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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】誘導装置及び誘導制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/01 20060101AFI20240215BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20240215BHJP
   G08G 1/005 20060101ALI20240215BHJP
   A61F 9/08 20060101ALN20240215BHJP
【FI】
G06F3/01 560
G01C21/26 P
G08G1/005
G06F3/01 510
A61F9/08
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020057129
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021157504
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【弁理士】
【氏名又は名称】末富 孝典
(74)【代理人】
【識別番号】100168114
【弁理士】
【氏名又は名称】山中 生太
(74)【代理人】
【識別番号】100146916
【弁理士】
【氏名又は名称】廣石 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 典良
【審査官】玉木 宏治
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-013738(JP,A)
【文献】特開2018-079094(JP,A)
【文献】特開2018-151937(JP,A)
【文献】特開2017-146945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01
G06F 3/048-3/04895
G01C 21/26
G08G 1/005
A61F 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの位置又は移動方向を検出する移動検出器と、
前記ユーザの身体に装着され、前記ユーザの関節の周りに、前記ユーザの左方への移動の動作を促進する左方誘導モーメントと、前記ユーザの右方への移動の動作を促進する右方誘導モーメントとを付与可能なモーメント付与機構と、
前記移動検出器の検出結果を表す実検出データと、前記ユーザの理想的な移動の経路である理想経路を表す理想経路データとを用いて、前記左方誘導モーメントが前記右方誘導モーメントよりも大きい左方誘導状態と、前記右方誘導モーメントが前記左方誘導モーメントよりも大きい右方誘導状態とのいずれの状態を実現するかを選定する処理と、選定した前記状態である選定状態を前記モーメント付与機構に実現させる制御とを繰り返すことにより、前記ユーザの移動の経路を前記理想経路に近づける制御装置と、
を備え、
前記モーメント付与機構が、前記左方誘導モーメントと前記右方誘導モーメントとの各々の大きさを制御可能に構成されており、
前記制御装置が、前記実検出データを用いて特定される前記ユーザの前記移動方向の、前記理想経路に向かう方向からのずれ量を表す旋回角度を特定し、特定した前記旋回角度に応じて、前記左方誘導状態又は前記右方誘導状態における前記左方誘導モーメントと前記右方誘導モーメントとの大きさの差である不均衡度を求め、求めた前記不均衡度を有する前記選定状態を前記モーメント付与機構に実現させる、
誘導装置。
【請求項2】
前記モーメント付与機構が、
前記ユーザの右半身に装着され、前記右半身に前記左方誘導モーメントと前記右方誘導モーメントとの一方のモーメントを付与する右半身用モーメント付与機構と、
前記ユーザの左半身に装着され、前記左半身に前記左方誘導モーメントと前記右方誘導モーメントとの他方のモーメントを付与する左半身用モーメント付与機構と、
を有する、請求項1に記載の誘導装置。
【請求項3】
前記右半身用モーメント付与機構が、前記右半身に付与する前記モーメントの向きを、前記ユーザの歩行又は疾走の動作の半周期に等しい周期で切り換え、かつ前記左半身用モーメント付与機構が、前記左半身に付与する前記モーメントの向きを、前記半周期に等しい周期で切り換える、
請求項に記載の誘導装置。
【請求項4】
前記ユーザと並んで移動する伴走体に取り付けられ、前記伴走体の位置又は移動方向を検出する伴走体用移動検出器、
をさらに備え、
前記制御装置が、前記伴走体用移動検出器の検出結果を前記理想経路データとして前記伴走体用移動検出器から取得する、
請求項1からのいずれか1項に記載の誘導装置。
【請求項5】
ユーザの身体に装着され、前記ユーザの関節の周りに、前記ユーザの左方への移動の動作を促進する左方誘導モーメントと、前記ユーザの右方への移動の動作を促進する右方誘導モーメントとを付与可能なモーメント付与機構、
を制御するコンピュータに、
前記ユーザの位置又は移動方向の検出結果を取得する取得機能と、
