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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】音響パネルアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   H04R 9/00 20060101AFI20240215BHJP
   H04R 9/02 20060101ALI20240215BHJP
   H04R 9/04 20060101ALN20240215BHJP
【FI】
H04R9/00 C
H04R9/02 102A
H04R9/02 103Z
H04R9/04 102
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019111563
(22)【出願日】2019-06-14
(65)【公開番号】P2020010324
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】102018000007041
(32)【優先日】2018-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】517164914
【氏名又は名称】アスク インダストリーズ ソシエイタ´ パー アゾーニ
【氏名又は名称原語表記】ASK INDUSTRIES SOCIETA‘ PER AZIONI
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】サンチシ,カルロ
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-032659(JP,A)
【文献】特表2005-517306(JP,A)
【文献】特開2000-209696(JP,A)
【文献】特開2007-235232(JP,A)
【文献】特開2006-320887(JP,A)
【文献】特開平11-262089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 9/00- 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響パネル(4)、
ギャップ(T)を形成する磁気回路(101;201)、及び
電流の通過に伴って移動するように前記ギャップ(T)に配設されたボイスコイル(106)であって、前記音響パネル(4)を動かして音を発するために前記音響パネル(4)に接続されているボイスコイル(106)
を備える音響パネルアセンブリ(100;200;300)であって、
前記磁気回路(101;201)が、前記パネル(4)に対して前方位置に配設された第1の磁石(13a)、及び前記パネル(4)に対して後方位置に配設された第2の磁石(13b)を含み、前記磁石(13a、13b)が、反発し合う配置で配設され、
前記第1及び第2の磁石(13a、13b)が、円形状であり、軸(A)及び外径(D4)を有し、
前記ボイスコイル(106)が、内径(D1)及び外径(D2)を有する環状であり、軸を有し、
前記ボイスコイルの前記軸が、前記磁石の前記軸(A)と一致し、前記コイルの前記外径(D2)が、前記磁石の前記外径(D4)よりも大きく、
前記パネル(4)が貫通穴(40)を有し、前記貫通穴(40)に前記磁気回路(101)が挿入され、前記ボイスコイル(106)が、前記パネルの前記貫通穴(40)の周りで前記パネル(4)に固定され、前記磁気回路(101)が、前記第1の磁石(13a)、前記第2の磁石(13b)、及び前記前記第1の磁石と前記第2の磁石との間に配設されたスペーサ(14)を備え、前記第1及び第2の磁石が、前記ボイスコイル(106)に対して前方位置及び後方位置に配設され、前記ボイスコイル(106)が、前記スペーサ(14)の周りに配設され、且つ、移動中であっても前記スペーサ(14)の厚さの範囲内に配置されている、
音響パネルアセンブリ(100;200;300)。
【請求項2】
