直線移動に伴って前記第1軸方向に沿って移動する第1移動部材と、前記第1移動部材に保持され、前記動滑車の回転に伴って移動する第2移動部材とを有する、動滑車ユニットと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、小型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1に係る差動式移動装置の斜視図
図2】実施形態1に係る差動式移動装置の斜視図
図3】実施形態1に係る差動式移動装置の斜視図(第1移動ブロックを点線表示)
図4】実施形態1に係る差動式移動装置の斜視図(第1移動ブロックを点線表示)
図5】実施形態1に係る第1移動ブロックの斜視図
図6】実施形態1に係る第1移動ブロックの斜視図
図7】実施形態1に係る第1移動ブロックの側面図
図8】実施形態1に係る第1移動ブロックの側面図
図9A】実施形態1に係る差動式移動装置の動作を説明するための模式的な正面図
図9B】実施形態1に係る差動式移動装置の動作を説明するための模式的な正面図
図9C】実施形態1に係る差動式移動装置の動作を説明するための模式的な正面図
図9D】実施形態1に係る差動式移動装置の動作を説明するための模式的な正面図
図10】実施形態1に係る差動式移動装置の概略正面図
図11】変形例1に係る差動式移動装置の概略正面図
図12】変形例2に係る差動式移動装置の概略正面図
図13】変形例3に係る差動式移動装置の概略正面図
図14】変形例4に係る差動式移動装置の概略正面図
図15図14に示す差動式移動装置の概略底面図
図16】変形例5に係る差動式移動装置の概略正面図
図17図16に示す差動式移動装置の概略底面図
図18】変形例6に係る差動式移動装置の概略正面図
図19】実施形態2に係る差動式移動装置の正面図
図20】実施形態2に係る差動式移動装置の斜視図
図21】実施形態3に係る差動式移動装置の斜視図
図22】実施形態4に係る差動式移動装置の斜視図
図23】実施形態4に係る差動式移動装置の斜視図
図24図22の差動式移動装置をI-I断面で切り欠いた斜視図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の第1態様によれば、無端状の経路を構成する無端部材であって、内側に配置される第1経路部と、外側に配置される第2経路部と、前記第1経路部と前記第2経路部を接続する接続経路部とを有する、無端部材と、前記第1経路部に連結される第1駆動ローラと、前記第2経路部に連結される第2駆動ローラと、前記第1駆動ローラを回転駆動させる第1駆動モータと、前記第2駆動ローラを回転駆動させる第2駆動モータと、前記第1駆動モータおよび前記第2駆動モータを制御する制御部と、前記接続経路部に連結され、前記第1経路部および前記第2経路部の動きに伴って第1軸方向に沿って直線移動および/又は回転する動滑車と、前記動滑車の直線移動に伴って前記第1軸方向に沿って移動する第1移動部材と、前記第1移動部材に保持され、前記動滑車の回転に伴って移動する第2移動部材とを有する、動滑車ユニットと、を備える、差動式移動装置を提供する。
【0010】
本開示の第2態様によれば、前記第2移動部材は、前記動滑車の回転に伴って第2軸方向に沿って直線移動する、第1態様に記載の差動式移動装置を提供する。
【0011】
本開示の第3態様によれば、前記第1軸方向と前記第2軸方向は、互いに交差する方向に延びる、第2態様に記載の差動式移動装置を提供する。
【0012】
本開示の第4態様によれば、前記第1軸方向と前記第2軸方向は、互いに平行な方向に延びる、第2態様に記載の差動式移動装置を提供する。
【0013】
本開示の第5態様によれば、前記第2移動部材は、前記動滑車の回転に伴って回転移動する、第1態様に記載の差動式移動装置を提供する。
【0014】
本開示の第6態様によれば、前記第2移動部材は、前記動滑車の回転に伴って回転するベルトを有したベルトコンベアである、第5態様に記載の差動式移動装置を提供する。
【0015】
本開示の第7態様によれば、前記接続経路部は、前記第1経路部の第1端と前記第2経路部の第1端を接続する第1接続経路部と、前記第1経路部の第2端と前記第2経路部の第2端を接続する第2接続経路部とを有し、前記動滑車は、前記第1接続経路部に連結される第1動滑車と、前記第2接続経路部に連結される第2動滑車とを有し、前記第1動滑車および前記第2動滑車は、前記第1軸方向に沿って一体的に移動する、第1態様から第6態様のいずれか1つに記載の差動式移動装置を提供する。
【0016】
本開示の第8態様によれば、前記第2移動部材は、前記第1動滑車又は前記第2動滑車のいずれか一方に係合する、第7態様に記載の差動式移動装置を提供する。
【0017】
本開示の第9態様によれば、前記第1駆動ローラおよび前記第2駆動ローラをそれぞれ回転可能な状態で支持する支持部材をさらに備える、第1態様から第8態様のいずれか1つに記載の差動式移動装置を提供する。
【0018】
本開示の第10態様によれば、前記支持部材は、前記第1移動部材の前記第1軸方向に沿った移動をガイドする第1ガイド部を備える、第9態様に記載の差動式移動装置を提供する。
【0019】
本開示の第11態様によれば、前記第1移動部材は、前記第2移動部材の前記第2軸方向に沿った移動をガイドする第2ガイド部を備える、第10態様に記載の差動式移動装置を提供する。
【0020】
本開示の第12態様によれば、前記第1駆動ローラは、前記第1経路部の内側に配置され、前記第2駆動ローラは、前記第2経路部の内側に配置される、第1態様から第11態様のいずれか1つに記載の差動式移動装置を提供する。
【0021】
本開示の第13態様によれば、前記無端部材は、前記第1駆動ローラが連結される第1主面と、前記第2駆動ローラが連結される第2主面とを有する、第1態様から第12態様のいずれか1つに記載の差動式移動装置を提供する。
【0022】
本開示の第14態様によれば、前記第1駆動ローラおよび前記第2駆動ローラは、前記動滑車ユニットに対して一方側に配置される、第1態様から第13態様のいずれか1つに記載の差動式移動装置を提供する。
【0023】
本開示の第15態様によれば、前記第1駆動ローラは、前記動滑車ユニットに対して一方側に配置され、前記第2駆動ローラは、前記動滑車ユニットに対して他方側に配置される、第1態様から第14態様のいずれか1つに記載の差動式移動装置を提供する。
【0024】
本開示の第16態様によれば、前記第1経路部に連結される第1従動ローラと、前記第2経路部に連結される第2従動ローラと、を備える、第1態様から第15態様のいずれか1つに記載の差動式移動装置を提供する。
【0025】
本開示の第17態様によれば、前記第1駆動ローラおよび前記第1従動ローラは、前記第1経路部の内側に配置され、前記第2駆動ローラおよび前記第2従動ローラは、前記第2経路部の内側に配置される、第16態様に記載の差動式移動装置を提供する。
【0026】
本開示の第18態様によれば、前記無端部材は、ベルト、チェーン、ワイヤ、ケーブル、ロープ、糸のうちの少なくとも1つである、第1態様から第17態様のいずれか1つに記載の差動式移動装置を提供する。
【0027】
以下、本開示に係る差動式移動装置の例示的な実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。本開示は、以下の実施形態の具体的な構成に限定されるものではなく、同様の技術的思想に基づく構成が本開示に含まれる。
