(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】無線機およびその受信方法
(51)【国際特許分類】
H04B 1/16 20060101AFI20240215BHJP
H04W 52/02 20090101ALI20240215BHJP
H04W 52/44 20090101ALI20240215BHJP
【FI】
H04B1/16 Z
H04W52/02 110
H04W52/44
(21)【出願番号】P 2020043724
(22)【出願日】2020-03-13
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000100746
【氏名又は名称】アイコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(72)【発明者】
【氏名】大迫 大輔
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-252608(JP,A)
【文献】特開平09-331577(JP,A)
【文献】特開2020-005103(JP,A)
【文献】特開2013-005053(JP,A)
【文献】特開2010-183175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/16
H04W 52/02
H04W 52/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号フォーマットで少なくとも最初のフレームにプリアンブルを有し
、前記プリアンブル以降に同期ワードを有するデジタル方式での通信を行う無線機において、
受信手段と、
前記受信手段の後段に設けられる復調部と、
前記受信手段の後段に設けられる受信電界強度検出部と、
前記受信手段を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記プリアンブルの期間より短い周期で、
前記受信手段
に間欠受信させ、
前記間欠受信中に前記受信電界強度検出部が検出した受信電界強度が、予め定める閾値レベルを超えた場合には、前記受信手段を連続受信に切換えさせ、その状態で所定の時間、前記復調部で復調されたデータから前記同期ワードが検出できない場合には、前記受信手段を前記間欠受信に復帰させることを特徴とする無線機。
【請求項2】
前記復調部および前記受信電界強度検出部は、デジタル変復調を行うデジタル・シグナル・プロセッサから成ることを特徴とする請求項1記載の無線機。
【請求項3】
前記受信手段は、少なくともロー・ノイズ・アンプおよびフェイズ・ロック・ループを備え、前記間欠受信においては、前記ロー・ノイズ・アンプおよびフェイズ・ロック・ループを間欠的に動作させることを特徴とする請求項1~2の何れか1項に記載のデジタル方式の無線機。
【請求項4】
信号フォーマットで少なくとも最初のフレームにプリアンブルを有するデジタル方式での通信を行う無線受信方法において、
前記プリアンブルの期間より短い周期で、受信手段に間欠受信させ、
受信電界強度が予め定める閾値レベルを超えた場合に、前記受信手段を連続受信に切換え、その状態で同期ワードが検出できない場合には、前記受信手段を前記間欠受信に復帰させることを特徴とする無線受信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線機の待ち受け時のパワーセーブのための受信方法に関し、前記無線機としては、信号フォーマットで少なくとも最初のフレームにプリアンブルを有するデジタル方式の無線機に関する。
【背景技術】
【0002】
無線機、特に携帯用無線機のようなバッテリで駆動される無線機では、バッテリを長持ちさせるために、待受け時に、自機宛の信号が送信されていないかを、間欠受信によって検知するパワーセーブモードに設定可能であることが一般的である。そして、所定の間欠周期で、駆動(ON)期間の割合を短くし、休止(OFF)期間の割合を長くすることで、前記パワーセーブの効果は大きくなる。しかしながら、休止(OFF)期間の割合が長くなる程、着呼率、つまり応答性が悪くなるので、パワーセーブを行うか、パワーセーブを行わずに連続受信するかは、モード設定で選択可能である。
【0003】