前記磁気回路(101;201)が、前記音響パネルから前方に長さ(La)突出する前部、及び前記音響パネルから後方に長さ(Lb)突出する後部を有し、前記磁気回路の前記前部の前記長さ(La)が、前記後部の前記長さ(Lb)に等しい、請求項1に記載の音響パネルアセンブリ(100;200;300)。
【請求項3】
前記磁気回路(101;201;301)及びフレーム(3)に固定された少なくとも1つのブリッジ(2;2a、2b)をさらに備え、前記フレーム(3)が、少なくとも1つの弾性境界部材(5)によって前記音響パネル(4;204)の周辺部に固定されている、請求項1または請求項2に記載の音響パネルアセンブリ(100;200;300)。
【請求項4】
前記ボイスコイル(106)が、平坦平面型であり、高さが重なり合わない平坦なワイヤから成る巻きを有する、請求項1~3のうちいずれか一項に記載の音響パネルアセンブリ(100;200;300)。
【請求項5】
前記磁気回路(101)を前記ブリッジ(2)に固定するために、前記磁石(13a、13b)、前記スペーサ(14)、及び前記ブリッジ(2)を軸方向に横切るピンをさらに備える、請求項3または請求項3に従属するときの請求項4に記載の音響パネルアセンブリ(100)。
【請求項6】
前記ボイスコイル(106)が、前記パネルの前記貫通穴(40)の周りで前記パネル(4)の環状座部(44)に固定されている、請求項1~5のうちいずれか一項に記載の音響パネルアセンブリ(100)。
【請求項7】
前記磁石の前記外径(D4)が、前記ボイスコイルの前記内径(D1)よりも小さい、請求項1~6のうちいずれか一項に記載の音響パネルアセンブリ(100)。
【請求項8】
前記磁気回路(201;101)が、前記第1の磁石(13a)及び第2の磁石(13b)を備え、前記第1の磁石(13a)及び前記第2の磁石(13b)が、対応するブリッジ(2a、2b)に接続され、前記ボイスコイル(106)に対して前後に配設されている、請求項1~6のうちいずれか一項に記載の音響パネルアセンブリ(200;300)。
【請求項9】
前記磁石(13a、13b)の前記外径(D4)が、前記ボイスコイル(106)の前記内径(D1)と前記外径(D2)との間である、請求項8に記載の音響パネルアセンブリ(200;300)。
【請求項10】
音響パネル(4)、
ギャップ(Ta、Tb)を形成する磁気回路(301)、及び
電流の通過に伴って移動するように前記ギャップ(T)に配設された2つのボイスコイル(6a、6b)であって、前記音響パネル(4)を動かして音を発するために、前記音響パネル(4)に接続されているボイスコイル(6a、6b)
を備える音響パネルアセンブリ(400)であって、
前記磁気回路(301)が、第1の極板(10a)と第2の極板(10b)との間に配設された磁石(13)を備え、
音響パネルアセンブリ(400)が、
前記音響パネル(4)に固定され、前記音響パネルの貫通穴(40)内に配設され、磁気回路(301)がシリンダ(9)の内側に含まれるようにする、シリンダ(9)と、
前記第1の極板(10a)に対応して前記シリンダ(9)の内面に固定された第1のボイスコイル(6a)と、
前記第2の極板(10b)に対応して前記シリンダ(9)の内面に固定された第2のボイスコイル(6b)と、
前記シリンダ(9)を前記磁気回路(301)に機械的に接続する弾性サスペンション(90、91)と、
を備える、音響パネルアセンブリ(400)。
【請求項11】
前記第1の極板(10a)が、前記パネル(4)に対して前方位置に配設され、前記第2の極板(10b)が、前記パネル(4)に対して後方位置に配設されている、請求項10に記載の音響パネルアセンブリ(400)。
【請求項12】
前記磁気回路(301)が、前記音響パネルから前方に長さ(La)突出する前部、及び前記音響パネルから後方に長さ(Lb)突出する後部を有し、前記磁気回路の前記前部の前記長さ(La)が、前記後部の前記長さ(Lb)に等しい、請求項10または11に記載の音響パネルアセンブリ(400)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響パネルアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
