(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】風呂給湯装置
(51)【国際特許分類】
F24H 15/196 20220101AFI20240215BHJP
F24H 15/246 20220101ALI20240215BHJP
【FI】
F24H15/196 301M
F24H15/196 302E
F24H15/196 303E
F24H15/246
(21)【出願番号】P 2020143692
(22)【出願日】2020-08-27
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 史朗
(72)【発明者】
【氏名】山下 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】前嶋 佑輝
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-233362(JP,A)
【文献】特開平04-036544(JP,A)
【文献】特開2018-084398(JP,A)
【文献】特開平11-294845(JP,A)
【文献】特開2015-040772(JP,A)
【文献】特開平10-185311(JP,A)
【文献】特開2018-071858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 15/196
F24H 15/246
F24H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風呂給湯装置であって、
給湯用熱交換器を有し、低温水を加熱して給湯する給湯回路と、
追焚用熱交換器および循環ポンプを有し、浴槽内の湯水を循環する循環回路と、
前記給湯用熱交換器および前記追焚用熱交換器を共通の熱源により加熱する燃焼機構と、
前記循環回路に接続され、前記循環回路内の水圧により前記浴槽内の水位を検出する水位センサと、
前記水位センサの検出値にフィルタリング処理を施すことにより水位データを生成し、生成した前記水位データに基づいて前記浴槽内の水位の変化を検知する制御装置とをさらに備え、
前記制御装置は、第1フィルタと、前記第1フィルタに比べてノイズ除去性能が高い一方でリアルタイム性が低い第2フィルタとを有しており、前記風呂給湯装置の運転モードに応じて、前記第1フィルタおよび前記第2フィルタを選択的に用いてフィルタリング処理を実行する、風呂給湯装置。
【請求項2】
前記風呂給湯装置の運転モードは、第1の運転モードおよび第2の運転モードを含み、
前記第2の運転モードは、前記第1の運転モードに比べて、前記水位センサの検出値に含まれるノイズが大きい運転モードであり、
前記制御装置は、前記第1の運転モード時には前記第1フィルタを用い、前記第2の運転モード時には前記第2フィルタを用いる、請求項1に記載の風呂給湯装置。
【請求項3】
前記第1の運転モードは、給湯運転ならびに前記循環回路を用いた風呂湯張り運転および循環運転のいずれも停止している停止モードを含み、
前記第2の運転モードは、前記燃焼機構に対する要求発生熱量が第1の熱量以上第2の熱量以下であるときの給湯単独運転を含む、請求項2に記載の風呂給湯装置。
【請求項4】
前記風呂給湯装置の運転モードは、前記第2の運転モードに比べて、前記水位センサの検出値に含まれるノイズが大きい第3の運転モードをさらに含み、
前記制御装置は、前記第3の運転モード時には前記水位データを参照しない、請求項2または3に記載の風呂給湯装置。
【請求項5】
前記第1の熱量は、前記燃焼機構の連続燃焼による最小燃焼熱量に基づいて設定され、
前記制御装置は、前記要求発生熱量が前記第1の熱量よりも低いときには、前記燃焼機構の燃焼期間および非燃焼期間が繰り返し設けられる間欠燃焼を実行するように構成され、
前記第3の運転モードは、
前記風呂湯張り運転および前記循環運転と、
前記要求発生熱量が前記第2の熱量より大きいときの前記給湯単独運転、前記間欠燃焼による前記給湯単独運転、前記給湯運転の終了時からの所定時間内、および前記燃焼機構の燃焼能力段数の切替時の少なくとも1つとを含む、請求項4に記載の風呂給湯装置。
【請求項6】
前記第1フィルタは、移動平均フィルタを含み、
前記第2フィルタは、ローパスフィルタを含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の風呂給湯装置。
【請求項7】
前記第2フィルタは、二重移動平均フィルタを含む、請求項6に記載の風呂給湯装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記水位データから検知される前記浴槽内の水位の変化に基づいて、前記浴槽への人の入退浴を検知する、請求項1から7のいずれか1項に記載の風呂給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風呂給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第3777005号(特許文献1)および特開平10-148397号公報(特許文献2)には、一缶二水路式の風呂給湯装置が開示されている。一缶二水路式の風呂給湯装置は、給湯用熱交換器および追焚用熱交換器が一体化されており、その一体化された熱交換器を共通のバーナによって加熱するように構成されている。
【0003】
上記風呂給湯装置において、浴槽内の湯水を加熱するための循環回路には、浴槽内の湯水の水位(以下、浴槽水位とも称する)を検知するための水位センサが設けられている。水位センサは、圧力センサによって構成されており、循環回路内の圧力に基づいて浴槽水位を検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3777005号
【文献】特開平10-148397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記風呂給湯装置によれば、水位センサによって検知される浴槽水位に基づいて、浴槽への人の入退浴を検知することができる。しかしながら、一缶二水路式の風呂給湯装置では、循環回路を作動させずに、給湯用熱交換器の加熱による給湯運転を単独で行なっている場合、追焚用熱交換器内の滞留水が加熱されることにより循環回路内の湯水の温度および圧力が上昇する。これにより、循環回路内の圧力が大きく変動するため、水位センサの出力にノイズが生じる。水位センサの出力がノイズを含んでいる場合には、浴槽水位を正確に検知することが困難となるため、入退浴の検知精度が低下することが懸念される。
