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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/02 20060101AFI20240215BHJP
   H02K 1/14 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
H02K1/02 A
H02K1/14 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019181000
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021058033
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】木戸 尚宏
(72)【発明者】
【氏名】榧野 茜
(72)【発明者】
【氏名】浅野 能成
(72)【発明者】
【氏名】浅利 司
(72)【発明者】
【氏名】日比野 寛
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-104769(JP,U)
【文献】特開2010-148256(JP,A)
【文献】特開2014-093794(JP,A)
【文献】実開平04-051067(JP,U)
【文献】実開昭58-140613(JP,U)
【文献】特開昭61-288784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/02
H02K 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子に設けられ、圧粉磁心で形成される鉄心と、
前記鉄心に巻き回され、電流が流れる巻線と、
前記巻線と別に前記固定子に設けられ、前記鉄心の壁面の少なくとも一部と対向するように配置され、軸方向に伝熱可能な軸方向伝熱部材と、
前記軸方向伝熱部材から軸方向に伝熱可能に構成される放熱部材と、
前記鉄心及び前記軸方向伝熱部材を固定する固定部材と、を備え、
前記鉄心と前記軸方向伝熱部材との間で生じる応力は、前記鉄心と前記固定部材との間で生じる応力、及び前記軸方向伝熱部材と前記固定部材との間で生じる応力よりも小さく、
前記軸方向伝熱部材と前記鉄心とは伝熱可能に構成されている、
モータ。
【請求項2】
前記軸方向伝熱部材と前記鉄心との間に伝熱可能な物体が設けられる、
請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記物体は、軸方向における前記鉄心の少なくとも一方の端面に当接して前記鉄心からの熱を軸方向に伝熱可能に配置され、前記鉄心からの熱を前記軸方向伝熱部材に向けて伝熱する、
請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
前記物体は、非磁性体で形成される、
請求項2又は3に記載のモータ。
【請求項5】
前記物体は、前記鉄心と前記軸方向伝熱部材とが互いに対向し合っている間の空間に設けられる、樹脂、接着剤、又はグリスである、
請求項2に記載のモータ。
【請求項6】
前記樹脂、前記接着剤、又は前記グリスには、熱伝導性フィラーが含まれる、
請求項5に記載のモータ。
【請求項7】
前記軸方向伝熱部材は、前記鉄心より相対的に大きく変形した状態で前記鉄心と当接することで伝熱可能に構成されている、
請求項1に記載のモータ。
【請求項8】
複数相の電機子電流で駆動される、
請求項1乃至7の何れか一項に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、圧粉磁心を鉄心(コア)の材料として用いるモータが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許4887128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、圧粉磁心は相対的に強度が低く、筐体や軸部材等に圧入や焼きばめ等によって、しまりばめの状態で固定されると、鉄心に作用する径方向の引張応力で圧粉磁心が破壊されてしまう可能性がある。そのため、例えば、特許文献1のように、モータの両端部のブラケットによって把持する形で固定すると、鉄心の熱が軸方向の両端部からしか放熱されないため、冷却性能の観点で改善の余地がある。
【0005】
本開示は、圧粉磁心で形成される鉄心を含むモータの冷却性能を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る一実施形態では、
圧粉磁心で形成される鉄心と、
前記鉄心の壁面の少なくとも一部と対向するように配置され、軸方向に伝熱可能な軸方向伝熱部材と、
前記軸方向伝熱部材から軸方向に伝熱可能に構成される放熱部材と、
前記鉄心及び前記軸方向伝熱部材を固定する固定部材と、を備え、
前記鉄心と前記軸方向伝熱部材との間で生じる応力は、前記鉄心と前記固定部材との間で生じる応力、及び前記軸方向伝熱部材と前記固定部材との間で生じる応力よりも小さく、
前記軸方向伝熱部材と前記鉄心とは伝熱可能に構成されている、
モータが提供される。
【0007】
本実施形態によれば、例えば、すきまばめ等によって、圧粉磁心で形成される鉄心と軸方向伝熱部材との間に隙間が生じ、鉄心と軸方向伝熱部材との間に生じる応力が相対的に小さい場合であっても、鉄心から軸方向伝熱部材に熱を逃がすことができる。そのため、圧粉磁心で形成される鉄心の熱は、軸方向伝熱部材を介して放熱部材から放熱される。よって、圧粉磁心で形成される鉄心を含むモータの冷却性能を向上させることができる。
【0008】
また、上述の実施形態において、
前記軸方向伝熱部材と前記鉄心との間に伝熱可能な物体が設けられてもよい。
【0009】
また、上述の実施形態において、
前記物体は、軸方向における前記鉄心の少なくとも一方の端面に当接して前記鉄心からの熱を軸方向に伝熱可能に配置され、前記鉄心からの熱を前記軸方向伝熱部材に向けて伝熱してもよい。
【0010】
また、上述の実施形態において、
前記物体は、非磁性体で形成されてもよい。
【0011】