【0028】
(実施形態1)
まず、図1図10を参照して、本開示の実施形態1に係る差動式移動装置について説明する。
【0029】
図1図2は、実施形態1に係る差動式移動装置2の斜視図である。
【0030】
図1図2に示す差動式移動装置2は、差動式の移動装置(差動装置)であって、後述する動滑車ユニット18が2軸に沿って移動することで、差動式2軸ロボットとして機能する。実施形態1の差動式移動装置2は、互いに直交するX方向とY方向に移動可能な2軸直交ロボットであり、X方向とY方向の両方に直交するZ方向には移動する機能を有しない。
【0031】
差動式移動装置2は2軸直交ロボットに限らず、その他の各種用途に利用することができる。例えば、立体倉庫、エレベータ、荷役装置、産業機器、建設機械、港湾機器、農業機械、加工機、プロッタ、航空宇宙機器、耐放射線機器、耐低温機器、医療機器に利用してもよい。
【0032】
図1図2に示す差動式移動装置2は、駆動索としての無端部材4と、第1駆動ローラ6と、第2駆動ローラ8と、第1従動ローラ10と、第2従動ローラ12と、第1駆動モータ14と、第2駆動モータ16と、支持ブロック17と、動滑車ユニット18と、制御部70と、を備える。
【0033】
無端部材4は、無端状の経路(循環経路)を構成する部材であり、駆動ローラ6、8によって駆動される駆動索である。無端部材4は、駆動ローラ6、8が駆動可能に係合するものであれば、任意の種類の部材を用いてもよく、例えば、ベルト、チェーン、ワイヤ、ケーブル、ロープ、糸を用いてもよい。
【0034】
実施形態1の無端部材4は、2つの主面がともに駆動ローラに係合可能な部材(例えば両面ベルトやチェーン等)が用いられる。無端部材4の第1主面に第1駆動ローラ6が係合し、無端部材4の第2主面に第2駆動ローラ8が係合する。
【0035】
無端部材4は、第1経路部20と、第2経路部22とを備える。第1経路部20は、第2経路部22に対して内側に配置される部分であり、第2経路部22は、第1経路部20に対して外側に配置される部分である。第1経路部20を「内ループ」と称し、第2経路部22を「外ループ」と称してもよい。
【0036】
第1駆動ローラ6および第2駆動ローラ8はそれぞれ、無端部材4を回転させるためのローラである。第1駆動ローラ6は、無端部材4の第1経路部20に連結されており、第2駆動ローラ8は、無端部材4の第2経路部22に連結されている。
【0037】
第1駆動ローラ6は、第1回転軸Ax1(図1)を中心として回転するように、第1駆動モータ14によって回転駆動される。第2駆動ローラ8は、第2回転軸Ax2を中心として回転するように、第2駆動モータ16によって回転駆動される。
【0038】
実施形態1では、駆動モータ14、16はそれぞれ、ベルト等の間接部材を介さずに駆動ローラ6、8に直結されている。
【0039】
第1従動ローラ10および第2従動ローラ12はそれぞれ、無端部材4の移動に伴って従動的に回転するローラである。第1従動ローラ10は、第1経路部20に連結され、第2従動ローラ12は、第2経路部22に連結される。
【0040】
支持ブロック17は、差動式移動装置2の各構成要素を支持するブロック状の支持部材である。支持ブロック17は、第1駆動ローラ6、第2駆動ローラ8、第1従動ローラ10、第2従動ローラ12、第1駆動モータ14および第2駆動モータ16をそれぞれ動作可能な状態で支持する。無端部材4と動滑車ユニット18は、支持ブロック17によって間接的に支持される。
【0041】
支持ブロック17はさらに、動滑車ユニット18のスライド移動をガイドするための第1ガイド部40を備える。第1ガイド部40は、第1軸方向X1に沿って延びており、動滑車ユニット18の第1軸方向X1に沿ったスライド移動をガイドする。
【0042】
動滑車ユニット18は、無端部材4の移動に伴って直線移動および/又は回転する動滑車を有したユニットである。動滑車ユニット18は、「移動キャリッジ」とも称する。
【0043】
動滑車ユニット18は、第1移動ブロック24と、第2移動ブロック26とを有する。
【0044】
第1移動ブロック24は、支持ブロック17に対して相対的に移動可能なブロック状の移動部材であり、前述した第1ガイド部40に係合して、X方向に延びる第1軸方向X1に沿ってスライド移動する。
【0045】
第2移動ブロック26は、第1移動ブロック24に対して相対的に移動可能なブロック状の移動部材であり、Y方向に延びる第2軸方向Y1に沿ってスライド移動可能な状態で第1移動ブロック24に保持されている。
【0046】
実施形態1では、第1軸方向X1と第2軸方向Y1は、互いに直交する。
【0047】
図3図4はそれぞれ、動滑車ユニット18の第1移動ブロック24を点線で示した斜視図、正面図である。図5図6はそれぞれ、第1移動ブロック24の斜視図であり、図7図8はそれぞれ、第1移動ブロック24の側面図である。図7図8では、第1移動ブロック24の内部構造を視認できるように一部の部材の図示を省略している。
【0048】
図3図4に示すように、動滑車ユニット18は、無端部材4に連結される動滑車として、第1動滑車28と、第2動滑車30とを有する。
【0049】
第1動滑車28は、第1経路部20の第1端と第2経路部22の第1端を接続する第1接続経路部32に連結される動滑車である。第2動滑車30は、第1経路部20の第2端と第2経路部22の第2端を接続する第2接続経路部34に連結される動滑車である。
【0050】
無端部材4は、第1経路部20、第2経路部22、第1接続経路部32および第2接続経路部34によって無端状の循環経路を構成する。
【0051】
第1動滑車28および第2動滑車30は、第1移動ブロック24によって回転可能な状態で一体的に保持されている。
【0052】
図3図4図6に示すように、第1移動ブロック24は、第1スライダー36を有する。第1スライダー36は、前述した支持ブロック17の第1ガイド部40に係合する部分であり、第1スライダー36がガイド部40に沿って移動することで、第1移動ブロック24が第1軸方向X1に沿ってスライド移動する。
【0053】
第1移動ブロック24はさらに、第2ガイド部41を有する。第2ガイド部41は、第2移動ブロック26による第2軸方向Y1のスライド移動をガイドするための部分である。第2ガイド部41には、第2移動ブロック26が有する第2スライダー42が係合し、第2スライダー42が第2ガイド部41に沿って移動することで、第2移動ブロック26が第2軸方向Y1に沿ってスライド移動する。
【0054】
図5図6に示すように、第1移動ブロック24は、第1部材43と、第2部材44とを有する。
【0055】
第1部材43は、第1移動ブロック24の一部を構成するブロック部分であり、例えば第2部材44の上方に配置され、第1動滑車28と第2動滑車30をそれぞれ回転可能な状態で内蔵する。
【0056】
第1部材43には、複数の開口部が設けられている。具体的には、無端部材4を通すための開口部として、開口部46、48(図6)と、開口部50、52(図5)が設けられる。さらに、第2移動ブロック26を通すための開口部として、開口部53が設けられる。
【0057】
図6に示す開口部46、48はそれぞれ、経路部20、22を通すための開口部である。開口部46に通された第1経路部20の第1端と、開口部48に通された第2経路部22の第1端が、第1移動ブロック24の内部で第1接続経路部32(図3図4)によって接続される。
【0058】