前記取得機能によって取得した前記検出結果と、前記ユーザの理想的な移動の経路である理想経路を表す理想経路データとを用いて、前記左方誘導モーメントが前記右方誘導モーメントよりも大きい左方誘導状態と、前記右方誘導モーメントが前記左方誘導モーメントよりも大きい右方誘導状態とのいずれの状態を実現するかを選定する処理と、選定した前記状態である選定状態を前記モーメント付与機構に実現させる制御とを繰り返すことにより、前記ユーザの移動の経路を前記理想経路に近づける制御機能と、
を実現させ、
前記モーメント付与機構が、前記左方誘導モーメントと前記右方誘導モーメントとの各々の大きさを制御可能に構成されており、
前記制御機能が、前記検出結果を用いて特定される前記ユーザの前記移動方向の、前記理想経路に向かう方向からのずれ量を表す旋回角度を特定し、特定した前記旋回角度に応じて、前記左方誘導状態又は前記右方誘導状態における前記左方誘導モーメントと前記右方誘導モーメントとの大きさの差である不均衡度を求め、求めた前記不均衡度を有する前記選定状態を前記モーメント付与機構に実現させる、
誘導制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導装置及び誘導制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1-4に開示されているように、進行すべき方向にユーザを誘導する誘導装置が知られている。これらの誘導装置は、ユーザに進行すべき方向を報知する目的で、ユーザに外力を付与する。ユーザは、誘導装置から受ける外力の向きによって、進行すべき方向を知る。このため、視覚に障害を有するユーザであっても、移動の経路を正しい方向に自ら修正することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2018-510420号公報
【文献】特開2011-224136号公報
【文献】特開2002-243493号公報
【文献】特開2007-248478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の誘導装置では、ユーザは、移動中に誘導装置からどのような向きの外力を受けるかということに意識を集中させ続けなければならない。つまり、ユーザの注意力が、力覚の認識のために奪われる。このため、ユーザは、誘導装置によって誘導を受けている間は、歩行又は疾走の動作、周囲の環境の把握等に充分に注意を払うことが難しい。
【0005】
本発明の目的は、ユーザの注意力が奪われにくい誘導装置及び誘導制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る誘導装置は、
ユーザの位置又は移動方向を検出する移動検出器と、
前記ユーザの身体に装着され、前記ユーザの関節の周りに、前記ユーザの左方への移動の動作を促進する左方誘導モーメントと、前記ユーザの右方への移動の動作を促進する右方誘導モーメントとを付与可能なモーメント付与機構と、
前記移動検出器の検出結果を表す実検出データと、前記ユーザの理想的な移動の経路である理想経路を表す理想経路データとを用いて、前記左方誘導モーメントが前記右方誘導モーメントよりも大きい左方誘導状態と、前記右方誘導モーメントが前記左方誘導モーメントよりも大きい右方誘導状態とのいずれの状態を実現するかを選定する処理と、選定した前記状態である選定状態を前記モーメント付与機構に実現させる制御とを繰り返すことにより、前記ユーザの移動の経路を前記理想経路に近づける制御装置と、
を備え
前記モーメント付与機構が、前記左方誘導モーメントと前記右方誘導モーメントとの各々の大きさを制御可能に構成されており、
前記制御装置が、前記実検出データを用いて特定される前記ユーザの前記移動方向の、前記理想経路に向かう方向からのずれ量を表す旋回角度を特定し、特定した前記旋回角度に応じて、前記左方誘導状態又は前記右方誘導状態における前記左方誘導モーメントと前記右方誘導モーメントとの大きさの差である不均衡度を求め、求めた前記不均衡度を有する前記選定状態を前記モーメント付与機構に実現させる
【0008】
前記モーメント付与機構が、
前記ユーザの右半身に装着され、前記右半身に前記左方誘導モーメントと前記右方誘導モーメントとの一方のモーメントを付与する右半身用モーメント付与機構と、
前記ユーザの左半身に装着され、前記左半身に前記左方誘導モーメントと前記右方誘導モーメントとの他方のモーメントを付与する左半身用モーメント付与機構と、
を有してもよい。
【0009】
前記右半身用モーメント付与機構が、前記右半身に付与する前記モーメントの向きを、前記ユーザの歩行又は疾走の動作の半周期に等しい周期で切り換え、かつ前記左半身用モーメント付与機構が、前記左半身に付与する前記モーメントの向きを、前記半周期に等しい周期で切り換えてもよい。
【0012】
前記ユーザと並んで移動する伴走体に取り付けられ、前記伴走体の位置又は移動方向を検出する伴走体用移動検出器、
をさらに備え、
前記制御装置が、前記伴走体用移動検出器の検出結果を前記理想経路データとして前記伴走体用移動検出器から取得してもよい。
【0013】
上記目的を達成するために、本発明に係る誘導制御プログラムは、
ユーザの身体に装着され、前記ユーザの関節の周りに、前記ユーザの左方への移動の動作を促進する左方誘導モーメントと、前記ユーザの右方への移動の動作を促進する右方誘導モーメントとを付与可能なモーメント付与機構、
を制御するコンピュータに、
前記ユーザの位置又は移動方向の検出結果を取得する取得機能と、