特許文献1には、携帯電話などの基地局との移動体通信を行う受信装置において、デジタル方式で、自機のタイミング(スロット)だけ、着呼の有無を見に行く間欠受信を行うにあたって、電池残量が少ない時、時計により通話の可能性の低い時間帯である時、切換スイッチでユーザ設定されている時、或いは受信電界強度レベルが低くて呼出される可能性が少ない時は、その見に行く割合を下げる、つまり読み飛ばしをすることで、前記着呼率の実質的な低下を抑えて、パワーセーブの効果を高めることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、同じ移動体通信でも、特許文献1のTDMA方式のような、通信を制御および中継する基地局が介在せず、無線機同士が直接通信を行う前記携帯用無線機などの場合には、規定のタイミング(スロット)も無く、無線機は着信を待ち続ける必要がある。ところで、アナログの無線機の場合、間欠受信して、通話の途中から受信した場合、多少、頭切れしたとしても、無線機が駆動(ON)したところから通話を受信することが可能であるが、たとえば前記の無線機同士が直接通信を行う携帯用無線機において、信号フォーマットで少なくとも最初のフレームにプリアンブルを有し、任意のタイミングで発報するデジタル方式の無線機の場合、データを途中からしか受信できず、同期が取れなかったりすると、最悪の場合、着信自体ができない場合がある。前記プリアンブルは、受信機にフレーム送信の開始を認識させ、同期を取らせるもので、以降、同期ワード、同期バースト、送信すべき音声や他のデータと続く。そのため、ユーザが、着呼率の低下を覚悟の上で、パワーセーブモードに設定している状態を除き、つまり通常モードに設定している状態では、前記任意のタイミングでのプリアンブルの送信に備えるために、従来は、実質的に、連続受信するしか無いのが実情であった。
【0006】
本発明の目的は、信号フォーマットで少なくとも最初のフレームにプリアンブルを有するデジタル方式での通信を行う無線機において、通常モードで、着呼率を損なうことなく、パワーセーブを行うことができる無線機およびその受信方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の無線機は、信号フォーマットで少なくとも最初のフレームにプリアンブルを有し、前記プリアンブル以降に同期ワードを有するデジタル方式での通信を行う無線機において、受信手段と、前記受信手段の後段に設けられる復調部と、前記受信手段の後段に設けられる受信電界強度検出部と、前記受信手段を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記プリアンブルの期間より短い周期で、前記受信手段を間欠受信させ、前記間欠受信中に前記受信電界強度検出部が検出した受信電界強度が、予め定める閾値レベルを超えた場合には、前記受信手段に連続受信に切換えさせ、その状態で所定の時間、前記復調部で復調されたデータから前記同期ワードが検出できない場合には、前記受信手段を前記間欠受信に復帰させることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の無線受信方法は、信号フォーマットで少なくとも最初のフレームにプリアンブルを有するデジタル方式での通信を行う無線受信方法において、前記プリアンブルの期間より短い周期で、受信手段に間欠受信させ、受信電界強度が予め定める閾値レベルを超えた場合に、前記受信手段を連続受信に切換え、その状態で同期ワードが検出できない場合には、前記受信手段を前記間欠受信に復帰させることを特徴とする。
【0009】
上記の構成によれば、デジタル変調された音声や他のデータを送受信するデジタル方式の無線機において、通信のタイミング(スロット)を規定したり、中継を行ったりする基地局を介さず、無線機同士が、任意のタイミングで、直接通信を行うために、前記デジタル方式の信号フォーマットで、少なくとも最初のフレームには、同期バーストに先立ち、情報を持たないプリアンブルが送出される場合(通常、複数フレームが連送される場合、2回目以降の同期バーストには付加されない)、受信手段は、そのプリアンブルの期間に起動し、続く同期バースト以降を受信できれば、頭欠け無く、前記デジタル変調された音声データや他のデータを復調可能である。
【0010】