また、上述の実施形態において、
前記物体は、前記鉄心と前記軸方向伝熱部材とが互いに対向し合っている間の空間に設けられる、樹脂、接着剤、又はグリスであってもよい。
【0012】
また、上述の実施形態において、
前記樹脂、前記接着剤、又は前記グリスには、熱伝導性フィラーが含まれてもよい。
【0013】
また、上述の実施形態において、
前記軸方向伝熱部材は、前記鉄心より相対的に大きく変形した状態で前記鉄心と当接することで伝熱可能に構成されていてもよい。
【0014】
また、上述の実施形態において、
複数相の電機子電流で駆動されてもよい。
【発明の効果】
【0015】
上述の実施形態によれば、圧粉磁心で形成される鉄心を含むモータの冷却性能を向上させる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態~第3実施形態に係るクローポールモータの概要を示す斜視図である。
図2】第1実施形態~第3実施形態に係る固定子の構成の一例を示す斜視図である。
図3】第1実施形態~第3実施形態に係る固定子ユニットの構成の一例を示す分解図である。
図4】第1実施形態に係るクローポールモータの構成の一例を示す縦断面図である。
図5A】第1実施形態に係るクローポールモータ(固定子)の組立方法の他の例を説明する図である。
図5B】第1実施形態に係るクローポールモータ(固定子)の組立方法の更に他の例を説明する図である。
図6A】第1実施形態に係る挿通部材の構成の他の例を示す横断面図である。
図6B】第1実施形態に係る挿通部材の構成の更に他の例を示す横断面図である。
図7】第2実施形態に係るクローポールモータの構成の一例を示す縦断面図である。
図8A】第3実施形態に係る挿通部材の構成の一例を示す横断面図である。
図8B】第3実施形態に係る挿通部材の構成の他の例を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
【0018】
[第1実施形態]
図1図6を参照して、第1実施形態について説明する。
【0019】
<モータの基本構成>
まず、図1図3を参照して、本実施形態に係るモータ1の基本構成について説明する。
【0020】
図1は、第1実施形態に係るクローポールモータ(以下、単に「モータ」)1の概要を示す斜視図である。図2は、第1実施形態に係る固定子20の構成の一例を示す斜視図である。具体的には、図2は、図1において、回転子10(回転子鉄心11、永久磁石12、及び回転軸部材13)の図示を省略した図である。図3は、第1実施形態に係る固定子ユニット21の構成の一例を示す分解図である。
【0021】
尚、図1では、後述する連結部材14の図示が省略されている。
【0022】
図1に示すように、モータ(「電動機」とも称する)1は、アウタロータ型であり、複数相(本例では、3相)の電機子電流で駆動される。モータ1は、例えば、空調調和機の圧縮機、ファン等に搭載される。
【0023】
図1図2に示すように、モータ1は、回転子10と、固定子20と、固定部材30とを含む。
【0024】
図1に示すように、回転子(「ロータ」とも称する)10は、固定子20に対して、モータ1の径方向(以下、単に「径方向」)の外側に配置され、回転軸心AXまわりに回転可能に構成される。回転子10は、回転子鉄心11と、複数(本例では、20個)の永久磁石12と、回転軸部材13とを含む。
【0025】
回転子鉄心(「ロータコア」とも称する)11は、例えば、略円筒形状を有し、モータ1の回転軸心AXと円筒形状の軸心とが略一致するように配置される。また、回転子鉄心11は、モータ1の軸方向(以下、単に「軸方向」)において、固定子20と略同等の長さを有する。回転子鉄心11は、例えば、鋼板、鋳鉄、圧粉磁心等により形成される。回転子鉄心11は、例えば、軸方向において、一の部材で構成される。また、回転子鉄心11は、図1に示すように、軸方向に積層される複数(本例では、3つ)の回転子鉄心11A~11Cで構成されてもよい。
【0026】
複数の永久磁石12は、回転子鉄心11の内周面において、周方向に等間隔で複数(本例では、20個)並べられる。また、複数の永久磁石12は、それぞれ、回転子鉄心11の軸方向の略一端から略他端までの間に存在するように形成されている。永久磁石12は、例えば、ネオジム焼結磁石やフェライト磁石である。
【0027】
複数の永久磁石12は、それぞれ、径方向の両端に異なる磁極が着磁されている。また、複数の永久磁石12のうちの周方向で隣接する二つの永久磁石12は、固定子20に面する径方向の内側に互いに異なる磁極が着磁されている。そのため、固定子20の径方向の外側には、周方向で、径方向の内側にN極が着磁された永久磁石12と、径方向の内側にS極が着磁された永久磁石12とが交互に配置される。
【0028】
複数の永久磁石12は、それぞれ、軸方向において、一の磁石部材で構成されていてもよいし、軸方向に分割される複数(例えば、積層される回転子鉄心11の部材の数に対応する3つ)の磁石部材で構成されていてもよい。この場合、軸方向に分割される永久磁石12を構成する複数の磁石部材は、固定子20に面する径方向の内側に全て同じ磁極が着磁される。
【0029】
尚、周方向に配置される複数の永久磁石12は、例えば、周方向で異なる磁極が交互に着磁される円環状のリング磁石やプラスチック磁石等、周方向において、一の部材で構成される永久磁石に置換されてもよい。この場合、周方向において、一の部材で構成される永久磁石は、軸方向においても、一の部材で構成され、全体として、一の部材で構成されてもよい。また、周方向において、一の部材で構成される永久磁石は、複数の永久磁石12の場合と同様、軸方向において、複数の部材に分割されていてもよい。また、周方向において、一の部材で構成されるプラスチック磁石が採用される場合、回転子鉄心11は、省略されてもよい。
【0030】
回転軸部材13は、例えば、略円柱形状を有し、モータ1の回転軸心AXと円柱形状の軸心とが略一致するように配置される。回転軸部材13は、例えば、挿通部材24の軸方向の両端部に設けられるベアリング25,26(図4等参照)によって回転可能に支持される。後述の如く、挿通部材24は、固定部材30に固定される。これにより、回転軸部材13は、固定部材30に対して回転軸心AX回りで回転することができる。回転軸部材13は、例えば、軸方向において、モータ1の固定部材30側の端部とは反対側の端部(以下、便宜的に「モータ1の先端部」)で、連結部材14(図4等参照)を介して、回転子鉄心11と連結される。
