(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】ふろ装置
(51)【国際特許分類】
F24H 15/196 20220101AFI20240215BHJP
F24H 15/246 20220101ALI20240215BHJP
F24H 15/421 20220101ALI20240215BHJP
【FI】
F24H15/196 301Z
F24H15/246
F24H15/421
(21)【出願番号】P 2020146150
(22)【出願日】2020-08-31
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐介
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-071858(JP,A)
【文献】特開2018-089088(JP,A)
【文献】特開2015-137818(JP,A)
【文献】特開平06-241555(JP,A)
【文献】特開2019-158289(JP,A)
【文献】特開2019-184116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00-15/493
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽を含むふろ装置であって、
前記浴槽内の水位を検出する水位検出器と、
前記ふろ装置を制御するための制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記水位検出器による前記浴槽の水位検出値に基づいて、前記浴槽への入浴および、前記入浴の検知後における前記浴槽からの退浴を検知する検知部と、
前記検知部における前記入浴および前記退浴の判定に用いられる基準水位を生成する生成部とを含み、
前記検知部は、退浴状態において、前記基準水位に対する現在の前記水位検出値の上昇量が予め定められた判定値以上となると前記入浴を検知し、
前記生成部は、前記退浴状態において、現在から予め定められた所定時間前の前記水位検出値に従って前記基準水位を定期的に更新する一方で、前記入浴の検知後の入浴状態において、前記基準水位の更新を停止し、
前記検知部は、前記入浴の検知時における前記基準水位に従って退浴判定水位を設定し、前記入浴検知後の入浴状態において、現在の前記水位検出値が前記退浴判定水位よりも低下すると、前記退浴を検知する、ふろ装置。
【請求項2】
前記生成部は、前記入浴状態において、前記検知部より前記退浴が検知されると、前記退浴の検知時から前記所定時間後において、前記基準水位の更新を再開する、請求項1に記載のふろ装置。
【請求項3】
給湯装置と、
循環ポンプを有し、前記給湯装置と浴槽との間で前記浴槽内の湯水を循環するための循環路とをさらに備え、
前記水位検出器は、前記循環路内の水圧に基づいて前記浴槽内の水位を検出するように構成され、
前記制御装置は、前記循環路を用いた前記浴槽への注湯動作および、前記循環ポンプの作動による循環動作を制御する制御部をさらに含み、
前記生成部は、前記退浴状態において、前記注湯動作または前記循環動作の実行中には、前記基準水位の更新を停止し、前記注湯動作または前記循環動作が停止されると、当該停止時から前記所定時間後において、前記基準水位の更新を再開する、請求項1または2に記載のふろ装置。
【請求項4】
前記ふろ装置は、通常状態と、少なくとも前記水位検出器への供給電力が前記通常状態よりも小さい省電力状態との間で相互に遷移可能に構成され、
前記生成部は、前記退浴状態において、前記ふろ装置が前記省電力状態であるときには、前記基準水位の更新を停止し、前記ふろ装置が前記通常状態に遷移すると、当該遷移時から前記所定時間後において、前記基準水位の更新を再開する、請求項1または2に記載のふろ装置。
【請求項5】
前記検知部は、前記退浴状態において、前記水位検出値の前記上昇量が前記判定値以上となる状態が、前記所定時間よりも短い第1の時間以上継続すると、前記入浴を検知する、請求項1から4のいずれか1項に記載のふろ装置。
【請求項6】
前記検知部は、前記入浴状態において、現在の前記水位検出値が前記退浴判定水位よりも低下した状態が、前記所定時間よりも短い第2の時間以上継続すると、前記退浴を検知する、請求項1から5のいずれか1項に記載のふろ装置。
【請求項7】
前記生成部は、前記浴槽および前記水位検出器の配置高さの差が予め定められた範囲内であるときに、現在の前記水位検出値に従った前記基準水位の更新を実行し、
前記検知部は、前記浴槽および前記水位検出器の配置高さの差が前記予め定められた範囲内であるときに、前記入浴状態での前記水位検出値と前記退浴判定水位との比較による退浴判定を実行する、請求項1から6のいずれか1項に記載のふろ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ふろ装置に関し、より特定的には、水位センサを備えたふろ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
浴槽の水位検出値に基づいて、入浴者の存在を検出すること、すなわち、浴槽に対する入浴および退浴を検知することが公知である(例えば特許文献1(特開2003-83606号公報)参照)。特許文献1に記載されるふろ装置は、予め定められた所定時間内での水位の上昇を検知することによって入浴を検知し、反対に、当該所定時間内での水位の低下を検知することによって退浴を検知するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成において、所定時間内での水位変化量は、現在から所定時間遡った時点での水位検出値を基準水位として、現在の水位検出値から基準水位を減算することによって算出される。しかしながら、当該所定時間内の水位検出値の変動によって、入浴又は退浴を誤検知することが懸念される。
【0005】
例えば、退浴状態において、当該所定時間内に浴槽内へ追加的に注湯する足し湯または、浴槽から湯水を汲み出す汲み湯がなされた場合には、入浴直前の水位が基準水位とは異なるため、入浴による水位上昇と、算出した水位変化量との間にずれが生じてしまい、入浴を誤検知する可能性がある。
【0006】
また、入浴状態において、当該所定時間内に入浴者が浴槽内で体勢を変えた場合には、この際の水位低下に応じて、退浴を誤検知する可能性がある。
【0007】
