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特許7436857導電性シリコーン組成物およびその硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】導電性シリコーン組成物およびその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20240215BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20240215BHJP
   C08K 5/5435 20060101ALI20240215BHJP
   C08K 3/01 20180101ALI20240215BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08K5/5435
C08K3/01
H01B1/22 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020519547
(86)(22)【出願日】2019-04-24
(86)【国際出願番号】 JP2019017495
(87)【国際公開番号】W WO2019220902
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2022-02-28
(31)【優先権主張番号】P 2018093517
(32)【優先日】2018-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000132404
【氏名又は名称】株式会社スリーボンド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 悟
(72)【発明者】
【氏名】真舩 仁志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 崇史
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-060625(JP,A)
【文献】特開平07-150048(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105315677(CN,A)
【文献】特開2011-201934(JP,A)
【文献】特開2014-063989(JP,A)
【文献】国際公開第2007/032481(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)~(F)成分を含有し、前記(A)成分100質量部に対して(D)成分を10質量部以上50質量部未満含む導電性シリコーン組成物:
(A)成分:分子中、両末端にアルケニル基を有するポリオルガノシロキサン
(B)成分:ヒドロシリル基を有する化合物
(C)成分:ヒドロシリル化触媒
(D)成分:エポキシ基とアルコキシシリル基とを有するシラン化合物
(E)成分:導電性粉体
(F)成分:反応速度調節剤;
前記(B)成分は、下記式(1)で表される構成単位を有する化合物であり、
【化1】

前記(F)成分は、マレイン酸ジメチルである。
【請求項2】
前記(D)成分のアルコキシシリル基がエトキシシリル基であることを特徴とする請求項1に記載の導電性シリコーン組成物。
【請求項3】
前記(D)成分が、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランまたは3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを含む、請求項1または2に記載の導電性シリコーン組成物。
【請求項4】
導電性シリコーン組成物全体に対して、前記(E)成分を5~95質量%の範囲で含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の導電性シリコーン組成物。
【請求項5】
前記(E)成分が、球状であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の導電性シリコーン組成物。
【請求項6】
25℃で液状であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の導電性シリコーン組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の導電性シリコーン組成物を硬化してなる硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性シリコーン組成物およびその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、導電性接着剤は多機能携帯電話端末、パソコン、太陽電池などの電子部品関連に使用されることが多くなってきている。中でも、導電性シリコーン組成物は高信頼性、高伸張性という点で優れているため多用されている。
【発明の概要】
【0003】
特開2006-335926号公報(米国特許出願公開第2006/0276584号明細書に相当)には1分子中に平均2個以上のアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン、接着性向上剤、硬化剤、および金属被覆導電粒子を含む導電性シリコーン組成物が開示されている。しかしながら、特開2006-335926号公報(米国特許出願公開第2006/0276584号明細書に相当)の段落0059によれば180℃の加熱をしないと信頼性の高い硬化物が得られなかった旨、開示されている。前記180℃の温度はあまりにも高温条件であるため、熱により劣化しやすい液晶画像表示素子、有機EL素子、太陽電池素子周辺などの用途への適用が難しいという問題があった。
【0004】
本発明は、上記の状況に鑑みてされたものであり、低温短時間で硬化するとともに優れた導電性を有する硬化物が得られる導電性シリコーン組成物を目的とする。
【0005】
本発明の要旨を次に説明する。
【0006】
[1] 下記の(A)~(E)成分を含有し、前記(A)成分100質量部に対して(D)成分を10質量部以上100質量部未満含む導電性シリコーン組成物:
(A)成分:分子中にアルケニル基を1以上有するポリオルガノシロキサン
(B)成分:ヒドロシリル基を有する化合物
(C)成分:ヒドロシリル化触媒
(D)成分:エポキシ基とアルコキシシリル基とを有するシラン化合物
(E)成分:導電性粉体。
【0007】
[2] 前記(D)成分のアルコキシシリル基がエトキシシリル基であることを特徴とする[1]に記載の導電性シリコーン組成物。
【0008】
[3] 導電性シリコーン組成物全体に対して、前記(E)成分を5~95質量%の範囲で含むことを特徴とする[1]または[2]に記載の導電性シリコーン組成物。
【0009】
[4] 前記(B)成分が、ポリオルガノシロキサン構造を有することを特徴とする[1]~[3]のいずれか1項に記載の導電性シリコーン組成物。
【0010】
