(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】液化装置
(51)【国際特許分類】
F25J 1/00 20060101AFI20240215BHJP
【FI】
F25J1/00 D
(21)【出願番号】P 2020008148
(22)【出願日】2020-01-22
【審査請求日】2022-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000109428
【氏名又は名称】日本エア・リキード合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金田 拓也
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-015065(JP,A)
【文献】特開2012-007868(JP,A)
【文献】特開平01-269875(JP,A)
【文献】特開平05-045050(JP,A)
【文献】特開平06-094358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25J 1/00- 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気分離装置で製造された窒素ガスを液化する液化装置であって、
前記空気分離装置からの導入される窒素ガスを圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機で圧縮した圧縮窒素ガスを冷却し液化する熱交換器と、
圧縮窒素ガスを膨張させて寒冷を発生させる膨張タービンと、
前記膨張タービンの入口圧力を一定に制御し、膨張率を最大値に維持する膨張タービン
入口ノズルと、
前記液化装置および前記空気分離装置の使用電力を積算した積算電力値に基づいて、所定時間経過後の
前記液化装置および前記空気分離装置の使用する予測電力量を求める予測電力算出部と、
前記予測電力量と、
前記液化装置および前記空気分離装置の使用する瞬時電力の移動平均とを比較し、大きい値の方を制御対象として、目標値を超えないように限りなく近づけるように、圧縮機の吐出流量を制御する電力デマンド制御部と、
を備える、液化装置。
【請求項2】
前記液化装置は、
膨張弁と、
前記膨張弁の入口と出口の温度差を制御する温度制御部を備える、請求項1に記載の液化装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液化装置を備える空気分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気分離装置で製造された窒素ガスを液化する液化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、1台以上のガス用圧縮機と、1台以上のガス用膨張タービンと、ガスと液化天然ガスとを熱交換させる熱交換器とを備えた液化プロセスにより、前記液化天然ガスの寒冷を利用して前記ガスを液化する方法を開示している。特許文献1は、供給される液化天然ガスの増量時には前記膨張タービンを停止又は減量運転し、供給される液化天然ガスの減量時には前記膨張タービンを稼働又は増量運転する。
【0003】
液化製品の製造量を増減させたいときには、圧縮機の負荷を変動させることが行われている。圧縮機の駆動には電力が必要であり、通常、定量運転が行われているため圧縮機の電力使用量は一定であるが、液化製品の製造量を増加させたいときには、通常よりも多い電力を供給する必要がある。
ところが、商用電力は電力会社など予め契約で定められており、これを守らないと多額の罰金が科せられる。つまり、電力契約の超過防止が絶対に必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電力契約の超過防止のために、最大運転点を余裕をもったところに維持した固定運転が行われていたため液化製品の製造量の最大化が行われていなかった。さらに、外気温度や冷却水温度などの変化に伴い系内の圧力や温度のバランスがくずれ最適効率で運転することも難しかった。
そこで、本発明は、各時間帯における契約電力上限値に応じた液化装置の自動負荷調整を行い、液化製品の製造量の最大化及び最適効率運用が可能な液化装置を提供することを目的とする。
