(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】カテーテル用チューブ
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20240215BHJP
【FI】
A61M25/00 504
(21)【出願番号】P 2019225811
(22)【出願日】2019-12-13
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】591245624
【氏名又は名称】株式会社東海メディカルプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【氏名又は名称】江口 基
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宏成
(72)【発明者】
【氏名】社本 譲
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-264400(JP,A)
【文献】特開平11-010743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱により膨張する膨張性マイクロカプセルが、膨張した独立気泡からなる発泡セルを内部に有する発泡樹脂からなり、
前記発泡セルは、前記カテーテル用チューブの部位によって、前記発泡セルの平均直径が異なることを特徴とすることを特徴とするカテーテル用チューブ。
【請求項2】
前記発泡セルは、平均直径が30μm~90μmであることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル用チューブ。
【請求項3】
単位体積あたりの前記発泡セルによる総空間体積が、樹脂の総体積よりも大きな体積であることを特徴とする請求項1又は2であることを特徴とするカテーテル用チューブ。
【請求項4】
前記カテーテル用チューブの表面は、加熱されて凹凸が平滑化された平滑化面を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のカテーテル用チューブ。
【請求項5】
前記発泡樹脂は、ポリアミド系合成樹脂、ポリアミド、ポリエチレン、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン又はポリプロピレンであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のカテーテル用チューブ。
【請求項6】
前記膨張性マイクロカプセルは、イソブタン、ペンタン、エーテル、ヘキサンヘプタン、低沸点ハロゲン化炭化水素及びメチルシランから選択される1又は2以上の膨張剤を、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルから選択される1又は2以上のガスバリア性の熱可塑性樹脂で包み込んだものであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のカテーテル用チューブ。
【請求項7】
前記膨張性マイクロカプセルは、樹脂に対して0.5重量%~7.5重量%混合されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のカテーテル用チューブ。
【請求項8】
(1)加熱により膨張する膨張性マイクロカプセルを樹脂に混合する膨張性マイクロカプセル混合工程。
(2)混合した樹脂を用いてチューブ状に成形する成形工程。
(3)チューブ状に成形された樹脂を軟化させ、膨張性マイクロカプセルを膨張させることができる温度以上で加熱して表面を平滑化処理する加熱工程。
を含むことを特徴とするカテーテル用チューブの作製方法。
【請求項9】
前記加熱工程で加熱する温度が250℃以上、300℃以下であることを特徴とする請求項8に記載のカテーテル用チューブの作製方法。
【請求項10】
前記加熱工程で加熱する際に、部位によって異なる加熱温度で加熱することを特徴とする請求項8又は請求項9に記載のカテーテル用チューブの作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテル用チューブに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、カテーテル用チューブの柔軟性を確保する手段の一つとして、発泡した樹脂をカテーテル用チューブに使用することで達成できることを見出した。
【0003】