【0031】
連結部材14は、例えば、回転子鉄心11の略円筒形状の開放端を閉塞する形の略円板形状を有してよい。これにより、回転子鉄心11及び回転子鉄心11の内周面に固定される複数の永久磁石12は、回転軸部材13の回転に合わせて、固定部材30に対してモータ1の回転軸心AXまわりに回転することができる。
【0032】
尚、回転軸部材13は、固定部材30に代えて、モータ1の先端部側において、図示しない筐体にベアリング等を介して回転可能に支持されてもよい。この場合、挿通部材24において、回転軸部材13を挿通する挿通孔が省略される。
【0033】
図2に示すように、固定子(「ステータ」とも称する)20は、回転子10(回転子鉄心11及び永久磁石12)の径方向の内側に配置される。固定子20は、複数(本例では、3つ)のクローポール型固定子ユニット(以下、単に「固定子ユニット」)21と、複数(本例では、2つ)の相間部材22と、端部部材23と、挿通部材24とを含む。
【0034】
図3に示すように、固定子ユニット21は、一対の固定子鉄心211と、巻線212とを含む。
【0035】
一対の固定子鉄心(「ステータコア」とも称する)211は、巻線212の周囲を取り囲むように設けられる。固定子鉄心211は、例えば、圧粉磁心で形成される。固定子鉄心211は、ヨーク部211Aと、複数の爪磁極211Bと、ヨーク部211Cと、挿通孔211Dとを含む。
【0036】
ヨーク部211Aは、軸方向視で円環形状を有すると共に、軸方向に所定の厚みを有する。
【0037】
複数の爪磁極211Bは、ヨーク部211Aの外周面において、周方向に等間隔で配置され、それぞれは、ヨーク部211Aの外周面から径方向の外側に向かって突出する。爪磁極211Bは、爪磁極部211B1を含む。
【0038】
爪磁極部211B1は、所定の幅を有し、ヨーク部211Aの外周面から所定の長さだけ延び出す形で突出する。
【0039】
また、爪磁極211Bは、更に、爪磁極部211B2を含む。これにより、巻線212の電機子電流により磁化される爪磁極211Bの磁極面と回転子10との対向面積を相対的に広く確保することができる。そのため、モータ1のトルクを相対的に増加させ、モータ1の出力を向上させることができる。
【0040】
爪磁極部211B2は、爪磁極部211B1の先端から一対の固定子鉄心211の他方に向かって軸方向に所定の長さだけ延び出す形で突出する。例えば、爪磁極部211B2は、図3に示すように、爪磁極部211B1からの距離に依らず幅が一定であってよい。また、例えば、爪磁極部211B2は、爪磁極部211B1から軸方向で離れるにつれて幅が狭くなるテーパ形状を有してもよい。
【0041】
尚、爪磁極部211B2は、省略されてもよい。
【0042】
ヨーク部211Cは、ヨーク部211Aの内周面付近の部分が一対の固定子鉄心211の他方に向かって所定量だけ突出する形で構成され、例えば、軸方向視でヨーク部211Aより外径が小さい円環形状を有する。これにより、一対の固定子鉄心211は、互いのヨーク部211Cで当接し、一対の固定子鉄心211に対応する一対のヨーク部211Aの間に巻線212を収容する空間が生成される。
【0043】
挿通孔211Dには、挿通部材24が挿通される。挿通孔211Dは、ヨーク部211A及びヨーク部211Cの内周面によって実現される。
【0044】
巻線(「コイル」とも称する)212は、軸方向視で円環状に巻き回される。巻線212は、その一端が外部端子に電気的に繋がっており、その他端が中性点に電気的に繋がっている。巻線212は、軸方向において、一対の固定子鉄心211(ヨーク部211A)の間に配置される。また、巻線212は、内周部が一対の固定子鉄心211のヨーク部211Cよりも径方向で外側になるように巻き回されている。
【0045】
図2に示すように、一対の固定子鉄心211は、一方の固定子鉄心211の爪磁極211Bと他方の固定子鉄心211の爪磁極211Bとが周方向で交互に配置されるように組み合わせられる。また、円環状の巻線212に電機子電流が流れると、一対の固定子鉄心211のうちの一方に形成される爪磁極211Bと他方に形成される爪磁極211Bとは、互いに異なる磁極に磁化される。これにより、一対の固定子鉄心211において、一方の固定子鉄心211から突出する一の爪磁極211Bは、周方向で隣接し、他方の固定子鉄心211から突出する他の爪磁極211Bと異なる磁極を有する。そのため、巻線212に流れる電機子電流により、一対の固定子鉄心211の周方向には、N極の爪磁極211B及びS極の爪磁極211Bが交互に配置される。
【0046】
図2に示すように、複数の固定子ユニット21は、軸方向に積層される。
【0047】
複数の固定子ユニット21には、複数相(本例では、3相)分の固定子ユニット21が含まれる。具体的には、複数の固定子ユニット21は、U相に対応する固定子ユニット21Aと、V相に対応する固定子ユニット21Bと、W相に対応する固定子ユニット21Cとを含む。複数の固定子ユニット21は、モータ1の先端部から、U相に対応する固定子ユニット21A、V相に対応する固定子ユニット21B、及びW相に対応する固定子ユニット21Cの順で積層される。固定子ユニット21A~21Cは、互いに、周方向の位置が電気角で120°異なるように配置される。
【0048】
尚、モータ1は、2相の電機子電流で駆動されてもよいし、4相以上の電機子電流で駆動されてもよい。
【0049】
相間部材22は、軸方向で隣接する異なる相の固定子ユニット21の間に設けられる。相間部材22は、例えば、非磁性体である。これにより、異なる相の二つの固定子ユニット21の間に所定の距離を確保し、異なる相の二つの固定子ユニット21の間での磁束漏れを抑制することができる。相間部材22は、UV相間部材22Aと、VW相間部材22Bとを含む。
【0050】