そこで本発明では、受信手段に間欠受信させることで待ち受け時のパワーセーブを実現するにあたって、受信制御手段は、その間欠受信の周期を前記プリアンブルの期間より短く設定する。つまり、たとえば、前記プリアンブルの期間をN1、前記間欠受信における駆動(ON)期間をN2、休止(OFF)期間をN3とするとき、N2+N3<N1とする。
【0011】
したがって、受信手段は、直ぐに着信応答する必要のある通常モードにおいて、パワーセーブのために間欠受信しても、駆動(ON)している期間(N2)に、プリアンブルの一部を検出することができる。このプリアンブルの一部を検出すると、受信制御手段は、受信手段を速やかに連続受信に切換えることで、ほぼ間欠受信で休止(OFF)している期間(N3)分だけ、受信手段の消費電力を抑えることができる(N3/(N2+N3)だけ削減できる)。
【0012】
さらにまた、本発明の無線機では、前記受信制御手段は、受信電界強度が予め定める閾値レベルを超えた場合に、前記プリアンブルが検出されたと判定して、前記受信手段を連続受信に切換え、その状態で同期ワードが検出できない場合には、前記受信手段を前記間欠受信に復帰させることを特徴とする。
【0013】
上記の構成によれば、プリアンブルが検出されたと判定して受信手段を連続受信に切換えるにあたって、受信制御手段は、受信電界強度が予め定める閾値レベルを超えたか否かで、速やかに判定し、後続データの受信に備える。しかしながら、受信電界強度だけの判定では、自機宛で無い通信や、他の機器(周辺)のノイズなどを拾うと、前記受信電界強度は前記閾値レベルを超えてはいるが、受信すべき信号が無い状態でも受信動作を行ってしまう可能性があり、削減される消費電力が少なくなってしまう。そこで、前記の判定を暫定とし、プリアンブルに続く同期ワードが検出されるか否かで、受信手段に連続受信させ続けるか、或いは前記間欠受信に復帰させるかを判定する。
【0014】
したがって、着呼率(応答性)を確保しながら、不要なノイズに対する受信手段の動作を抑えることができる。
【0015】
また、本発明の無線機では、前記復調部および前記受信電界強度検出部は、デジタル変復調を行うデジタル・シグナル・プロセッサから成ることを特徴とする。
【0016】
上記の構成によれば、通常モードでは、無線機全体の動作を制御するCPU(中央情報処理装置)は、何らかの処理を行っている可能性があり、このCPUで前記間欠駆動の制御を行うと、他の処理の影響を受けて、間欠駆動を終了する(連続受信に切換える)タイミングに遅れを生じ、着呼率が低下してしまう可能性がある。そこで、デジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)を用いる。これは、該デジタル・シグナル・プロセッサは、送受信の信号が無ければ、デジタル信号処理(待ち受け時は復調処理)の量が少なく、またリアルタイム性を要求されることから制御遅れが無いので、着呼率が低下してしまうようなことが無いためである。さらにまた、デジタル・シグナル・プロセッサは、間欠駆動中に連続で動作させていても、消費電力も小さく、好適である。
【0017】
さらにまた、本発明の無線機では、前記受信手段は、少なくともロー・ノイズ・アンプおよびフェイズ・ロック・ループを備え、前記間欠受信においては、前記ロー・ノイズ・アンプおよびフェイズ・ロック・ループを間欠的に動作させることを特徴とする。
【0018】
上記の構成によれば、受信手段において、ロー・ノイズ・アンプ(LNA)は、常時一定(MAX)ゲインで受信信号を増幅し、フェイズ・ロック・ループ(PLL)は、局部発振信号を作成するために高周波発振する。
【0019】
したがって、共に消費電力が大きく、前記間欠駆動で休止させることで、パワーセーブに効果的である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の無線機およびその受信方法は、以上のように、無線機同士が任意のタイミングで直接通信を行うために、デジタルデータの信号フォーマットで、少なくとも最初のフレームには、同期バーストに先立ち、情報を持たないプリアンブルが送出されるデジタル方式での通信を行う無線機において、受信手段を間欠駆動させることで待ち受け時のパワーセーブを実現するにあたって、受信制御手段は、その間欠駆動の周期を前記プリアンブルの期間より短く設定する。
【0021】
