(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】吸気マニホルドおよびエンジン
(51)【国際特許分類】
F02B 67/10 20060101AFI20240215BHJP
F02B 67/00 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
F02B67/10
F02B67/00 E
(21)【出願番号】P 2020216806
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【氏名又は名称】芳野 理之
(74)【代理人】
【識別番号】100098796
【氏名又は名称】新井 全
(74)【代理人】
【識別番号】100121647
【氏名又は名称】野口 和孝
(72)【発明者】
【氏名】岸 真治
(72)【発明者】
【氏名】白石 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】松岡 綾乃
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第01863806(US,A)
【文献】特開平07-253049(JP,A)
【文献】特開2009-293457(JP,A)
【文献】特開2016-156350(JP,A)
【文献】特開2009-203966(JP,A)
【文献】特開2007-224834(JP,A)
【文献】特開2002-276472(JP,A)
【文献】米国特許第04589397(US,A)
【文献】特開2017-078352(JP,A)
【文献】特開2014-084776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 67/10
F02B 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体燃料と空気とがガスミキサによって互いに混合された混合気をエンジンの複数の気筒に導く吸気マニホルドであって、
前記エンジンの側方部において長手方向が前記複数の気筒の配列方向に平行になるように配置され、水平方向である前記配列方向に対して直交する方向のうちの鉛直方向である上下方向において前記ガスミキサの直下に配置されたスロットルを通過した前記混合気を導く吸気本体と、
前記吸気本体に接続され前記吸気本体から導かれた前記混合気を前記複数の気筒に分配する複数の吸気管と、
を備え、
前記吸気本体は、
前記上下方向において前記スロットルの直下に配置され、上流部において前記スロットルを介して前記ガスミキサに接続され、前記スロットルを通過した前記混合気を受けるとともに前記混合気が前記スロットルを通過するときの第1流れ方向から前記第1流れ方向に対して直交する第2流れ方向に前記混合気の流れ方向を変更する流れ方向変更部と、
前記配列方向に平行な方向において前記流れ方向変更部の真横に、かつ、前記上下方向において前記複数の吸気管の直下に配置され、上流部において前記流れ方向変更部に接続されるとともに下流部において前記複数の吸気管に接続され、前記流れ方向変更部から導かれた前記混合気を前記第2流れ方向に沿って導いた後に前記複数の吸気管に導く集合部と、
を有し、
前記第1流れ方向は、前記
上下方向
において下向きであり、
前記第2流れ方向は、前記配列方向に平行な方向
において前記流れ方向変更部から前記集合部へ向かう向きであり、
前記第2流れ方向に沿って導かれた後に前記複数の吸気管に導かれる前記混合気の流れ方向は、前記
上下方向
において上向きであることを特徴とする吸気マニホルド。
【請求項2】
気体燃料と空気とを互いに混合させて混合気を生成するガスミキサと、
前記ガスミキサにより生成された前記混合気を通過させるスロットルと、
前記スロットルを通過した前記混合気を導く吸気マニホルドと、
前記吸気マニホルドから供給された前記混合気を内部に取り入れる複数の気筒と、
を備え、
前記吸気マニホルドは、
エンジンの側方部において長手方向が前記複数の気筒の配列方向に平行になるように配置され、水平方向である前記配列方向に対して直交する方向のうちの鉛直方向である上下方向において前記ガスミキサの直下に配置された前記スロットルを通過した前記混合気を導く吸気本体と、
前記吸気本体に接続され前記吸気本体から導かれた前記混合気を前記複数の気筒に分配する複数の吸気管と、
