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特許7436763肺炎を予防および/または改善するための分子状水素含有組成物
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  • 特許-肺炎を予防および/または改善するための分子状水素含有組成物 図1
  • 特許-肺炎を予防および/または改善するための分子状水素含有組成物 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】肺炎を予防および/または改善するための分子状水素含有組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/00 20060101AFI20240215BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
A61K33/00
A61P11/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021154859
(22)【出願日】2021-08-23
(65)【公開番号】P2023031181
(43)【公開日】2023-03-08
【審査請求日】2021-11-18
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】394021270
【氏名又は名称】MiZ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文武
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文平
(72)【発明者】
【氏名】市川 祐介
(72)【発明者】
【氏名】平野 伸一
(72)【発明者】
【氏名】黒川 亮介
【合議体】
【審判長】前田 佳与子
【審判官】田中 耕一郎
【審判官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-19721(JP,A)
【文献】特開2021-178877(JP,A)
【文献】特許第6628449(JP,B2)
【文献】特開2017-36482(JP,A)
【文献】特開2014-34710(JP,A)
【文献】Respirology, 2014, 19(Suppl. 3), p.179, Abstract Number:P-K-019
【文献】厚生労働科学研究委託業務 難治性疾患実用化研究事業 びまん性肺疾患に対するエビデンスを構築する新規戦略的研究 平成26年度研究報告書,平成27年2月27日発行,第115~122頁
【文献】Laboratory Investigation, 2019, 99, pp.793-806
【文献】Experimental Physiology, 2019, 104, pp.1942-1951
【文献】日本救急医学会雑誌、2020年、Vol.31, No.11, p.1644
【文献】第40回日本理学療法学術大会抄録集、理学療法学、2005年、Vol.32, Suppl.No.2, セッションID:741
【文献】MiZ株式会社のホームページ(http://mhga.jp/)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K,A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDream III)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子状水素を有効成分として含む組成物であって、
前記組成物が水素ガスの吸入によってヒトに投与される、
間質性肺炎を改善するための組成物であって、
前記組成物が、前記分子状水素を含む気体であり、
前記分子状水素を含む気体が、0.5~18.5体積%の水素濃度を有する組成物。
【請求項2】
前記請求項1に記載の組成物の作製における分子状水素の使用であって、前記分子状水素が水素ガス生成装置を用いて作製されることを特徴とする使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、被験体において、肺炎を予防および/または改善するための分子状水素含有組成物を提供する。
【背景技術】