それゆえ、直ぐに着信応答する必要のある通常モードにおいて、パワーセーブのために間欠駆動しても、駆動(ON)している期間に、プリアンブルの一部を検知し、速やかに連続受信に切換えることで、ほぼ間欠駆動で休止(OFF)している期間分の受信手段の消費電力を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施の一形態に係る無線機のブロック図である。
【
図2】前記無線機の通常モードでの待ち受け時の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図3】前記無線機同士の接続シーケンスの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の実施の一形態の無線機1のブロック図である。この無線機1は、たとえばARIB STD-T98準拠のDCR(デジタル簡易無線)の無線機である。無線機1は、双方向での通話(送受信)が可能であるが、本発明は、受信に関する部分に特徴を有するものであり、
図1では、送信に関する部分および低周波の音声信号に関する部分、ならびに無線機全体の動作を制御するCPUなどは、省略している。
【0024】
この無線機1は、ダブルスーパーヘテロダイン方式の受信機で、アンテナ2で受信された高周波信号(RF)は、ロー・ノイズ・アンプ(以下、LNAと言う)3において、通電状態においては常時、一定(MAX)ゲインで増幅され、混合器4に入力される。混合器4には、フェイズ・ロック・ループ(以下、PLLと言う)IC5からの第1の局部発振信号(1stLO)が入力されており、得られた第1の中間周波信号(1stIF)が、さらに受信IC9に入力され、発振器10からの第2の局部発振信号(2ndLO)と混合される。受信IC9内には、混合器や不要波除去のためのバンド・パス・フィルタ等が設けられている。受信IC9で得られた第2の中間周波信号(2ndIF)は、変復調を行うデジタル・シグナル・プロセッサ(以下、DSPと言う)6に入力される。発振器10は、水晶振動子などから成り、低消費電力で、一定周波数で発振する。
【0025】
DSP6は、図示しないアナログ/デジタル変換器およびデジタル/アナログ変換器および変調部を備え、アナログ送信音声信号から、デジタル方式の変調信号を作成して図示しない送信側の混合器へ出力したり、前記受信IC9からの第2の中間周波信号(2ndIF)から、復調部61において、デジタル復調を行い、アナログ受信音声信号を生成する。LNA3、PLLIC5、およびDSP6は、バッテリ7からの電力で付勢される。
【0026】
上述のように構成される無線機1において、注目すべきは、DSP6内の制御部62が、該DSP6内の前記復調部61および受信電界強度検出器63を制御信号S1でON/OFF制御するとともに、前記LNA3およびPLLIC5を制御信号S2でON/OFF制御することである。そのため、前記バッテリ7からLNA3およびPLLIC5の間にはスイッチ8が介在される。
【0027】
図2は、無線機1の通常モードでの待ち受け時の動作を説明するためのタイミングチャートである。本発明の無線機1では、通信のタイミング(スロット)を規定したり、中継を行ったりする基地局を介さず、無線機同士が、任意のタイミングで、直接通信を行う。そのため、送信側の無線機は、
図2(a)の時刻t1~t2の期間で示すように、前記任意のタイミングで発報し、変調された音声信号Dを送信する。
図2(a)は、前記ARIB STD-T98において通信されるデータの構造を示す。無線機1同士で、音声やテキストのデータは、所定のデータ長のフレームF1,F2,・・・,Feに分割されて送信される。フレームデータの構造は、この
図2(a)で示す通りであり、最初のフレームF1は、プリアンブルPに続き、同期バーストSB0の部分となる。その同期バーストSB0の部分は、同期ワードSW、無線情報チャネルRICH、低速付随制御チャネルSACCH、パラメータ情報チャネルPICH、未定義データとを備えて構成される。
図2(a)の通り、P=24ビット、SW=20ビット、RICH=16ビット、SACCH=60ビット、PICH=144ビット、未定義データ=144ビット、したがってフレーム長は408ビット以上である。
【0028】