を有し、
前記吸気本体は、
前記上下方向において前記スロットルの直下に配置され、上流部において前記スロットルを介して前記ガスミキサに接続され、前記スロットルを通過した前記混合気を受けるとともに前記混合気が前記スロットルを通過するときの第1流れ方向から前記第1流れ方向に対して直交する第2流れ方向に前記混合気の流れ方向を変更する流れ方向変更部と、
前記配列方向に平行な方向において前記流れ方向変更部の真横に、かつ、前記上下方向において前記複数の吸気管の直下に配置され、上流部において前記流れ方向変更部に接続されるとともに下流部において前記複数の吸気管に接続され、前記流れ方向変更部から導かれた前記混合気を前記第2流れ方向に沿って導いた後に前記複数の吸気管に導く集合部と、
を有し、
前記第1流れ方向は、前記
上下方向
において下向きであり、
前記第2流れ方向は、前記配列方向に平行な方向
において前記流れ方向変更部から前記集合部へ向かう向きであり、
前記第2流れ方向に沿って導かれた後に前記複数の吸気管に導かれる前記混合気の流れ方向は、前記
上下方向
において上向きであることを特徴とするエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気マニホルドおよびエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジン補機の一例としての燃料供給装置がエンジン本体に取り付けられたエンジン補機支持構造が開示されている。特許文献1に記載された燃料供給装置は、スロットルと、ガスミキサと、を有する。特許文献1に記載されたエンジン補機支持構造において、燃料と空気とがガスミキサによって互いに混合された混合気は、スロットルを通過し、吸気マニホルドの吸気本体に導かれる。
【0003】
ここで、混合気がスロットルを通過するときの流れ方向は、混合気が吸気本体を流れるときの流れ方向と平行である。すなわち、ガスミキサから供給された混合気は、スロットルを通過し、流れ方向を変えることなくガスミキサの軸線に沿って吸気本体を流れる。そして、吸気本体を流れた混合気は、吸気マニホルドの複数の吸気管によってエンジンの複数の気筒に分配される。
【0004】
そのため、特許文献1に記載されたエンジン補機支持構造には、燃料と空気との混合度合いを向上させ、エンジンの複数の気筒同士における空燃比のばらつきを抑えるという点において改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、複数の気筒同士における空燃比のばらつきを抑えることができる吸気マニホルドおよびエンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、燃料と空気とを含む混合気をエンジンの複数の気筒に導く吸気マニホルドであって、スロットルを通過した前記混合気を導く吸気本体と、前記吸気本体に接続され前記吸気本体から導かれた前記混合気を前記複数の気筒に分配する複数の吸気管と、を備え、前記吸気本体は、前記スロットルを通過した前記混合気を受けるとともに前記混合気が前記スロットルを通過するときの第1流れ方向から前記第1流れ方向とは異なる第2流れ方向に前記混合気の流れ方向を変更する流れ方向変更部と、前記流れ方向変更部から導かれた前記混合気を前記第2流れ方向に沿って導いた後に前記複数の吸気管に導く集合部と、を有することを特徴とする本発明に係る吸気マニホルドにより解決される。
【0008】
本発明に係る吸気マニホルドは、吸気本体と、複数の吸気管と、を備え、燃料と空気とを含む混合気であって吸気本体から導かれた混合気を複数の吸気管によりエンジンの複数の気筒に分配する。吸気本体は、流れ方向変更部と、集合部と、を有する。流れ方向変更部は、スロットルを通過した混合気を受けるとともに、混合気の流れ方向を第1流れ方向から第2流れ方向へ変更する。第1流れ方向は、混合気がスロットルを通過するときの流れ方向である。第2流れ方向は、第1流れ方向とは異なる流れ方向である。そして、集合部は、流れ方向変更部から導かれた混合気を第2流れ方向に沿って導いた後に複数の吸気管に導く。
【0009】