[5] 前記(B)成分が、ヒドロシリル基と分岐状ポリオルガノシロキサン構造とを含有する化合物であることを特徴とする[1]~[4]のいずれか1項に記載の導電性シリコーン組成物。
【0011】
[6] 前記(E)成分が、球状であることを特徴とする[1]~[5]のいずれか1項に記載の導電性シリコーン組成物。
【0012】
[7] 25℃で液状であることを特徴とする[1]~[6]のいずれか1項に記載の導電性シリコーン組成物。
【0013】
[8] さらに、(F)成分として反応速度調節剤を含むことを特徴とする[1]~[7]のいずれか1項に記載の導電性シリコーン組成物。
【0014】
[9] [1]~[8]のいずれか1項に記載の導電性シリコーン組成物を硬化してなる硬化物。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に発明の詳細を説明する。
【0016】
本発明の導電性シリコーン組成物は、下記の(A)~(E)成分を含有し、前記(A)成分100質量部に対して(D)成分を10質量部以上100質量部未満含む:
(A)成分:分子中にアルケニル基を1以上有するポリオルガノシロキサン
(B)成分:ヒドロシリル基を有する化合物
(C)成分:ヒドロシリル化触媒
(D)成分:エポキシ基とアルコキシシリル基を有するシラン化合物
(E)成分:導電性粉体。
【0017】
本発明は、低温短時間で硬化するとともに優れた導電性を有する硬化物が得られる導電性シリコーン組成物を提供するものである。
【0018】
<(A)成分>
本発明の(A)成分は、分子中にアルケニル基を1以上有するポリオルガノシロキサンであれば特に制限されない。(A)成分のアルケニル基の結合位置は限定されず、例えば、分子鎖末端、分子鎖側鎖が挙げられる。(A)成分の分子構造は、実質的に直線状であるが、一部に分岐構造があってもよい。このような(A)成分としては、例えば、分子鎖両末端ビニル基封鎖ポリジメチルシロキサン;分子鎖末端ビニル基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体;分子鎖両末端ビニル基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体;分子鎖片末端がビニル基で封鎖され、もう一方の分子鎖片末端がトリメトキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサン;分子鎖片末端がビニル基で封鎖され、もう一方の分子鎖片末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサン;分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体;分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体が挙げられる。これらの中でも、低温短時間で硬化するとともに優れた導電性を有する硬化物が得られることから分子鎖両末端ビニル基封鎖ポリジメチルシロキサンが好ましい。これらは単独で1種のみで用いられてもよく、または2種以上併用されてもよい。
【0019】
前記(A)成分の25℃における粘度は、3mPa・s(3センチポイズ)以上15万mPa・s(15万センチポイズ)未満が好ましく、より好ましくは50mPa・s(50センチポイズ)以上10万mPa・s(10万センチポイズ)未満であり、特に好ましくは300mPa・s(300センチポイズ)以上7万mPa・s(7万センチポイズ)未満である。前記(A)成分の25℃における粘度が上記の範囲内であることで低温硬化性を有することに加えて、取り扱い性と耐折り曲げ性が優れる。(A)成分のビニル当量は、0.016Eq/kg以上5Eq/kg以下が好ましく、より好ましくは0.030Eq/kg以上1Eq/kg以下の範囲である。(A)成分のビニル当量が上記の範囲内であることで低温硬化性を有することに加えて、取り扱い性と耐折り曲げ性が優れる。(A)成分の25℃における粘度は、コーンプレート型粘度計を用いて測定する。(A)成分のビニル当量は、Wijs法によって決定する。具体的には、炭素二重結合を一塩化ヨウ素(過剰量)と反応させ、その後、過剰な一塩化ヨウ素をヨウ化カリウムと反応させ、遊離するヨウ素をチオ硫酸ナトリウム水溶液にて終点まで滴定し消費されたヨウ素量からビニル当量を算出する。
【0020】
前記(A)成分の重量平均分子量は、700以上15万未満が好ましく、より好ましくは2000以上14万未満、特に好ましくは8000以上13万未満である。本発明において前記(A)成分の重量平均分子量が上記の範囲内であることで、より一層、低温硬化性と導通性を維持することができる。なお、本明細書において、「重量平均分子量」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)をいう。
【0021】
<(B)成分>
本発明の(B)成分のヒドロシリル基を有する化合物としては、(A)成分とヒドロシリル化反応により硬化できるものであれば特に制限はない。ヒドロシリル基とは、SiH結合を有する基を表す。(B)成分としては、特に限定されないが、例えば、直鎖状、分岐状、環状または網状からなる分子中にヒドロシリル基とポリオルガノシロキサン構造を含有する化合物などが挙げられる。分子中にヒドロシリル基とポリオルガノシロキサン構造とを含有する化合物は、低温硬化性を有することに加えて、硬化物の耐折り曲げ性が優れる。中でも、低温硬化性および軟質な硬化物が得られるという観点から、分子中にヒドロシリル基と分岐状ポリオルガノシロキサン構造とを含有する化合物が好ましい。また、(B)成分の分子中のヒドロシリル基の数は、特に限定されないが、例えば、より一層、低温短時間で硬化するとともに優れた導電性を有する硬化物が得られる導電性シリコーン組成物を提供できるという観点から、2以上が好ましく、より好ましくは3以上である。また、(B)成分の25℃における粘度は、低温硬化性を有することに加えて、硬化物の耐折り曲げ性が優れる観点から、0.1mPa・s(0.1センチポイズ)以上1.5万mPa・s(1.5万センチポイズ)未満が好ましく、さらに好ましくは0.5mPa・s(0.5センチポイズ)以上0.5万mPa・s(0.5万センチポイズ)未満であり、特に好ましくは1mPa・s(1センチポイズ)以上0.3万mPa・s(0.3万センチポイズ)未満である。また、(B)成分の水素当量は、より一層、低温短時間で硬化するとともに優れた導電性を有する硬化物が得られる導電性シリコーン組成物を提供できるという観点から、0.01Eq/kg以上300Eq/kg以下が好ましく、より好ましくは0.3Eq/kg以上100Eq/kg以下の範囲である。(B)成分の25℃における粘度は、コーンプレート型粘度計を用いて測定する。(B)成分の水素当量は、フーリエ変換赤外(FTIR)または29Si-NMR法によって測定できる値である。
【0022】
