(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】車両のサイドドア構造及び衝突検出システム
(51)【国際特許分類】
B60R 21/01 20060101AFI20240215BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20240215BHJP
B60R 21/0136 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
B60R21/01 310
B60J5/04 Z
B60R21/0136
(21)【出願番号】P 2023512667
(86)(22)【出願日】2022-03-10
(86)【国際出願番号】 JP2022010498
(87)【国際公開番号】W WO2023170851
(87)【国際公開日】2023-09-14
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 真
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-030703(JP,A)
【文献】特開2013-212786(JP,A)
【文献】特開2008-105634(JP,A)
【文献】特開2005-231523(JP,A)
【文献】特開2000-233708(JP,A)
【文献】特開平05-278563(JP,A)
【文献】特開平05-278556(JP,A)
【文献】特開平04-078750(JP,A)
【文献】特開2016-179770(JP,A)
【文献】特開2009-001181(JP,A)
【文献】特開平09-315264(JP,A)
【文献】米国特許第10384519(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0152473(US,A1)
【文献】特開平05-246301(JP,A)
【文献】特開2006-306219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/01
B60R 21/0136
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向の少なくとも一側面に車両前後方向に並んで配置されたフロントサイドドアとリヤサイドドアとを有し、前記フロントサイドドアと前記リヤサイドドアとが閉じた状態で前記リヤサイドドアの前部が前記フロントサイドドアの後部の車幅方向内側に重なって配置される車両の衝突センサの取り付け構造であって、
前記リヤサイドドアに衝突を検出する第1の衝突センサを備え、
前記第1の衝突センサは、前記フロントサイドドアの後部と前記リヤサイドドアの前部との重なり部に配置されていることを特徴とする車両のサイドドア構造。
【請求項2】
前記フロントサイドドアは、車両前後方向に延びるインパクトバーを備え、
前記インパクトバーは後端部が前記重なり部まで後方に延び、
前記第1の衝突センサは、前記インパクトバーの後端部の車幅方向内側に正対した位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両のサイドドア構造。
【請求項3】
前記フロントサイドドアに衝突を検出する第2の衝突センサを備え、
前記フロントサイドドアは、前記インパクトバーの後端部に固定されて前記インパクトバーから前記第2の衝突センサに衝突荷重を伝達する荷重伝達部材を有し、
前記第1の衝突センサは、前記インパクトバーの後端部と前記荷重伝達部材との固定部の車幅方向内側に正対した位置に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の車両のサイドドア構造。
【請求項4】
前記リヤサイドドアは、当該リヤサイドドアの外壁を形成するリヤサイドドアウタパネルと、当該リヤサイドドアの内壁を形成するリヤサイドドアインナパネルと、を有し、
前記第1の衝突センサは、前記リヤサイドドアインナパネルの内壁面に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両のサイドドア構造。
【請求項5】
前記リヤサイドドアは、当該リヤサイドドアの外壁を形成するリヤサイドドアウタパネルと、当該リヤサイドドアの内壁を形成するリヤサイドドアインナパネルと、を有し、
