(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】検査システム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/954 20060101AFI20240215BHJP
G01N 21/89 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
G01N21/954 Z
G01N21/89 Z
(21)【出願番号】P 2019174639
(22)【出願日】2019-09-25
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】相原 康佑
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/131155(WO,A1)
【文献】特開2003-021603(JP,A)
【文献】特開2019-158501(JP,A)
【文献】特開2002-039952(JP,A)
【文献】特開2019-002725(JP,A)
【文献】塚本 宗夫、倉地 育夫,環境負荷を低減した押出成形による中間転写ベルト,KONIKA MINOLTA TECHNOLOGY REPORT,VOL.6,日本,コニカミノルタ株式会社,2009年12月31日,第37頁~第41頁,https://research.konicaminolta.com/jp/pdf/technology_report/2009/pdf/feature_007.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-21/958
G01B 11/00-11/30
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造的に正面視不可の難視領域を有する被検査物を検査するための検査システムであって、
第1及び第2カメラと、情報処理装置とを備え、
第1及び第2カメラは、前記被検査物を静止させた状態で、検査領域に位置する前記被検査物を含む複数の検査画像を撮像するように構成され、ここで前記複数の検査画像とは、前記難視領域を画像化するように、それぞれ異なる視点及び視線で撮像されたもので
あり、かつそれぞれ撮像時に第1及び第2カメラを移動させることなく撮像されたものであり、
前記情報処理装置は、判定部を備え、
前記判定部は、第1及び第2カメラによって撮像された前記複数の検査画像に基づいて、前記被検査物の欠陥の有無を判定するように構成され、
第1カメラは、駆動可能な第1ロボットアームの先端に設けられ、前記視点及び視線を可変に構成され、
第2カメラは、駆動可能な第2ロボットアームの先端に設けられ、前記視点及び視線を可変に構成され、
第2カメラは、第1ロボットアームの可動範囲外で、第1カメラでは撮像できない被検査物の検査画像を撮像可能に構成され、
前記被検査物は、取手部を有する容器で、
前記難視領域は、前記取手部の内側の領域である、検査システム。
【請求項2】
請求項1に記載の検査システムであって、
第1及び第2カメラは、前記検査画像を反射光によって撮像する、検査システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の検査システムにおいて、
搬送装置をさらに備え、
前記搬送装置は、複数の前記被検査物を前記検査領域に順次搬送するように構成される検査システム。
【請求項4】
請求項3に記載の検査システムにおいて、
前記情報処理装置は、通信部をさらに備え、
前記通信部は、前記カメラが前記複数の検査画像を撮像するとこれらを受信するように構成され、
前記判定部は、前記通信部が受信した前記複数の検査画像に基づいて、前記搬送装置が次の前記被検査物を搬送してくるまでに、検査中の前記被検査物の欠陥有無を判定するように構成される検査システム。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れか1つに記載の検査システムにおいて、
前記情報処理装置は、画像処理部をさらに備え、
前記画像処理部は、前記検査画像の明度に対して所定の閾値を定めてバイナリ画像に変換処理し、
前記判定部は、前記バイナリ画像に基づいて、前記欠陥である炭化物の有無を判定するように構成される検査システム。
【請求項6】
請求項1~請求項5の何れか1つに記載の検査システムにおいて、
照明をさらに備え、
前記照明は、前記カメラによる前記検査画像の撮像において、前記被検査物に照明光を当てるように構成される検査システム。
【請求項7】
請求項6に記載の検査システムにおいて、
前記照明は、前記カメラの前記視点及び視線に合わせて、その位置、向き及び照明強度の少なくとも1つを可変に構成される検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