分布振動モード形スピーカ(DML:Distributed Mode Loudspeaker)とも呼ばれる音響パネルは、パネルの本体を通して「曲げ波」を伝播させることによって、いわゆる「分布振動モード」で広い可聴周波数範囲内の音を再生する。励振デバイスが、パネルの曲げ及び波打ちを発生させ、可聴周波数範囲内に分布された音響応答を得る。
【0003】
そのような操作及び音発生メカニズムでは、明らかに、剛性、減衰、及び自己雑音に関して、パネルに使用される材料の特性の選択が、高品質及び高い忠実度を有する音響応答を得るために重要である。
【0004】
他のスピーカとの違いをもたらすDML音響パネルの顕著な特徴は、広い可聴周波数範囲にわたる非指向性の拡散音場の放出である。しかし、音響パネルは、低周波再生が不良であることによって機能を損なわれる。
【0005】
さらに、知られているように、所与の遷移周波数までは、スピーカメンブレンの動きはメンブレンの寸法(直径)に依存する。そのようなメンブレンの動きはピストン運動と同等である。言い換えれば、メンブレンのすべての点が同相で動かされる。
【0006】
遷移周波数よりも高い周波数の場合、音は、メンブレンの曲げ及び波打ちによって再生され、これは音に特徴を与え、音の忠実度を低下させ、妨害にさえなる傾向がある。この場合にも、音を特徴付け、音の忠実度を保証するために、材料の正しい選択が重要である。
【0007】
知られているように、従来のDML音響パネルは、サウンドパネルの本体に直接固定された励振器/シェーカによって力を加えられる。パネルに使用される最も一般的な材料は、典型的にはハニカム構造を有する積層複合型であり、これは、ハニカムコアが、「スキン」と呼ばれる積層シートにサンドイッチ配置で接着されることを意味する。
【0008】
特許文献1は、パネルを励振するために使用される技術的解決策に関係なく、音響パネルによって生成される音を改良するのに適した材料を開示している。特許文献1は、従来技術に比べていくつかの改良、すなわち、より良い信号/雑音比(S/N)、特に低周波での周波数応答のより良い拡張、及びより良いパワーハンドリングを実現するために最も適切な材料を提案している。
【0009】
特許文献2は、特許文献1に記載されている材料に関する指針を使用し、従来のスピーカの構造において知られている技術を使用する音響パネルの音励起のための解決策を開示している。特許文献2は、特に低周波での音響応答のさらなる改良を実現することを可能にする、スピーカ技術に特有の構造要素を開示している。そのような構造要素は、平面状メンブレン(パネル)と外部フレーム(バスケット)との間のサスペンションまたは弾性境界部材、フレームに接合されるブリッジ(バスケット)によって支持される磁気回路、及びパネルに接合される可動コイルである。上記のことに鑑みて、低出力電気信号用の分布振動モード形スピーカ(DML)として動作するハイブリッド音響システムが得られる。逆に、高い音量レベルに関して、特に低周波に関しては、外部境界部の弾性サスペンションシステムにより、パネルは、従来のスピーカと同様にピストンモードで動作する。
【0010】
音響パネルは、円錐形のメンブレンを有するスピーカに比べて軸方向体積が小さくなる。このため、音響パネルは、奥行きの小さい空間に取り付ける場合に好適であり、実質的に代替の利かないものである。この音響パネルのそのようなより小さい体積は、車両の、ドア内、座席の背もたれシート内、ルーフ/ヘッドライナ内、フロントガラスを固定するために使用されるピラー内及びダッシュボード内に小さな空間を一般に設けられている車両における設置に特に必要である。
【0011】
図1は、従来技術による音響パネルアセンブリを示し、この音響パネルアセンブリは、全体を参照番号600で示されている。
【0012】
磁気回路(1)は、ブリッジ(2)によって支持され、ブリッジ(2)は、外部フレーム(3)にしっかりと固定されており、外部フレーム(3)は、弾性境界部材(5)によって音響パネル(4)を支持する。ボイスコイル(6)は、円筒形のボイスコイルフォーマ(60)によって音響パネル(4)にしっかりと固定されている。ボイスコイルは、磁気回路(1)によって形成されたギャップ(T)内を自由に動くことができる。ボイスコイル(6)が電流と交差してギャップ(T)に挿入されると、ボイスコイル(6)は、その動きを決定する力(ローレンツ力)を受ける。したがって、磁気回路(1)及びボイスコイル(6)は、音響パネル(4)を動かして音を発生させるためのドライバとして動作する。