UV相間部材22Aは、軸方向で隣接する、U相の固定子ユニット21AとV相の固定子ユニット21Bとの間に設けられる。UV相間部材22Aは、例えば、所定の厚みを有する略円柱形状(略円板形状)を有し、中心部分に挿通部材24が挿通される挿通孔が形成される。以下、VW相間部材22Bについても同様であってよい。
【0051】
VW相間部材22Bは、軸方向で隣接する、V相の固定子ユニット21BとW相の固定子ユニット21Cとの間に設けられる。
【0052】
端部部材23は、積層される複数の固定子ユニット21のモータ1の先端部側の端部に設けられる。具体的には、端部部材23は、軸方向において、固定子ユニット21Aの固定子ユニット21Bに面する側と反対側の端面に接するように設けられる。端部部材23は、例えば、所定の厚みを有する略円柱形状(略円板形状)を有し、中心部分に挿通部材24が挿通される挿通孔が形成される。端部部材23は、例えば、非磁性体である。これにより、固定子ユニット21A(具体的には、モータ1の先端部側の固定子鉄心211)からの磁束漏れを抑制することができる。
【0053】
挿通部材24は、モータ1の先端部側から順に、端部部材23、固定子ユニット21A、UV相間部材22A、固定子ユニット21B、VW相間部材22B、固定子ユニット21Cを挿通した状態で、先端部が固定部材30に固定される。挿通部材24は、例えば、先端部に雄ねじ部を有し、固定部材30の対応する雌ネジ部に締め込まれることにより固定部材30に固定される。また、挿通部材24は、例えば、略円筒形状を有し、内周面により実現される孔部に回転軸部材13が回転可能に配置される。また、挿通部材24は、モータ1の先端側において、固定子ユニット21の挿通孔211Dの内径よりも相対的に大きい外径を有する頭部を有する。これにより、例えば、挿通部材24が固定部材30にある程度締め込まれることで、頭部から端部部材23に軸方向で固定部材30に向かう方向の力を作用させることができる。そのため、複数の固定子ユニット21(固定子ユニット21A~21C)及び相間部材22(UV相間部材22A、VW相間部材22B)を端部部材23及び固定部材30で挟み込む形で固定部材30に固定することができる。圧粉磁心は、引張応力に対する強度が相対的に低い一方、圧縮応力に対する強度が相対的に高い。よって、圧粉磁心で形成される固定子鉄心211に圧縮応力が作用する形で、固定子ユニット21A~21Cに固定することができる。
【0054】
固定部材30は、例えば、軸方向視で回転子10(回転子鉄心11)よりも大きい外径の略円板形状を有し、軸方向に所定の厚みを有する。固定部材30には、上述の如く、挿通部材24を介して、回転子10が回転可能に支持され、固定子20が固定される。
【0055】
<モータの詳細構成>
次に、図4図6を参照して、モータ1の詳細構成について説明する。
【0056】
図4は、第1実施形態に係るモータ1の構成の一例を示す縦断面図である。図5A図5Bは、それぞれ、第1実施形態に係るモータ1(固定子20)の組立方法の他の例及び更に他の例を説明する図である。図6A図6Bは、それぞれ、第1実施形態に係る挿通部材24の構成の他の例及び更に他の例を示す横断面図である。
【0057】
尚、図4中の矢印は、熱エネルギの流れを表している。また、図4では、固定子鉄心211に形成される爪磁極部211B2の図示が省略されている。
【0058】
図4に示すように、UV相間部材22A、VW相間部材22B、及び端部部材23は、それぞれ、挿通孔の内周面で挿通部材24の外周面と接触している。UV相間部材22A,VW相間部材22B、及び端部部材23は、例えば、圧入や焼きばめ等によって、挿通部材24と結合される。UV相間部材22A,VW相間部材22B、及び端部部材23のそれぞれと挿通部材24との間には、しまりばめの関係があり、互いに相対的大きい応力が作用している。
【0059】
また、全ての固定子ユニット21A~21C(固定子鉄心211)の内周面と、挿通部材24の外周面とは、径方向で対向している。固定子ユニット21A~21Cの固定子鉄心211(ヨーク部211C)は、それぞれの挿通孔の内周面と挿通部材24の外周面との間に隙間27を有している。隙間27は、固定子鉄心211と挿通部材24との間のはめあい公差以上であってよい。固定子ユニット21A~21Cの固定子鉄心211と挿通部材24との間には、すきまばめの関係があり、互いに相対的に小さい応力が作用している。そのため、圧粉磁心で形成される固定子鉄心211には、挿通部材24との間にしまりばめの関係がある場合のように、相対的に大きな引張応力が作用することがなく、圧粉磁心で形成される固定子鉄心211が破壊されるような事態が抑制される。
【0060】
上述の如く、挿通部材24は、モータ1の先端部側から端部部材23、固定子ユニット21A、UV相間部材22A,固定子ユニット21B、VW相間部材22B、及び固定子ユニット21Cの順に挿通し、先端部が固定部材30に締め込まれてよい。締め込み時に、挿通部材24の頭部から端部部材23に作用する力によって、固定子ユニット21A~21Cの固定子鉄心211は、端部部材23と固定部材30との間に挟み込まれる形で、固定部材30に固定される。そのため、固定子鉄心211と固定部材30との間には、相対的に大きな応力が作用する。
【0061】
また、図5Aに示すように、挿通部材24は、端部部材23、固定子ユニット21A、UV相間部材22A,固定子ユニット21B、VW相間部材22B、及び固定子ユニット21Cを挿通する前に、固定部材30に固定されてもよい。挿通部材24は、上述と同様、先端部の雄ねじ部が固定部材30の雌ねじ部に締め込まれる形で固定子されてもよいし、圧入や焼きばめ等によって固定されてもよい。そのため、挿通部材24と固定部材30との間には、相対的に大きな応力が作用する。
【0062】
本例では、固定子ユニット21C、VW相間部材22B、固定子ユニット21B、UV相間部材22A、固定子ユニット21A、及び端部部材23は、その順に、挿通部材24に挿通される。端部部材23は、挿通部材24にしまりばめで固定された状態で、軸方向で固定子ユニット21Aに相対的に大きい力が作用するように配置される。これにより、固定子ユニット21A~21Cは、軸方向で固定部材30側に向かって、端部部材23から固定子ユニット21Aに作用する力によって、端部部材23と固定部材30との間に挟み込まれる形で、固定部材30に固定される。