このように、スロットルを通過した混合気は、流れ方向変更部において流れ方向を第1流れ方向から第2流れ方向に変更させられ、変更させられた流れ方向(すなわち第2流れ方向)に沿って集合部を流れる。そのため、スロットルを通過した混合気における燃料と空気との混合度合いは、流れ方向変更部において向上する。そして、混合度合いが向上した混合気が、第2流れ方向に沿って集合部を流れた後、複数の吸気管に導かれる。これにより、エンジンの複数の気筒同士における空燃比のばらつきを抑えることができる。
【0010】
また、混合気の混合度合いを向上させ、エンジンの複数の気筒同士における空燃比のばらつきを抑えることができるため、集合部の容積を低減することができる。すなわち、集合部の容積として比較的大きい容積を確保しなくとも、流れ方向変更部において混合気の混合度合いを向上させ、エンジンの複数の気筒同士における空燃比のばらつきを抑えることができる。これにより、吸気マニホルドの小型化を図ることができる。
【0011】
本発明に係る吸気マニホルドにおいて、好ましくは、前記第2流れ方向は、前記第1流れ方向に対して直交することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る吸気マニホルドによれば、スロットルを通過した混合気は、流れ方向変更部において流れ方向を第1流れ方向から第1流れ方向に対して直交する第2流れ方向に変更させられる。これにより、スロットルを通過した混合気における燃料と空気との混合度合いは、流れ方向変更部においてより一層向上する。
【0013】
本発明に係る吸気マニホルドにおいて、好ましくは、前記燃料は、気体燃料であり、前記スロットルを通過する前記混合気は、前記気体燃料と前記空気とがガスミキサによって互いに混合された混合気であることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る吸気マニホルドによれば、燃料は、気体燃料である。そのため、本発明に係る吸気マニホルドは、気体燃料と空気とを含む混合気をエンジンの複数の気筒に導く。つまり、本発明に係る吸気マニホルドが取り付けられたエンジンは、ガスエンジンである。そして、スロットルを通過する混合気は、気体燃料と空気とがガスミキサによって互いに混合された混合気である。そのため、ガスミキサから供給された混合気は、スロットルを通過し、流れ方向変更部において流れ方向を第1流れ方向から第2流れ方向に変更させられ、変更させられた流れ方向(すなわち第2流れ方向)に沿って集合部を流れる。そのため、スロットルを通過した混合気における気体燃料と空気との混合度合いは、流れ方向変更部において向上する。そして、混合度合いが向上した混合気が、第2流れ方向に沿って集合部を流れた後、複数の吸気管に導かれる。これにより、エンジンの複数の気筒同士における空燃比のばらつき、言い換えればエンジンの複数の気筒同士における気体燃料の濃度のばらつきを抑えることができる。
【0015】
前記課題は、スロットルと、燃料と空気とを含み前記スロットルを通過した混合気を導く吸気マニホルドと、前記吸気マニホルドから供給された前記混合気を内部に取り入れる複数の気筒と、を備え、前記吸気マニホルドは、前記スロットルを通過した前記混合気を導く吸気本体と、前記吸気本体に接続され前記吸気本体から導かれた前記混合気を前記複数の気筒に分配する複数の吸気管と、を有し、前記吸気本体は、前記スロットルを通過した前記混合気を受けるとともに前記混合気が前記スロットルを通過するときの第1流れ方向から前記第1流れ方向とは異なる第2流れ方向に前記混合気の流れ方向を変更する流れ方向変更部と、前記流れ方向変更部から導かれた前記混合気を前記第2流れ方向に沿って導いた後に前記複数の吸気管に導く集合部と、を有することを特徴とする本発明に係るエンジンにより解決される。
【0016】
本発明に係るエンジンは、スロットルと、吸気マニホルドと、複数の気筒と、を備える。吸気マニホルドは、吸気本体と、複数の吸気管と、を備え、燃料と空気とを含む混合気であって吸気本体から導かれた混合気を複数の吸気管によりエンジンの複数の気筒に分配する。吸気本体は、流れ方向変更部と、集合部と、を有する。流れ方向変更部は、スロットルを通過した混合気を受けるとともに、混合気の流れ方向を第1流れ方向から第2流れ方向へ変更する。第1流れ方向は、混合気がスロットルを通過するときの流れ方向である。第2流れ方向は、第1流れ方向とは異なる流れ方向である。そして、集合部は、流れ方向変更部から導かれた混合気を第2流れ方向に沿って導いた後に複数の吸気管に導く。
【0017】
