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特許7436764コイルユニット、コイルアセンブリ及びエネルギー変換器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】コイルユニット、コイルアセンブリ及びエネルギー変換器
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/04 20060101AFI20240215BHJP
【FI】
H02K3/04 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023099735
(22)【出願日】2023-06-19
【審査請求日】2023-06-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522478787
【氏名又は名称】株式会社NOT’S
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】坂下 昭洋
(72)【発明者】
【氏名】林 晶
【審査官】木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-066335(JP,A)
【文献】特許第7270854(JP,B2)
【文献】特開平06-165446(JP,A)
【文献】特開2007-236123(JP,A)
【文献】特開2023-030842(JP,A)
【文献】特開2001-045688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/04- 3/20
H02K 3/28
H01F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠状をなし、一対の第一縦辺部、当該第一縦辺部の一端部をつなぐ一端側第一横辺部、及び当該第一縦辺部の他端部をつなぐ他端側第一横辺部を有するとともに、一対の当該第一縦辺部、当該一端側第一横辺部、及び当該他端側第一横辺部の内側に第一空芯部が設けられた第一空芯コイルと、
枠状をなし、一対の第二縦辺部、当該第二縦辺部の一端部をつなぐ一端側第二横辺部、及び当該第二縦辺部の他端部をつなぐ他端側第二横辺部を有するとともに、一対の当該第二縦辺部、当該一端側第二横辺部、及び当該他端側第二横辺部の内側に第二空芯部が設けられた第二空芯コイルと、
枠状をなし、一対の第三縦辺部、当該第三縦辺部の一端部をつなぐ一端側第三横辺部、及び当該第三縦辺部の他端部をつなぐ他端側第三横辺部を有するとともに、一対の当該第三縦辺部、当該一端側第三横辺部、及び当該他端側第三横辺部の内側に第三空芯部が設けられた第三空芯コイルと、で構成され、
前記第一縦辺部、前記第二縦辺部、及び前記第三縦辺部は、所定の円周面の軸線に沿う向きに指向した状態で当該円周面に沿うように湾曲するものであり、
前記一端側第一横辺部は、前記円周面に沿うように湾曲するものであり、
前記一端側第二横辺部は、前記円周面よりも直径が大になる外側円周面に沿うように湾曲するものであり、
前記一端側第三横辺部は、前記外側円周面よりも直径が大になる最外側円周面に沿うように湾曲するものであり、
前記第一縦辺部、前記第二縦辺部、及び前記第三縦辺部の幅は同一であり、前記第一空芯部、前記第二空芯部、及び第三空芯部の幅は同一であり、且つ、前記第一空芯部の幅は一つの第一縦辺部の幅の2倍であり、
前記一対の第一縦辺部は、前記円周面の周方向の一方に位置する一方の第一縦辺部と、前記円周面の周方向の他方に位置する他方の第一縦辺部とを備え、
前記一対の第二縦辺部は、前記周方向の一方に位置する一方の第二縦辺部と、前記周方向の他方に位置する他方の第二縦辺部とを備え、
前記一対の第三縦辺部は、前記周方向の一方に位置する一方の第三縦辺部と、前記周方向の他方に位置する他方の第三縦辺部とを備え、