前記ヒドロシリル基と直鎖状ポリオルガノシロキサン構造とを含有する化合物としては、例えば、水素末端ポリジメチルシロキサン、水素末端ポリフェニルメチルシロキサン、水素末端メチルヒドロシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキシ末端メチルヒドロシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキシ末端ポリメチルヒドロシロキサン、トリエチルシロキシ末端ポリエチルヒドロシロキサンなどが挙げられる。前記ヒドロシリル基と分岐状ポリオルガノシロキサン構造とを含有する化合物としては、例えば、水素化Qレジンが挙げられる。これらは単独で1種のみで用いられてもよく、または2種以上併用されてもよい。前記分岐状ポリオルガノシロキサン構造とは、オルガノシロキサンを主鎖とし、オルガノシロキサン骨格を含む側鎖が主鎖から分岐するものが挙げられる。
【0023】
前記水素化Qレジンとは、Q単位とヒドロシリル基とを有するシロキサン構造を含んでいるシロキサン樹脂を意味する。前記Q単位とはシロキサン化合物の化学構造単位であり、ケイ素原子が、酸素原子のみと結合し炭素原子と結合していない構造単位を意味する。また、Q単位(4官能)とは、SiO4/2で表現されるものである。水素化Qレジンの具体例としては、下記の式(1)で表される化合物などが挙げられる。式(1)中のMeは、メチル基を意味する。
【0024】
【化1】
【0025】
前記ヒドロシリル基と直鎖状ポリオルガノシロキサン構造とを含有する化合物の市販品としては、特に限定されないが、例えば、DMS-H013、DMS-H11、DMS-H21、DMS-H025、DMS-H31、DMS-H42、PMS-H03、HMS-013、HMS-031、HMS-064、HMS-071、HMS-991、HMS-992、HMS-993、HDP-111、HPM-502、HMS-151、HMS-301(Gelest社製)、SH1107フルイド(ダウ・東レ株式会社製)、CR100(株式会社カネカ製)、KF-99、KF-9901(信越化学工業株式会社製)などが挙げられる。前記ヒドロシリル基と分岐状ポリオルガノシロキサン構造とを含有する化合物の市販品としては、特に限定されないが、例えば、HQM-105、HQM-107(Gelest社製)などが挙げられる。
【0026】
前記(A)成分に含まれるアルケニル基1molに対する前記(B)成分の添加量は、特に限定されないが、ヒドロシリル基が0.5~12.0molとなる量が好ましく、より好ましくは1.5~10.0molとなる量、さらに好ましくは2.0~8.0molとなる量、特に好ましくは2.5~7.0molとなる量である。上記の範囲内であることで、前記(E)成分の導電性粉体を多く含んだ導電性シリコーン組成物であっても、より一層、低温短時間で硬化するとともに優れた導電性を有する硬化物が得られる。前記(A)成分100質量部に対する前記(B)成分の含有量は、特に限定されないが、例えば、0.1~100質量部が好ましく、より好ましくは0.5~50質量部、特に好ましくは1~30質量部である。上記の範囲内であることで、前記(E)成分の導電性粉体を多く含んだ導電性シリコーン組成物であっても、より一層、低温短時間で硬化するとともに優れた導電性を有する硬化物が得られる。
【0027】
<(C)成分>
本発明の(C)成分であるヒドロシリル化触媒については、ヒドロシリル化反応を触媒できるものであれば特に制限はなく、任意のものが使用できる。
【0028】
前記(C)成分としては、例えば、塩化白金酸;白金の単体;アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの;塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体;Pt(CH=CHClなどの白金-オレフィン錯体;白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、Pt(ViMeSiOSiMeVi)、Pt[(MeViSiO)などの白金-ビニルシロキサン錯体;Pt(PPh、Pt(PBuなどの白金-ホスファイト錯体が挙げられる(Viはビニル基、Meはメチル基、Phはフェニル基、Buはブチル基を意味する。n、xおよびyは正の実数を意味する。)。これらの中でも活性が優れるという観点から、塩化白金酸、白金-オレフィン錯体、白金-ビニルシロキサン錯体等が好ましい。これらは単独で1種のみで用いられてもよく、または2種以上併用されてもよい。
【0029】
前記(C)成分の触媒量としては、特に制限されないが、(A)成分中のアルケニル基1molに対して化合物として1×10~1×10-10molの範囲で用いるのが好ましく、より好ましくは1×10-1~1×10-8molの範囲で用いるのがよい。上記の範囲内であることで、より一層、低温短時間で硬化するとともに優れた導電性を有する硬化物が得られる。
【0030】
<(D)成分>
本発明の(D)成分であるエポキシ基とアルコキシシリル基とを有するシラン化合物は、前記(A)成分100質量部に対して10質量部以上100質量部未満である。上記の範囲内であることにより、低温短時間で硬化するとともに優れた導電性を有する硬化物が得られるという顕著な効果を奏するものである。前記エポキシ基としては、例えば、グリシジル基、エポキシシクロヘキシルエチル基などが挙げられる。さらに前記グリシジル基としては、より一層、低温短時間で硬化するとともに優れた導電性を有する硬化物が得られる観点から、グリシドキシプロピル基が好ましく、さらに好ましくは3-グリシドキシプロピル基である。前記エポキシシクロヘキシルエチル基としては、2,3-エポキシシクロヘキシルエチル基が好ましい。これらは単独で1種のみで用いられてもよく、または2種以上併用されてもよい。前記アルコキシシリル基としては、メトキシシリル基、エトキシシリル基、プロポキシシリル基などが挙げられる。中でも、より一層、低温短時間で硬化するとともに優れた導電性を有する硬化物が得られる観点から、エトキシシリル基、プロポキシシリル基が好ましく、100%延伸サイクル試験後も導通性を維持でき、金メッキに対する密着性にも優れる観点から、より好ましくはエトキシシリル基である。
【0031】
前記(D)成分としては、例えば、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、アルコキシ基とエポキシ基とをそれぞれ1以上有するシリコーンオリゴマーなどが挙げられる。中でも、より一層、低温短時間で硬化するとともに優れた導電性を有する硬化物が得られるという観点から、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランが好ましい。前記(D)成分の市販品としては、特に限定されないが、例えば、A-186、A187、A-1871(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)、KBM-303、KBM-402、KBM-403、KBE-402、KBE-403、X-41-1056(信越化学工業株式会社製)などが挙げられる。
【0032】
前記(D)成分の好ましい含有量は、前記(A)成分100質量部に対して10.5質量部以上75質量部未満であり、特に好ましくは11質量部以上50質量部未満である。上記の範囲内であることで、より一層、低温短時間で硬化するとともに優れた導電性を有する硬化物が得られる。また、低温短時間での導電性の安定化が図れる。