【0063】
また、図5Bに示すように、挿通部材24は、モータ1の先端部から順に、軸方向で挿通部材24A~24Dに分割されてもよい。
【0064】
本例では、挿通部材24A~24Cには、それぞれ、例えば、圧入や焼きばめによって、端部部材23、UV相間部材22A、及びVW相間部材22Bが予め連結される。また、挿通部材24Dは、予め固定部材30に固定される。挿通部材24Dは、上述と同様、先端部の雄ねじ部が固定部材30の雌ねじ部に締め込まれる形で固定されてもよいし、圧入や焼きばめ等によって固定されてもよい。
【0065】
固定子ユニット21C、VW相間部材22Bと挿通部材24Cとの連結体、固定子ユニット21B、UV相間部材22Aと挿通部材24Bとの連結体、固定子ユニット21A、及び端部部材23と挿通部材24Aとの連結体は、この順に固定部材30上に積層される。そして、挿通部材24A~24Dは、ボルトBLTによって、軸方向で連結される。端部部材23は、ボルトBLTにより挿通部材24A~24Dが連結された状態で、軸方向で固定子ユニット21Aに相対的に大きい力が作用するように配置される。これにより、固定子ユニット21A~21Cは、軸方向で固定部材30側に向かって、端部部材23から固定子ユニット21Aに作用する力によって、端部部材23と固定部材30との間に挟み込まれる形で、固定部材30に固定される。
【0066】
尚、挿通部材24と固定部材30とは、一体に一の部材として設けられてもよい。
【0067】
図4に示すように、挿通部材24は、中空形状を有し、中空部には、回転軸部材13が回転可能に挿通される。回転軸部材13は、挿通部材24の両端部に埋設されるベアリング25,26によって回転可能に支持される。
【0068】
また、図6A図6Bに示すように、挿通部材24は、中空形状でなくてもよい。この場合、回転軸部材13は、上述の如く、モータ1の先端部において、筐体に回転可能に支持されてよい。
【0069】
本例では、挿通部材24には、軸方向で延びるように3つのスリット孔24Sが設けられる。スリット孔24Sには、外部端子と固定子ユニット21A~21Cのそれぞれに対応する巻線212との間を繋ぐ配線が挿通される。スリット孔24Sの形状は任意である。例えば、図6Aに示すように、3つのスリット孔24Sは、挿通部材24の中心軸まわりに配置される円弧形状の横断面を有してよい。また、例えば、図6Bに示すように、3つのスリット孔24Sは、挿通部材24の中心軸付近に配置される円形状の横断面を有してもよい。
【0070】
図4に示すように、固定子ユニット21A~21Cの固定子鉄心211は、挿通部材24(軸方向伝熱部材の一例)との間に隙間27がある。そのため、モータ1は、巻線212で発生する熱エネルギを固定子鉄心211から、直接、径方向で挿通部材24に逃がしにくい状態にある。
【0071】
これに対して、端部部材23及びUV相間部材22A(共に物体の一例)は、固定子ユニット21Aの固定子鉄心211(鉄心の一例)に接触している。また、端部部材23及びUV相間部材22Aは、しまりばめの関係で挿通部材24(軸方向伝熱部材の一例)と連結されている。そのため、固定子ユニット21Aの巻線212で発生する熱エネルギは、端部部材23及びUV相間部材22Aに伝熱され、その熱エネルギは、挿通部材24に向かって径方向に伝熱される。そして、挿通部材24は、熱エネルギを固定部材30に向かって軸方向に伝熱し、固定部材30に伝熱された熱エネルギは、固定部材30に設けられる放熱部材40から軸方向で外部に放熱される。これにより、圧粉磁心で形成される固定子鉄心211に相対的に高い引張応力が作用しない状態で、固定子鉄心211から挿通部材24に熱エネルギを伝熱させることができる。そのため、固定子鉄心211と挿通部材24との間の接触熱抵抗を低減させ、モータ1の冷却性能を向上させることができる。
【0072】
同様に、UV相間部材22A及びVW相間部材22B(物体の一例)は、固定子ユニット21Bの固定子鉄心211に接触している。また、UV相間部材22A及びVW相間部材22Bは、しまりばめの関係で挿通部材24と連結されている。そのため、固定子ユニット21Bの巻線212で発生する熱エネルギは、UV相間部材22A及びVW相間部材22Bに伝熱され、挿通部材24及び固定部材30を介して、放熱部材40から軸方向で外部に放熱される。これにより、モータ1の冷却性能を向上させることができる。
【0073】
また、同様に、VW相間部材22Bは、固定子ユニット21Cの固定子鉄心211に接触している。また、VW相間部材22Bは、しまりばめの関係で挿通部材24と連結されている。そのため、固定子ユニット21Cの巻線212で発生する熱エネルギは、VW相間部材22Bに伝熱され、挿通部材24及び固定部材30を介して、放熱部材40から軸方向で外部に放熱される。これにより、モータ1の冷却性能を向上させることができる。
【0074】
また、上述の如く、全ての固定子ユニット21A~21Cの内周面と挿通部材24の外周面とが径方向で対向しているため、全ての固定子ユニット21A~21Cの熱エネルギを効率的に挿通部材24に伝熱させることができる。特に、固定子ユニット21A~21Cのうちの軸方向の中央部に位置する、V相に対応する固定子ユニット21Bの熱エネルギは、相対的に外部に逃げにくい場合が多い。そのため、固定子ユニット21A~21Cのうちの軸方向の中央部に位置する、複数相のうちの中間の相に相当する固定子ユニット21Bと径方向で対向するように挿通部材24が配置されることで、モータ1の冷却性能を更に向上させることができる。
【0075】
また、固定子ユニット21Cの固定子鉄心211は、固定部材30と接触している。そのため、固定子ユニット21Cの巻線212で発生する熱エネルギは、固定部材30に伝熱され、放熱部材40から軸方向で外部に放熱される。これにより、モータ1の冷却性能を向上させることができる。
【0076】
また、UV相間部材22A、VW相間部材22B、端部部材23、挿通部材24、及び固定部材30の少なくとも一つは、例えば、アルミニウム等の熱伝導性が相対的に高い非磁性体の材料によって形成されてよい。これにより、異なる相の隣接する二つの固定子ユニット21の間や端部の固定子ユニット21での磁束漏れを抑制すると同時に、固定子ユニット21A~21Cの巻線212から発生する熱エネルギをより効率的に放熱部材40から放熱させることができる。そのため、モータ1の冷却性能を更に向上させることができる。