前記第一空芯コイル、前記第二空芯コイル、及び前記第三空芯コイルは、前記一端側第一横辺部、前記一端側第二横辺部、及び前記一端側第三横辺部が、前記円周面の径方向において外側から、前記一端側第三横辺部、前記一端側第二横辺部、前記一端側第一横辺部の順に重なるように配置され、
前記第二空芯コイルは、前記第三空芯コイルに対し、前記一方の第二縦辺部の分だけ前記周方向の一方にオフセットして配置され、
前記第一空芯コイルは、前記第三空芯コイルに対し、前記他方の第一縦辺部の分だけ前記周方向の他方にオフセットして配置され、
前記第一空芯部に前記他方の第二縦辺部及び前記他方の第三縦辺部が幅方向に並んで配置され、前記第二空芯部に前記一方の第三縦辺部及び前記一方の第一縦辺部が幅方向に並んで配置され、前記第三空芯部に前記一方の第一縦辺部及び前記他方の第二縦辺部が幅方向に並んで配置されたコイルユニット。
【請求項2】
前記他端側第三横辺部は、前記円周面に沿うように湾曲するものであり、
前記他端側第二横辺部は、前記円周面よりも直径が小になる内側円周面に沿うように湾曲するものであり、
前記他端側第一横辺部は、前記内側円周面よりも直径が小になる最内側円周面に沿うように湾曲するものである請求項1に記載のコイルユニット。
【請求項3】
請求項1に記載のコイルユニットを前記円周面に沿って円筒状に配置したコイルアセンブリ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のコイルユニットを前記円周面に沿って1個以上配置した、又は請求項3に記載のコイルアセンブリを用いたエネルギー変換器であって、
前記コイルユニットの有効コイル部の内周側に配置される内側ヨークと、前記有効コイル部の外周側に配置される外側ヨークとを備え、
前記内側ヨーク及び前記外側ヨークの内、少なくとも前記内側ヨークにマグネットが設けられ、
前記内側ヨーク及び前記外側ヨークが一体に、前記コイルユニットに対し相対回転するエネルギー変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の空芯コイルで構成されたコイルユニット、コイルアセンブリ及びそれを用いたエネルギー変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のインナーロータ型コアレスモータは、コイル間のギャップや空芯コイルを使用する場合の空芯部などで隙間が多く、磁束と直交するコイルの有効な線束領域は利用率が低くなっている。このようなコイル間のギャップや空芯コイルにおける空芯部にコイルの線束を配置して有効利用できれば、モータの特性を大きく向上させることができる。
【0003】
特許文献1には、モータに用いられるステータのコイルアセンブリとして、枠状をなす各コイルの空芯部に他のコイルの縦辺部(有効コイル部)が収容されるように構成されたものが示されている。各コイルの外形は、円環をN等分した分割リング形状であって、分割リング形状の2つの側辺のなす角度が360°/N以下になるように形成されていて、コイル同士を密に配置できるようにしている。
【0004】
特許文献1のコイルアセンブリにおいて、各コイルの縦辺部における断面形状(縦辺部が伸延する向きを軸線方向とする場合に軸線方向に直交する面での断面形状)は、同文献に図示されているように扇形である。すなわち、モータの特性を向上させるべく縦辺部の断面積を広く取ろうとすると、縦辺部同士の隙間は狭まるため、ステータとして組み立てるにあたり、コイルを径方向から組み付けることができなくなる。この点に関して特許文献1のコイルアセンブリでは、コイルを軸線方向に相対的に移動させて組み付けるようにしている。しかし、モータのトルクを増大させるべく縦辺部の長さを長くしていくにつれ、コイルを軸線方向に移動させる距離も増えることになる。すなわち、この種のコイルアセンブリを組み立てるには、コイル同士の径方向の隙間が殆ど無い状態でコイルを長い距離移動させさせなければならず、組み立て性の点で難がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6864204号公報