さらに、水位センサが圧力センサであって、浴槽の湯水を給湯装置内で循環するための循環路内の水圧に基づいて浴槽内の水位を検出するように構成されている場合には、循環ポンプの作動によって循環路内の湯水が加圧されるため、水位センサによる水位検出値に誤差が発生する。そのため、現在から所定時間遡った時点において循環ポンプが作動中であると、誤差を含んだ水位検出値が基準水位とされることによって、入浴又は退浴を誤検知する可能性がある。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、浴槽の水位センサを用いて入浴および退浴を正確に検知することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある局面では、浴槽を含むふろ装置であって、浴槽内の水位を検出する水位検出器と、ふろ装置を制御するための制御装置とを備える。制御装置は、水位検出器による浴槽の水位検出値に基づいて、浴槽への入浴および、入浴の検知後における浴槽からの退浴を検知する検知部と、検知部における入浴および退浴の判定に用いられる基準水位を生成する生成部とを含む。検知部は、退浴状態において、基準水位に対する現在の水位検出値の上昇量が予め定められた判定値以上となると、入浴を検知する。生成部は、退浴状態において、現在から予め定められた所定時間前の水位検出値に従って基準水位を定期的に更新する一方で、入浴の検知後の入浴状態において、基準水位の更新を停止する。検知部は、入浴の検知時における基準水位に従って退浴判定水位を設定し、入浴検知後の入浴状態において、現在の水位検出値が退浴判定水位よりも低下すると、退浴を検知する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、浴槽の水位センサを用いて入浴および退浴を正確に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態に係るふろ装置を含む給湯システムの概略構成図である。
【
図2】水位センサの検出値を用いた入退浴の検知を説明する概念図である。
【
図3】本実施の形態に係る入退浴判定を説明するための概念的な波形図である。
【
図4】本実施の形態に係る入浴判定処理を説明するためのフローチャートである。
【
図5】本実施の形態に係る退浴判定処理を説明するためのフローチャートである。
【
図6】本実施の形態に係る基準水位生成処理を説明するためのフローチャートである。
【
図7】本実施の形態に係る基準水位生成処理および入退浴判定処理の第1の実施例を説明するための概念的な波形図である。
【
図8】本実施の形態に係る基準水位生成処理および入退浴判定処理の第2の実施例を説明するための概念的な波形図である。
【
図9】本実施の形態に係る基準水位生成処理および入退浴判定処理の第3の実施例を説明するための概念的な波形図である。
【
図10】本実施の形態に係る基準水位生成処理および入退浴判定処理の第4の実施例を説明するための概念的な波形図である。
【
図11】浴槽の配置高さの分類を説明する概念図が示される。
【
図12】浴槽の配置高さに依存した水位検出値の変化を説明する概念図である。
【
図13】浴槽の配置高さに応じた入退浴判定および基準水位生成の選択処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では図中の同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は原則的に繰返さないものとする。
【0013】
(給湯システムの構成)
図1は、本実施の形態に係るふろ装置を含む給湯システムの概略構成図である。
【0014】
図1を参照して、給湯システム300は、給湯装置100を備える。給湯装置100は、給湯回路5、追焚回路7、循環路8、及び、コントローラ12を備える。給湯装置100は、図示しない給湯栓等に加えて、浴室200に設置された浴槽20を給湯先に含む。
【0015】
給湯回路5は、導入された低温水を加熱するための加熱機構(図示せず)を含むように構成される。加熱機構は、例えば、ガスや石油等の燃料の燃焼熱を用いる加熱、及び、発電時の排熱又はヒートポンプによる加熱の何れを利用する構成であってもよい。又、給湯回路5は、加熱された高温水がそのまま出湯される構成の他、加熱された高温水を貯留する貯湯式の構成であってもよい。
【0016】
給湯回路5は、加熱機構の作動により、ユーザによる設定温度に従う温水を出力することができる。一方で、当該加熱機構の停止時には、低温水が加熱されることなく給湯回路5から出力される。
【0017】
給湯回路5の出湯経路(図示せず)は、浴槽20へ至る注湯配管13aと接続される。注湯配管13aには、ふろ注湯弁13が介挿接続される。ふろ注湯弁13は、例えば、開閉制御可能な電磁弁によって構成することができる。ふろ注湯弁13を開放することにより、給湯回路5から注湯配管13aへ湯水が出力される経路を形成することができる。これにより、給湯装置100は、給湯栓等に加えて、給湯先に浴槽20を含むことができる。以下では、給湯回路5からの出力温度に関わらず、ふろ注湯弁13の開放により、湯又は水が、注湯配管13aを経由して浴槽20へ供給される動作を「注湯」と称する。注湯配管13aには、図示しない流量センサが設けられており、当該流量センサによって注湯流量を検出することができる。
【0018】
循環路8は、浴槽20の湯水21(以下、「浴槽水21」とも称する)を給湯装置100内で循環するためのものであり、戻り配管8a及び往き配管8bと、循環ポンプ10とを有する。戻り配管8aの一方端は、浴槽20内の循環アダプタ25と接続され、他端は、追焚回路7の入力側と接続される。往き配管8bの一端は、追焚回路7の出力側と接続され、他端は循環アダプタ25と接続される。
【0019】
循環ポンプ10の作動により、循環アダプタ25から吸入された浴槽水21が、戻り配管8a、追焚回路7、及び、往き配管8bを経由して、循環アダプタ25から吐出される経路(追焚循環経路)が形成される。追焚回路7は、ガスや石油等の燃料の燃焼熱を用いる加熱機構(図示せず)を含むように構成することができる。追焚回路7は、追焚循環経路の形成時に作動して、戻り配管8aから導入された浴槽水21を加熱して、往き配管8bに出力する。加熱後の浴槽水21が往き配管8bによって浴槽20へ供給されることにより、浴槽水21の温度を上昇する追焚運転を行うことができる。
【0020】
戻り配管8aには、温度センサ9及び水位センサ11が接続されている。温度センサ9により、浴槽水21の温度を検出することができる。温度センサ9は、例えば、サーミスタによって構成することができる。
【0021】
水位センサ11は、例えば、圧力センサによって構成されて、浴槽水21の水圧に基づいて、浴槽20内での浴槽水21の水位(以下、単に「浴槽水位」とも称する)を検知する。温度センサ9及び水位センサ11は、循環ポンプ10の停止時においても、戻り配管8a内で浴槽水21が浸入する領域に配置される。水位センサ11は、「水位検出器」の一実施例に対応する。
【0022】