生産現場では、被検査物の外観検査を人による目視に代わって情報処理装置が用いられることがある。例えば、被検査物の画像をカメラ等のカメラで取得し、取得した画像を情報処理装置で画像処理して、欠陥部分を自動的に抽出することが行われている。特許文献1には容器である被検査物を生産ラインで連続して行う検査システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、検査システムが不得意なタスクも存在し、このようなタスクが含まれる生産ラインでは、人によって検査がなされることになる。例えば、特許文献1に開示されるような検査システムでは、構造的に正面視不可の難視領域を有する被検査物の場合、欠陥部分を抽出できないという問題がある。
【0005】
本発明は、かかる事情を鑑みてなされたものであり、構造的に正面視不可の難視領域を有する被検査体の欠陥の有無を適切に判定可能な検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、構造的に正面視不可の難視領域を有する被検査物を検査するための検査システムであって、カメラと、情報処理装置とを備え、前記カメラは、検査領域に位置する前記被検査物を含む複数の検査画像を撮像するように構成され、ここで前記複数の検査画像とは、前記難視領域を画像化するように、それぞれ異なる視点及び視線で撮像されたもので、前記情報処理装置は、判定部を備え、前記判定部は、前記カメラによって撮像された前記複数の検査画像に基づいて、前記被検査物の欠陥の有無を判定するように構成されるものが提供される。
【0007】
本発明に係る検査システムは、前述したカメラと、情報処理装置とを備えているため、異なる視点及び視線で検査領域に位置する被検査物を含む複数の検査画像を撮像し、その検査画像を画像処理して欠陥を判定するように構成されている。そのため構造的に正面視不可の難視領域を有する被検査体の欠陥の有無を自動的に適切に判定可能とする。複雑な形状をした被検査物であっても、高速に検査することが可能となる。換言すると、生産ラインの検査工程で、人を介さずに自動的に欠陥を判別できるため、欠陥の見落としによる不具合品の発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】実施形態に係る検査システムのハードウェア構成図。
【
図3】検査システムにおける情報処理装置のハードウェア構成図。
【
図4】情報処理装置の制御部が担う機能を示す機能ブロック図。
【
図5】実施形態に係る検査システムのアクティビティ図。
【
図8】被検査物の画像処理後の画像図で欠陥と判定した図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。特に、本明細書において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含みうる。また、本実施形態においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、0又は1で構成される2進数のビット集合体として信号値の高低によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行されうる。
【0010】
また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、及びメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CLPD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0011】
1.全体構成
1-1.検査システム1
第1節では、本実施形態に係る検査システム1の全体構成を説明する。
図1は、本実施形態に係る検査システム1のハードウェア構成を示す図である。構造的に正面視不可の難視領域SAを有する被検査物B1を検査するための検査システム1は、撮像装置2(第1のカメラ21A、第2のカメラ21B、第1の照明22A、第2の照明22B)と、情報処理装置3と、搬送装置4と、表示装置5とを備える。以下各構成要素についてさらに詳述する。
【0012】
1-2.撮像装置2
撮像装置2は、第1のカメラ21Aと第2のカメラ21Bと、第1の照明22Aと、第2の照明22Bと、第1のロボットアーム23Aと、第2のロボットアーム23Bとを備える。以下詳細を説明する。
【0013】
<第1のカメラ21A>