【文献】特開2021-141763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで特許文献2には、コイルアセンブリを構成する複数のコイルのうち、最後に残ったコイルを径方向内側から組付けることができるコイル(第一コイル)を備えるモータが示されている。しかし、第一コイルの縦辺部の断面形状は、図示されているように略平行四辺形になるものであって、隣り合う縦辺部における径方向外側では、縦辺部同士の間に大きな隙間があいている。従って特許文献2のコイルアセンブリは、モータの特性向上においてこの隙間の分のスペースが有効利用できていない状況にある。
【0007】
このような点に鑑み、本発明は、組み立て性に優れるとともにコイルの線束を高密度に配置することができるコイルユニット、コイルアセンブリ及びこれを用いたエネルギー変換器を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、枠状をなし、一対の第一縦辺部、当該第一縦辺部の一端部をつなぐ一端側第一横辺部、及び当該第一縦辺部の他端部をつなぐ他端側第一横辺部を有するとともに、一対の当該第一縦辺部、当該一端側第一横辺部、及び当該他端側第一横辺部の内側に第一空芯部が設けられた第一空芯コイルと、枠状をなし、一対の第二縦辺部、当該第二縦辺部の一端部をつなぐ一端側第二横辺部、及び当該第二縦辺部の他端部をつなぐ他端側第二横辺部を有するとともに、一対の当該第二縦辺部、当該一端側第二横辺部、及び当該他端側第二横辺部の内側に第二空芯部が設けられた第二空芯コイルと、枠状をなし、一対の第三縦辺部、当該第三縦辺部の一端部をつなぐ一端側第三横辺部、及び当該第三縦辺部の他端部をつなぐ他端側第三横辺部を有するとともに、一対の当該第三縦辺部、当該一端側第三横辺部、及び当該他端側第三横辺部の内側に第三空芯部が設けられた第三空芯コイルと、で構成され、前記第一縦辺部、前記第二縦辺部、及び前記第三縦辺部は、所定の円周面の軸線に沿う向きに指向した状態で当該円周面に沿うように湾曲するものであり、前記一端側第一横辺部は、前記円周面に沿うように湾曲するものであり、前記一端側第二横辺部は、前記円周面よりも直径が大になる外側円周面に沿うように湾曲するものであり、前記一端側第三横辺部は、前記外側円周面よりも直径が大になる最外側円周面に沿うように湾曲するものであり、前記第一縦辺部、前記第二縦辺部、及び前記第三縦辺部の幅は同一であり、前記第一空芯部、前記第二空芯部、及び第三空芯部の幅は同一であり、且つ、前記第一空芯部の幅は一つの第一縦辺部の幅の2倍であり、前記一対の第一縦辺部は、前記円周面の周方向の一方に位置する一方の第一縦辺部と、前記円周面の周方向の他方に位置する他方の第一縦辺部とを備え、前記一対の第二縦辺部は、前記周方向の一方に位置する一方の第二縦辺部と、前記周方向の他方に位置する他方の第二縦辺部とを備え、前記一対の第三縦辺部は、前記周方向の一方に位置する一方の第三縦辺部と、前記周方向の他方に位置する他方の第三縦辺部とを備え、前記第一空芯コイル、前記第二空芯コイル、及び前記第三空芯コイルは、前記一端側第一横辺部、前記一端側第二横辺部、及び前記一端側第三横辺部が、前記円周面の径方向において外側から、前記一端側第三横辺部、前記一端側第二横辺部、前記一端側第一横辺部の順に重なるように配置され、前記第二空芯コイルは、前記第三空芯コイルに対し、前記一方の第二縦辺部の分だけ前記周方向の一方にオフセットして配置され、前記第一空芯コイルは、前記第三空芯コイルに対し、前記他方の第一縦辺部の分だけ前記周方向の他方にオフセットして配置され、前記第一空芯部に前記他方の第二縦辺部及び前記他方の第三縦辺部が幅方向に並んで配置され、前記第二空芯部に前記一方の第三縦辺部及び前記一方の第一縦辺部が幅方向に並んで配置され、前記第三空芯部に前記一方の第一縦辺部及び前記他方の第二縦辺部が幅方向に並んで配置されたコイルユニットである。
【0009】