戻り配管8aは、更に、接続点8cにおいて、注湯配管13aと接続される。この結果、循環ポンプ10の停止時に給湯装置100から注湯すると、注湯配管13aから、接続点8c及び戻り配管8aを経由して浴槽20へ至る第1の注湯経路と、注湯配管13aから、接続点8c、戻り配管8a、追焚回路7、及び、往き配管8bを経由して浴槽20へ至る第2の注湯経路とを形成することができる。これにより、給湯装置100からの注湯によるふろ湯張り運転を行うことができる。
【0023】
この様に、給湯装置100(注湯回路)からの湯水は、第1及び第2の注湯経路による、循環路8を含む注湯経路を介して、浴槽20へ供給される。浴槽20には、排水栓26が設けられる。
【0024】
コントローラ12は、例えば、マイクロコンピュータを含んで構成することができる。コントローラ12は、給湯回路5、追焚回路7、温度センサ9、循環ポンプ10、水位センサ11、及び、ふろ注湯弁13等と電気的に接続されている。コントローラ12は、図示しない電気配線を介して電源と接続されて、電力供給を受ける。コントローラ12は「制御装置」の一実施例に対応する。コントローラ12には、温度センサ9及び水位センサ11による検出値が入力される。
【0025】
更に、コントローラ12は、リモコン30及びリモコン50と通信可能に接続されている。尚、これらの機器間の通信は、公知のいかなる規格に従ったものであってもよく、又、有線であっても無線であってもよい。
【0026】
リモコン30は、浴室200の壁面に設置されており、給湯装置100を操作するためのものである。リモコン30は、情報を表示するための表示部31と、ユーザ等の入力設定操作を受け付けるための操作部32とを含む。表示部31は、代表的には、液晶パネルによって構成されており、浴槽水位及び温度を表示可能に構成されている。操作部32は、代表的には、プッシュボタンやタッチボタンによって構成されており、少なくとも、浴槽水位及び温度に関する設定操作を受け付け可能に構成されている。
【0027】
リモコン50は、浴室200の外部に設置されており、給湯装置100を操作するためのものである。リモコン50は、代表的には台所の壁面に設置されている。リモコン50は、情報を表示するための表示部51と、ユーザ等の入力設定操作を受け付けるための操作部52とを含む。
【0028】
表示部51は、代表的には、液晶パネルによって構成されており、給湯設定温度、及び、ふろ設定温度等を表示可能に構成されている。操作部52は、代表的には、プッシュボタンやタッチボタンによって構成されており、給湯装置100の運転に関する設定操作を受け付け可能に構成されている。
【0029】
コントローラ12は、リモコン30,50からのユーザ等の入力設定操作に基づき、給湯システム300がユーザ指示に従って運転されるように、給湯装置100の動作を制御する。コントローラ12は「制御部」の一実施例に対応する。
【0030】
当該制御の一例として、コントローラ12は、リモコン30,50の操作により、ふろ自動運転が指示されると、浴槽20への湯張り運転を実行する。当該湯張り運転は、給湯装置100からの注湯により、浴槽20において、浴槽水位が設定水位に達し、かつ、温度センサ9によって検出される浴槽水温度がふろ設定温度に達すると終了される。
【0031】
給湯システム300では、浴槽20への湯張り運転の終了後、給湯装置100によって浴槽水21の温度及び水位を維持する自動モードを設定することが可能である。当該自動モードの選択時には、温度センサ9によって検出された浴槽水温度が、ふろ設定温度に対応されて設定された基準温度(例えば、ふろ設定温度よりも2~3℃低く設定)よりも低下すると、保温制御のために追焚運転が自動的に起動される。更に、水位センサ11によって検出された浴槽水位が設定水位よりも低下すると、給湯装置100から浴槽20へ追加的に注湯する足し湯運転が起動される。
【0032】
(入退浴判定処理)
本実施の形態に係る給湯システムでは、浴槽20の水位センサ11の検出値を用いて、浴槽20への入退浴が検知される。
【0033】
図2には、水位センサの検出値を用いた入退浴の検知を説明する概念図が示される。
図2を参照して、浴槽20への湯張り運転の終了時には、水位センサ11によって検出される浴槽水位は、設定水位に達している。この状態が「退浴状態」として初期設定される。
【0034】
退浴状態において、水位上昇に関する予め定められた入浴判定条件が成立すると、退浴状態から入浴状態への遷移、即ち、入浴が検知される。これに対して、入浴状態において、水位低下に関する予め定められた退浴判定条件の成立が検知されると、入浴状態から退浴状態への遷移、即ち、退浴が検知される。
【0035】
図3には、本実施の形態に係る入退浴判定を説明するための概念的な波形図が示される。
【0036】
図3を参照して、浴槽20の水位検出値Xは、水位センサ11による各時点での出力値をそのまま用いてもよく、或いは、ローパスフィルタ等によって当該出力値からノイズ(高周波成分)を除去したものであってもよい。
【0037】
図3の例では、水位検出値Xは、時刻taでの入浴に応じて上昇した後、時刻tbにおいて、入浴者が体勢を変更したことによって低下する。例えば、時刻tbでは、段差付の浴槽20において、入浴者が半身浴のために段差部に腰掛けた動作を想定している。その後、時刻tcにおいて、入浴者が退浴することで、水位検出値Xは、さらに低下する。
【0038】
ここで、比較例として、一定時間間隔での水位変化量ΔXtnが、判定値Xthを超えて上昇した場合に、入浴判定条件が成立し、反対に、当該水位変化量ΔXtnが当該判定値Xthを超えて低下した場合に、退浴判定条件が成立するような入退浴判定を考える。
【0039】
当該比較例では、時刻taでの入浴に対応して、時刻t1又はそれ以降のタイミングで、入浴を検知することができる。一方で、時刻tbでの体勢変更に対応して、時刻t3において、ΔXtn<-Xthの成立に応じて、退浴を誤検知する虞がある。この場合には、時刻t3以降では退浴状態の判定が維持されることになり、正確な入浴時間(時刻ta~tc)を計測できないことが懸念される。一方で、入浴者の体格(体積)に依存して入浴の際に生じる水位上昇量も異なるため、退浴判定条件用の判定値をどの様に設定するかが問題となる。
【0040】
このような懸念点に対応するために、本実施の形態では、以下に説明するような入退浴判定を実行する。
【0041】
図4は、本実施の形態に係る入浴判定処理を説明するためのフローチャートであり、
図5は、本実施の形態に係る退浴判定処理を説明するためのフローチャートである。例えば、
図4及び
図5に示された各ステップの制御処理は、コントローラ12が予め格納されたプログラムを実行することで実現することができる。即ち、本実施の形態では、コントローラ12が「検知部」の一実施例に対応する。コントローラ12は、退浴状態では、
図4に示される制御処理を繰り返し実行する。
【0042】
図4を参照して、コントローラ12は、ステップ(以下、単に「S」と表記する)01では、基準水位Xrefを取得する。基準水位Xrefは、退浴状態において取得された水位検出値Xに基づいて生成される。