前記第1の衝突センサは、前記リヤサイドドアインナパネルの内壁面に配置されていることを特徴とする請求項2または3に記載の車両のサイドドア構造。
【請求項6】
前記第1の衝突センサは、前記リヤサイドドアインナパネルにボルトによって固定され、
前記ボルトの軸線は、前記インパクトバーの延長方向中央線に面して配置されていることを特徴とする請求項5に記載の車両のサイドドア構造。
【請求項8】
前記フロントサイドドアは、当該フロントサイドドアの外壁を構成するフロントサイドドアウタパネルと、当該フロントサイドドアの内壁を構成するフロントサイドドアインナパネルとを有し、
前記第2の衝突センサは前記フロントサイドドアインナパネルに固定され、
前記荷重伝達部材は、一端部において前記インパクトバーとともに前記フロントサイドドアインナパネルに固定されていることを特徴とする請求項3に記載の車両のサイドドア構造。
【請求項9】
車幅方向の少なくとも一側面に車両前後方向に並んで配置されたフロントサイドドアとリヤサイドドアとを有し、前記フロントサイドドアと前記リヤサイドドアとが閉じた状態で前記リヤサイドドアの前部が前記フロントサイドドアの後部の車幅方向内側に重なって配置される車両に備えられた衝突検出システムであって、
前記フロントサイドドアに備えられ当該フロントサイドドアの衝突を検出する第2の衝突センサと、
前記リヤサイドドアに備えられ当該リヤサイドドアの衝突を検出する第1の衝突センサと、
前記第1の衝突センサ及び前記第2の衝突センサの両方が衝突を検出した場合に、前記車両の側突を判定する側突判定部と、を備え、
前記第1の衝突センサは、前記フロントサイドドアの後部と前記リヤサイドドアの前部との重なり部に配置されていることを特徴とする車両の衝突検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のサイドドアに設置する衝突センサの取り付け構造及び側突を検出する衝突検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の乗用車等の車両には、走行中の衝突時にエアバッグ等の乗員保護装置を作動させるために、衝突を検出するセンサが備えられている。車両の衝突を検出するセンサとしては、加速度センサや車両部品の歪を検出する圧力センサ等が使用されている。
【0003】
例えば特許文献1では、車両のサイドドアに衝突を検出する加速度センサを備えている。更に、特許文献1で開示された車両には、車両のフロアにも加速度センサが備えられている。これにより、サイドドアとフロアの両方のセンサが衝突を検出した場合にサイドエアバッグ等の乗員保護装置を作動させるようにすることで、車両停止時に乗員等がサイドドアを開いて周囲の障害物に当ててしまった場合やセンサの誤検出等において、車両走行中の衝突時以外で乗員保護装置が作動することを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のように車両のフロアに衝突検出用のセンサを備えた場合、側突時にサイドドアからフロアに衝突荷重を迅速に伝達させる必要がある。したがって、例えばサイドドアからフロアに衝突荷重を伝達させるブラケット等の部材が必要になり、車両の重量増加及びコスト増加を招いてしまう。
【0006】
そこで、一側面にフロントサイドドアとリヤサイドドアとを有する車両である場合、フロントサイドドアに1個、リヤサイドドアに1個の衝突センサを備え、この2個のセンサの両方で衝突を検出した場合に側突であることを検出する方法が考えられる。
【0007】
しかしながら、このようにフロントサイドドアとリヤサイドドアに夫々衝突センサを備えた車両では、例えば電柱にフロントサイドドアが衝突した場合のように、フロントサイドドアのみに衝突荷重を受けた場合にリヤサイドドアに設置した衝突センサによる検出が遅れ、乗員保護装置の作動が遅れてしまう可能性が考えられる。
【0008】
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、フロントサイドドア及びリヤサイドドアを備えた車両において、フロントサイドドアへの側突時に迅速に衝突を検出可能な車両のサイドドア構造及び衝突検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の車両のサイドドア構造は、車幅方向の少なくとも一側面に車両前後方向に並んで配置されたフロントサイドドアとリヤサイドドアとを有し、前記フロントサイドドアと前記リヤサイドドアとが閉じた状態で前記リヤサイドドアの前部が前記フロントサイドドアの後部の車幅方向内側に重なって配置される車両の衝突センサの取り付け構造であって、前記リヤサイドドアに衝突を検出する第1の衝突センサを備え、前記第1の衝突センサは、前記フロントサイドドアの後部と前記リヤサイドドアの前部との重なり部に配置されていることを特徴とする。
