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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】樹脂組成物及び乗物用内装部品
(51)【国際特許分類】
   C08L 53/00 20060101AFI20240215BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20240215BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240215BHJP
   C08K 3/30 20060101ALI20240215BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20240215BHJP
   C08K 7/04 20060101ALI20240215BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
C08L53/00
B60R13/02 B
B60R13/02 C
B60R13/02 Z
C08K3/013
C08K3/30
C08K5/098
C08K7/04
C08L23/08
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019192601
(22)【出願日】2019-10-23
(65)【公開番号】P2020079389
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-10-14
(31)【優先権主張番号】P 2018213216
(32)【優先日】2018-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】今井 敏信
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-194337(JP,A)
【文献】特開2013-112718(JP,A)
【文献】特開2004-359877(JP,A)
【文献】特開平5-98122(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105367907(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 53/00
B60R 13/02
C08K 3/013
C08K 3/30
C08K 5/098
C08K 7/04
C08L 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレンと、
エラストマーと、
充填剤と、
脂肪酸金属塩と、を含有し、
前記ポリプロピレン、前記エラストマー、前記充填剤及び前記脂肪酸金属塩の合計を100重量%としたときに、
前記ポリプロピレンを60~80重量%、
前記エラストマーを5~25重量%、
前記充填剤を5~20重量%、
前記脂肪酸金属塩を0.1~1重量%含有し、
前記ポリプロピレンが結晶性エチレン-プロピレン共重合体であり、
前記エラストマーがエチレン-ブテン共重合体であり、
前記充填剤が硫酸マグネシウムウィスカであり、
比重が1.00以下であり、
ASTM D2794に準拠して測定される-30℃におけるデュポン衝撃強度が7J以上であり、
ASTM D790に準拠して測定される曲げ弾性率が2.0GPa以上及び曲げ強度が25MPa以上であることを特徴とする樹脂組成物(但し、タルクを含むものを除く)
【請求項2】
ASTM D638準拠して測定される引張強度が20MPa以上であり及び引張伸びが25%以上であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
ASTM D1238準拠して測定されるメルトフローレート(230℃、荷重2.16kg)が30g/10分以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記脂肪酸金属塩が炭素数10~20の飽和脂肪酸の金属塩であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記脂肪酸金属塩がステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含むことを特徴とする乗物用内装部品。
【請求項7】