また、液化装置を備える空気分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液化装置は、
使用電力を積算した積算電力値に基づいて、所定時間経過後(例えば10~40分後)の予測電力量を求める予測電力算出部と、
前記予測電力量と、瞬時電力の移動平均(例えば1分)とを比較し、大きい値の方を制御対象として、目標値を超えないように限りなく近づけるように、圧縮機の吐出流量(の可変)を制御する電力デマンド制御部と、を備える。
「目標値」は、例えば、各時間帯における契約電力の上限値まで使用させるときは、契約の最大電力量である。
液化装置の負荷調整を自動化し、効率を高めることができる。
前記圧縮機の吐出流量を可変にすることで、液化装置全体の製造量を増減できる。
【0007】
前記液化装置は、
製品ガスを圧縮する圧縮機と、
圧縮された圧縮製品ガスを冷却する熱交換器と、
熱交換器の中間から導出された圧縮製品ガスを膨張する膨張タービンと、
熱交換器から導出された冷却(または液化)圧縮製品ガスを膨張する膨張弁と、
膨張弁で膨張された液化製品ガスを気液に分離する気液分離器と、
液化製品の実製造量を求める製造量算出部と、
を備えていてもよい。
前記液化装置は、前記膨張タービンの入口圧力を一定に制御し、膨張率を最大値に維持する膨張タービン入口ノズルを備えていてもよい。
前記液化装置は、
前記膨張弁の入口と出口の温度を測定する温度センサと、
前記温度センサで測定された、膨張弁の入口と出口の温度の差を制御する温度制御部を備えていてもよい。
これにより、膨張タービンの処理量が変化してもフラッシュロスを最小にできる。膨張タービンと膨張弁への流量バランスが崩れると膨張弁の2次側でのフラッシュロスが増えるが、膨張弁の入口と出口の温度差を小さくするようにまたは所定範囲内に収まるように制御することでこれを防止できる。
【0008】
(作用効果)
上記構成によれば、液化装置全体の負荷調整に伴い、原料となる窒素ガスなどの供給元である空気分離装置も連動して負荷調整されることで原料の放出ロスが完全にゼロに制御される。
また、空気分離装置の全体負荷調整は、電力デマンド制御部の制御により決まる液化装置の負荷目標に応じて高度制御を使用し、一切の手動介在なく自動的に負荷調整が行われ、各製品純度や発生量を適切に制御される。
また、意図的に液化製品の減量を行う場合は、電力デマンド制御部による制御において「目標値」を任意設定することで任意の製造量に自動的に減量制御される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1の液化装置および空気分離装置を示す図である。
【
図2】実施形態1の電力デマンド制御の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお、以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
【0011】
(実施形態1)
実施形態1の液化装置1および空気分離装置2について
図1を用いて説明する。
液化装置1は、空気分離装置2からの窒素ガス導入管L1と、窒素ガスを圧縮する圧縮機3と、圧縮機3で圧縮した圧縮窒素ガスをLNG寒冷源7の寒冷を利用して冷却、液化する熱交換器6と、熱交換器6で中間温度まで冷却された圧縮窒素ガスの一部を分岐して導出する管L4と、管L4に設けた圧縮窒素ガスを膨張させて寒冷を発生させる膨張タービン4と、膨張タービン4で膨張した窒素ガスを、窒素ガスの冷源として熱交換器6に導入し、昇温後に圧縮機3の吸入側に合流させる管L5と、気液分離器13と、気液分離器13から取り出される液化製品の導出ラインL8と、分散制御装置9とを備える。
【0012】
膨張タービン4は、寒冷を供給する。具体的には、膨張タービン4の動作は以下の通りである。高圧に圧縮された圧縮窒素ガスは、タービンケーシングを通って、膨張タービン入口ノズル(不図示)で中間圧力まで断熱膨張し、高速ガスとしてタービンロータに入る。窒素ガスは、更に出口圧力まで断熱膨張しながら、タービンロータに膨張仕事を行ない温度降下する。このようにタービン入ロガスに比べて温度降下したガスは、タービンから出て、熱交換機6へ送られ、寒冷を供給する。タービンロータで発生した動力は主軸の他端に直結された制動ファンに伝達され、制動ガスを昇温、昇圧することによって、タービンで得た動力が系外に取り出される。
