(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】ブレザ装置およびブレザ装置を備えるエンジン
(51)【国際特許分類】
F01M 13/04 20060101AFI20240215BHJP
【FI】
F01M13/04 E
F01M13/04 B
(21)【出願番号】P 2020216808
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【氏名又は名称】芳野 理之
(74)【代理人】
【識別番号】100098796
【氏名又は名称】新井 全
(74)【代理人】
【識別番号】100121647
【氏名又は名称】野口 和孝
(72)【発明者】
【氏名】福田 拓海
(72)【発明者】
【氏名】山内 真琴
(72)【発明者】
【氏名】山本 信裕
(72)【発明者】
【氏名】森永 秀隆
(72)【発明者】
【氏名】深田 神
【審査官】藤田 和英
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-004311(JP,U)
【文献】実開昭58-022405(JP,U)
【文献】特開2006-152951(JP,A)
【文献】特開2000-240423(JP,A)
【文献】実開昭61-128317(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのヘッドカバーに配置されて、ブローバイガスからオイル分とガス成分とを分離するブレザ装置であって、
前記ヘッドカバー内に配置されて、前記エンジンのロッカーアームの動作により生じ
るオイルの飛沫が前記ブレザ装置へ侵入するのを阻止するオイル飛沫阻止部
と、
前記ブローバイガスに含まれる前記オイル分を分離して前記ガス成分を通すオイル分離部材と、
前記ブローバイガスが前記オイル分離部材に導入される部分において前記オイル分離部材から離れて配置されて、前記オイル分離部材に対して隙間を確保するシールド部材と、
を備え
、
前記シールド部材は、前記オイル分離部材の下面に対面する内面に設けられた複数の凸形状部分を有し、
前記複数の凸形状部分のそれぞれは、前記エンジンの前後方向に沿って形成され、前記シールド部材の前記内面と前記オイル分離部材の前記下面との間に前記隙間を形成することを特徴とするブレザ装置。
【請求項2】
前記前後方向に対して垂直な切断面における前記凸形状部分の断面形状は、三角形状または半円形状であることを特徴とする請求項1に記載のブレザ装置。
【請求項3】
前記オイル飛沫阻止部は、前記シールド部材と一体になって形成されており、前記ヘッドカバーの内部空間において、前記シールド部材から下方に向けて延長するようにして配置されていることを特徴とする請求項
1または2に記載のブレザ装置。
【請求項4】
前記シールド部材は、前記オイル分離部材の前記下面に対して四方に開放された前記隙間を形成していることを特徴とする請求項
1~3のいずれか1項に記載のブレザ装置。
【請求項5】
エンジンのヘッドカバーに配置されて、ブローバイガスからオイル分とガス成分とを分離するブレザ装置を備えるエンジンであって、
前記ブレザ装置は、
前記ヘッドカバー内に配置されて、前記エンジンのロッカーアームの動作により生じ
るオイルの飛沫が前記ブレザ装置へ侵入するのを阻止するオイル飛沫阻止部
と、
前記ブローバイガスに含まれる前記オイル分を分離して前記ガス成分を通すオイル分離部材と、
前記ブローバイガスが前記オイル分離部材に導入される部分において前記オイル分離部材から離れて配置されて、前記オイル分離部材に対して隙間を確保するシールド部材と、
を有
し、
前記シールド部材は、前記オイル分離部材の下面に対面する内面に設けられた複数の凸形状部分を有し、
前記複数の凸形状部分のそれぞれは、前記エンジンの前後方向に沿って形成され、前記シールド部材の前記内面と前記オイル分離部材の前記下面との間に前記隙間を形成することを特徴とするエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレザ装置およびブレザ装置を備えるエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンに装着されているブレザ装置は、ブローバイガスからオイル分とガス成分とを分離してから、ガス成分を通路や吸気系統を経て燃焼室に還元し、燃焼室で燃焼させて無害化してから、大気中に排出するのに用いられる。通常用いられているブレザ装置は、ディーゼルエンジンのヘッドカバーの内部に設けられている。ブレザ装置は、ブレザ室を有する。ブレザ室は、ヘッドカバーの内部に組み付けられた大型サイズのシールド板とヘッドカバーの内壁との間で形成された閉鎖空間である。