乗物用シート、インスツルメントパネル、パッケージトレイ、リアトレイ、ピラーガーニッシュ、ドアトリムまたはコンソールボックスであることを特徴とする請求項に記載の乗物用内装部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に係り、特に自動車の内装材などの乗物用内装部品として好適に用いられる樹脂組成物及び該樹脂組成物を用いた乗物用内装部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のバンパーやインストルメントパネルなどの自動車の内外装材には、ポリプロピレンを主成分として含有する樹脂組成物が用いられている(例えば、下記の特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、エチレン-プロピレンブロック共重合体30~70重量%、エチレン-α-オレフィン共重合体ゴム10~30重量%、スチレン系重合体ゴム1~10重量%、ポリプロピレン-シリコーンゴムマスターバッチ2~8重量%、マグネシウム化合物1~7重量%および無機充填剤10~40重量%を含有する樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-127047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動車の内外装材では、機械的強度の向上を図りつつ、可能な限り軽量化した製品が望まれている。しかし、特許文献1に記載の樹脂組成物では、必要となる成分数が多く、薄肉化・軽量化した際に十分な機械的強度を得ることができず、さらなる物性の向上が望まれていた。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、弾性率や衝撃強度など機械的強度に優れ、樹脂製品の軽量化を図ることのできる樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、ポリプロピレン、エラストマー及び充填剤を、脂肪酸金属塩と組み合わせることで、樹脂組成物の弾性率や衝撃強度など機械的強度が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
前記課題は、本発明の樹脂組成物によれば、ポリプロピレンと、エラストマーと、充填剤と、脂肪酸金属塩と、を含有し、前記ポリプロピレン、前記エラストマー、前記充填剤及び前記脂肪酸金属塩の合計を100重量%としたときに、前記ポリプロピレンを60~80重量%、前記エラストマーを5~25重量%、前記充填剤を5~20重量%、前記脂肪酸金属塩を0.1~1重量%含有し、前記ポリプロピレンが結晶性エチレン-プロピレン共重合体であり、前記エラストマーがエチレン-ブテン共重合体であり、前記充填剤が硫酸マグネシウムウィスカであり、比重が1.00以下であり、ASTM D2794に準拠して測定される-30℃におけるデュポン衝撃強度が7J以上であり、ASTM D790に準拠して測定される曲げ弾性率が2.0GPa以上及び曲げ強度が25MPa以上であること(但し、タルクを含むものを除く)により解決される。
【0009】
上記のように構成された本発明の樹脂組成物は、弾性率や衝撃強度など機械的強度が優れており、樹脂製品の軽量化を図ることが可能となる。
また、上記の構成では、樹脂組成物が、弾性率や衝撃強度など機械的強度が優れたものとなり、樹脂製品の軽量化を図ることが可能となる。
また、上記の構成では、樹脂組成物の弾性率や衝撃強度など機械的強度が優れたものとなる。
また、上記の構成では、樹脂組成物の弾性率や衝撃強度など機械的強度が優れたものとなる。
【0011】
また、上記の構成において、ASTM D638準拠して測定される引張強度が20MPa以上であり及び引張伸びが25%以上であるとよい。
上記の構成では、樹脂組成物を樹脂製品とした場合に、衝撃が加わって変形する際に、裂けや割れ等が生ずることが抑制される。
【0012】
また、上記の構成において、ASTM D1238準拠して測定されるメルトフローレート(230℃、荷重2.16kg)が30g/10分以上であるとよい。
上記の構成では、樹脂組成物の射出成形における成形性が良好なものとなる。
【0015】
また、前記脂肪酸金属塩が炭素数10~20の飽和脂肪酸の金属塩であるとよい。
上記の構成では、樹脂組成物の弾性率や衝撃強度など機械的強度が優れたものとなる。
【0016】
また、前記脂肪酸金属塩がステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも1種以上であるとよい。
上記の構成では、樹脂組成物の弾性率や衝撃強度など機械的強度が優れたものとなる。
【0017】
また、前記課題は、上記の樹脂組成物を含むことを特徴とする乗物用内装部品により解決される。
上記のように構成された本発明の乗物用内装部品は、弾性率や衝撃強度など機械的強度に優れた樹脂組成物を含むことで、薄肉化及び軽量化を図ることが可能となる。
【0018】
また、前記乗物用内装部品は、乗物用シート、インスツルメントパネル、パッケージトレイ、リアトレイ、ピラーガーニッシュ、ドアトリムまたはコンソールボックスであるとよい。