【0013】
有利には、円錐形のメンブレンが平面状の音響パネル(4)に置き換えられているため、音響パネルアセンブリ(600)は、円錐形のメンブレンを有する従来のスピーカに比べて小さい体積を有する。
【0014】
しかし、音響パネルアセンブリ(600)は、コア(11)を設けられた下側極板(Tヨーク)(10)と、上側極板(12)と、Tヨーク(10)と上側極板(12)との間に配設された磁石(13)とを備える従来の磁気回路(1)を有する。
【0015】
そのような従来の磁気回路(1)は、パネルの後方に完全に配設される必要があり、いずれにせよ軸方向の体積を成し、この体積は、パネルの厚さに追加され、特に車で利用可能な空間など小さな空間の場合には大きすぎることがある。
【0016】
特許文献3は、電気音響変換器用のメンブレンの様々な実施形態を開示している。特許文献3の図1図4は、メンブレンに接続された円筒形リングの周りの巻線を用いて得られる従来のボイスコイルを示している。
【0017】
特許文献3の図5及び図6の変換器は、磁気ユニットも、磁気ユニットのギャップに挿入されたボイスコイルも設けられていない。パネルの励振システムは静電型であり、その静電力は、一定の電圧を有する発生器、及び電気音声信号によって変調される抵抗によって得られる分極電場によって発生される。電気音声信号は、上記の分極電場の平衡を崩し、パネルの向かい合う2つの側に引力及び反発力を生じさせ、音声信号の音響発生を可能にする。
【0018】
特許文献3の図7は、剛性円筒体の周りにワイヤを螺旋状に巻くことによって得られる従来のコイルを示しており、コイルのワイヤの重なり合った層が明確に示されている。磁性材料のリングまたはブロックを用いて得られる磁気システムの配置は、ボイスコイルを径方向に通過することができる磁気誘導線の数が限られているため、あまり効率的ではない。
【0019】
特許文献4は、音響パネルの様々な実施形態を開示している。すべての解決策が、パネルの励振要素として「シェーカ」または「励振器」として知られる慣性デバイスを採用している。すべての実施形態が、円筒形表面の周りに導電性ワイヤを巻くことによって得られる従来のボイスコイルを示す。特許文献4の各図は、ボイスコイル内のワイヤの重なり合った層を明確に示している。
【0020】
特許文献4の図9図10図11図12図16、及び図17は、音響パネルを開示しており、この音響パネルでは、励振システムが、磁気可動システムを備えるシェーカ(励振器)によって得られる。上記のデバイスでは、ボイスコイルはパネルに固定され、パネルへの信号の伝達は、その磁気誘導線と、ボイスコイル内を流れる電流との相互作用から力(ローレンツ力)を受ける磁気可動システムによって誘発される振動によって得られる。
【0021】
特許文献5は、音響パネルを開示しており、この音響パネルでは、励振デバイスが、振動をパネルに伝達するための機械的レバーシステムを採用する。磁石の極性及びレイアウトは、矩形のボイスコイルが音声信号と交差したときに、ボイスコイルが磁石の平面に対して平行な方向及び中心磁極(Tヨーク)に対して直交する方向に動くようなものである。コイルのそのような横方向の動きは、複雑な機械的レバーメカニズムによってパネルに伝達される。
【0022】
特許文献6は、螺旋配置でメンブレンに堆積された導電性被膜のストリップから構成される平面状コイルを有するスピーカを開示しており、これは、プリント回路を製造するのに使用される従来の技術によって得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【文献】米国特許出願公開第2003/0081799号明細書
【文献】米国特許出願公開第2003/0081800号明細書
【文献】独国特許発明第3123098号明細書
【文献】国際公開第97/09842号
【文献】米国特許出願公開第2011/0200204号明細書
【文献】米国特許出願公開第2005/0220320号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の目的は、効率的であり、効果的であり、信頼性が高い、軸方向体積が小さい音響パネルアセンブリを開示することによって、従来技術の欠点を解消することである。