【0006】
水位センサの出力からノイズを除去するためには、水位センサの出力にフィルタリング処理を施すことが有効である。ただし、フィルタリング処理に用いるフィルタの種類によっては、高度な演算処理によって高いノイズ除去性能を確保できる一方で、生成される水位データのリアルタイム性が低下してしまう場合がある。このような場合、水位データにおいて実際の浴槽水位の変化に対する遅れが生じてしまうため、入退浴の検知の応答性が低下し、結果的にユーザの使用感を低下させることが懸念される。
【0007】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであって、本発明は、一缶二水路式の風呂給湯装置において、水位センサを用いた浴槽水位の検知の精度およびリアルタイム性を両立させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある局面によれば、風呂給湯装置は、給湯用熱交換器を有し、低温水を加熱して給湯する給湯回路と、追焚用熱交換器および循環ポンプを有し、浴槽内の湯水を循環する循環回路と、給湯用熱交換器および追焚用熱交換器を共通の熱源により加熱する燃焼機構と、水位センサと、制御装置とを備える。水位センサは、循環回路に接続され、循環回路内の水圧により浴槽内の水位を検出するように構成される。制御装置は、水位センサの検出値にフィルタリング処理を施すことにより水位データを生成し、生成した水位データに基づいて浴槽内の水位の変化を検知するように構成される。制御装置は、第1フィルタと、第1フィルタに比べてノイズ除去性能が高い一方でリアルタイム性が低い第2フィルタとを有している。制御装置は、風呂給湯装置の運転モードに応じて、第1フィルタおよび第2フィルタを選択的に用いてフィルタリング処理を実行する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、一缶二水路式の風呂給湯装置において、水位センサを用いた浴槽水位の検知の精度およびリアルタイム性を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態に係る風呂給湯装置の概略構成図である。
【
図2】
図1に示した制御装置の機能ブロック図である。
【
図5】二重移動平均フィルタのM,Nを算出した結果を示す図である。
【
図6】二重移動平均フィルタのゲイン特性と、窓関数を利用したFIRフィルタのゲイン特性とを比較した結果を示す図である。
【
図7】第1フィルタより生成された水位データを用いた入退浴の検知を説明する図である。
【
図8】第2フィルタにより生成された水位データを用いた入退浴の検知を説明する図である。
【
図9】同一の期間に取得された水位センサの検出値を第1フィルタおよび第2フィルタを用いてフィルタリング処理して得られた水位データの波形図である。
【
図10】風呂給湯装置の各運転モードにおける水位データのフィルタリング処理をまとめたテーブルである。
【
図11】水位データの生成に関連する風呂給湯装置の制御処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
【0012】
[風呂給湯装置の構成]
図1は、実施の形態に係る風呂給湯装置の概略構成図である。
【0013】
図1を参照して、本実施の形態に係る風呂給湯装置10は、給湯回路2と、循環回路4と、燃焼機構63と、風呂給湯装置10を制御するための制御装置100とを備える。本実施の形態に係る風呂給湯装置10は、給湯用熱交換器および追焚用熱交換器が一体化され、その一体化された熱交換器を共通の燃焼バーナで加熱する一缶二水路式給湯装置である。
【0014】
(給湯回路2)
給湯回路2は、カラン190またはシャワー等の給湯栓の開栓時に、給湯設定温度に制御された適温の湯水を給湯するための回路である。給湯回路2は、缶体6に格納された給湯用の一次熱交換器61および二次熱交換器62と、入水管21と、缶体配管22と、バイパス管23と、出湯管24と、給湯管25と、流量調整弁28と、分配部32と、流量センサ51と、温度センサ52,53,54とを有する。
【0015】
入水管21は、上流側に上水道などの給水路が接続されており、下流側に分配部32を経由して缶体配管22およびバイパス管23が接続されている。入水管21には、給水路から低温水が供給される。入水管21の低温水は、分配部32を経由して、缶体配管22およびバイパス管23へ分配される。
【0016】
缶体配管22は、二次熱交換器62に接続される。入水管21から缶体配管22に導入された低温水は、まず二次熱交換器62によって予加熱された後、一次熱交換器61を通過することによって主加熱される。一次熱交換器61および二次熱交換器62によって所定温度まで加熱された高温水は出湯管24から出湯される。
【0017】
出湯管24は、合流点27においてバイパス管23と接続される。したがって、給湯回路2からは、缶体6から出力された高温水と、バイパス管23からの低温水とを混合した適温の湯が、カラン190またはシャワー等の給湯栓または浴槽8への注湯配管26などの所定の給湯箇所に供給される。出湯管24には、給湯流量を制御するための流量調整弁28が設けられている。
【0018】
温度センサ52は、缶体配管22に配置され、低温水の温度(以下、入水温度とも称する)を検出する。温度センサ53は、出湯管24のうちの合流点27よりも上流側(熱交換器61側)の部分に配置され、高温水の温度(以下、缶体温度とも称する)を検出する。温度センサ54は、出湯管24のうちの合流点27よりも下流側の部分に配置され、高温水および低温水の混合後の出湯温度を検出する。流量センサ51は、缶体配管22に配置され、缶体流量を検出する。
【0019】
(燃焼機構63)
燃焼機構63は、燃焼バーナを有する。燃焼バーナは、例えば、液体燃料として石油(灯油)を噴霧する噴射ノズル630を有するガンタイプバーナによって構成される。燃焼機構63は、さらに、燃料供給管631と、電磁開閉弁632と、電磁供給ポンプ633と、リターン管634と、流量制御弁635と、送風ファン636と、点火トランス637とを有する。
