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特許7436927環式ジオール化合物、該化合物の製造方法及び該化合物の用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】環式ジオール化合物、該化合物の製造方法及び該化合物の用途
(51)【国際特許分類】
   C07D 493/10 20060101AFI20240215BHJP
   C08G 64/02 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
C07D493/10 CSP
C08G64/02
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022559102
(86)(22)【出願日】2021-10-25
(86)【国際出願番号】 JP2021039205
(87)【国際公開番号】W WO2022091990
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2020179281
(32)【優先日】2020-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000191250
【氏名又は名称】新日本理化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 一紘
(72)【発明者】
【氏名】廣 祥二
(72)【発明者】
【氏名】北川 幸緒
(72)【発明者】
【氏名】折橋 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】辻本 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】芝池 和孝
【審査官】三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/074305(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/117019(WO,A1)
【文献】特開2018-199764(JP,A)
【文献】特開2019-172779(JP,A)
【文献】国際公開第2019/188114(WO,A1)
【文献】特開2019-172940(JP,A)
【文献】特開2019-183081(JP,A)
【文献】特開2020-094103(JP,A)
【文献】特開2020-094104(JP,A)
【文献】特開2012-214803(JP,A)
【文献】特開2013-001867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 493/
C08G 64/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される化合物。
【化1】
[式中、Rは、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数6~12のアリール基、又は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。Xは、下記の一般式(a)、一般式(b)、一般式(c)又は一般式(d)で表される基を示す。
【化2】
(式(a)~(d)中、波線は結合部位を示す。Rは、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は、炭素数1~7の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルコキシ基を示す。)。]
【請求項2】
一般式(1)において、Rが、同一又は異なって、それぞれ、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基又はフェニル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
一般式(1)において、Rが、同一又は異なって、それぞれ、メチル基又はエチル基である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
一般式(1)において、Xで示される一般式(a)~(d)で表される基中、Rが、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は、炭素数1~7の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルコキシ基である、請求項1~3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
一般式(1)において、Xがフェニル基、ビフェニル基、1-ナフチル基又は2-ナフチル基である、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
一般式(1)において、Xがフェニル基である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の化合物からなる、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂又はポリエステルポリオール樹脂用モノマー。
【請求項8】
請求項1~6のいずれかに記載の化合物からなる、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂又はポリエステルポリオール樹脂の樹脂改質剤。
【請求項9】
請求項1~6のいずれかに記載の化合物を、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂又はポリエステルポリオール樹脂のモノマーとして使用する方法。
【請求項10】
一般式(1)で表される化合物の製造方法であって、一般式(3)で表される化合物と一般式(4)で表される化合物とを、酸性触媒の存在下で反応させることを含む、製造方法。
【化3】
[式中、Rは、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数6~12のアリール基、又は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。Xは、下記の一般式(a)、一般式(b)、一般式(c)又は一般式(d)で表される基を示す。
【化4】
(式(a)~(d)中、波線は結合部位を示す。Rは、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は、炭素数1~7の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルコキシ基を示す。)。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環式ジオール化合物、該化合物の製造方法及び該化合物の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル樹脂及びポリカーボネート樹脂の樹脂原料として各種の環式ジオール化合物が知られている。工業的に入手可能な環式ジオール化合物としては、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジオールや2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン(水素化ビスフェノールA)等がある。このほかにも、製造される樹脂の用途に応じて種々の環式ジオール化合物が報告されている。
【0003】
例えば、光学用途(例えば、光学レンズ)に用いられるポリカーボネート樹脂については、着色低減、透明性などの樹脂の光学特性の改良を目的として、フルオレン環構造をもつ特定の芳香族ジオール化合物を含むジオール成分を用いて製造する方法(特許文献1)が報告され、また、特定のフルオレン含有ジヒドロキシ化合物及び他のジヒドロキシ化合物を特定割合で用いて製造する方法(特許文献2)等が報告されている。
【0004】
しかし、ポリエステル樹脂及びポリカーボネート樹脂等の樹脂の特性は、樹脂が使用される様々な応用分野に応じて多岐に渡り、その分野で求められる樹脂特性を満足できる環式ジオール化合物の探索が進められている。特に、樹脂を光学用途に用いる場合、当該樹脂の光学特性を向上できる環式ジオール化合物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-214803号公報
【文献】特開2013-001867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリエステルポリオール樹脂等の樹脂原料及び樹脂改質剤として有用である環式ジオール化合物、並びにその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、特異なジアセタール(ジスピロ)構造を有する環式ジオール化合物が文献未記載の化合物であり、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリエステルポリオール樹脂等の樹脂原料(モノマー)及びそれらの樹脂改質剤として有用なことを見出し、かかる知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、以下の環式ジオール化合物、該化合物の製造方法及び該化合物の用途を提供するものである。
【0009】
[項1]
一般式(1)で表される化合物(以下「本発明の環式ジオール化合物」ともいう。)。
【化1】
[式中、Rは、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数6~12のアリール基、又は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。Xは、下記の一般式(a)、一般式(b)、一般式(c)又は一般式(d)で表される基を示す。
【化2】
(式(a)~(d)中、波線は結合部位を示す。Rは、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は、炭素数1~7の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルコキシ基を示す。)。]
[項2]
一般式(1)において、Rが、同一又は異なって、それぞれ、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基又はフェニル基である、[項1]に記載の化合物。
[項3]
一般式(1)において、Rが、同一又は異なって、それぞれ、メチル基又はエチル基である、[項1]又は[項2]に記載の化合物。
[項4]