図5に示す開口部50、52はそれぞれ、経路部20、22を通すための開口部である。開口部50に通された第1経路部20の第2端と、開口部52に通された第2経路部22の第2端が、第1移動ブロック24の内部で第2接続経路部34(図3図4)によって接続される。
【0059】
第2部材44は、第1移動ブロック24の一部を構成するブロック部分であり、例えば第1部材43の下方に配置され、図6に示すように、第1スライダー部36と第2ガイド部41を有する。第1スライダー36は、X方向に延びる凹部を有し、第2ガイド部41は、Y方向に延びる凹部を有する。実施形態1では、第1スライダー部36と第2ガイド部41がそれぞれ間隔を空けて2つずつ設けられているが、数や形状はこれらに限らない。
【0060】
図7に示すように、第1部材43に内蔵される第1動滑車28は、少なくとも2つのギヤ54、56を有する。ギヤ54、56は、第3回転軸Ax3を中心として一体的に回転するように構成されたギヤであり、第3回転軸Ax3が延びる方向に間隔を空けて配置される。
【0061】
ギヤ54は、経路部20、22を接続する第1接続経路部32(図3図4)に連結され、無端部材4の移動に伴って回転する。ギヤ56は、ギヤ54の回転に応じて一体的に回転するように構成され、第2移動部材26(図示せず)に連結されている。
【0062】
無端部材4の移動に応じてギヤ54およびギヤ56が一体的に回転すると、ギヤ56に連結された第2移動ブロック26が第2軸方向Y1に沿ってスライド移動する。実施形態1の第2移動ブロック26とギヤ56は、ラックアンドピニオンで構成される。
【0063】
図8に示すように、第2動滑車30は、ギヤ58を有する。ギヤ58は、第4回転軸Ax4を中心として回転するように構成されたギヤである。ギヤ58は、経路部20、22を接続する第2接続経路部34に連結され、無端部材4の移動に伴って回転する。
【0064】
第2移動ブロック26は、第2動滑車30には係合せずに第1動滑車28のみに係合し、第1動滑車28の回転に応じて第2軸方向Y1に沿ってスライド移動する。これにより、第1動滑車28と第2動滑車30の回転が互いに干渉することなく、第2移動ブロック26を所望の方向にスライド移動させることができる。
【0065】
図1図2に戻ると、制御部70は、差動式移動装置2の制御を司るコントローラである。制御部70は、差動式移動装置2の各構成要素に電気的に接続されており、各構成要素の動作を制御する。制御部70は、第1駆動モータ14および第2駆動モータ16等を制御する。制御部70は、プログラムを実行することにより所定の機能を実現するCPU、MPU、FPGA、DSP、ASICのような汎用プロセッサを含む。制御部70は、メモリに格納された制御プログラムを呼び出して実行することにより、差動式移動装置2における各種の制御を実現することができる。制御部70は、ハードウェアとソフトウェアの協働により所定の機能を実現するものに限定されず、所定の機能を実現する専用に設計されたハードウェア回路でもよい。
【0066】
上記構成を有する差動式移動装置2の動作について、図9A図9Dを用いて説明する。
【0067】
図9A図9Dは、実施形態1に係る差動式移動装置2の動作を説明するための模式的な正面図であり、それぞれ異なる状態を示す。図9A図9Dでは、駆動ローラと従動ローラを区別するために、駆動ローラ6、8をハッチング表示し、従動ローラ10、12を白抜き表示する。図10以降でも同様に表示する。
【0068】
図9Aは、第1駆動ローラ6と第2駆動ローラ8が同じ第1回転方向R1に回転駆動されている状態を示す。
【0069】
図9Aに示すように、第1駆動ローラ6と第2駆動ローラ8の回転によって、無端部材4の経路部20、22が直線矢印で示す方向に移動し、従動ローラ10、12がそれぞれ円弧矢印で示す方向に回転する。
【0070】
図9Aでは、第1経路部20の移動速度と第2経路部22の移動速度が同じである場合を例示する。
【0071】
第1動滑車28においては、第1経路部20の第1端と第2経路部22の第1端が第1軸方向X1に沿って同じ方向(紙面左側)に移動しようとするため、第1動滑車28が同方向に移動する力が作用する。第2動滑車30においては、第1経路部20の第2端と第2経路部22の第2端が第1軸方向X1に沿って同じ方向(紙面左側)に移動しようとするため、第2動滑車30が同方向に移動する力が作用する。動滑車28、30がともに同方向に移動することで、第1移動ブロック24と第2移動ブロック26を有する動滑車ユニット18が第1軸方向X1に沿って紙面左側に移動する(矢印X2)。
【0072】
図9Bは、第1駆動ローラ6と第2駆動ローラ8が同じ第2回転方向R2に回転駆動されている状態を示す。第2回転方向R2は、図9Aに示した第1回転方向R1とは逆向きである。
【0073】
図9Bに示すように、第1駆動ローラ6と第2駆動ローラ8の回転によって、無端部材4の経路部20、22が直線矢印で示す方向に移動し、従動ローラ10、12がそれぞれ円弧矢印で示す方向に回転する。図9Bでも同様に、第1経路部20の移動速度と第2経路部22の移動速度が同じである場合を例示する。
【0074】
第1動滑車28においては、第1経路部20の第1端と第2経路部22の第1端が第1軸方向X1に沿って同じ方向(紙面右側)に移動しようとするため、第1動滑車28が同方向に移動する力が作用し、第2動滑車30においても同方向の力が作用する。これより、第1移動ブロック24と第2移動ブロック26を有する動滑車ユニット18が一体的に第1軸方向X1に沿って紙面右側に移動する(矢印X3)。
【0075】
上記の通り、駆動ローラ6、8を同じ回転方向に回転させて、経路部20、22を等速度で移動させることで、動滑車ユニット18を第1軸方向X1に沿ってスライド移動させることができる(索引モード)。
【0076】
図9Cは、第1駆動ローラ6が第1回転方向R1に回転駆動され、第2駆動ローラ8が逆向きの第2回転方向R2に回転駆動されている状態を示す。図9Cでも同様に、第1経路部20の移動速度と第2経路部22の移動速度が同じである場合を例示する。
【0077】
第1動滑車28においては、第1経路部20の第1端が紙面左側に移動するのに対して、第2経路部22の第1端は紙面右側に移動するため、第1動滑車28が第2回転方向R2に回転する力が作用する。第2動滑車30においては、第1経路部20の第2端が紙面左側に移動するのに対して、第2経路部22の第2端は紙面右側に移動するため、第2動滑車30が第2回転方向R2に回転する力が作用する。これより、第1動滑車28に連結されている第2移動ブロック26が、第1動滑車28の回転に伴って第2軸方向Y1に沿って紙面下側に移動する(矢印Y2)。
【0078】
図9Dは、第1駆動ローラ6が第2回転方向R2に回転駆動され、第2駆動ローラ8が逆向きの第1回転方向R1に回転駆動されている状態を示す。図9Dでも同様に、第1経路部20の移動速度と第2経路部22の移動速度が同じである場合を例示する。
【0079】
第1動滑車28においては、第1経路部20の第1端が紙面右側に移動するのに対して、第2経路部22の第1端は紙面左側に移動するため、第1動滑車28が第1回転方向R1に回転する力が作用し、第2動滑車30においても同方向に回転する力が作用する。これより、第1動滑車28に連結されている第2移動ブロック26が、第1動滑車28の回転に伴って第2軸方向Y1に沿って紙面上側に移動する(矢印Y3)。
【0080】
