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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】円板送出装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 1/00 20060101AFI20240215BHJP
【FI】
G07D1/00 Z GBL
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022187301
(22)【出願日】2022-11-24
(62)【分割の表示】P 2020559728の分割
【原出願日】2019-09-05
(65)【公開番号】P2023018086
(43)【公開日】2023-02-07
【審査請求日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2018226971
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116987
【氏名又は名称】旭精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】梅田 正義
【審査官】山本 裕太
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-123851(JP,A)
【文献】特開平11-195155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に対し傾斜した面を備えるベース体と、
円板を貯留する貯留部と、
前記ベース体の上に配置された回転駆動可能な回転部材と、
前記ベース体に設けられ、装置外に向けて送出される円板が通る送出通路と、
前記送出通路を介して互いに対向する案内部材及び送出部材とを備え、
前記回転部材が、回転軸線方向に貫通する円状の貫通孔と、円板を回転方向に押して移動させる押動部とを有し、前記貯留部から前記回転部材の上に送り込まれて前記貫通孔を通過した円板を前記押動部によって回転方向に移動させ、
前記案内部材が、前記回転方向の所定位置まで移動してきた円板を前記送出通路に向けて案内し、
前記送出部材が、前記案内部材との距離を変化させる方向に往復移動可能であり、付勢部材によって前記案内部材に向けて付勢されながら、前記案内部材との間に挟み込んだ円板を前記付勢部材の付勢力によって送出する、円板送出装置であって、
前記貯留部の底部が、テーパーと、当該テーパーの下端に繋がるように設けられ、前記回転部材に対向する円形開口と、前記円形開口の周壁面の周方向における前記傾斜した面の下方側に位置する最下方領域の前記回転部材の直上当該周方向に所定間隔で並んで設けられた複数の突起とを備え、
前記複数の突起は、前記円板と接触することにより、前記最下方領域おける前記円板の前記周壁面への密着を阻止するとともに、前記円板を前記回転部材の前記貫通孔に向けて案内することを特徴とする円板送出装置。
【請求項2】
前記突起は、前記円形開口の中心軸線に沿う方向の両側および当該中心軸線に直行する方向の両側のそれぞれに、前記突起の中心から外縁に向けて下るテーーを有する形状であることを特徴とする請求項1に記載の円板送出装置。
【請求項3】
前記突起は、半球形状、円錐形状又は多角錘形状に形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の円板送出装置。
【請求項4】
前記回転部材の前記回転軸線を中心とする縁に、径方向の外側から内側に向かって下るテーパーを設けたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の円板送出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬貨、メダル等の円板を送出する円板送出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ベース体と、円板を貯留する貯留部と、回転駆動可能な回転部材と、装置外に向けて送出される円板が通る送出通路と、送出通路を介して互いに対向する案内部材及び送出部材とを備える円板送出装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の円板送出装置としての出幣器は、ベース体としてのベースと、円板たる硬貨を貯留する貯留部としての集幣漏斗と、回転部材としての回転盤と、案内部材としての案内手段と、送出部材としての移動部品とを備える。硬貨は、円柱状の移動部品と、板状の案内手段との間にある通路を通って、器外に弾き出される。移動部品と案内手段とは、前述の通路を介して互いに対向する。回転駆動可能な回転盤は、厚み方向に貫通する円状の置幣孔と、押し上げ部品とを備え、集幣漏斗から送り込まれた硬貨を置幣孔で捕捉した後、置幣孔内からベースの上面に落下させる。また、回転盤は、ベースの上面に落下した硬貨を、回転盤の下面から下方に向けて突出する押し上げ部品によって回転方向に押して移動させる。案内手段は、移動部品よりも回転盤の回転方向上流側の位置において、押し上げ部品によって押されてきた硬貨に案内辺を接触させてその硬貨を前述の通路に向けて案内する。移動部品は、案内手段との距離を変化させる方向に往復移動可能であり、ばねによって案内手段に向けて付勢されながら、案内手段の案内辺との間に挟み込んだ硬貨をばねの付勢力によって通路に沿って弾き出す。
【0004】
ユーザーは、出幣器にセットする硬貨のサイズを変更する場合、その硬貨のサイズに合わせて、移動部品と案内手段との距離を変更する必要がある。特許文献1に記載の出幣器において、ユーザーは、軸を中心にして案内手段を回動させて案内手段の姿勢を変化させることで、移動部品と案内手段との距離を変更することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実用新案登録第3104019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この出幣器においては、案内手段の姿勢が変化するのに伴って、案内手段の案内辺の延びる方向、即ち、案内辺による硬貨の案内方向が変化する。案内手段の姿勢が大きなサイズの硬貨に合わせて設定されると、案内辺による硬貨の案内方向が移動部品の移動方向とほぼ直交する方向になる。この方向に移動する硬貨が移動部品にぶつかると、送出部材としての移動部品が移動可能な方向に良好に移動せずにコインジャムを引き起こし易くなるという課題がある。