図4の例では、基準水位Xrefは、現在から所定のTx(秒)前に取得された水位検出値Xtxに設定されている(Xref=Xtx)。この基準水位Xrefの生成方法については後述する。
【0043】
コントローラ12は、S02では、給湯装置100がふろ動作中であるか否かを判定する。本明細書において「ふろ動作」は、循環ポンプ10の作動により追焚循環経路を形成する循環動作と、ふろ湯張り運転における注湯動作とを含む。循環動作には、追焚運転における循環動作以外に、例えば、ドレン排水後の配管洗浄運転およびエアパージ運転等における、追焚回路7内の加熱機構の燃焼を伴わない循環動作を含めることができる。ドレン排水後の配管洗浄運転は、ドレンタンク内のドレンを循環路8を経由して排水した後に、循環ポンプ10を作動させて循環路8に水を通流させることによって配管を洗浄する運転である。エアパージ運転は、循環路8内に浴槽水21を循環させることによって、循環路8内に混入した空気を除去する運転である。
【0044】
給湯装置100がふろ動作中である場合(S02のYES判定時)、コントローラ12は、S03以降の処理を行なわない。すなわち、コントローラ12は入浴判定処理を行なわない。これは、ふろ動作(循環動作又は注湯動作)の実行中は、循環路8内の浴槽水21が加圧されることによって水位センサ11による水位検出値Xが上限値Xmaxに張り付いてしまうため、正常に浴槽水位を検出できないことによる。
【0045】
一方、給湯装置100がふろ動作中でない場合(S02のNO判定時)、コントローラ12は、S03に進み、現在の水位検出値Xtnを取得して記憶する。これにより、各時点での水位検出値Xを、
図4の制御処理が実行される毎に周期的に蓄積することができる。尚、S03では、取得された水位検出値Xtnが上限値Xmaxと比較されて、Xtn≧Xmaxである場合には、センサ或いはマイクロコンピュータの誤動作、又は、配管でのエア抜け等による瞬間的な圧力変動によって、検出異常が発生したと判定される。この場合には、以降の処理において、入浴の検知が強制的に禁止される。
【0046】
コントローラ12は、S04では、S03で記憶した水位検出値XtnからS01で取得した基準水位Xrefを減算することにより、基準水位Xrefからの水位変化量ΔXtnを算出する(ΔXth=Xtn-Xref)。そして、S05では、S04で算出された水位変化量ΔXtnが上記判定値Xthと比較される。
【0047】
尚、判定値Xthは、所定体積(例えば、20[l]程度)の体積増減に対応する水位変化量として予め定めて、コントローラ12に記憶することができる。但し、判定値Xthは、浴槽20の断面積によって変わってくる。例えば、浴槽20の配設を含む給湯システム300の施工時において、浴槽20の機種番号又はサイズ(上記断面積を特定できるデータ)を施工者が入力することで、コントローラ12が、当該入力値を用いて、判定値Xthを算出し、かつ、記憶することが可能である。
【0048】
或いは、上記給湯システム300の施工時におけるふろ試運転時に試験的に実行されるふろ湯張り運転における水位検出値Xの挙動から、自動的に求めることも可能である。具体的には、
図1の注湯配管13aに設けられた流量センサ(図示せず)の検出値の積算によって算出される浴槽20への注湯水量と、水位検出値Xの変化量とを用いて、当該ふろ試運転時は、コントローラ12が予め定められた演算処理を実行することによって浴槽20の断面積を算出するとともに、算出された断面積から判定値Xthを自動的に設定することが可能である。
【0049】
コントローラ12は、S04で算出した水位変化量ΔXtnが判定値Xth未満であるとき(S05のNO判定時)には、S06により、タイマ値をクリア(Cnt=0)するとともに、S07により、退浴状態の判定を維持する。その後、周期的に設けられる次の起動タイミングが到来すると、再び、S01以降の処理が起動される。上述の様に、S03においてXtn≧Xmaxが成立した場合にも、S05はNO判定とされる。
【0050】
コントローラ12は、S04で算出した水位変化量ΔXtnが判定値Xth以上である場合(S05のYES判定時)には、S08により、タイマ値Cntをカウントアップするとともに、S09により、カウントアップ後のタイマ値Cntを判定値C(Tj1)と比較する。判定値C(Tj1)は、予め定められたTj1(秒)の経過に対応するタイマ値で定義される。
【0051】
コントローラ12は、S08のタイマ値Cntが判定値C(Tj1)より小さいときには(S09のNO判定時)、S06のスキップによりタイマ値Cntを維持した上で、S07により、退浴状態の判定を維持する。その後、次の起動タイミングが到来すると、再び、S01以降の処理が起動される。
【0052】
これに対して、コントローラ12は、S08のタイマ値Cntが判定値C(Tj1)以上であると(S09のYES判定時)、S10により、退浴状態から入浴状態への遷移が生じたと判定して、入浴を検知する。即ち、退浴状態では、基準水位Xrefからの水位上昇量ΔXtnが判定値Xthを超えた状態がTj1(秒)継続したときに、入浴が検知される。
【0053】
更に、コントローラ12は、S10による入浴の検知に連動して、S11により、退浴判定値Xoutを設定する。退浴判定値Xoutは、基準水位Xrefと、予め定められたマージン値α(例えば、α=Xth)との加算によって算出される。
図3の例では、入浴検知時点からTx(秒)前における水位検出値Xtnとαとの加算によって、退浴判定値Xoutを設定することができる。退浴判定値Xoutは、入浴検知前の水位検出値Xを基に生成された基準水位Xrefをベースに設定されるので、水位検出値の変化量と比較される相対値的な判定値ではなく、水位検出値と直接比較される、絶対的な判定値として取り扱うことができる。
【0054】
再び
図3を参照して、時刻t1において、ΔXtn≧Xthが検知された後、ΔXtn≧Xthの状態がTj1(秒)継続すると、時刻t2において、入浴が検知される。即ち、時刻t2において、退浴状態から入浴状態への遷移が判定される。
【0055】
Tj1(秒)に亘る継続判定により、瞬間的な水位変化によって入浴を誤検知することが防止できる。尚、上述の様に、S01で、現在から所定のTx(秒)前に取得された水位検出値Xtxを基準水位Xrefとして用いる場合には、当該継続判定のためのTj1(秒)と、入浴判定の際のTx(秒)との間には、Tx>Tj1の関係が設定される。
【0056】
コントローラ12は、入浴検知後の入浴状態では、
図5に示される制御処理を繰り返し実行する。
【0057】
図5を参照して、コントローラ12は、S20により、給湯装置100がふろ動作中であるか否かを判定する。給湯装置100がふろ動作中である場合(S20のYES判定時)、コントローラ12は、S21以降の処理を行なわない。すなわち、コントローラ12は退浴判定処理を行なわない。