【0020】
燃料供給管631は、図示しない燃料タンクから噴射ノズル630へ液体燃料(以下、単に燃料とも称する)を導く。電磁開閉弁632は、燃料供給管631に配置され、制御装置100からの制御指令に応じて開閉することにより、燃料供給管631への燃料供給をオンオフする。電磁供給ポンプ633は、燃料供給管631に配置され、制御装置100からの制御指令に応じて、開状態の電磁開閉弁632を経由して供給された燃料を昇圧する。昇圧された燃料は噴射ノズル630から霧状に噴射される。
【0021】
送風ファン636は、燃焼バーナに燃焼用空気を供給する。噴射ノズル630から噴射された燃料は、送風ファン636からの燃焼用空気と混合される。点火トランス637によって着火されることにより、噴射ノズル630からの燃料が燃焼されて火炎が生じる。燃焼バーナからの火炎によって生じる燃焼熱は、缶体6内で熱交換器60,61へ与えられる。缶体6の燃焼ガスの流れ方向下流側には、熱交換後の燃焼排ガスを排出処理するための排煙筒64が開口されている。
【0022】
リターン管634は、燃料供給管631により供給された燃料の一部を、燃料供給管631に戻すように構成される。リターン管634には、リターン油の流量を制御するための流量制御弁635が配置される。流量制御弁635の弁開度は、制御装置100からの制御指令に応じて調整される。流量制御弁635によってリターン油の流量が調整されることにより、噴射ノズル630から噴霧される燃料量が制御される。基本的には、燃焼バーナによる燃焼量は、燃料量に比例する。したがって、流量制御弁635の弁開度を制御することによって、燃焼機構63による燃焼量を制御することができる。
【0023】
(循環回路4)
循環回路4は、浴槽8内の湯水(以下、浴槽水とも称する)を循環するための回路である。循環回路4は、追焚用の一次熱交換器60と、浴槽水を循環回路4内に循環させるための循環ポンプ34とを有する。循環回路4は、循環によって浴槽水を風呂設定温度となるまで追い焚きするための追焚循環回路としても機能し得る。一次熱交換器60は、燃焼機構63の燃焼熱により通流された浴槽水を加熱する。なお、一次熱交換器60に加えて二次熱交換器に浴槽水を通流させることにより浴槽水を加熱する構成としてもよい。
【0024】
循環回路4には、風呂戻り配管82および風呂往き配管83が接続される。風呂戻り配管82の上流端は、浴槽8に設置された循環アダプタ81の吸込側に接続される。また、風呂往き配管83の下流端は、循環アダプタ81の吐出側に接続される。
【0025】
循環ポンプ34が作動すると、浴槽水は、循環アダプタ81の吸込口から、風呂戻り配管82、一次熱交換器60および風呂往き配管83を経由して、循環アダプタ81の吐出口へ至る経路を循環する。循環回路4を通過する浴槽水が一次熱交換器60を通流することにより加熱されることにより、追焚機能が実現される。
【0026】
循環回路4は、水位センサ55をさらに備える。水位センサ55は、例えば圧力センサによって構成され、循環回路4の配管にかかる圧力(より特定的には配管内の水圧)に基づいて、浴槽8内の浴槽水の水位(以下、浴槽水位とも称する)を検出する。水位センサ55は、微小な圧力変動を検出するように構成されるため、ノイズの影響を受けやすい特性を有している。そのため、水位センサ55の検出値からノイズを除去するためのフィルタリング処理が必要となる。フィルタリング処理については後述する。
【0027】
風呂給湯装置10は、出湯管24から分岐して浴槽8へ湯張りするための注湯配管26をさらに備える。注湯配管26は、出湯管24から流量調整弁28を経由して分岐される。注湯配管26には、注湯電磁弁29が設けられる。注湯配管26は循環回路4と合流点26Aで連結される。制御装置100による注湯電磁弁29の開閉制御によって、給湯回路2から浴槽8へ湯張りするための経路の形成/遮断を制御することができる。
【0028】
[風呂給湯装置10の運転モード]
風呂給湯装置10の運転モードには、給湯運転、風呂湯張り運転、および循環運転が含まれる。運転モードには、さらに、給湯運転、風呂湯張り運転および循環運転のいずれも停止させる停止モードが含まれる。
【0029】
給湯運転では、入水管21に供給された低温水が、缶体配管22を介して熱交換器61,62に供給される。熱交換器61,62に供給された低温水は、燃焼機構63において発生した燃焼熱との間で熱交換を行なうことにより高温水となる。この高温水は、出湯管24および給湯管25を経由してカラン190等の給湯栓へ供給される。
【0030】
風呂湯張り運転では、入水管21に供給された低温水は、缶体配管22を介して熱交換器61,62に供給される。熱交換器61,62に供給された低温水は、燃焼機構63において発生した燃焼熱との間で熱交換を行なうことにより高温水となる。高温水は、出湯管24、注湯配管26、循環回路4および循環アダプタ81の吐出口を通じて浴槽8に供給される。
【0031】
循環運転では、循環ポンプ34を作動させて、循環回路4を介して浴槽水を循環させる。循環運転では、循環ポンプ34により、循環アダプタ81の吸込口から浴槽水が図中の矢印の方向に吸い上げられる。この吸い上げられた浴槽水は、一次熱交換器60を含む循環回路4を経由して、循環アダプタ81の吐出口へ至る経路を循環する。一次熱交換器60に供給された浴槽水を、燃焼機構63において発生した燃焼熱によって熱交換加熱することにより、追焚運転が実行される。なお、循環運転には、追焚運転以外に、気泡発生運転およびエアパージ運転を含めることができる。気泡発生運転は、循環アダプタ81が有する気泡発生機能を用いて、浴槽8内に微細気泡を含有する湯水を供給する運転モードである。エアパージ運転は、循環回路4内に浴槽水を循環させることによって、循環回路4内に混入した空気を除去する運転モードである。気泡発生運転およびエアパージ運転では、燃焼機構63を燃焼させず、循環ポンプ34を作動させることにより浴槽水を循環回路4内に循環させる。
【0032】
[制御装置100の機能的構成]
次に、制御装置100の機能的構成を説明する。
【0033】
制御装置100は、ユーザ操作および各種センサによる検出値を受けて、風呂給湯装置10の運転を制御する。例えば、ユーザ操作は、図示しないリモートコントローラに設けられた運転スイッチの操作によって入力される給湯運転、風呂湯張り運転および循環運転(追焚運転)のオン/オフ指示、給湯設定温度および風呂設定温度の設定を含む。