これが、第2フレームF2以降、最終フレームFeまで、通信用チャネルSCとなり、プリアンブルPは無く、同期ワードSW、無線情報チャネルRICH、低速付随制御チャネルSACCHと続き、以降は、前記音声やテキストのデータのトラヒックチャネルTCH1,TCH2となる。TCH1,TCH2=144ビット、フレーム長は384ビットである。
【0029】
そして、無線情報チャネルRICHは、最初のフレームF1で送信されることになる同期バーストSB0およびそれに続く第2フレームF2以降で送信される通信用チャネルSCのために配置される情報で、前記同期バーストSB0であるか、通信用チャネルSCであるかの識別情報を含む。さらに、無線情報チャネルRICHは、通信用チャネルSCである場合は、送信すべきデータが前記音声データであるのかテキストデータ等の非音声データであるのか、非音声データである場合は誤り訂正を使用しているか否か等、送信すべきデータの種別を表わす情報を備えて構成されている。低速付随制御チャネルSACCHには、前記音声データの秘話スクランブルのON/OFFを通知するための通話識別や、ユーザコード、製造者番号などの付随情報が含まれている。同期バーストSB0および通信用チャネルSCの一部には、適宜、誤り訂正符号が付加される。
【0030】
図3に、前記ARIB STD-T98における無線機同士の接続シーケンスを示す。
図3では、無線局aと無線局bとが音声通信を行うものとする。無線局bが無線局aを呼出す場合、無線局b側のプレス・トーク・スイッチを押下することで、同期バーストSB0が所定回数送信される。前記ARIB STD-T98では、同期バーストSB0の送出推奨値は、
図2(a)の通り、1回である。その同期バーストSB0に先立ち、情報を持たないシンボルであるプリアンブルPが付加されている。同期バーストSB0の送出後、1または複数の通信用チャネルSCが送信されることで、無線局bの音声信号が無線局aに送られることになる。
【0031】
一方、受信側である無線局aでは、同期バーストSB0に含まれる同期ワードSWを検出すると同期確立動作に入り、同期が確立すると、通信用チャネルSCの同期ワードSWを検出し、検出されると通信用チャネルSCの受信を行い、検出されない場合はアイドル状態となる。終話の判定は、低速付随制御チャネルSACCHに含まれている終話信号から判定される。無線局aから無線局bを呼出す場合も同様である。
【0032】
図2を参照して、
図2(b)は受信電界強度検出器63による電界強度検出出力を、
図2(c)はLNA3およびPLLIC5への通電制御、すなわちスイッチ8の切換え動作を示す。DSP6内の制御部62は、図示しないが、パワーセーブモードでは、前記LNA3およびPLLIC5ならびにそれらと連動する受信電界強度検出器63および復調部61への通電を、充分長い周期で行い、受信電界強度検出器63で、同調周波数の何らかの電波が検知されない限り、前記充分長い周期での間欠受信を行い、パワーセーブを行う。
【0033】
本発明で注目すべきは、上述のように、同期バーストSB0に先立ち、通常、最初のフレームF1にだけ、プリアンブルPが付加され、第2フレームF2以降は、送信すべき音声や他のデータを含む通信用チャネルSCの繰返しが続くことから、直ぐに着信応答する必要のある通常モードにおいて、この
図2のパワーセーブ動作を行うことである。詳しくは、受信制御手段となる制御部62は、受信手段を構成するLNA3およびPLLIC5ならびにそれらと連動する受信電界強度検出器63および復調部61への通電(スイッチのON/OFF)を、前記制御信号S1,S2を制御して、間欠で行う。そして、その間欠駆動の周期を、プリアンブルPの期間より短く設定する。すなわち、プリアンブルPの期間をN1、前記間欠駆動の駆動(ON)期間をN2、休止(OFF)期間をN3とするとき、N2+N3<N1とする。駆動(ON)期間N2は、受信電界強度検出器63で、受信電界強度を充分に検出できる時間とする。
【0034】
したがって、直ぐに着信応答する必要のある通常モードにおいて、受信手段を構成するLNA3およびPLLIC5ならびに受信電界強度検出器63および復調部61がパワーセーブのために間欠駆動されていても、それらが駆動(ON)されている期間N2に、復調部61での復調と同時に、受信電界強度検出器63で電波の有無を検出し、それが自機宛の通信であれば、結果的にプリアンブルPの一部を検知することができる。そのプリアンブルPの一部を検知すると、制御部62は、それらの受信手段を速やかに連続受信に切換え(ON固定し)、フレーム同期を図る。受信電界強度検出器63は、受信電界強度を検出し、設定された閾値レベルrefとの比較を行い続け、比較結果を信号S3で制御部62に入力する。