上記の通り、駆動ローラ6、8を逆向きの回転方向に回転させて、経路部20、22を等速度で移動させることで、動滑車ユニット18の第2移動ブロック26を第2軸方向Y1に沿ってスライド移動させることができる(循環モード)。
【0081】
図9A図9Dでは、経路部20、22のそれぞれの移動速度が同じである場合を例示したが、それぞれの移動速度に速度差をつけてもよい。これにより、動滑車ユニット18の第2移動ブロック26をXY方向に二次元的に移動させることができる。図9A図9Bに示した索引モードと、図9C図9Dに示した循環モードを組み合わせることで、第1移動ブロック24のスライド移動と第2移動ブロック26のスライド移動を同時に発生させることができる。
【0082】
図9A図9Bに示す索引モードにおいて、経路部20、22の移動速度に差をつけることで、動滑車28、30のスライド移動に加えて、動滑車28、30を回転させることができる。これにより、第1移動ブロック24の第1軸方向X1の移動に加えて、第2移動ブロック26の第2軸方向Y1の移動を生じさせることができる。
【0083】
図9C図9Dに示す循環モードにおいて、経路部20、22の移動速度に差をつけることで、動滑車28、30の回転に加えて、動滑車28、30をスライド移動させることができる。これにより、第2移動ブロック26の第2軸方向Y1の移動に加えて、第1移動ブロック24の第1軸方向X1の移動を生じさせることができる。
【0084】
図1図2に示した制御部70が、駆動ローラ6、8のそれぞれの回転方向と回転速度(経路部20、22の移動速度)を制御することで、動滑車ユニット18をX方向とY方向に沿ってそれぞれ任意の速度成分で移動させることができる。これにより、第2移動ブロック26の先端に作業部材(図示せず)を取り付けた状態で、当該作業部材をXY平面の任意の位置に移動させて、所望の作業を実行することが可能となる。
【0085】
実施形態1の第2移動ブロック26は片持ち梁構造であるため、H型フレームのような平行桁を使用する構造と異なり、設置レイアウトの自由度が高い。
【0086】
実施形態1の差動式移動装置2では特に、可動部である動滑車ユニット18にモータを搭載していないため、動滑車ユニット18を含む周辺構成を軽量化・簡素化することができ、可動部の高速化および駆動モータ14、16の低容量化に貢献する。結果として、支持ブロック17の小型軽量化にも貢献する。
【0087】
図10は、実施形態1の差動式移動装置2の要部を概略的に示す正面図である。
【0088】
図10に示すように、無端部材4において、内側に配置される第1経路部20が第1ループL1(内ループ)を構成し、外側に配置される第2経路部22が第2ループL2を構成する。無端部材4が内側の第1ループL1と外側の第2ループL2を構成することで、例えばH型フレームを用いる構造に比べて、差動式移動装置2のXY方向の寸法を小さくすることができ、小型化を実現することができる。
【0089】
当該構成において、第1駆動ローラ6と第1従動ローラ10は第1ループL1の内側に配置され、第2駆動ローラ8と第2従動ローラ12は第2ループL2の内側に配置される。これにより、差動式移動装置2のXY方向の寸法をさらに小さくすることができ、更なる小型化を実現することができる。
【0090】
当該構成において、駆動ローラ6、8は、動滑車ユニット18に対して一方側に配置され(矢印X4)、従動ローラ10、12は、動滑車ユニット18に対して他方側に配置される(矢印X5)。特に、駆動ローラ6、8を同じ側(矢印X4)に配置することで、図1図2等に示した重量の大きな駆動モータ14、16を片側に寄せた構造とすることができる。このような配置によれば、モータの集中配置が可能になるとともに、例えば、図10に示す角度から時計回りに90°回転させて駆動ローラ6、8を下側に配置して使用する場合に、装置全体の重心を下方に寄せて構造物として安定化させることができる。この場合、転倒リスクのある自走式収穫ロボットなどに好適であり、エレベータや自動倉庫にも適用することもできる。また、駆動モータ14、16を集中配置することで、駆動モータ14、16に接続する配線を集中させることができ、取扱性を向上させることができる。
【0091】
また、図9C図9Dに示す循環モードにおいて、第2移動ブロック26を軌道として用いることで、第2移動ブロック26を除く差動式移動装置2の構成要素(例えば第1移動ブロック24や支持ブロック17を含む。)を、軌道に対して直交方向(例えばX方向)への位置調整機能を持った走行装置として利用することも可能である。
【0092】
(作用・効果)
上述したように、実施形態1の差動式移動装置2は、無端状の経路を構成する無端部材4であって、内側に配置される第1経路部20と、外側に配置される第2経路部22と、第1経路部20と第2経路部22を接続する接続経路部32、34とを有する、無端部材4と、第1経路部20に連結される第1駆動ローラ6と、第2経路部22に連結される第2駆動ローラ8と、第1駆動ローラ6を回転駆動させる第1駆動モータ14と、第2駆動ローラ8を回転駆動させる第2駆動モータ16と、第1駆動モータ14および第2駆動モータ16を制御する制御部70と、接続経路部32、34に連結され、第1経路部20および第2経路部22の動きに伴って第1軸方向X1に沿って直線移動および/又は回転する動滑車28、30と、動滑車28、30の直線移動に伴って第1軸方向X1に沿って移動する第1移動ブロック24(第1移動部材)と、第1移動ブロック24に保持され、動滑車28の回転に伴って移動する第2移動ブロック26(第2移動部材)とを有する、動滑車ユニット18と、を備える。
【0093】
このような構成によれば、差動式移動装置2において、無端部材4や支持ブロック17の寸法を小さくして、小型化を実現することができる。
【0094】
また、実施形態1の差動式移動装置2では、第2移動ブロック26(第2移動部材)は、動滑車28の回転に伴って第2軸方向Y1に沿って直線移動する。このような構成によれば、2軸の移動機能を有する差動式移動装置2を実現することができる。
【0095】
また、実施形態1の差動式移動装置2では、第1軸方向X1と第2軸方向Y1は、互いに交差(直交)する方向に延びる。このような構成によれば、第1移動ブロック24と第2移動ブロック26をそれぞれ異なる方向に移動させることができる。なお、第1軸方向と第2軸方向は互いに直交する場合に限らず、90度とは異なる角度で交差してもよい。
【0096】
また、実施形態1の差動式移動装置2では、接続経路部32、34は、第1経路部20の第1端と第2経路部22の第1端を接続する第1接続経路部32と、第1経路部20の第2端と第2経路部22の第2端を接続する第2接続経路部34とを有し、動滑車28、30は、第1接続経路部32に連結される第1動滑車28と、第2接続経路部34に連結される第2動滑車30とを有し、第1動滑車28および第2動滑車30は、第1軸方向X1に沿って一体的に移動する。このような構成によれば、2つの動滑車28、30を設けることで、差動式移動装置2の所望の動作を実現しやすくなる。
【0097】
また、実施形態1の差動式移動装置2では、第2移動ブロック26は、第1動滑車28と第2動滑車30のうち、第1動滑車28のみに係合する。このような構成によれば、第1動滑車28と第2動滑車30が同じ回転方向に回転する場合に、第1動滑車28と第2動滑車30の動きが互いに干渉することなく、第2移動ブロック26を第2軸方向Y1に沿って移動させることができる。