【0034】
図2は、
図1に示した制御装置100の機能ブロック図である。
図2中の各ブロックの機能は、制御装置100が予め格納されたプログラムを実行するソフトウェア処理によって実現することができる。あるいは、専用の電子回路を用いたハードウェア処理によって各ブロックの一部または全部を実現することも可能である。
【0035】
図2を参照して、制御装置100は、運転制御部120、運転モード判定部140、および水位検知部160を有する。
【0036】
運転制御部120は、給湯運転制御部122と、風呂運転制御部124とを有する。給湯運転制御部122は、給湯運転を制御する。具体的には、給湯運転制御部122は、流量センサ51の出力に基づき、給水路から風呂給湯装置10への通流水量が最低作動流量(MOQ)を超えたと判断した場合、給湯運転を開始する。給湯運転が開始されると、燃焼機構63(燃焼バーナ)における燃焼動作が開始される。給湯運転制御部122は、電磁開閉弁632を開き、燃料供給管631への燃料の供給を開始する。流量制御弁635の開度に応じた燃料量が噴射ノズルから噴霧されて点火トランス637によって着火されることにより、燃料が燃焼されて火炎を生じ熱量が発生する。これにより、燃焼動作が開始される。このとき、燃焼に必要な燃焼用空気を供給するために送風ファン636が運転される。
【0037】
給湯運転制御部122は、風呂給湯装置10からの給湯設定温度に制御するための温度制御によって、燃焼機構63(燃焼バーナ)への要求発生熱量を設定し、この要求発生熱量に従って燃焼機構63の作動状態を制御する。その一環として、給湯運転では、燃焼機構63の燃焼期間が連続的に設けられる給湯連続燃焼と、燃焼機構63の燃焼期間および非燃焼期間が繰り返し設けられる給湯間欠燃焼とのいずれか一方が適用される。
【0038】
具体的には、給湯運転制御部122は、缶体流量、入水温度、缶体温度、および缶体温度の目標温度に基づいて、燃焼機構63への要求発生熱量を算出する。なお、給湯装置では、要求発生熱量が「号数」を単位として演算されることが一般的である。号数=1は、缶体流量=1(L/min)の下で湯温を25℃上昇させるのに必要な熱量に相当する。
【0039】
要求発生熱量が給湯連続燃焼における発生熱量範囲の下限値(最小発生熱量)以上であるときには、給湯運転制御部122は、給湯連続燃焼を適用する一方で、要求発生熱量が最小発生熱量よりも低いときには、給湯間欠燃焼を適用するように燃焼機構63を制御する。給湯間欠燃焼では、燃焼バーナの燃焼が間欠的に実行される。すなわち、燃焼期間と非燃焼期間とが繰り返し設けられるように、燃焼バーナは消火および再点火される。燃焼期間および非燃焼期間は予め定められた固定値に従って切り換えられる。あるいは、燃焼期間および非燃焼期間は、燃焼バーナからの推定発生熱量および要求発生熱量の比較に従って切り換えられる。
【0040】
給湯運転制御部122は、燃焼バーナの燃焼動作を停止する場合には、電磁開閉弁632を閉じるとともに、点火トランス637および送風ファン636を駆動するファンモータへの電流供給を停止するように各部を制御する。給湯運転制御部122は、燃焼動作を再開させる場合には、ファンモータへ電流を供給し、電磁開閉弁632を開くとともに、点火トランス637へ電流を流すように各部を制御する。
【0041】
風呂運転制御部124は、追焚運転を含む循環運転、および風呂湯張り運転を制御する。具体的には、循環運転では、風呂運転制御部124は、循環ポンプ34の運転により、浴槽8からの湯水を循環回路4に循環させる。追焚運転では、循環回路4を通流する浴槽8からの湯水は、燃焼バーナの燃焼加熱により昇温された後に浴槽8に再度供給される。
【0042】
風呂湯張り運転では、風呂運転制御部124は、注湯配管26に配置された流量センサ(図示せず)によって検出された流量(注湯流量)の積算によって、浴槽8への注湯水量(体積)を算出することができる。風呂運転制御部124は、浴槽水位が設定水位に達し、かつ、図示しない温度センサによって検出される浴槽水温度が風呂設定温度に達すると、風呂湯張り運転を終了する。
【0043】
風呂給湯装置10は、風呂湯張り運転の終了後、浴槽水温度および浴槽水位を維持する自動モードを設定することが可能である。自動モードの設定時には、温度センサによって検出された浴槽水温度が、風呂設定温度に対応されて設定された基準温度(例えば、風呂設定温度よりも2~3℃低く設定)よりも低下すると、風呂運転制御部124は、追焚運転を開始する。さらに、風呂運転制御部124は、水位センサ55によって検出された浴槽水位が設定水位よりも低下すると、風呂給湯装置10から浴槽8へ追加的に注湯する足し湯運転を開始する。
【0044】
なお、風呂給湯装置10は、給湯運転の実行中に循環運転または風呂湯張り運転のオンが指示された場合には、同時に循環運転または風呂湯張り運転を実行する。本明細書では、給湯運転において、循環運転および風呂湯張り運転が実行されていない場合を「給湯単独運転」とも称する。
【0045】
運転モード判定部140は、運転制御部120による制御動作を監視することにより、風呂給湯装置10の運転モードを判定する。運転モード判定部140は、判定した運転モードを水位検知部160へ通知する。
【0046】
水位検知部160は、水位センサ55の検出値に基づいて浴槽水位を検知する。水位検知部160はさらに、検知される浴槽水位の変化に基づいて、浴槽8への人の入退浴を検知する。具体的には、水位検知部160は、水位センサ55の検出値を記憶するためのデータベース161、ノイズ除去部162、および入退浴検知部164を有する。
【0047】
ノイズ除去部162は、第1フィルタ162aおよび第2フィルタ162bを有する。第1フィルタ162aおよび第2フィルタ162bはいずれも、水位センサ55の検出値から高周波のノイズを除去するためのノイズフィルタである。後述するように、第1フィルタ162aと第2フィルタ162bとは、ノイズ除去性能およびリアルタイム性が互いに異なる。具体的には、第2フィルタ162bは、第1フィルタ162aに比べて、ノイズ除去性能が高い。その一方で、第2フィルタ162bは、第1フィルタ162aに比べてフィルタリング処理(演算処理)に用いるデータ数が多いため、リアルタイム性が低いという性質を有している。
【0048】