【0033】
<(E)成分>
本発明の(E)成分としては、導電性粉体であれば特に限定されない。前記(E)成分に用いる材料としては、公知の導電性フィラーを用いることができる。例えば、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、白金、錫、ビスマス等の金属から選ばれる1種以上からで構成される金属粒子、またはこれらを複数種組み合わせてなる合金粒子、あるいは前記金属により表面を被覆しているシリコーン粒子、(メタ)アクリル粒子、ポリスチレン粒子、ウレタン粒子などが挙げられる。これらは単独で1種のみで用いられてもよく、または2種以上併用されてもよい。前記(E)成分の形状としては、破砕状、球状、繊維状、枝状などが挙げられるが、中でも、100%延伸サイクル試験後も導通性を維持できる硬化物が得られることから、球状が好ましい。ここで、球状とは、長径に対する短径で表される真球度(短径/長径)が、0.6~1.0であるものをいう。
【0034】
また前記(E)成分は、接続する基板の電極間におけるピッチ幅や電極の厚さにより好適な平均粒径のものを使い分けることができる。例えば、ピッチ幅が狭くなる程平均粒径が小さいものを使用することが好ましい。本発明において好ましい平均粒径は、0.01~100μmであり、より好ましくは0.1~30μmの範囲にあるもので、中でも粒度測定器で測定した際の粒度分布がシャープなものが特に好ましい。また、(E)成分の平均粒径は、レーザー回折・散乱法により求められた50%平均粒径である。前記(E)成分の比表面積は、好ましくは0.1~10m/gであり、更に好ましくは0.5~7m/gであり、特に好ましくは1~5m/gである。上記の範囲内であることで、低温短時間で硬化するとともに優れた導電性を有する硬化物が得られ、また、硬化時の抵抗値安定化までの時間を短くすることができる。上記比表面積はBET比表面積から算出する値である。
【0035】
前記(E)成分の含有量は、本発明では限定されるものではないが、前記(A)成分100質量部とした場合、好ましくは10~1500質量部の範囲であり、より好ましくは50~1000質量部の範囲である。前記成分が10質量部以上の場合、安定した導通性を得ることができ、一方で1500質量部以下であると、導電性シリコーン組成物の粘度が上昇することなく塗布性に優れる。また、前記(E)成分は、導電性シリコーン組成物全体に対して、前記(E)成分を5~95質量%の範囲が好ましく、更に好ましくは10~85質量%の範囲であり、特に好ましくは20~75質量%の範囲である。上記の範囲内であることで、低温短時間で硬化するとともに優れた導電性を有する硬化物が得られる。また、本発明は優れた導電性を有することから、(E)成分の含有量を減らしても一定の導電性を維持できる。(E)成分の含有量を減らした場合は、より柔軟な硬化物が得られる導電性シリコーン組成物を得ることができる。
【0036】
本発明の導電性シリコーン組成物は、さらに(F)成分として反応速度調節剤を含んでもよい。(F)成分としては、例えば、アルキン化合物、マレイン酸エステル類、有機燐化合物、有機硫黄化合物、窒素含有化合物等が挙げられる。これらを単独で1種のみ使用してもよいし、または2種以上併用してもよい。前記のアルキン化合物としては、具体的には、3-ヒドロキシ-3-メチル-1-ブチン、3-ヒドロキシ-3-フェニル-1-ブチン、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-エチニル-1-シクロヘキサノール等が挙げられる。また、マレイン酸エステル類としては、無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル等が挙げられる。また、有機燐化合物としては、具体的には、トリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類等が例示できる。また、有機硫黄化合物としては、具体的には、オルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイド等が例示できる。また、窒素含有化合物としては、具体的には、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N-ジエチルエチレンジアミン、N,N-ジブチルエチレンジアミン、N,N-ジブチル-1,3-プロパンジアミン、N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミン、N,N-ジブチル-1,4-ブタンジアミン、2,2’-ビピリジン等が例示できる。前記(F)成分の含有量は、本発明では限定されるものではないが、低温硬化性と貯蔵安定性の両立の観点から、前記(A)成分100質量部とした場合、好ましくは0.01~10質量部の範囲であり、より好ましくは0.05~3質量部の範囲である。
【0037】
<任意成分>
本発明の導電性シリコーン組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、任意成分として、反応性希釈剤、エラストマー、充填材、保存安定剤、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、溶剤、顔料、難燃剤、及び界面活性剤等の添加剤を含有することができる。
【0038】
本発明の導電性シリコーン組成物は、反応性希釈剤を含有してもよい。反応性希釈剤としては、例えば、2,4,6-トリス(アリルオキシ)-1,3,5-トリアジン、1,2-ポリブタジエン、1,2-ポリブタジエン誘導体、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリアリルリン酸エステル、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノベンジルイソシアヌレート、ジアリルモノプロピルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、1,1,2,2-テトラアリロキシエタン、ジアリリデンペンタエリスリット、トリアリルシアヌレート、1,2,4-トリビニルシクロヘキサン、1,4-ブタンジオールジアリルエーテル、ノナンジオールジアリルエーテル、1,4-シクロへキサンジメタノールジアリルエーテル、トリエチレングリコールジアリルエーテル、ビスフェノールSのジアリルエーテル、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、1,3-ジイソプロペニルベンゼン、1,4-ジイソプロペニルベンゼン、1,3-ビス(アリルオキシ)アダマンタン、1,3-ビス(ビニルオキシ)アダマンタン、1,3,5-トリス(アリルオキシ)アダマンタン、1,3,5-トリス(ビニルオキシ)アダマンタン、ジシクロペンタジエン、ビニルシクロへキセン、1,5-ヘキサジエン、1,9-デカジエン、ジアリルエーテル、ビスフェノールAジアリルエーテル、2,5-ジアリルフェノールアリルエーテル、およびそれらのオリゴマー、ノボラックフェノールのアリルエーテル等が挙げられる。中でも、本発明の(A)成分との相溶性に優れることから、1,2,4-トリビニルシクロヘキサン、トリアリルイソシアヌレート、2,4,6-トリス(アリルオキシ)-1,3,5-トリアジン、1,2-ポリブタジエンなどが好ましい。