【0098】
なお、第2移動ブロック26が第1動滑車28のみに係合する場合に限らず、第2動滑車30のみに係合する場合であってもよい。その場合、図7に示すギヤ56を第2動滑車30に設けるようにすればよい。すなわち、第2移動ブロック26は、第1動滑車28あるいは第2動滑車30のうちのいずれか一方に係合すればよい。
【0099】
また、実施形態1の差動式移動装置2は、第1駆動ローラ6および第2駆動ローラ8をそれぞれ回転可能な状態で支持する支持ブロック17をさらに備える。このような構成によれば、駆動ローラ6、8の動作を安定化させるとともに、支持ブロック17の寸法を小さくする設計が可能となる。
【0100】
また、実施形態1の差動式移動装置2では、支持ブロック17は、第1移動ブロック24の第1軸方向X1に沿った移動をガイドする第1ガイド部40を備える。このような構成によれば、第1移動ブロック24の動作を安定化させることができる。
【0101】
また、実施形態1の差動式移動装置2では、第1移動ブロック24は、第2移動ブロック26の第2軸方向Y1に沿った移動をガイドする第2ガイド部41を備える。このような構成によれば、第2移動ブロック26の動作を安定化させることができる。
【0102】
また、実施形態1の差動式移動装置2では、第1駆動ローラ6は、第1経路部20の内側に配置され、第2駆動ローラ8は、第2経路部22の内側に配置される。このような構成によれば、無端部材4を更に小型化しやすくなる。
【0103】
また、実施形態1の差動式移動装置2では、無端部材4は、第1駆動ローラ6が連結される第1主面と、第2駆動ローラ8が連結される第2主面とを有する。このような構成によれば、無端部材4に連結される駆動ローラ6、8の設置自由度が高まり、より小型化しやすくなる。
【0104】
また、実施形態1の差動式移動装置2では、第1駆動ローラ6および第2駆動ローラ8は、動滑車ユニット18に対して一方側(図10の矢印X4)に配置される。このような構成によれば、駆動ローラ6、8や駆動モータ14、16等の重量を集中させることができる。
【0105】
また、実施形態1の差動式移動装置2は、第1経路部20に連結される第1従動ローラ10と、第2経路部22に連結される第2従動ローラ12と、を備える。このような構成によれば、無端部材4の動作をより安定化させることができる。
【0106】
また、実施形態1の差動式移動装置2では、第1駆動ローラ6および第1従動ローラ10は、第1経路部20の内側に配置され、第2駆動ローラ8および第2従動ローラ12は、第2経路部22の内側に配置される。このような構成によれば、無端部材4を更に小型化しやすくなる。
【0107】
また、実施形態1の差動式移動装置2では、無端部材4は、ベルト、チェーン、ワイヤ、ケーブル、ロープ、糸のうちの少なくとも1つである。このような構成によれば、各種の無端部材4を用いることが可能となる。
【0108】
(各種変形例について)
以下、実施形態1の各種変形例について説明する。実施形態1と同一または同様の構成については同じ名称や符号を付して説明し、実施形態1と重複する記載は適宜省略する。
【0109】
(変形例1~3)
実施形態1では、駆動ローラ6、8および従動ローラ10、12を図10に示したレイアウトで配置する場合について説明したが、このようなレイアウトに限らず、内ループL1と外ループL2を構成してそれぞれのループL1、L2に少なくとも1つの駆動ローラを連結させれば、任意のレイアウトを採用してもよい。当該変形例について、図11図13を用いて説明する。
【0110】
図11は、変形例1に係る差動式移動装置102の要部を概略的に示す正面図である。
【0111】
図11に示す差動式移動装置102では、外ループL2を構成する第2駆動ローラ8と第2従動ローラ12の配置が実施形態1と同じであるのに対して、内ループL1を構成する第1駆動ローラ106と第1従動ローラ110の配置が、実施形態1の配置と異なっている。
【0112】
図11に示す例では、第1駆動ローラ6と第1従動ローラ10の位置が置換されており、第1駆動ローラ106は第2従動ローラ12と同じ側(矢印X5)に配置され、第1従動ローラ110は第2駆動ローラ8と同じ側(矢印X4)に配置されている。
【0113】
このような配置・レイアウトであっても、制御部70が駆動ローラ206、208の回転方向と回転速度を制御することで、実施形態1の差動式移動装置2と同様の動作を実行することができる。
【0114】
変形例1に係る差動式移動装置102によれば、第1駆動ローラ106およびそれに接続される第1駆動モータ(図示せず)は、動滑車ユニット18に対して一方側(矢印X5)に配置され、第2駆動ローラ8およびそれに接続される第2駆動モータ(図示せず)は、動滑車ユニット18に対して他方側(矢印X4)に配置される。これにより、複数の駆動ローラおよび複数の駆動モータの重量を分散させることができる。
【0115】
図12は、変形例2に係る差動式移動装置202の要部を概略的に示す正面図である。
【0116】
図12に示す差動式移動装置202は、無端部材204を有し、無端部材204は、内ループL1を構成する第1経路部220と、外ループL2を構成する第2経路部222とを有する。
【0117】
内ループL1には、1つの第1駆動ローラ206と、複数の第1従動ローラ210とが連結される。外ループL2には、1つの第2駆動ローラ208と、複数の第2従動ローラ212とが連結される。
【0118】
図12に示す例では、第2駆動ローラ208は一方側(矢印X4)に配置され、第1駆動ローラ206は他方側(矢印X5)に配置される。
【0119】
このような配置・レイアウトであっても、制御部70が駆動ローラ206、208の回転方向と回転速度を制御することで、実施形態1の差動式移動装置2と同様の動作を実行することができる。
【0120】
変形例2に係る差動式移動装置202では、無端部材204の2つの主面のうち、第1駆動ローラ206と第2駆動ローラ208は同じ主面に係合する。無端部材204の2つの主面がともに駆動ローラと連結可能である必要がないため、例えば、片面のタイミングベルト等、一方の主面のみが駆動ローラと連結可能なものを用いることが可能となる。これにより、無端部材204の適用範囲が広がる。
【0121】
図13は、変形例3に係る差動式移動装置302の要部を概略的に示す正面図である。
【0122】
図13に示す差動式移動装置302は、無端部材304を有し、無端部材304は、内ループL1を構成する第1経路部320と、外ループL2を構成する第2経路部322とを有する。
【0123】
内ループL1には、1つの第1駆動ローラ306と、複数の第1従動ローラ310とが連結される。外ループL2には、1つの第2駆動ローラ308と、複数の第2従動ローラ312とが連結される。
【0124】
図13に示す例では、第1駆動ローラ306と第2駆動ローラ308はともに一方側(矢印X4)に配置される。
【0125】
このような配置・レイアウトであっても、制御部70が駆動ローラ306、308の回転方向と回転速度を制御することで、実施形態1の差動式移動装置2と同様の動作を実行することができる。
【0126】
変形例3に係る差動式移動装置302でも同様に、無端部材304の2つの主面のうち、駆動ローラ306、308は同じ主面に係合するため、片面のタイミングベルト等を利用することが可能となる。
【0127】