【0007】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、貯留部の円形開口の最下方領域におけるコインの滞留がより良好に抑えられる円板送出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様は、水平方向に対し傾斜した面を備えるベース体と、円板を貯留する貯留部と、前記ベース体の上に配置された回転駆動可能な回転部材と、前記ベース体に設けられ、装置外に向けて送出される円板が通る送出通路と、前記送出通路を介して互いに対向する案内部材及び送出部材とを備え、前記回転部材が、回転軸線方向に貫通する円状の貫通孔と、円板を回転方向に押して移動させる押動部とを有し、前記貯留部から前記回転部材の上に送り込まれて前記貫通孔を通過した円板を前記押動部によって回転方向に移動させ、前記案内部材が、前記回転方向の所定位置まで移動してきた円板を前記送出通路に向けて案内し、前記送出部材が、前記案内部材との距離を変化させる方向に往復移動可能であり、付勢部材によって前記案内部材に向けて付勢されながら、前記案内部材との間に挟み込んだ円板を前記付勢部材の付勢力によって送出する、円板送出装置であって、前記貯留部の底部が、テーパーと、当該テーパーの下端に繋がるように設けられ、前記回転部材に対向する円形開口と、前記円形開口の周壁面の周方向における前記傾斜した面の下方側に位置する最下方領域の前記回転部材の直上当該周方向に所定間隔で並んで設けられた複数の突起とを備え、前記複数の突起は、前記円板と接触することにより、前記最下方領域おける前記円板の前記周壁面への密着を阻止するとともに、前記円板を前記回転部材の前記貫通孔に向けて案内することを特徴とする円板送出装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、貯留部の底部の円形開口の最下方領域におけるコインの滞留がより良好に抑えることができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係るコインホッパーを上方から示す斜視図である。
図2】ホッパーヘッドを取り外した状態の同コインホッパーを示す斜視図である。
図3】同コインホッパーの一部を斜め上方から示す分解斜視図である。
図4】同コインホッパーの一部を斜め下方から示す分解斜視図である。
図5】同コインホッパーのピンブラケットを示す斜視図である。
図6A】同コインホッパーの回転ディスクの回転に伴うコインの挙動を説明するための平断面図である。
図6B】同回転ディスクの回転に伴うコインの挙動を説明するための平断面図であり、図6Aよりも同回転ディスクの回転が進んだ状態を示す。
図6C】同回転ディスクの回転に伴うコインの挙動を説明するための平断面図であり、図6Bよりも同回転ディスクの回転が進んだ状態を示す。
図6D】同回転ディスクの回転に伴うコインの挙動を説明するための平断面図であり、図6Cよりも同回転ディスクの回転が進んだ状態を示す。
図7】ホッパーヘッドを取り外した状態の同コインホッパーの長手方向における一端部を示す平面図である。
図8】同コインホッパーの長手方向の一端部を示す平断面図である。
図9】ホッパーヘッドを取り外した状態の同コインホッパーの長手方向における一端部を示す分解斜視図である。
図10】同コインホッパーにおいて、案内ローラの位置と、案内ローラによって案内されるコインが送出ローラに対してぶつかる方向との関係を説明するための平面図である。
図11】同コインホッパーにおけるピンブラケットの取り付け態様の第1例を説明するための斜視図である。
図12】同ピンブラケットの取り付け態様の第2例を説明するための斜視図である。
図13】比較例のコインホッパーのホッパーヘッド及び回転ディスクを示す断面図である。
図14】実施形態に係るコインホッパーのホッパーヘッド及び回転ディスクを示す断面図である。
図15】変形例に係るコインホッパーの長手方向の一端部を示す平面図である。
図16】実施形態に係るコインホッパーを示す側面図である。
図17】同コインホッパーを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を適用した円板送出装置として、円板たるコインを送出するコインホッパーの一実施形態について説明する。なお、以下の図面においては、各構成を解り易くするために、実際の構造と各構造における縮尺及び数等を異ならせる場合がある。また、説明の対象となる部位を解り易くするために、非対象の部位における符号の記載を省略する場合がある。
【0012】
図1は、実施形態に係るコインホッパー1を上方から示す斜視図である。図2は、貯留部としてのホッパーヘッド200を取り外した状態のコインホッパー1を示す斜視図である。コインホッパー1は、ベース体2と、ホッパーヘッド200と、回転部材としての回転ディスク30と、架台80とを備える。ホッパーヘッド200は、ベース体2の上面に取り付けられる。ホッパーヘッド200の底部には、テーパー202と、テーパー202の下端に繋がる円形開口203とが設けられる。円形開口203は、ベース体2上に配置される回転ディスク30と上下方向において対向する。
【0013】
ホッパーヘッド200内には、コインがばら積みの状態で貯留され、一部のコインは上述の円形開口203を通じて回転ディスク30の上に積み上げられる。回転ディスク30の上面に載ったコインは、回転ディスク30の回転駆動に伴って1枚ずつ仕分けされて後述の送出通路から送出される。送出通路の上方は、通路カバー(後述の図3の44)によって覆われる。コインとしては、貨幣、トークン等の代用貨幣、遊技機で用いられるメダル、その他の疑似硬貨などが挙げられる。なお、本発明に係る円板送出装置にセットされる円板の平断面の形状は、正円に限られない。平断面が楕円状の扁平体、及び平断面が多角形(例えば7角形、12角形)の扁平体なども、本発明に係る円板送出装置にセットされる円板となり得る。
【0014】
架台80は、ベース体2を下方から支持しながら、ベース体2の下面側に設けられる後述の駆動部(後述の図4の50)を覆う。
【0015】
図3は、コインホッパー1の一部を斜め上方から示す分解斜視図である。扁平な直方体状のベース体2の上面には、円形の底面3aと、底面3aの外縁から立ち上がる周壁3bとを有する円形凹部3が設けられる。円形凹部3の底面3aには、円中心の位置に中央貫通孔3cが設けられ、且つ円中心からずれた位置に第1長穴3d、第2長穴3e、及び位置ガイド穴3fが設けられる。中央貫通孔3cには、駆動部の駆動軸53がベース体2の下面側から貫通する。第1長穴3dには、第1規制ピン15a及び第1乗り上げピン15bからなる第1ピンユニット15がベース体2の下面側から貫通して底面3aよりも上側に突出する。第2長穴3eには、第2規制ピン16a及び第2乗り上げピン16bからなる第2ピンユニット16がベース体2の下面側から貫通して底面3aよりも上側に突出する。位置ガイド穴3fには、後述のピンブラケットの被ガイド部12aがベース体2の下面側から挿入される。