第1のカメラ21Aは、検査領域Rに位置する被検査物B1を含む複数の検査画像IM1を撮像するように構成され、ここで複数の検査画像IM1とは、難視領域SAを漏れなく画像化するように、それぞれ異なる視点及び視線で撮像されたものである。第1のカメラ21Aは、駆動可能な第1のロボットアーム23Aの先端に設けられ、視点及び視線を可変に構成される。第1のロボットアーム23Aが所定の位置に移動し、所定の視線から被検査物B1の検査画像IM1として撮像することで、被検査物B1の構造的に正面視不可の難視領域SAも含めた検査画像IM1が撮像できる。
【0014】
<第2のカメラ21B>
第2のカメラ21Bは、検査領域Rに位置する被検査物B1を含む複数の検査画像IM1を撮像するように構成され、ここで複数の検査画像IM1とは、難視領域SAを漏れなく画像化するように、それぞれ異なる視点及び視線で撮像されたものである。第2のカメラ21Bは、駆動可能な第2のロボットアーム23Bの先端に設けられ、視点及び視線を可変に構成される。第2のカメラ21Bは、第1のロボットアーム23Aの可動範囲外で、第1のカメラ21Aでは撮像できない被検査物B1の検査画像IM1を撮像可能に構成される。第1のカメラ21Aに加えて第2のカメラ21Bを備えることで、被検査物B1の構造的に正面視不可の難視領域SAも含めた全体の検査画像IM1が撮像できる。このように、第1のカメラ21A及び第2のカメラ21Bは、視点及び視線が異なるように配置された複数のカメラである。
【0015】
<第1の照明22A>
第1の照明22Aは、第1のロボットアーム23Aに取付けられる。第1のロボットアーム23Aが所定の位置に移動し、第1のカメラ21Aによる被検査物B1の検査画像IM1の撮像において、被検査物B1に照明光を当てるように構成される。第1の照明22Aが第1のロボットアーム23Aに連動して所定の位置に移動することで、被検査物B1に対して、常に撮像時に略同一の視線から被検査物B1を照射することができる。その結果、陰影の影響が少ない検査画像IM1が撮像することができる。
【0016】
<第2の照明22B>
第2の照明22Bは、第2のロボットアーム23Bに取付けられる。第2のロボットアーム23Bが所定の位置に移動し、第2のカメラ21Bによる被検査物B1の検査画像IM1の撮像において、被検査物B1に照明光を当てるように構成される。第2の照明22Bも第1の照明22A同様に、常に撮像時に略同一の視線から被検査物B1を照射することができ、陰影の影響が少ない検査画像IM1が撮像することができる。
【0017】
第1の照明22A及び第2の照明22Bは、第1のカメラ21A及び第2のカメラ21Bの記視点及び視線に合わせて、その位置、向き及び照明強度の少なくとも1つを可変に構成される。このような構成にすることで、第1のカメラ21A及び第2のカメラ21Bが経年変化で照度が低下しても、被検査物B1の検査画像IM1を撮像するときに、第1のロボットアーム23A、第2のロボットアーム23B及び被検査物B1の形状等により生じる検査画像IM1の陰影を少なくすることができる。
【0018】
<第1のロボットアーム23A>
第1のカメラ21A及び第2のカメラ21Bは、検査領域Rに位置する被検査物B1を含む複数の検査画像IM1を撮像するように構成するために、第1のロボットアーム23A及び第2のロボットアーム23Bに取付けられる。これにより複数の所定の位置から異なる視点及び視線で検査画像IM1が撮像できるため、構造的に正面視不可の難視領域SAを漏れなく画像化することができる。第1のロボットアーム23Aは、情報処理装置3の通信部31からの指令に基づき、所定の位置に順次移動し、被検査物B1の検査画像IM1を撮像するために移動可能に構成される。
【0019】
<第2のロボットアーム23B>
第2のロボットアーム23Bも、第1のロボットアーム23Aと同様に情報処理装置3の通信部31からの指令に基づき、第1のロボットアーム23Aの可動範囲外の所定位置に順次移動し、被検査物B1の検査画像IM1を撮像するために移動可能に構成される。
【0020】
1-3.情報処理装置3
図2は、情報処理装置3のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3は、情報処理装置3における制御部33が担う機能を示す機能ブロック図である。情報処理装置3は、通信部31と、記憶部32と、制御部33(画像処理部332、判定部333)とを有し、これらの構成要素が情報処理装置3の内部において通信バス30を介して電気的に接続されている。以下、各構成要素についてさらに説明する。
【0021】
<通信部31>
通信部31は、USB、IEEE1394、Thunderbolt、有線LANネットワーク通信等といった有線型の通信手段が好ましいものの、無線LANネットワーク通信、LTE/3G等のモバイル通信、Bluetooth(登録商標)通信等を必要に応じて含めてもよい。すなわち、これら複数の通信手段の集合として実施することがより好ましい。特に、第1のカメラ21A及び第2のカメラ21Bとは、所定の通信規格において通信可能に構成されることが好ましい。