【0010】
これにより、車両のフロントサイドドアに側突した場合に、フロントサイドドアの後部がその車幅方向内側に配置されたリヤサイドドアの前部を車幅方向内側に押して、リヤサイドドアにおけるフロントサイドドアとの重なり部に衝突荷重が迅速に伝達される。したがって、フロントサイドドアへの側突時において、リヤサイドドアに設けられた第1の衝突センサによって衝突を迅速に検出することが可能になる。
【0011】
好ましくは、前記フロントサイドドアは、車両前後方向に延びるインパクトバーを備え、前記インパクトバーは後端部が前記重なり部まで後方に延び、前記第1の衝突センサは、前記インパクトバーの後端部の車幅方向内側に正対した位置に配置されているとよい。
これにより、フロントサイドドアへの側突時において、インパクトバーの後端部から第1の衝突センサに衝突荷重を迅速に伝達させることができる。
【0012】
好ましくは、前記フロントサイドドアに衝突を検出する第2の衝突センサを備え、前記フロントサイドドアは、前記インパクトバーの後端部に固定されて前記インパクトバーから前記第2の衝突センサに衝突荷重を伝達する荷重伝達部材を有し、前記第1の衝突センサは、前記インパクトバーの後端部と前記荷重伝達部材との固定部の車幅方向内側に正対した位置に配置されているとよい。
これにより、フロントサイドドアへの側突時において、インパクトバーの後端部から荷重伝達部材を介して第2の衝突センサに衝突荷重を迅速に伝達させるとともに、インパクトバーの後端部と荷重伝達部材との固定部から第1の衝突センサに衝突荷重を伝達させることができる。したがって、フロントサイドドアへの側突時に第1の衝突センサ及び第2の衝突センサの両方で迅速に衝突を検出することができる。
【0013】
好ましくは、前記リヤサイドドアは、当該リヤサイドドアの外壁を形成するリヤサイドドアウタパネルと、当該リヤサイドドアの内壁を形成するリヤサイドドアインナパネルと、を有し、前記第1の衝突センサは、前記リヤサイドドアインナパネルの内壁面に配置されているとよい。
これにより、リヤサイドドア内に第1の衝突センサを容易に配置することができる。そして、フロントサイドドアへの側突時には、フロントサイドドアが車幅方向内側に移動してリヤサイドドアウタパネルを車幅方向内側に押した後にリヤサイドドアインナパネルを押して第1の衝突センサに衝突荷重を伝達することができる。
【0014】
好ましくは、前記第1の衝突センサは、前記リヤサイドドアインナパネルにボルトによって固定され、前記ボルトの軸線は、前記インパクトバーの延長方向中央線に面して配置されているとよい。
これにより、フロントサイドドアへの側突時に、インパクトバーがボルトを押して第1の衝突センサに衝突荷重を迅速に伝達させることができる。
【0015】
好ましくは、第1の衝突センサは、前記リヤサイドドアインナパネルの内壁面に直接固定されているとよい。
これにより、フロントサイドドアへの側突時に、リヤサイドドアインナパネルに衝突荷重が作用したときに第1の衝突センサは迅速に衝突を検出することができる。
【0016】
好ましくは、前記フロントサイドドアは、当該フロントサイドドアの外壁を構成するフロントサイドドアウタパネルと、当該フロントサイドドアの内壁を構成するフロントサイドドアインナパネルとを有し、前記第2の衝突センサは前記フロントサイドドアインナパネルに固定され、前記荷重伝達部材は、一端部において前記インパクトバーとともに前記フロントサイドドアインナパネルに固定されているとよい。
これにより、フロントサイドドアへの側突時において、インパクトバーから荷重伝達部材及びフロントサイドドアインナパネルを介して第2の衝突センサに衝突荷重を迅速に伝達することができる。
【0017】
また、本発明の車両の衝突検出システムは、車幅方向の少なくとも一側面に車両前後方向に並んで配置されたフロントサイドドアとリヤサイドドアとを有し、前記フロントサイドドアと前記リヤサイドドアとが閉じた状態で前記リヤサイドドアの前部が前記フロントサイドドアの後部の車幅方向内側に重なって配置される車両に備えられた衝突検出システムであって、前記フロントサイドドアに備えられ当該フロントサイドドアの衝突を検出する第2の衝突センサと、前記リヤサイドドアに備えられ当該リヤサイドドアの衝突を検出する第1の衝突センサと、前記第1の衝突センサ及び前記第2の衝突センサの両方が衝突を検出した場合に、前記車両の側突を判定する側突判定部と、を備え、前記第1の衝突センサは、前記フロントサイドドアの後部と前記リヤサイドドアの前部との重なり部に配置されていることを特徴とする。