肺炎とは、肺の炎症性疾患の総称であり、世界では年間4.5億人(人口の7%)が発症しており、うち400万人が死亡している。特に2019年末から2020年にかけて新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染が中国武漢のアウトブレイクをきっかけに全世界に拡大し、世界的なパンデミックとして社会的問題になっている。2020年2月26日現在、世界中で81、006件のSARS-CoV-2感染者が確認され、そのうち2764人がSARS-CoV-2の感染に起因する肺炎などの呼吸器疾患により死亡しているが、有効な治療方法を見出せていない。
本発明の有効成分である水素は、活性酸素種に起因する酸化ストレスを抑制する抗酸化反応性を有し、マウスを用いた研究で慢性気管支炎や閉塞性肺気管支炎を改善した前例がある(特許文献1)。しかしながら、水素による難治性の肺炎の改善効果が確認された前例はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【文献】特許第6628449号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
肺炎を予防および/または改善することができるならば、患者の苦痛を軽減し、かつ生活の質を改善することができるだけでなく、医療費の削減にも貢献できるだろうと考えられる。上記のとおり、肺炎を予防および/または改善に有用な成分もしくは物質は、ほとんど知られていない。
このような状況下で、本発明の目的は、分子状水素を使用することによって肺炎を予防および/または改善し、及び/又は、肺炎と関連する症状の改善を促進することである。
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、以下の特徴を包含する。
(1)分子状水素を有効成分として含む、被験体において、肺炎と肺炎に関連する症状を予防および/または改善するための組成物である。
(2)前記肺炎が、細菌性肺炎、ウイルス性肺炎、真菌性肺炎、放射線肺炎、および、薬剤性肺炎からなる群から1つまたは2つ以上選択される肺炎である(1)に記載の組成物である。
(3)前記肺炎に関連する症状が、のどの痛み、発熱、咳、くしゃみ、喀痰、呼吸困難、全身倦怠感、吐き気、疲労、胸部痛、息切れ、鼻水、白血球の減少、下痢、頭痛、肺機能の低下、心臓機能の低下、および、腎臓機能の低下からなる群から1つまたは2つ以上選択される症状であることを特徴とする(1)または(2)に記載の組成物である。
(4)前記分子状水素を含む液体又は気体である、(1)から(3)のいずれか1つに記載の組成物である。
(5)前記分子状水素を含む液体が、1~10ppmの水素濃度を有する、(5)に記載の組成物である。
(6)前記分子状水素を含む気体が、ゼロ(0)より大きく、かつ18.5体積%以下の水素濃度を有する、(4)に記載の組成物である。
(7)前記被験体が、ヒトを含む哺乳動物である、(1)~(6)のいずれか1つに記載の組成物である。
(8)水素ガス生成装置、水素水生成装置、又は水素ガス添加装置を用いて作製される、(1)~(7)のいずれか1つに記載の組成物である。
【発明の効果】
本発明は、被験体において、肺炎を予防および/または改善することができる。また、本発明に係る組成物を被験体に投与することにより、難治性の敗血症をも改善できる。
【図面の簡単な説明】
図1】実施例1の間質性肺炎の患者の水素投与前後のCT写真である。
図2】実施例1の間質性肺炎の患者の水素投与前後の図1とは異なる箇所のCT写真である。
【発明を実施するための形態】
本発明をさらに詳細に説明する。
1.肺炎を予防および/または改善するための組成物
本発明は、分子状水素を有効成分として含む、肺炎と肺炎に関連する症状を予防および/または改善を促進するための組成物を提供する。
本明細書中「肺炎」とは、気管支炎を除く肺(肺胞、間質)の炎症性疾患の総称のことをいう。
本明細書中「感染性肺炎」は、細菌性肺炎、ウイルス性肺炎、真菌性肺炎に分けられる。一般に感冒・上気道炎後の続発性肺炎は細菌性肺炎であるが、時にウイルスそのものによる肺炎・間質性肺炎をきたすことがある。インフルエンザウイルス肺炎、コロナウイルス肺炎、麻疹肺炎など。病原体が原因ではない非感染性の肺炎にアレルギー性の過敏性肺炎がある。
本明細書中「細菌性肺炎」は細菌の感染を原因とした肺の急性炎症(肺炎)であり、そのほとんどは肺胞性肺炎である。
本明細書中「細菌性肺炎の原因菌」とは、グラム陽性菌、グラム陰性菌、嫌気性細菌、非定型菌、抗酸菌、マイコプラズマ等をいう。
本明細書中「ウイルス性肺炎」とは、ウイルスの感染を原因とした肺の急性炎症(肺炎)のことをいう。
本明細書中「ウイルス性肺炎の原因ウイルス」とは、一般的にはライノウイルス、コロナウイルス、インフルエンザウイルス、RSウイルス、アデノウイルス、パラインフルエンザウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス等のことをいう。また、これらのウイルスのゲノム配列に変異を生じた新型ウイルスを含む。