前記取得機能によって取得した前記検出結果と、前記ユーザの理想的な移動の経路である理想経路を表す理想経路データとを用いて、前記左方誘導モーメントが前記右方誘導モーメントよりも大きい左方誘導状態と、前記右方誘導モーメントが前記左方誘導モーメントよりも大きい右方誘導状態とのいずれの状態を実現するかを選定する処理と、選定した前記状態である選定状態を前記モーメント付与機構に実現させる制御とを繰り返すことにより、前記ユーザの移動の経路を前記理想経路に近づける制御機能と、
を実現させ
前記モーメント付与機構が、前記左方誘導モーメントと前記右方誘導モーメントとの各々の大きさを制御可能に構成されており、
前記制御機能が、前記検出結果を用いて特定される前記ユーザの前記移動方向の、前記理想経路に向かう方向からのずれ量を表す旋回角度を特定し、特定した前記旋回角度に応じて、前記左方誘導状態又は前記右方誘導状態における前記左方誘導モーメントと前記右方誘導モーメントとの大きさの差である不均衡度を求め、求めた前記不均衡度を有する前記選定状態を前記モーメント付与機構に実現させる
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る誘導装置及び誘導制御プログラムによれば、モーメント付与機構によってユーザの進行すべき方向への移動の動作が促進されることで、ユーザの移動の経路が理想経路に近づけられる。このため、ユーザは、移動中に進行すべき方向を自ら積極的に把握する必要がない。つまり、ユーザは、移動中に力覚を認識し続ける必要がない。従って、ユーザの注意力が奪われにくい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態1に係る誘導装置の構成を示す概念図。
図2】実施形態1に係る身体装着具の装着態様を示す概念図。
図3】実施形態1に係る右半身用モーメント付与機構の部分破断図。
図4】実施形態1に係るフライホイールが生成するモーメントを示す概念図。
図5】実施形態1に係る左方移動促進制御のフローチャート。
図6】実施形態1に係る右方移動促進制御のフローチャート。
図7】実施形態1に係る旋回方向及び旋回角度の特定方法を示す概念図。
図8】実施形態1に係る誘導制御のフローチャート。
図9】実施形態2に係る左方移動促進制御のフローチャート。
図10】実施形態2に係る右方移動促進制御のフローチャート。
図11】実施形態3に係る誘導制御のフローチャート。
図12】実施形態4に係る身体装着具の装着態様を示す概念図。
図13】実施形態5に係る体幹軸用モーメント付与機構の装着態様を示す概念図。
図14】実施形態6に係る旋回方向及び旋回角度の特定方法を示す概念図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、実施形態1-6に係る誘導装置について説明する。図中、同一又は対応する部分に同一の符号を付す。なお、実施形態1-6に係る誘導装置は、疾走するユーザを進行すべき方向に誘導するものである。
【0017】
[実施形態1]
図1に示すように、本実施形態に係る誘導装置600は、ユーザに疾走の動作をアシストするモーメントを付与するモーメント付与機構としての身体装着具200と、身体装着具200を制御する統括制御部100とを備える。身体装着具200及び統括制御部100のいずれもユーザの身体に装着される。
【0018】
身体装着具200は、ユーザの右半身に取り付けられる右半身用身体装着具210と、ユーザの左半身に取り付けられる左半身用身体装着具220とを有する。
【0019】
図2に示すように、右半身用身体装着具210は、ユーザの右大腿部CRに装着され、左半身用身体装着具220は、ユーザの左大腿部CLに装着される。
【0020】
右半身用身体装着具210は、ユーザの身体に対して固定された仮想回転軸k-AXの周りのモーメントを生成する本体部210Aと、本体部210Aを右大腿部CRに装着するベルト210Bとを有する。
【0021】
なお、仮想回転軸k-AXは、ユーザの股関節をユーザの身体の幅方向に貫いている。本体部210Aは、ユーザの右側の股関節の周りに、右大腿部CRの動きをアシストする向きのモーメントを付与する。
【0022】
左半身用身体装着具220も同様に、仮想回転軸k-AXの周りのモーメントを生成する本体部220Aと、本体部220Aを左大腿部CLに装着するベルト220Bとを有する。本体部220Aは、ユーザの左側の股関節の周りに、左大腿部CLの動きをアシストする向きのモーメントを付与する。
【0023】
図1に示すように、右半身用身体装着具210の本体部210Aは、ユーザにモーメントを付与する右半身用モーメント付与機構216と、右大腿部CRの仮想回転軸k-AXの周りの角速度を計測する角速度検出器217と、角速度検出器217の検出結果を用いて右半身用モーメント付与機構216を制御する下位制御器218と、右半身用モーメント付与機構216等に電力を供給するバッテリ219とを有する。
【0024】
左半身用身体装着具220の本体部220Aも同様に、ユーザにモーメントを付与する左半身用モーメント付与機構226と、左大腿部CLの仮想回転軸k-AXの周りの角速度を計測する角速度検出器227と、角速度検出器227の検出結果を用いて左半身用モーメント付与機構226を制御する下位制御器228と、左半身用モーメント付与機構226等に電力を供給するバッテリ229とを有する。
【0025】
右半身用モーメント付与機構216と左半身用モーメント付与機構226との構成及び作用は同様である。そこで、以下では、代表して右半身用モーメント付与機構216について、具体的に説明する。