上記の通り、無端部材4が内ループL1と外ループL2を有する構成によれば、実施形態1や変形例3のように、駆動ローラや駆動モータを集中配置したり、変形例1、2のように分散配置することが可能となる。このように、いわゆる、Mass Distributionを配慮した設計を実現することができる。特許文献1のようにH型フレームを用いた場合、H型フレームの4か所の端部のいずれかに駆動モータを配置する必要があり、モータの配置に関する制約が大きく、Mass Distributionを配慮した設計を実現しにくいという点で、本開示の発明と異なる。
【0128】
(変形例4、5)
実施形態1では、図10等に示すように、動滑車ユニット18の第1動滑車28がピニオンギヤ、第2移動ブロック26がラックであるラックアンドピニオンを用いる場合について説明したが、このような構造に限らない。当該変形例について、図14図17を用いて説明する。
【0129】
図14は、変形例4に係る差動式移動装置402の要部を概略的に示す正面図であり、図15は、図14に示す差動式移動装置402の要部を下側から見た底面図である。
【0130】
図14図15に示す差動式移動装置402は、無端部材404を備え、無端部材404は、第1経路部420と、第2経路部422と、第1接続経路部432と、第2接続経路部434とを有する。
【0131】
動滑車ユニット418は、第1動滑車428と、第2動滑車430と、第3動滑車450とを備える。第1動滑車428は第1接続経路部432に連結され、第2動滑車430は第2接続経路部434に連結される。第3動滑車450は、第1動滑車428と第2動滑車430の間に配置される。
【0132】
動滑車ユニット418はさらに、3つの動滑車428、430、450を回転可能に連結するための連結プレート456を有する。
【0133】
図15に示すように、第1動滑車428は、回転軸440と、ギヤ442と、ローラ444とを備える。回転軸440は、ギヤ442とローラ444を一体的に軸支し、ギヤ442とローラ444を一体的に回転させる。ギヤ442は、第1接続経路部432に連結され、無端部材404の移動に応じて回転する。ローラ444は、第2移動ブロック426に係合する。
【0134】
第2動滑車430は、回転軸446と、ギヤ448とを備える。回転軸446は、ギヤ448を軸支する。ギヤ448は、第2接続経路部434に連結され、無端部材404の移動に応じて回転する。
【0135】
第3動滑車450は、回転軸452と、ローラ454とを備える。回転軸452は、ローラ454を軸支し、ローラ454は、第2移動ブロック426に係合する。
【0136】
第2移動ブロック426は、第1動滑車428のローラ444と第3動滑車450のローラ454によって挟まれている。無端部材4の移動に伴って動滑車428、430が回転すると、第1動滑車428のローラ444が回転することで、図14に示すように、第2移動ブロック426が第2軸方向Y1に沿ってスライド移動する。ローラ454は、第2移動ブロック426の移動に応じて従動的に回転する。
【0137】
上記構成によれば、第2移動ブロック426は2つのローラ444、454で挟まれた状態で、2つのローラ444、454との摩擦によって脱落することなく、第2軸方向Y1に沿ってスライド移動可能である。
【0138】
上記構成によれば、ラックアンドピニオンとは異なる構造を用いて第2移動ブロック426をスライド移動させることができ、任意の種類の線材を送る構造として利用することができる。
【0139】
図16は、変形例5に係る差動式移動装置502の要部を概略的に示す正面図であり、図17は、図16に示す差動式移動装置502の要部を下側から見た底面図である。
【0140】
図16に示す変形例5の差動式移動装置502は、図14図15に示した変形例4の差動式移動装置402と比較して、動滑車ユニット518の構成が異なる。
【0141】
図16図17に示す動滑車ユニット518は、第1動滑車428と、第2動滑車530と、第3動滑車550とを備える。
【0142】
図17に示すように、第2動滑車530は、回転軸446とギヤ448に加えて、ギヤ560をさらに有する。第3動滑車550は、回転軸452とローラ454に加えて、ギヤ562をさらに有する。
【0143】
ギヤ560とギヤ562は、互いに噛み合っている。ギヤ560は、ギヤ448と一体的に回転するように構成されており、ギヤ560の回転に応じて、ギヤ562は逆向きの回転方向に回転する。無端部材404の移動に応じてギヤ448とギヤ560が一体的に回転すると、ギヤ560に噛み合ったギヤ562およびローラ454が、逆向きの回転方向に一体的に回転する。
【0144】
上記構成によれば、第2移動ブロック426は、第1動滑車428のローラ444によって第2軸方向Y1に送られるだけでなく、第3動滑車550のローラ454によっても同じ方向に送られる(図16)。第1動滑車428だけでなく、ギヤ560、562を介して第2動滑車530の回転力を第2移動ブロック426に伝達することで、第2移動ブロック426の駆動力を増加させることができる。
【0145】
(変形例6)
実施形態1では、図1図2等に示すように、駆動モータ14、16を駆動ローラ6、8に直結する場合について説明したが、このような場合に限らない。当該変形例について、図18を用いて説明する。
【0146】
図18は、変形例6に係る差動式移動装置602の要部を概略的に示す正面図である。
【0147】
図18に示す差動式移動装置602は、第1駆動ローラ6を駆動するための第1駆動モータ614と、第2駆動ローラ8を駆動するための第2駆動モータ616とを備える。
【0148】
駆動モータ614、616はともに、駆動ローラ6、8には直結せずに、無端部材618、620を介して間接的に駆動ローラ6、8にそれぞれ接続している。
【0149】
無端部材618は、第1駆動ローラ6と第1駆動モータ614を回転可能に接続し、無端部材620は、第2駆動ローラ8と第2駆動モータ616を回転可能に接続する。無端部材618、620はそれぞれ、駆動ローラと駆動モータを回転可能に連結できるものであれば、任意の種類のものを用いてもよい。
【0150】
上記構成によれば、駆動モータ614、616を駆動ローラ6、8や支持ブロック17とは分離しているため、駆動モータ614、616の配置の自由度が高まるとともに、差動式移動装置602のZ方向の寸法を小さくすることができる。これより、例えば差動式移動装置602をZ方向に間隔を空けて複数並べて使用する場合に、複数の差動式移動装置602をより密集させて配置することが可能となり、多列密集配置を実現することができる。この場合、例えばピッキングマシンなどの用途で、タスクの並行処理が可能となり、装置設置面積当たりの処理能力向上と高速化に貢献する。
【0151】
(実施形態2)
図19図20を参照して、実施形態2に係る差動式移動装置702について説明する。
【0152】
図19は、実施形態2に係る差動式移動装置702の正面図であり、図20は、実施形態2に係る差動式移動装置702の斜視図である。
【0153】
実施形態1では、動滑車ユニット18が移動する2軸が互いに交差する方向(第1軸方向X1と第2軸方向Y1)であったのに対して、実施形態2では、動滑車ユニット718が移動する2軸が互いに平行な方向(第1軸方向X1と第2軸方向X6)である点で、異なる。
【0154】