一般式(1)において、Xで示される一般式(a)~(d)で表される基中、Rが、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は、炭素数1~7の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルコキシ基である、[項1]~[項3]のいずれかに記載の化合物。
[項5]
一般式(1)において、Rが、メチル基又はエチル基であり、Xが、一般式(a)、(c)又は(d)で表される基であり、Rが、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、メトキシ基、又はエトキシ基である、[項1]~[項4]のいずれかに記載の化合物。
[項6]
一般式(1)において、Xが、フェニル基、ビフェニル基、1-ナフチル基又は2-ナフチル基である、[項1]~[項5]のいずれかに記載の化合物。
[項7]
一般式(1)において、Xが、フェニル基である、[項1]~[項6]のいずれかに記載の化合物。
[項8]
[項1]~[項7]のいずれかに記載の化合物からなる、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂又はポリエステルポリオール樹脂用モノマー。
[項9]
[項1]~[項7]のいずれかに記載の化合物からなる、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂又はポリエステルポリオール樹脂の樹脂改質剤。
[項10]
ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂又はポリエステルポリオール樹脂を製造するための、[項1]~[項7]のいずれかに記載の化合物の使用。
[項11]
[項1]~[項7]のいずれかに記載の化合物を、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂又はポリエステルポリオール樹脂の(原料である)モノマーとして使用する方法。
[項12]
一般式(2)で表される構成単位を含有するポリカーボネート樹脂。
【化3】
[式中、Rは、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数6~12のアリール基、又は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。Xは、下記の一般式(a)、一般式(b)、一般式(c)又は一般式(d)で表される基を示す。
【化4】
(式(a)~(d)中、波線は結合部位を示す。Rは、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は、炭素数1~7の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルコキシ基を示す。)。]
[項13]
一般式(1)で表される化合物の製造方法であって、一般式(3)で表される化合物と一般式(4)で表される化合物とを、酸性触媒の存在下で反応させることを含む、製造方法。
【化5】
[式中、Rは、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数6~12のアリール基、又は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。Xは、下記の一般式(a)、一般式(b)、一般式(c)又は一般式(d)で表される基を示す。
【化6】
(式(a)~(d)中、波線は結合部位を示す。Rは、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は、炭素数1~7の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルコキシ基を示す。)。]
[項14]
一般式(3)で表される化合物が、一般式(5)で表される化合物と一般式(6)で表される化合物とを、塩基の存在下に反応させた後、酸で処理することにより製造される、[項13]に記載の製造方法。
【化7】
[式中、Rはアルキル基を示す。Xは前記に同じ。]
【発明の効果】
【0010】
本発明の環式ジオール化合物は、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリエステルポリオール樹脂等の樹脂原料(モノマー)又は樹脂改質剤として使用できる。
【0011】
本発明の環式ジオール化合物を含むモノマーを用いて得られる樹脂(例えば、ポリカーボネート樹脂)は、屈折率が大きいという特徴を有する。これにより、モノマー中の該環式ジオール化合物の含有量を調節することにより、得られる樹脂の屈折率を広範囲に調整することができる。それ故、本発明の環式ジオール化合物は、ポリカーボネート樹脂等の樹脂の改質剤として有用である。
【0012】
当該樹脂(例えば、ポリカーボネート樹脂)は、負の複屈折を持つという特徴を有している。本発明の環式ジオール化合物と正の複屈折性を有するジヒドロキシ化合物とを適切な割合で共重合することにより、樹脂の複屈折を限りなくゼロに近づけることが可能となる。そのため、当該樹脂は光学用途(光学レンズ、光学フィルム、光学シート等)に好適に用いることができる。
【0013】
本発明の環式ジオール化合物は、1,3-シクロヘキサンジオン環の1位及び3位のカルボニル基をジアセタール化することにより製造される。一般的に、1,3-シクロヘキサンジオンをジアセタール化することは立体障害等のため極めて困難であるとされている。しかし、本発明の製造方法では、1,3-シクロヘキサンジオンの5位に芳香環が結合した化合物を原料としているため、ジアセタール化が効果的に進行し、本発明の環式ジオール化合物を好収率で製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1で得られた5-フェニル-1、3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタールのIRスペクトルである。
図2】実施例1で得られた5-フェニル-1、3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタールのH-NMRスペクトルである。
図3】実施例2で得られた5-フェニル-1、3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタールのIRスペクトルである。
図4】実施例2で得られた5-フェニル-1、3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタールのH-NMRスペクトルである。
図5】実施例3で得られた5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタールのIRスペクトルである。
図6】実施例3で得られた5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタールのH-NMRスペクトルである。
図7】実施例4で得られた5-(2,4,6-トリメチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタールのIRスペクトルである。
図8】実施例4で得られた5-(2,4,6-トリメチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタールのH-NMRスペクトルである。
図9】実施例5で得られた5-(2,4-ジメチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタールのIRスペクトルである。
図10】実施例5で得られた5-(2,4-ジメチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタールのH-NMRスペクトルである。
図11】実施例6で得られた5-(2-ナフチル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタールのIRスペクトルである。
図12】実施例6で得られた5-(2-ナフチル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタールのH-NMRスペクトルである。
図13】実施例7で得られた5-(2-ナフチル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタールのIRスペクトルである。
図14】実施例7で得られた5-(2-ナフチル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタールのH-NMRスペクトルである。
図15】実施例8で得られた5-(4-メチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタールのIRスペクトルである。
図16】実施例8で得られた5-(4-メチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタールのH-NMRスペクトルである。
図17】実施例9で得られた5-(3,4-ジメチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタールのIRスペクトルである。
図18】実施例9で得られた5-(3,4-ジメチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタールのH-NMRスペクトルである。
図19】実施例10で得られた5-(4-メトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタールのIRスペクトルである。
図20】実施例10で得られた5-(4-メトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタールのH-NMRスペクトルである。
図21】実施例11で得られた5-(4-イソプロピルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタールのIRスペクトルである。
図22】実施例11で得られた5-(4-イソプロピルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタールのH-NMRスペクトルである。
図23】実施例12で得られた5-(4-イソブチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタールのIRスペクトルである。
図24】実施例12で得られた5-(4-イソブチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタールのH-NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の環式ジオール化合物は、下記一般式(1)
【化8】