【0018】
これにより、フロントサイドドアへの側突時において、フロントサイドドアに設けられた第2の衝突センサだけでなくリヤサイドドアに設けられた第1の衝突センサでも衝突を迅速に検出することが可能になる。そして、第1の衝突センサと第2の衝突センサの両方で衝突を検出した場合に車両の側突を判定するので、衝突の誤判定を抑制するとともに、フロントサイドドアへの側突時には側突を迅速に判定することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の車両のサイドドア構造及び衝突検出システムによれば、フロントサイドドアへの側突時に、リヤサイドドアに設けられた第1の衝突センサに衝突荷重を迅速に伝達して、第1の衝突センサで衝突を迅速に検出することができる。
そして、本発明の車両の衝突検出システムでは、更に車両のフロントドアに第2の衝突センサを備え、第1の衝突センサと第2の衝突センサの両方で衝突を検出した場合に側突であることを判定するので、衝突の誤判定を抑制するとともに、フロントサイドドアへの側突時には側突を迅速に判定して、側突判定の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両の左サイドドアの構造を示す側面図である。
【
図2】本実施形態に係る車両のフロントサイドドアとリヤサイドドアの重なり部の構造を示す横断面図である。
【
図3】本実施形態に係るリヤサイドドア側突センサの固定部付近の構造を示す左サイドドアの縦断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る乗員保護システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
本実施形態のサイドドア構造及び衝突検出システムを採用する車両は、内部に車室を有し、車幅方向左右の一側面に2つのサイドドアを夫々有している。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る車両のサイドドアの構造を示す側面図である。なお、
図1は、車両の左サイドドア(フロントサイドドア5及びリヤサイドドア6)を車室内側から視た図であり、後述するフロントサイドドアトリム14及びリヤサイドドアトリム34は取り外して図示している。
図2は、フロントサイドドア5及びリヤサイドドア6の重なり部7付近の構造を示す横断面図である。
図2は、
図1中に記載したA-A部の断面図である。
図3は、本実施形態に係るリヤサイドドア側突センサの固定部付近の構造を示す左サイドドアの縦断面図である。
図3は、
図2中に記載したB-B部の断面図である。
【0023】
図1、2に示すように、車両の左側部には、車室8の左側面の前部を覆うフロントサイドドア5と車室8の左側面の後部を覆うリヤサイドドア6を有している。フロントサイドドア5とリヤサイドドア6は、車両前後方向に並んで配置されている。
本実施形態の車両は、側面にフロントサイドドア5とリヤサイドドア6との間にピラーを有しておらず、フロントサイドドア5の後部及びリヤサイドドア6の前部が車幅方向外側に開く、所謂観音開きドアのサイドドアを採用している。
【0024】
フロントサイドドア5及びリヤサイドドア6を閉じた状態で、フロントサイドドア5の後端部とリヤサイドドア6の前端部は車両の側面視で重なっている。リヤサイドドア6の前端部が車幅方向内側に位置し、フロントサイドドア5の後端部が車幅方向外側に位置する。このフロントサイドドアと5リヤサイドドア6の重なり部7には、雨水等の車室8内への侵入を防ぐウエザーストリップ10が備えられている。
【0025】
フロントサイドドア5は、フロントサイドドア5の外板を構成するフロントサイドドアウタパネル11と、フロントサイドドアウタパネル11の車幅方向内側に配置されたフロントサイドドアインナパネル12と、を有している。フロントサイドドアウタパネル11とフロントサイドドアインナパネル12との間には、ドアウインドウ等を収納する空間13が形成されている。また、フロントサイドドアインナパネル12の車室8内側には、フロントサイドドアインナパネル12を覆うようにフロントサイドドアトリム14が設けられている。フロントサイドドアウタパネル11及びフロントサイドドアインナパネル12は鋼板で形成されている。フロントサイドドアトリム14は例えば樹脂で形成されている。