上記の構成では、優れた機械的強度を有しつつ、薄肉化及び軽量化された各種乗物用内装部品を提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の樹脂組成物によれば、弾性率や衝撃強度など機械的強度が優れており、樹脂製品の軽量化を図ることが可能となる。
また、本発明の樹脂組成物によれば、弾性率や衝撃強度など機械的強度が優れたものとなり、樹脂製品の軽量化を図ることが可能となる。
また、本発明の樹脂組成物によれば、樹脂組成物を樹脂製品とした場合に、衝撃が加わって変形する際に、裂けや割れ等が生ずることが抑制される。
また、本発明の樹脂組成物によれば、樹脂組成物の射出成形における成形性が良好なものとなる。
また、本発明の樹脂組成物によれば、樹脂組成物の弾性率や衝撃強度など機械的強度が優れたものとなる。
また、本発明の樹脂組成物によれば、弾性率や衝撃強度など機械的強度に優れた樹脂組成物を含むことで、薄肉化及び軽量化を図ることが可能となる。
また、本発明の樹脂組成物によれば、優れた機械的強度を有しつつ、薄肉化及び軽量化された各種乗物用内装部品を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<樹脂組成物>
以下、本発明の実施形態(本実施形態)に係る樹脂組成物について説明をする。本実施形態に係る樹脂組成物は、ポリプロピレンと、エラストマーと、充填剤と、脂肪酸金属塩と、を含有する。以下に、各成分について詳述する。
【0021】
(ポリプロピレン)
本実施形態において、ポリプロピレンとは、プロピレン単位を50モル%超含有するポリマーを言う。ポリプロピレンとしては、例えば、プロピレンのホモポリマー、プロピレンとα-オレフィンとのブロック共重合体、プロピレンとα-オレフィンとのランダム共重合体、およびこれらの混合物などが例示される。
【0022】
α-オレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテンなどが例示される。これらのα-オレフィンは、単独使用または2種以上併用することが可能である。
【0023】
プロピレンとα-オレフィンのブロック共重合体としては、例えば、プロピレンの単独重合ユニットとエチレン-プロピレンの共重合ユニットとからなるエチレン-プロピレンブロック共重合体が例示される。プロピレンとα-オレフィンのランダム共重合体としては、例えば、エチレン-プロピレンのランダム共重合体が例示される。また、これらの共重合体は、少量のエチレン単独重合ユニットを含んでいてもよい。
【0024】
本実施形態の樹脂組成物には、ポリプロピレンが60~80重量%含有され、好ましくは70~80重量%含有されている。ポリプロピレンの含有量が、60重量%未満である場合、剛性が上がりすぎてしまうことがあり、80重量%を超えると、衝撃強度が低下することがある。
【0025】
(エラストマー)
本実施形態において、エラストマーとは、ゴム成分を含有するエラストマーである。例えば、エチレン-α-オレフィンランダム共重合体ゴム及び/又はビニル芳香族化合物含有ゴムからなるエラストマー等が例示される。
【0026】
本実施形態で用いられるエチレン-α-オレフィンランダム共重合体ゴムとは、エチレンとα-オレフィンからなるランダム共重合体ゴムである。α-オレフィンは炭素原子数3以上のα-オレフィンであり、例えば、プロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、ヘキセン-1、ヘプテン-1、オクテン-1、デセン等が挙げられ、好ましくは、プロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1である。
【0027】
エチレン-α-オレフィンランダム共重合体ゴムとしては、例えば、エチレン-プロピレンランダム共重合体ゴム、エチレン-ブテン-1ランダム共重合体ゴム、エチレン-ヘキセン-1ランダム共重合体ゴム、エチレン-オクテン-1ランダム共重合体ゴム等が例示され、好ましくは、エチレン-オクテン-1ランダム共重合体ゴム、エチレン-ブテン-1ランダム共重合体ゴム又はエチレン-プロピレンランダム共重合体ゴムである。また、2種類以上のエチレン-α-オレフィンランダム共重合体ゴムを併用することも可能である。
【0028】
本実施形態で用いられるビニル芳香族化合物含有ゴムとしては、例えば、ビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックからなるブロック共重合体等が例示される。具体的には、ビニル芳香族化合物含有ゴムとして、スチレン-エチレン-ブテン-スチレン系ゴム(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン系ゴム(SEPS)、スチレン-ブタジエン系ゴム(SBR)、スチレン-ブタジエン-スチレン系ゴム(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレン系ゴム(SIS)等のブロック共重合体又はこれらのゴム成分を水添したブロック共重合体等が例示される。