[式中、Rは、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数6~12のアリール基、又は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。Xは、下記の一般式(a)、一般式(b)、一般式(c)又は一般式(d)で表される基を示す。
【化9】
(式(a)~(d)中、波線は結合部位を示す。Rは、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は、炭素数1~7の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルコキシ基を示す。)。]
で表される化合物である。
【0016】
一般式(1)において、Rで示される「炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基」としては、特に制限はないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等のアルキル基が挙げられる。このうち好ましくは、メチル基、エチル基、イソブチル基、tert-ブチル基であり、より好ましくは、メチル基又はエチル基である。
【0017】
一般式(1)において、Rで示される「炭素数6~12のアリール基」としては、特に制限はないが、例えば、フェニル基、トルイル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0018】
一般式(1)において、Xで示される一般式(a)~(d)で表される基中、Rで示される「炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基」としては、特に制限はないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。また、Rで示される「炭素数1~7の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルコキシ基」としては、特に制限はないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられる。
【0019】
一般式(1)において、Xで示される一般式(a)~(d)で表される基中、Rは、水素原子が好ましい。具体的に、Xは、フェニル基(一般式(a)に包含される)、ビフェニル基(一般式(b)に包含される)、1-ナフチル基(一般式(c)に包含される)、2-ナフチル基(一般式(d)に包含される)が挙げられる。このうち好ましくは、フェニル基である。
【0020】
一般式(1)において、Rは、メチル基又はエチル基が好ましい。Xは、一般式(a)、(c)又は(d)で表される基が好ましく、一般式(a)又は(d)で表される基がより好ましく、一般式(a)で表される基がさらに好ましい。Rは、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、メトキシ基、エトキシ基等が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0021】
一般式(1)において、Xが一般式(a)で表される基のうち、Xは、フェニル基、下記に示す一般式(a1)、(a2)又は(a3)で表される基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
【化10】
[式中、R21は、同一又は異なって、メチル基、エチル基、イソプロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、又はメトキシ基を示す。]
【0022】
一般式(1)で表される化合物は、以下のような異性体A、異性体B、又は異性体Cなどの異性体の存在が考えられる。これらの異性体は、それぞれ単独でも2以上の混合物でもよい。
【化11】
[式中、R及びXは前記に同じ。]
【0023】
本発明の環式ジオール化合物が2以上の異性体の混合物である場合、異性体比率は、実施例に記載の手法を用いて、ガスクロマトグラフィー(GC)分析を行い、面積百分率法により求めることができる。各異性体は、通常、GC分析によりそれぞれ特有のピークを有している。異性体の含有割合は、環式ジオール化合物の全ピーク面積に対する、各異性体のピーク面積の百分率で表すことができる。当該各異性体の百分率の比率を異性体比率とすることができる。
【0024】
本発明の環式ジオール化合物は、上記のような異性体A、異性体B、又は異性体Cなどの異性体の存在が考えられる。GC分析で検出された異性体ピークは2本であり、これらは熱力学的に安定な異性体A及び異性体Bと考えられる。異性体比率は、異性体A:異性体B=80:20から50:50の範囲とすることができる。
【0025】
一般式(1)で表される化合物の具体的な例としては、5-フェニル-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(4-メチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(4-エチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(3,4-ジメチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(2,4-ジメチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(3-フルオロ-4-メチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(4-イソプロピルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(2,4,6-トリメチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(2,4,5-トリメチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(4-ブチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(4-イソブチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(ペンタメチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(4-ビフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(3-ブロモ-4-メチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(4-クロロビフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(3-メチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(3,5-ジメチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(4-フルオロ-3-メチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(4-メトキシ-2,3,6-トリメチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(3-ビフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール5-(2-ブロモ-5-メチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(2-メチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(2,3-ジメチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(2,6-ジメチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(5-フルオロ-2-メチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(4-フルオロ-2-メチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(3-フルオロ-2-メチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(5-ブロモ―2-メチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(1-ナフタレン)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(2-ナフタレン)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(4-メトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(4-エトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(3-フルオロ-4-メトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(2-フルオロ-4-メトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(4-イソプロポキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(4-プロポキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(2,4-ジメトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(3,4-ジメトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(3-クロロ-4-メトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(4-メトキシ-2,3,6-トリメチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(4-tert-ブトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(2,4-ジメトキシ-3-メチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(4-エトキシ-3-メトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(2-フルオロ-4,5-ジメトキシフェニル)―1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