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特許7437004金属ガラス粒子が衝突した基板においてピーニングと成膜とを同時に行う動的衝撃方法
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  • 特許-金属ガラス粒子が衝突した基板においてピーニングと成膜とを同時に行う動的衝撃方法 図1
  • 特許-金属ガラス粒子が衝突した基板においてピーニングと成膜とを同時に行う動的衝撃方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】金属ガラス粒子が衝突した基板においてピーニングと成膜とを同時に行う動的衝撃方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 24/04 20060101AFI20240215BHJP
   B24C 11/00 20060101ALI20240215BHJP
   B24C 1/10 20060101ALI20240215BHJP
   B24C 1/08 20060101ALI20240215BHJP
   B24C 1/00 20060101ALI20240215BHJP
   C21D 7/06 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
C23C24/04
B24C11/00 D
B24C11/00 C
B24C1/10 A
B24C1/08
B24C1/00 Z
C21D7/06 Z
【請求項の数】 1
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019152208
(22)【出願日】2019-08-22
(65)【公開番号】P2020076146
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2022-06-24
(31)【優先権主張番号】16/111,176
(32)【優先日】2018-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519306288
【氏名又は名称】態金材料科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】陳 冠 維
(72)【発明者】
【氏名】鄭 憲 清
(72)【発明者】
【氏名】魏 伯 任
【審査官】菅原 愛
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-001706(JP,A)
【文献】特開2013-022718(JP,A)
【文献】特開2003-170353(JP,A)
【文献】特開2002-036115(JP,A)
【文献】特開昭60-194085(JP,A)
【文献】特表2010-526204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 24/04
B24C 11/00
B24C 1/10
B24C 1/08
B24C 1/00
C21D 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A.真空炉内で金属ガラス原料を溶融し、その後、急速に冷却し霧化させることにより金属ガラス粒子を調製すること;および
B.前記金属ガラス粒子を基板に衝突させること、
を含み、
前記Bの前記基板上の前記金属ガラス粒子の衝突が、
5バールから15バールの範囲の高圧下の高圧ガスにより駆動される前記金属ガラス粒子を衝突させて、前記基板の表面を硬化する高圧衝突;および
0.1バールから5バールの範囲の低圧下の低圧ガスによって駆動される前記金属ガラス粒子をさらに衝突させ、前記基板上に金属ガラスの膜を急速に重ね合わせて形成し、光沢のある耐食性の前記基板表面を形成する低圧衝突:
を含む、動的衝撃方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
井上他の米国特許8,323,729号は、金属部材の製造プロセスを開示しており、そのプロセスは、金属部材の疲労特性を可能にするために、圧縮ガスを使用して、アルミニウム合金を含む金属材料の表面に粒子を投射することを含むショットピーニング処理;および金属部材の耐食性を可能とするために、ショットピーニング処理に続いて化学変換処理を行うことにより金属材料の表面に膜を形成することを含む化学変換処理:を含む。
【0002】
金属部材の疲労特性と耐食性との両方を可能にするためには2つのステップ、つまり、金属表面に対する最初のショットピーニングと、続いてそのショットピーニングされた表面に保護膜を形成するためのさらなる化学変換処理とが必要とされる。
【0003】
そのため、表面処理が複雑であるため、金属部材の製造コストが増加する。
【0004】
本発明者は、従来の方法の欠点を発見し、材料(work peice)または構造物の基板においてピーニングおよび成膜を同時に行う動的衝撃方法を発明した。
【発明の概要】
【0005】
概要
本発明の目的は、基板の表面硬度、疲労耐性、破壊強度および耐食性を同時に高めるために、基板表面のピーニングと基板表面における金属ガラスの薄膜の形成とを同時に行う動的衝撃方法を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明で実施される動的衝撃方法を示す図である。
図2】本発明による基板の表面処理を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
詳細な説明
本発明によれば、金属ガラスまたは液体金属合金の粒子は、基板、好ましくは材料または工学構造物の金属基板または合金基板上でのショットピーニングおよび成膜のために提供されるが、本発明ではこれらに限定されない。