図19図20に示す差動式移動装置702は、無端部材704と、第1駆動ローラ706と、第2駆動ローラ708と、第1従動ローラ710と、第2従動ローラ712と、第1駆動モータ714(図20)と、第2駆動モータ716と、支持ブロック717と、動滑車ユニット718と、を備える。
【0155】
無端部材704は、第1経路部720と、第2経路部722とを備える。動滑車ユニット718は、第1移動ブロック724と、第2移動ブロック726と、第1動滑車728と、第2動滑車730とを有する。
【0156】
上記構成において、第1移動ブロック724は、支持ブロック717に設けられたX方向に延びる第1ガイド部740に係合し、第1ガイド部740に沿って第1軸方向X1にスライド移動可能である。第2移動ブロック726は、第1移動ブロック724に保持された状態で、第1移動ブロック724の内部で第1動滑車728に係合し、第1動滑車728の回転に伴って第2軸方向X6に移動可能である。
【0157】
図20に示すように、第1移動ブロック724にはX方向に延びる第2ガイド部742が設けられており、第2移動ブロック726は第2ガイド部742に係合して、第2ガイド部742に沿ってX方向にスライド移動可能である。
【0158】
実施形態2の第2移動ブロック726と第1動滑車728は、ラックアンドピニオンで構成される。
【0159】
上記構成によれば、動滑車ユニット718が移動する2軸を互いに平行な方向な第1軸方向X1と第2軸方向X6とすることができ、実施形態1の差動式移動装置2とは異なる用途(例えばテレスコピック機構)で利用することができる。
【0160】
上述したように、実施形態2の差動式移動装置702では、第1軸方向X1と前記第2軸方向X6は、互いに平行な方向に延びる。このような構成によれば、差動式移動装置702を実施形態1の差動式移動装置2とは異なる用途に利用することができる。
【0161】
(実施形態3)
図21を参照して、実施形態3に係る差動式移動装置802について説明する。
【0162】
図21は、実施形態3に係る差動式移動装置802の斜視図である。
【0163】
実施形態1では、動滑車ユニット18が移動する2軸が第1軸方向X1と第2軸方向Y1であったのに対して、実施形態3では、動滑車ユニット818が移動する2軸が第1軸方向X1と第2軸方向Z1である点で、異なる。
【0164】
図21に示す差動式移動装置802は、無端部材804と、第1駆動ローラ806と、第2駆動ローラ808と、第1従動ローラ810と、第2従動ローラ812と、第1駆動モータ814と、第2駆動モータ816と、支持ブロック817と、動滑車ユニット818と、を備える。
【0165】
無端部材804は、第1経路部820と、第2経路部822とを備える。動滑車ユニット818は、第1移動ブロック824と、第2移動ブロック826と、第1動滑車828と、第2動滑車830とを有する。
【0166】
上記構成において、第1移動ブロック824は、支持ブロック817に設けられたX方向に延びる第1ガイド部840に係合し、第1ガイド部840に沿って第1軸方向X1にスライド移動する。第2移動ブロック826は、第1移動ブロック824に保持された状態で、第1移動ブロック824の内部で第1動滑車828に係合し、第1動滑車828の回転に伴って第2軸方向Z1にスライド移動する。
【0167】
第1移動ブロック824にはZ方向に延びる第2ガイド部842が設けられており、第2移動ブロック826は、第2ガイド部842に沿ってZ方向にスライド移動する。
【0168】
図21に示す第2移動ブロック826は、第1棒状部826Aと、第2棒状部826Bとを有する。第1棒状部826Aは、第1移動ブロック824を貫通するように延びて、第1移動ブロック824の内部で第1動滑車828に係合する。第1棒状部826Aは、第1動滑車828の回転方向の駆動力をZ方向の駆動力に変換する駆動力変換構造(例えばボールねじ構造)を有する。第2棒状部826Bは、第1棒状部826Aと平行に延びており、第1移動ブロック824の第2ガイド部842に係合する。
【0169】
上記構成によれば、実施形態1のようにX方向とY方向の2軸に限らず、X方向とZ方向の2軸に沿って移動させることができる。
【0170】
前述したように、互いに直交する2軸に限らず、90度とは異なる角度で交差する2軸や、実施形態2のように互いに平行な2軸等、任意の方向に延びる2軸に沿って移動可能な差動式移動装置を実現することができる。
【0171】
(実施形態4)
図22図24を参照して、実施形態4に係る差動式移動装置902について説明する。
【0172】
図22図23は、実施形態4に係る差動式移動装置902の斜視図である。図24は、図22の差動式移動装置902をI-I断面で切り欠いた斜視図である。
【0173】
実施形態1では、第1移動ブロック24が第1軸方向に沿って移動し、第2移動ブロック26が第2軸方向に沿って移動する「2軸」の差動式移動装置2であったのに対して、実施形態4では、第1移動部材である移動ブロック924は第1軸方向(Y軸方向)に沿って移動する一方で、第2移動部材であるベルトコンベア926はベルト927を回転移動させるという点で、異なる。
【0174】
図22図23に示す差動式移動装置902は、無端部材904と、第1駆動ローラ906と、第2駆動ローラ908と、第1従動ローラ910と、第2従動ローラ912と、第1駆動モータ914と、第2駆動モータ916と、支持ブロック917と、動滑車ユニット918と、を備える。
【0175】
無端部材904は、内ループを構成する第1経路部920と、外ループを構成する第2経路部922とを備える。動滑車ユニット918は、移動ブロック924(第1移動部材)と、ベルトコンベア926(第2移動部材)と、第1動滑車928と、第2動滑車930とを有する。
【0176】
移動ブロック924は、図23に示す第1動滑車928および第2動滑車930を回転可能に保持するとともに、図22に示す支持ブロック917に設けられたY方向に延びるガイド部940A、940Bに係合する。ガイド部940A、940Bに係合する移動ブロック924は、第1動滑車928および第2動滑車930のY方向の移動に伴って、第1軸方向Y2に沿ってスライド移動可能(すなわち昇降可能)である。
【0177】
ベルトコンベア926は、移動ブロック924に保持されるとともに、無端状のベルト927を有する。ベルト927は、後述する駆動軸952(図24)を介して第2動滑車930に連結されており、第2動滑車930と駆動軸952の回転に伴って回転駆動される。ベルト927は、第2動滑車930の回転方向に応じて、正転する機能(矢印R1)および反転する機能(矢印R2)を有する。
【0178】
ベルト927は、図示しない搬送対象物を搬送するためのベルト上面929を有する。ベルト上面929は、ベルト927の回転によってX方向に沿って直線移動して搬送対象物をX方向に搬送する。
【0179】
図24に示すように、ベルト927の内部には、2つの駆動軸950、952が設けられている。
【0180】
駆動軸950は、図23に示す第1動滑車928に連結された軸部材であり、Z方向に延びる回転軸Ax5を中心として、第1動滑車928と一体的に回転する。駆動軸952は、図23に示す第2動滑車930に連結された軸部材であり、Z方向に延びる回転軸Ax6を中心として、第2動滑車930と一体的に回転する。
【0181】
2つの駆動軸950、952はともに、図22に示すベルトコンベア926の第1プレート960と、図23に示すベルトコンベア926の第2プレート962によって回転可能に軸支される。すなわち、駆動軸950、952のそれぞれの両端部が支持される。
