(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】改良された横流沈殿池
(51)【国際特許分類】
B01D 21/24 20060101AFI20240215BHJP
B01D 21/02 20060101ALI20240215BHJP
B01D 21/01 20060101ALI20240215BHJP
E03F 5/14 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
B01D21/24 Z
B01D21/02 E
B01D21/01 C
B01D21/24 G
E03F5/14
(21)【出願番号】P 2019181328
(22)【出願日】2019-10-01
【審査請求日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2019180149
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000229162
【氏名又は名称】日本ソリッド株式会社
(72)【発明者】
【氏名】波多野 倫
【審査官】伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-026567(JP,U)
【文献】特開2019-089025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/00-21/34
E03F 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚濁水と凝集剤溶液とを混合する汚濁水流入部、急速撹拌槽、緩速撹拌槽、整流沈殿槽、傾斜板および/または傾斜管を設置した沈殿槽および貯留槽を順次備えた横流沈殿池において、整流沈殿槽と傾斜板および/または傾斜管を設置した沈殿槽との間に下端部を開放した隔壁を設け、該隔壁の整流沈殿槽側に越流ガータを設けるか、前記隔壁の水面近傍の水面下に位置するように水流通過口を複数個設け、前記越流ガータに処理水を貯留槽に流す通水管を設け、かつ前記傾斜板および/または傾斜管を設置した沈殿槽に水流通過口を通った処理水を貯留槽に送る集水トラフを設けたことを特徴とする改良された横流沈殿池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚濁物質を含有する汚濁水を処理するための改良された横流沈殿池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、汚濁物質を含有する汚濁水を清澄化する装置としては、横流普通沈殿池、横流薬品沈殿池、放射流普通沈殿池、放射流薬品沈殿池が用いられていた。これらの沈殿池は、汚濁水中の汚濁物質を除去するために沈殿池内に傾斜板あるいは傾斜管(以下傾斜板等という)を設置するのが一般的であった。
しかしながら傾斜板等は汚濁水中の汚濁物質の濃度が高かったり、処理流量を増大すると傾斜板等の間隙等に汚濁物質が付着したり、偏流が生じ傾斜板等を流下しない現象が生じていた。特に当初の設計値以上の流量の汚濁水を流すと傾斜板等が閉塞する現象が見られた。
これらの問題を解決する方法として、例えば傾斜板または傾斜管を設置した横流沈殿池において、該傾斜板または傾斜管の上手側に、シート膜を、隣接するシート膜間に間隔を設けて設置することを特徴とする横流沈殿池が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この特許文献1の横流沈殿池は、一定の効果を有するが、さらに流量を増大させた場合にも好適に処理し得る横流沈殿池について種々研究を重ねた結果本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、横流沈殿池において、傾斜板および/または傾斜管を設置した沈殿槽と整流沈殿槽の間に隔壁を下端部を開放して設け、該隔壁の整流沈殿槽側に越流ガータを設けるか、前記隔壁の水面近傍の水面下に位置するように水流通路口を複数個設けることを特徴とする改良された横流沈殿池に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の横流沈殿池によれば、越流ガータを設けるか、隔壁に水流通過口を設けることによって従来の同規模の横流沈殿池に比べ大量の汚濁水を処理することができる。
また、本発明は既設の横流沈殿池に適応することができるので、従来の横流沈殿池によって大量に汚濁水を処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4】本発明の他の態様を示す横流沈殿池の平面図。