【0008】
本発明の工程ステップは以下を含む:
1.金属ガラス粒子の調製:
金属ガラスまたは液体金属合金の原料は、金属ガラスを形成する元素の適切な原子百分率を調整することにより調製される。
【0009】
そして、金属ガラスの原料を真空炉に入れて金属ガラスを溶融し、その後、高速の流体やガスにより急速に冷却し霧化させて、金属ガラス粒子を生成する。
【0010】
次いで、金属ガラス粒子を収集し、いくつかの等級、例えば、5~10ミクロン、10~20ミクロン、20~50ミクロン、50~100ミクロン、および100~300ミクロンの粒度に分類する。粒子サイズが小さいほど、基板のピーニングされた表面はより細かく、より高密度になる。
【0011】
2.基板上の金属ガラス粒子の衝突:
金属ガラス粒子1は、図1に示すように基板2の表面に衝突する。金属ガラス粒子は、アルゴンを含む圧縮ガスによって駆動されるノズルまたはガン11から噴射され、基板表面に動的に衝突し、波形または粗い基板表面を硬化し滑らかにする。
【0012】
実質的に、基板2は、図2に示すように、硬化ゾーン21となる硬化された上面部分を有している。金属ガラス粒子1は、基板表面に連続的に衝突するため、上記の波形または粗い表面は金属ガラス粒子のさらなる衝突により滑らかにされ、それにより、硬化ゾーン21上に金属ガラス薄膜10が形成される。
【0013】
そうすることにより、硬化ゾーン21は、基板の硬度、耐疲労性および破壊靭性を増大させることができ、金属ガラス薄膜10は、基板の耐食性をさらに増大させることができる。比較すると、本発明は、明細書の「発明の背景」の最初に示された米国特許第8,323,729号の先行技術に開示された2つのステップよりも硬度と耐食性とを同時に高めることができる。
【0014】
重大なことに、基板上の金属ガラス粒子の衝突は、さらに2つのサブステップに分割できる。すなわち:
A.高圧衝突:
金属ガラス粒子は、5~15バールの高圧下で圧縮ガス(アルゴンガスなど)によって駆動され、少なくとも10メートル/秒の速度で基板表面に衝突し,硬く、粗い基板表面を得る。
【0015】
B.低圧衝突:
金属ガラス粒子は、0.1~5バールの低圧下で圧縮ガスによって基板表面にさらに衝突し、研磨表面と同様の滑らかで光沢のある基板表面を得る。
【0016】
上記の衝突は、基板表面上に金属ガラスの薄膜を急速に重ねて形成し、それにより、滑らかで光沢のある外観の耐食性表面を形成する。
【0017】
したがって、基板の仕上げ表面は、硬度と耐食性との両方を従来技術よりも向上させるために、硬化ゾーン21と金属ガラス薄膜層10とを有し得る。
【0018】
6061アルミニウム合金基板上に金属ガラス粒子を衝突させることにより、表面ナノ硬度は23.41GPa(2212Hv)となり、金属ガラス衝突なしの場合(1.13GPa、107Hv)と比較して大きく増加した。
【0019】
一方、高速度鋼ピッチ金型表面に対する金属ガラス粒子の衝突後は、表面ナノ硬度は7.06GPa(667Hv)から22.03GPa(2082Hv)に増加した。さらに、3週間空気にさらした後も、腐食または錆びがない(酸化物層を形成しない)。
【0020】
本発明は、従来技術および従来のショットピーニングよりも以下の点で優れている:
1. 金属ガラス粒子は、衝突後に滑らかな研磨面を形成するために正確な球形として形成され得る。
2. 金属ガラス粒子は破壊強度が高いので、簡単に壊れて処理表面を傷つけることはなく、粒子は再利用のためにリサイクルすることもできる。
3. 金属ガラス粒子は高い硬度および密度を有し、それにより基板に対して衝突し、硬度を高めた衝突表面を形成する際の衝突効果を高める。
4. 基板に衝突した金属ガラス粒子は、基板表面に高速(10メートル/秒以上など)でガラス転移温度(Tg)より高い温度で衝突すると、基板表面に付着する金属ガラスの薄膜を形成するために摩擦熱により部分的に溶融し、それは室温に瞬時に冷却されてアモルファス特性が維持される。このように基板表面に形成された金属ガラス薄膜は、材料または構造物の基板の耐食性を向上させるため、非常に重要である。これにより、生産コストを大幅に削減できる。
【0021】
結論として、耐食性のさらなる処理なしで、基板表面上の金属ガラス粒子の衝突により、硬度、疲労抵抗、および破壊強度の増加に加えて、基板表面が耐食性になり得る。
【0022】
本発明は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、さらに変更することが可能である。
【0023】
本発明はさらに、前述の方法により製造された製品を含む。
本発明は、下記態様および形態を包含する。
(1)A.金属ガラス粒子または液体金属合金粒子を調製すること;および
B.前記金属ガラス粒子または液体金属合金粒子を基板に衝突させて前記基板の表面を硬化し、金属ガラスまたは液体金属合金の薄膜を形成して、前記基板の前記表面の耐食性を高めること、
を含む、動的衝撃方法。
(2)前記金属ガラス粒子が、真空炉内で金属ガラス原料を溶融し、その後、急速に冷却し霧化させて金属ガラス粒子を形成することにより製造される、上記(1)に記載の方法。
(3)前記基板上の金属ガラス粒子の衝突が、
5バールから15バールの範囲の高圧下の高圧ガスにより駆動される金属ガラス粒子を衝突させて、前記基板の前記表面を硬化する高圧衝突;および
0.1バールから5バールの範囲の低圧下の低圧ガスによって駆動される前記金属ガラス粒子をさらに衝突させ、前記基板上に金属ガラスの薄膜を急速に重ね合わせて形成し、前記基板の耐食性と光沢した表面とを形成する低圧衝突:
を含む、上記(1)に記載の方法。
(4)前記真空炉から得られた前記金属ガラス粒子が収集され、任意のまたは選択的な使用のために複数の粒子サイズに分類される、上記(2)に記載の方法。
(5)上記(1)に記載の方法により製造された製品。
図1
図2