【0022】
通信部31は、第1のカメラ21A及び第2のカメラ21Bが複数の検査画像IM1を撮像するとこれらを受信するように構成される。また、通信部31は、前述の第1のロボットアーム23A及び第2のロボットアーム23Bの各関節角度を逆運動学に基づいて所望の角度に制御するための情報を送信可能に構成される。また、現在の関節角度が情報として取得可能(エンコーダ)に構成されるとさらに好ましい。このような構成により、第1のロボットアーム23A(第2のロボットアーム23B)の先端に設けられた第1のカメラ21A及び第1の照明22A(第2のカメラ21B及び第2の照明22B)を、空間座標中の所望の位置及び向きに変位させるような制御が可能となる。
【0023】
<記憶部32>
記憶部32は、前述の記載により定義される様々な情報を記憶する。これは、例えばソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等のストレージデバイスとして、あるいは、プログラムの演算に係る一時的に必要な情報(引数、配列等)を記憶するランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)等のメモリとして実施されうる。また、これらの組合せであってもよい。特に、記憶部32は、第1のカメラ21A及び第2のカメラ21Bによって撮像され、且つ通信部31が受信した検査画像IM1を記憶する。検査画像IM1は、例えばRGB各8ビットのピクセル情報を具備する配列情報である。また、記憶部32は、取得プログラム、画像処理プログラム、判定プログラム、結果保存プログラム、及び表示制御プログラムを記憶する。また、記憶部32は、これ以外にも制御部33によって実行される情報処理装置3に係る種々のプログラム等を記憶している。
【0024】
<制御部33>
制御部33は、情報処理装置3に関連する全体動作の処理・制御を行う。制御部33は、例えば不図示の中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)である。制御部33は、記憶部32に記憶された所定のプログラムを読み出すことによって、情報処理装置3に係る種々の機能を実現する。具体的には取得機能、画像処理機能、判定機能、結果保存機能、及び表示制御機能が該当する。すなわち、ソフトウェア(記憶部32に記憶されている)による情報処理がハードウェア(制御部33)によって具体的に実現されることで、取得部331、画像処理部332、判定部333、結果保存部334、及び表示制御部335として実行されうる。なお、
図3においては、単一の制御部33として表記されているが、実際はこれに限るものではなく、機能ごとに複数の制御部33を有するように実施してもよい。またそれらの組合せであってもよい。以下、取得部331、画像処理部332、判定部333、結果保存部334、及び表示制御部335についてさらに詳述する。
【0025】
[取得部331]
取得部331は、ソフトウェア(記憶部32に記憶されている)による情報処理がハードウェア(制御部33)によって具体的に実現されているものである。取得部331は、第1のカメラ21A及び第2のカメラ21Bによって撮像された検査画像IM1を、通信部31を介して取得するように構成されている。
図6に被検査物B1に構造的に正面視不可の難視領域SAに付着した炭化物(検査画像内の炭化物D1)が撮像された検査画像IM1の一例を示す。
【0026】
[画像処理部332]
画像処理部332は、ソフトウェア(記憶部32に記憶されている)による情報処理がハードウェア(制御部33)によって具体的に実現されているものである。画像処理部332は、第1のカメラ21A及び第2のカメラ21Bから送信され且つ通信部31によって受信された検査領域Rに位置する被検査物B1を含む複数の検査画像IM1に対して、所定の画像処理を実行するように構成される。より具体的には、画像処理部332は、第1のカメラ21A及び第2のカメラ21Bから送信され且つ通信部31によって受信された検査画像IM1に対して、所定の画像処理を実行し、処理後画像IM2を生成する。より具体的には、検査画像IM1の明度に対して所定の閾値を定めてバイナリ画像(処理後画像IM2の一例)に変換処理する。
図7に、
図6の検査画像IM1が変換処理された処理後画像IM2の一例を示す。炭化物が変換処理され抽出されている(バイナリ画像内の炭化物D2)。
【0027】
[判定部333]