【0016】
円形凹部3の周壁3bは、全周に渡って繋がっておらず、周方向の所定領域に開口部を有する。この周壁3bは、コインの周方向(回転ディスク30の回転方向)への移動をガイドする役割を担う。
【0017】
円盤状の回転ディスク30は、ベース体2の円形凹部3内に配置され、駆動軸53を軸にして回転駆動される。図3における時計回り方向が回転ディスク30の正回転方向であり、反時計回り方向が回転ディスク30の逆回転方向である。回転ディスク30が正回転方向に回転するのに伴って、ベース体2の上面の長手方向一端部に設けられた送出通路49からコインが1枚ずつ送出される。
【0018】
以下、回転ディスク30の回転軸線を中心とする円の径方向を単に径方向と言う。また、径方向において、回転ディスク30の回転軸線に近づく側を内側と言う。また、径方向において、回転ディスク30の回転軸線から遠ざかる側を外側と言う。
【0019】
回転ディスク30は、中心に設けられた中心孔31と、中心孔31よりも径方向の外側の位置において回転方向に並ぶ5つのコイン捕捉孔32と、中心孔31を囲むように上面に設けられた円錐形の中央凸部33とを有する。中央凸部33は、回転ディスク30の上に載ったコインを攪拌する役割を担う。
【0020】
中心孔31には、駆動部の駆動軸53が貫通し、回転ディスク30を回転駆動する。ディスク厚み方向(回転軸線方向)に貫通するコイン捕捉孔32は、回転ディスク30の上に載ったコインを、底面30aと平行な姿勢にして捕捉するものである。コイン捕捉孔32の周壁面は、上向きに拡開するテーパー状の形状になっており、コインをコイン捕捉孔32内に落下させ易くする。
【0021】
ベース体2の上面における長手方向他端部には、円形窪み3gが設けられる。モータ70の先端部が円形窪み3g内に挿入された状態で、モータ70がベース体2に固定される。なお、ベース体2の上面には、保持ユニット18が固定されるが、保持ユニット18については後に詳述する。
【0022】
送出通路49の幅方向の一端部には、透過型光学センサからなるコイン検知センサ41が配置される。このコイン検知センサ41は、送出通路49の床面側に配置される受光素子と、天面側に配置される発光素子とを有し、発光素子から受光素子に向けての光路をコインによって遮られることにより、送出通路49内のコインを検知する。
【0023】
なお、円形凹部3をベース体2の上面に設けた例を示したが、ベース体2の上面に固定した部材に円形凹部3を設けてもよい。また、ホッパーヘッド200の下端部を円形凹部として機能させてもよい。
【0024】
図4は、コインホッパー1の一部を斜め下方から示す分解斜視図である。回転ディスク30の下面において、5つのコイン捕捉孔32のそれぞれの近傍には、第1押動体34及び第2押動体35が設けられる。第1押動体34及び第2押動体35は、回転ディスク30の下面から下方に向けて突出する。第1押動体34は、第2押動体35よりも径方向の内側に位置する。第1押動体34及び第2押動体35のそれぞれは、正回転方向の下流側の側面でコインを正回転方向に押す。第1押動体34及び第2押動体35の前述の側面は、平面視において回転ディスク30の中心から径方向の外側に向けて延びるインボリュート曲線上に位置する。
【0025】
図3において、コイン捕捉孔32によって捕捉されたコインは、コイン捕捉孔32内に留まらず、コイン捕捉孔32を通過して、ベース体2の円形凹部3の底面3a上に落下する。回転ディスク30の厚み方向において、回転ディスク30の下面と、円形凹部3の底面3a上に落下したコインの上面との間には、コインの厚みよりも小さなクリアランスが形成される。より詳しくは、図4において、回転ディスク30の下面から下方に向けての第1押動体34及び第2押動体35の突出量は、コインの厚みの2倍未満に設定されている。このため、2枚以上のコインが重なった状態でコイン捕捉孔32を通過することはなく、円形凹部の底面(図3の3a)上に落下したコインの上に重なるコインは、コイン捕捉孔32内に留まる。
【0026】
ベース体2の下面は、複数のギヤ及び固定軸を備える駆動部50を保持する。駆動部50の駆動軸53には、駆動軸53を中心にして駆動軸53とともに回転するディスクギヤ54が固定される。駆動部50は、ディスクギヤ54の他に、モータギヤ58、第1中間ギヤ57、第2中間ギヤ56、及び第3中間ギヤ55を有する。
【0027】
ベース体2の上面側に固定されたモータ70のモータ軸71は、ベース体2を貫通して下面側に突出する。ベース体2の下面側において、モータ軸71には、モータ軸71を中心にしてモータ軸71とともに回転するモータギヤ58が固定される。モータ70は、正転及び逆転が可能な直流モータである。
【0028】
第1中間ギヤ57は、第1小径ギヤ部57a、第1大径ギヤ部57b、及び第1固定軸57cを有する。第1固定軸57cは、ベース体2の下面に固定される。同一の部材からなる第1小径ギヤ部57a及び第1大径ギヤ部57bは、回転中心位置に設けられた貫通孔を有する。この貫通孔に通された第1固定軸57cは、第1小径ギヤ部57a及び第1大径ギヤ部57bを回転自在に保持する。第1中間ギヤ57は、第1小径ギヤ部57a及び第1大径ギヤ部57bのうち、上側に位置する第1大径ギヤ部57bをモータギヤ58に噛み合わせる。また、第1中間ギヤ57は、下側に位置する第1小径ギヤ部57aを、後述する第2中間ギヤ56の第2大径ギヤ部56bに噛み合わせる。モータギヤ58の回転駆動力は、モータギヤ58と、第1中間ギヤ57の第1大径ギヤ部57bとの噛み合い部において、第1大径ギヤ部57b及び第1小径ギヤ部57aに伝達される。
【0029】
第2中間ギヤ56は、第2小径ギヤ部、第2大径ギヤ部56b、及び第2固定軸56cを有する。図4において、第2小径ギヤ部は、第2大径ギヤ部56bの裏側に存在する。第2固定軸56cは、ベース体2の下面に固定される。同一の部材からなる第2小径ギヤ部及び第2大径ギヤ部56bは、回転中心位置に設けられた貫通孔を有する。この貫通孔に通された第2固定軸56cは、第2小径ギヤ部及び第2大径ギヤ部56bを回転自在に保持する。第2中間ギヤ56は、第2小径ギヤ部及び第2大径ギヤ部56bのうち、下側に位置する第2大径ギヤ部56bを第1中間ギヤ57の第1小径ギヤ部57aに噛み合わせる。また、第2中間ギヤ56は、上側に位置する第2小径ギヤ部を、後述する第3中間ギヤ55の第3大径ギヤ部55bに噛み合わせる。第1小径ギヤ部57a及び第1大径ギヤ部57bの回転駆動力は、第1小径ギヤ部57aと第2大径ギヤ部56bとの噛み合い部において、第2大径ギヤ部56b及び第2小径ギヤ部に伝達される。