【0003】
ディーゼルエンジンのシリンダヘッド側からヘッドカバー内に上昇してきたブローバイガスは、シールド板に設けられたブローバイガス入口を通じてブレザ室に入る。ブローバイガスは、ブレザ室内に形成されているラビリンス構造と、ブレザ室の出口部側に設けた絞り部と、により速度を上げて壁に当たる。これにより、ブローバイガスからオイル分を分離し易くしている。ブローバイガスから分離されたオイル分は、シールド板に設けられた落とし穴からヘッドカバー内に落ちてシリンダヘッド側に戻される。ブローバイガスから分離されたガス成分は、スチールウールを通って例えば吸気系に戻される。特許文献1には、スチールウールがオイル分離室に配置されたエンジンのブレザ装置が開示されている。
【0004】
ところで、ヘッドカバー内には、ロッカーアームとロッカーアームシャフトとが配置されている。ロッカーアームシャフトは潤滑用のオイルの案内通路を有しており、ロッカーアームも潤滑用のオイルの案内通路を有している。
【0005】
ロッカーアームが吸排気弁の開閉動作を行うために速い速度で揺動する際に、ロッカーアームシャフトの案内通路とロッカーアームの案内通路とが重なると、潤滑用のオイルが、ロッカーアームシャフトの案内通路とロッカーアームの案内通路とを通じてロッカーアームからヘッドカバー内に噴出する。
【0006】
噴出したオイルは、ロッカーアームの速い揺動によって跳ね上がってオイルジェット飛沫となって、ロッカーアームからシールド板のブローバイガス入口とオイルの落とし穴とを通じて、直接ブレザ室内に入ってくる。ブレザ室にオイルジェット飛沫が入ってくると、ブレザ装置の気液分離性が損なわれるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、ロッカーアームによって跳ね上がられたオイルが、オイルジェット飛沫となってロッカーアームからブレザ装置内に入ってくるのを防ぐことで、ブローバイガスの気液分離性を向上させることができるブレザ装置およびブレザ装置を備えるエンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、エンジンのヘッドカバーに配置されて、ブローバイガスかに含まれるオイル分とガス成分とを分離するブレザ装置であって、前記ヘッドカバー内に配置されて、前記エンジンのロッカーアームの動作により生じる前記オイルの飛沫が前記ブレザ装置へ侵入するのを阻止するオイル飛沫阻止部を備えることを特徴とする本発明のブレザ装置により解決される。
【0010】
本発明のブレザ装置によれば、ヘッドカバー内には、エンジンのロッカーアームの動作により生じるオイルの飛沫がブレザ装置に侵入するのを阻止するオイル飛沫阻止部が配置されている。これにより、オイル飛沫阻止部は、ロッカーアームによって跳ね上がられたオイルが、オイルジェット飛沫となってロッカーアームからブレザ装置内に入ってくるのを防ぐことで、ブローバイガスの気液分離性を向上させることができる。
【0011】
本発明のブレザ装置において、好ましくは、前記ブローバイガスに含まれる前記オイル分を分離して前記ガス成分を通すオイル分離部材と、前記ブローバイガスが前記オイル分離部材に導入される部分において前記オイル分離部材から離れて配置されて、前記オイル分離部材に対して隙間を確保するシールド部材と、を備えることを特徴とする。
本発明のブレザ装置によれば、シールド部材が、ブローバイガスがオイル分離部材に導入される部分においてオイル分離部材から離れて配置されて、オイル分離部材に対して隙間を形成するので、負圧の発生を抑えることができる。このため、ブローバイガスから分離したオイル分がブレザ装置のブレザ室内に溜まりにくくして、オイル分をヘッドカバー内に容易に落下させることができ、ブローバイガスの気液分離性を向上させることができる。
【0012】
本発明のブレザ装置において、好ましくは、前記オイル飛沫阻止部は、前記シールド部材と一体になって形成されており、前記ヘッドカバーの内部空間において、前記シールド部材から下方に向けて延長するようにして配置されていることを特徴とする。
本発明のブレザ装置によれば、オイル飛沫阻止部は、シールド部材と一体になって形成されているので、部品点数を減らすことができる。しかも、オイル飛沫阻止部は、ヘッドカバー内で飛散するのを抑制することができる。