判定部333は、ソフトウェア(記憶部32に記憶されている)による情報処理がハードウェア(制御部33)によって具体的に実現されているものである。判定部333は、構造的に正面視不可の難視領域SAを有する被検査物B1の外観にある欠陥を抽出することとなる。その結果、情報処理装置3が第1のカメラ21A及び第2のカメラ21Bによって撮像された複数の検査画像IM1に基づいて、被検査物B1の欠陥の有無を判定することとなる。具体的には、判定部333は、処理後画像IM2であるバイナリ画像に基づいて、欠陥である炭化物の有無を判定するように構成される。判定部333は、画像処理部332で算出した被検査物B1の外観にある欠陥の位置及び面積の少なくとも1つに基づいて、欠陥に該当するかどうかを判定する。なお、第1のカメラ21A及び第2のカメラ21Bのノイズ、画像処理での計算上の誤差、又は品質上問題のない微小な不具合は、欠陥ではないと判定しても良い。また、判定部333は、通信部31が受信した複数の検査画像IM1に基づいて、搬送装置4が次の被検査物B2を搬送してくるまでに、検査中の被検査物B1の欠陥有無を判定するように構成される。
図8に、前述した炭化物が欠陥と判定された画像の一例を示す(欠陥判定された炭化物D3)。
【0028】
[結果保存部334]
結果保存部334は、ソフトウェア(記憶部32に記憶されている)による情報処理がハードウェア(制御部33)によって具体的に実現されているものである。結果保存部334は、品質の解析及び分析を行う目的等のために、被検査物B1の検査終了後に、被検査物B1を識別するID、検査結果、検査時刻、欠陥のある場合は種別、内容(欠陥の位置及び面積等)、欠陥発生数、処理後画像IM2又は検査工程等のデータを記憶部32に記憶させる。
【0029】
[表示制御部335]
表示制御部335は、ソフトウェア(記憶部32に記憶されている)による情報処理がハードウェア(制御部33)によって具体的に実現されているものである。表示制御部335は、検査終了後、前述の被検査物B1を識別するID、検査結果、検査時刻、欠陥のある場合は種別、内容(欠陥の位置及び面積等)、欠陥発生数、処理後画像IM2、又は検査工程等のデータを表示装置5に表示させる。これらのデータは、生産現場での品質状況をリアルタイムで表示しているため、問題点を迅速に把握、特定すること、及び素早い対策等に役立てられる。
【0030】
1-4.搬送装置4
搬送装置4は、複数の被検査物B1を検査領域Rに順次搬送するように構成されるものである。搬送装置4は、ベルトコンベア、ローラーコンベア、及びチェーンコンベア他、被検査物B1を搬送するものであればよく、搬送形式は問わない。
【0031】
搬送装置4は、被検査物B1を検査システム1に搬送する装置であり、搬送装置4に備えられたセンサー(不図示)が、被検査物B1が検査システム1に搬送されたことを認識する。不図示のセンサーは、被検査物B1の有無が検出できるものであれば良い。例えば、非接触で被検査物B1の有無を検出できる光電センサーが該当する。
【0032】
第1のロボットアーム23A及び第2のロボットアーム23Bは所定の位置に移動し、第1のカメラ21A及び第2のカメラ21Bが構造的に正面視不可の難視領域SAを有する被検査物B1の外観を撮像する。通信部31は、第1のカメラ21A及び第2のカメラ21Bが複数の検査画像IM1を撮像するとこれらを受信するように構成され、判定部333は、通信部31が受信した複数の検査画像IM1に基づいて、搬送装置4が次の被検査物B1を搬送してくるまでに、検査中の被検査物B1の欠陥有無を判定するように構成されている。このように、検査システム1は、搬送装置4を備えることで、オンサイトで連続的に被検査物B1の外観検査を実施することができる。連続的に短時間で欠陥有無を判定できるため、次工程に不具合品を流すことがないため製造コストを低減することができる。
【0033】
検査システム1は、被検査物B1は構造的に正面視不可の難視領域SAを有するものに有効である。そのため被検査物B1はそのような構造を有するものであれば、特定の製品であることを限定しない。被検査物B1は成形体であっても、成形体以外の構造的に正面視不可の難視領域SAを有するものであっても良い。
【0034】
特に具体的には、検査システム1においては、被検査物B1は、取手部を有する容器である。難視領域SAは、取手部の内側の領域である。
【0035】
2.検査方法
第2節では、第1節で説明した検査システム1を用いた検査方法について説明する。
図5は、実施形態に係る検査システム1のアクティビティ図である。以下、本図に沿って説明する。
【0036】
[ここから]
(アクティビティA11)
搬送装置4は、不図示のセンサーが検査領域Rに被検査物B1が到達したことを認識すると、搬送装置4の作動を停止する。
【0037】
(アクティビティA12)
続いて、被検査物B1を適切に撮像するために、第1のロボットアーム23A及び第2のロボットアーム23Bが所定の位置に移動する。
【0038】
(アクティビティA13)