【0026】
フロントサイドドア5には、車両側突時にフロントサイドドア5の車室8内側への潰れを抑制するために、インパクトバー15が備えられている。インパクトバー15は、例えば鋼部材によって断面が円筒状のパイプによって形成されている。インパクトバー15は、リヤサイドドア6の前端部と重なる位置まで車両後方に延びている。
【0027】
フロントサイドドア5には、衝突を検出するフロントサイドドア側突センサ20(第2の衝突センサ)が備えられている。フロントサイドドア側突センサ20は、加速度を検出するセンサであり、フロントサイドドアインナパネル12とフロントサイドドアトリム14との間に設置されている。フロントサイドドア側突センサ20は、フロントサイドドア5の後部かつインパクトバー15と略同一あるいは近傍の上下位置に設置され、センサブラケット21を介してフロントサイドドアインナパネル12の内壁面に固定されている。
【0028】
また、フロントサイドドアウタパネル11とフロントサイドドアインナパネル12との間の空間13には、インパクトバー15とセンサブラケット21とを接続するインパクトバーブラケット22(荷重伝達部材)が備えられている。インパクトバーブラケット22は、帯板状の鋼板を屈曲して構成されており、一端部がフロントサイドドアインナパネル12とともにインパクトバー15に溶接によって固定され(固定部25)、他端部がフロントサイドドアインナパネル12におけるセンサブラケット21の近傍位置に溶接によって固定されている(固定部26)。インパクトバーブラケット22は、インパクトバー15に受けた荷重をセンサブラケット21を介してフロントサイドドア側突センサ20に伝達し易いように金属等の剛体で構成されている。
【0029】
図2、3に示すように、リヤサイドドア6は、車両のリヤサイドドア6の外板を構成するリヤサイドドアウタパネル31と、リヤサイドドアウタパネル31の車幅方向内側に配置されたリヤサイドドアインナパネル32と、を有している。リヤサイドドアウタパネル31とリヤサイドドアインナパネル32は、鋼板等で形成されている。リヤサイドドア6の前部においては、リヤサイドドアウタパネル31とリヤサイドドアインナパネル32との車幅方向の隙間が小さく構成されている。
【0030】
また、リヤサイドドアインナパネル32の車室8内側には、リヤサイドドアインナパネル32を覆うようにリヤサイドドアトリム34が設けられている。リヤサイドドアトリム34は、例えば樹脂で形成されている。
【0031】
リヤサイドドア6には、衝突を検出するリヤサイドドア側突センサ35(第1の衝突センサ)が備えられている。リヤサイドドア側突センサ35は、加速度を検出するセンサである。リヤサイドドア側突センサ35は、リヤサイドドアインナパネル32とリヤサイドドアトリム34との間に配置され、リヤサイドドアインナパネル32の内壁面にボルト36によって直接固定されている。また、リヤサイドドア側突センサ35は、フロントサイドドア5の後部とリヤサイドドア6の前部との重なり部7に配置されている。更に、リヤサイドドア側突センサ35は、インパクトバー15の後端部と同一の車両前後位置かつ上下位置に配置されている。
【0032】
また、リヤサイドドア側突センサ35を固定するボルト36は、車室8側から外側に向かって締結する構造になっている。ボルト36の先端は、リヤサイドドアウタパネル31とリヤサイドドアインナパネル32との間に突出している。更に、ボルト36の軸線は、インパクトバー15の後端部における軸線と、車両前後方向及び上下方向が同一位置に配置されている。即ち、ボルト36の軸線は、インパクトバー15の後端部における軸線(延長方向中央線)に、フロントサイドドアインナパネル12及びリヤサイドドアウタパネル31を挟んで車幅方向内側に正対して配置されている。
【0033】
図4は、本発明の衝突検出システムを採用した側突用の乗員保護システム50の構成図である。
乗員保護システム50は、上記のフロントサイドドア側突センサ20及びリヤサイドドア側突センサ35の検出情報を使用して、乗員保護装置51を作動させるシステムである。
【0034】
乗員保護システム50は、フロントサイドドア側突センサ20、リヤサイドドア側突センサ35、エアバッグコントロールユニット52(側突判定部)、乗員保護装置51を備えている。