【0077】
尚、UV相間部材22A、VW相間部材22Bの少なくとも一方は、複数の部材で構成されてもよい。例えば、UV相間部材22A及びVW相間部材22Bの少なくとも一方は、非磁性体で形成される第1の部材と、熱伝導性が相対的に高い第2の部材とを含んでよく、第2の部材は、更に、非磁性体であってもよい。
【0078】
放熱部材40は、固定部材30におけるモータ1の基端部側に設けられる。放熱部材40は、例えば、放熱フィン等である。放熱部材40は、アルミニウム等の熱伝導性が相対的に高い材料によって形成されてよい。これにより、放熱部材40は、モータ1の巻線212等で発生する熱エネルギをより効率的に外部に放熱することができる。放熱部材40は、固定部材30と一体に一の部材として設けられてもよいし、別体に設けられ、ボルト締結や溶着等の任意の方法で固定部材30に取り付けられてもよい。
【0079】
尚、放熱部材40は、例えば、挿通部材24の固定部材30に固定される側の端部に設けられてもよい。この場合、挿通部材24を通じて伝熱される熱エネルギは、直接、放熱部材40から軸方向に放熱される。また、この場合、放熱部材40は、挿通部材24と一体に一の部材として設けられてもよいし、別体に設けられ、ボルト締結や溶着等の任意の方法で挿通部材24に取り付けられてもよい。
【0080】
[第2実施形態]
次に、図7を参照して、第2実施形態について説明する。以下、第1実施形態と異なる部分を中心に説明を行い、第1実施形態と同じ或いは対応する内容について説明を省略する場合がある。
【0081】
尚、モータ1の基本構成は、第1実施形態と同様、図1図3で表されるため、説明を省略する。
【0082】
<モータの詳細構成>
図7は、第2実施形態に係るモータ1の構成の一例を示す縦断面図である。
【0083】
図7に示すように、全ての固定子ユニット21A~21C(固定子鉄心211)の内周面と、挿通部材24の外周面とは、径方向で対向している。固定子ユニット21A~21C(固定子鉄心211)、UV相間部材22A、VW相間部材22B、及び端部部材23は、それぞれ、挿通孔の内周面と挿通部材24との間に隙間を有している。当該隙間は、上述の第1実施形態の隙間27と同様、固定子鉄心211と挿通部材24との間のはめあい公差以上であってよい。固定子ユニット21A~21C(固定子鉄心211)、UV相間部材22A、VW相間部材22B、及び端部部材23のそれぞれと挿通部材24との間には、すきまばめの関係があり、互いに相対的に小さい応力が作用している。そのため、圧粉磁心で形成される固定子ユニット21A~21Cの固定子鉄心211には、挿通部材24との間にしまりばめの関係がある場合のように、相対的に大きな引張応力が作用することがない。そのため、圧粉磁心で形成される固定子鉄心211が破壊されるような事態が抑制される。
【0084】
尚、第2実施形態において、UV相間部材22A、VW相間部材22Bは、省略されてもよい。以下、後述する第3実施形態についても同様である。
【0085】
上述の如く、固定子ユニット21A~21C(固定子鉄心211)の内周面は、挿通部材24の外周面と対向している。そして、固定子ユニット21A~21C(固定子鉄心211)、UV相間部材22A、VW相間部材22B、及び端部部材23のそれぞれの内周面と挿通部材24の外周面との間の隙間には、双方に接触する形で物体28が介在する。
【0086】
物体28は、固定子鉄心211の内周面及び挿通部材24の外周面の双方に接触する状態において、径方向で固定子鉄心211との間で作用する応力が非常に小さい材料で構成される。これにより、固定子鉄心211に作用する径方向の引張応力を抑制し、圧粉磁心で形成される固定子鉄心211が破壊されるような事態を抑制することができる。
【0087】
物体28は、例えば、挿通部材24の外周面に挿入される、軸方向視で円環状の弾性樹脂である。また、物体28は、例えば、挿通部材24の外周面に塗布されるグリスであってもよい。また、物体28は、例えば、挿通部材24の外周面に塗布され、挿通部材24の外周面と固定子ユニット21A~21C、UV相間部材22A、VW相間部材22B、及び端部部材23のそれぞれの内周面とを接着可能な接着剤であってもよい。これにより、固定子ユニット21A~21Cの巻線212で発生する熱エネルギは、物体28を通じて、挿通部材24に伝熱される。そして、挿通部材24は、熱エネルギを固定部材30に向かって軸方向に伝熱し、固定部材30に伝熱された熱エネルギは、固定部材30に設けられる放熱部材40から軸方向で外部に放熱される。これにより、モータ1の冷却性能を向上させることができる。
【0088】
また、上述の如く、全ての固定子ユニット21A~21Cの内周面と挿通部材24の外周面とが径方向で対向しているため、全ての固定子ユニット21A~21Cの熱エネルギを効率的に挿通部材24に伝熱させることができる。特に、固定子ユニット21A~21Cのうちの軸方向の中央部に位置する、V相に対応する固定子ユニット21Bの熱エネルギは、相対的に外部に逃げにくい場合が多い。そのため、固定子ユニット21A~21Cのうちの軸方向の中央部に位置する、複数相のうちの中間の相に相当する固定子ユニット21Bと径方向で対向するように挿通部材24が配置されることで、モータ1の冷却性能を更に向上させることができる。
【0089】
また、物体28は、例えば、熱伝導率が相対的に高い熱伝導性フィラーを含む樹脂、グリス、或いは接着剤等であってもよい。これにより、固定子鉄心211から挿通部材24により効率的に熱エネルギが伝熱される。そのため、モータ1の冷却性能を更に向上させることができる。
【0090】
[第3実施形態]
次に、図8A図8Bを参照して、第3実施形態について説明する。以下、第1実施形態及び第2実施形態と異なる部分を中心に説明を行い、第1実施形態及び第2実施形態の少なくとも一方と同じ或いは対応する内容について説明を省略する場合がある。
【0091】