【0025】
本発明の別の目的は、低周波でも良好な再生を生み出すように、パネルの軸方向移動を可能にする励振システム及び手段を備えた音響パネルアセンブリを開示することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
これらの目的は、本発明によれば、独立請求項1の特徴によって実現される。
【0027】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項から明らかである。
【0028】
本発明の音響パネルアセンブリは、請求項1で定義されている。
【0029】
本発明のさらなる特徴は、限定ではなく単に例示的な実施形態を表す以下の詳細な説明からより明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】従来技術による音響パネルアセンブリの軸方向断面図である。
図2】本発明による音響パネルアセンブリの第1の実施形態の軸方向断面図である。
図3図2の音響パネルアセンブリの平坦平面状の環状コイルの平面図である。
図3A図2の平面A-Aに沿って取った軸方向断面図である。
図4】本発明による音響パネルアセンブリの第2の実施形態の軸方向断面図である。
図5】本発明による音響パネルアセンブリの第3の実施形態の軸方向断面図である。
図6】本発明による音響パネルアセンブリの第4の実施形態の軸方向断面図である。
図7図7A 本発明による音響パネルアセンブリの弾性境界部材の一実施形態の断面図である。 図7B 本発明による音響パネルアセンブリの弾性境界部材の一実施形態の断面図である。 図7C 本発明による音響パネルアセンブリの弾性境界部材の一実施形態の断面図である。 図7D 本発明による音響パネルアセンブリの弾性境界部材の一実施形態の断面図である。 図7E 本発明による音響パネルアセンブリの弾性境界部材の一実施形態の断面図である。 図7F 本発明による音響パネルアセンブリの弾性境界部材の一実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下の説明では、上述した部分と同一の部分または対応する部分は同一の符号で識別し、それらの詳細な説明を省略する。
【0032】
図2は、本発明の第1の実施形態による音響パネルアセンブリ(100)を示す。
【0033】
音響パネルアセンブリ(100)は、円筒形状の貫通穴(40)を有する音響パネル(4)を備える。
【0034】
音響パネルの貫通穴(40)には、ボイスコイル(106)が配設されている。音響パネル(4)は、ボイスコイル(106)を支持するための支持体として直接働く。
【0035】
図3及び図3Aを参照すると、ボイスコイル(106)は、平坦平面型であり、内径(D1)及び外径(D2)を有する環形状を有する。
【0036】
ボイスコイル(106)は、ワイヤを重ね合わせずに、平坦なワイヤを環状の平面的な配置で巻くことによって得られる。この場合、ワイヤが垂直方向で重なっていないので、ボイスコイル(106)は高さが低い。コイルの高さ(H)と厚さ(S)との比は、1未満、好ましくは1/3未満である。逆に、図1に示すボイスコイル(6)など従来のボイスコイルでは、コイルの高さ(H)と厚さ(S)との比が1よりも高く、一般には5よりも高いことに留意されたい。
【0037】
ボイスコイル(106)は、コイルの平面がパネルの厚さの半分の位置にくるように、パネルの穴(40)の周りでパネル(4)の環状座部(144)に配設される。
【0038】
図には示されていないが、環状座部(144)は省略することができ、ボイスコイル(106)は、単に、穴(40)の周りのパネル(4)の表面に配設することもできる。そのような場合、磁気回路の中心極として作用するスペーサ(14)が、コイル(106)の平面がスペーサの高さの半分の位置にくるように取り付けられる。
【0039】
ボイスコイル(106)は、磁気回路(101)によって発生される径方向磁場に挿入される。図2は、磁気回路(101)の径方向磁場によって発生される磁気誘導線(F)を示す。