【0013】
本発明のブレザ装置において、好ましくは、前記シールド部材は、前記オイル分離部材の下面に対面する内面に設けられた凸形状部分を有し、前記凸形状部分は、前記エンジンの前後方向に沿って形成され、前記シールド部材の前記内面と前記オイル分離部材の前記下面との間に前記隙間を形成することを特徴とする。
本発明のブレザ装置によれば、シールド部材の内面に設けられた凸形状部分は、エンジンの前後方向に沿って形成され、シールド部材の内面とオイル分離部材の下面との間に隙間を形成する。そのため、ブローバイガスの流速を上げるとともに流れを阻害しないことから、従来必要であったラビリンス構造や絞り部が不要である。従って、ブレザ装置の小型化を図ることができ、ブローバイガスの気液分離性を向上させることができる。
【0014】
本発明のブレザ装置において、好ましくは、前記シールド部材は、前記オイル分離部材の前記下面に対して四方に開放された前記隙間を形成していることを特徴とする。
本発明のブレザ装置によれば、隙間は、ヘッドカバーの内部空間に対して、四方に開放されていることから、ブレザ装置において負圧が発生することを抑えることができる。このため、ブローバイガスから分離したオイル分がブレザ装置のブレザ室内に溜まりにくくして、オイル分をヘッドカバー内に容易に落下させることができ、ブローバイガスの気液分離性を向上させることができる。
【0015】
また、前記課題は、エンジンのヘッドカバーに配置されて、ブローバイガスからオイル分とガス成分とを分離するブレザ装置を備えるエンジンであって、前記ブレザ装置は、前記ヘッドカバー内に配置されて、前記エンジンのロッカーアームの動作により生じる前記オイルの飛沫が前記ブレザ装置へ侵入するのを阻止するオイル飛沫阻止部を有することを特徴とする本発明のエンジンにより解決される。
【0016】
本発明のブレザ装置を備えるエンジンによれば、ヘッドカバー内には、エンジンのロッカーアームの動作により生じるオイルの飛沫がブレザ装置に侵入するのを阻止するオイル飛沫阻止部が配置されている。これにより、オイル飛沫阻止部は、ロッカーアームによって跳ね上がられたオイルが、オイルジェット飛沫となってロッカーアームからブレザ装置内に入ってくるのを防ぐことで、ブローバイガスの気液分離性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ロッカーアームによって跳ね上がられたオイルが、オイルジェット飛沫となってロッカーアームからブレザ装置内に入ってくるのを防ぐことで、ブローバイガスの気液分離性を向上させることができるブレザ装置およびブレザ装置を備えるエンジンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係るブレザ装置を備えるエンジンを示す断面図である。
【
図2】
図1に示すエンジンのA-A線における断面図である。
【
図3】
図1に示すエンジンのB-B線における断面図である。
【
図5】本発明の第3実施形態におけるブローバイガスのガス成分を液化させるための液化部材の構造例を示す斜視図である。
【
図6】
図5に示す液化部材がブレザ装置に搭載されている一例を示す断面図である。
【
図7】本発明の第4実施形態を示し、
図5に示す液化部材がブレザ装置に搭載されている別の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係るブレザ装置を備えるエンジンを示す断面図である。
図2は、
図1に示すエンジンのA-A線における断面図である。
図3は、
図1に示すエンジンのB-B線における断面図である。本明細書では、図面は、図示の簡単化のために、断面を示すハッチングの表示を省略している。図面において、X方向は、
図1に示すエンジン1の前後方向である。Y方向は、エンジン1の左右方向である。Z方向は、エンジン1の上下方向である。X、Y、Z方向は、互いに直交している。
【0021】
図1に示すエンジン1は、例えばコモンレール式のディーゼルエンジンであり、エンジン1は、例えば産業用ディーゼルエンジンである。エンジン1は、例えばターボチャージ付きの過給式の高出力な4気筒エンジンである。エンジン1は、例えば建設機械、農業機械、芝刈り機のような各用途の機器に搭載される。
エンジン1は、シリンダヘッド2とヘッドカバー3を備え、ヘッドカバー3は、シリンダヘッド2の上に搭載されている。ヘッドカバー3は、上面部4と、四方の側面部5,6,7,8を有し、ヘッドカバー3の内部空間9は閉鎖された空間である。