以下、第1フィルタ162aおよび第2フィルタ162bの構成例を説明する。
【0049】
(第1フィルタ162a)
第1フィルタ162aは、水位センサ55の検出値に重畳したノイズに対してフィルタリング処理を施し、ノイズを除去した水位データをデータベース161に出力する。
図3は、第1フィルタ162aの構成例を示す図である。
【0050】
図3に示すように、第1フィルタ162aには、例えば、移動平均フィルタを用いることができる。移動平均フィルタは、水位センサ55の検出値におけるN個のサンプリング点x[n]~x[n-(N-1)]の単純移動平均値z[n]を算出するように構成される。単純移動平均値z[n]は、次式(1)を用いて表すことができる。
【0051】
【0052】
単純移動平均値z[n]の算出に用いるサンプリング点の個数Nは、例えばN=28である。移動平均フィルタによれば、水位データの変化が緩やかになるように平滑化される。ただし、Nの値を大きくするほど、水位データの変化が緩慢となり、実際の浴槽水位の変化から乖離してしまう可能性がある。また、単純移動平均では、N個のサンプリング点の重み(係数)が互いに等しいため、残しておきたい周波数成分まで減衰させる可能性がある。
【0053】
(第2フィルタ162b)
第2フィルタ162bは、水位センサ55の検出値に重畳したノイズに対してフィルタリング処理を施し、ノイズを除去した水位データをデータベース161に出力する。第2フィルタ162bには、上述した移動平均フィルタの欠点を解消するものとして、低域の周波数成分を減衰させずに中高域の周波数成分を減衰させる特性をもつローパスフィルタを適用することができる。ただし、第2フィルタ162bは、第1フィルタ162aに比べて、ノイズ除去性能が高くなるという反面、演算処理に使用するデータ数が多くなるため、リアルタイム性が低い性質を有している。
【0054】
図4は、第2フィルタ162bの構成例を示す図である。
図4に示すように、第2フィルタ162bには、例えば、二重移動平均フィルタを用いることができる。
【0055】
二重移動平均フィルタは、M個の移動平均フィルタにおいてそれぞれ算出されたM個の単純移動平均値z[n]~z[n-(M-1)]を単純移動平均した値y[n]を算出するように構成される。すなわち、二重移動平均フィルタは、単純移動平均を2回適用したものである。二重移動平均値y[n]は、次式(2)を用いて表すことができる。ただし、N≦Mである。
【0056】
【0057】
式(2)に示されるように、二重移動平均値y[n]は、x[n]~x[n-(N+M-2)]の合計(M+N-1)個の要素の和で構成されており、各要素には重み付け(フィルタ係数)が付されている。すなわち、二重移動平均フィルタは、実質的に、フィルタ次数L=(N+M-2)であるFIR(Finite Impulse Response:有限インパルス応答フィルタ)を構成する。なお、Nは単純移動平均値z[n]の算出に用いるサンプリング点の個数であり、Mは二重移動平均値y[n]の算出に用いる単純移動平均値z[n]の個数Mである。
【0058】
二重移動平均フィルタにおけるフィルタ係数は、上底を(M-N+1)とし、下底を(M+N-1)とし、高さを1/Mとする台形の形状を有している。これによると、台形の形状は、N,Mの値によって自在に変化させることができることが分かる。本実施の形態では、この特徴を利用することにより、水位センサ55の検出値からノイズを除去するために適当なフィルタ係数を有するFIRフィルタを、二重移動平均フィルタを用いて簡易に実現する。
【0059】
(第2フィルタの設計方法)
次に、
図4に示した第2フィルタ162bの設計方法について説明する。
【0060】
第2フィルタ162bにFIRフィルタ(ローパスフィルタ)を適用する場合、最初に、水位センサ55の検出値に重畳するノイズの周波数に基づいて、遮断周波数ωcが設定される。本実施の形態では、水位センサ55の検出値に対してフーリエ変換を用いた周波数解析を行なうことにより、遮断周波数ωcが0.2Hz以上であることが特定された。この場合、設計すべきFIRフィルタの理想周波数特性は、0.2Hz以上においてゲインが0であることが求められる。ただし、現実的にはゲインを0にすることは困難であるため、実際の設計にあたっては、0.2Hz以上のゲインを-13dB以下とした。
【0061】
上記の理想周波数特性を再現するためのフィルタ設計においては、一般的に、インパルス応答が用いられる。理想周波数特性をHd(z)とすると、そのインパルス応答は次式(3)により求められる。これによると、遮断周波数ωcのインパルス応答hd(n)は、式(4)となる。
【0062】
【0063】
【0064】
インパルス応答における入力F(z)、伝達関数H(z)および出力Y(z)の関係は、F(z)=1のときにH(z)=Y(z)となる。よって、インパルス応答そのものが伝達関数、すなわちフィルタ係数になる。
【0065】
次に、このようにして求めたフィルタ係数から、理想周波数特性を得ることができるフィルタ次数(演算処理に使用するデータ数)を選択する。無限に続くインパルス応答を有限長に切り取るために、窓関数が用いられる。本実施の形態では、窓関数にカイザー窓を用いることとする。カイザー窓は次式(5)で与えられる。
【0066】
【0067】
ただし、I0は第1種の0次ベッセル関数であり、αは調整パラメータである。本実施の形態では、調整パラメータα=0.6とした。
【0068】
このようにして求めたFIRフィルタは次式(6)のように表される。フィルタ次数K=82である。FIRフィルタは、合計83個のフィルタ係数a0~a82を有する。
【0069】
【0070】
式(6)に示した演算を実際に行なう際には、現在のサンプリング点での水位センサ55のセンサ値x[n]と、過去82個のサンプリング点でのセンサ値x[n-1]~x[n-82]とをデータベース161から読み出し、読み出したセンサ値の各々と対応するフィルタ係数との乗算を83回行ない、83個の乗算値の合計値を算出する。なお、n=0~7および75~82におけるフィルタ係数は0.005以下であるため、整数演算で精度を確保するためには、係数の精度(桁数)をかなり大きく取らなければならない。そのため、演算負荷が高くなることが懸念される。
【0071】
そこで、本実施の形態では、より簡単な演算処理で、FIRフィルタと同等の周波数特性を得る手法を考える。