【0040】
磁気回路(101)は、2つの磁石(13a、13b)を備え、2つの磁石(13a、13b)は、それらの間に配設されたスペーサ(14)によって結合される。スペーサ(14)は、ボイスコイル(106)の内側に配設され、ボイスコイルの高さよりも高い。したがって、スペーサ(14)は、ボイスコイルの内径(D1)よりも小さい外径(D3)を有する。
【0041】
磁石(13a、13b)は、反発し合う配置で配設されている。すなわち、第1の磁石(13a)のN極(N)が第2の磁石のN極(N)に面するか、または第1の磁石(13a)のS極(S)が第2の磁石(13b)のS極(S)に面する。
【0042】
2つの磁石は、軸(A)を有する。ボイスコイル(106)は、磁石の軸(A)と一致する軸を有する環形状を有する。
【0043】
その最も単純な実施形態によれば、スペーサ(14)は、円筒形状を有することができ、磁石(13a、13b)は、外径(D4)を有するディスク状の形状を有することができる。図2は、スペーサの外径(D3)よりも小さい外径(D4)を有する磁石(13a、13b)を示す。しかし、磁石の外径は、スペーサの外径以上にし得るが、いずれにせよ、ボイスコイルの内径(D1)よりも小さくし得る。
【0044】
スペーサ(14)は、磁性材料と強磁性材料とを組み合わせることによって好適に得ることができ、磁石(13a、13b)によって発生される誘導磁場の強度及びボイスコイルの移動範囲内でのその均一性を高めるために、必ずしも円筒形ではない幾何学形状を有し得る。このようにして、スペーサ(14)は中心磁極として作用する。スペーサ(14)の高さは、スペーサの高さの全寸法に沿って、できるだけ一定の径方向誘導磁場内でボイスコイル(106)の軸方向移動を可能にするという要件によって決定される。
【0045】
スペーサ(14)の高さのそのような寸法は、再生すべき信号の周波数及びその電力、ならびに許容可能と考えられる、音響システムによって発生される歪みに関連する。
【0046】
渦電流の影響を制限し、その結果、音響応答を高周波まで広げるために、スペーサ(14)は、例えば銅などの高導電性材料のプレートで被覆することができる。
【0047】
例えば、磁気回路(101)は、ねじ(8)によってブリッジ(2)に固定され、ねじ(8)は、磁石(13a、13b)、スペーサ(14)、及びブリッジ(2)を軸方向に貫き、ナット(80)で締められる。
【0048】
ブリッジ(2)は、音響パネル(4)を周方向で支持するフレーム(3)に固定される。弾性境界部材(5)が、音響パネル(4)を弾性的に懸架するためにフレーム(3)に取り付けられている。
【0049】
磁気回路(101)は、音響パネルに対して前後に突出するようにパネルの貫通穴(40)に配設されている。特に、磁気回路(101)は、音響パネルから前方に長さ(La)突出する前部、及び音響パネルから後方に長さ(Lb)突出する後部を有する。ボイスコイル(106)が、パネルに設けられた環状座部(144)に取り付けられるとき、磁気回路の前部の長さ(La)は、後部の長さ(Lb)に等しい。スパイダ(C)を使用して、磁気回路(101)とボイスコイル(106)との安定した中心合わせを保ち、弾性境界部材(5)の剛性を調整することができる。例えば、スパイダ(C)は、パネル(4)と第2の磁石(13b)との間に配設することができる。
【0050】
図2の音響パネルアセンブリ(100)は、図1の音響パネルアセンブリ(600)に比べて低い後部体積を有する。実際、音響パネルアセンブリ(100)は、音響パネルアセンブリ(600)の磁気回路(1)よりもコンパクトな磁気回路(101)を備える。さらに、音響パネルアセンブリ(100)の磁気回路(101)は、サンドイッチ配置で、音響パネル(4)の前側半分と後側半分とで対称的に配設されている。
【0051】
図2の例では、ボイスコイル(106)の内径(D1)は、磁石(13a、13b)の外径(D4)よりも大きい。ボイスコイル(106)は、スペーサ(14)の厚さの半分の位置でスペーサ(14)の外側に配設されており、ボイスコイル(106)の大きな移動を可能にするように磁石(13a、13b)の体積の外側に配設されている。それにより、ボイスコイルが磁気回路の要素と干渉するのを防ぎ、雑音及び歪みの発生を避ける。