【0026】
図3に示すように、右半身用モーメント付与機構216は、フライホイール211と、フライホイール211を自転させる自転用モータ212と、フライホイール211及び自転用モータ212を保持する保持部材213とを有する。
【0027】
また、右半身用モーメント付与機構216は、自己に対して固定された仮想揺動軸i-AXの周りに保持部材213を回転可能に保持する基枠214と、基枠214に固定され、保持部材213を仮想揺動軸i-AXの周りに回転させる揺動用モータ215とを有する。
【0028】
基枠214は、図2に示したベルト210Bによって、ユーザの右大腿部CRに固定される。即ち、仮想揺動軸i-AXは、ユーザの右大腿部CRに対して固定される。
【0029】
フライホイール211の自転の中心軸を表す仮想自転軸j-AXは、仮想揺動軸i-AXと交差している。より具体的には、仮想自転軸j-AXは、フライホイール211の重心CMの位置において、仮想揺動軸i-AXと直交している。
【0030】
揺動用モータ215によって、仮想揺動軸i-AXの周りに保持部材213を回転させると、仮想自転軸j-AXと仮想揺動軸i-AXとが直交関係を保ったまま、フライホイール211が、保持部材130と共に仮想揺動軸i-AXの周りに傾く。フライホイール211は、仮想揺動軸i-AXの周りのいずれの回転方向にも回転可能、つまり仮想揺動軸i-AXの周りに揺動可能である。
【0031】
次に、仮想揺動軸i-AX及び仮想自転軸j-AXと、図1に示した仮想回転軸k-AXとの位置関係について、図4を参照して説明する。
【0032】
図4に示すように、フライホイール211は、ユーザの右大腿部CRの、股関節から遠く、膝に近い方の端部に固定される。股関節を貫く仮想回転軸k-AXと、フライホイール211の重心CMとの距離を表す仮想中立線NLは、右大腿部CRと略平行に延在する。
【0033】
自転中のフライホイール211を、仮想揺動軸i-AXの周りに回転させたときに、仮想回転軸k-AXの周りにモーメントが発生するような向きで、図3に示した基枠214が、図2に示したベルト210Bによって右大腿部CRに固定される。
【0034】
具体的には、仮想揺動軸i-AXは、仮想回転軸k-AXに対してねじれの位置をなす向きで、右大腿部CRに対して固定される。より具体的には、仮想揺動軸i-AXをX軸とし、仮想中立線NLをY軸とする、右大腿部CRに対して固定されたXYZ直交座標系を想定したとき、仮想回転軸k-AXは、Z軸と平行である。
【0035】
以下、フライホイール211が仮想回転軸k-AXの周りに生成するモーメントの向きを説明するために、各軸のプラス方向と、各軸に対する時計回りの方向とを定義する。
【0036】
仮想回転軸k-AXのプラス方向とは、ユーザにとって左から右に向かう方向を指す。仮想回転軸k-AXに対して時計回りとは、右ねじを仮想回転軸k-AXのプラス方向に螺進させるために、右ねじを回す方向を指す。
【0037】
なお、図1に示した角速度検出器217は、右大腿部CRの仮想回転軸k-AXの周りの角速度ωを検出する。角速度ωの値は、仮想回転軸k-AXに対して時計回りの場合を正、仮想回転軸k-AXに対して反時計回りの場合を負とする。
【0038】
仮想揺動軸i-AXのプラス方向とは、仮想回転軸k-AXに対して時計回りの方向を指す。仮想揺動軸i-AXに対して時計回りとは、右ねじを仮想揺動軸i-AXのプラス方向に螺進させるために、右ねじを回す方向を指す。
【0039】
仮想自転軸j-AXのプラス方向とは、仮想自転軸j-AXが仮想中立線NLの延長線上に位置した非傾斜状態において、仮想回転軸k-AXから遠ざかる方向を指す。仮想自転軸j-AXに対して時計回りとは、右ねじを仮想自転軸j-AXのプラス方向に螺進させるために、右ねじを回す方向を指す。
【0040】
仮想自転軸j-AXの周りに自転中のフライホイール211を、仮想揺動軸i-AXの周りに回転させたとき、仮想回転軸k-AXの周りに、次式(1)で表されるモーメントMが発生する。
M∝I・ω・ω ・・・(1)
【0041】
ここでIは、フライホイール211の仮想自転軸j-AXの周りの慣性モーメントである。ωは、フライホイール211の仮想自転軸j-AXの周りの角速度であり、仮想自転軸j-AXに対して時計回りを正、反時計回りを負とする。ωは、フライホイール211の仮想揺動軸i-AXの周りの角速度であり、仮想揺動軸i-AXに対して時計回りを正、反時計回りを負とする。
【0042】
モーメントMは、正の値のとき、仮想回転軸k-AXに対して時計回りであり、負の値のとき、反時計回りであることを意味する。上式(1)から分かるように、モーメントMの向きは、ωの正負の符号、つまりフライホイール211の仮想揺動軸i-AXの周りの回転方向によって切り換えることができる。
【0043】
例えば、仮想自転軸j-AXに対して時計回りに自転中のフライホイール211を、仮想揺動軸i-AXに対して時計回りに回転させると、仮想回転軸k-AXに対して時計回りのモーメントMが発生する。この時計回りのモーメントMを図4ではMCWと表記した。
【0044】
この状態から、フライホイール211の仮想揺動軸i-AXの周りの回転方向を反時計回りに切り換えると、モーメントMの向きを、仮想回転軸k-AXに対して反時計回りに切り換えることができる。この反時計回りのモーメントMを図4ではMCCWと表記した。