【0022】
ヘッドカバー3は、ブレザ装置10を備える。ブレザ装置10は、ヘッドカバー3の内部空間9に流入してくるブローバイガスからオイル分とガス成分とに分離してから、配管99や図示しない吸気系統を経て、燃焼室に還元し、燃焼室で燃焼させて無害化してから、大気中に排出するのに用いられる。エンジン1の圧縮行程および燃焼行程の少なくともいずれかにおいて、ブローバイガスが発生することがある。ブローバイガスは、エンジン1のピストンとシリンダの隙間を通ってクランクケース内に流入するガスであり、未燃焼や燃焼済みのガス成分やオイル分を含んでいる。クランクケースに漏れ出したブローバイガスは、ヘッドカバー3の内部空間9に侵入する。
【0023】
図1から
図3を参照して、ブレザ装置10の好ましい構造例を説明する。
ヘッドカバー3は突出部11を有し、突出部11は、上面部4においてZ1方向(上方向)に突出して設けられている。ブレザ装置10は、この突出部11と、調圧弁(ダイヤフラム)12と、オイル分離部材20と、シールド部材30と、により構成されている。突出部11は例えば円筒状であり、突出部11の内部にはブレザ室13が形成されている。
【0024】
図1に示すように、ブレザ室13は、中央の押さえ部13Bと、段差部13Cと、受け部13Dと、を有している。段差部13Cと受け部13Dは、押さえ部13Bを中心とする円周方向に沿って全周に渡って形成されている。調圧弁12は、新規な吸気をヘッドカバー3の内部空間9内に流入することを抑えるように、ブレザ室13内の圧力調整を行う。
【0025】
図1に示すように、ブレザ室13内には、オイル分離部材20が交換可能に固定されている。オイル分離部材20は、ブローバイガスに含まれるオイル分を分離してガス成分を配管99側に通す。オイル分離部材20は、好ましくはスチールウールが用いられており、大径部分21と小径部分22を有し、大径部分21と小径部分22には段差部分23が形成されている。押さえ部13Bは、オイル分離部材20の小径部分22の中央を密着して保持し、段差部13Cは、オイル分離部材20の段差部分23を密着して保持し、そして受け部13Dは、オイル分離部材20の大径部分21の下面21Fの周囲縁を密着して保持している。これにより、オイル分離部材20は、ブレザ室13内においてX、Y、Z方向のいずれにも移動しないように保持されている。
【0026】
図1と
図2に示すシールド部材30は、鉄板等の金属板を成形することで作られており、シールド部材30は、平板状で長方形状の隙間形成部40と、ほぼ平板状で長方形状のオイル飛沫阻止部50とを備える。シールド部材30の隙間形成部40は、X-Y平面に沿って配置され、オイル飛沫阻止部50は、X-Z平面に沿って配置されている。すわなち、
図2に示すように、オイル飛沫阻止部50は、隙間形成部40に対して90度折り曲げることで形成されていて、オイル飛沫阻止部50は、ヘッドカバー3の側面部6の内面に沿っている。オイル分離部材20はスチールウールであり、シールド部材30は金属板であるので、使用する材料費を抑制できるので、コストダウンを図ることができる。
【0027】
図1と
図2に示すように、シールド部材30の隙間形成部40は、4つの取付基部39により、ヘッドカバー3の上面部4の内面側に、好ましくは着脱可能に固定されている。このように、隙間形成部40が着脱可能に取り付けられていることで、隙間形成部40を取り外せば、オイル分離部材20の交換が可能になるメリットがある。
【0028】
図1と
図2に示すように、シールド部材30の隙間形成部40は、内面42において例えば2本の隙間形成用のリブ状の凸形状部分41,41を有する。隙間形成用のリブ状の凸形状部分41,41は、X方向に沿って長く形成されている。シールド部材30の隙間形成部40の内面42に凸形状部分41,41を形成するので、内面42とオイル分離部材20の下面21Fとの間に隙間Gを容易に形成できる。また、クランクケース内には、各気筒の動きの違いに応じた各気筒の配列方向、すなわち、ディーゼルエンジンの前後方向(X方向)に沿うブローバイガスの流れが生じる。凸形状部分41,41は、ディーゼルエンジンの前後方向(X方向)に沿って形成されているので、ブローバイガスの流速を上げてオイル分離部材20に当てることができ、ブローバイガスの流れを阻害せず、分離したオイル分の排出性を向上できる。従って、ブレザ装置10は、ブローバイガスの気液分離性を向上させることができる。
【0029】