上述したコイルユニットは、前記他端側第三横辺部は、前記円周面に沿うように湾曲するものであり、前記他端側第二横辺部は、前記円周面よりも直径が小になる内側円周面に沿うように湾曲するものであり、前記他端側第一横辺部は、前記内側円周面よりも直径が小になる最内側円周面に沿うように湾曲するものであることが好ましい。
【0010】
また本発明は、上述したコイルユニットを前記円周面に沿って円筒状に配置したコイルアセンブリでもある。
【0011】
また本発明は、上述したコイルユニットを前記円周面に沿って1個以上配置した、又は請求項3に記載のコイルアセンブリを用いたエネルギー変換器であって、前記コイルユニットの有効コイル部の内周側に配置される内側ヨークと、前記有効コイル部の外周側に配置される外側ヨークとを備え、前記内側ヨーク及び前記外側ヨークの内、少なくとも前記内側ヨークにマグネットが設けられ、前記内側ヨーク及び前記外側ヨークが一体に、前記コイルユニットに対し相対回転するエネルギー変換器でもある。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、第一空芯コイル、第二空芯コイル、及び第二空芯コイルによって1つのコイルユニットを構成していて、第一縦辺部、第二縦辺部、及び第二縦辺部の断面形状が略扇形であってこれらの間の隙間が狭くなる場合でも、これらのコイルを径方向に移動させるようにして組み立てることができる。またこのコイルユニットを複数用いてこれらを円筒状に組み立てる際も、コイルユニットを径方向に移動させることにより組み立てることができ、また3個のコイルを一単位として取り扱うことができることから組み立て時の作業性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る第一空芯コイルの一実施例を模式的に示した図であって、(a)は正面図であり(b)は中心軸に沿う縦断面図であり、(c)は矢印Aに沿う矢視図である。
図2】本発明に係る第二空芯コイルの一実施例を示した図であって、(a)は正面図であり(b)は中心軸に沿う縦断面図であり、(c)は矢印Bに沿う矢視図である。
図3】本発明に係る第三空芯コイルの一実施例を示した図であって、(a)は正面図であり(b)は中心軸に沿う縦断面図であり、(c)は矢印Cに沿う矢視図である。
図4図1図3に示した第一空芯コイル、第二空芯コイル、及び第三空芯コイルで構成されるコイルユニットの概略的な斜視図である。
図5図1図3に示した第一空芯コイル、第二空芯コイル、及び第三空芯コイルで構成されるコイルユニットに関し、これらのコイルの配置を変更した変形例を示した図である。
図6図4に示したコイルユニットを4個用いてこれらを円筒状に配置したコイルアセンブリに関し、(a)は平面図であり、(b)はD-Dに沿う断面図であり、(c)は底面図である。
図7図6に示したコイルアセンブリのE-Eに沿う断面図である。
図8図6に示したコイルアセンブリの概略的な斜視図である。
図9図6に示したコイルアセンブリをステータコイルとして用いたモータの断面図である。
図10図9に示したモータの変形例を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るコイルユニットの一実施例について説明する。図4は、本実施形態のコイルユニット10を示した斜視図である。コイルユニット10は、第一空芯コイル1、第二空芯コイル2、第三空芯コイル3で構成されている。なお本実施形態のコイルユニット10は、図6図7図8に示すようにこれを4個用いて円筒状に配置することにより、コイルアセンブリ20として組み立てられる。また以下の説明において、軸線方向とは、図6に示した円筒状のコイルアセンブリ20の中心軸線(軸線O)に沿う方向であり、径方向とは、軸線Oに対して垂直な面内で軸線Oと直交する方向であり、周方向とは、軸線Oに対して垂直な面内で軸線Oを周回する方向である。
【0015】