続いて、第1のカメラ21A及び第2のカメラ21Bが被検査物B1を撮像する。規定の枚数に達していない場合は、再度別の視点及び視線で撮像を行うように、アクティビティA12に戻る。
【0039】
(アクティビティA14)
情報処理装置3における取得部331が第1のカメラ21A及び第2のカメラ21Bから通信部31を介して検査画像IM1を取得する。
【0040】
(アクティビティA15)
続いて、情報処理装置3における画像処理部332は、取得部331が取得した検査画像IM1に適切な画像処理を実施して、処理後画像IM2を生成する。
【0041】
(アクティビティA16)
続いて、情報処理装置3における判定部333が、処理後画像IM2に基づいて、被検査物B1の欠陥の有無を判定する。
【0042】
(アクティビティA17)
続いて、情報処理装置3における結果保存部334が、判定部333が判定した結果を記憶部32に記憶させる。
【0043】
(アクティビティA18)
続いて、情報処理装置3における表示制御部335が、結果保存部334によって記憶された結果を表示装置5に表示させる。規定の枚数に達していない場合は、再度別の視点及び視線で撮像された画像を取得するように、アクティビティA14に戻る。
【0044】
(アクティビティA19)
最後に、次の被検査物B1を検査するために、再び搬送装置4が作動する。
[ここまで]
【0045】
3.変形例
第3節では、本実施形態に係る検査システム1の変形例について説明する。すなわち、以下のような態様で検査システム1が提供されてもよい。
【0046】
(1)第1のロボットアーム23A及び第2のロボットアーム23Bに代えて、XYZステージを用いて第1のカメラ21A及び第2のカメラ21B等の位置座標を変化させてもよい。
(2)構造的に正面視不可の難視領域SAが第1のカメラ21A及び第2のカメラ21Bによって撮像された2枚の検査画像IM1で漏れなく撮像される場合には、第1のカメラ21A及び第2のカメラ21Bを固定して実施してもよい。
(3)第1のカメラ21A、第2のカメラ21Bに加えて、さらなるカメラを追加してもよい。
【0047】
4.結言
以上のように、本実施形態によれば、構造的に正面視不可の難視領域を有する被検査体の欠陥の有無を適切に判定可能な検査システムを実現することができる。
【0048】
次に記載の各態様で提供されてもよい。
前記検査システムにおいて、前記カメラは、駆動可能なロボットアームの先端に設けられ、前記視点及び視線を可変に構成されるもの。
前記検査システムにおいて、前記カメラは、前記視点及び視線が異なるように配置された複数のカメラであるもの。
前記検査システムにおいて、搬送装置をさらに備え、前記搬送装置は、複数の前記被検査物を前記検査領域に順次搬送するように構成されるもの。
前記検査システムにおいて、前記情報処理装置は、通信部をさらに備え、前記通信部は、前記カメラが前記複数の検査画像を撮像するとこれらを受信するように構成され、前記判定部は、前記通信部が受信した前記複数の検査画像に基づいて、前記搬送装置が次の前記被検査物を搬送してくるまでに、検査中の前記被検査物の欠陥有無を判定するように構成されるもの。
前記検査システムにおいて、前記情報処理装置は、画像処理部をさらに備え、前記画像処理部は、前記検査画像の明度に対して所定の閾値を定めてバイナリ画像に変換処理し、前記判定部は、前記バイナリ画像に基づいて、前記欠陥である炭化物の有無を判定するように構成されるもの。
前記検査システムにおいて、照明をさらに備え、前記照明は、前記カメラによる前記検査画像の撮像において、前記被検査物に照明光を当てるように構成されるもの。
前記検査システムにおいて、前記照明は、前記カメラの前記視点及び視線に合わせて、その位置、向き及び照明強度の少なくとも1つを可変に構成されるもの。
前記検査システムにおいて、前記被検査物は、成形体であるもの。
前記検査システムにおいて、前記被検査物は、取手部を有する容器で、前記難視領域は、前記取手部の内側の領域であるもの。
もちろん、この限りではない。
【0049】
最後に、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0050】
1 :検査システム
2 :撮像装置
21A :第1のカメラ
21B :第2のカメラ
22A :第1の照明
22B :第2の照明
23A :第1のロボットアーム
23B :第2のロボットアーム
3 :情報処理装置
30 :通信バス
31 :通信部
32 :記憶部
33 :制御部
331 :取得部
332 :画像処理部
333 :判定部
334 :結果保存部
335 :表示制御部
4 :搬送装置
5 :表示装置
B1 :被検査物
B2 :被検査物
D1 :炭化物
D2 :炭化物
D3 :炭化物
IM1 :検査画像
IM2 :処理後画像
R :検査領域
SA :難視領域