【0030】
第3中間ギヤ55は、第3小径ギヤ部55a、第3大径ギヤ部55b、及び第3固定軸55cを有する。第3固定軸55cは、ベース体2の下面に固定される。同一の部材からなる第3小径ギヤ部55a及び第3大径ギヤ部55bは、回転中心位置に設けられた貫通孔を有する。この貫通孔に通された第3固定軸55cは、第3小径ギヤ部55a及び第3大径ギヤ部55bを回転自在に保持する。第3中間ギヤ55は、第3小径ギヤ部55a及び第3大径ギヤ部55bのうち、上側に位置する第3大径ギヤ部55bを第2中間ギヤ56の第2小径ギヤ部に噛み合わせる。また、第3中間ギヤ55は、下側に位置する第3小径ギヤ部55aを、ディスクギヤ54に噛み合わせる。第2小径ギヤ部及び第2大径ギヤ部56bの回転駆動力は、第2小径ギヤ部と第3大径ギヤ部55bとの噛み合い部で、第3大径ギヤ部55b及び第3小径ギヤ部55aに伝達される。
【0031】
第3小径ギヤ部55a及び第3大径ギヤ部55bの回転駆動力は、第3小径ギヤ部55aとディスクギヤ54との噛み合い部で、ディスクギヤ54及び駆動軸53に伝達される。駆動軸53の回転駆動力は、回転ディスク30に伝達される。
【0032】
ベース体2の下面側は、駆動部50の他に、送出ブラケット21及びピンブラケット12を保持する。
【0033】
ベース体2の下面における長手方向の一端部には、駆動部50の駆動軸53を中心にした周方向の軌道に沿って延びるガイド溝3hが設けられる。このガイド溝3h内には、送出ブラケット21が配置される。送出ブラケット21における長手方向の一端部の上面には、送出ローラ20が回転可能に設けられる。ガイド溝3hの長手方向の一端部には、ベース体2の上面に向けて貫通する開口が設けられており、送出ローラ20はその開口を通じてベース体2の上面よりも上側に突出する。送出ローラ20は、その開口の長手方向の長さ範囲内で往復移動が可能である。送出ブラケット21は、ばね22によってばね22側から送出ローラ20側に向けて付勢される。送出ローラ20に対し、ばね22以外の部材による力が加えられない状態では、送出ローラ20は、往復移動範囲内における復動側の端(付勢側の端)に位置する。以下、この位置をホームポジションと言う。
【0034】
送出ローラ20は、ホームポジションにあるときに、後述の案内ローラに最も近づく。また、送出ローラ20は、ホームポジションから往動するにつれて、後述の案内ローラとの距離を大きくする。
【0035】
図5は、ピンブラケット12を示す斜視図である。ピンブラケット12は、本体部12f、第1フィン部12b、第2フィン部12c、第3フィン部12d、及び被ガイド部12aを有する。第1フィン部12bは、駆動軸(図4の53)を中心とする周方向に延びる姿勢で本体部12fに固定される。また、第2フィン部12cは、第1フィン部12bよりも径方向の外側で、駆動軸を中心とする周方向に延びる姿勢で本体部12fに固定される。また、第3フィン部12dは、本体部12fよりも径方向の外側で径方向に延びる姿勢で本体部12fに固定される。第1フィン部12bの上面には、第1ピンユニット15が設けられる。また、第2フィン部12cの上面には、第2ピンユニット16が設けられる。また、本体部12fの上面には、被ガイド部12aが設けられる。
【0036】
第3フィン部12dには、貫通穴12eが設けられる。この貫通穴12eには、後述する図11に示されるように、雄ねじ13が通される。貫通穴12eに通された雄ねじ13は、図4に示されるベース体2の下面に設けられた3つの雌ねじ部14のうち、何れか1つに締め込まれる。この締め込みにより、ピンブラケット12がベース体2の下面に固定される。
【0037】
図6A図6Dは、回転ディスク30の回転に伴うコインCの挙動を説明するための平断面図である。図6A図6Dでは、回転ディスク30の厚み方向における第1押動体34及び第2押動体35の位置での断面を上方から示す。また、図6A図6Dでは、便宜上、5つのコイン捕捉孔32のうちの2つだけにコインCが捕捉された状態を示すが、実際には、全てのコイン捕捉孔32にコインCが捕捉されるケースが殆どである。
【0038】
回転ディスク30が正回転(図中時計回り方向の回転)すると、回転ディスク30の上に載っているコインCがコイン捕捉孔32の周囲のテーパー状の周壁面、及び中央凸部33によって攪拌されながら、コイン捕捉孔32内に捕捉される。コイン捕捉孔32内に捕捉されたコインCは、コイン捕捉孔32を通過して、円形凹部3の底面(図3の3a)上に落下し、第1押動体34によって正回転方向に押されて移動する。このとき、コインCは、コイン捕捉孔32の真下に留まらず、遠心力によって径方向の外側に移動して、コイン側面をベース体2の円形凹部3の周壁3bに接触させる。周壁3bは、コインCの回転方向への移動を案内する。周壁3bに対するコイン側面の接触圧は、遠心力によるものが殆どであるので、大きな力にはならない。
【0039】
コインCは、第1押動体34によって正回転方向に押されながら、図6Aに示されるように、周壁3bにおける壁の存在しない開口部(以下、周壁開口部と言う)の位置まで移動する。周壁3bの開口部の位置では、コインCが遠心力によって径方向の外側に向けて移動し、一部を周壁3bと同じ曲率の円よりも径方向の外側に位置させる。
【0040】
周壁3bの開口部における正回転方向の上流側の端部の付近には、案内部材としての案内ローラ17が、周壁3bと同じ曲率の円よりも径方向の外側に配置される。また、案内ローラ17よりも正回転方向の下流側の位置には、送出部材としての送出ローラ20が、周壁3bと同じ曲率の円よりも径方向の外側に配置される。案内ローラ17及び送出ローラ20は、送出通路(図3の49)を介して互いに対向する。
【0041】
図6Aに示される状態の後、第1押動体34によって更に正回転方向に押されるコインCは、正回転方向と、径方向の外側に向かう方向とに移動して案内ローラ17に接触した後、案内ローラ17によって送出通路に向けて案内される。その後、コインCは、図6Bに示されるように、更に正回転方向、及び径方向の外側に移動して、第1押動体34から離間するとともに、第2押動体35に接触して、第2押動体によって押されるようになる。そして、コインCは、正回転方向における上流側の側面を案内ローラ17に接触させた状態で、正回転方向における下流側の側面を、送出ローラ20及び第2規制ピン16aに接触させる。規制部材としての第2規制ピン16aは、コインCの正回転方向への移動を規制して、コインCを径方向外側に向けて案内する。なお、図6Bにおいて、送出ローラ20は、ホームポジションにある。