このように、スロットルを通過した混合気は、流れ方向変更部において流れ方向を第1流れ方向から第2流れ方向に変更させられ、変更させられた流れ方向(すなわち第2流れ方向)に沿って集合部を流れる。そのため、スロットルを通過した混合気における燃料と空気との混合度合いは、流れ方向変更部において向上する。そして、混合度合いが向上した混合気が、第2流れ方向に沿って集合部を流れた後、複数の吸気管に導かれる。これにより、エンジンの複数の気筒同士における空燃比のばらつきを抑えることができる。
【0018】
また、混合気の混合度合いを向上させ、エンジンの複数の気筒同士における空燃比のばらつきを抑えることができるため、集合部の容積を低減することができる。すなわち、集合部の容積として比較的大きい容積を確保しなくとも、流れ方向変更部において混合気の混合度合いを向上させ、エンジンの複数の気筒同士における空燃比のばらつきを抑えることができる。これにより、吸気マニホルドの小型化を図ることができる。
【0019】
本発明に係るエンジンにおいて、好ましくは、前記燃料は、気体燃料である。本発明に係るエンジンは、前記気体燃料と前記空気とを互いに混合させて前記混合気を生成するとともに前記混合気を前記スロットルに供給するガスミキサをさらに備えたことを特徴とする。
【0020】
本発明に係るエンジンによれば、燃料は、気体燃料である。つまり、本発明に係るエンジンは、ガスエンジンである。そして、スロットルを通過する混合気は、気体燃料と空気とがガスミキサによって互いに混合された混合気である。そのため、ガスミキサから供給された混合気は、スロットルを通過し、流れ方向変更部において流れ方向を第1流れ方向から第2流れ方向に変更させられ、変更させられた流れ方向(すなわち第2流れ方向)に沿って集合部を流れる。そのため、スロットルを通過した混合気における気体燃料と空気との混合度合いは、流れ方向変更部において向上する。そして、混合度合いが向上した混合気が、第2流れ方向に沿って集合部を流れた後、複数の吸気管に導かれる。これにより、エンジンの複数の気筒同士における空燃比のばらつき、言い換えればエンジンの複数の気筒同士における気体燃料の濃度のばらつきを抑えることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、複数の気筒同士における空燃比のばらつきを抑えることができる吸気マニホルドおよびエンジンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係るエンジンを表す斜視図である。
【
図2】
図1に表した切断面A-Aにおける断面図である。
【
図3】比較例に係るエンジンの吸気マニホルドの周辺構造を表す断面図である。
【
図4】本実施形態に係るエンジンの各吸気ポートと当量比との関係を例示するグラフである。
【
図5】比較例に係るエンジンの各吸気ポートと当量比との関係を例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係るエンジンを表す斜視図である。
図2は、
図1に表した切断面A-Aにおける断面図である。
図3は、比較例に係るエンジンの吸気マニホルドの周辺構造を表す断面図である。
【0025】
本実施形態に係るエンジン2は、例えば、天然ガス、LPG、バイオガスなどの気体燃料で作動する内燃機関すなわちガスエンジンである。なお、本実施形態に係るエンジン2は、ガスエンジンだけではなく産業用ディーゼルエンジンとして利用されてもよい。
図1に表したエンジン2は、4気筒エンジンであり、例えば建設機械、農業機械、芝刈り機のような車両等に搭載される。
【0026】
図1に表したように、エンジン2は、シリンダブロック3と、シリンダヘッド4と、ヘッドカバー5と、オイルパン6と、吸気マニホルド8と、を備える。シリンダブロック3は、下部に形成されたクランクケース31と、上部に形成されたシリンダ(すなわち気筒:図示せず)と、を有する。前述したように、
図1に表したエンジン2は、4つの気筒を有する。シリンダヘッド4は、シリンダブロック3の上部に組み付けられている。ヘッドカバー5は、シリンダヘッド4の上部に組み付けられている。オイルパン6は、シリンダブロック3の下部(具体的にはクランクケース31の下部)に組み付けられている。
【0027】