【0045】
以上のように、フライホイール211の仮想揺動軸i-AXの周りの回転方向によって、モーメントMの向きを切り換えることができる。そこで、右大腿部CRの動きに応じて、フライホイール211の仮想揺動軸i-AX周りの回転方向を切り換えることで、右大腿部CRの動きをアシストすることができる。
【0046】
以下、右大腿部CRの動きをアシストすることにより、ユーザの左方への移動の動作を促進する左方移動促進制御について説明する。左方移動促進制御は、図1に示した下位制御器218が、図1に示した統括制御部100からの指令を受けて行う。以下、図5を参照し、具体的に説明する。
【0047】
図5に示すように、まず下位制御器218は、図1に示した角速度検出器217から、右大腿部CRの仮想回転軸k-AXの周りの角速度ωの検出結果を取得する(ステップS11)。角速度ωの符号は、右大腿部CRの回転方向を表すので、角速度ωによってユーザの疾走の動作の半周期を特定可能である。即ち、角速度検出器217は、ユーザの動作の半周期を特定可能な物理量を検出する物理量検出器の一例である。
【0048】
次に、下位制御器218は、角速度ωがゼロであるか否かを判定し(ステップS12)、ゼロでないならば(ステップS12;NO)、再びステップS12に戻る。一方、下位制御器218は、角速度ωがゼロである場合は(ステップS12;YES)、その角速度ω=ゼロが、右大腿部CRの振り上げの開始時点を表すのか、それとも右大腿部CRの振り下ろしの開始時点を表すのかを判定する(ステップS13)。
【0049】
なお、下位制御器218は、例えば、角速度ωの時系列に基づいてステップS13の判定を行える。具体的には、角速度ωが正の値からゼロへと減少した場合は、右大腿部CRの振り上げが完了したことを表すため、角速度ω=ゼロが、右大腿部CRの振り下ろしの開始時点を表すと判る。一方、角速度ωが負の値からゼロへと増加した場合は、右大腿部CRの振り下ろしが完了したことを表すため、角速度ω=ゼロが、右大腿部CRの振り上げの開始時点を表すと判る。
【0050】
下位制御器218は、角速度ω=ゼロが、右大腿部CRの振り上げの開始時点を表す場合(ステップS13;振り上げ開始時点)、フライホイール211を仮想揺動軸i-AXに対して時計回りに回転させる。これにより、右大腿部CRの振り上げ、即ち仮想回転軸k-AXに対する時計回りの動きをアシストする時計回りのモーメントMCWが、ユーザの右股関節の周りに付与される(ステップS14)。
【0051】
一方、下位制御器218は、角速度ω=ゼロが、右大腿部CRの振り下ろしの開始時点を表す場合には(ステップS13;振り下ろし開始時点)、フライホイール211を仮想揺動軸i-AXに対して反時計回りに回転させる。これにより、右大腿部CRの振り下ろし、即ち仮想回転軸k-AXに対する反時計回りの動きをアシストする反時計回りのモーメントMCCWが、ユーザの右股関節の周りに付与される(ステップS15)。
【0052】
なお、ステップS14で付与するモーメントMCW及びステップS15で付与するモーメントMCCWは、いずれもユーザの右大腿部CRの動きをアシストするので、ユーザの左方への移動の動作を促進する作用をもつ。そこで、以下では、図1に示す右半身用モーメント付与機構216が股関節に付与するモーメントを“左方誘導モーメント”と呼ぶことにする。
【0053】
下位制御器218は、ステップS14又はステップS15の後は、左方移動促進制御を終了するか否かを判定し(ステップS16)、終了しない場合は(ステップS16;NO)、再びステップS11に戻り、図1に示した統括制御部100からの指令により左方移動促進制御を終了する場合は(ステップS16;YES)、本処理を終了する。
【0054】
なお、ステップS16からステップS11に戻って同じ処理が繰り返される場合の繰り返しの周期は、ユーザの疾走の動作の半周期よりも充分に短い。この結果、左方移動促進制御では、ユーザに付与される左方誘導モーメントの、時計回りのモーメントMCWと、反時計回りのモーメントMCCWとの間での切り換えが、ユーザの疾走の動作の半周期に等しい周期で行われる。つまり、左方誘導モーメントの股関節の周りの向きが、疾走の動作の半周期ごとに切り換えられる。
【0055】
また、上式(1)から分かるように、左方誘導モーメントの大きさを、フライホイール211の仮想揺動軸i-AXの周りの角速度ωの大きさによって制御できる。そこで、下位制御器218は、揺動用モータ215の回転速度によって、左方誘導モーメントの大きさを調整する制御も行う。後述するように、左方誘導モーメントの大きさの目標値は、図1に示した統括制御部100から指定される。
【0056】
以上、図1に示す右半身用身体装着具210の下位制御器218の処理について説明した。図1に示す左半身用身体装着具220の下位制御器228も同様の処理を行う。
【0057】
即ち、下位制御器228は、図1に示した統括制御部100からの指令を受けて、左大腿部CLの動きをアシストすることにより、ユーザの右方への移動の動作を促進する右方移動促進制御を行う。以下、図6を参照し、具体的に説明する。
【0058】
図6に示すように、まず下位制御器228は、図1に示した角速度検出器227から、左大腿部CLの仮想回転軸k-AXの周りの角速度ωの検出結果を取得する(ステップS21)。この角速度ωの符号は、左大腿部CLの回転方向を表すので、角速度ωによってユーザの疾走の動作の半周期を特定可能である。即ち、角速度検出器227も、ユーザの動作の半周期を特定可能な物理量を検出する物理量検出器の一例である。