【
図5】水流通過口を有する隔壁を設置したときの状態図。
【
図6】水流通過口を多段に設けた隔壁を設置したときの状態図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に本発明の横流沈殿池について説明するが、本発明は以下の説明のみに限定されるものではない。
図1は、従来の横流沈殿池の側断面図を表す概略図であり、
図2は本発明の横流沈殿池の側断面を表す概略図であり、
図3は本発明の横流沈殿池の平面を表す概略図であり、
図4は本発明の他の態様を示す横流沈殿池の平面を表す概略図である。
1は汚濁水流入部、2は急速攪拌槽、3は緩速攪拌槽、4は整流沈殿槽、5は傾斜板および/または傾斜管を設置した沈殿槽、6は集水トラフ、15は貯留槽、7は凝集剤供給管、8は汚濁物質を含有する汚濁水供給管、9は横流沈殿池の底部に沈積したスラッジ、10はスラッジ集水管、11は整流沈殿槽4と傾斜板および/または傾斜管を設けた沈殿槽5の間に設けられた隔壁、12は越流ガータ、13は隔壁11に設けた水流通過口である。
17は側壁16に設けた水流通過口であり、18は越流ガータ12の水を貯留槽15に通す通水管である。
【0009】
河川等から取水した汚濁水を横流沈殿池の汚濁水流入部1に導入し、同時に凝集剤供給管7より凝集溶液を導入する。この凝集剤溶液は、凝集溶液の外、凝集剤と本発明の沈殿槽のスラッジ集水管10から集水したスラッジ水で調整した溶液も使用することができる。
【0010】
汚濁水導入部1で汚濁水と供給された凝集剤溶液とが混合され、急速攪拌槽2に導入され、ここで急速攪拌が行われ、さらに均一に混合される。急速攪拌槽2で混合された汚濁水は、次に緩速攪拌槽3に導入され、緩速攪拌が行われ、汚濁水中の汚濁物質がフロック化される。緩速攪拌槽3で処理された汚濁水は、次の整流沈殿槽4に導入される。
【0011】
整流沈殿槽4に導入された汚濁水は、従来の横流沈殿池にあっては、次の沈殿槽5に導入するか、あるいは特許文献1に記載されているようにシート膜が展張された整流沈殿槽4から沈殿槽5に導入する。
一方本発明にあっては、
図2に示すように整流沈殿槽4と沈殿槽5の間に、下端部が開放された隔壁11があり、該隔壁11は横流沈殿池底部との間に間隔を設ける。隔壁11には、整流沈殿槽4側に、汚濁水が越流する位置(水面下の位置)にL字型越流ガータ12を設ける。L字型越流ガータ12の立壁の上縁部14は、水面下に位置するように設ける。このL字型越流ガータ12は適宜の手段によって可動式とし、上下に位置を変えられるようにすることによって処理水量に応じて好適に処理することができるので好ましい。
【0012】
またL字型越流ガータ12に代えて
図5に示すように隔壁11の水面近傍部に水流通過口13を平列に設けたり、
図6に示すように多段に水流通過口13を設けることによって水量の変化に好適に対応することができる。
【0013】
本発明は、傾斜板および/または傾斜管を設置した沈殿槽5と整流沈殿槽4との間に下端部が開放された隔壁11を設けることによって該隔壁11の整流沈殿槽4側に清澄化された処理水域を形成することができるので該隔壁11の整流沈殿槽4側に越流ガータ12を設けることによって、該清澄化された処理水を系外に排出することによって汚濁水の処理量を増大させることができる。
また水流通過口13を通った処理水は傾斜板および/または傾斜管を設置した沈殿槽5に設けられた集水トラフ6を介して貯留槽15に送られ系外に排出される。
さらに、
図4に示す傾斜板および/または傾斜管を設置した沈殿槽5と整流沈殿槽4ではは、側壁16に設けた水流通過口17を通った処理水は通水管18を介して、貯留槽15に送られ系外に排出される。
また隔壁11に設けた水流通過口13または、側壁16に設けた水流通過口17に開閉バルブ(図示せず)を設けることによって、水量の変化に好適に対応することができる。
【0014】
本発明は、設計値以上の流量の汚濁水を処理する他に、設計値以上の濁質の汚濁水を処理することができる。
【0015】
次に実施例によって説明する。
縦38m、横15mの横流沈殿において
図1に示す横流沈殿池と本発明の
図2に示す横流沈殿池を用いて、両者共に1440m
3/Hrの汚濁水を供給して処理したところ、
図1の横流沈殿池においては120時間後に傾斜板が閉塞し運転が不可能であったが、
図2に示す本発明の横流沈殿池で処理すると従来の横流沈殿池を用いて適正に処理したときと同様の清澄化された処理水とすることができ傾斜板等が閉塞することもなかった。
【符号の説明】
【0016】
11・・・隔壁
13・・・水流通過口