【0058】
一方、給湯装置100がふろ動作中でない場合(S20のNO判定時)、コントローラ12は、S21により、現在の水位検出値Xtnを記憶すると、S22により、現在の水位検出値Xtnを入浴検知時に設定された退浴判定値Xoutと比較する。
【0059】
コントローラ12は、現在の水位検出値Xtnが退浴判定値Xout以上のとき(S22のNO判定時)には、S23により、タイマ値をクリア(Cnt=0)とするとともに、S24により、入浴状態の判定を維持する。その後、周期的に設けられる次の起動タイミングが到来すると、再び、S20以降の処理が起動される。
【0060】
コントローラ12は、現在の水位検出値Xtnが退浴判定値Xoutよりも小さいとき(S22のYES判定時)には、S25によりタイマ値Cntをカウントアップするとともに、S26により、カウントアップ後のタイマ値Cntを判定値C(Tj2)と比較する。判定値C(Tj2)は、予め定められたTj2(秒)が経過する間に増加するタイマ値Cntで定義される。Tj2は、入浴判定時のTj1と共通の値でもよく、個別に設定してもよい。
【0061】
コントローラ12は、S25のタイマ値Cntが判定値C(Tj2)より小さいときには(S26のNO判定時)、S23のスキップによりタイマ値Cntを維持した上で、S24により、入浴状態の判定を維持する。その後、起動タイミングが到来すると、再び、S21以降の処理が起動される。
【0062】
これに対して、コントローラ12は、S25のタイマ値Cntが判定値C(Tj2)以上であると(S26のYES判定時)、S27により、入浴状態から退浴状態への遷移が生じたと判定して、退浴を検知する。即ち、入浴状態において、現在の水位検出値Xtnが退浴判定値Xoutよりも低い状態がTj2(秒)継続したときに、退浴が検知される。Tj2(秒)に亘る継続判定により、瞬間的な水位変化によって退浴を誤検知することが防止できる。
【0063】
再び
図3を参照して、時刻tbでの入浴者の体勢変更によって、時刻t3では、判定値Xthを超えた水位検出値の低下が生じる。このため、上述した比較例の退浴判定では、時刻t3において、点線で表記するような退浴の誤検出が発生する虞がある。
【0064】
しかしながら、時刻tbでの体勢変更によって生じる浴槽水位の変化では、水位検出値Xtnは、入浴前での水位検出値をベースに設定された退浴判定値Xoutまでは低下しない。従って、
図5に示した退浴判定では、入浴者が浴槽内で体勢を変更した際に生じる浴槽水位の変化によって、退浴が誤検出されることを防止できる。
【0065】
(基準水位生成処理)
次に、本実施の形態に係る入退浴判定処理に用いられる基準水位Xrefの生成処理について説明する。
【0066】
上述の様に、基準水位Xrefは、入浴前の水位検出値Xに基づいて生成される。したがって、入浴前のどのタイミングでの水位検出値を用いるかによって基準水位Xrefが異なってくる。この水位検出値を取得するタイミングを誤ると、入退浴を誤検知する虞がある。
【0067】
例えば、退浴状態において、基準水位Xrefを生成した後に、浴槽20内へ追加的に注湯する足し湯または、浴槽20から湯水を汲み出す汲み湯がなされた場合には、入浴直前の水位が基準水位Xrefとは異なるため、入浴による水位上昇と、算出した水位上昇量ΔXtnとの間にずれが生じてしまい、入浴を誤検知する可能性がある。さらに、この基準水位Xrefに基づいて退浴判定値Xoutが設定されることによって、退浴を誤検知する可能性がある。
【0068】
そこで、本実施の形態では、基準水位Xrefを、現在から所定のTx(秒)前に取得された水位検出値Xtxに従って定期的に更新する。なお、Tx(秒)は、Tj1(秒)およびTj2(秒)よりも長くなるように設定される(Tx>Tj1,Tj2)。入浴判定処理および退浴判定処理の実行中に基準水位Xrefが更新されることを防ぐためである。
【0069】
これによると、Tx(秒)前の水位検出値Xtxの変化に追従するように基準水位Xrefも変化するため、入浴前の浴槽水位の変化を基準水位Xrefに反映させることができる。ただし、入浴状態における水位検出値および、正常に浴槽水位を検出できない状態での水位検出値を用いて基準水位Xrefが生成されることがないように、基準水位Xrefを更新するタイミングを管理する必要がある。
【0070】
図6は、本実施の形態に係る基準水位生成処理を説明するためのフローチャートである。例えば、
図6に示された各ステップの制御処理は、コントローラ12が予め格納されたプログラムを実行することで実現することができる。コントローラ12は、
図4に示される入浴判定処理に並行して、
図6に示される制御処理を繰り返し実行する。即ち、本実施の形態では、コントローラ12が「生成部」の一実施例に対応する。
【0071】
図6を参照して、コントローラ12は、S31では、浴槽20が退浴状態であるか否かを判定する。浴槽20が退浴状態でない場合(S31のNO判定時)、すなわち浴槽20が入浴状態である場合には、コントローラ12は、S37により、基準水位Xrefを更新しないこととする。よって、基準水位Xrefは現在の基準水位Xrefに維持される。
【0072】
S31にて浴槽20が退浴状態である場合(S31のYES判定時)には、コントローラ12は、S32により、給湯装置100が省電力状態であるか否かを判定する。給湯装置100は、通常状態と、通常状態よりも供給電力が小さい省電力状態との間で相互に遷移可能に構成されている。例えば、通常状態において、給湯運転の停止状態が予め定められた閾値時間継続した場合、もしくは浴室200内に設置された人感センサ(図示せず)により浴室200内に人の存在が検知されない状態が閾値時間継続した場合、給湯装置100が省電力状態に遷移する。
【0073】
省電力状態では、通常状態に比べて、給湯装置100の各部(水位センサ11を含む)に供給する電源電圧が低く抑えられる。この電源電圧の低下に起因して、水位センサ11では、水位検知範囲の上限値が、通常状態における上限値よりも低くなる。その結果、水位センサ11は、当該上限値を超える浴槽水位を検出できなくなる。
【0074】
そこで、S32にて給湯装置100が省電力状態である場合(S32のYES判定時)、コントローラ12は、S37により、基準水位Xrefを更新しない。よって、基準水位Xrefは現在の基準水位Xrefに維持される。
【0075】
給湯装置100が省電力状態でない、すなわち通常状態である場合(S32のNO判定時)、コントローラ12は、S33により、給湯装置100がふろ動作中であるか否かを判定する。上述の様に、ふろ動作は注湯動作及び循環動作を含む。給湯装置100がふろ動作中である場合(S33のYES判定時)、コントローラ12は、S37により、基準水位Xrefを更新しない。よって、基準水位Xrefは現在の基準水位Xrefに維持される。