【0042】
図6Bに示される状態の後、第2押動体35によって更に押されるコインCは、図6Cに示されるように、更に径方向外側に移動して、第2規制ピン16aから離間する。このとき、送出ローラ20は、図6Cの矢印で示されるように、コインCによって往動方向に押されて往動する。この往動により、コインCは、送出ローラ20と案内ローラ17との間に挟み込まれる。
【0043】
図6Cに示される状態の後、第2押動体35によって押されるコインCが更に径方向の外側に移動すると、図6Dに点線で示されるように、送出ローラ20が案内ローラ17との距離をコインCの直径とほぼ等しくする位置まで往動する。この直後、送出ローラ20は、ばね(図4の22)の付勢力によって勢い良く復動して元の位置に戻る。このとき、送出ローラ20がコインCを弾くことで、コインCが送出通路(図3の49)に沿って装置外部に向けて(後述する図16の矢印J)送出される。コインCは、送出通路を通過するとき、図3に示されるコイン検知センサ41によって検知される。コイン検知センサ41は、コインCを検知すると制御基板に対してコイン検知信号を送る。
【0044】
なお、第1規制ピン15a及び第2規制ピン16aのうち、第2規制ピン16aだけがコインCの正回転方向の移動を規制する例について説明したが、コインCの大きさによっては、規制部材としての第1規制ピン15a及び第2規制ピン16aの両方が規制する。具体的には、図6A図6Dに示されるコインCよりも大きなコインに適応する回転ディスク30が用いられる場合には、第1規制ピン15a及び第2規制ピン16aの両方が、コインの正回転方向の移動を規制する。
【0045】
上述の制御基板は、コインホッパー1の外部に設けられ、コイン検知センサ41から送られてくるコイン検知信号に基づいて、コインCの枚数を計数する。また、制御基板は、図3に示されるモータ70への供給電力を入切したり、電圧の極性をモータ70の2つの電源入力端子で互いに逆転させたりする。これにより、モータ70の正転駆動や逆転駆動が制御される。
【0046】
コインジャムが発生したことにより、モータ70の正転がロックしてモータ70のコイルに対して過剰な電流が流れる、あるいは、コイン検知センサ41からコイン検知信号が送られてこない、という事態が発生すると、制御基板は、ジャム処理を実行する。このジャム処理において、制御基板は、モータ70の逆転と正転とを所定時間ずつ行う処理を所定回数繰り返す。
【0047】
回転ディスク30が逆回転するときには、第1規制ピン15a及び第2規制ピン16aによるコインの逆回転方向への移動規制を解除する必要がある。このため、図5に示されるように、第1規制ピン15aの近傍には、第1乗り上げピン15bが第1規制ピン15aよりも正回転方向の下流側に設けられる。また、第2規制ピン16aの近傍には、第2乗り上げピン16bが第2規制ピン16aよりも正回転方向の下流側に設けられる。第1乗り上げピン15b、第2乗り上げピン16bのそれぞれの上端部は、半球状の形状をしている。回転ディスク30の逆回転に伴って第1乗り上げピン15bに接触したコインは、第1乗り上げピン15bの半球状の上端部に乗り上げた後、第1規制ピン15aに乗り上げる。また、回転ディスク30の逆回転に伴って第2乗り上げピン16bに接触したコインは、第2乗り上げピン16bの半球状の上端部に乗り上げた後、第2規制ピン16aに乗り上げる。
【0048】
ユーザーは、コインホッパー1にセットするコインCのサイズを変更する場合、少なくとも、図4に示される回転ディスク30を交換し、且つ図6A図6Dに示される送出ローラ20と案内ローラ17との距離を変更する必要がある。具体的には、回転ディスク30については、コインCの直径に適応する直径のコイン捕捉孔32が設けられ、且つコインCの厚みに適応する厚みの第1押動体34及び第2押動体35が設けられたものを用いる必要がある。また、送出ローラ20と案内ローラ17との距離については、コインCの直径に適応する値に変更する必要がある。
【0049】
実施形態に係るコインホッパー1において、ユーザーは、図4に示されるベース体2に対する保持ユニット18の係止位置を変化させることで、送出ローラ20と案内ローラ17との距離を広い範囲で変更することが可能である。以下、保持ユニット18について詳述する。
【0050】
保持ユニット18は、保持体19、及び案内ローラ17を有する。保持体19は、天板19a、第1側板19b、及び第2側板19dを有する。案内ローラ17は、保持体19の天板19aよりも下方に位置し、天板19aによって回動可能に保持される。第2側板19dは、第1側板19bよりも径方向の外側に位置する。この第2側板19dの外面には、駆動部50の駆動軸53を中心とする周方向に沿った軌道で並ぶ複数の歯からなる第2歯列19cが設けられる。
【0051】
図7は、ホッパーヘッド(図1の200)を取り外した状態のコインホッパー1の長手方向における一端部を示す平面図である。保持ユニット18は、ベース体2の上面における送出通路49よりも回転ディスク30の正回転方向(図7において時計回り方向)の上流側の位置に固定される。保持ユニット18の保持体19の天板19aには、目盛19eが設けられる。この目盛19eは、第2歯列(図4の19c)の各歯に対して付されたものである。
【0052】
ベース体2には、複数の歯からなる第1歯列7が設けられる。第1歯列7の複数の歯は、駆動軸53を中心とする周方向に沿った軌道で並ぶ。
【0053】
図8は、コインホッパー1の長手方向の一端部を示す平断面図である。図8では、ベース体2の厚み方向における第1歯列7の位置におけるコインホッパー1の平断面をベース体2の上面側から示す。保持ユニット18が固定されたベース体2においては、ベース体2に設けられた第1歯列7と、保持ユニット18の保持体19の第2側板19dに設けられた第2歯列19cとが噛み合う。ユーザーは、保持ユニット18をベース体2に装着するとき、第2歯列19cに付された目盛(図7の19e)を確認しながら、第1歯列7の任意の位置にある複数の歯に、保持体19の第2側板19dの第2歯列19cを噛み合わせる。このような操作により、ユーザーは、図9に示されるように、駆動軸53を中心とする周方向の軌道に沿って、ベース体2に対する保持体19の係止位置を変化させることができる。係止位置が変化すると、保持体19に保持される案内ローラ17と、送出通路49を介して案内ローラ17に対向する送出ローラ20との距離が変化する。
【0054】
図10は、案内ローラ17の位置と、案内ローラ17によって案内されるコインCが送出ローラ20に対してぶつかる方向との関係を説明するための平面図である。同図において、矢印Bは、案内ローラ17によって案内されるコインCが送出ローラ20に対してぶつかる方向を示す。また、矢印Aは、送出ローラ20の往動方向を示す。