【0182】
実施形態4では、駆動軸950はベルト927に係合しないのに対して、駆動軸952はベルト927に係合する。ベルト927に係合する駆動軸952は、ベルト927に回転駆動力を伝達するドライブプーリとして機能する。
【0183】
図24に示す例では、駆動軸950は1本のシャフトで構成されるのに対して、駆動軸952は1本のシャフトと当該シャフトの周囲を囲む円筒状部材で構成される。駆動軸952の円筒状部材は、ベルト927の内周面に対して回転方向に沿って所定長さ分だけ係合する。
【0184】
ベルト927にはさらに、4つのアイドラプーリ954A~954Dが係合している。
【0185】
4つのアイドラプーリ954A~954Dはそれぞれ、ベルト927の回転に伴って従動的に回転するプーリである。アイドラプーリ954A~954Dはいずれも、図22に示す第1プレート960と図23に示す第2プレート962によって回転可能に軸支されており、駆動軸950、952と同様に、それぞれの両端部が支持されている。
【0186】
上段に設けたアイドラプーリ954A、954Bは、ベルト927のX方向の両端部においてベルト927の内周面に係合する。下段に設けたアイドラプーリ954C、954Dは、ベルト927のX方向の中央部においてベルト927の外周面に係合する。
【0187】
上記構成を有する差動式移動装置902は、ベルト927のベルト上面929が鉛直上方を向いた姿勢で使用される。ベルトコンベア926は、第1軸方向Y2に沿って上下動する昇降機能と、ベルト927を無端状に回転させる回転機能を有する。使用姿勢において、駆動軸950は駆動軸952の上方に配置される。
【0188】
上方に配置される駆動軸950は、2つのプレート960、962を含むベルトコンベア926の主要部分を支持しており、ベルトコンベア926の昇降時に負荷を大きく受ける部分となる。これを受けて、駆動軸950はベルト927には係合させずに、2つのプレート960、962に両端を支持した構造とすることで、昇降時の負荷を主に受ける部分として機能させることができる。これにより、差動式移動装置902の強度を向上させることができる。なお、十分に剛性が確保できる場合には、駆動軸950を省略して、駆動軸950の代わりに第2プレート962で昇降時の負荷を主に受けるようにしてもよい。
【0189】
下方に配置される駆動軸952は、駆動軸950に比べてベルトコンベア926の昇降時の負荷を受けにくい部分であり、ベルト927に係合させてドライブプーリとして機能させることで、ベルト927を回転駆動する力を効率的に発揮することができる。
【0190】
このように、2つの駆動軸950、952をそれぞれ異なる構成・機能として、駆動軸950を用いて差動式移動装置902の強度を向上させながら、駆動軸952を用いてベルトコンベア926を効率的に動作させることが可能となる。
【0191】
実施形態4の差動式移動装置902では特に、可動部である動滑車ユニット918にモータを搭載していないため、動滑車ユニット918を含む周辺構成を軽量化・簡素化することができ、可動部の高速化および駆動モータ914、916の低容量化に貢献する。結果として、支持ブロック917の小型軽量化にも貢献する。
【0192】
上述したように、実施形態4の差動式移動装置902は、第1経路部920および第2経路部922の動きに伴って第1軸方向Y2に沿って直線移動および/又は回転する動滑車928、930と、動滑車928、930の直線移動に伴って第1軸方向Y2に沿って移動する移動ブロック924(第1移動部材)と、移動ブロック924に保持され、第2動滑車930の回転に伴って移動するベルトコンベア926(第2移動部材)とを有する、動滑車ユニット918を備える。
【0193】
このような構成によれば、差動式移動装置902において、無端部材904や支持ブロック917の寸法を小さくして、小型化を実現することができる。
【0194】
また、実施形態4の差動式移動装置902では、第2移動部材は、第2動滑車930の回転に伴って回転するベルト927を有したベルトコンベア926である。このような構成によれば、第1軸方向Y2に沿って昇降する機能とベルト927を回転させる機能とを有したベルトコンベア926、およびそれを備える差動式移動装置902を実現することができる。
【0195】
以上、上述の実施形態1~4および変形例1~6を挙げて本開示を説明したが、本開示はこれらに限定されない。
【0196】
例えば、上述の実施形態および変形例では、無端部材4に連結される部材としてギヤを例示したが、このような場合に限らず、無端部材4の種類に応じて、ギヤとは異なる種類の部材を連結させて無端部材4を駆動してもよい。例えば、無端部材4がタイミングベルトの場合はタイミングプーリを連結してもよく、無端部材4がチェーンの場合はスプロケットを連結してもよく、無端部材4がワイヤの場合はプーリ、シーブを連結してもよい。
【0197】
また、上述の実施形態および変形例では、コントローラとしての制御部70が差動式移動装置2を制御する場合を例示したが、このような場合に限らず、コントローラに代えて、機械的な制御手段を用いてもよい。
【0198】
前記実施形態および様々な変形例のうち、任意の実施形態および変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【0199】
本開示は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した特許請求の範囲による本開示の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。また、各実施形態における要素の組合せや順序の変化は、本開示の範囲および思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0200】
本開示は、差動式移動装置であれば適用可能である。
【符号の説明】
【0201】
2 差動式移動装置
4 無端部材
6 第1駆動ローラ
8 第2駆動ローラ
10 第1従動ローラ
12 第2従動ローラ
14 第1駆動モータ
16 第2駆動モータ
18 動滑車ユニット
20 第1経路部
22 第2経路部
24 第1移動ブロック(第1移動部材)
26 第2移動ブロック(第2移動部材)
28 第1動滑車
30 第2動滑車
32 第1接続経路部
34 第2接続経路部
70 制御部
X1 第1軸方向
Y1 第2軸方向
【要約】
差動式移動装置は、無端状の経路を構成する無端部材であって、内側に配置される第1経路部と、外側に配置される第2経路部と、第1経路部と第2経路部を接続する接続経路部とを有する、無端部材と、第1経路部に連結される第1駆動ローラと、第2経路部に連結される第2駆動ローラと、第1駆動ローラを回転駆動させる第1駆動モータと、第2駆動ローラを回転駆動させる第2駆動モータと、第1駆動モータおよび第2駆動モータを制御する制御部と、接続経路部に連結され、第1経路部および第2経路部の動きに伴って第1軸方向に沿って直線移動および/又は回転する動滑車と、動滑車の直線移動に伴って第1軸方向に沿って移動する第1移動部材と、第1移動部材に保持され、動滑車の回転に伴って移動する第2移動部材とを有する、動滑車ユニットと、を備える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24