吸気マニホルド8は、シリンダヘッド4の側方部に組み付けられ、吸気本体81と、複数の吸気管82と、を有する。複数の吸気管82は、第1吸気管821と、第2吸気管822と、第3吸気管823と、第4吸気管824と、を含む。すなわち、本実施形態に係る吸気マニホルド8は、複数の吸気管82として、第1吸気管821と、第2吸気管822と、第3吸気管823と、第4吸気管824と、を有する。
【0028】
第1吸気管821は、シリンダヘッド4に形成された第1吸気ポート(図示せず)を介して、シリンダブロック3に形成された第1気筒(図示せず)に接続されている。第2吸気管822は、シリンダヘッド4に形成された第2吸気ポート(図示せず)を介して、シリンダブロック3に形成された第2気筒(図示せず)に接続されている。第3吸気管823は、シリンダヘッド4に形成された第3吸気ポート(図示せず)を介して、シリンダブロック3に形成された第3気筒(図示せず)に接続されている。第4吸気管824は、シリンダヘッド4に形成された第4吸気ポート(図示せず)を介して、シリンダブロック3に形成された第4気筒(図示せず)に接続されている。
【0029】
また、
図1に表したように、エンジン2は、燃料供給装置の少なくとも一部として機能するガスミキサ91およびスロットル92(例えば電子制御スロットル)を備える。エンジン2が産業用ディーゼルエンジンとして利用される場合には、ガスミキサ91は、必ずしも必要な部品というわけではない。
図1に表した矢印A1のように、天然ガス、LPG、バイオガスなどの気体燃料がガスミキサ91に供給される。また、
図1に表した矢印A2のように、エアクリーナを通して吸入された空気がガスミキサ91に供給される。ガスミキサ91は、気体燃料が燃焼しやすい適正な割合で燃料と空気とを互いに混合させ、燃料と空気とを含む混合気をスロットル92および吸気マニホルド8を通してエンジン2の気筒へ供給する。ガスミキサ91により混合される燃料と空気との割合すなわち混合気に含まれる燃料と空気との割合は、空燃比あるいは空気燃料比などと呼ばれる。
【0030】
本実施形態に係る吸気マニホルド8は、燃料と空気とを含む混合気をエンジン2の複数の気筒に導く。具体的に説明すると、
図2に表したように、吸気本体81は、スロットル92を介してガスミキサ91に接続されており、スロットル92を通過した混合気を複数の吸気管82に導く。
図2に表したように、吸気本体81は、流れ方向変更部811と、集合部812と、を有する。流れ方向変更部811は、集合部812よりも混合気の流れの上流側に配置されており、上流部においてスロットル92を介してガスミキサ91に接続され、下流部において集合部812に接続されている。集合部812は、流れ方向変更部811よりも混合気の流れの下流側に配置されており、上流部において流れ方向変更部811に接続され、下流部において複数の吸気管82に接続されている。
【0031】
図2に表した矢印A11のように、燃料と空気とがガスミキサ91によって互いに混合された混合気は、第1流れ方向にスロットル92を通過し、流れ方向変更部811に導かれる。第1流れ方向は、
図2に表した矢印A11に略平行な方向であり、混合気がスロットル92を通過するときの流れ方向である。
【0032】
図2に表した矢印A12のように、流れ方向変更部811に導かれた混合気の流れ方向は、流れ方向変更部811において、第1流れ方向から第2流れ方向に変更される。言い換えれば、流れ方向変更部811は、混合気がスロットル92を通過するときの第1流れ方向から第1流れ方向とは異なる第2流れ方向に混合気の流れ方向を変更する。本実施形態では、第2流れ方向は、
図2に表した矢印A12のうちの水平方向に略平行な方向であり、
図2に表した例では第1流れ方向に対して直交している。そして、流れ方向が流れ方向変更部811により第1流れ方向から第2流れ方向に変更された混合気は、集合部812に導かれる。
【0033】
図2に表した矢印A13のように、集合部812に導かれた混合気は、まず、第2流れ方向(すなわち矢印A13のうちの水平方向)に沿って導かれる。その後、混合気は、複数の吸気管82に導かれる。つまり、集合部812は、流れ方向変更部811から導かれた混合気を第2流れ方向に沿って導いた後に複数の吸気管82に導く。
【0034】
複数の吸気管82に導かれた混合気は、エンジン2の複数の気筒(本実施形態では4つの気筒)に分配される。言い換えれば、複数の吸気管82は、吸気本体81から導かれた混合気をエンジン2の複数の気筒(本実施形態では4つの気筒)に分配する。