発泡樹脂からなるチューブとしては、例えば、特許文献1に、表面にエンボス加工による凹凸が設けられた発泡樹脂チューブの作製方法が開示されている。かかる発泡樹脂チューブの作製方法は、環状の第1吐出口と、第1吐出口に連通する第1流路とが設けられるダイを用意し、第1吐出口から発泡剤を含有する第1樹脂を押し出しながら、成型装置において真空成型またはエア加圧成型を行うことにより、第1樹脂の発泡と表面にエンボス模様を有するチューブ形状への成型とを同時に行うものである。
【0004】
しかし、医療用カテーテルにおいては、カテーテルを身体の管腔を挿入しなければならないため、カテーテルの表面は平滑面であることが要求される。しかしながら、特許文献1のような化学発泡や、ガスを使用した物理発泡の場合は、チューブを成形する際に、発泡による破裂により、チューブの表面の凹凸が形成されたり、ボソボソになったり、穴が空いたりしてしまうという問題点があった。こうして作製されたチューブの表面は、加熱等によって表面の平滑化を行っても、これらが改善されることはないという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、かかる問題点を解決するためになされたものであり、発泡セルを有する樹脂を使用したカテーテル用チューブであって、柔軟性が向上しているとともに表面が平滑化されているカテーテル用チューブを提供するとともに、かかるカテーテル用チューブを作製する方法をも提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0008】
本発明にかかるカテーテル用チューブは、
加熱により膨張する膨張性マイクロカプセルが膨張した独立気泡からなる発泡セルを内部に有する発泡樹脂からなることを特徴とする。
【0009】
本発明にかかるカテーテル用チューブによれば、膨張性マイクロカプセルによる発泡樹脂を使用することで発泡セルを独立気泡とすることができ、表面に発泡セルの破裂による凹凸の形成を低減することができ、かつ発泡セルを有しないカテーテルチューブと比較して柔軟性を向上させることができる。
【0010】
また、本発明にかかるカテーテル用チューブにおいて、前記発泡セルは、平均直径が30μm~90μmであることを特徴とするものであってもよい。
【0011】
かかる範囲の発泡セルとすることによって、より高い柔軟性を有するカテーテル用チューブとすることができる。
【0012】
さらに、本発明にかかるカテーテル用チューブにおいて、単位体積あたりの前記発泡セルによる総空間体積が、樹脂の総体積よりも大きな体積であることを特徴とするものであってもよい。
【0013】
前記発泡セルによる総空間体積が、樹脂の総体積よりも大きな体積とすることによって、より高い柔軟性を有するカテーテル用チューブとすることができる。
【0014】
さらに、本発明にかかるカテーテル用チューブにおいて、前記カテーテル用チューブの表面は、加熱されて凹凸が平滑化された平滑化面を有することを特徴とするものであってもよい。
【0015】
カテーテル用チューブを加熱することによって、細かい凹凸がさらに平滑化され、滑らかな表面を有するカテーテル用チューブとすることができる。
【0016】
さらに、本発明にかかるカテーテル用チューブにおいて、前記発泡セルは、前記カテーテル用チューブの部位によって、発泡セルの平均直径が異なることを特徴とするものであってもよい。
【0017】
カテーテル用チューブの部位によって、発泡セルの平均直径を異ならせることで、カテーテル用チューブの部位に応じて異なる柔軟性をもたせることができる。
【0018】
さらに、本発明にかかるカテーテル用チューブにおいて、
前記発泡樹脂は、ポリアミド系合成樹脂、ポリアミド、ポリエチレン、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン又はポリプロピレンであることを特徴とするものであってもよい。
【0019】
さらに、本発明にかかるカテーテル用チューブにおいて、
前記膨張性マイクロカプセルは、イソブタン、ペンタン、エーテル、ヘキサンヘプタン、低沸点ハロゲン化炭化水素及びメチルシランから選択される1又は2以上の膨張剤を、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルから選択される1又は2以上のガスバリア性の熱可塑性樹脂で包み込んだものであることを特徴とするものであってもよい。
【0020】
さらに、本発明にかかるカテーテル用チューブにおいて、
前記膨張性マイクロカプセルは、樹脂に対して0.5重量%~7.5重量%混合されていることを特徴とするものであってもよい。
【0021】
上述したカテーテル用チューブは、以下の方法により作製することができる。
(1)加熱により膨張する膨張性マイクロカプセルを樹脂に混合する膨張性マイクロカプセル混合工程
(2)混合した樹脂を用いてチューブ状に成形する成形工程。