【0052】
例示の目的で、図2は、パネル(4)に設けられた環状座部(144)に挿入されたボイスコイル(106)を示す。パネル(4)の移動中に、ボイスコイル(106)が、スペーサ(14)の厚さの範囲内、すなわち最も高い均一性を有する径方向磁場の領域内に主に配設されるように、ボイスコイル(106)の厚さは、スペーサ(14)の厚さよりもかなり小さい。
【0053】
この場合に使用されるボイスコイル(106)は、図3及び図3Aのものなど、平坦ワイヤタイプのものである。代替として、ボイスコイル(106)は、円形断面を有する従来のワイヤを用いて得ることができるが、電力、音声信号の周波数成分、及び許容される歪みに従って、ボイスコイル(106)の動きが、より均一な径方向磁場を有するスペーサの厚さ内にできるだけ含まれるように、巻きの全厚(H)がスペーサ(14)の高さよりも低い。
【0054】
図4は、本発明の第2の実施形態による音響パネルアセンブリ(200)を示す。
【0055】
音響パネルアセンブリ(200)は、パネル(4)に設けられた凹状座部(44)に配設された平坦平面型のボイスコイル(106)を備える。凹状座部(44)の深さは、ボイスコイル(106)の平面がパネル(4)の厚さの半分の位置にくるようにすることができる。
【0056】
音響パネルアセンブリ(200)は、反発し合う配置で配設された2つの磁石(13a、13b)を有する磁気回路(201)を備える。ボイスコイル(106)は、2つの磁石(13a、13b)の間に配設されている。磁石(13a、13b)は、パネル(4)の前後に配設されたブリッジ(2a、2b)に固定されている。ブリッジ(2a、2b)は、弾性境界部材によって音響パネル(4)を周方向で支持するフレーム(3)に固定されている。
【0057】
図3及び図3Aに示される平坦平面状の環状ボイスコイル(106)は、パネル(4)よりも薄く、したがって、パネルの厚さに対する中央平面に従ってパネルに設けられた凹状座部(44)に位置決めすることができる。上記のことに鑑みて、ボイスコイルの厚さが小さいため、2つの磁石(13a、13b)をより近づけることができ、それにより、磁気回路(201)の軸方向体積をさらに減少し、2つの磁石(13a、13b)の位置がより近いので、磁気誘導を増加する。
【0058】
そのような場合、磁石(13a、13b)の外径(D4)は、ボイスコイルの内径(D1)と外径(D2)との間である。
【0059】
図5は、本発明の第3の実施形態による音響パネルアセンブリ(300)を示す。
【0060】
音響パネルアセンブリ(300)は、穴(40)を有するパネル(4)を備える。平坦な平面状のボイスコイル(106)は、図3及び図3Aに示されるものと同一である。ボイスコイル(106)は、穴(40)内でパネル(4)に固定されている。ボイスコイルの周縁部は、パネルの半分の厚さで穴(40)を画定するパネル(4)の環状境界部に固定されている。明らかに、穴(40)は、パネルに接合される平面状の円形クラウンとして形作られた表面を備えることができ、そこにボイスコイル(106)が接着される。
【0061】
磁気回路(101)は、2つの磁石(13a、13b)の間に、かつボイスコイル(106)の内側に配設されたスペーサ(14)を備える。
【0062】
そのような場合、2つの磁石(13a、13b)の外径(D4)は、スペーサ(14)の外径(D3)よりも大きく、磁石(13a、13b)の外径(D4)は、ボイスコイル(106)の内径(D1)と外径(D2)との間である。
【0063】
図6は、本発明の第4の実施形態による音響パネルアセンブリ(400)を示す。
【0064】
音響パネルアセンブリ(400)は、第1の極板(10a)と第2の極板(10b)との間に配設された磁石(13)を有する磁気回路(301)を備える。磁気回路(301)は、ブリッジ(2)、第2の極板(10b)、磁石(13)、及び第1の極板(10a)を軸方向に貫くねじ(8)によって、ブリッジ(2)の中央に固定されている。ねじ(8)は、ナットで固定される。ブリッジ(2)は、音響パネル(4)を周方向で支持するフレーム(3)に固定される。弾性境界部材(5)が、音響パネル(4)を弾性的に懸架するためにフレーム(3)に取り付けられている。