【0055】
駆動軸53を中心とする周方向の軌道に沿ってベース体2に対する保持体19の係止位置を変化させるコインホッパー1においては、保持体19の係止位置が変化すると、案内ローラ17の係止位置も駆動軸53を中心とする周方向の軌道に沿って変化する。かかる構成のコインホッパー1は、図10に示されるように、送出ローラ20と案内ローラ17との距離にかかわらず(コインCの大きさにかかわらず)、コインCを送出ローラ20にぶつける方向(矢印B)をほぼ一定にする。更に、コインホッパー1においては、第1歯列7を送出ローラ20に対して適切な相対位置に設けることにより、コインCを送出ローラ20にぶつける方向(矢印B)を、図10に示されるように送出ローラ20の往動方向(矢印A)とほぼ同じにすることが可能である。このようなコインホッパー1では、送出ローラ20と案内ローラ17との距離にかかわらず、コインCをぶつけた送出ローラ20を往動方向にスムーズに移動させるので、送出ローラ20の移動不良によるコインジャムの発生を抑えることができる。
【0056】
なお、実施形態に係るコインホッパー1においては、第1歯列7、第2歯列19cなどの組み合わせが、係止位置変化手段を構成する。係止位置変化手段は、回転ディスク30の回転軸線(駆動軸53)を中心とする周方向の軌道に沿って、ベース体2に対する保持体19の係止位置を変化させるものである。
【0057】
保持ユニット18がベース体2に脱着される方向は、第1歯列7の歯幅方向(図10の紙面に直交する方向)に沿う。かかる構成において、ユーザーは、第1歯列7と第2歯列19cとの噛み合いを解きながら、保持ユニット18をベース体2から取り外すことができる。また、ユーザーは、第1歯列7における任意の位置の歯に対し、第2歯列19cを噛み合わせながら、保持ユニット18をベース体2に装着することができる。このとき、ユーザーは、前述の任意の位置を目盛19eによって把握することで、専用の治具を用いることなく、送出ローラ20と案内ローラ17との距離を任意の値に設定することができる。
【0058】
上述のように、ユーザーは、回転ディスク30を交換し、且つ送出ローラ20と案内ローラ17との距離を調整することで、コインホッパー1にセットするコインの大きさを変更することができる。しかしながら、図5に示される第1ピンユニット15及び第2ピンユニット16の位置が一定であると、コインの大きさの変更可能範囲が限られてしまう。
【0059】
そこで、このコインホッパー1においては、第1ピンユニット15及び第2ピンユニット16を保持するピンブラケットの係止位置が変更可能になっている。具体的には、図4に示されるように、ベース体2には、規制保持体としてのピンブラケット12を固定するための3つの雌ねじ部14が設けられる。図4では、3つの雌ねじ部14のうちの1つに、雄ねじ13がねじ込まれている。ユーザーは、3つの雌ねじ部14の中で、ピンブラケット12の貫通穴12eに通した雄ねじ13の締め込み対象となるものを変更することで、ベース2に対するピンブラケット12の係止位置を変更することができる。
【0060】
図11は、ピンブラケット12の取り付け態様の第1例を説明するための斜視図である。図12は、ピンブラケット12の取り付け態様の第2例を説明するための斜視図である。このコインホッパー1においては、駆動軸53を中心とする周方向において、第1ピンユニット15及び第2ピンユニット16を、図11に示される位置から、図12に示される位置の範囲内で変更することが可能である。かかる構成では、第1ピンユニット15及び第2ピンユニット16の位置が一定である構成に比べて、コインの大きさの変更可能範囲を広げることができる。
【0061】
ピンブラケット12の位置が変更されるとき、被ガイド部12aが、図3に示される位置ガイド穴3fに挿入される。位置ガイド穴3fは、ピンブラケット12の駆動軸53を中心とする周方向の軌道に沿った位置変更をガイドする。このコインホッパーにおいては、被ガイド部12a、位置ガイド穴3f、図4に示される雄ねじ13、3つの雌ねじ部14、第3フィン部12d、貫通穴12eなどの組み合わせが、第2の係止位置変化手段を構成している。第2の係止位置変化手段は、回転ディスク30の回転軸線(駆動軸53)を中心とする周方向の軌道に沿って、ベース体2に対する規制保持体たるピンブラケット12の係止位置を変化させるものである。
【0062】
図16は、実施形態に係るコインホッパー1を示す側面図である。図16の矢印gは、重力方向を示す。また、矢印hは、水平方向を示す。図16に示されるように、コインホッパー1は、架台80の底面を水平方向hに沿わせる姿勢で、両替機などのコイン処理装置に搭載される。ベース体2は、その長手方向(図中の一点鎖線の方向)を、架台80の底面から傾ける姿勢で架台80に取り付けられる。このため、コイン処理装置内において、ベース体2は、長手方向を水平方向hから傾ける姿勢になる。実施形態に係るコインホッパー1においては、図16の矢印Jで示されるように、コインCが、コインホッパー1内から斜め上方に向けて弾き出される。
【0063】
一般に、コインホッパー1においては、各部のうち、ベース体2の長手方向のサイズが最も大きくなる。よって、コイン処理装置内において、ベース体2が前述のように長手方向を水平方向hから傾ける姿勢になることで、水平方向hにおけるコインホッパー1の設置スペースの省スペース化が図られる。
【0064】
図9に示されるように、コインホッパー1においては、回転ディスク30の周縁であるディスク周縁30bが、径方向に真っ直ぐに延びる平面を有するリング形状になる。ディスク周縁30bが径方向に真っ直ぐに延びる平面になるのは、回転ディスク30の周壁の部分に、所望の強度を発揮し得る厚みが必要だからである。
【0065】
図13は、本発明に含まれるある態様を備えない比較例のコインホッパーのホッパーヘッド400及び回転ディスク300を示す断面図である。回転ディスク300が樹脂材料で構成される場合、回転ディスク300を軽量化することができるというメリットがある反面、強度確保のためにリング形状のディスク周縁の幅が大きくなるというデメリットがある。
【0066】