本明細書中「真菌性肺炎」とは、真菌の感染を原因とした肺の急性炎症(肺炎)である。
本明細書中「真菌」とは、ヒストプラズマ・カプスラーツム、ブラストミセス、クプトコッカス、ニューモシスチス、コクシジオイデス等のことをいう。
本明細書中「薬剤性肺炎」とは、薬を点滴、内服が原因で薬剤本来の効能以外の予期せぬ肺に対する有害な反応のことをいう。すべての薬剤(特に抗悪性腫瘍薬、インターフェロン、抗リウマチ薬、生物学的製剤、分子標的治療薬)、栄養食品、サプリメントには肺障害を引き起こす可能性がある。
本明細書中「放射線肺炎」とは、放射線を原因として発症する肺障害のことをいい、肺がん、食道がん、乳がんなどの胸部、または、肺に近い腹部に生じたがんに対して放射線療法を行った際に生じる放射線障害を起因とする肺炎のことをいう。
本明細書中「難治性肺炎」とは、現代の医学、製薬業界から製造販売されているすべての医薬品でも改善、回復が不可能または困難であり、治療方法についてもエビデンスが低く確立されていない肺炎のことをいう。
本明細書中「被験体」という用語は、哺乳動物、例えば、ヒトを含む霊長類、イヌ、ネコなどのペット動物、動物園などの観賞用動物などを含む。好ましい被験体はヒトである。
本明細書中、本発明の組成物の有効成分である「水素」は分子状水素(すなわち、気体状水素もしくは水素ガス)であり、特に断らない限り、単に「水素」又は「水素ガス」と称する。また、本明細書中で使用する用語「水素」は、分子式でH、D(重水素)、HD(重水素化水素)、又はそれらの混合ガスを指す。Dは、高価であるが、Hよりスーパーオキシド消去作用が強いことが知られている。本発明で使用可能な水素は、H、D(重水素)、HD(重水素化水素)、又はそれらの混合ガスであり、好ましくはHであり、或いはHに代えて、又はHと混合して、D及び/又はHDを使用してもよい。
本発明の組成物の好ましい形態は、分子状水素を含む気体又は液体であり、好ましくは分子状水素を含む気体である。
分子状水素を含む気体は、好ましくは、水素ガスを含む空気又は、水素ガスと酸素ガスを含む混合ガスである。分子状水素を含む気体(すなわち、本発明の組成物)の水素ガスの濃度は、ゼロ(0)より大きく、かつ18.5体積%以下、例えば0.5~18.5体積%であり、好ましくは1~10体積%、例えば2~10体積%、2~9体積%、2~8体積%、3~10体積%、3~9体積%、3~8体積%、3~7体積%、3~6体積%、4~10体積%、4~9体積%、4~8体積%、4~7体積%、4~6体積%、4~5体積%、5~10体積%、5~9体積%、5~8体積%、6~10体積%、6~9体積%、6~8体積%、6~7体積%などである。本発明では、爆発限界以下で水素ガス濃度が高いほど、或いは1日あたりの水素投与量が高いほど、肺炎を予防および/または改善する(例えば抑制又は軽減)を促進する効果が大きい傾向がある。
水素は可燃性かつ爆発性ガスであるため、肺炎を予防および/または改善するにおいては、ヒトなどの被験体に安全な条件で本発明の組成物に水素を含有させて被験体に投与することが好ましい。
水素ガス以外の気体が空気であるときには、空気の濃度は、例えば81.5~99.5体積%の範囲である。
水素ガス以外の気体が酸素ガスを含む気体であるときには、酸素ガスの濃度は、例えば21~99.5体積%の範囲である。
その他の主気体として例えば窒素ガスをさらに含有させることができる。
通常の水素ガス吸入療法においては、66%や99%の高濃度の水素ガスによってようやく疾病(癌)に対する改善効果が示されている。しかしながら、本発明においては、ヒトなどの被験体に安全な条件で本発明の組成物に水素を含有させて被験体に投与することが好ましく、0(ゼロ)より大きく18.5%以下の水素低濃度であっても、肺炎に対して十分な改善効果を示すことができる。
分子状水素を含む液体は、具体的には、水素ガスを溶存させた水性液体であり、ここで、水性液体は、非限定的に、例えば水(例えば精製水、滅菌水)、生理食塩水、緩衝液(例えばpH4~7.4の緩衝液)、点滴液、輸液、注射溶液、飲料(例えば、緑茶、紅茶などの茶飲料、果汁、青汁、野菜ジュース、など)などである。分子状水素を含む液体の水素濃度は、非限定的に、例えば1~10ppm、好ましくは1.2~9ppm、例えば1.5~9ppm、1.5~8ppm、1.5~7ppm、1.5~6ppm、1.5~5ppm、1.5~4ppm、2~10ppm、2~9ppm、2~8ppm、2~7ppm、2~6ppm、2~5ppm、3~10ppm、3~9ppm、3~8ppm、3~7ppm、4~10ppm、4~9ppm、4~8ppm、4~7ppm、5~10ppm、5~9ppm、5~8ppm、5~7ppmなどである。