(3)前記チューブ状に成形された樹脂を軟化させ、膨張性マイクロカプセルを膨張させることができる温度以上で加熱して表面を平滑化処理する加熱工程。
【0022】
また、上述したカテーテル用チューブの作製方法において、
前記加熱工程で加熱する温度が250℃以上、300℃以下であることを特徴とするものであってもよい。
【0023】
かかる温度で加熱することにより、発泡セルを平均直径が30μm~100μmに膨張させることができるとともに、表面の平滑化を図ることができる。
【0024】
さらに、上述したカテーテル用チューブの作製方法において、
前記加熱工程で加熱する際に、部位によって異なる加熱温度で加熱することを特徴とするものであってもよい。
【0025】
かかるカテーテル用チューブの作製方法を採用することによって、部位によって柔軟性の異なるカテーテル用チューブを作製することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明にかかるカテーテル用チューブによれば、発泡セルを含んでいないカテーテル用チューブと比較して、より柔軟なカテーテル用チューブとすることができるとともに、発泡樹脂を使用しているにもかかわらず、表面が滑らかなカテーテル用チューブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、実施形態にかかるカテーテル用チューブ100の顕微鏡写真である。
【
図2】
図2は、実施形態にかかるカテーテル用チューブ100の作製方法のフローチャートである。
【
図3】
図3は、実施形態にかかるカテーテル用チューブ100の発泡セルの状態のバリエーションを示す図である。
【
図4】
図4は、実施例2、実施例3及び比較例の顕微鏡写真である。
【
図5】
図5は、実施例1から実施例5及び比較例の加熱温度による柔軟性(曲げ剛性N)を測定した測定結果を示すグラフである。
【
図6】
図6は、実施例2、実施例3及び比較例の10℃ごとの加熱温度による柔軟性(曲げ剛性N)を測定した測定結果を示すグラフである。
【
図7】
図7は、実施例2及び実施例3の加熱温度による発泡セルの平均粒子径の測定結果と、外観写真を示す図である。
【
図8】
図8は、実施例2及び実施例3の加熱温度による発泡セルの平均粒子径の測定結果と、外観写真を示す図である。なお、
図8は、
図7と同様に、上段が実施例2であり、下段が実施例3である。
【
図9】
図9は、実施例2及び実施例3の加熱後の外径を測定した測定結果を示すグラフである。
【
図10】
図10は、実施例6、7及び比較例3、4の加熱温度よる柔軟性(曲げ剛性N)を測定した測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明にかかるカテーテル用チューブ100及びカテーテル用チューブ100の作製方法について、図を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。
【0029】
(第1実施形態)
第1実施形態にかかるカテーテル用チューブ100の写真が
図1に示されている。第1実施形態にかかるカテーテル用チューブ100は、加熱により膨張する膨張性マイクロカプセルを混合した樹脂から作製されており、
図1に示すように、膨張した発泡セル10を内部に有し、その表面は、加熱処理により滑らかな表面を有するチューブからなる。
【0030】
かかるカテーテル用チューブ100は、以下のようにして作製される。カテーテル用チューブ100の作製方法は、
図2に示すように、主として、膨張性マイクロカプセル混合工程(S1)、成形工程(S2)、加熱工程(S3)と、を含む。
【0031】
膨張性マイクロカプセル混合工程(S1)は、膨張性マイクロカプセルを樹脂に混合し発泡樹脂の原材料を作製する工程である。膨張性マイクロカプセルは、熱可塑性樹脂を外郭とし、内部に温度を上げると気化する物質をこの外郭で封入したものであり、温度を上げると外郭の樹脂が軟化し、内部の物質が気化する圧力に従って膨張して中空のマイクロバルーン状態になる物質である。膨張性マイクロカプセルとしては、特に限定するものではなく既知のものを選択することができる。例えば、外郭を構成する樹脂としては、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル等のガスバリア性を有する熱可塑性樹脂が挙げられる。内部の物質としては、例えば、イソブタン、ペンタン、エーテル、ヘキサンヘプタン、低沸点ハロゲン化炭化水素及びメチルシランが挙げられる。好ましい素材としては、内部材料に液状の脂肪族炭化水素を使用し、外郭にアクリル系の熱可塑性樹脂で包んだものを使用するとよい。マイクロカプセルを混合する樹脂としては、ナイロン等のポリアミド系合成繊維、ポリアミド、ポリエチレン、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン又はポリプロピレン等が挙げられる。