尚、モータ1の基本構成は、第1実施形態及び第2実施形態と同様、図1図3で表されるため、説明を省略する。
【0092】
<モータの詳細構成>
図8Aは、第3実施形態に係る挿通部材24の構成の一例を示す横断面図である。図8Bは、第3実施形態に係る挿通部材24の構成の他の例を示す横断面図である。
【0093】
尚、第3実施形態に係るモータ1の構成を示す縦断面図は、物体28が省略される点と、固定子ユニット21A~21Cの固定子鉄心211と挿通部材24との間の隙間が省略される点以外、第2実施形態の図7と同様である。そのため、図示を省略し、本図を援用する。
【0094】
図8Aに示すように、挿通部材24の外周部には、軸方向における固定子ユニット21A~21Cが配置される範囲に、微細突起24FPが形成される。例えば、挿通部材24の外周面に周方向に1周する微細な溝が軸方向に多数形成されることにより、溝が形成されない山部が微細突起24FPとして形成されてよい。
【0095】
微細突起24FPの先端部は、その最小許容寸法が固定子鉄心211の挿通孔211Dの内面の最大許容寸法よりも大きくなるように形成される。そのため、挿通部材24(微細突起24FP)と固定子鉄心211との間には、しまりばめに相当するはめ合いの関係が生じる。
【0096】
一方、微細突起24FPは、固定子鉄心211よりも相対的に強度が低く、変形し易くなっている。これにより、挿通部材24が固定子鉄心211の挿通孔211Dに挿通されると、微細突起24FPは、挿通孔211Dの内面に接触しつつ、固定子鉄心211よりも相対的に大きく変形する。そのため、固定子鉄心211と挿通部材24との間がしまりばめのはめ合いの関係で結合されていても、挿通部材24(微細突起24FP)と固定子鉄心211との間で作用する応力は相対的に小さくなる。よって、圧粉磁心で形成される固定子鉄心211に径方向で作用する引張応力を抑制し、固定子鉄心211が破壊されてしまうような事態を抑制することができる。
【0097】
また、固定子鉄心211の挿通孔211Dの内面と相対的に大きく変形した状態の微細突起24FPとは当接している。そのため、固定子ユニット21A~21Cの巻線212で発生する熱エネルギは、固定子鉄心211から微細突起24FPを通じて、挿通部材24の本体に伝熱される。そして、挿通部材24は、熱エネルギを固定部材30に向かって軸方向に伝熱し、固定部材30に伝熱された熱エネルギは、固定部材30に設けられる放熱部材40から軸方向で外部に放熱される。これにより、モータ1の冷却性能を向上させることができる。
【0098】
また、図8Bに示すように、挿通部材24の外周面の近傍には、軸方向に延びるように空洞部24CVが設けられる。空洞部24CVは、軸方向において、少なくとも固定子ユニット21A~21Cが配置される範囲に設けられる。
【0099】
本例の挿通部材24の外周面は、その最小許容寸法が固定子鉄心211の挿通孔211Dの内面の最大許容寸法よりも大きくなるように形成される。そのため、挿通部材24と固定子鉄心211との間には、しまりばめに相当するはめ合いの関係が生じる。
【0100】
一方、挿通部材24の外周面は、その近傍に空洞部24CVが設けられるため、固定子鉄心211よりも相対的に強度が低く、変形し易くなっている。これにより、挿通部材24が固定子鉄心211の挿通孔211Dに挿通されると、挿通部材24の外周面は、挿通孔211Dの内面に接触しつつ、固定子鉄心211よりも相対的に大きく変形する。そのため、固定子鉄心211と挿通部材24との間がしまりばめのはめ合いの関係で結合されていても、挿通部材24と固定子鉄心211との間で作用する応力は相対的に小さくなる。よって、圧粉磁心で形成される固定子鉄心211に径方向で作用する引張応力を抑制し、固定子鉄心211が破壊されてしまうような事態を抑制することができる。
【0101】
また、固定子鉄心211の挿通孔211Dの内面と相対的に大きく変形した状態の挿通部材24の外周面とは当接している。そのため、固定子ユニット21A~21Cの巻線212で発生する熱エネルギは、固定子鉄心211から挿通部材24に伝熱される。そして、挿通部材24は、熱エネルギを固定部材30に向かって軸方向に伝熱し、固定部材30に伝熱された熱エネルギは、固定部材30に設けられる放熱部材40から軸方向で外部に放熱される。これにより、モータ1の冷却性能を向上させることができる。
【0102】
[その他の実施形態]
上述した第1実施形態~第3実施形態の構成は適宜組み合わせられてもよい。
【0103】
例えば、第1実施形態のUV相間部材22A、VW相間部材22B、及び端部部材23の構成は、第2実施形態及び第3実施形態に適用されてもよい。これにより、モータ1の冷却性能を更に向上させることができる。
【0104】
[作用]
次に、第1実施形態~第3実施形態に係るモータ1の作用について説明する。
【0105】
本実施形態では、固定子鉄心211は、圧粉磁心で形成される。また、挿通部材24は、固定子鉄心211の挿通孔211Dの内面(壁面の一例)と対向するように配置され、軸方向に伝熱可能に構成される。また、放熱部材40は、挿通部材24から軸方向に伝熱可能に構成される。また、固定部材30は、固定子鉄心211及び挿通部材24を固定する。また、固定子鉄心211と挿通部材24との間で生じる応力は、固定子鉄心211と固定部材30との間で生じる応力、及び挿通部材24と固定部材30との間で生じる応力よりも小さい。そして、挿通部材24と固定子鉄心211とは伝熱可能に構成されている。
【0106】
これにより、例えば、すきまばめ等によって、固定子鉄心211と挿通部材24との間に隙間が生じ、固定子鉄心211と挿通部材24との間に生じる応力が相対的に小さい場合であっても、固定子鉄心211から挿通部材24に熱を逃がすことができる。そのため、圧粉磁心で形成される固定子鉄心211の熱は、挿通部材24を介して放熱部材40から放熱される。よって、圧粉磁心で形成される固定子鉄心211を含むモータ1の冷却性能を向上させることができる。
【0107】
特に、アウタロータ型のモータ1の場合、巻線212を含む固定子20がモータ1の径方向で相対的に内側に配置されるため、モータ1の内部に熱がこもりやすい。そのため、本実施形態の構成は、アウタロータ型のモータ1により好適である。