(4-アミルオキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(2,4-ジエトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(3,4-ジエトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(2,4,5-トリメトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(2,3,4-トリメトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(2,4,6-トリメトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(2-クロロ-3,4-ジメトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(4-ヘキシルオキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(3-ブロモ-4-メトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(4-ヘプチルオキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(2-ブロモ-4,5-ジメトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(3-ブロモ-4,5-ジメトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(2-ナフチル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(4-メトキシ-1-ナフチル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(2-メトキシ-1-ナフチル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(2-エトキシ-1-ナフチル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(6-メトキシ-2-ナフチル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール;
5-フェニル-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(4-メチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(4-エチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(3,4-ジメチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(2,4-ジメチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(3-フルオロ-4-メチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(4-イソプロピルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(2,4,6-トリメチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(2,4,5-トリメチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(4-ブチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(4-イソブチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(ペンタメチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(4-ビフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(3-ブロモ-4-メチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(4-クロロビフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(3-メチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(3,5-ジメチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(4-フルオロ-3-メチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(4-メトキシ-2,3,6-トリメチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(3-ビフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(2-ブロモ-5-メチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(2-メチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(2,3-ジメチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(2,6-ジメチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(5-フルオロ-2-メチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(4-フルオロ-2-メチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(3-フルオロ-2-メチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(5-ブロモ-2-メチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(1-ナフチル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(2-ナフチル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(4-メトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(4-エトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(3-フルオロ-4-メトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(2-フルオロ-4-メトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(4-イソプロポキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(4-プロポキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(2,4-ジメトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(3,4-ジメトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(3-クロロ-4-メトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(4-メトキシ-2,3,6-トリメチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(4-tert-ブトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(2,4-ジメトキシ-3-メチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(4-エトキシ-3-メトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(2-フルオロ-4,5-ジメトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(4-アミルオキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(2,4-ジエトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(3,4-ジエトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(2,4,5-トリメトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(2,3,4-トリメトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(2,4,6-トリメトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(2-クロロ-3,4-ジメトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロ-ルエタンジアセタール、5-(4-ヘキシルオキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(3-ブロモ-4-メトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(4-ヘプチルオキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(2-ブロモ-4,5-ジメトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(3-ブロモ-4,5-ジメトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(4-メトキシ-1-ナフチル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(2-メトキシ-1-ナフチル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(2-エトキシ-1-ナフチル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(6-メトキシ-2-ナフチル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール等が挙げられる。