樹脂との混合方法としては、パウダー状の樹脂にマイクロカプセルを直接混合するとよい。膨張性マイクロカプセルは、樹脂に対して0.5重量%~7.5重量%、好ましくは1.5重量%~7.5重量%程度、より好ましくは、1.5重量%~4.5重量%混合するとよい。0.5重量%未満であると樹脂に対する気泡率が小さく、曲げ剛性の低下が小さすぎて柔軟性を十分に確保することができず、7.5重量%を超えると、マイクロカプセルによってカテーテル用チューブの表面に凹凸が発生し、表面の平滑性が低下する可能性がある。こうしたマイクロカプセルが混合された樹脂は加熱することで、マイクロカプセルが膨張して、中空の球となって樹脂内に分散し、ほぼ独立気泡からなる発泡体を構成する。こうしたマイクロカプセルによる発泡体を使用することによって、膨張性マイクロカプセルのサイズや加熱する温度によって発泡セルの大きさをコントロールすることができるため、これらを調整することによってカテーテル用チューブ100の柔軟性を選択して作製することができる。
【0032】
成形工程(S2)は、膨張性マイクロカプセルが混合された樹脂をチューブ状に成形する工程である。成形方法は、樹脂成形に使用される成形方法であれば、特に限定するものではない。例えば、押出成形により成形するとよい。成形されるカテーテル用チューブ100の太さや長さは限定するものではなく、消化管用のカテーテル、尿管用のカテーテル、血管用のカテーテル、マイクロカテーテル等使用用途に応じて適宜選択される。なお、この段階では、膨張性マイクロカプセルは、所望の大きさまで膨張しておらず、全く膨張していないか不完全に膨張している。
【0033】
加熱工程(S3)は、カテーテル用チューブ100の表面を滑らかにするとともに、膨張性マイクロカプセルを所望の大きさの発泡セルとなるように膨張させる工程である。成形工程を経たカテーテル用チューブ100は、表面に膨張性マイクロカプセルが一部突出していたりして凹凸が形成されている。そのため、加熱して表面を滑らかにする。また、この工程では、同時に膨張性マイクロカプセルを膨張させて所望の大きさまで膨張させる工程と、必要に応じてシュリンクをさせる工程が同時に行われる。加熱工程は、樹脂が軟化し、かつ膨張性マイクロカプセルが膨張(発泡)する温度の条件下に静置することにより行う。好ましい温度は、210℃以上300℃以下であり、より好ましくは、220℃以上290℃以下であり、より好ましくは260℃以上280℃以下である。かかる温度でカテーテル用チューブ100を加熱することによって、表面の凹凸が取れて表面が滑らかになるとともに、同時に加熱により内部の膨張性カプセルは、膨張して発泡セルが形成される。210℃未満であると、膨張性マイクロカプセルが十分に膨張しないため、柔軟性を十分に確保することができず、300℃を超える膨張性マイクロカプセルによる発発泡セルが破裂し、チューブ表面に凹凸が発生し、平滑性を保つことができなくなるおそれがある。さらに、選択された樹脂に応じてシュリンクし、チューブの直径が小さくなる。発泡セルは、30μm~100μm程度の直径になるように膨張させることが好ましい。30μmよりも小さいとカテーテル用チューブの柔軟性の向上に対する効果が小さくなり、90μmよりも大きくすると膨張性マクロカプセルの外郭が破裂する可能性があるからである。また、発泡セルによる総空間体積が、樹脂の総体積よりも大きな体積となるように発泡させることによって、より柔軟性、可撓性を向上させることができる。
【0034】
以上のようにして作製されたカテーテル用チューブ100は、外径を同等にする発泡セルを有しないカテーテル用チューブと比較して、柔軟性、可撓性が向上したものとすることができる。
【0035】
なお、カテーテル用チューブ100は、部位に応じて加熱工程の温度を変更することによって、部位によって柔軟性を変更してもよい。例えば、
図3Aに示すように、先端のみを加熱して、先端の膨張性マイクロカプセルのみを発泡させた発泡セル10を形成して、先端部分のみの柔軟性を向上させたり、
図3Bに示すように、カテーテル用チューブ100の一部のみ発泡セル10を形成して、柔軟性を向上させたり、又は
図3Cに示すように、遠位端側を高い温度で加熱し、順次手元側になるに応じて加熱温度を低くすることによって、遠位端側の発泡セル10aから順次10b,10cの順に手元側にくるに応じて順次小さな発泡セルを形成することができる。こうして作製されたカテーテル用チューブ100は、遠位端側が柔らかく、手元側が硬くなるようにすることができる。
【0036】
(実施例)