【0065】
シリンダ(9)が、音響パネルの貫通穴(40)に配設され、磁気回路(301)がシリンダ(9)の内側に配設されるように音響パネル(4)に固定される。シリンダ(9)は、好ましくは強磁性材料から成る。
【0066】
ばねやスパイダなどの平坦なサスペンション(90、91)が、シリンダ(9)を磁気回路(301)に弾性的に接続して、シリンダ(9)の内側での磁気回路(301)の中心合わせを保証する。サスペンション(90、91)は、磁気回路(301)内に軸方向に配設されたねじ(8)に接続されている。
【0067】
第1のボイスコイル(6a)が、第1の極板(10a)に対応してシリンダ(9)の内面に固定されている。
【0068】
第2のボイスコイル(6b)が、第2の極板(10b)に対応してシリンダの内面に固定されている。
【0069】
この配置もサンドイッチ状の配置であり、音響パネル(4)は、磁気回路(301)を取り囲むシリンダ(40)の高さに対する中央プレートに沿って配設される。
【0070】
2つのボイスコイル(6a、6b)には、逆方向の電流が供給される。例えば、第1のボイスコイル(6a)では、電流は反時計回りに循環する。逆に、第2のボイスコイル(6b)では、電流が時計回り方向に循環し、磁気誘導線(Fa、Fb)が逆向きである下部及び上部ギャップ(Ta、Tb)で発生するローレンツ力を使用する。
【0071】
図2図4、及び図5の実施形態では、好ましくは強磁性材料から成る環状要素を使用し、ボイスコイルの周縁の外側に好適に配設し、様々な配置に関して最適化された位置でパネルにしっかりと配設することができ、誘導磁場の強度、及びボイスコイルの移動範囲内でのその均一性を高める。
【0072】
図2図4図5、及び図6は、音響パネル(4)の位置に配設された単一のドライバを示す。そのようなドライバは、ただ1つの磁気回路(101;201;301)、及びその磁気回路に関連する少なくとも1つのボイスコイル(106;6a、6b)を備える。しかし、本発明の音響パネルアセンブリは、パネルの異なる位置に配設された2つ以上のドライバを備えることもできる。
【0073】
図7A図7B図7C図7D図7E、及び図7Fは、音響パネル(4)をフレーム(3)に弾性的に懸架して、音響パネル(4)のより良いピストン動作を可能にするための、弾性境界部材(5、105、205、305、405、505)の様々な解決策を示す。
【0074】
図7Aは、フレーム(3)に固定された本体(50)、及び音響パネル(4)の周辺部を受け取るU字形座部(51)を有する弾性境界部材(5)を示す。
【0075】
図7Bは、三角形の輪郭を有する境界部材としても画定される弾性境界部材(105)を示し、弾性境界部材(105)は、フレーム(3)に固定された第1の端部(150)、音響パネル(4)の周辺部に固定された第2の端部(151)、及びM字形断面を有する中間部分(152)を備える。
【0076】
図7Cは、フレーム(3)に固定された第1の端部(150)、音響パネル(4)の周辺部に固定された第2の端部(151)、ならびに半円周区域及び下に向かって凹形を有する中間部分(252)を備える弾性境界部材(205)を示す。
【0077】
図7Dは、フレーム(3)に固定された第1の端部(150)、音響パネル(4)の周辺部に固定された第2の端部(151)、ならびに半円周区域及び上に向かって凹形を有する中間部分(352)を備える弾性境界部材(305)を示す。
【0078】
図7Eは、発泡されて、パネル(4)の周縁の周りに配置された平面状の弾性境界部材(405)を示す。
【0079】
図7Fは、パネル(4)の上下に配設された2つの支持体(550)を備える弾性境界部材(505)を示す。支持体(550)は、ショックアブソーバとして作用するように空気で満たされた弾性管状要素である。
【0080】
プロジェクト要件の音響的な特徴に応じて、音響パネル(4)のいくつかの周縁領域のみを弾性的に懸架することも可能である。
【0081】
本発明の上記実施形態に多くの等価な変更及び修正を施すことができ、それらは、当業者が実施できる範囲内にあり、いずれにせよ、添付の特許請求の範囲によって開示される本発明の範囲内に含まれる。
図1
図2
図3
図3A
図4
図5
図6
図7