第一空芯コイル1は、図1(a)に示すように矩形枠状に形作られている。ここで、第一空芯コイル1を図6に示したコイルアセンブリ20として組み立てた際に軸線Oに沿って延在する部位を第一縦辺部1aと称する。またコイルアセンブリ20として組み立てた際に上方に位置していて、一対の第一縦辺部1aをつなぐ部位を一端側第一横辺部1bと称し、下方に位置して一対の第一縦辺部1aをつなぐ部位を他端側第一横辺部1cと称する。そして第一空芯コイル1における一対の第一縦辺部1a、一端側第一横辺部1b、及び他端側第一横辺部1cで取り囲まれる部位を第一空芯部1dと称する。なお第一縦辺部1aの幅は、後述する第二縦辺部2aと第三縦辺部3aの幅と実質的に同一である。また第一空芯部1dの幅は、後述する第二空芯部2dと第三空芯部3dの幅と実質的に同一であり、且つ第一縦辺部1aの幅の略2倍である。
【0016】
第一縦辺部1aと一端側第一横辺部1bは、図1(b)、(c)に示すように半径Rとなる円周面Sに沿うように湾曲している。そして他端側第一横辺部1cは、半径Ri2となる最内側円周面Si2に沿うように湾曲している。
【0017】
第二空芯コイル2は、図2(a)に示すように矩形枠状に形作られている。ここで、第二空芯コイル2における軸線Oに沿って延在する部位を第二縦辺部2aと称する。またコイルアセンブリ20として組み立てた際に上方に位置していて、一対の第二縦辺部2aをつなぐ部位を一端側第二横辺部2bと称し、下方に位置して一対の第二縦辺部2aをつなぐ部位を他端側第二横辺部2cと称する。そして第二空芯コイル2における一対の第二縦辺部2a、一端側第二横辺部2b、及び他端側第二横辺部2cで取り囲まれる部位を第二空芯部2dと称する。
【0018】
第二縦辺部2aは、図2(b)、(c)に示すように半径Rとなる円周面Sに沿うように湾曲している。そして一端側第二横辺部2bは、半径Ro1となる外側円周面So1に沿うように湾曲していて、他端側第二横辺部2cは、半径Ri1となる内側円周面Si1に沿うように湾曲している。
【0019】
第三空芯コイル3は、図3(a)に示すように矩形枠状に形作られている。ここで、第三空芯コイル3における軸線Oに沿って延在する部位を第三縦辺部3aと称する。またコイルアセンブリ20として組み立てた際に上方に位置していて、一対の第三縦辺部3aをつなぐ部位を一端側第三横辺部3bと称し、下方に位置して一対の第三縦辺部3aをつなぐ部位を他端側第三横辺部3cと称する。そして第三空芯コイル3における一対の第三縦辺部3a、一端側第三横辺部3b、及び他端側第三横辺部3cで取り囲まれる部位を第三空芯部3dと称する。
【0020】
第三縦辺部3aと他端側第三横辺部3cは、図3(b)、(c)に示すように半径Rとなる円周面Sに沿うように湾曲している。そして一端側第三横辺部3bは、半径Ro2となる最外側円周面So2に沿うように湾曲している。
【0021】
なお本実施形態において、第一空芯コイル1、第二空芯コイル2、及び第三空芯コイル3の厚みは全て等しくなっている。以下、第一空芯コイル1、第二空芯コイル2、及び第三空芯コイル3の厚みを厚みtと称する。
【0022】
上述した半径R等は、Ri2<Ri1<R<Ro1<Ro2の関係を満たす。また、各半径の差(Ro2とRo1の差、Ro1とRの差、・・・)は、第一空芯コイル1等の厚みtより大(Ro2-Ro1>t、Ro1-R>t、・・・)になるように設定される。ここで図6等においては、例えば一端側第一横辺部1bと一端側第二横辺部2bとが接触するように(上述した各半径の差が厚みtと等しくなるように)示しているが、実際には僅かな隙間があいていて、これらの間は電気的に絶縁されている。なお、例えば一端側第一横辺部1bと一端側第二横辺部2bの表面が絶縁物で被覆されていて十分な絶縁性を有している等の状態にあれば、一端側第一横辺部1bと一端側第二横辺部2bとは接触していてもよい。
【0023】