【0108】
尚、挿通部材24は、軸方向において、固定子鉄心211の挿通孔211Dの内面の少なくとも一部に対向するように配置されてもよい。また、挿通部材24に代えて、或いは、加えて、軸方向に伝熱可能な他の部材(軸方向伝熱部材)が設けられてもよい。例えば、他の軸方向伝熱部材は、モータ1の回転軸心AX付近とは異なる任意の位置で、固定子ユニット21A~21C、UV相間部材22A、VW相間部材22B、及び端部部材23に設けられる挿通孔に軸方向で挿通され、固定部材30に固定されてもよい。
【0109】
また、本実施形態(第1実施形態及び第2実施形態)では、挿通部材24と固定子鉄心211との間に伝熱可能な物体(例えば、第1実施形態のUV相間部材22A、VW相間部材22B、端部部材23や第2実施形態の物体28等)が設けられてよい。
【0110】
これにより、モータ1は、固定子鉄心211と挿通部材24との間の物体を通じて、具体的に、固定子鉄心211から挿通部材24に熱エネルギを伝熱させることができる。
【0111】
また、本実施形態(第1実施形態)では、UV相間部材22A、VW相間部材22B、及び端部部材23は、それぞれ、軸方向における固定子鉄心211の少なくとも一方の端面に当接して固定子鉄心211からの熱を軸方向に伝熱可能に配置される。そして、UV相間部材22A、VW相間部材22B、及び端部部材23は、それぞれ、固定子鉄心211からの熱を挿通部材24に向けて伝熱してよい。
【0112】
これにより、モータ1は、固定子鉄心211の端面に当接するUV相間部材22A、VW相間部材22B、及び端部部材23を通じて、固定子鉄心211から挿通部材24に熱エネルギを伝熱させることができる。
【0113】
尚、UV相間部材22A、VW相間部材22B、及び端部部材23のうちの一部は、挿通部材24に向けて伝熱しない構成であってもよい。この場合、UV相間部材22A、VW相間部材22B、及び端部部材23のうちの一部は、例えば、挿通部材24との間ですきまばめのはめ合い関係であってもよいし、固定子鉄心211と当接しない構成であってもよい。
【0114】
また、本実施形態(第1実施形態)では、UV相間部材22A、VW相間部材22B、及び端部部材23は、それぞれ、非磁性体で形成されてよい。
【0115】
これにより、UV相間部材22A、VW相間部材22B、及び端部部材23は、挿通部材24に固定子鉄心211の熱エネルギを伝熱する機能と固定子鉄心211からの磁束漏れを抑制する機能とを兼ねることができる。そのため、それぞれの機能に対応する専用の部材を設ける必要がなく、モータ1の大型化やコスト上昇を抑制することができる。
【0116】
尚、UV相間部材22A、VW相間部材22B、及び端部部材23のうちの一部は、非磁性体でなくてもよい。
【0117】
また、本実施形態(第2実施形態)では、樹脂、接着剤、又はグリスは、固定子鉄心211と挿通部材24とが互いに対向し合っている間の空間に設けられてよい。
【0118】
これにより、モータ1は、樹脂、接着剤、或いはグリスを通じて、固定子鉄心211の熱エネルギを挿通部材24に伝熱させることができる。
【0119】
また、本実施形態(第2実施形態)では、樹脂、接着剤、又はグリスには、熱伝導性フィラーが含まれてもよい。
【0120】
これにより、モータ1は、樹脂、接着剤、或いはグリスを通じて、固定子鉄心211の熱エネルギをより効率的に挿通部材24に伝熱させることができる。そのため、モータ1の冷却性能を更に向上させることができる。
【0121】
また、本実施形態(第3実施形態)では、挿通部材24は、固定子鉄心211より相対的に大きく変形した状態で固定子鉄心211と当接することで伝熱可能に構成されてもよい。
【0122】
これにより、モータ1は、挿通部材24と固定子鉄心211との間のはめ合い関係がしまりばめであっても、挿通部材24の方が相対的に大きく変形した状態で、挿通部材24と固定子鉄心211とが当接する状態を実現できる。そのため、モータ1は、圧粉磁心が挿通部材24との間で作用する引張応力で破壊されてしまう事態を抑制しつつ、固定子鉄心211の熱エネルギを挿通部材24に伝熱させることができる。
【0123】
また、本実施形態(第1実施形態~第3実施形態)において、複数相(2相以上)の電機子電流で駆動されてもよい。
【0124】
これにより、複数相の電機子電流が流れ、発熱量が相対的に高いモータ1であっても、モータ1の冷却性能を適宜確保し、モータ1の性能低下等を抑制することができる。
【0125】
[変形・変更]
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【0126】
例えば、上述の実施形態の固定子鉄心211と軸方向伝熱部材(例えば、挿通部材24)との間の伝熱可能な構成は、圧粉磁心で形成される固定子鉄心を含むクローポールモータ以外の形式のモータ(例えば、ラジアルモータ)に適用されてもよい。
【0127】
また、上述の実施形態及び変形例の固定子鉄心と軸方向伝熱部材との間の伝熱可能な構成は、圧粉磁心で形成される固定子鉄心を含むインナロータ型のモータに適用されてもよい。この場合、軸方向伝熱部材は、例えば、固定子鉄心に対して径方向の外側に配置されるモータの筐体であってよい。
【0128】
また、上述の実施形態及び変形例の固定子鉄心と軸方向伝熱部材との間の伝熱可能な構成は、圧粉磁心で形成される回転子鉄心と軸方向伝熱部材との間に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0129】
1 クローポールモータ(モータ)
10 回転子
11,11A~11C 回転子鉄心
12 永久磁石
13 回転軸部材
14 連結部材
20 固定子
21,21A~21C 固定子ユニット
22 相間部材
22A UV相間部材(物体)
22B VW相間部材(物体)
23 端部部材(物体)
24 挿通部材(軸方向伝熱部材)
28 物体
30 固定部材
40 放熱部材
211 固定子鉄心(鉄心)
211A ヨーク部
211B 爪磁極
211C ヨーク部
211D 挿通孔
212 巻線
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8A
図8B