【0076】
給湯システム300がふろ動作中でない場合(S32のYES判定時)、コントローラ12は、S34に進み、現在からTx(秒)前の水位検出値Xtxが存在するかを判定する。S34では、現在からTx(秒)前の水位検出値Xtxが、入浴状態、省電力状態およびふろ動作中のいずれかにおいて取得された水位検出値でないことが判定される。言い換えれば、Tx(秒)前の水位検出値Xtxが、退浴状態において水位センサ11により正常に取得された水位検出値であるかが判定される。
【0077】
現在からTx(秒)前の水位検出値Xtxが存在する場合(S34のYES判定時)、S35では、コントローラ12は、Tx(秒)前の水位検出値Xtxを読み出す。この際に、既に蓄積されている水位検出値Xの一部を削除することで、入退浴判定に使用するメモリ容量を抑制することができる。
【0078】
コントローラ12は、S36では、S35で読み出した水位検出値Xtxを基準水位Xrefに設定することにより、基準水位Xrefを更新する。
【0079】
以上説明したように、本実施の形態に係る入退浴判定によれば、入浴検知時に、入浴前の水位検出値である基準水位Xrefをベースとして退浴判定値が設定され、かつ、退浴判定値と、入浴検知後の各時点での水位検出値との比較によって、退浴判定を行うことができる。これにより、入浴者の体格(体積)に左右されずに、正確に退浴を判定することができる。
【0080】
基準水位Xrefは、退浴状態において、現在から予め定められた所定時間T(x)前に取得された水位検出値に従って定期的に更新されるため、入浴の際に生じる水位上昇量を正確に算出することができる。したがって、入浴を正確に検知することができる。
【0081】
また、入浴が検知されると、基準水位Xrefは、入浴検知時から所定時間T(x)前の水位検出値にて更新が停止されるため、入浴前の水位検出値に基づいて退浴判定値を設定することができる。これによると、退浴を正確に検知することができる。
【0082】
なお、本実施の形態での説明において、Tx(秒)は予め定められた「所定時間」に対応し、退浴判定値Xoutは「退浴判定水位」に対応する。また、Tj1(秒)及びTj2(秒)は、予め定められた「第1の時間」及び「第2の時間」にそれぞれ対応する。
【0083】
(実施例)
以下では、本実施の形態に係る基準水位生成処理を用いた入退浴判定処理を実施例を挙げて説明する。
【0084】
図7は、本実施の形態に係る基準水位生成処理および入退浴判定処理の第1の実施例を説明するための概念的な波形図である。
図7には、水位検出値Xの波形(実線)とともに基準水位Xrefの波形(破線)が示されている。
【0085】
図7の例では、水位検出値Xは、時刻taでの入浴に応じて上昇した後、時刻tcにおいて、入浴者が退浴することで低下する。なお、退浴状態および入浴状態のいずれにおいてもふろ動作(注湯動作及び循環動作)は行われていない。
【0086】
基準水位Xrefは、退浴状態において、現在からTx(秒)前における水位検出値Xtxに従って定期的に更新される。時刻t3において入浴が検知されると、
図6のS31にてNO判定とされ、基準水位Xrefの更新が停止される(S37)。このときの基準水位Xrefは、更新停止時点である時刻t3からTx(秒)前の時刻t1における水位検出値Xtxである。したがって、入浴の検知に連動して、時刻t1における水位検出値Xtxとマージン値αとの加算によって、退浴判定値Xoutが設定される。
【0087】
時刻t3以降の入浴状態において、基準水位Xrefは更新されない(S37)。よって、基準水位Xrefは、時刻t1の水位検出値Xtxに維持される。
【0088】
時刻t6にて退浴が検知されると、S31にてYES判定とされ、基準水位Xrefの更新が再開される(S36)。ただし、退浴検知時点である時刻t6では、Tx(秒)前の水位検出値Xtx(退浴状態で取得された水位検出値)が存在しないため(S34のNO判定時)、基準水位Xrefは更新されない(S37)。
【0089】
退浴検知時点(時刻t6)からTx(秒)が経過した時刻t7において、Tx(秒)前の水位検出値Xtxが存在すると判定されると(S34のYES判定時)、基準水位Xrefの更新が再開される。基準水位Xrefは、時刻t7からTx(秒)遡った時点(時刻t6)における水位検出値Xtxに更新される。
【0090】
第1の実施例においては、退浴状態において、現在からTx(秒)前における水位検出値Xtxに従って基準水位Xrefは常時更新される。これによると、基準水位Xrefには実際の浴槽水位の変化が反映されるため、入浴による水位上昇量ΔXtnを正確に算出することができる。したがって、入浴を正確に検知することができる。
【0091】
また、入浴が検知されると、基準水位Xrefは、入浴検知時からT(x)前の水位検出値Xtxにて更新が停止される。すなわち、入浴検知前の水位検出値Xtxに基づいて退浴判定値Xoutが設定される。これによると、退浴を正確に検知することができる。
【0092】
さらに、退浴の検知時からTx(秒)経過したときに基準水位Xrefの更新が再開される。これによると、入浴状態における水位検出値Xtxに従って基準水位Xrefが更新されることを防ぐことができる。
【0093】
図8は、本実施の形態に係る基準水位生成処理および入退浴判定処理の第2の実施例を説明するための概念的な波形図である。
図8には、水位検出値Xの波形とともに基準水位Xrefの波形が示されている。
【0094】
図8の例では、水位検出値Xは、入退浴に応じた変化がない一方で、時刻t12~t13の期間にふろ動作(循環動作)が実行されたことによって、一時的に上限値Xmaxに張り付いており、実際の浴槽水位(以下、「実水位」とも称する)とは乖離している。
【0095】
基準水位Xrefは、退浴状態において、ふろ動作中でないときには、現在からTx(秒)前における水位検出値Xtxに従って定期的に更新される。時刻t12においてふろ動作(循環動作)が開始されると、
図6のS33にてNO判定とされ、基準水位Xrefの更新が停止される(S37)。このときの基準水位Xrefは、更新停止時点である時刻t12からTx(秒)前の時刻t11における水位検出値Xtxである。
【0096】
時刻t12以降のふろ動作中において、基準水位Xrefは更新されない(S37)。よって、基準水位Xrefは、時刻t11の水位検出値Xtxに維持される。
【0097】
時刻t13にてふろ動作が終了すると、S33にてNO判定とされ、基準水位Xrefの更新が再開される(S36)。ただし、ふろ動作の終了時点である時刻t13では、Tx(秒)前の水位検出値Xtx(退浴状態で正常に取得された水位検出値)が存在しないため(S34のNO判定)、基準水位Xrefは更新されない(S37)。
【0098】