【0072】
具体的には、ローパスフィルタ(FIRフィルタ)のフィルタ係数は、インパルス応答から次式(7)により表すことができる。
【0073】
【0074】
式(7)によると、フィルタ係数はsinc関数(偶関数)で表される。よって、フィルタ係数は、必ず左右対称な山型の形状を有している。なお、遮断周波数ωcを変えることによって、山型の形状を保ちつつ、縦方向および横方向の拡大縮小率が変化する。フィルタ次数K=82の場合、フィルタ係数は、フィルタ次数Kの中心である41番目のフィルタ係数に対して左右対称となる山型の形状を有している。
【0075】
そこで、本実施の形態では、式(2)に示した二重移動平均フィルタのフィルタ係数の台形の形状を、FIRフィルタのフィルタ係数の山型の形状に近似させることとする。
【0076】
具体的には、フィルタ次数がL(=M+N-2)の二重移動平均フィルタにおけるj番目のフィルタ係数をAjとすると、j=k+(L-K)/2のときのフィルタ係数Ajが、フィルタ次数がKであるFIRフィルタにおけるk番目(0≦k≦K)のフィルタ係数akに対応する。最小自乗法を適用することにより、フィルタ係数akとフィルタ係数Ajとの誤差の二乗の和は次式(8)で与えられる。この誤差の二乗の和が最小となるN,Mの値を求めることにより、フィルタ係数Ajをフィルタ係数akに対して良い近似とすることができる。
【0077】
【0078】
図5に、K=82として、上記式(8)を最小化するM,Nを算出した結果を示す。図中の黒丸はFIRフィルタのフィルタ係数を示し、白丸は二重移動平均フィルタのフィルタ係数を示す。N=37,M=51のときに、
図5に示すように、二重移動平均フィルタのフィルタ係数がFIRフィルタのフィルタ係数に対して良い近似を示すことが確認された。
【0079】
図6に、上記算出結果に基づく二重移動平均フィルタのゲイン特性と、窓関数(カイザー窓)を利用したFIRフィルタのゲイン特性とを比較した結果を示す。FIRフィルタのゲイン特性は、フィルタ次数K=82、遮断周波数ωc=0.1Hz、窓関数の調整パラメータα=0.6のときのゲイン特性である。二重移動平均フィルタのゲイン特性は、N=37,M=51のときのゲイン特性である。
【0080】
図6によれば、両者のゲイン特性がほぼ重なっており、良い一致を示していることが分かる。したがって、二重移動平均という簡易な演算処理によって、82次のFIRフィルタに近似させることができる。これによると、所望の周波数特性を有するローパスフィルタを、簡易な演算処理によって実現することが可能となる。
【0081】
なお、上記の実施の形態では、遮断周波数ωc=0.1Hzのローパスフィルタについて説明したが、ローパスフィルタのフィルタ係数は遮断周波数ωcによらず山型の形状を有しているため、上述した計算手法はあらゆる遮断周波数ωcのローパスフィルタに対して適用することができる。特に、遮断周波数ωcが小さくなるほど、FIRフィルタのフィルタ次数を大きく取らざるを得なくなるため、上述した計算手法は、演算処理を簡素化するためには有効な手段となる。
【0082】
図2に戻って、入退浴検知部164は、ノイズ除去部162により生成された水位データを用いて浴槽8への人の入退浴を検知する。具体的には、入退浴検知部164は、第1フィルタ162aにより生成された水位データおよび第2フィルタ162bにより生成された水位データのいずれか一方を選択的に用いて入退浴を検知する。
【0083】
図7は、第1フィルタ162aにより生成された水位データを用いた入退浴の検知を説明する図である。
図7には、第1フィルタ162aによる水位データの波形が模式的に示される。
【0084】
水位データは、所定のサンプリング周期(例えば1秒)でサンプリングされた水位センサ55の検出値に基づいて生成される。入退浴検知部164は、今回のサンプリング点での浴槽水位と、過去のサンプリング点での浴槽水位とを比較する。過去のサンプリング点は、今回のサンプリング点よりも第1時間(T1秒)前のサンプリング点である。
図7の例では、T1=5秒に設定されている。
【0085】
入退浴検知部164は、第1時間(T1秒)前のサンプリング点に対する今回のサンプリング点での浴槽水位の上昇幅ΔHを算出する。上昇幅ΔHが所定の閾値Hth以上となる浴槽水位の上昇が複数回(例えば3回)連続して検出されると、入退浴検知部164は、人の入浴を検知する。また、入浴者有りの状態において、浴槽水位の下降幅ΔHが所定の閾値Hth以上となる浴槽水位の下降が複数回連続して検出されると、入退浴検知部164は、人の退浴を検知する。
【0086】
図8は、第2フィルタ162bにより生成された水位データを用いた入退浴の検知を説明する図である。
図8には、第2フィルタ162bによる水位データの波形が示される。
【0087】
第2フィルタ162bは、第1フィルタ162aに比べてノイズ除去性能が高いため、ノイズが大きい運転モードにおいても、浴槽水位の変化を正確に検知することができる。その一方で、第2フィルタ162bは、演算処理に使用するデータ数が多くなるため、第1フィルタ162aに比べてリアルタイム性に劣る。そのため、
図8に示されるように、第2フィルタ162bにより生成される水位データは、第1フィルタ162aにより生成される水位データよりも、浴槽水位の変化が緩やかとなっている。
【0088】
入退浴検知部164は、今回のサンプリング点での浴槽水位と、過去のサンプリング点での浴槽水位とを比較する。過去のサンプリング点は、今回のサンプリング点よりも第2時間(T2秒)前のサンプリング点である。第2時間(T2秒)は、第1時間(T1秒)よりも長くなるように設定されている(T2>T1)。
図8の例では、T2=7秒に設定されている。
【0089】
入退浴検知部164は、第2時間(T2秒)前のサンプリング点に対する今回のサンプリング点での浴槽水位の上昇幅ΔHを算出する。上昇幅ΔHが所定の閾値Hth以上となる浴槽水位の上昇が複数回(例えば3回)連続して検出されると、入退浴検知部164は、人の入浴を検知する。また、入浴者有りの状態において、浴槽水位の下降幅ΔHが所定の閾値Hth以上となる浴槽水位の下降が複数回連続して検出されると、入退浴検知部164は、人の退浴を検知する。
【0090】