【0039】
本発明の導電性シリコーン組成物は、硬化物のゴム物性を調整する目的で、エラストマーを含有してもよい。エラストマーとしては、特に限定されないが、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体(SB)、スチレン-イソプレン共重合体(SIP)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)、スチレン-イソブチレン-スチレン共重合体(SIBS)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS)、スチレン-ブタジエン-アクリロニトリル共重合体(ABS)などが挙げられる。
【0040】
本発明の導電性シリコーン組成物は、硬化物の弾性率、流動性などの改良を目的として、保存安定性を阻害しない程度の充填材を含有してもよい。具体的には、有機質粉体、無機質粉体、金属質粉体等が挙げられる。
【0041】
無機質粉体の充填材としては、ガラス、フュームドシリカ、アルミナ、マイカ、セラミックス、シリコーンゴム粉体、炭酸カルシウム、窒化アルミニウム、カーボン粉、カオリンクレー、乾燥粘土鉱物、乾燥珪藻土等が挙げられる。無機質粉体の含有量は、(A)成分100質量部に対し、0.1~100質量部程度が好ましい。0.1質量部以上であれば、硬化物の弾性率、流動性などの改良効果が十分に得られ、100質量部以下であれば導電性シリコーン組成物の流動性に優れ、作業性が向上する。
【0042】
フュームドシリカは、導電性シリコーン組成物の粘度調整又は硬化物の機械的強度を向上させる目的で含有できる。好ましくは、オルガノクロロシラン類、ポリオルガノシロキサン、ヘキサメチルジシラザンなどで疎水化処理したものなどが用いることができる。フュームドシリカの具体例としては、例えば、日本アエロジル株式会社製の商品名アエロジル(登録商標)R974、R972、R972V、R972CF、R805、R812、R812S、R816、R8200、RY200、RX200、RY200S、R202等の市販品が挙げられる。
【0043】
有機質粉体の充填材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、架橋アクリル、架橋ポリスチレン、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート等が挙げられる。有機質粉体の含有量は、硬化物の耐折り曲げ性が優れるという観点から、(A)成分100質量部に対し、0.1~100質量部程度が好ましい。
【0044】
本発明の導電性シリコーン組成物は、保存安定剤を含有してもよい。保存安定剤としては、ベンゾキノン、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル等のラジカル吸収剤、エチレンジアミン4酢酸又はその2-ナトリウム塩、シュウ酸、アセチルアセトン、o-アミノフェノール等の金属キレート化剤等を含有することもできる。
【0045】
本発明の導電性シリコーン組成物は、酸化防止剤を含有してもよい。酸化防止剤としては、例えば、β-ナフトキノン、2-メトキシ-1,4-ナフトキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、モノ-tert-ブチルハイドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチルハイドロキノン、p-ベンゾキノン、2,5-ジフェニル-p-ベンゾキノン、2,5-ジ-tert-ブチル-p-ベンゾキノン等のキノン系化合物;フェノチアジン、2,2-メチレン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、カテコール、tert-ブチルカテコール、2-ブチル-4-ヒドロキシアニソール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2-〔1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル〕-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート、4,4’-ブチリデンビス(6-tert-ブチル-3-メチルフェノール)、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-3-メチルフェノール)、3,9-ビス〔2-〔3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニロキシ〕-1,1-ジメチルエチル〕-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、ペンタエリスリトールテトラキス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、チオジエチレンビス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド〕、ベンゼンプロパン酸,3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ,C7-C9側鎖アルキルエステル、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル〔〔3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル〕メチル〕フォスフォネート、3,3’,3”,5,5’,5”-ヘキサ-tert-ブチル-a,a’,a”-(メシチレン-2,4,6-トリル)トリ-p-クレゾール、カルシウムジエチルビス〔〔3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル〕メチル〕フォスフォネート、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス〔3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート〕、ヘキサメチレンビス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス〔(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-キシリル)メチル〕-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、N-フェニルベンゼンアミンと2,4,6-トリメチルペンテンとの反応生成物、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール、ピクリン酸、クエン酸