【0026】
その中でも好ましい化合物は、5-フェニル-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-フェニル-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(2,4,6-トリメチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(2,4-ジメチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(4-メチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(3,4-ジメチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(4-メトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(4-イソプロピルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(4-イソブチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(4-ビフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(4-ビフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(1-ナフチル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(1-ナフチル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール、5-(2-ナフチル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール、5-(2-ナフチル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタールであり、さらに好ましい化合物としては、5-フェニル-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール及び5-フェニル-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタールである。
【0027】
本発明の環式ジオール化合物は、例えば、下記<反応式1>に示すようにして製造することができる。
<反応式1>
【化12】
[式中、R及びXは、前記に同じ。]
【0028】
上記の<反応式1>に示すように、一般式(1)で表される化合物は、一般式(3)で表される化合物と、一般式(4)で表される化合物とを、酸性触媒の存在下で反応(アセタール化反応)させることにより製造することができる。反応は、通常、溶媒(例えば、トルエン等)中で実施することができる。溶媒を加熱還流し、生成する水を溶媒と共沸させて除去しながら反応させることができる。酸性触媒としては、触媒作用があれば特に限定されず、公知の酸性触媒が使用される。例えば、塩酸、硫酸、硝酸及びリン酸等の鉱酸;p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機酸;陽イオン交換樹脂、ゼオライト、シリカアルミナ、ヘトロポリ酸(例えば、リンタングステン酸、リンモリブデン酸等)等の固体酸;その他、各種ルイス酸等が挙げられる。一般式(4)で表される化合物の使用量は、一般式(3)で表される化合物1モルに対し、通常、0.5~3モル程度であり、好ましくは、0.8~2モル程度である。
【0029】
典型的には、本発明の環式ジオール化合物の製造方法としては、5位に置換基Xを有する1、3-シクロヘキサンジオン化合物と、2位に置換基Rを有する2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール化合物とを、トルエン溶媒中、酸性触媒存在下でアセタール化反応する製造方法が例示される。
本発明において、一般式(3)で表される化合物では、1,3-シクロヘキサンジオンの5位に置換基Xを有するため、1,3-シクロヘキサンジオンと比べて、一般式(4)で表される化合物とのジアセタール化が進行しやすくなり、好収率で目的とする一般式(1)で表される化合物を得ることができる。
【0030】
上記の一般式(3)で表される化合物は、<反応式2>に示すように、一般式(5)で表される化合物と一般式(6)で表される化合物とを、塩基の存在下に反応させた後、酸で処理することにより製造することができる。
<反応式2>
【化13】
[式中、Rは、同一又は異なって、それぞれ、炭素数1~3のアルキル基を示す。Xは前記に同じ。]
【0031】
で示される炭素数1~3のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基等が挙げられる。
【0032】
本反応は、公知の方法、例えば、Chemistry - A Eurpean Journal (2017), 23(49), 11757-11760、Zhurnal Obshchei Khimii (1957), 27. 3087-92
等に記載の方法に従い又は準じて実施することができる。
【0033】
本発明の環式ジオール化合物は、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリエステルポリオール樹脂等のモノマーとして使用することができる。
【0034】
本発明はまた、下記一般式(2)で表される構成単位を含有するポリカーボネート樹脂を提供する。当該ポリカーボネート樹脂は、本発明の環式ジオール化合物を含むモノマーとカルボニル前駆体化合物とを(重合)反応させることにより製造することができる。
【化14】
[式中、R及びXは前記に同じ。]
【0035】
一般式(2)において、R及びXの具体例及び好ましい例は、前記一般式(1)において記載されたR及びXの具体例及び好ましい例と同じである。
【0036】
本発明の環式ジオール化合物を含むモノマーには、本発明の環式ジオール化合物の他に、ポリカーボネート樹脂の構成単位として一般的に用いられるジヒドロキシ化合物を含んでいてもよい。該ジヒドロキシ化合物としては、例えば、脂肪族ジヒドロキシ化合物、芳香族ジヒドロキシ化合物等が挙げられる。
【0037】
つまり、本発明のポリカーボネート樹脂は、本発明の環式ジオール化合物に由来する一般式(2)で表される構成単位の他に、一般的なジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0038】
脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、様々なものが挙げられるが、特に、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、1,3-アダマンタンジメタノール、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)-プロパン、3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2-(5-エチル-5-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキサン-2-イル)-2-メチルプロパン-1-オール、イソソルビド、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等が挙げられる。
【0039】
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、様々なものを挙げることができるが、特に2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、及びビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、ビスフェノキシエタノールフルオレン等を挙げることができる。この他、ハイドロキノン、レゾルシン及びカテコール等を挙げることもできる。
【0040】
使用するモノマーにおいて、本発明の環式ジオール化合物の割合は、特に限定はなく、モノマーの全量中、例えば、1~80モル%であり、好ましくは1~60モル%であり、より好ましくは5~50モル%であり、特に好ましくは15~35モル%である。つまり、本発明のポリカーボネート樹脂において、本発明の環式ジオール化合物に由来する一般式(2)で表される構成単位の割合は、特に限定はなく、全構成単位中、例えば、1~80モル%であり、好ましくは1~60モル%であり、より好ましくは5~50モル%であり、特に好ましくは15~35モル%である。
【0041】
カルボニル前駆体化合物としては、例えば、ホスゲン、トリホスゲン、ジフェニルカーボネート等が挙げられる。
【0042】
一般式(2)で表される構成単位を含有するポリカーボネート樹脂の数平均分子量(Mn)は、10,000~100,000程度であり、重量平均分子量(Mw)は、10,000~100,000程度であり、多分散度(Mw/Mn)は1~5程度である。また、ガラス転移温度(Tg)は、100~200程度である。
【0043】
一般式(2)で表される構成単位を含有するポリカーボネート樹脂の屈折率(n)は、比較的大きく、通常、1.500~1.750であり、好ましくは1.599~1.750である。屈折率は、実施例に記載の方法で測定した値である。
【0044】
一般式(2)で表される構成単位を含有するポリカーボネート樹脂の複屈折のアッベ数(ν)は、通常、20.0~55.0であり、好ましくは25.0~33.0である。アッベ数は、実施例に記載の方法で測定した値である。
【0045】
本発明の環式ジオール化合物(一般式(1)で表される化合物)は、樹脂改質剤として使用することができる。具体的には、本発明の環式ジオール化合物を共重合用モノマーとして用い共重合させることにより、樹脂の特性を改質することができる。例えば、本発明の環式ジオール化合物の添加量を調整して共重合させることで、樹脂の屈折率、複屈折等の特性を調整することができる。対象となる樹脂は、例えば、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリエステルポリオール樹脂等が挙げられる。そのうち、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂が典型的である。
【0046】
一般的に、重合して得られた光学材料用の高分子において観測される複屈折を分類すると、配向複屈折、応力複屈折及び形態複屈折がある。その中で形態複屈折は、樹脂中の微細な繊維状物質が配列した場合などにみられるもので、通常、光学材料用の高分子の光学特性としては無視できる。配向複屈折は分子配向によるものであり、応力複屈折は成形時の残留応力に起因する。