隙間形成用のリブ状の凸形状部分41,41は、ブローバイガスの流速を上げてオイル分離部材20に当て、ブローバイガスの流れを阻害せず、分離したオイル分の排出性を向上できるようにするために、例えば断面三角形状に形成されている。しかし、隙間形成用のリブ状の凸形状部分41,41の断面形状は、半円形状等であっても良い。シールド部材30の内面の凸形状部分41,41は、シールド部材30の内面とオイル分離部材20の下面との間に隙間Gを形成でき、凸形状部分41,41は、ディーゼルエンジンの前後方向に沿って形成されている。凸形状部分41,41は、ブローバイガスの流速を上げるとともに流れを阻害しないことから、従来必要であったラビリンス構造や絞り部が不要である。従って、ブレザ装置10の小型化を図ることができ、ブレザ装置10におけるブローバイガスの気液分離性を向上させることができる。
【0030】
図1に示すように、隙間形成用のリブ状の凸形状部分41,41は、オイル分離部材20の大径部分21の下面21Fとシールド部材30の隙間形成部40との間に、所定の寸法の隙間Gを形成している。この隙間Gは、
図1から
図3に示すように、シールド部材30の隙間形成部40の四方について、ヘッドカバー3の内部空間9内に開放されている四方開放型の隙間である。このように隙間Gは、ヘッドカバー3の内部空間9に対して、四方に開放されていることから、ブレザ装置10において負圧が発生することをより確実に抑えることができる。このため、ブローバイガスから分離したオイル分が、
図1に示すブレザ装置10のブレザ室13内に溜まりにくくして、オイル分をヘッドカバー3内に容易に落下させることができる。従って、ブレザ装置10は、ブローバイガスの気液分離性を向上させることができる。
【0031】
図1と
図2に示すように、シールド部材30のオイル飛沫阻止部50は、隙間形成部40から下方に延長するようにして形成されている。オイル飛沫阻止部50は、小さく形成されているので、軽量化とコストダウンを図ることができる。オイル飛沫阻止部50は、エンジンのロッカーアームの動作により生じるオイルの飛沫が侵入するのを阻止する役割を有する。オイル飛沫阻止部50は、凸面部分51を有する。凸面部分51は、Z方向に沿って形成されている。
【0032】
図3には、ロッカーアーム60とロッカーアームシャフト61を示している。ロッカーアーム60とロッカーアームシャフト61は、ヘッドカバー3の内部空間9内に配置されており、ロッカーアームシャフト61はX方向に沿って配置されている。ロッカーアームシャフト61は、潤滑用のオイルを案内する案内穴63と、半径方向に形成された横案内孔63Bを有している。ロッカーアーム60は、ロッカーアームシャフト61を中心としてR方向に揺動する。ロッカーアーム60は、案内穴63により案内されてきた潤滑用のオイルを、横案内孔63Bを介してロッカーアーム60の外に噴射する案内孔64を有する。
【0033】
図示しない吸排気弁の開閉を行うためにロッカーアーム60がR方向に揺動すると、ロッカーアーム60は、案内穴63により案内されてきた潤滑用のオイルを、横案内孔63Bと案内孔64を通じてロッカーアーム60の外に噴射する。このため、潤滑用のオイルは、オイルジェットの飛沫となって飛散しようとする。しかし、シールド部材30のオイル飛沫阻止部50は、オイルジェットの飛沫が飛散しようとするのを防ぐことができる。これにより、オイルジェットの飛沫が隙間Gを通じてオイル分離部材20へ侵入するのを防止して、オイル分離部材20のオイル分離性能が、オイルジェットの飛沫により劣化するのを防いでいる。
【0034】
また、
図1から
図3に示すように、隙間Gは四方に開放されており、隙間Gは分離されたオイル分を排出する排出口になっている。オイル分が落下される隙間Gの排出口は、オイルジェットの飛沫を跳ね上げない位置に配置されている。これにより、オイルジェットの飛沫が、隙間Gには入り込まないので、オイルジェットの飛沫の影響を受けずに、ブレザ装置10の気液分離性を向上できる。
【0035】
上述した本発明の第1実施形態のブレザ装置10では、
図1と
図2に示すように、シールド部材30の隙間形成部40は、内面42において例えば2本の隙間形成用のリブ状の凸形状部分41,41を有し、凸形状部分41,41は、オイル分離部材20の大径部分21の下面21Fとシールド部材30の隙間形成部40との間に、所定の寸法の隙間Gを形成している。この隙間Gを設けることにより、オイル分離部材20は、シールド部材30の隙間形成部40の四方について、ヘッドカバー3の内部空間9内に均等に開放されている。すなわち、ヘッドカバー3の内壁とシールド部材30の隙間形成部40との間に、隙間Gが形成されている。