等のフェノール類;トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト、トリス〔2-〔〔2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサフォスフェフィン-6-イル〕オキシ〕エチル〕アミン、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリートールジフォスファイト、ビス〔2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)-6-メチルフェニル〕エチルエステル亜リン酸、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)〔1,1-ビスフェニル〕-4,4‘-ジイルビスフォスフォナイト、6-〔3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ〕-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンズ〔d、f〕〔1,3,2〕ジオキサフォスフェフィン等のリン系化合物;ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’-チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、2-メルカプトベンズイミダゾール等のイオウ系化合物;フェノチアジン等のアミン系化合物;ラクトン系化合物;ビタミンE系化合物等が挙げられる。中でもフェノール系化合物が好適である。
【0046】
本発明の導電性シリコーン組成物は、光安定剤を含有してもよい。光安定剤としては、例えば、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-〔2-〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル〕-4-〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル-メタアクリレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)〔〔3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル〕メチル〕ブチルマロネート、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステル,1,1-ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンとの反応生成物、N,N’,N”,N”’-テトラキス-(4,6-ビス-(ブチル-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-トリアジン-2-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン、ジブチルアミン・1,3,5-トリアジン・N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル-1,6-ヘキサメチレンジアミンとN-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ〔〔6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル〕〔(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ〕〕、コハク酸ジメチルと4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールとの重合物、2,2,4,4-テトラメチル-20-(β-ラウリルオキシカルボニル)エチル-7-オキサ-3,20-ジアザジスピロ〔5・1・11・2〕ヘネイコサン-21-オン、β-アラニン,N,-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-ドデシルエステル/テトラデシルエステル、N-アセチル-3-ドデシル-1-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)ピロリジン-2,5-ジオン、2,2,4,4-テトラメチル-7-オキサ-3,20-ジアザジスピロ〔5,1,11,2〕ヘネイコサン-21-オン、2,2,4,4-テトラメチル-21-オキサ-3,20-ジアザジシクロ-〔5,1,11,2〕-ヘネイコサン-20-プロパン酸ドデシルエステル/テトラデシルエステル、プロパンジオイックアシッド,〔(4-メトキシフェニル)-メチレン〕-ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)エステル、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノールの高級脂肪酸エステル、1,3-ベンゼンジカルボキシアミド,N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)等のヒンダートアミン系化合物;オクタベンゾン等のベンゾフェノン系化合物;2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-〔2-ヒドロキシ-3-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミド-メチル)-5-メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)ベンゾトリアゾール、メチル3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコールとの反応生成物、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノール等のベンゾトリアゾール系化合物;2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系化合物;2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-〔(ヘキシル)オキシ〕フェノール等のトリアジン系化合物等が挙げられる。特に好ましくは、ヒンダートアミン系化合物である。
【0047】
前記溶剤としては、トルエン、キシレン、イソパラフィン、エチルベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどがあげられる。溶剤の含有量は、特に限定されないが、塗布作業性と硬化物の耐折り曲げ性が優れるという観点から、前記(A)成分100質量部に対して、1~300質量部の範囲が好ましく、より好ましくは3~100質量部の範囲であり、特に好ましくは5~50質量部の範囲である。
【0048】