【0059】
次に、下位制御器228は、角速度ωがゼロであるか否かを判定し(ステップS22)、ゼロでないならば(ステップS22;NO)、再びステップS22に戻る。一方、下位制御器228は、角速度ωがゼロである場合は(ステップS22;YES)、その角速度ω=ゼロが、左大腿部CLの振り上げの開始時点を表すのか、それとも左大腿部CLの振り下ろしの開始時点を表すのかを判定する(ステップS23)。
【0060】
なお、下位制御器228は、例えば、角速度ωの時系列に基づいてステップS23の判定を行える。具体的には、角速度ωが正の値からゼロへと減少した場合は、左大腿部CRの振り上げが完了したことを表すため、角速度ω=ゼロが、左大腿部CRの振り下ろしの開始時点を表すと判る。一方、角速度ωが負の値からゼロへと増加した場合は、左大腿部CRの振り下ろしが完了したことを表すため、角速度ω=ゼロが、左大腿部CRの振り上げの開始時点を表すと判る。
【0061】
下位制御器228は、角速度ω=ゼロが、左大腿部CLの振り上げの開始時点を表す場合(ステップS23;振り上げ開始時点)、仮想回転軸k-AXに対して時計回りのモーメントが左股関節に付与されるように、図1に示す左半身用モーメント付与機構226を制御する(ステップS24)。
【0062】
一方、下位制御器228は、角速度ω=ゼロが、左大腿部CLの振り下ろしの開始時点を表す場合には(ステップS23;振り下ろし開始時点)、仮想回転軸k-AXに対して反時計回りのモーメントが左股関節に付与されるように、図1に示す左半身用モーメント付与機構226を制御する(ステップS25)。
【0063】
なお、ステップS24で付与するモーメント及びステップS25で付与するモーメントは、いずれもユーザの左大腿部CLの動きをアシストするので、ユーザの右方への移動の動作を促進する作用をもつ。そこで、以下では、図1に示す左半身用モーメント付与機構226が股関節に付与するモーメントを“右方誘導モーメント”と呼ぶことにする。
【0064】
下位制御器228は、ステップS24又はステップS25の後は、右方移動促進制御を終了するか否かを判定し(ステップS26)、終了しない場合は(ステップS26;NO)、再びステップS21に戻り、図1に示した統括制御部100からの指令により右方移動促進制御を終了する場合は(ステップS26;YES)、本処理を終了する。
【0065】
なお、ステップS26からステップS21に戻って同じ処理が繰り返される場合の繰り返しの周期は、ユーザの疾走の動作の半周期よりも充分に短い。この結果、右方移動促進制御では、ユーザに付与される右方誘導モーメントの股関節の周りの向きが、疾走の動作の半周期に等しい周期で切り換えられる。
【0066】
また、左半身用モーメント付与機構226は、右方誘導モーメントの大きさを制御可能な構成を有する。下位制御器228は、右方誘導モーメントの大きさを調整する制御も行う。後述するように、右方誘導モーメントの大きさの目標値は、図1に示した統括制御部100から指定される。
【0067】
次に、図1に戻り、統括制御部100の構成について説明する。
【0068】
図1に示すように、統括制御部100は、ユーザの位置を検出する移動検出器110を有する。移動検出器100は、例えば、衛星、地上の無線局等からの電波を受信することにより、自己の位置を時々刻々検出する受信機によって構成される。
【0069】
具体的には、移動検出器100は、GPS(Global Positioning System)衛星からの電波を受信するGPSモジュール、GPS衛星及び地上の無線局からの電波を受信するRTK(Real Time Kinematic)モジュール、地上の無線局からの赤外線等の電波を受信するビーコンモジュール又はRFID(Radio Frequency Identifier)モジュール等によって構成することができる。
【0070】
また、統括制御部100は、移動検出器110の検出結果を用いて、下位制御器218及び228を制御する上位制御器120を有する。上位制御器120は、ユーザの理想的な移動の経路である理想経路を表す理想経路データ122aを記憶するメモリ122と、CPU(Central Processing Unit)121とを有する。
【0071】
メモリ122には、ユーザを進行すべき方向に誘導する誘導制御の手順を規定した誘導制御プログラム122bも格納されている。CPU121は、誘導制御プログラム122bを実行することにより、誘導制御を行う。
【0072】
誘導制御において、CPU121は、移動検出器110の検出結果と、理想経路データ122aとを用いて、ユーザを直進させるか旋回させるかを選定する。ユーザを旋回させる場合は、ユーザを右方と左方のいずれの方向に旋回させるかの選定も行う。
【0073】
そして、CPU121は、ユーザを左方に旋回させる場合は、図6に示す右方移動促進制御を停止させた状態で、図5に示す左方移動促進制御を下位制御器218に実行させる。即ち、上述した左方誘導モーメントと右方誘導モーメントとのうち、左方誘導モーメントのみをユーザに付与する。これにより、ユーザを左方に導く状態(以下、左方誘導状態という。)が実現され、ユーザの進路が左に曲げられる。
【0074】