【0047】
光学材料用の高分子は、複屈折が大きいと光学的な歪みが大きくなるため、例えば、レンズ用途に用いる場合、にじむ、ぼやけるという問題が生じる。そのため、より鮮明な見え方になるよう、複屈折を小さくすることが求められている。
【0048】
一般に用いられている光学材料用の高分子は、種々あるが、その中でもポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられ、特にポリカーボネート樹脂は、透明性、耐衝撃性、耐熱性、寸法安定性などに優れている。しかしながら、ビスフェノールAタイプのポリカーボネート樹脂は複屈折が大きく、光学材料用に用いるためには、複屈折を低下させる必要があった。
【0049】
本発明の環式ジオール化合物を用いて共重合した樹脂(特に、ポリカーボネート樹脂)は、負の複屈折を有するため、本発明の環式ジオール化合物由来の構成単位と、正の複屈折性を発現する他のジヒドロキシ化合物の構成単位とを共重合してなる樹脂とすることにより、複屈折を限りなくゼロに近づけることができる。当該樹脂は、複屈折を限りなくゼロに近づける必要のある用途、特に光学レンズ、光学フィルム、光学シートなどの光学材料用途に好適に用いることできる。適用可能な光学材料としては、特に限定はないが、例えば、スマートフォンのカメラのレンズ、車載カメラのレンズ、VR(仮想現実)又はMR(複合現実)用のゴーグル用レンズ、防犯カメラ用レンズ等が挙げられる。
【0050】
また、本発明の環式ジオール化合物を共重合した樹脂(特に、ポリカーボネート樹脂)は、屈折率が大きいという特徴を有している。そのため、本発明の環式ジオール化合物の含有量を調節することにより、各種レンズの設計に合わせて樹脂の屈折率を広範囲に調整することができる。
【0051】
本明細書において、「を含む」又は「含有する」なる表現には、「から必須としてなる」及び「からなる」の意味を包含する。
【実施例
【0052】
以下に実施例を掲げて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本実施例において、環式ジオール化合物の各種測定は以下の方法により測定した。また、特に言及していない化合物は試薬を使用した。
【0053】
<使用化合物>
・5-フェニル-1,3-シクロヘキサンジオン:Combi-Blocks株式会社製
・リンタングステン酸:富士フイルム和光純薬株式会社製
・トリメチロールエタン及びトリメチロールプロパン:東京化成工業株式会社製
・ビスフェノキシエタノールフルオレン:東京化成工業株式会社製
・ジフェニルカーボネート:東京化成工業株式会社製
・4-t-ブチルベンズアルデヒド:東京化成工業株式会社製
・2,4,6-トリメチルベンズアルデヒド:東京化成工業株式会社製
・2,4-ジメチルベンズアルデヒド:東京化成工業株式会社製
・2-ナフトアルデヒド:東京化成工業株式会社製
・4-メチルベンズアルデヒド:東京化成工業株式会社製
・3,4-ジメチルベンズアルデヒド:東京化成工業株式会社製
・4-メトキシベンズアルデヒド:東京化成工業株式会社製
・4-イソプロピルベンズアルデヒド:東京化成工業株式会社製
・4-イソブチルベンズアルデヒド:東京化成工業株式会社製
・トルエン:ナカライテスク株式会社製
・アセトン:ナカライテスク株式会社製
・マロン酸ジエチル:東京化成工業株式会社製
【0054】
<ガスクロマトグラフィー(GC)による分析>
環式ジオール化合物の純度は、下記の条件及び方法にてガスクロマトグラフィー(GC)分析を行い、面積百分率法より求めた。
[サンプル調整]
環式ジオール化合物0.1gにピリジン10ml加え室温で振り混ぜ、分析用サンプルとした。
【0055】
[測定条件]
機器:島津製作所製 GC-2020
カラム:アジレント・テクノロジー株式会社製DB-1 30m×0.25mm×0.25μm
カラム温度:80℃(保持時間5min)-昇温速度15℃/min-320℃(保持時間5min)
インジェクション温度/検出器温度:300℃/325℃ スプリット比:30 カラム流量1.17ml/min パージ流量3.0ml/min
検出器:FID
キャリアガス:ヘリウム
ガス線速度:30cm/sec
注入量:1μl
【0056】
<融点>
環式ジオール化合物の融点は、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製示差熱量測定装置DSC6220を用いて測定した。試料6.8mgを同社製アルミパンに入れて密封し、50ml/分の窒素気流下、昇温速度10℃/分で30℃から200℃まで昇温して、吸熱ピークを観測した。そのピークトップが示した温度を融点とした。
【0057】
<赤外吸収スペクトル(IRスペクトル)>
環式ジオール化合物のIRスペクトルは、赤外分光分析装置(株式会社パーキンエルマージャパン製Spectrum400)を用い、ATR法(減衰全反射法)で行った。
【0058】
<プロトン核磁気共鳴スペクトル(H-NMR)>
環式ジオール化合物のH-NMRは、重水素化された溶媒(重水素化クロロホルム、重水素化メタノール、重水素化ジメチルスルホキシド等)に溶かした後、核磁気共鳴装置(Bruker社製DRX-500)を用い、H-NMR(500MHz)測定で行った。
なお、H-NMR測定に用いられる溶媒には水のピークが見られる場合がある。重水素化クロロホルム含まれる水に由来するピークは1.56ppm付近、重水素化メタノールに含まれる水に由来するピークは4.87ppm付近、重水素化ジメチルスルホキシドに含まれる水に由来するピークは3.33ppm付近に存在する。
【0059】
<ガラス転移温度>
得られたポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製示差熱量測定装置DSC6220を用いて測定した。試料6.7mgを同社製アルミパンに入れて密封し、50ml/分の窒素気流下、昇温速度10℃/分で30℃から220℃まで昇温し、220℃から30℃まで降温速度10℃/分で冷却し、昇温速度10℃/分で30℃から220℃まで昇温し2ndRUNにおける変曲点をガラス転移温度とした。
【0060】
<数平均分子量、重量平均分子量及び多分散度>
ポリカーボネート樹脂約30mgをテトラヒドロフラン8mlで溶解して、分子量測定用の試料溶液を調製した。数平均分子量Mn及び重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)を用いて、下記の測定条件でポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び多分散度(Mw/Mn)を求めた。
(測定条件)
装置:ポンプ(株式会社島津製作所製LC-20AD型)
オートサンプラー(株式会社島津製作所製SIL-20A HT型)
検出器RI(株式会社島津製作所製RID-10A型)
カラムオーブン(株式会社島津製作所製CTO-20A型)
カラム:Shodex LF-802、2本(昭和電工株式会社製)
溶離液:ナカライテスク株式会社製 テトラヒドロフラン(THF)BHT約0.025%含有
カラム温度:40℃
流量:1.0mL/min
インジェクション量:100μl
解析法:PS換算分子量
使用標準ポリマー:Shodex STANDARD SM-105
【0061】
<屈折率>
後述の参考例にて作製した厚さ0.1mmのフィルムから、長さ4.0mm、幅0.8mmの長方形の試験片を切り出して測定試料とした。波長589nm(D線)の干渉フィルターを用いて、株式会社アタゴ製多波長アッベ屈折計DR-M2にて、JIS-K-7142の方法で屈折率nを測定した。測定は中間液としてジヨードメタン(東京化成工業株式会社製)を用いた。
【0062】
<複屈折>
試料は固体粘弾性測定装置(UBM、S1000-DVE3)に引張型治具を備えて加熱一軸延伸を行った。延伸停止後に恒温槽を開き、送風機にて冷却した。延伸フィルムを、光源装置としてHAYASHI-REPIC株式会社製 ルミナースエースLA-100USWを用い、王子計測機器(株)製位相差測定装置KOBRA-WPRを用いて、測定波長449.9、498.0、548.0、588.8、628.8、751.0nmの各波長で位相差を測定した。得られた波長548.0nm及び波長588.8nmの位相差と延伸フィルムの膜厚から、次式より複屈折Δnを求めた。尚、遅相軸が延伸方向と一致している場合は、Δnを正の値で示し、遅相軸が垂直の方向に一致している場合は、Δnを負の値で示した。
複屈折Δn=(測定波長548.0nmの位相差[nm])/(フィルム厚み[mm]×10
複屈折Δn=(測定波長588.8nmの位相差[nm])/(フィルム厚み[mm]×10
【0063】
<アッベ数>
後述の参考例にて作製した厚さ0.1mmのフィルムから、長さ4.0mm、幅0.8mmの長方形の試験片を切り出して測定試料とした。波長656nm(C線)、589nm(D線)、486nm(F線)の干渉フィルターを用いて、株式会社アタゴ製多波長アッベ屈折計DR-M2にて、JIS-K-7142の方法で各波長の屈折率n、n、nを測定し、これら測定値と次式よりアッベ数νを求めた。
ν=(1-n)/(n-n
測定は中間液としてジヨードメタン(東京化成工業株式会社製)を用いた。
【0064】
<全光線透過率>
上記の方法で作製した厚さ0.1mmのフィルムを測定試料とし、日本電色製Haze MeterNDH7000SPIIにて、JIS-K-7136の方法で全光線透過率を測定した。測定は3枚のフィルムに対して実施し、それらの測定で得られた実測値の平均値を測定値とした。
【0065】
[実施例1]
冷却管付きディーンスタークを装着した300mlナスフラスコに、5-フェニル-1,3-シクロヘキサンジオン12.5g(66.4mmol)、リンタングステン酸625mg、トリメチロールプロパン21.3g(159mmol)、トルエン125mlを加え、攪拌子を投入した。混合物を、マグネチックスターラーで攪拌しながら昇温して、トルエン還流下で、理論生成水量(132mmol、2.3g)を目途にして流出してくる生成水をディーンスタークで除去しつつ、2時間アセタール反応を行った。
【0066】
反応混合物を室温に戻し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液125mlで中和後、125mlのトルエンを加え水層と有機層に分けた。分けた有機層を40℃の温水125mlで水洗した。有機層を40℃、50mmHgに設定しエバポレーターにて溶剤を除去した。残存した有機層125gを室温で攪拌し結晶を取り出した。リンス液にはトルエンを用い析出した結晶をろ別した。その湿結晶16.0gを5mmHg、100℃条件で乾燥することにより、純度99.6%(GC面積百分率)の5-フェニル-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール(以下、「化合物1」とする)11.8g(28mmol)を得た。結晶の融点135℃であった。