【0029】
本実施形態の樹脂組成物には、エラストマーが5~25重量%含有され、好ましくは10~20重量%含有されている。エラストマーの含有量が5重量%未満の場合、樹脂組成物の衝撃強度が低下することがあり、25重量%を超えた場合、剛性が低下することがある。
【0030】
(充填剤)
本実施形態において、充填剤として繊維状の充填剤を用いることが好ましく、繊維状の硫酸マグネシウムである硫酸マグネシウムウィスカを好適に用いることが可能である。硫酸マグネシウムウィスカの平均繊維径は、0.3~0.8μmであり、好ましくは0.4~0.7μmである。また、硫酸マグネシウムウィスカの平均繊維長は、10~20μmであり、好ましくは14~20μmである。なお、平均繊維径および平均繊維長は、顕微鏡観察などの公知の方法によって求めることが可能である。硫酸マグネシウムウィスカの平均繊維径及び平均繊維長が上記の範囲内であると、樹脂組成物の機械的強度を向上させることが可能となる。
【0031】
本実施形態の樹脂組成物には、繊維状の充填剤が5~20重量%含有され、好ましくは10~15重量%含有されている。繊維状の充填剤の含有量が、5重量%未満である場合、剛性が低下することがあり、20重量%を超えた場合、衝撃強度が不充分なことがあり、また、外観も悪化することがある。
【0032】
(脂肪酸金属塩)
本実施形態において、脂肪酸とは、炭素数10~20の脂肪酸である。本実施形態で用いられる脂肪酸金属塩としては、飽和脂肪酸及び/又は不飽和脂肪酸の金属塩を用いることが可能であり、好適には、炭素数12以上の長鎖飽和脂肪酸の金属塩を用いることが可能である。
【0033】
本実施形態において、脂肪酸金属塩として、直鎖の脂肪酸の金属塩を用いることが好ましく、具体的には、ラウリン酸(12:0)、ミリスチン酸(14:0)、パルミチン酸(16:0)、マルガリン酸(17:0)、ステアリン酸(18:0)、アラキジン酸(20:0)、ベヘン酸(22:0)、パルミトオレイン酸(16:1)、オレイン酸(18:1)、リノール酸(18:2)、リノレン酸(18:3)などの金属塩が挙げられ、ステアリン酸(18:0)の金属塩を用いることが好ましい。
【0034】
脂肪酸金属塩の金属としては、例えばマグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カルシウム(Ca)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、バリウム(Ba)、鉛(Pb)、マンガン(Mn)、錫(Sn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)等が挙げられ、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カルシウム(Ca)を用いることが好ましい。
【0035】
本実施形態において、脂肪酸金属塩として、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも1種以上を用いると好適である。
【0036】
本実施形態の樹脂組成物には、脂肪酸金属塩が0.1~1重量%含有され、好ましくは0.2~0.5重量%含有されている。ポリプロピレン、エラストマー及び充填剤を、脂肪酸金属塩と組み合わせることで、脂肪酸金属塩を用いない場合と比較して樹脂組成物の弾性率や衝撃強度など機械的強度が向上するため、樹脂製品の薄肉化・軽量化を図ることが可能となる。
【0037】
(その他成分)
本実施形態に係る樹脂組成物には、上記した成分以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で必要により熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、可塑剤、離型剤、滑剤からなる群から選ばれる1種又は2種以上のその他の添加剤が含有されていてもよい。
【0038】
樹脂組成物中のこれら添加物の含有量は、樹脂組成物の力学的特性に影響を与えない範囲である必要があり、ポリプロピレン、エラストマー、充填剤及び脂肪酸金属塩と、から構成される混合物の総重量の5重量%以下、好ましくは2重量%以下であるとよい。
【0039】
(混合方法)
本実施形態の樹脂組成物は、ポリプロピレン、エラストマー、充填剤、脂肪酸金属塩および必要によりその他添加剤を混合することにより得ることが可能である。各成分の混合方法としては、上記の各成分を均一に混合することができれば特に制限されず、例えば、溶融混練など公知の方法が挙げられる。溶融混練するための装置としては、例えば、一軸押出機、二軸押出機、混練ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなど公知の混練装置が挙げられる。