【0035】
乗員保護装置51は、サイドエアバッグやカーテンエアバッグ等の側突時に乗員を保護する装置であり、フロントサイドドア側突センサ20及びリヤサイドドア側突センサ35が備えられた車幅方向左側に備えられている。
【0036】
フロントサイドドア側突センサ20及びリヤサイドドア側突センサ35の検出情報は、エアバッグコントロールユニット52に入力される。
【0037】
エアバッグコントロールユニット52は、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、中央処理装置(CPU)等を含んで構成された制御装置であり、乗員保護装置51を作動制御する。エアバッグコントロールユニット52は、フロントサイドドア側突センサ20において衝突相当の所定値以上の加速度を検出し、かつリヤサイドドア側突センサ35においても衝突相当の所定値以上の加速度が検出された場合に、車両の乗員保護装置51を作動させる。
【0038】
なお、以上の実施形態では、車両の左側について説明したが、車両の右側についても同様に、フロントサイドドア及びリヤサイドドアに夫々衝突センサを有し、乗員保護システムが備えられている。また、車両の左右いずれか一方のフロントサイドドア側突センサ20とリヤサイドドア側突センサ35とにより衝突を検出した場合に、衝突を検出した側の乗員保護装置51だけでなく、左右反対側の乗員保護装置やその他の乗員保護装置を作動させてもよい。
【0039】
以上のように、本実施形態の車両では、車両のフロントサイドドア5とリヤサイドドア6に夫々衝突検出用のセンサを備えている。この2個の衝突センサの両方での所定値以上の加速度を検出した場合、即ちフロントサイドドア側突センサ20とリヤサイドドア側突センサ35の両方で衝突相当の加速度を検出した場合にサイドエアバッグ等の乗員保護装置51を作動させるので、乗員保護装置51の誤作動を防止できる。例えば乗員の乗降の際にフロントサイドドア5あるいはリヤサイドドア6を開いたときに周囲の障害物に衝突させてしまった場合や、いずれか一方の衝突センサが誤検出した場合に、乗員保護装置51の不要な作動を防止することができる。
【0040】
本実施形態では、車両のサイドドアは観音開きドアであり、リヤサイドドア6に設けるリヤサイドドア側突センサ35が、フロントサイドドア5の後部とリヤサイドドア6の前部との重なり部7に配置されている。
【0041】
これにより、車両のフロントサイドドア5が例えば電柱に側突した場合に、フロントサイドドア5の後部がその車幅方向内側に位置するリヤサイドドア6の前部を車幅方向内側に押して、衝突荷重がリヤサイドドア6の前部に伝達される。したがって、フロントサイドドア5への側突時において、フロントサイドドア5に設けられたフロントサイドドア側突センサ20だけでなくリヤサイドドア6に設けられたリヤサイドドア側突センサ35でも衝突を迅速に検出することが可能になり、乗員保護装置51を迅速に作動させることができる。
【0042】
更に、フロントサイドドア5には、後端がフロントサイドドア5とリヤサイドドア6との重なり部7まで後方に延びているインパクトバー15を備えている。そして、リヤサイドドア側突センサ35はインパクトバー15の後端部に正対した位置に配置されているので、フロントサイドドア5への側突時において、インパクトバー15の後端部からリヤサイドドア側突センサ35に衝突荷重を迅速に伝達させることができる。
【0043】
一方、フロントサイドドア5に設けられたフロントサイドドア側突センサ20は、フロントサイドドアインナパネル12の車室8内側にセンサブラケット21を介して配置されているが、インパクトバー15とセンサブラケット21とをフロントサイドドアインナパネル12及びインパクトバーブラケット22によって連結している。
【0044】
これにより、フロントサイドドア5への側突時において、インパクトバー15からフロントサイドドアインナパネル12だけでなくインパクトバーブラケット22、フロントサイドドアインナパネル12及びセンサブラケット21を介してフロントサイドドア側突センサ20に衝突荷重を迅速に伝達させ、フロントサイドドア側突センサ20にて速やかに衝突を検出することができる。
【0045】