【0067】
得られた化合物1について、IRスペクトル及びH-NMRスペクトルを測定した。得られた結果を、図1及び図2に示した。図中に示される下記特性ピークより5-フェニル-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタールであることを確認した。
【0068】
IR(cm-1):3365,2965,2948,2869,1474,1463,1358,1263,1253,1191,1162,1087,1061,1031,1000,969,820,756,699
【0069】
H-NMR(500MHz,ppm,CDCl):0.80(t,3H),0.87(t,3H),1.24(m,2H),1.33(m,2H),1.39(t,1H),1.49(d,1H),1.67(t,1H),1.96(d,2H),2.18(d,1H),2.76(d,1H),2.94(m,2H),3.70(m,10H),3.82(m,2H),7.20(m,3H),7.31(m,2H)
(なお、7.26ppm付近のピークは溶媒の重水素化クロロホルムに含まれるクロロホルムに由来するピークである。
【0070】
[実施例2]
トリメチロールプロパンをトリメチロールエタン19.1g(159mmol)に変更した以外は、実施例1と同様にして、純度95.1%(GC面積百分率)の5-フェニル-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール(以下、「化合物2」とする)11.0g(28mmol)を得た。結晶の融点135℃であった。
【0071】
得られた化合物2について、IRスペクトル及びH-NMRスペクトルを測定した。得られた結果を図3及び図4に示した。図中に示される下記特性ピークより5-フェニル-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタールであることを確認した。
【0072】
IR(cm-1):3467,3415,2944,2928,2876,1474,1359,1245,1206,1199,1159,1089,1050,1027,969,819,764,699
【0073】
H-NMR(500MHz,ppm,CDCl):0.70(s,6H),1.46(t,2H),1.72(d,1H),2.20(s,2H),2.48(d,1H),2.81(m,3H),3.72(m,12H),7.26(m,3H),7.36(m,2H)
(なお、7.26ppm付近のピークは溶媒の重水素化クロロホルムに含まれるクロロホルムに由来するピークである。
【0074】
[実施例3]
1Lビーカーに、4-t-ブチルベンズアルデヒド42.8g(264mmol)、アセトン396mlを入れ、室温にて撹拌しながら、10重量%水酸化ナトリウム水溶液264gを30℃以下の温度で、滴下した。その後、室温で2.5時間撹拌を行い、酢酸44gで中和後、アセトンを留去した。
酢酸エチル264mlを加えて、有機層を分取した。得られた有機層は、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄し、減圧濃縮を行い、純度90.7%(GC面積百分率)の淡黄色液体65.1gを得た。得られた反応粗物を、141~145℃、0.1~0.2kPaで減圧単蒸留を行い、純度98.8%(GC面積百分率)の淡黄色液体35.4gを得た。
【0075】
温度計、窒素導入管及び冷却管を備えた500mlの4ツ口フラスコにエタノール30ml、マロン酸ジエチル17.4g(110mmol)、20重量%ナトリウムエトキシドエタノール溶液37.4g(110mmol)を入れ、室温で30分間撹拌を行った。その後、70℃まで昇温し、以下同温度で、4-t-ブチルベンジリデンアセトン20.2g(100mmol)をエタノール30mlで溶解した溶液を25分間で滴下した。その後、エタノール80mlを追加後、昇温し、還流下、2時間撹拌を行った。
【0076】
次に、10重量%水酸化ナトリウム水溶液で還流下、加水分解を2時間行い、その後、常圧から減圧下、エタノール150mlを留去した。引き続き、室温まで冷却後、20重量%塩化水素水溶液80gを加え、還流下、脱炭酸反応を4時間行った。析出した結晶を、水50mlを4回用いてリンスし、減圧乾燥して、純度91.3%(GC面積百分率)の粗結晶25.6gを得た。続けて、酢酸エチル200mlを投入し、70℃、1時間の条件で攪拌し、析出している結晶をろ別するため酢酸エチル50mlを用いてリンスした後、100℃2時間で減圧乾燥後、純度98.9%(GC面積百分率)の淡濃色固体19.7gを得た。
【0077】
温度計、窒素導入管及び水分離器付き冷却管を備えた500ml4ツ口フラスコに5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオン12.4g(50mmol)、トリメチロールプロパン16.8g(125mmol)、リンタングステン酸625mmg、トルエン120mlを入れ、2.5時間還流温度で加熱撹拌を行った。反応終了後、室温まで冷却し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液50mlを加え、0.5時間撹拌を行った。その後、酢酸エチル50mlを加え、得られた有機層は、順次、温水洗浄、減圧濃縮し、ジアセタール粗物23.5gを得た。得られた粗物の精製は、トルエン90gで再結晶し、濾過、ケーキ洗浄(冷トルエン40ml)、100℃2時間の減圧乾燥後、純度98.5%(GC面積百分率)の5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール(以下、「化合物3」とする)14.8gを得た。
【0078】
得られた化合物3について、IRスペクトル及びH-NMRスペクトルを測定した。得られた結果を図5及び図6に示した。これより5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタールであることを確認した。
【0079】
IR(cm-1):3390,2961,2868,1462,1359,1252,1194,1163,1089,1030,999,971,833,730
【0080】
H-NMR(500MHz,ppm,CDCl):図6を参照。(なお、7.26ppm付近のピークは溶媒の重水素化クロロホルムに含まれるクロロホルムに由来するピークである。
【0081】
[実施例4]
1Lビーカーに2,4,6-トリメチルベンズアルデヒド50g(337mmol)を入れた以外は、実施例3と同様にして、純度96.7%(GC面積百分率)の5-(2,4,6-トリメチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール(以下、「化合物4」とする)15.6gを得た。
【0082】
得られた化合物4について、IRスペクトル及びH-NMRスペクトルを測定した。得られた結果を図7及び図8に示した。これより5-(2,4,6-トリメチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタールであることを確認した。
【0083】
IR(cm-1):3502,2961,2866,1459,1346,1210,1169,1091,1050,1032,976,802
【0084】
H-NMR(500MHz,ppm,CDCl):図8を参照。(なお、7.26ppm付近のピークは溶媒の重水素化クロロホルムに含まれるクロロホルムに由来するピークである。
【0085】
[実施例5]
1Lビーカーに2,4-ジメチルベンズアルデヒド50g(373mmol)を入れた以外は、実施例3と同様にして、純度98.8%(GC面積百分率)の5-(2,4-ジメチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール(以下、「化合物5」とする)5.3gを得た。
【0086】
得られた化合物5について、IRスペクトル及びH-NMRスペクトルを測定した。得られた結果を図9及び図10に示した。これより5-(2,4-ジメチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタールであることを確認した。
【0087】
IR(cm-1):3366,2955,2863,1361,1089,1033,976,808
【0088】
H-NMR(500MHz,ppm,CDCl):図10を参照。(なお、7.26ppm付近のピークは溶媒の重水素化クロロホルムに含まれるクロロホルムに由来するピークである。
【0089】
[実施例6]
1Lビーカーに2-ナフトアルデヒド25g(160mmol)を入れた以外は、実施例3と同様にして、純度94.6%(GC面積百分率)の5-(2-ナフチル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール(以下、「化合物6」とする)31.2gを得た。
【0090】
得られた化合物6について、IRスペクトル及びH-NMRスペクトルを測定した。得られた結果を、図11及び図12に示した。これより5-(2-ナフチル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタールであることを確認した。
【0091】
IR(cm-1):3350,2964,2869,1358,1181,1160,1088,1062,1033,972,745
【0092】
H-NMR(500MHz,ppm,CDOD):図12を参照。(なお、3.31ppm付近のピークは溶媒の重水素化メタノールに含まれるメタノールに由来するピークである。
【0093】
[実施例7]
1Lビーカーに2-ナフトアルデヒド25g(160mmol)を入れた以外は、実施例3と同様にして、純度93.9%(GC面積百分率)の5-(2-ナフチル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタール(以下、「化合物7」とする)5.8gを得た。
【0094】
得られた化合物7について、IRスペクトル及びH-NMRスペクトルを測定した。得られた結果を、図13及び図14に示した。これより5-(2-ナフチル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールエタンジアセタールであることを確認した。
【0095】
IR(cm-1):3389,2952,2872,1448,1348,1198,1085,1041,980,746
【0096】
H-NMR(500MHz,ppm,CDOD):図14を参照。(なお、3.31ppm付近のピークは溶媒の重水素化メタノールに含まれるメタノールに由来するピークである。
【0097】
[実施例8]
1Lビーカーに4-メチルベンズアルデヒド48g(400mmol)を入れた以外は、実施例3と同様にして、純度95.8%(GC面積百分率)の5-(4-メチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール(以下、「化合物8」とする)12.6gを得た。