本発明では、爆発限界以下で溶存する水素濃度が高いほど、或いは1日あたりの水素投与量が高いほど、肺炎を予防および/または改善する効果が大きい傾向がある。
分子状水素を含む気体又は液体は、所定の水素ガス濃度になるように配合されたのち、例えば耐圧性の容器(例えば、ステンレスボンベ、アルミ缶、好ましくは内側をアルミフィルムでラミネーションした、耐圧性プラスチックボトル(例えば耐圧性ペットボトル)及びプラスチックバッグ、アルミバッグ、等)に充填される。アルミは水素分子を透過させ難いという性質を有している。或いは、分子状水素を含む気体又は分子状水素を含む液体は、投与時に、水素ガス生成装置、水素水生成装置、又は水素ガス添加装置、例えば、公知のもしくは市販の水素ガス供給装置(分子状水素を含む気体の生成用装置)、水素添加器具(水素水生成用装置)、非破壊的水素含有器(例えば点滴液などの生体適用液バッグ内部へ非破壊的に水素ガスを添加するための装置)などの装置を用いてその場で作製されてもよい。
水素ガス供給装置は、水素発生剤(例えば金属アルミニウム、水素化マグネシウム、等)と水の反応により発生する水素ガスを、希釈用ガス(例えば空気、酸素、等)と所定の比率で混合することを可能にする(日本国特許第5228142号公報、等)。あるいは、水の電気分解を利用して発生した水素ガスを、酸素、空気などの希釈用ガスと混合する(日本国特許第5502973号公報、日本国特許第5900688号公報、等)。これによって、例えば0.5~18.5体積%の範囲内の水素濃度の分子状水素を含む気体を調製することができる。
水素添加器具は、水素発生剤とpH調整剤を用いて水素を発生し、水などの生体適用液に溶存させる装置である(日本国特許第4756102号公報、日本国特許第4652479号公報、日本国特許第4950352号公報、日本国特許第6159462号公報、日本国特許第6170605号公報、特開2017-104842号公報、等)。水素発生剤とpH調整剤の組み合わせは、例えば、金属マグネシウムと強酸性イオン交換樹脂もしくは有機酸(例えばリンゴ酸、クエン酸、等)、金属アルミニウム末と水酸化カルシウム粉末、などである。これによって、例えば1~10ppm程度の溶存水素濃度の分子状水素を含む液体を調製できる。
非破壊的水素含有器は、点滴液などの市販の生体適用液(例えば、ポリエチレン製バッグなどの水素透過性プラスチックバッグに封入されている。)に水素ガスをパッケージの外側から添加する装置又は器具であり、例えばMiZ(株)から市販されている(http://www.e-miz.co.jp/technology.html)。この装置は、生体適用液を含むバッグを飽和水素水に浸漬することによってバッグ内に水素を透過し濃度平衡に達するまで無菌的に水素を生体適用液に溶解させることができる。当該装置は、例えば電解槽と水槽から構成され、水槽内の水が電解槽と水槽を循環し電解により水素を生成することができる。或いは、簡易型の使い捨て器具は同様の目的で使用することができる(特開2016-112562号公報、等)。この器具は、アルミバッグの中に生体適用液含有プラスチックバッグ(水素透過性バッグ、例えばポリエチレン製バッグ)と水素発生剤(例えば、金属カルシウム、金属マグネシウム/陽イオン交換樹脂、等)を内蔵しており、水素発生剤は例えば不織布(例えば水蒸気透過性不織布)に包まれている。不織布に包まれた水素発生剤を水蒸気などの少量の水で濡らすことによって発生した水素が生体適用液に非破壊的かつ無菌的に溶解される。
或いは、精製水素ガスボンベ、精製酸素ガスボンベもしくは精製空気ボンベを用意し、所定の水素濃度、所定の酸素もしくは空気濃度になるように調整した分子状水素を含む気体や液体を作製してもよい。
上記の装置又は器具を用いて調製された、分子状水素を含む気体や分子状水素を含む液体(例えば水(例えば精製水、滅菌水)、生理食塩水、点滴液、等)は、肺炎の被験体に、経口的に又は非経口的に投与されうる。
本発明の組成物の別の形態には、被験体に経口投与(もしくは摂取)するように調製された、消化管内で水素の発生を可能にする水素発生剤を含有する剤型(例えば、錠剤、カプセル剤、等)が含まれる。水素発生剤は、例えば食品もしくは食品添加物として承認されている成分によって構成されることが好ましい。
本発明の組成物を被験体に投与する方法としては、分子状水素を有効成分とするとき、例えば吸入、吸引等による投与、例えば経肺投与が好ましい、また、分子状水素を含む液体を有効成分とするとき経口投与又は静脈内投与(点滴を含む)が好ましい。ガスを吸入するときには、鼻カニューラや、口と鼻を覆うマスク型の器具を介して口又は鼻からガスを吸入して肺に送り、血液を介して全身に送達することができる。