【0036】
従来のクローズド形式のブレザ装置であると、ヘッドカバーの内部空間内は、クランクやピストンの動作により負圧が発生し易い。しかし、本発明の実施形態では、ブレザ装置10は、従来のものとは異なりヘッドカバー3の内部空間9内に均等に開放されている。これにより、オイル分離部材20の大径部分21の下面21Fにおいて負圧が発生することを抑えることができるために、溜まったオイルがヘッドカバー3の内壁を上がってこなくなる。また、凸形状部分41,41は、オイル分離部材20の大径部分21の下面21Fを支持していて、オイル分離部材20の位置決めを行うことができる。
【0037】
また、エンジンが傾斜してもオイル分が溜まらずに、四方に均等に開放されている隙間Gを通って、ヘッドカバー3の内部空間9に自然に落下していく。ブレザ装置10のブレザ室13には、オイル分が入りにくく溜まりにくい構造になっている。ブレザ装置10は、従来採用されていたオイルの流速を上げるラビリンス構造を採用していない。しかも、オイル分離部材20は、ヘッドカバー3のブレザ室13内に収容して設置する構造を採用している。これにより、
図1に示すブレザ装置10のZ方向の高さ寸法Hを小さく抑えることができるとともに、ブレザ装置10のX方向の長さ寸法Kをも小さい値に抑えることができる。これにより、ブレザ装置10の小型化と軽量化が図れる。
【0038】
シールド部材30の隙間形成部40のX方向の長さ寸法Kを小さく抑えることができ、ブレザ装置10の配管99に接続される接続管のレイアウトがより容易にできる。
シールド部材30の隙間形成部40は、内面42において2本の隙間形成用の凸形状部分41,41を有しており、凸形状部分41,41は、X方向に沿って長く形成されている。すなわち、凸形状部分41,41は、ブローバイガスが流れる流路方向に設定されているので、ブローバイガスの流速を上げてオイル分離部材20の大径部分21の下面21Fに送り込むことができるとともに、オイル分離部材20で分離したオイルをヘッドカバー3の内部空間9側に排出できる。このため、オイル分離部材20で分離したオイルの排出性を向上できる。また、シールド部材30の隙間形成部40は、内面42において2本の隙間形成用の凸形状部分41,41は、シールド部材30の機械的な強度を上げることができるので、逆に言えばシールド部材30の薄型化を図っても、機械的な強度を確保できることになる。
【0039】
シールド部材30のオイル飛沫阻止部50は、隙間形成部40に対して90度折り曲げることでベロ形状に形成され、ヘッドカバー3の側面部6の内面に沿っている。これにより、オイル飛沫阻止部50は、
図3に示すロッカーアーム60から噴出するオイルジェット飛沫を防ぐことができる。オイル飛沫阻止部50は、隙間形成部40により形成されている隙間Gから排出されるオイル分を、ヘッドカバー3の内部空間9へ案内してスムーズに落下させることができる。オイル飛沫阻止部50は、シールド部材30と一体になって形成されているので、部品点数を減らすことができる。しかも、オイル飛沫阻止部50は、ヘッドカバー3の内部空間9において、シールド部材30から下方に向けて延長するようにして配置されているので、オイル飛沫阻止部50は、ロッカーアームによって跳ね上がられたオイルが、オイルジェット飛沫となって飛散するのを抑制することができる。
【0040】
次に、本発明の別の実施形態を、順に説明する。以下に説明する本発明の別の実施形態のブレザ装置の要素が、
図1に示す第1実施形態のブレザ装置10の対応する要素と、実質的に同じである場合には、同じ符号を記して説明を省略する。
(第2実施形態)
次に、
図4を参照して、本発明の第2実施形態を説明する。
図4に示すブレザ装置10Aでは、シールド部材30は、穴開き部材70を有する。4つの取付基部39Bの長さが下方に伸ばしてあり、シールド部材30の隙間形成部40と、オイル分離部材20の下面21Gとの間には、板状の穴開き部材70が配置されている。この穴開き部材70は、例えばパンチングメタル板を採用でき、複数の例えば円形状の貫通穴71を有する。オイル分離部材20は円柱状であり、穴開き部材70は、オイル分離部材20の下面21Gを密着して支持している。あるいは、穴開き部材70とオイル分離部材20の下面21Gとの間には、少し隙間があるようにしても良い。隙間形成部40の四方は、ヘッドカバー3の内部空間9に対して均等に開放されている。すなわち、ヘッドカバー3の内壁とシールド部材30との間に、四方に開放された隙間Gが形成されている。