第2フィルタ162bからの水位データを用いた入退浴の検知では、浴槽水位の変化のリアルタイム性に起因して実際の入退浴に対して検知の遅れが生じる可能性があるため、ユーザの使用感を低下させることが懸念される。したがって、入退浴の検知の精度を保ちながらリアルタイム性を確保することが求められる。これには、循環回路4におけるノイズの発生状況に応じて第1フィルタ162aおよび第2フィルタ162bを選択的に使用することが有効である。
【0091】
ここで、水位データにおけるノイズの発生状況は、風呂給湯装置10の運転モードによって異なる。
【0092】
風呂湯張り運転中および循環運転中は、循環回路4の配管内が加圧されるため、水位データが水位検知範囲の上限値に張り付いてしまう。そのため、浴槽水位を検知することができない。したがって、風呂湯張り運転または循環運転の期間を挟んで、実行前および停止後の間で、浴槽水位が所定の閾値Hthを超えて上昇(または下降)した場合に、入浴(または退浴)を検知するようにしてもよい。
【0093】
給湯単独運転時に第1フィルタ162aから出力される水位データにはノイズが発生している。これは、一缶二水路式の風呂給湯装置10においては、循環運転および風呂湯張り運転は実行せずに、給湯用の一次熱交換器61による湯水の加熱を単独で行なっている場合、追焚用の一次熱交換器60内の滞留水が加熱されることによって循環回路4内の温度および圧力が上昇し、水位データに大きな変動が生じることによる。給湯連続燃焼の実行中は、要求発生熱量が大きくなるほど、すなわち、燃焼機構63の燃焼量が大きくなるほど、水位データに含まれるノイズが大きくなる。
【0094】
なお、給湯運転の終了時にはノイズが一時的に大きくなる。これは、給湯運転の終了時には給湯回路2内の湯水の流量が瞬間的に0L/minとなるため、一次熱交換器61の余熱によって一次熱交換器60内の滞留水の後沸きが生じることによる。
【0095】
給湯間欠燃焼の実行中は、給湯連続燃焼の実行中に比べて、より大きなノイズが発生する。これは、給湯間欠燃焼中は、燃焼バーナの消火および点火が頻繁に繰り返されるため、燃焼バーナの点火ごとに循環回路4内の温度上昇によって圧力が急峻に変動し、水位データの変動を増大させることによる。
【0096】
なお、給湯単独運転中、燃焼機構63の燃焼能力段数を切り替えた時点においても、燃焼機構63の燃焼量の変化によって循環回路4内の温度および圧力が変動するため、水位データに大きなノイズが現れる。
【0097】
これらの水位データと比較して、給湯運転、風呂湯張り運転および循環運転のいずれも停止させる停止モード時には、第1フィルタ162aから出力される水位データに含まれるノイズが十分に小さい。
【0098】
以上のように、風呂給湯装置10の運転モードによって、水位データに発生するノイズの大きさが異なる。そのため、第1フィルタ162aのみを用いた場合には、ノイズが大きい運転モード時(給湯単独運転時)において、浴槽水位の検知精度が低下してしまい、結果的に入退浴を誤検知する可能性がある。そこで、ノイズが大きい運転モード時には、第2フィルタ162bにより生成された水位データを用いて浴槽水位を検知することとする。ただし、水位データが上限値に張り付いてしまう運転モード(風呂湯張り運転および循環運転)や、第2フィルタ162bによってもノイズ除去が難しい運転モード(給湯間欠燃焼時、要求発生熱量が大きい給湯連続燃焼時など)においては、水位データを参照しないこととする。
【0099】
図9は、同一の期間に取得された水位センサ55の検出値を第1フィルタ162aおよび第2フィルタ162bを用いてフィルタリング処理して得られた水位データの波形図である。
【0100】
図中の一点鎖線は第1フィルタ162aから出力される水位データであり、点線は第2フィルタ162bから出力される水位データである。第1フィルタ162aによる水位データには大きなノイズが見られる一方で、第2フィルタ162bによる水位データではノイズが除去されていることが分かる。
【0101】
図9には、第2フィルタ162bによる水位データを用いて入退浴を検知した結果が併せて示されている。第2フィルタ162bによる水位データを用いれば、浴槽水位の変化を正確に検知できるため、入退浴の検知精度を高めることができる。その一方で、第2フィルタ162bを用いた浴槽水位の検知では、入退浴の検知に遅れが生じてしまうため、ノイズが大きい運転モードに限定して第2フィルタ162bを用いる。これによると、リアルタイム性の低下を抑制しながら入退浴の検知の精度を確保することができる。
【0102】
図10は、風呂給湯装置10の各運転モードにおける水位データのフィルタリング処理をまとめたテーブルである。
【0103】
図10に示すように、風呂給湯装置10の運転モードは、水位データに含まれるノイズの大きさに応じて4つに区分することができる。水位データのノイズが最も大きい運転モードには、循環運転時、風呂湯張り運転時、給湯単独運転時における給湯間欠燃焼時、給湯運転終了時からC秒以内、給湯運転における燃焼能力段数の切替時が含まれている。なお、風呂給湯装置10では、要求発生熱量がB号未満である場合に給湯間欠燃焼が適用され、要求発生熱量がB号より大きい場合に給湯連続燃焼が適用される。B号は、例えば燃焼機構63の給湯連続燃焼における最小発生熱量に設定される。C秒は事前実験により定められる。
【0104】
水位データのノイズが2番目に大きい運転モードには、給湯単独運転における給湯連続燃焼時であって、要求発生熱量がA号より大きい場合が含まれる。A号は事前実験により定められる。
【0105】
これらの運転モードでは、第2フィルタ162bを用いてもノイズを十分に除去することが難しいため、浴槽水位の誤検知を回避するために、水位データを参照不可とする。
【0106】
上記の運転モードに比べて水位データのノイズが小さい運転モードには、給湯単独運転における給湯連続燃焼時であって、要求発生熱量がB号より大きくA号以下である場合が含まれる。この運転モードでは、第2フィルタ162bを用いて水位センサ55の出力からノイズを除去する。
【0107】
水位データにノイズがほとんど含まれない運転モードには、給湯単独運転、風呂湯張り運転および循環運転のいずれもが停止される停止モードが含まれる。この運転モードでは、第1フィルタ162aを用いて水位センサ55の出力からノイズを除去する。
【0108】
風呂給湯装置10の運転時、制御装置100の水位検知部160(
図2)は、