このような第一空芯コイル1、第二空芯コイル2、及び第三空芯コイル3は、例えばこれらの骨格をなすコイルボビンを合成樹脂等で形成し、このコイルボビンに絶縁電線を巻き回して形成することができる。なお第一空芯コイル1等を形成する手段はこれに限られず、第一空芯コイル1等の形状になる巻き枠を準備し、自己融着性を有する絶縁電線を巻き回した後に熱を加える又は溶剤を使用することによって相互に融着させ、その後巻き枠から取り外して(更に必要に応じてプレス成形で外形を所定の形状に整えて)第一空芯コイル1等を形成してもよい。また、一種類の空芯コイルを準備しておき、それを第一空芯コイル1、第二空芯コイル2、及び第三空芯コイル3の形状に形作るようにしてもよい。この方法としては、平坦状空芯コイル用の巻き枠を準備し、上述した自己融着性を有する絶縁電線を用いて平坦状空芯コイルを形成し、これを3種類の金型でプレス成形して湾曲させて第一空芯コイル1、第二空芯コイル2、及び第三空芯コイル3を形成してもよい。
【0024】
このような第一空芯コイル1、第二空芯コイル2、及び第三空芯コイル3を準備した後は、図4図5(a)に示すようにこれらを重ね合わせて相互に固定することにより、コイルユニット10を形成することができる。図4図5(a)においては、一端側第一横辺部1b、一端側第二横辺部2b、一端側第三横辺部3bを同じ側に向けておき、第一空芯コイル1、第二空芯コイル2、第三空芯コイル3の順で重ねつつ、第一空芯部1dに第二縦辺部2aと第三縦辺部3aが配置され、第二空芯部2dに第三縦辺部3aと第一縦辺部1aが配置され、第三空芯部3dに第一縦辺部1aと第二縦辺部2aが配置されるようにして(図7を参照)、例えば接着剤等によりこれらを固定する。
【0025】
このようなコイルユニット10によれば、第一空芯コイル1、第二空芯コイル2、及び第三空芯コイル3に対して順次電流を供給することにより、第一縦辺部1a、第二縦辺部2a、及び第三縦辺部3aが有効コイル部として機能する3相の電磁コイルとして用いることができる。
【0026】
なおコイルユニット10を形成するにあたり、第一空芯コイル1、第二空芯コイル2、及び第三空芯コイル3の重ね合わせ方は上述したものに限られない。例えば、図5(a)に示したコイルユニット10は、径方向内側から外側に向かって一端側第一横辺部1b、一端側第二横辺部2b、一端側第三横辺部3bの順に配置した状態において、矢視図に示したように時計回りに第一空芯コイル1、第二空芯コイル2、及び第三空芯コイル3が配置されるようにしたが、図5(b)に示したように、反時計回りに第一空芯コイル1、第二空芯コイル2、及び第三空芯コイル3を配置してもよい。また図5(c)に示すように、第三空芯コイル3を中心として時計回りに第一空芯コイル1を配置して反時計回りに第二空芯コイル2を配置してもよいし、図5(d)に示すように、第三空芯コイル3を中心として反時計回りに第一空芯コイル1を配置して時計回りに第二空芯コイル2を配置してもよい。
【0027】
本実施形態のコイルユニット10は、図6図7図8に示すようにこれを4個用いてこれらを周方向に配置することにより、全体として円筒状になるコイルアセンブリ20とすることができる。このようなコイルアセンブリ20によれば、図7に示すように第一縦辺部1a等は、第一縦辺部1a、第二縦辺部2a、第三縦辺部3a、第一縦辺部1a・・・の順で配置されるため、3相モータや3相発電機のコイルとして用いることができる。また図6(b)に示すようにコイルアセンブリ20の外周面は、他端側第一横辺部1c等が位置する部分は径方向外側へ突出していないため、3相モータ等として使用する際に他端側第一横辺部1c等が位置する側から円筒状のヨークを容易に挿入することが可能であり、作業性に優れる。またコイルアセンブリ20の内周面は、一端側第一横辺部1b等が位置する部分は径方向内側へ突出していないため、3相モータ等として使用する際に一端側第一横辺部1b等が位置する側からロータを容易に挿入することができる。
【0028】
図9は、コイルユニット10を用いたエネルギー変換器の一例であるモータ30を示している。モータ30は、コイルアセンブリ20を備えるステータ31と、ステータ31に対して回転するロータ32を備えている。本実施形態のコイルアセンブリ20は、一端側第一横辺部1b等や他端側第一横辺部1c等が、例えば合成樹脂製の保護部33によって覆われていて、ベース34に固定されている。またベース34には軸受35が設けられていて、軸受35にはロータ32のシャフト36が回転可能に保持されている。そしてシャフト36には、例えば純鉄や低炭素鋼によって形成され、コイルアセンブリ20の径方向内側に位置する内側ヨーク37と、フランジ部38を介してコイルアセンブリ20の径方向外側に位置する例えば純鉄製の外側ヨーク39が設けられている。ここで、内側ヨーク37の外周面には内側マグネット40が設けられ、外側ヨーク39の内周面には外側マグネット41が設けられている。