経口投与する分子状水素を含む液体については、冷却した液体又は常温で保存した液体を被験体に投与してもよい。水素は常温常圧下で約1.6ppm(1.6mg/L)の濃度で水に溶解し、温度による溶解度差が比較的小さいことが知られている。或いは、分子状水素を含む液体は、例えば上記の非破壊的水素含有器を用いて調製された水素ガスを含有させた点滴液又は注射液の形態であるときには、静脈内投与、動脈内投与などの非経口投与経路によって被験体に投与してもよい。
上記水素濃度の分子状水素を含む気体又は上記溶存水素濃度の分子状水素を含む液体を1日あたり1回又は複数回(例えば2~3回)、1週間~3か月又はそれ以上の期間、例えば1週間~6か月又はそれ以上(例えば、1年以上、2年以上、など)にわたりヒトに投与することができる。分子状水素を含む気体が投与されるときには、1回あたり少なくとも30分吸入することが好ましい。吸入時間は長いほど改善効果があることから、例えば、30分から1時間、1時間から2時間、2時間から3時間、もしくはそれ以上かけて投与することができる。また、分子状水素を含む気体を吸入又は吸引によって経肺投与するときには、大気圧環境下で、或いは、例えば標準大気圧(約1.013気圧をいう。)を超える且つ7.0気圧以下の範囲内の高気圧、例えば1.02~7.0気圧、好ましくは1.02~5.0気圧、より好ましくは1.02~4.0気圧、さらに好ましくは1.02~1.35気圧の範囲内の高気圧環境下(分子状水素含有気体を含む)で被験体に当該気体を投与することができる。
2.肺炎を予防および/または改善するための方法
分子状水素を含む組成物、肺炎、肺炎に関連する症状、投与量、投与方法、などについては、上記1.で説明したとおりである。
本発明の方法では、被験体に、ゼロ(0)より大きく、かつ18.5体積%以下、例えば0.5~18,5体積%、2~10体積%、2~9体積%、2~8体積%、3~10体積%、3~9体積%、3~8体積%、3~7体積%、3~6体積%、4~10体積%、4~9体積%、4~8体積%、4~7体積%、4~6体積%、4~5体積%、5~10体積%、5~9体積%、5~8体積%、6~10体積%、6~9体積%、6~8体積%、6~7体積%など、好ましくは5~10体積%、5~8体積%、例えば6~10体積%、6~8体積%、6~7体積%など、の分子状水素を含有する気体(好ましくは、空気もしくは酸素)を1日あたり例えば1~3時間もしくはそれ以上にわたり吸入又は吸引し、例えば1~3か月もしくはそれ以上、4~7か月もしくはそれ以上、1~3年もしくはそれ以上継続することができる。
或いは、本発明の方法では、被験体に、例えば1~10ppm、1.5~9ppm、1.5~8ppm、1.5~7ppm、1.5~6ppm、1.5~5ppm、1.5~4ppm、2~10ppm、2~9ppm、2~8ppm、2~7ppm、2~6ppm、2~5ppm、3~10ppm、3~9ppm、3~8ppm、3~7ppm、4~10ppm、4~9ppm、4~8ppm、4~7ppm、5~10ppm、5~9ppm、5~8ppm、5~7ppmなど、好ましくは3~10ppm、4~10ppm、5~10ppm、5~9ppm、5~8ppm、5~7ppmなど、の分子状水素含有液体を、静脈内投与の場合1回あたり例えば200~500mL、また経口投与の場合1回あたり例えば500~1000mLを投与し、例えば0.5~3か月もしくはそれ以上、4~7か月もしくはそれ以上、1~3年もしくはそれ以上継続することができる。
本発明の方法はさらに、必要に応じて、肺炎の治療に用いられる治療薬を併用してもよい。併用することによって、肺炎を予防および/または改善が高まることが期待される。
【実施例
以下の実施例を参照しながら本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は当該実施例によって制限されないものとする。
【実施例1】
<水素吸入による間質性肺炎改善の症例>
間質性肺炎と診断された58歳の男性の患者は、週1回水素点滴(1ppm水素、250ml)と水素ガス吸入30分~60分を8週間行った。水素ガスの吸入はMiZ株式会社製MHG-2000α(水素ガス濃度6-7%、120ml/min)を用いた。当該水素の投与により間質性肺炎が有意に改善したことをCT所見においてすりガラス陰影がなくなったことから確認した。治療前と治療後のCT写真を図1および図2に示す。
【産業上の利用可能性】
本発明により、分子状水素を含む組成物を投与することによって、肺炎を予防および/または改善が可能である。
図1
図2