【0035】
具体的に説明すると、第1吸気管821に導かれた混合気は、シリンダヘッド4に形成された第1吸気ポート(図示せず)を介して、シリンダブロック3に形成された第1気筒(図示せず)に供給される。第2吸気管822に導かれた混合気は、シリンダヘッド4に形成された第2吸気ポート(図示せず)を介して、シリンダブロック3に形成された第2気筒(図示せず)に供給される。第3吸気管823に導かれた混合気は、シリンダヘッド4に形成された第3吸気ポート(図示せず)を介して、シリンダブロック3に形成された第3気筒(図示せず)に供給される。第4吸気管824に導かれた混合気は、シリンダヘッド4に形成された第4吸気ポート(図示せず)を介して、シリンダブロック3に形成された第4気筒(図示せず)に供給される。
【0036】
ここで、エンジンによっては、混合気がスロットルを通過するときの流れ方向が、混合気が吸気本体を流れるときの流れ方向と平行である場合がある。例えば、
図3に表した比較例に係るエンジン2Aは、吸気マニホルド8Aと、ガスミキサ91と、スロットル92と、を備える。吸気マニホルド8Aの吸気本体81Aは、集合部812を有する一方で、例えば
図2に表したような流れ方向変更部811を有していない。
図3に表した比較例に係るエンジン2Aでは、混合気がスロットル92を通過するときの流れ方向が、混合気が吸気本体81Aを流れるときの流れ方向と平行である。すなわち、混合気がスロットル92を通過するときの流れ方向は、
図3に表した矢印A21に平行な方向である。混合気が吸気本体81Aを流れるときの流れ方向は、
図3に表した矢印A22のうちの水平方向に平行な方向である。このように、
図3に表した比較例に係るエンジン2Aでは、ガスミキサ91から供給された混合気は、スロットル92を通過し、流れ方向を変えることなくガスミキサ91の軸線に沿って吸気本体81Aを流れる。そして、吸気本体81Aを流れた混合気は、複数の吸気管82によってエンジン2Aの複数の気筒に分配される。そうすると、エンジン2Aの複数の気筒同士における空燃比のばらつきが比較的大きい場合がある。
【0037】
これに対して、本実施形態に係るエンジン2および吸気マニホルド8によれば、流れ方向変更部811は、スロットル92を通過した混合気を受けるとともに、混合気の流れ方向を第1流れ方向から第2流れ方向へ変更する。第1流れ方向は、混合気がスロットル92を通過するときの流れ方向である。第2流れ方向は、第1流れ方向とは異なる流れ方向であり、
図2に表した例では第1流れ方向に対して直交している。そして、集合部812は、流れ方向変更部811から導かれた混合気を第2流れ方向に沿って導いた後に複数の吸気管82に導く。
【0038】
このように、スロットル92を通過した混合気は、流れ方向変更部811において流れ方向を第1流れ方向から第2流れ方向に変更させられ、変更させられた流れ方向(すなわち第2流れ方向)に沿って集合部812を流れる。そのため、スロットル92を通過した混合気における燃料と空気との混合度合いは、流れ方向変更部811において向上する。そして、混合度合いが向上した混合気が、第2流れ方向に沿って集合部812を流れた後、複数の吸気管82に導かれる。これにより、エンジン2の複数の気筒同士における空燃比のばらつきを抑えることができる。
【0039】
また、混合気の混合度合いを向上させ、エンジン2の複数の気筒同士における空燃比のばらつきを抑えることができるため、集合部812の容積を低減することができる。すなわち、集合部812の容積として比較的大きい容積を確保しなくとも、流れ方向変更部811において混合気の混合度合いを向上させ、エンジン2の複数の気筒同士における空燃比のばらつきを抑えることができる。これにより、吸気マニホルドの小型化を図ることができる。
【0040】
また、本実施形態に係る吸気マニホルド8によれば、スロットル92を通過した混合気は、流れ方向変更部811において流れ方向を第1流れ方向から第1流れ方向に対して直交する第2流れ方向に変更させられる。これにより、スロットル92を通過した混合気における燃料と空気との混合度合いは、流れ方向変更部811においてより一層向上する。
【0041】