【0029】
このようなモータ30によれば、内側ヨーク37及び内側マグネット40と外側ヨーク39及び外側マグネット41が、コイルアセンブリ20を挟むように対向して配置されているため、シャフト36が回転する際、内側ヨーク37と外側ヨーク39の内部での磁束変化が生じず、それ故、内側ヨーク37と外側ヨーク39の内部での鉄損が抑制されるため、効率の点で優れている。
【0030】
図10に示したモータ30Aは、図9に示したモータ30に対して外側マグネット41を省略したものである。このようなモータ30Aにおいても、内側ヨーク37と外側ヨーク39の内部での鉄損を抑制することができる。
【0031】
コイルユニット10やコイルアセンブリ20を用いたエネルギー変換器は、上述した3相モータや3相発電機の他、例えばコイルユニット10を1~3個用いて限られた角度で往復運動するボイスコイルモータ(VCM)が挙げられる。
【0032】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば上述した実施形態の構成は、適宜追加、削除が可能であり、また一の実施形態の構成を他の実施形態に設けることも可能である。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【0033】
例えば本実施形態の第一空芯コイル1等の形状は図示したものに限られず、例えば図示例では平面視で矩形状になるように示した第一空芯部1d等の形状は、対向する縁部の両方が円弧状になるオーバル形状になるものでもよいし、対向する縁部の一方が円弧状になるものでもよい。また本実施形態の第一空芯コイル1等を用いたコイルユニット10によれば、これをコイルアセンブリ20として組み立てた際、上述したように円筒状のヨークへ容易に挿入できる点で有利であるが、一端側第三横辺部3b等と同様に他端側第三横辺部3c等も径方向外側へ突出させたコイルユニット10も、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0034】
1:第一空芯コイル
1a:第一縦辺部
1b:一端側第一横辺部
1c:他端側第一横辺部
1d:第一空芯部
2:第二空芯コイル
2a:第二縦辺部
2b:一端側第二横辺部
2c:他端側第二横辺部
2d:第二空芯部
3:第三空芯コイル
3a:第三縦辺部
3b:一端側第三横辺部
3c:他端側第三横辺部
3d:第三空芯部
10:コイルユニット
20:コイルアセンブリ
30、30A:モータ(エネルギー変換器)
O:軸線
S:円周面
Si1:内側円周面
Si2:最内側円周面
So1:外側円周面
So2:最外側円周面
【要約】
【課題】組み立て性に優れるとともにコイルの線束を高密度に配置することができるコイルユニットを提案する。
【解決手段】コイルユニット10は、第一空芯コイル1、第二空芯コイル2、第三空芯コイル3で構成され、第一縦辺部1a、第二縦辺部2a、第三縦辺部3aは、円周面Sに沿うように湾曲するものであり、一端側第一横辺部1bは、円周面Sに沿うように湾曲するものであり、一端側第二横辺部2bは、円周面Sよりも直径が大になる外側円周面So1に沿うように湾曲するものであり、一端側第三横辺部3bは、外側円周面So1よりも直径が大になる最外側円周面So2に沿うように湾曲するものであり、第一空芯部1dに第二縦辺部2aと第三縦辺部3aが配置され、第二空芯部2dに第三縦辺部3aと第一縦辺部1aが配置され、第三空芯部3dに第一縦辺部1aと第二縦辺部2aが配置される。
【選択図】図7
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10