回転ディスク300において、リング形状のディスク周縁の幅が大きくなることがデメリットになる理由は、次の通りである。即ち、コインホッパー1がベース体2の長手方向を水平方向hから傾ける姿勢でコイン処理装置に搭載されると、図13に示されるように、回転ディスク300が径方向を水平方向hから傾ける姿勢になる。すると、ホッパーヘッド400の円形開口403の周壁面でコインCの滞留を引き起こすことがある。具体的には、コインCは、図13に示されるように、円形開口403の周壁面における全域のうち、重力方向で最も下方に位置する領域に対して対面する姿勢で接触することがある。このような姿勢になったコインCは、回転する回転ディスク300に追従することなく、コイン側面をリング形状のディスク周縁で擦られながら、重力の作用により、円形開口403の周壁面における最下方領域に留まる。すると、制御基板は、回転ディスク300の正回転駆動を継続しているにもかかわらず、一定時間を超えてコイン検知センサ(図3の41)からのコイン検知信号を受信しないことに基づいて、全てのコインCを送出し終えたと誤検知してしまう。コインCの枚数を正確に計数する必要のあるコインホッパーにおいて、その誤検知は大きなデメリットとなる。
【0067】
図13に示される比較例のコインホッパーに限らず、特許文献1に記載の出幣器においても、集幣漏斗の円形開口の周壁面でコインCを滞留させるおそれがあるという課題がある。
【0068】
そこで、本発明は、集幣漏斗等の貯留部(実施形態ではホッパーヘッド200)の円形開口の周壁面における円板の滞留を抑えることができる円板送出装置を提供することも目的とする。
【0069】
かかる目的を達成するために、本発明は、ベース体と、円板を貯留する貯留部と、前記ベース体の上に配置された回転駆動可能な回転部材と、前記ベース体に設けられ、装置外に向けて送出される円板が通る送出通路と、前記送出通路を介して互いに対向する案内部材及び送出部材とを備え、前記回転部材が、回転軸線方向に貫通する円状の貫通孔と、円板を回転方向に押して移動させる押動部とを有し、前記貯留部から前記回転部材の上に送り込まれて前記貫通孔を通過した円板を前記押動部によって回転方向に移動させ、前記案内部材が、前記回転方向の所定位置まで移動してきた円板を前記送出通路に向けて案内し、前記送出部材が、前記案内部材との距離を変化させる方向に往復移動可能であり、付勢部材によって前記案内部材に向けて付勢されながら、前記案内部材との間に挟み込んだ円板を前記付勢部材の付勢力によって送出する、円板送出装置であって、前記貯留部の底部が、テーパーと、このテーパーの下端に繋がるように設けられ、前記回転部材に対向する円形開口と、前記円形開口の周壁面の周方向における最下方領域に設けられた突起とを備えることを特徴とする。
【0070】
実施形態に係るコインホッパー1は、前述の目的を達成し得る。
図14は、実施形態に係るコインホッパー1のホッパーヘッド200及び回転ディスク30を示す断面図である。このコインホッパー1においては、回転ディスク30のディスク周縁に、径方向の外側から内側に向かって下るテーパー36が設けられる。ホッパーヘッド200内において、円形開口203の周壁における周方向の全域のうち、重力方向gの最下方領域に対面する姿勢になったコインは、テーパー36の面上で滑りながら更なる下方に移動して回転ディスク30の上面、又はコイン捕捉孔32内に落下する。この落下により、円形開口203の周壁面における最下方領域でのコインの滞留が抑えられる。
【0071】
ホッパーヘッド200の円形開口203の周壁において、周方向の一部の領域には、周方向に所定間隔で並ぶ複数の突起205が設けられる。複数の突起205のうち、一つは、円形開口203の周壁面における最も下方に位置する領域に設けられる。以下、円形開口203の周壁面における最も下方に位置する領域に設けられる突起205を、最下方の突起205と言う。
【0072】
図17は、コインホッパー1の断面図である。図17においては、モータ(図16の70)の図示が省略されている。図17に示されるように、最下方の突起205は、コインCに接触して円形開口203の周壁面へのコインの密着を阻止するとともに、コインCの重力方向gの下部を回転ディスク30のコイン捕捉孔32に向けて案内する。前述の案内により、円形開口203の周壁における重力方向gの最下方領域の付近において、コインCが回転ディスク30のコイン捕捉孔32にスムーズに捕捉されることで、円形開口203の最下方領域におけるコインの滞留がより良好に抑えられる。
【0073】
突起205の形状については、少なくとも、突起205における円形開口203中心軸線に沿う方向の両側、及び円形開口203中心軸線に直行する方向の両側のそれぞれに、突起205中心から外縁に向けて下るテーパーを有する形状にすることが望ましい。前述の形状としては、円錐形状、多角錘形状、半球形状などが挙げられるが、角のない半休形状が最も好適である。実施形態に係るコインホッパー1においては、図1に示されるように、突起205の形状として、半休形状を採用している。突起205を、前述のようなテーパーを有する形状にすることで、突起205へのコインCの引っ掛かりを抑えることができる。
【0074】
以下、実施形態に係るコインホッパー1の一部の構成を他の構成に変形した変形例について説明する。なお、以下に特筆しない限り、変形例に係るコインホッパー1の構成は実施形態と同様である。
【0075】
図15は、変形例に係るコインホッパー1の長手方向の一端部を示す平面図である。変形例に係るコインホッパー1は、ベース体2に第1歯列を備えておらず、その代わりに、保持体19の第2歯列(図8の19c)に噛み合う回転可能な歯車27をベース体2に備える。歯車27の中心には、ドライバー等の工具を差し込まれる凹部27aが設けられる。ユーザーは、その凹部に差し込んだ工具によって歯車27を回転させることで、ベース体2に対する保持体19の係止位置を変化させることができる。
【0076】
以上、本発明の好ましい実施形態及び変形例について説明したが、本発明は、これらの実施形態及び変形例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲及び要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0077】
本発明は、次の態様毎に特有の作用効果を奏する。
〔第1態様〕