【0041】
上述したように、ブレザ装置10Aでは、シールド部材30の隙間形成部40と、穴開き部材70の2段構造になっている。オイル分離部材20の下面21Gにおいて、隙間形成部40と穴開き部材70との2段構造を採用することで、ブローバイガスの流速を絞って(上げて)、穴開き部材70により、オイル分離部材20の下面21Gにおいてオイル分をキャッチできる。そして、穴開き部材70と隙間形成部40の間には隙間Gが形成されているので、穴開き部材70によりキャッチされたオイル分は、この隙間からヘッドカバー3の内部空間9側へ、四方から均等に排出することができる。従って、ブローバイガスの気液分離性をさらに向上させることができる。
図4に示すブレザ装置10Aは、
図1に示すブレザ装置10と同様の作用効果を得ることができる。
【0042】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態を、
図5と
図6を参照して説明する。
図5は、ブローバイガスを液化させてオイル成分を分離するための液化部材の構造例を示す斜視図である。
図6は、
図5に示す液化部材がブレザ装置10Bに搭載されている一例を示す断面図である。
図5に示すように、液化部材80は、金属製の筒体81の内周面に凹凸形状部分82を形成した構造になっている。凹凸形状部分82は、筒体81の内周面に沿って形成されており、複数の凸部83を有する。凸部83は、筒体81の軸方向に沿って形成されており、例えば断面三角形になっていて、筒体81内の内側の表面積を増大させている。
【0043】
図5に示す液化部材80は、
図6に示すようにブレザ室13内に配置され、オイル分離部材20の上面21S側に密着されている。ブローバイガスは、液化部材80の凹凸形状部分82に押し付けられて、凹凸形状部分82の三角形状の凸部83に集められることで液化する。液化部材80とオイル分離部材20を組み合わせて使用することで、ブローバイガスのオイル分とガス成分の分離をさらに効率よく行うことができる。ブローバイガスを液化することで、ブローバイガスに含まれるオイル分がヘッドカバー3の外部に流出するのを防ぐことができる。
【0044】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態を、
図7を参照して説明する。
図7は、
図5に示す液化部材がブレザ装置10Cに搭載されている他の例を示す断面図である。
図5に示す液化部材80は、
図7に示すようにオイル分離部材20の下面21Fに密着して配置されている。液化部材80とオイル分離部材20を組み合わせて使用することで、ブローバイガスのオイル分とガス成分の分離をさらに効率よく行うことができる。ブローバイガスを液化することで、ブローバイガスに含まれるオイル分がヘッドカバー3の外部に流出するのを防ぐことができる。
【0045】
上述したように、ブレザ装置およびブレザ装置を備えるエンジンは、ブローバイガスから分離したオイル分がブレザ装置のブレザ室内に溜まりにくくしてオイル分をヘッドカバー内に容易に落下させることができ、オイル分の排出性を上げることでブローバイガスの気液分離性を向上させることができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。
例えば、図示したエンジン1は、例えばターボチャージャ付きの過給式のディーゼルエンジンである。しかし、これに限らず、本発明のエンジンは、自然吸気式のディーゼルエンジン等であってもよい。
【符号の説明】
【0047】
1:エンジン、 2:シリンダヘッド、 3:ヘッドカバー、 4:上面部、 5、6、7、8:側面部、 9:内部空間、 10、10A、10B、10C:ブレザ装置、 11:突出部、 12:調圧弁、 13:ブレザ室、 13B:押さえ部、 13C:段差部、 13D:受け部、 20:オイル分離部材、 21:大径部分、 21F、21G:下面、 21S:上面、 22:小径部分、 23:段差部分、 30:シールド部材、 39、39B:取付基部、 40:隙間形成部、 41:凸形状部分、 42:内面、 50:オイル飛沫阻止部、 51:凸面部分、 60:ロッカーアーム、 61:ロッカーアームシャフト、 63:案内穴、 63B:横案内孔、 64:案内孔、 70:穴開き部材、 71:貫通穴、 80:液化部材、 81:筒体、 82:凹凸形状部分、 83:凸部、 99:配管、 G:隙間