【0098】
得られた化合物8について、IRスペクトル及びH-NMRスペクトルを測定した。得られた結果を、図15及び図16に示した。これより5-(4-メチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタールであることを確認した。
【0099】
IR(cm-1):3399,2960,2866,1356,1159,1088,1031,971,820,783
【0100】
H-NMR(500MHz,ppm,CDCl):図16を参照。(なお、7.26ppm付近のピークは溶媒の重水素化クロロホルムに含まれるクロロホルムに由来するピークである。
【0101】
[実施例9]
1Lビーカーに3,4-ジメチルベンズアルデヒド26.8g(200mmol)を入れた以外は、実施例3と同様にして、98.3%(GC面積百分率)の5-(3,4-ジメチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール(以下、「化合物9」とする)14.5gを得た。
【0102】
得られた化合物9について、IRスペクトル及びH-NMRスペクトルを測定した。得られた結果を、図17及び図18に示した。これより5-(3,4-ジメチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタールであることを確認した。
【0103】
IR(cm-1):3373,2963,2869,1356,1172,1088,1055,1031,972
【0104】
H-NMR(500MHz,ppm,CDCl):図18を参照。(なお、7.26ppm付近のピークは溶媒の重水素化クロロホルムに含まれるクロロホルムに由来するピークである。
【0105】
[実施例10]
1Lビーカーに4-メトキシベンズアルデヒド20.4g(150mmol)を入れた以外は、実施例3と同様にして、純度97.3%(GC面積百分率)の5-(4-メトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール(以下、「化合物10」とする)2.9gを得た。
【0106】
得られた化合物10について、IRスペクトル及びH-NMRスペクトルを測定した。得られた結果を、図19及び図20に示した。これより5-(4-メトキシフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタールであることを確認した。
【0107】
IR(cm-1):3404,2952,2878,1514,1355,1238,1157,1088,1031,971,830
【0108】
H-NMR(500MHz,ppm,DMSO-d):図20を参照。(なお、2.50ppm付近のピークは溶媒の重水素化ジメチルスルホキシドに含まれるジメチルスルホキシドに由来するピークである。
【0109】
[実施例11]
1Lビーカーに4-イソプロピルベンズアルデヒド44.4g(300mmol)を入れた以外は、実施例3と同様にして、純度99.3%(GC面積百分率)の5-(4-イソプロピルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール(以下、「化合物11」とする)44.4gを得た。
【0110】
得られた化合物11について、IRスペクトル及びH-NMRスペクトルを測定した。得られた結果を、図21及び図22に示した。これより5-(4-イソプロピルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタールであることを確認した。
【0111】
IR(cm-1):3392,2959,2866,1357,1161,1088,1054,1029,970
【0112】
H-NMR(500MHz,ppm,CDCl):図22を参照。(なお、7.26ppm付近のピークは溶媒の重水素化クロロホルムに含まれるクロロホルムに由来するピークである。
【0113】
[実施例12]
1Lビーカーに4-イソブチルベンズアルデヒド50g(308mmol)を入れた以外は、実施例3と同様にして、純度98.1%(GC面積百分率)の5-(4-イソブチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタール(以下、「化合物12」とする)12.2gを得た。
【0114】
得られた化合物12について、IRスペクトル及びH-NMRスペクトルを測定した。得られた結果を、図23及び図24に示した。これより5-(4-イソブチルフェニル)-1,3-シクロヘキサンジオントリメチロールプロパンジアセタールであることを確認した。
【0115】
IR(cm-1):3398,2955,2867,1358,1159,1088,1054,1029,970,729
【0116】
H-NMR(500MHz,ppm,CDCl):図24を参照。(なお、7.26ppm付近のピークは溶媒の重水素化クロロホルムに含まれるクロロホルムに由来するピークである。
【0117】
<ポリマーの製造>
[製造例1]
実施例1にて得られた化合物1を11.8g(0.03mol)、ビスフェノキシエタノールフルオレン48.5g(0.11mol)、ジフェニルカーボネート30.5g(0.14mol)、および2.5×10-2mol/Lの炭酸水素ナトリウム水溶液54.90μL(13.9×10-7mol)を攪拌機および留出装置付きの300mL四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下で攪拌し、200℃に加熱した。
【0118】
基質溶解後、80分かけて240℃まで段階的に昇温、150mmHgまで段階的に減圧した。さらに40分かけて段階的に真空になるまで減圧し、20分保持した後に生成したポリカーボネート樹脂(以下、「ポリカーボネート樹脂1」とする)を45g取り出した。なお、反応中は副成するフェノールを留去した。取り出したポリカーボネート樹脂1を粉砕し、ガラス転移温度を測定したところ、148℃であった。数平均分子量Mnは、31600、重量平均分子量Mwは、63800、多分散度Mw/Mnは2.0であった。得られた結果を表1に示した。
【0119】
[製造例2]
実施例2にて得られた化合物2を11.4g(0.03mol)、ビスフェノキシエタノールフルオレン48.5g(0.11mol)、ジフェニルカーボネート30.5g(0.14mol)、および2.5×10-2mol/Lの炭酸水素ナトリウム水溶液58.16μL(14.5×10-7mol)を製造例1と同様に生成したポリカーボネート樹脂(以下、「ポリカーボネート樹脂2」とする)を40g取り出した。取り出したポリカーボネート樹脂2を粉砕し、ガラス転移温度を測定したところ、152℃であった。数平均分子量Mnは、16900、重量平均分子量Mwは、32800、多分散度Mw/Mnは1.9であった。得られた結果を表1に示した。
【0120】
[製造例3]
実施例3にて得られた化合物3を6.48g(0.01mol)、ビスフェノキシエタノールフルオレン23.85g(0.05mol)、ジフェニルカーボネート15.0g(0.07mol)、および2.5×10-2mol/Lの炭酸水素ナトリウム水溶液26.9μL(6.7×10-7mol)を製造例1と同様に生成したポリカーボネート樹脂(以下、「ポリカーボネート樹脂3」とする)を25g取り出した。取り出したポリカーボネート樹脂3を粉砕し、ガラス転移温度を測定したところ、146℃であった。数平均分子量Mnは、9507、重量平均分子量Mwは、32100、多分散度Mw/Mnは3.4であった。得られた結果を表1に示した。
【0121】
<ポリカーボネート樹脂物性>
[参考例1]
製造例1にて得られたポリカーボネート樹脂1を、神藤金属工業所社製圧縮成型機にて、樹脂量0.8gを240℃、1MPaの圧力を加え1分間加熱し、20MPaの圧力で30秒間加熱した後、10MPaの圧力を加え1分30秒間加熱した。その後3分間冷却作業を行い、ポリカーボネートフィルムを得た。得られたポリカーボネートフィルムについて、物性を測定した。屈折率は、1.614であった。複屈折は、波長548.0nmでは、-0.36×10-3で、波長588.8nmでは、-0.31×10-3あった。アッベ数は25.6であった。全光線透過率は89%であった。得られた結果を表1に示した。
【0122】
[参考例2]
製造例2にて得られたポリカーボネート樹脂2を、樹脂量として0.8gを用いた以外は参考例1と同様にして、ポリカーボネートフィルムを得た。得られたポリカーボネートフィルムについて物性を測定した。屈折率は、1.619であった。複屈折は、波長548.0nmでは、-0.34×10-3で、波長588.8nmでは、-0.34×10-3あった。アッベ数は、26.9であった。全光線透過率は89%であった。得られた結果を表1に示した。
【0123】
【表1】
【0124】
以上の結果から、本発明の環式ジオール化合物を共重合して得られたポリカーボネート樹脂は、屈折率が大きく、負の複屈折を有することが確認された。
【0125】
[参考例3]
製造例1及び参考例1と同様にして、化合物1を5.8g(0.01mol)、ビスフェノキシエタノールフルオレン54.5g(0.12mol)、ジフェニルカーボネート30.5g(0.14mol)、および2.5×10-2mol/Lの炭酸水素ナトリウム水溶液56.0μL(14.2×10-7mol)で製造したポリカーボネートフィルムを得た。得られたポリカーボネートフィルムについて、物性を測定した。屈折率は、1.625であった。
【0126】
[参考例4]
製造例1及び参考例1と同様にして、化合物1を46.5g(0.11mol)、ビスフェノキシエタノールフルオレン12.1g(0.02mol)、ジフェニルカーボネート30.5g(0.14mol)、および2.5×10-2mol/Lの炭酸水素ナトリウム水溶液56.0μL(14.2×10-7mol)で製造したポリカーボネートフィルムを得た。得られたポリカーボネートフィルムについて、物性を測定した。屈折率は、1.562であった。
【0127】
以上の結果から、本発明の環式ジオール化合物の含有量を変えて共重合することにより、得られたポリカーボネート樹脂の屈折率を調整できることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の環式ジオール化合物は、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂又はポリエステルポリオール樹脂等のモノマーや樹脂改質剤として使用することができる。特に、環式ジオール化合物から誘導される構成単位を含有するポリカーボネート樹脂は、屈折率が大きく負の複屈折を有しているため、光学用途の材料として好適である。
図1
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