ふろ動作の終了時点(時刻t13)からTx(秒)が経過した時刻t14において、Tx(秒)前の水位検出値Xtxが存在すると判定されると(S34のYES判定時)、基準水位Xrefの更新が再開される。基準水位Xrefは、時刻t14からTx(秒)遡った時点(時刻t13)における水位検出値Xtxに更新される。
【0099】
第2の実施例においては、ふろ動作開始時からTx(秒)前の水位検出値Xtxにて基準水位Xrefの更新が停止され、ふろ動作中は基準水位Xrefが更新されないため、誤差を含んだ水位検出値を用いて基準水位Xrefが生成されることを防ぐことができる。また、ふろ動作の終了時からTx(秒)経過したときに基準水位Xrefの更新が再開される。これによると、ふろ動作中の水位検出値Xtxに従って基準水位Xrefが更新されることを防ぐことができる。よって、入浴および退浴を正確に検知することが可能となる。
【0100】
図9は、本実施の形態に係る基準水位生成処理および入退浴判定処理の第3の実施例を説明するための概念的な波形図である。
図9には、水位検出値Xの波形とともに基準水位Xrefの波形が示されている。
【0101】
図9の例では、水位検出値Xは、時刻t12~t13の期間にふろ動作(循環動作)が実行されたことによって、一時的に上限値Xmaxに張り付いている。ただし、このふろ動作中の時刻taでの入浴に応じて、実水位は上昇する。ふろ動作が終了した後、時刻tcにおいて入浴者が退浴することで、水位検出値Xは低下する。
【0102】
基準水位Xrefは、退浴状態において、ふろ動作中でないときには、現在からTx(秒)前における水位検出値Xtxに従って定期的に更新される。時刻t12においてふろ動作(循環動作)が開始されると、
図6のS33にてNO判定とされ、基準水位Xrefの更新が停止される(S37)。このときの基準水位Xrefは、更新停止時点である時刻t12からTx(秒)前の時刻t11における水位検出値Xtxである。
【0103】
時刻t12以降のふろ動作中において、基準水位Xrefは更新されない。よって、基準水位Xrefは、時刻t11の水位検出値Xtxに維持される。
【0104】
時刻t13にてふろ動作が終了すると、正常な水位検出値を取得可能となるため、コントローラ12は、現在の水位検出値Xtnおよび基準水位Xref(時刻t11における水位検出値Xtx)に基づいて、入浴判定処理(
図4)を実行する。基準水位Xrefに対する水位変化量ΔXtnが判定値Xth以上である状態がTj1(秒)継続した時刻t15において、入浴が検知される。コントローラ12は、入浴の検知に連動して、基準水位Xref(時刻t11における水位検出値Xtx)とマージン値αとの加算によって、退浴判定値Xoutを設定する。なお、Tj1<Txであるため、時刻t13~t15の間に基準水位Xrefが更新されることはない。
【0105】
時刻t15において入浴が検知されると、
図6のS31にてNO判定とされるため、基準水位Xrefの更新停止が継続される(S37)。よって、時刻t15以降の入浴状態において、基準水位Xrefは更新されない。よって、基準水位Xrefは、時刻t11の水位検出値Xtxに維持される。
【0106】
時刻t17にて退浴が検知されると、S31にてYES判定とされ、基準水位Xrefの更新が再開される(S36)。ただし、退浴検知時点である時刻t17では、Tx(秒)前の水位検出値Xtx(退浴状態で取得された水位検出値)が存在しないため(S34のNO判定)、基準水位Xrefは更新されない(S37)。
【0107】
退浴検知時点(時刻t17)からTx(秒)が経過した時刻t18において、Tx(秒)前の水位検出値Xtxが存在すると判定されると(S34のYES判定時)、基準水位Xrefの更新が再開される。基準水位Xrefは、時刻t18からTx(秒)遡った時点(時刻t17)における水位検出値Xtxに更新される。
【0108】
第3の実施例においては、ふろ動作中は基準水位Xrefの更新が停止され、ふろ動作前の水位検出値が基準水位Xrefとされる。これによると、誤差を含んだ水位検出値を用いて基準水位Xrefが生成されることを防止できるため、入浴を正確に検知することができる。
【0109】
図10は、本実施の形態に係る基準水位生成処理および入退浴判定処理の第4の実施例を説明するための概念的な波形図である。
図10には、水位検出値Xの波形とともに基準水位Xrefの波形が示されている。
【0110】
図10の例では、水位検出値Xは、時刻taでの入浴に応じて上昇した後、時刻t12~t13の期間ふろ動作(循環動作)が実行されたことによって、一時的に上限値Xmaxに張り付いている。ただし、このふろ動作中の時刻tcでの入浴に応じて、実水位は低下する。
【0111】
基準水位Xrefは、退浴状態において、ふろ動作中でないときには、現在からTx(秒)前における水位検出値Xtxに従って定期的に更新される。時刻t3において入浴が検知されると、
図6のS31にてNO判定とされ、基準水位Xrefの更新が停止される(S37)。このときの基準水位Xrefは、更新停止時点である時刻t3からTx(秒)前の時刻t1における水位検出値Xtxである。したがって、入浴の検知に連動して、時刻t1における水位検出値Xtxとマージン値αとの加算によって、退浴判定値Xoutが設定される。
【0112】
時刻t3以降の入浴状態において、基準水位Xrefは更新されない。よって、基準水位Xrefは、時刻t1の水位検出値Xtxに維持される。さらに、時刻t12においてふろ動作(循環動作)が開始されると、
図6のS33にてNO判定とされ、基準水位Xrefの更新停止が継続される(S37)。よって、時刻t12以降のふろ動作中においても、基準水位Xrefは、時刻t1の水位検出値Xtxに維持される。
【0113】
時刻t13にてふろ動作が終了すると、正常な水位検出値を取得可能となるため、コントローラ12は、現在の水位検出値Xtnと、基準水位Xref(時刻t1における水位検出値Xtx)に基づいて設定された退浴判定値Xoutとを比較し、退浴判定処理(
図5)を実行する。現在の水位検出値Xtnが退浴判定値Xoutを超えた状態がTj2(秒)継続した時刻t19において、退浴が検知されると、S31にてYES判定とされ、基準水位Xrefの更新が再開される(S36)。ただし、退浴検知時点である時刻t19では、Tx(秒)前の水位検出値Xtx(退浴状態で正常に取得された水位検出値)が存在しないため(S34のNO判定時)、基準水位Xrefは更新されない(S37)。
【0114】
退浴検知時点(時刻t19)からTx(秒)が経過した時刻t20において、Tx(秒)前の水位検出値Xtxが存在すると判定されると(S34のYES判定時)、基準水位Xrefの更新が再開される。基準水位Xrefは、時刻t20からTx(秒)遡った時点(時刻t19)における水位検出値Xtxに更新される。
【0115】