本発明の導電性シリコーン組成物は、従来公知の方法により製造することができる。例えば、(A)成分~(E)成分、更に必要に応じて、(F)成分や上記した任意成分の所定量を配合して、ミキサー等の混合手段を使用して、好ましくは10~70℃の温度で好ましくは0.1~5時間混合することにより製造することができる。また、遮光環境下で製造することが好ましい。
【0049】
<塗布方法>
本発明の導電性シリコーン組成物を被着体へ塗布する方法としては、公知のシール剤や接着剤の塗布方法が用いられる。例えば、自動塗布機を用いたディスペンシング、スプレー、インクジェット、スクリーン印刷、グラビア印刷、ディッピング、スピンコートなどの方法を用いることができる。なお、本発明の導電性シリコーン組成物は、塗布性の観点から、25℃で液状であることが好ましい。
【0050】
<硬化方法および硬化物>
本発明の導電性シリコーン組成物は、低温(100℃未満)により硬化することができる(低温硬化性)。本発明の導電性シリコーン組成物の硬化方法の加熱条件のうち、加熱硬化温度は、特に限定されないが、例えば、被着体の部材へのダメージが少ないという観点から、45℃以上100℃未満の温度が好ましく、より好ましくは、50℃以上95℃未満である。加熱硬化時間は、特に限定されないが、45℃以上100℃未満の加熱硬化温度の場合には、本導電性シリコーン組成物を用いる製造方法の生産効率の観点から、3分以上5時間未満が好ましく、10分以上3時間以下がさらに好ましい。本発明の導電性シリコーン組成物を硬化させて得られた硬化物もまた本発明の実施形態の一部である。
【0051】
<用途>
本発明の導電性シリコーン組成物は、低温短時間で硬化するとともに優れた導電性を有する硬化物が得られることから、液晶画像表示素子、有機EL素子、太陽電池素子、カメラモジュール、フレキシブルプリント基板、ウェアラブルなどの周辺において求められる導電性接着剤として利用可能である。より具体的には、液晶画像表示素子、有機EL素子、太陽電池素子、カメラモジュールにおいてはアース取り用途が挙げられる。さらに、本発明の導電性シリコーン組成物を硬化してなる硬化物は、100%延伸サイクル試験後も導通性を維持できることから、本発明の導電性シリコーン組成物は、ウェアラブル向けの導電性接着剤として好適に利用可能である。また、本発明の導電性シリコーン組成物は、金メッキに対する密着性にも優れることから、フレキシブルプリント基板の金メッキを用いた端子との接続用途として好ましい。なお、このような用途で使用するにあたり、本発明の導電性シリコーン組成物は、取り扱い性の観点から、25℃で液状であることが好ましい。
【実施例
【0052】
以下に実施例をあげて本発明を更に詳細の説明をするが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0053】
<導電性シリコーン組成物の調製>
・実施例1
本発明の(A)成分として25℃の粘度が3500mPa・s(3500センチポイズ)、重量平均分子量43000、ビニル当量0.055Eq/kgである分子鎖両末端ビニル基封鎖ポリジメチルシロキサン(Gelest社製)100質量部と、(B)成分として25℃の粘度が4mPa・s(4センチポイズ)であり、水素当量8.5Eq/kgである下記の式(1)で表される水素化Qレジン(Gelest社製)2.5質量部((A)成分に含まれるアルケニル基1molに対して、ヒドロシリル基5.0molとなる量)と、(C)成分として白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のイソプロピルアルコール溶液(ユミコアプレシャスメタルズジャパン株式会社製)0.4質量部((A)成分中のアルケニル基1molに対して化合物として5×10-3mol)、(D)成分として3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製)12.5質量部、(E)成分として平均粒径7μm、比表面積2.5m/gの球状銀粉275質量部、イソパラフィン系溶剤12.5質量部、(F)成分としてマレイン酸ジメチル0.5質量部を添加し、25℃にてミキサーで60分混合し、25℃で液状の導電性シリコーン組成物である実施例1を得た。なお、実施例1の(E)成分の含有量は、導電性シリコーン組成物全体に対して66質量%である。
【0054】
【化2】
【0055】
・実施例2
実施例1において、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン12.5質量部を18.8質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして調製し、25℃で液状の導電性シリコーン組成物である実施例2を得た。なお、実施例2の(E)成分の含有量は、導電性シリコーン組成物全体に対して65質量%である。
【0056】
・実施例3
実施例1において、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランに変更した以外は、実施例1と同様にして調製し、25℃で液状の導電性シリコーン組成物である実施例3を得た。なお、実施例3の(E)成分の含有量は、導電性シリコーン組成物全体に対して66質量%である。
【0057】
・比較例1
実施例1において、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン((D)成分)を除いた以外は、実施例1と同様にして調製し、25℃で液状の導電性シリコーン組成物である比較例1を得た。なお、比較例1の(E)成分の含有量は、導電性シリコーン組成物全体に対して68質量%である。
【0058】
・比較例2
実施例1において、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン12.5質量部を1.3質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして調製し、25℃で液状の導電性シリコーン組成物である比較例2を得た。なお、比較例2の(E)成分の含有量は、導電性シリコーン組成物全体に対して68質量%である。
【0059】
・比較例3
実施例1において、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン12.5質量部を6.3質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして調製し、25℃で液状の導電性シリコーン組成物である比較例3を得た。なお、比較例3の(E)成分の含有量は、導電性シリコーン組成物全体に対して67質量%である。
【0060】
・比較例4
実施例1において、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを3-アミノプロピルトリメトキシシランに変更した以外は、実施例1と同様にして調製し、25℃で液状の導電性シリコーン組成物である比較例4を得た。なお、比較例4の(E)成分の含有量は、導電性シリコーン組成物全体に対して66質量%である。
【0061】
・比較例5