図10のテーブルを参照することにより、運転モード判定部140から通知される運転モードに応じて、水位センサ55の検出値のフィルタリング処理に第1フィルタ162aを用いるか第2フィルタ162bを用いるか、あるいは水位データを参照不可とするかを選択する。水位検知部160は、第1フィルタ162aおよび第2フィルタ162bのいずれかを用いることを選択した場合、選択したフィルタを用いたフィルタリング処理により、水位データを生成する。そして、入退浴検知部164は、生成された水位データにおける浴槽水位の変化に基づいて浴槽8への人の入退浴を検知する。一方、水位データを参照不可とすることを選択した場合には、入退浴検知部164は、運転モードの実行期間を挟んで、実行前および停止後の間で、浴槽水位が所定の閾値を超えて上昇(または下降)した場合に、入浴(または退浴)を検知する。
【0109】
図11は、水位データの生成に関連する風呂給湯装置10の制御処理を説明するためのフローチャートである。
図11に示された制御処理は、例えば、制御装置100によって実行することができる。
【0110】
図11を参照して、制御装置100は、ステップS01により水位センサ55による検出値を取得すると、ステップS02により、第1フィルタ162aを用いたフィルタリング処理を行なうことにより、水位データを生成する。制御装置100は、さらにステップS03により、第2フィルタ162bを用いたフィルタリング処理を行なうことにより、水位データを生成する。
【0111】
フィルタ162a,162bによる水位データが生成されると、制御装置100は、ステップS04~S09の処理によって風呂給湯装置10の運転モードを判定し、その判定した運転モードに応じて、いずれのフィルタによる水位データを使用するか、あるいは水位データを参照しないかを選択する。
【0112】
具体的には、制御装置100は、ステップS04により、風呂給湯装置10が循環運転中であるか否かを判定する。循環運転中であると判定された場合(S04のYES判定時)、制御装置100は、ステップS12に進み、水位データを参照しないこととする。
【0113】
風呂給湯装置10が循環運転中でないと判定された場合(S04のNO判定時)、制御装置100は、ステップS05に進み、風呂給湯装置10が風呂湯張り運転中であるか否かを判定する。風呂湯張り運転中であると判定された場合(S05のYES判定時)、制御装置100は、ステップS12により、水位データを参照しないこととする。
【0114】
風呂給湯装置10が風呂湯張り運転中でないと判定されると(S05のNO判定時)、制御装置100は、ステップS06により、現タイミングが給湯運転の終了時点からC秒以内であるか否かを判定する。現タイミングが給湯運転の終了時点からC秒以内であれば(S06のYES判定時)、制御装置100は、ステップS12により、水位データを参照不可とする。
【0115】
一方、現タイミングが給湯運転の終了時点からC秒以内でない場合には(S06のNO判定時)、制御装置100は、ステップS07により、風呂給湯装置10が給湯運転中であるか否かを判定する。風呂給湯装置10が給湯運転中でない、すなわち、循環運転、風呂湯張り運転および給湯運転のいずれも停止している停止モードであると判定された場合(S07のNO判定時)には、制御装置100は、ステップS10に進み、第1フィルタ162aにより生成された水位データを用いることとする。
【0116】
一方、風呂給湯装置10が給湯運転中である場合(S07のYES判定時)、制御装置100は、ステップS08に進み、現タイミングが給湯能力段数の切替時であるか否かを判定する。現タイミングが給湯能力段数の切替時である場合(S08のYES判定時)、制御装置100は、ステップS12により、水位データを参照不可とする。
【0117】
現タイミングが給湯能力段数の切替時でない場合(S08のNO判定時)、制御装置100は、さらにステップS09により、要求発生熱量がB号以上A号以下であるか否かを判定する。B号は、給湯連続燃焼および給湯間欠燃焼の適用を決定するための判定値であり、例えば燃焼機構63の最小発生熱量である。A号は水位データに発生するノイズの大きさによって実験的に設定された判定値である。B号は「第1の熱量」に対応し、A号は「第2の熱量」に対応する。
【0118】
要求発生熱量がA号より大きい場合、もしくは要求発生熱量がB号未満である場合(すなわち、給湯間欠燃焼の適用時である場合)、制御装置100は、ステップS09をNO判定としてステップS12に進み、水位データを参照不可とする。
【0119】
一方、要求発生熱量がB号以上A号以下である場合(S09のYES判定時)には、制御装置100は、ステップS11に進み、第2フィルタ162bにより生成された水位データを用いることとする。
【0120】
以上説明したように、本実施の形態に係る風呂給湯装置では、風呂給湯装置の運転モードに応じて、ノイズ除去性能およびリアルタイム性が互いに異なる複数のフィルタのうちの1つを選択的に用いて、水位センサ55の出力に対するフィルタリング処理を実行する。具体的には、複数のフィルタは、第1フィルタ162aと、第1フィルタ162aに比べてノイズ除去性能が高い一方で、リアルタイム性が低い第2フィルタ162bとを含んでおり、水位センサ55の出力に発生するノイズが相対的に小さい運転モード(第1の運転モード)では第1フィルタ162aが用いられ、ノイズが相対的に大きい運転モード(第2の運転モード)では第2フィルタ162bが用いられる。
【0121】
このようにノイズの発生状況に応じて2種類のフィルタを使い分けることにより、浴槽水位の検知の精度およびリアルタイム性を両立させることが可能となる。その結果、浴槽水位の変化に基づいた入退浴の検知においても、検知の精度を保ちながらリアルタイム性を確保することができるため、ユーザの使用感の低下を抑制することができる。
【0122】
なお、上述した実施の形態では、風呂給湯装置の一例として石油風呂給湯装置について説明したが、本実施の形態に係る風呂給湯装置は、石油風呂給湯装置に限定されず、ガス風呂給湯装置などであってもよい。
【0123】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0124】
2 給湯回路、4 循環回路、8 浴槽、10 風呂給湯装置、34 循環ポンプ、60~62 熱交換器、55 水位センサ、100 制御装置、162a 第1フィルタ、162b 第2フィルタ。