第4の実施例によれば、入浴状態およびふろ動作(循環動作)中は基準水位Xrefの更新が停止されるため、入浴検知前の水位検出値が基準水位Xrefとされて退浴判定値Xoutが設定される。これによると、入浴検知前の誤差を含まない水位検出値を用いて基準水位Xrefが生成されるため、退浴を正確に検知することができる。
【0116】
尚、本実施の形態の退浴判定では、退浴判定値Xoutが、入浴状態の各時点での水位検出値Xtnと直接比較されるので、水位センサ11による水位検出値Xtnの精度が必要とされる。一方で、浴槽20及び水位センサ11の間で配置高さの差が大きいと、浴槽20及び水位センサ11間の湯水の温度変化によって水位センサ11による水位検出値が変化する。
【0117】
図11には、浴槽の配置高さの分類を説明する概念図が示される。
図11を参照して、給湯装置100内での水位センサ11の配置高さを基準高さ(H=0)とすると、浴槽20の配置高さは、当該基準高さに対する
図1に示された循環アダプタ25の配置高さの差である高さ差ΔHで定義することができる。
【0118】
例えば、
図11に示す様に、高さ差ΔHと、予め定められた境界値H1,-H2との比較により、屋外で地上配置される給湯装置100(水位センサ11)に対する浴槽20の配置高さを、2階以上への配置に対応する「階上配置」、1階への配置に対応する「平地配置」、及び、地階への配置に対応する「階下配置」に層別することができる。
【0119】
図12には、浴槽の配置高さに依存した水位検出値の変化を説明する概念図が示される。
図12には、ふろ湯張り運転の完了後、時間経過に応じて、浴槽20(循環アダプタ25)及び水位センサ11の間に滞留する湯水の温度が徐々に低下する際の、圧力センサで構成された水位センサ11の出力電圧(即ち、水位検出値)の推移が示される。
【0120】
図12を参照して、時間経過に応じて上記滞留湯水の温度Tbtが低下するのに応じて、当該滞留湯水の比重が徐々に増加する。水位センサ11よりも高い位置に浴槽20が配置されたケース(階上配置)では、比重の増加が水圧上昇として水位センサ11に作用する。従って、特性線L1に示される様に、温度低下に応じて、水位センサ11の水位検出値が徐々に上昇する。
【0121】
これに対して、水位センサ11よりも低い位置に浴槽20が配置されたケース(階下位置)では、比重の増加が水圧低下として水位センサ11に作用する。従って、特性線L2に示される様に、温度低下に応じて、水位センサ11の水位検出値が徐々に低下する。一方で、水位センサ11と浴槽20との配置高さの差が小さいケース(平地配置)では、滞留湯水の温度に依存して、水位センサ11の水位検出値が上昇又は低下する現象は生じない。
【0122】
この様に、階上配置及び階下配置の場合には、水位センサ11による水位検出値には、湯水の温度変化に起因する誤差が含まれる虞があるので、本実施の形態で説明した、水位検出値Xtnそのものが退浴判定値Xoutと比較される退浴判定では、退浴の誤検知の可能性が生じる。したがって、本実施の形態に係る入退浴判定は、水位センサ11及び浴槽20の配置高さの差が小さいケース(平地配置)において適用することが好ましい。
【0123】
また、第3実施例(
図9)で示したように、本実施の形態の基準水位生成処理では、ふろ動作中は基準水位Xrefの更新を停止するため、ふろ動作の終了後における入浴判定処理では、ふろ動作前に更新された基準水位Xrefに対する水位変化量ΔXtnに基づいて、退浴状態から入浴状態への遷移が判定される。さらに、ふろ動作前に更新された基準水位Xrefに基づいて設定された退浴判定値Xoutを用いて、入浴状態から退浴状態への遷移が判定される。
【0124】
ここで、ふろ動作として追焚運転が実行された場合には、ふろ動作中に浴槽水21の温度が上昇する。そのため、階上配置及び階下配置の場合には、この温度上昇に応じて、水位センサ11の水位検出値が上昇または低下する現象が生じてしまう。この温度上昇による水位検出値の変化に起因して、追焚運転の完了後に入浴および退浴の誤検知の可能性が生じる。したがって、本実施の形態に係る基準水位生成は、水位センサ11及び浴槽20の配置高さの差が小さいケース(平地配置)において適用することが好ましい。
【0125】
図13には、浴槽20の配置高さに応じた入退浴判定および基準水位生成の選択処理を説明するフローチャートが示される。
図12に示される制御処理は、例えば、上述した、浴槽20の配設を含む給湯システム300の施工時におけるふろ試運転時に実行することができる。
【0126】
図13を参照して、コントローラ12は、S41により、浴槽20の配置高さが、
図10で説明した、平地配置、階上配置、及び、階下配置のいずれであるかを示す情報を取得する。例えば、当該情報は、施工者によるコード入力等によって取得することができる。或いは、浴槽20への湯張り動作時における水位センサ11のオフセット電圧の調整に伴って、水位センサ11に対する浴槽20の配置高さを自動的に検知することも可能である。即ち、上記ふろ試運転時に試験的に実行されるふろ湯張り運転の際に、浴槽20の配置高さを示す情報を自動的に取得することも可能である。この様に、S41での情報の取得は任意の手法で行うことができる。
【0127】
コントローラ12は、S42では、S41で取得した情報に基づき、浴槽20が平地配置されているか否かを判定する。コントローラ12は、平地配置の場合(S42のYES判定時)には、S43により、当該試運転以降では本実施の形態に係る基準水位生成を用いて基準水位Xrefを生成するとともに、本実施の形態に係る入退浴判定を用いて浴槽20への入退浴を判定するように初期設定を行う。
【0128】
これに対して、コントローラ12は、階上配置又は階下配置であり、平地配置でない場合(S42のNO判定時)には、S44により、当該試運転以降では比較例に係る入退浴判定を用いて、浴槽20への入退浴を判定するように初期設定を行う。
【0129】
これにより、浴槽20及び水位センサ11の配置高さ差に起因して、入退浴判定の精度が低下することを防止できる。
【0130】
尚、上述した実施の形態では、
図4、
図5、
図6及び
図12に示した制御処理については、コントローラ12で実行される例を説明したが、当該制御処理を実行する主体はこれに限定されるものではない。例えば、リモコン30又は50に格納されたマイクロコンピュータ(図示せず)によって当該制御処理を実行することも可能であり、「制御装置」に対応する機器は特定されるものではない。「制御装置」の機能は、給湯システム300の外部機器によって実現することも可能である。
【0131】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0132】
5 給湯回路、7 追焚回路、8 循環路、10 循環ポンプ、11 水位センサ、12 コントローラ、20 浴槽、21 浴槽水、25 循環アダプタ、100 給湯装置、200 浴室、300 給湯システム、Xref 基準水位、Xout 退浴判定値。