一方、CPU121は、ユーザを右方に旋回させる場合は、図5に示す左方移動促進制御を停止させた状態で、図6に示す右方移動促進制御を下位制御器228に実行させる。即ち、左方誘導モーメントと右方誘導モーメントとのうち、右方誘導モーメントのみをユーザに付与する。これにより、ユーザを右方に導く状態(以下、右方誘導状態という。)が実現され、ユーザの進路が右に曲げられる。
【0075】
以上のようにして、上位制御器120は、左方誘導状態と右方誘導状態とのいずれの状態を実現するかを選定する処理と、選定した状態(以下、選定状態という。)を身体装着具200に実現させる制御と、を繰り返し行う制御装置の機能を有する。
【0076】
以下、図8に示すフローチャートに沿って誘導制御を具体的に説明する。
【0077】
図7を参照しながら、まず、図8のステップS31からS33までの動作を説明する。まず、CPU121は、ユーザの位置の検出結果を表す実検出データを移動検出器110から取得することにより(ステップS31)、ユーザの現在の位置PPを特定する。
【0078】
また、CPU121は、移動検出器110によって前回に検出されたユーザの位置と、ユーザの現在の位置PPとの、座標値の差分により、ユーザの移動方向を表す移動ベクトルV1を特定する(ステップS32)。
【0079】
一方、CPU121は、ユーザの現在の位置PPから、理想経路データ122aが表す理想経路IWに向かう理想移動ベクトルV2も別途特定する。そして、CPU121は、移動ベクトルV1を理想移動ベクトルV2に平行な方向に修正するために必要な旋回方向と旋回角度とを特定する(ステップS33)。
【0080】
なお、旋回角度は、移動ベクトルV1の理想移動ベクトルV2からのずれ量を表す。図7では、移動ベクトルV1を理想移動ベクトルV2に平行な方向に修正するためには、ユーザを、進行方向に対して左方に旋回角度θだけ旋回させる必要がある場合を例示した。
【0081】
図8に戻り、次にCPU121は、ステップS33で特定した旋回角度がゼロであるか否かを判定し(ステップS34)、旋回角度がゼロでなければ(ステップS34;NO)、ステップS33で特定した旋回方向が左方であるか右方であるかを判定する(ステップS35)。
【0082】
そして、CPU121は、旋回方向が左方である場合(ステップS35;左方)、ユーザを左方に旋回させるべく、図6に示した右方移動促進制御を停止させた状態で、図5に示した左方移動促進制御を下位制御器218に実行させる(ステップS36)。これにより、ユーザを左方に導く左方誘導状態が実現されるので、ユーザの進路が左に曲げられる。
【0083】
また、CPU121は、ステップS36の左方移動促進制御において、ユーザに付与する選定モーメントとしての左方誘導モーメントの大きさを、ステップS33で特定した旋回角度に応じた目標値に制御する。なお、既述のように、左方誘導モーメントの大きさは、図4に示すフライホイール211の仮想揺動軸i-AXの周りの角速度ωの大きさで制御できる。
【0084】
具体的には、CPU121は、ステップS33で特定した旋回角度が大きいほど、ユーザに付与される左方誘導モーメントが大きくなるように、左方誘導モーメントの大きさの目標値を求め、求めた目標値を下位制御器218に与える。下位制御器218は、左方誘導モーメントの大きさが目標値と一致するように、図4に示すフライホイール211の仮想揺動軸i-AXの周りの角速度ωの大きさを制御する。
【0085】
これにより、ステップS33で特定した旋回角度に応じた大きさの左方誘導モーメントがユーザに付与されるので、左方移動促進制御によってユーザの進路が左に曲げられる角度が、ステップS33で特定した旋回角度に近づけられる。
【0086】
一方、CPU121は、旋回方向が右方である場合(ステップS35;右方)、ユーザを右方に旋回させるべく、図5に示した左方移動促進制御を停止させた状態で、図6に示した右方移動促進制御を下位制御器228に実行させる(ステップS37)。これにより、ユーザを右方に導く右方誘導状態が実現されるので、ユーザの進路が右に曲げられる。
【0087】
また、CPU121は、ステップS37の右方移動促進制御において、ユーザに付与する選定モーメントとしての右方誘導モーメントの大きさを、ステップS33で特定した旋回角度に応じた目標値に制御する。
【0088】
具体的には、CPU121は、ステップS33で特定した旋回角度が大きいほど、ユーザに付与される右方誘導モーメントが大きくなるように、右方誘導モーメントの大きさの目標値を求め、求めた目標値を下位制御器228に与える。下位制御器228は、右方誘導モーメントの大きさが目標値と一致するように、図1に示す左半身用モーメント付与機構226を制御する。
【0089】
これにより、ステップS33で特定した旋回角度に応じた大きさの右方誘導モーメントがユーザに付与されるので、右方移動促進制御によってユーザの進路が右に曲げられる角度が、ステップS33で特定した旋回角度に近づけられる。
【0090】
次に、CPU121は、ステップS36又はステップS37を経た後は、再び移動検出器110の検出結果を参照し、ユーザが目的地に到着したか否かを判定する(ステップS38)。なお、目的値を表すデータは、予め理想経路データ122aに含まれているものとする。
【0091】
また、CPU121は、ステップS34で旋回角度がゼロである場合には(ステップS34;YES)、ユーザをそのまま直進させればよく、既述の左方誘導状態及び右方誘導状態のいずれも実現させる必要がないので、図5に示した左方移動促進制御及び図6に示した右方移動促進制御を停止させたまま、ステップS38に移行する。