本実施形態において、膨張タービン入口ノズルは、膨張タービン4の入口圧力を一定に制御し、膨張率を最大値に維持する。
【0013】
圧縮機3で高圧に圧縮されて圧縮窒素ガスは、管L2を通じて熱交換器6へ送られる。熱交換器6で冷却された圧縮窒素ガスは、膨張弁5で膨張した後、気液分離器13に導入される。気液分離器13内の液化窒素は管L8から導出され、液化窒素貯槽(不図示)等に送られる。気液分離器13内の窒素ガスは、管L5へ合流し熱交換器6へ導入され圧縮窒素ガスの冷却源の一部となり、昇温した後、圧縮機3の吸入側の窒素ガス導入管L1へ合流する。
また、膨張弁5の入口と出口の温度を測定する温度センサが設けられている。
【0014】
分散制御装置9は、製造量算出部91と、予測電力算出部92と、電力デマンド制御部93と、温度制御部94と、各種データを記憶しているメモリ95と、リアルタイムに圧縮機3に使用された使用電力(瞬時電力)を、電力メータから取得する取得部96を備える。
製造量算出部91は、液化窒素の実製造量を求める。
予測電力算出部92は、使用電力を積算した積算電力値に基づいて、圧縮機3に使用される、所定時間経過後の予測電力量を求める。
積算電力値は、設定された所定時間内(例えば、算出する直前の20分~60分間などの設定時間内)の総使用電力量である。積算電力値=Σ使用電力値(所定時間内の累積値)。
本実施形態では、予測電力算出部92は、30分経過後の予測電力量をリアルタイムに算出する。
予測電力量(kW/h)の算出方法は、上記積算電力値を所定時間で除算して平均値を求め、これを予測電力量としてもよく、積算電力値の単位時間当たりの変化量(傾き)求め、この変化量に応じてと予測電力量を算出してもよい。
電力デマンド制御部93は、予測電力量と、圧縮機3に使用された瞬時電力の移動平均(例えば1分)とを比較し、大きい値の方を制御対象として、目標値を超えないように限りなく近づけるように、圧縮機3の吐出流量の可変制御をする。
温度制御部94は、膨張弁5の入口と出口の温度の差を制御する。
【0015】
分散制御装置9およびその構成要素は、少なくとも、1つ以上のプロセッサーと、処理手順が規定されたプログラムを記憶するメモリとを有して構成されていてもよく、オンプレミスのサーバ装置、クラウドのサーバ装置、専用回路またはファームウエアなどで構成されていてもよい。
【0016】
図2は、2軸グラフであり、右縦軸に製造量、左縦軸に電力量、横軸に時間を示す。予測電力量は折れ曲がり実線、デマンド制限値(目標値)は破線、それらよりも下方に製造量をエリア線で示す。
本実施形態によれば、契約電力の使用を最大化でき、液体窒素の製造量を従来よりも3から5%増量することができ、液化効率も2%向上することができた。また、契約電力に近づいたときに発せられていたアラームがなくなり、液化装置1の操作変更回数も削減でき、空気分離装置2及び液化装置1の自動運転化にも寄与するものとなった。
【0017】
(別実施形態)
(1)特に明示していないが、各配管に、制御弁、圧力調整装置、流量制御装置などが設置され、弁開閉調整、圧力調整または流量調整が行われていてもよい。
(2)膨張タービン4は、軸流式とラジアル式のいずれでもあってもよい。液化装置1は、単一の膨張タービンを有している構成に限定されず、複数の膨張タービンが直列または並列に配置されていてもよい。
(3)圧縮機3は、単体で構成されていてもよい、複数の圧縮機が直列に多段に配置されて圧縮機ユニットを構成してあってもよい。
(4)液化装置1は、単一の熱交換機6を有している構成に限定されず、複数の熱交換器を並列配置し、圧縮機ユニットの多段階構成に合わせて、熱交換器の温端と冷端、中間端への配管経路が構成されていてもよい。
(5)熱交交換器6は、LNG寒冷源7の寒冷を利用していたが、これに制限されず、冷凍機から供給される寒冷を利用してもよく、複数の膨張タービンからの寒冷を利用してもよい。
【図面の符号の説明】
【0018】
1 液化装置
2 空気分離装置
3 圧縮機
4 膨張タービン
5 膨張弁
6 熱交換器
9 分散制御装置
13 気液分離器