第1態様は、ベース体(例えばベース体2)と、円板(例えばコインC)を貯留する貯留部(例えばホッパーヘッド200)と、前記ベース体の上に配置された回転駆動可能な回転部材(例えば回転ディスク30)と、前記ベース体に設けられ、装置外に向けて送出される円板が通る送出通路(例えば送出通路49)と、前記送出通路を介して互いに対向する案内部材(例えば案内ローラ17)及び送出部材(例えば送出ローラ20)とを備え、前記回転部材が、回転軸線方向に貫通する円状の貫通孔(例えばコイン捕捉孔32)と、円板を回転方向に押して移動させる押動部(例えば第1押動体34及び第2押動体35)とを有し、前記貯留部から前記回転部材の上に送り込まれて前記貫通孔を通過した円板を前記押動部によって回転方向に移動させ、前記案内部材が、前記回転方向の所定位置まで移動してきた円板を前記送出通路に向けて案内し、前記送出部材が、前記案内部材との距離を変化させる方向に往復移動可能であり、付勢部材(例えばばね22)によって前記案内部材に向けて付勢されながら、前記案内部材との間に挟み込んだ円板を前記付勢部材の付勢力によって送出する、円板送出装置(例えばコインホッパー1)であって、前記案内部材を保持する保持体(例えば保持体19)と、前記回転軸線を中心とする周方向の軌道に沿って、前記ベース体に対する前記保持体の係止位置を変化させる係止位置変化手段(例えば第1歯列7、第2歯列19cなどの組み合わせ)とを備えることを特徴とするものである。
【0078】
第1態様においては、送出部材と案内部材との距離にかかわらず(円板の大きさにかかわらず)、案内部材によって案内される円板を送出部材にぶつける方向をほぼ一定にする。更に、第1態様においては、係止位置変化手段と送出部材との相対位置の設定により、案内部材に案内される円板を送出部材にぶつける方向を、送出部材の往動方向とほぼ同じにすることが可能である。このような第1態様においては、送出部材と案内部材との距離にかかわらず、円板をぶつけた送出部材を往動方向にスムーズに移動させるので、送出部材の移動不良による円板ジャムの発生を抑えることができる。
【0079】
〔第2態様〕
第2態様は、第1態様において、前記軌道に沿って所定間隔で並ぶ複数の歯からなる第1歯列(例えば第1歯列7)を前記ベース体に設け、前記第1歯列に噛み合う複数の歯からなる第2歯列(例えば第2歯列19c)を前記保持体に設け、前記保持体を前記ベース体に対して前記第1歯列の歯の歯幅方向に着脱可能に構成したことを特徴とするものである。
【0080】
かかる構成において、ユーザーは、ベース体に設けられた第1歯列と、保持体に設けられた第2歯列との噛み合いを解きながら、保持体をベース体から取り外すことができる。また、ユーザーは、ベース体に設けられた第1歯列における任意の位置の歯に対し、保持体に設けられた第2歯列を噛み合わせながら、保持体をベース体に装着することができる。
【0081】
〔第3態様〕
第3態様は、第1態様であって、前記軌道に沿って所定間隔で並ぶ複数の歯からなる歯列が、前記保持体に設けられ、前記歯列に噛み合う歯車(例えば歯車27)が、前記ベース体に設けられ、前記係止位置変化手段が、少なくとも、前記歯列と、前記歯車とからなることを特徴とするものである。
【0082】
かかる構成において、ユーザーは歯車を回すという簡単な操作により、送出部材と案内部材との距離を調整することができる。
【0083】
〔第4態様〕
第4態様は、第2態様又は第3態様において、前記第1歯列又は前記歯列に、目盛(例えば目盛19e)を設けたことを特徴とするものである。
【0084】
かかる構成において、ユーザーは、ベース体に対する保持体の目標取付位置を目盛によって把握することで、専用の治具を用いることなく、送出部材と案内部材との距離を任意の値に設定することができる。
【0085】
〔第5態様〕
第5態様は、第1態様~第4態様の何れかであって、前記押動部によって押されて前記回転方向に移動する前記円板に接触して前記円板の前記回転方向への移動を規制しながら、前記円板を径方向に沿って前記送出通路に向けて案内する規制部材(例えば第1規制ピン15a及び第2規制ピン16a)と、前記規制部材を保持する規制保持体(例えばピンブラケット12)と、前記回転軸線を中心とする周方向の軌道に沿って、前記ベース体に対する前記規制保持体の係止位置を変化させる第2の係止位置変化手段(例えば被ガイド部12a、位置ガイド穴3f、雄ねじ13、雌ねじ部14、第3フィン部12d、貫通穴12eなどの組み合わせ)とを備えることを特徴とするものである。
【0086】
かかる構成では、規制部材の位置を一定にする構成に比べて、円板送出装置にセットする円板の大きさの変更可能範囲を広げることができる。
【0087】
〔第6態様〕
第6態様は、第1態様~第3態様の何れかにおいて、前記回転部材の前記回転軸線を中心とする縁に、径方向の外側から内側に向かって下るテーパー(例えばテーパー36)を設けたことを特徴とするものである。
【0088】
かかる構成では、貯留部の周壁における周方向の全域のうち、重力方向の最下方領域に対面する姿勢になった円板が、回転部材の縁に設けられたテーパーの面上で滑りながら更なる下方に移動して回転部材の上面又は貫通孔内に落下する。第6態様においては、その落下により、貯留部の周壁面における最下方領域でのコインの滞留を抑えることで、滞留に起因する円板の計数精度の低下を抑えることができる。
【0089】
〔第7態様〕
第7態様は、第6態様であって、前記貯留部の底部が、テーパー(例えばテーパー202)と、このテーパーの下端に続く円形開口(例えば円形開口203)と、前記円形開口の周壁面の周方向における最下方領域に設けられた突起(例えば突起205)とを備えることを特徴とするものである。
【0090】
かかる構成では、円形開口の周壁面に設けられた突起が、円板に接触して円形開口の周壁面への円板の密着を阻止することで、周壁面の最下流領域での円板の滞留をより良好に抑える。よって、第7態様においては、貯留部の周壁面における最下方領域での円板の滞留に起因する円板の計数精度の低下を抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、例えば、円板送出装置、及び円板送出装置を備える円板処理装置に好適に利用できる。
【0092】
本出願は、2018年12月4日に出願された日本出願である特願2018-226971号に基づく優先権を主張し、当該日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【符号の説明】
【0093】
1:コインホッパー(円板送出装置)、2:ベース体、3f:位置ガイド穴、7:第1歯列、12:ピンブラケット(規制保持体)、12a:被ガイド部、12d:第3フィン部、12e:貫通穴、13:雄ねじ:14、雌ねじ部、15a:第1規制ピン(規制部材)、16a:第2規制ピン(規制部材)、17:案内ローラ(案内部材)、19:保持体、19c:第2歯列、19e:目盛、20:送出ローラ(送出部材)、27:歯車、30:回転ディスク(回転部材)、32:コイン捕捉孔(貫通孔)、34:第1押動体(押動部)、35:第2押動体(押動部)、49:送出通路、200:ホッパーヘッド(貯留部)、202:テーパー、203:円形開口、205:突起、C:コイン(円板)

図1
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