また、リヤサイドドア側突センサ35は、インパクトバー15とインパクトバーブラケット22との固定部25に正対して配置されているので、フロントサイドドア5への側突時において、インパクトバー15の後端部からインパクトバーブラケット22等を介してフロントサイドドア側突センサ20に衝突荷重が伝達される際に、インパクトバー15の後端部とインパクトバーブラケット22との固定部25からリヤサイドドア側突センサ35にも衝突荷重を伝達させることができる。したがって、フロントサイドドア5への側突時にフロントサイドドア側突センサ20及びリヤサイドドア側突センサ35の両方で迅速に衝突を検出することができる。
【0046】
また、リヤサイドドア6は、当該リヤサイドドア6の外壁を形成するリヤサイドドアウタパネル31と、当該リヤサイドドア6の内壁を形成するリヤサイドドアインナパネル32と、を有し、リヤサイドドア側突センサ35は、リヤサイドドアインナパネル32の内壁面に配置されている。更に、フロントサイドドア5とリヤサイドドア6との重なり部7において、リヤサイドドアウタパネル31とリヤサイドドアインナパネル32は車幅方向に隣接して配置されている。これにより、側突時にフロントサイドドア5の後部が車幅方向内側に移動してリヤサイドドアウタパネル31の前部を車幅方向内側に押した際にすぐにリヤサイドドアインナパネル32を押してリヤサイドドア側突センサ35に衝突荷重を伝達することができ、リヤサイドドア側突センサ35において迅速に衝突を検出することが可能になる。
【0047】
また、リヤサイドドア側突センサ35は、リヤサイドドアインナパネル32にボルト36によって固定され、ボルト36の軸線は、インパクトバー15の延長方向中央線上と同一の車両上下位置に配置されているので、フロントサイドドア5への側突時に、インパクトバー15からボルト36を介してリヤサイドドア側突センサ35に衝突荷重を迅速に伝達させることができる。なお、ボルト36の先端は、リヤサイドドアウタパネル31とリヤサイドドアインナパネル32との間に突出しているので、側突時にインパクトバー15の後端部が車幅方向内側に移動した際に、リヤサイドドアウタパネル31がボルト36の先端を集中的に押して、リヤサイドドア側突センサ35による衝突の検出をより迅速に行うことが可能になる。
【0048】
また、リヤサイドドア側突センサ35はリヤサイドドアインナパネル32の内壁面に直接固定されているので、フロントサイドドア5への側突時に、リヤサイドドアインナパネル32に衝突荷重が作用したときにリヤサイドドア側突センサ35によって迅速に衝突を検出することができる。
【0049】
本発明は、上記の実施形態に限定するものではない。
例えば、上記実施形態では、フロントサイドドア側突センサ20及びリヤサイドドア側突センサ35の検出情報によってフロントサイドドア5への衝突を検出しているが、リヤサイドドア側突センサ35のみの検出情報より衝突を検出してもよい。
【0050】
あるいは、例えばフロントドアインナパネルの外側面に圧力センサを備え、当該圧力センサの検出情報とリヤサイドドア側突センサ35の検出情報とに基づいて衝突を検出してもよい。また、フロントサイドドア側突センサ20及びリヤサイドドア側突センサ35の他に、フロントサイドドア5に圧力センサ等の衝突を検出するセンサを備え、当該フロントサイドドア5のセンサとフロントサイドドア側突センサ20のいずれか一方とリヤサイドドア側突センサ35の検出情報により衝突を検出し、他方のセンサによって補助的に衝突を判定してもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、フロントサイドドア側突センサ20及びリヤサイドドア側突センサ35の検出情報をサイドエアバッグ等の乗員保護装置51の作動判定用に使用しているが、他の制御に利用してもよい。
【0052】
また、フロントサイドドア5やリヤサイドドア6等の詳細な構造については適宜変更してもよい。
本発明はフロントサイドドア及びリヤサイドドアを有する車両に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 車両
5 フロントサイドドア
6 リヤサイドドア
7 重なり部
11 フロントサイドドアウタパネル
12 フロントサイドドアインナパネル
15 インパクトバー
20 フロントサイドドア側突センサ(第2の衝突センサ)
22 インパクトバーブラケット(荷重伝達部材)
25 固定部
31 リヤサイドドアウタパネル
32 リヤサイドドアインナパネル
35 リヤサイドドア側突センサ(第1の衝突センサ)
36 ボルト
51 乗員保護装置
52 エアバッグコントロールユニット(側突判定部)