【0040】
<樹脂組成物の用途>
本発明の樹脂組成物は、公知の樹脂の成形方法、例えば、射出成形、押出成形、発泡成形、圧縮成形、ブロー成形などにより成形して、乗物用の内装部品や外装部品、建築資材、日用品などの樹脂製品として好適に用いることが可能である。
【0041】
(乗物用内装部品)
本発明の樹脂組成物は、自動車のバンパー、インストルメントパネル、ドアトリム、ピラーなどの自動車内外装材(乗物用内装部品)として好適に用いることができる。より詳細には、本発明の樹脂組成物は、乗物用シートのフレーム部材や受圧部材などのシート構成部品、インスツルメントパネル、パッケージトレイ、リアトレイ、ピラーガーニッシュ、ドアトリム、コンソールボックスなどに好適に用いることが可能である。
【0042】
<樹脂組成物の物性>
本実施形態に係る樹脂組成物は、以下の実施例に示すとおり、弾性率や衝撃強度など機械的強度に優れており、密度を小さくすることも可能である。したがって、本実施形態に係る樹脂組成物を用いることで、乗物用内装部品などの各種樹脂製品の薄肉化・軽量化を図ることが可能となる。
【0043】
(比重)
樹脂組成物のASTM D792に準拠して23℃で測定される比重は、0.8~1.2、好ましくは0.9~1.1、より好ましくは0.95~1.05、更に好ましくは0.98~1.02である。このように本実施形態の樹脂組成物は、密度が低く、乗物用内装部品などの各種樹脂製品の軽量化を図ることが可能となる。
【0044】
(流動性)
樹脂組成物のASTM D1238に準拠して230℃、荷重2.16kgの条件で測定されるメルトフローレート(MFR)は、10~100g/10分、好ましくは20~60g/10分、より好ましくは25~50g/10分、更に好ましくは30~40g/10分である。このように本実施形態の樹脂組成物は、高い流動性を有しており、射出成形など製品加工の際の成形性が良好なものとなる。
【0045】
(デュポン衝撃強度)
樹脂組成物のASTM D2794に準拠して-30℃で測定されるデュポン衝撃強度は、5J以上、好ましくは6J以上、より好ましくは7J以上、更に好ましくは8J以上、特に好ましくは9J以上である。このように本実施形態の樹脂組成物は、耐寒衝撃性に優れるという特徴を有している。
【0046】
(曲げ弾性率、曲げ強度)
樹脂組成物のASTM D790に準拠して測定温度23℃の条件で測定される曲げ弾性率は、2.0GPa以上、好ましくは2.2GPa以上、より好ましくは2.5GPa以上、特に好ましくは2.6GPa以上であり、曲げ強度は、25MPa以上、好ましくは26MPa以上、好ましくは27MPa以上、より好ましくは28MPa以上である。このように本実施形態の樹脂組成物は、高い剛性を有している。
【0047】
(引張弾性率、引張伸び)
樹脂組成物のASTM D638に準拠して測定される引張強度は、15MPa以上、好ましくは17MPa以上、より好ましくは19MPa以上、更に好ましくは20MPa以上であり、引張伸びは、20%以上、好ましくは25%以上、より好ましくは27%以上、更に好ましくは28%以上である。
【0048】
(Izod衝撃強度)
樹脂組成物のASTM D256に準拠して温度23℃で測定されるIzod衝撃強度(アイゾット衝撃強度)は、20J/m以上、好ましくは23J/m以上、より好ましくは25J/m以上である。このように本実施形態の樹脂組成物は、高い耐衝撃性を有している。
【0049】
(熱変形温度)
樹脂組成物のASTM D648に準拠して測定される熱変形温度は、荷重0.46MPaにおいて90℃以上、好ましくは95℃以上、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは105℃以上であり、荷重1.82MPaにおいて、50℃以上、好ましくは55℃以上、より好ましくは60℃以上である。一般的に、樹脂材料は耐衝撃性を向上させると耐熱性が低下する現象が見られるが、本実施形態の樹脂組成物は高い耐衝撃性を有しつつ、耐熱性も高いという特徴を有している。
【実施例
【0050】
以下、具体的実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
実施例及び比較例において、以下の原料を用いた。
ポリプロピレンとして、ブロックタイプの結晶性エチレン-プロピレン共重合体(サンアロマー社製、PMA80X)を用いた。
【0052】
エラストマーとして、エチレン-α-オレフィン共重合樹脂であるエチレン-ブテン共重合体(三井化学社製、タフマーDF7350、結晶化度:10%、MFR:35g/10分(2.16kg、190℃)、Mw:100000)又はビニル芳香族化合物含有ゴムであるスチレン-エチレン-ブテン-スチレン系ゴム(SEBS)(旭化成株式会社製、タフテックH1062)を用いた。