【0035】
図2では、切換えの時刻t3は、受信電界強度が所定の閾値レベルrefに到達した時点となっている。
図2では、時刻t3以降は、受信電界強度は、受信電界強度検出器63の飽和入力レベルとなっている。復調部61で復調されたデータS4は、前記制御部62に入力されており、該制御部62で、同期バーストSB0からフレーム同期が取れない時は、検出された電界強度が周辺ノイズなどによるものである可能性があり、また同期ワードSWから自機宛の通信でないときは、制御部62は、受信手段を、所定の猶予期間を経て、間欠受信の待受け状態に復帰させる。終話の際は、制御部62は、前記低速付随制御チャネルSACCHに含まれている終話信号から判定を行い、間欠受信の待受け状態に復帰させる。前記電界強度の閾値レベルrefは、使用環境に応じて適宜設定されればよく、具体的には該閾値レベルrefを、呼出される頻度が高い場合には低く、周辺ノイズが多い場合には高く、等である。
【0036】
このように構成することで、間欠駆動で、休止(OFF)している期間(N3)における受信手段の消費電力を抑えることができる。具体的には、N3/(N2+N3)だけ削減することができる。たとえば、最初のフレーム期間が86.7msec、N1=6.7msec、N2=2.5msec、N3=3.5msecならば、着信が殆ど無い場合は、前述の構成に係る消費電力を、着呼率を落すことなく、半分以下にすることができる。ここで、ユーザがパワーセーブモードを解除して、通常モードを選択しているということは、着呼率を犠牲にしたくないと言う要望があり、前記の間欠受信を行うことで、ユーザの利便性を損なうこともなく消費電力を低減することができる。前記駆動(ON)期間N2は、通電開始から、LNA3のゲインが一定(MAX)ゲインに立上がり、PLLIC5の発振周波数が受信周波数に対応した第1の局部発振周波数(1stLO)に安定し、かつ受信電界強度検出器63が立上がりから前記閾値レベルref以上の信号を判定できるまでの時間以上に設定されればよい。
【0037】
ところで、LNA3およびPLLIC5のON/OFF、つまりスイッチ8のON/OFFは、無線機1の全体の動作を制御する、図示しないCPU(中央情報処理装置)などで行ってもよい。しかしながら、CPUは、全体の動作を制御する関係上、通常モードでは、スイッチ8をONすべきタイミングで、何らかの処理を行っている可能性がある。そのため、このCPUで前記間欠駆動を行うと、他の処理の影響を受けて、間欠駆動のONタイミングがずれて、N2:N3の比率が崩れたり(相対的にOFF期間N3が長くなったり)、或いは間欠駆動を終了して連続受信に切換えるタイミング(t3)に遅れを生じたりして、着呼率が低下してしまう可能性がある。そこで、スイッチ8の制御に、デジタル変復調を行うDSP6を用いることで、該DSP6は、送受信の信号が無ければ、デジタル信号処理(待ち受け時は復調部61による復調処理)量が少なく、またリアルタイム性を要求されることから制御遅れが無いので、着呼率が低下してしまうようなことが無い。また、DSP6は、間欠駆動中に連続で動作させていても(起こしていても)、消費電力も小さく、好適である。
【0038】
また、本実施形態の無線機1において、受信手段の構成の内、DSP6の外部で、スイッチ8により間欠駆動されるのは、LNA3およびPLLIC5としている。これは、LNA3は、一定(MAX)ゲインで受信信号を増幅し、PLLIC5は、第1の局部発振信号1stLOを作成するために高周波発振し、共に消費電力が大きく、前記間欠駆動で休止させることで、パワーセーブに効果的であるためである。
【符号の説明】
【0039】
1 無線機
2 アンテナ
3 LNA(ロー・ノイズ・アンプ)
4 混合器
5 PLL(フェイズ・ロック・ループ)IC
6 DSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)
61 復調部
62 制御部
63 受信電界強度検出器
7 バッテリ
8 スイッチ
9 受信IC
10 発振器