カテーテル用チューブ100の樹脂として、ナイロンエラストマーPEBAX(アルケマ社製)を用い、膨張性マイクロカプセルの配合材料として、膨張性マイクロカプセルを50%配合されたマイクロカプセルペレットであるマイクロスフェア(株式会社クレハ製)を使用し、マイクロカプセルの実質的な配合量(ペレットの半分量)をそれぞれ0.5重量%(実施例1)、1.5重量%(実施例2)、4.5重量%(実施例3)、6.0重量%(実施例4)、7.5重量%(実施例5)混合し、押出成形により、内径0.55mm、外径0.65mmのマイクロカテーテル用チューブを作製した。同様の条件で比較例として、膨張性マイクロカプセルを混合せず、ナイロンエラストマーPEBAXのみでマイクロカテーテル用チューブを作製したもの(比較例1)、膨張性マイクロカプセルを0.25重量%混合したもの(比較例2)、を同様に押出成形により、マイクロカテーテル用チューブを作製した。なお、10.0重量%混合したものは、押出成形時にチューブがボソボソになり、成形することができなかった。これはマイクロカプセルが過剰に存在することで、チューブの成形性が損なわれたものと考えられる。
【0037】
押出成形後であって、加熱工程前の比較例1、実施例2及び実施例3の顕微鏡写真を
図4に示す。この段階では、実施例2及び実施例3ともに、カテーテル用チューブ内には、細かな発泡セルが見られるがほとんど膨張していない状態であった。表面は、若干の凹凸が見られ、膨張性マイクロカプセル配合量が高い実施例3の方が、凹凸が多かった。一方比較例1は、内部に発泡はほとんど見られなかった。
【0038】
次に、それぞれ加熱工程として、実施例1~実施例5及び比較例1、比較例2を220℃、240℃、260℃及び280℃で加熱し、それぞれの曲げ剛性(N)を測定した。曲げ剛性の評価は、2点間距離3mmで支持し、中央を20mm/secの速度で、0.5mm押し下げた時の力を測定した。測定結果を
図5に示す。比較例1及び比較例2は、加熱によっても曲げ剛性がさほど低下することがなく、柔軟性の向上に大きな変化は見られなかった。これに対して、実施例1~実施例5は、220℃の加熱ですべて比較例1及び比較例2よりも曲げ剛性が低下し、柔軟性の向上が見られ、温度が高くなるにつれて、柔軟性が向上していることが確認できる。
【0039】
次に、実施例2及び実施例3に関して、200℃~290℃の間で10℃ごとの曲げ剛性(N)を測定した。測定結果を
図6に示す。かかる測定結果によれば、210℃から大きく柔軟性が向上し、さらに260℃で大きく柔軟性が向上していることがわかる。なお、300℃に加熱すると、過剰加熱により発泡性セルが破裂し、カテーテル用チューブ表面に凹凸が発生した。このことから、カテーテル用チューブの柔軟性向上には、加熱温度が210℃~290℃が好適であることがわかる。
【0040】
次に、実施例2及び実施例3に関して、200℃~290℃の間で10℃ごとの発泡セルの平均粒径を測定するとともに、外観検査を行った。それぞれの発泡セルの平均粒径及び外観の顕微鏡写真を
図7及び
図8に示す。この測定結果及び
図6の測定結果からカテーテル用チューブの柔軟性向上には、発泡セルの平均粒径が30μm~90μmが好適であることがわかる。
【0041】
次に、加熱工程後の実施例2、実施例3の外径を測定した。測定結果を
図9に示す。それぞれ0.566mm、0.576mmと加熱前と比較して外径が縮み、シュリンクされていることが確認された。また、視認検査では、実施例2、実施例3は、表面は滑らかになっていることが確認された。
【0042】
さらに、カテーテル用チューブ100の樹脂として、ポリエチレン(ニポロンF14 東ソー株式会社製)を用い、膨張性マイクロカプセルの配合材料として、マイクロカプセルを50%配合されたマイクロカプセルペレットとして、マイクロスフェア(株式会社クレハ製)を使用し、膨張性マイクロカプセルの実質的な配合量(ペレットの半分量)を4.5重量%混合したもの(実施例6)、ポリエチレンに代えてスチレン系エラストマー(タフテック H1052 株式会社旭化成製)を使用したもの(実施例7)、それぞれ、ポリエチレン(ニポロンF14 東ソー株式会社製))のみを使用してマイクロカテーテル用チューブを作製したもの(比較例3)、スチレン系エラストマー(タフテック H1052 株式会社旭化成製)のみを使用してマイクロカテーテル用チューブを作製したもの(比較例4)を使用して、220℃、240℃、260℃、280℃に加熱したものの曲げ剛性(N)を測定した。測定した結果を
図10に示す。
図10によれば、ポリエチレンを樹脂、スチレン系エラストマーを使用した実施例6及び実施例7は、いずれも膨張性マイクロカプセルを使用していない未配合品の比較例3及び比較例4よりも曲げ剛性が低くなり、柔軟性が向上したことが確認された。
【符号の説明】
【0043】
100…カテーテル用チューブ、10…発泡セル