【0053】
充填剤として、繊維状塩基性硫酸マグネシウム(宇部マテリアルズ株式会社製、モスハイジA-1、平均繊維長15μm、平均繊維径0.5μm)を用いた。
【0054】
脂肪酸金属塩として、炭素数18の飽和脂肪酸であるステアリン酸マグネシウム又はステアリン酸カルシウムを用いた。
【0055】
<樹脂組成物の調製>
(実施例1~実施例3)
上記の原料を、以下の表1に示す組成で、200℃で溶融混練した。表1に示す例では、エラストマーとしてエチレン-ブテン共重合体(タフマーDF7350)を用い、脂肪酸金属塩としてステアリン酸マグネシウムを用いた。
【0056】
(比較例1~比較例4)
比較例1では、ポリプロピレンのみを用いた。比較例2では充填剤を用いず、比較例3ではエラストマーを用いず、比較例4では脂肪酸を用いず樹脂組成物を調製した。
【0057】
【表1】
【0058】
(実施例5~実施例9)
上記の原料を、以下の表2に示す組成で、200℃で溶融混練した。実施例5~実施例7では脂肪酸金属塩としてステアリン酸カルシウムを用いた。また、実施例8及び実施例9ではエラストマーとしてSEBS(タフテックH1062)を用いた。
【0059】
【表2】
【0060】
<樹脂組成物の物性の測定>
以下の手順に従い、樹脂組成物の物性の測定を行った。各種物性測定の結果を上記の表1及び表2に示す。
(比重)
樹脂組成物の比重は、ASTM D792に準拠して23℃で測定した。
【0061】
(流動性)
樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)は、ASTM D1238に準拠し、230℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
【0062】
(デュポン衝撃強度)
樹脂組成物の成形品(寸法2.4mm×100mm×100mm)を用い、ASTM D2794に準拠し、デュポン式衝撃強度を-30℃で測定した。
【0063】
(曲げ弾性率、曲げ強度)
樹脂組成物のシート状試験片(幅13mm×厚さ6.4mm×長さ130mm)を作製し、ASTM D790に準拠し、スパン間100mm、曲げ速度30mm/分、測定温度23℃の条件で曲げ弾性率及び曲げ強度を測定した。
【0064】
(引張弾性率、引張伸び)
樹脂組成物の引張強度及び引張伸びは、ASTM D638に準拠して測定した。
【0065】
(Izod衝撃強度)
樹脂組成物のシート状試験片(幅13mm×厚さ3mm×長さ62mm、ノッチ角22.5°、ノッチR0.25R)を作製し、ASTM D256に準拠し、温度23℃でIzod衝撃強度(アイゾット衝撃強度)を測定した。
【0066】
(熱変形温度)
樹脂組成物を用いて射出成形を行い、得られた射出成形品(厚み3.2mm)について、ASTM D648に準拠した条件で熱変形温度を測定した。なお、荷重は0.46MPa及び1.82MPaの条件下で測定した。
【0067】
(実施例1~4の結果)
表1に示すように、実施例1~4の樹脂組成物は、比重が1.00以下と軽量であり、-30℃におけるデュポン衝撃強度が7J以上と耐衝撃性に優れていた。さらに、実施例1~4の樹脂組成物は、曲げ弾性率が2.3GPa以上と良好な弾性率を示すとともに、曲げ強度が28.0MPa以上であり、曲げにも強いものであった。なお、実施例1~3の樹脂組成物は、Izod衝撃強度の測定で延性破壊を示した。
【0068】
(比較例1~4の結果)
表1に示すように、ポリプロピレンのみの比較例1では、曲げ弾性率が1.4GPaと低かった。充填剤を用いない比較例2では、曲げ強度が26.1MPaと低かった。また、エラストマーを用いない比較例3では、デュポン衝撃強度が2Jと低く、引張伸びも6%と低くなっていた。そして、脂肪酸金属塩を添加しない比較例4では、デュポン衝撃強度が3Jと低くなっていた。また、比較例1~4の樹脂組成物は、Izod衝撃強度が7.0~18.4J/mと実施例1~3と比べて低くなっていた。
【0069】
(実施例5~9の結果)
表2に示すように、実施例5~9の樹脂組成物は、比重が1.00以下と軽量であり、-30℃におけるデュポン衝撃強度が7J以上と耐衝撃性に優れていた。さらに、実施例5~9の樹脂組成物は、曲げ弾性率が2.5GPa以上と良好な弾性率を示すとともに、曲げ強度が29MPa以上であり、曲げにも強いものであった。
【0070】
以上の実施例及び比較例から、ポリプロピレン、エラストマー及び充填剤を、脂肪酸金属塩と組み合わせることで、樹脂組成物の弾性率や衝撃強度など機械的強度が向上することが示された。本実施形態に係る樹脂組成物は、機械的強度に優れており、密度を小さくすることも可能であるため、乗物用内装部品などの各種樹脂製品の薄肉化・軽量化を図ることが可能となる。