実施例1において、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランに変更した以外は、実施例1と同様にして調製し、25℃で液状の導電性シリコーン組成物である比較例5を得た。なお、比較例5の(E)成分の含有量は、導電性シリコーン組成物全体に対して66質量%である。
【0062】
・比較例6
実施例1において、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランに変更した以外は、実施例1と同様にして調製し、25℃で液状の導電性シリコーン組成物である比較例6を得た。なお、比較例6の(E)成分の含有量は、導電性シリコーン組成物全体に対して66質量%である。
【0063】
・比較例7
実施例1において、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランに変更した以外は、実施例1と同様にして調製し、25℃で液状の導電性シリコーン組成物である比較例7を得た。なお、比較例7の(E)成分の含有量は、導電性シリコーン組成物全体に対して66質量%である。
【0064】
・比較例8
実施例1において、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランをビニルトリメトキシシランに変更した以外は、実施例1と同様にして調製し、25℃で液状の導電性シリコーン組成物である比較例8を得た。なお、比較例8の(E)成分の含有量は、導電性シリコーン組成物全体に対して66質量%である。
【0065】
・比較例9
実施例1において、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランをビニルトリエトキシシランに変更した以外は、実施例1と同様にして調製し、25℃で液状の導電性シリコーン組成物である比較例9を得た。なお、比較例9の(E)成分の含有量は、導電性シリコーン組成物全体に対して66質量%である。
【0066】
表1の実施例、比較例において使用した試験方法は下記の通りである。
【0067】
<(1)低温短時間硬化性>
80℃に設定したホットプレート上に各導電性シリコーン組成物を0.1g滴下して、60分後に先端が尖った棒で接触し、導電性シリコーン組成物が付着するかどうかで硬化有無を評価した。結果を表1にまとめた。本発明において硬化が確認されたもの(導電性シリコーン組成物が付着しないもの)を「硬化」とし、硬化不良であったもの(導電性シリコーン組成物が付着したもの)を「硬化不良」とした。
【0068】
【表1】
【0069】
表1の実施例1~3、比較例1~3は、低温短時間で硬化することがわかる。一方で、比較例4~9は、硬化不良であった。このことにより、多数のシラン化合物の中でも本発明の(D)成分を選択することにより低温硬化性を実現できることがわかる。
【0070】
さらに、実施例1~3と比較例1~3の導電性シリコーン組成物に対して、下記の(2)導通性を評価した。
【0071】
<(2)導通性評価>
・回路基板の作製
実施例1~3と比較例1~3の導電性シリコーン組成物を幅10mm、長さ50mm、厚さ40μmとなるようにガラス基板の上に塗布し、80℃の恒温槽に60分または120分間入れて試験片(ガラス基板上に、導電性シリコーン組成物を塗布し、80℃で硬化してなる硬化物である導電層が形成されたもの)を得た。
【0072】
・抵抗値の測定
上記の各試験片について、デジタルマルチメータを用いて2端子法により導電層の抵抗値を測定した。結果を表2に示す。
【0073】
【表2】
【0074】
表2の実施例1~3により、本発明は、低温短時間で硬化するとともに優れた導電性を有する硬化物が得られる導電性シリコーン組成物であることがわかる。
【0075】
一方で、表2の比較例1は、本発明の(D)成分を含まない導電性シリコーン組成物であるが、実施例と比較して高い抵抗値を示しており導通性が劣ることがわかる。また、比較例2、3は、本発明が特徴とする(D)成分の配合範囲から外れるものであるが、導通性1の試験において実施例と比べて導通性が劣ることがわかる。
【0076】
また、表2の実施例1、3(導電性シリコーン組成物全体に対して(E)成分の添加量が66質量%)と比較例3(導電性シリコーン組成物全体に対して(E)成分の添加量が68質量%)とを対比すると、実施例1,3の方が導通性1の試験においてより優れた導通性を実現していることがわかる。このように、導電性粉体の含有率が低い実施例1,3の方が導電性粉体の含有率が高い比較例3よりも導通性が優れるという効果は当業者には予期できぬものである。
【0077】
さらに、実施例1~3と比較例1~3の導電性シリコーン組成物に対して、下記の(3)100%延伸サイクル試験後の導通性、(4)密着性を評価した。
【0078】
<(3)100%延伸サイクル試験後の導通性評価>
実施例1~3と比較例1~3で得られた導電性シリコーン組成物を幅10mm、長さ50mm、厚さ200μmになるようにポリテトラフルオロエチレン製シートで覆われたガラス板に塗布して、80℃の恒温槽に120分間入れて試験片を作製した。
次に耐久試験器(ユアサシステム機器株式会社製DLDM111LHB)を用いて、チャックに試験片を固定し、100%(初期長の2倍)延伸を1分間あたり50サイクルの周期で500サイクル行った。500サイクル後にデジタルオームメーターにより抵抗が測定できたものを合格とし、抵抗が測定できなかったもの(絶縁状態)を不合格とした。
【0079】
<(4)密着性評価(クリープ試験)>
JIS K6883-1(2008)に準拠して測定した。すなわち、実施例1~3と比較例1~3の導電性シリコーン組成物を金メッキされた被着材に面積5mm×50mm、厚み200μmになるように塗布し、80℃の恒温槽に1時間入れて硬化させて硬化物を得た。
【0080】
その後、23℃50%RHの環境下において重り10gを上記硬化物に対してクリップで吊り下げクリープ試験を実施し、落下時間により評価した。結果を表3に示す。落下時間の基準は、目視により金メッキされた被着材から接着剤(上記硬化物)が長さ方向に10mm以上剥がれたら、重りが落下したとみなす。なお、計測は30分毎に24時間まで実施した。本発明において落下時間が長ければ長いほど密着性が優れることを示す。
【0081】
【表3】
【0082】
表3の実施例1~3により、本発明の実施例1~3は100%延伸サイクル試験後も導通性を維持でき、金メッキに対する密着性にも優れることがわかる。一方で、比較例1は、本発明の(D)成分を含まない導電性シリコーン組成物であるが、実施例と比較して密着性が劣ることがわかる。また、比較例2、3は、本発明が特徴とする(D)成分の配合範囲から外れるものであるが、密着性評価において劣る結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、低温短時間で硬化するとともに優れた導電性を有する硬化物が得られることから、各種導電性シリコーン組成物用途に使用することができ有効であることから産業上有用である。
【0084】
本出願は、2018年5月15日に出願された日本国特許出願第2018-093517号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。