また、エンジン2が気体燃料で作動する内燃機関すなわちガスエンジンである場合には、スロットル92を通過する混合気は、気体燃料と空気とがガスミキサ91によって互いに混合された混合気である。そのため、ガスミキサ91から供給された混合気は、スロットル92を通過し、流れ方向変更部811において流れ方向を第1流れ方向から第2流れ方向に変更させられ、変更させられた流れ方向(すなわち第2流れ方向)に沿って集合部812を流れる。そのため、スロットル92を通過した混合気における気体燃料と空気との混合度合いは、流れ方向変更部811において向上する。そして、混合度合いが向上した混合気が、第2流れ方向に沿って集合部812を流れた後、複数の吸気管82に導かれる。これにより、エンジン2の複数の気筒同士における空燃比のばらつき、言い換えればエンジン2の複数の気筒同士における気体燃料の濃度のばらつきを抑えることができる。
【0042】
次に、本発明者が実施した検討結果の一例を、図面を参照して説明する。
図4は、本実施形態に係るエンジンの各吸気ポートと当量比との関係を例示するグラフである。
図5は、比較例に係るエンジンの各吸気ポートと当量比との関係を例示するグラフである。
【0043】
本発明者は、本実施形態に係るエンジン2と、比較例に係るエンジン2Aと、において、各吸気ポートの当量比φを測定する検討を行った。当量比φは、混合気における燃料と空気との混合度合いを表し、言い換えれば、混合気における燃料濃度を表す指標である。燃料が過不足なく燃焼するときの燃料と空気との割合(当量比φ)が「1」である。すなわち、当量比φは、式:「燃空比/理論燃空比」で表される。「当量比φ<1」の場合の混合気は、希薄混合気などと呼ばれる。「当量比φ>1」の場合の混合気は、過濃混合気などと呼ばれる。
【0044】
本実施形態に係るエンジン2における各吸気ポートの当量比φの測定結果は、
図4に表した通りである。すなわち、第1吸気管821(
図1および
図2参照)に接続された第1吸気ポートP1における当量比φは、1.01である。第2吸気管822(
図1および
図2参照)に接続された第2吸気ポートP2における当量比φは、1.02である。第3吸気管823(
図1および
図2参照)に接続された第3吸気ポートP3における当量比φは、1.02である。第4吸気管824(
図1および
図2参照)に接続された第4吸気ポートP4における当量比φは、1.03である。そして、第1吸気ポートP1、第2吸気ポートP2、第3吸気ポートP3および第4吸気ポートP4における当量比φの平均値は、1.02である。これにより、第1吸気ポートP1、第2吸気ポートP2、第3吸気ポートP3および第4吸気ポートP4における当量比φの標準偏差は、0.007である。
【0045】
一方で、比較例に係るエンジン2Aにおける各吸気ポートの当量比φの測定結果は、
図5に表した通りである。すなわち、第1吸気管821(
図3参照)に接続された第1吸気ポートP1における当量比φは、1.06である。第2吸気管822(
図3参照)に接続された第2吸気ポートP2における当量比φは、1.00である。第3吸気管823(
図3参照)に接続された第3吸気ポートP3における当量比φは、1.01である。第4吸気管824(
図3参照)に接続された第4吸気ポートP4における当量比φは、0.99である。そして、第1吸気ポートP1、第2吸気ポートP2、第3吸気ポートP3および第4吸気ポートP4における当量比φの平均値は、1.01である。これにより、第1吸気ポートP1、第2吸気ポートP2、第3吸気ポートP3および第4吸気ポートP4における当量比φの標準偏差は、0.027である。
【0046】
本検討結果によれば、本実施形態に係るエンジン2の複数の気筒同士における空燃比のばらつきは、比較例に係るエンジン2Aの複数の気筒同士における空燃比のばらつきよりも小さいことが分かる。これにより、比較例に係るエンジン2Aと比較して、本実施形態に係るエンジン2では、複数の気筒同士における空燃比のばらつきを抑えることができることが分かる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。
【符号の説明】
【0048】
2、2A:エンジン、 3:シリンダブロック、 4:シリンダヘッド、 5:ヘッドカバー、 6:オイルパン、 8、8A:吸気マニホルド、 31:クランクケース、 81、81A:吸気本体、 82:吸気管、 91:ガスミキサ、 92:スロットル、 811:方向変更部、 812:集合部、 821:第1吸気管、 822:第2吸気管、 823:第3吸気管、 824:第4吸気管