【0092】
CPU121は、ステップS38で目的地に到達したと判定した場合には(ステップS38;YES)、誘導制御を終了し、まだ目的地に到達していない場合には(ステップS38;NO)、ステップS31に戻って同じ処理を繰り返す。つまり、CPU121は、左方誘導状態と右方誘導状態とのいずれの状態を実現するかの選定と、選定した状態である選定状態の実現とを、ユーザが目的地に到着するまでに繰り返す。
【0093】
以上説明したように本実施形態によれば、身体装着具200によってユーザの関節の周りに左方誘導モーメント又は右方誘導モーメントが付与され、これによりユーザの進行すべき方向への移動の動作が促進されることで、ユーザの移動の経路が理想経路に近づけられる。このため、ユーザは、移動中に進行すべき方向を自ら積極的に把握する必要がない。つまり、ユーザは、移動中に力覚を認識し続ける必要がない。従って、ユーザの注意力が奪われにくい。
【0094】
また、CPU121が、ユーザの移動方向の、理想経路に向かう方向からのずれ量を表す旋回角度を特定し、特定した旋回角度に応じて、左方誘導モーメント又は右方誘導モーメントの目標値を求める。そして、CPU121は、求めた目標値の左方誘導モーメント又は右方誘導モーメントが生成されるように、身体装着具200を制御する。
【0095】
このようにして、ユーザに付与される左方誘導モーメント及び右方誘導モーメントの大きさが、理想経路に向かう方向からのずれ量に応じた値に制御されるので、ユーザの移動経路をすみやかに理想経路に近づけることができる。
【0096】
[実施形態2]
上記実施形態1では、ユーザの左方への移動の動作を促進する左方誘導モーメントが、ユーザの左方への移動の動作をアシストするアシストモーメントであり、ユーザの右方への移動の動作を促進する右方誘導モーメントが、ユーザの右方への移動の動作をアシストするアシストモーメントである場合を例示した。
【0097】
ユーザの右方への移動の動作に負荷を与えることによっても、ユーザを左方に旋回させることができるので、左方誘導モーメントは、ユーザの右方への移動の動作に負荷を与える負荷モーメントであってもよい。また、ユーザの左方への移動の動作に負荷を与えることによっても、ユーザを右方に旋回させることができるので、右方誘導モーメントは、ユーザの左方への移動の動作に負荷を与える負荷モーメントであってもよい。以下、その具体例を述べる。
【0098】
図9に、本実施形態に係る左方移動促進制御のフローチャートを示す。この左方移動促進制御は、図1に示す左半身用身体装着具220の下位制御器228が実行する。
【0099】
本実施形態では、図9のステップS43で角速度ω=ゼロが左大腿部CLの振り上げの開始時点を表す場合(ステップS43;振り上げ開始時点)、下位制御器228が、左大腿部CLの振り上げを妨げる半時計回りのモーメントがユーザの左股関節の周りに付与されるように、左半身用モーメント付与機構226を制御する(ステップS44)。
【0100】
また、図9のステップS43で角速度ω=ゼロが左大腿部CLの振り下ろしの開始時点を表す場合(ステップS43;振り下ろし開始時点)、下位制御器228が、左大腿部CLの振り下ろしを妨げる時計回りのモーメントがユーザの左股関節の周りに付与されるように、左半身用モーメント付与機構226を制御する(ステップS45)。
【0101】
これにより、ユーザの右方への移動が妨げられるので、ユーザの左方への移動を促進することができる。他の処理は、図5に示した左方移動促進制御と同様である。
【0102】
図10には、本実施形態に係る右方移動促進制御のフローチャートを示す。この右方移動促進制御は、図1に示す右半身用身体装着具210の下位制御器218が実行する。
【0103】
本実施形態では、図10のステップS53で角速度ω=ゼロが、右大腿部CRの振り上げの開始時点を表す場合(ステップS53;振り上げ開始時点)、下位制御器218が、右大腿部CRの振り上げを妨げる半時計回りのモーメントがユーザの右股関節の周りに付与されるように、右半身用モーメント付与機構216を制御する(ステップS54)。
【0104】
また、図10のステップS53で角速度ω=ゼロが、右大腿部CRの振り下ろしの開始時点を表す場合(ステップS53;振り下ろし開始時点)、下位制御器218が、右大腿部CRの振り下ろしを妨げる時計回りのモーメントがユーザの右股関節の周りに付与されるように、右半身用モーメント付与機構216を制御する(ステップS55)。
【0105】
これにより、ユーザの左方への移動が妨げられるので、ユーザの右方への移動を促進することができる。他の処理は、図6に示した右方移動促進制御と同様である。
【0106】
以上説明したように本実施形態では、左半身用モーメント付与機構226が、ユーザの左半身に左方誘導モーメントとしての負荷モーメントを付与し、右半身用モーメント付与機構216が、ユーザの右半身に右方誘導モーメントとしての負荷モーメントを付与する。上位制御器120が行う誘導制御のフローは、図8に示したフローと同じである。
【0107】
[実施形態3]
上記実施形態1では、ユーザを左方に導く左方誘導状態で右方誘導モーメントの大きさをゼロとし、ユーザを右方に導く右方誘導状態で左方誘導モーメントの大きさをゼロとする誘導制御を例示した。また、上記実施形態1では、左方誘導状態でユーザの進路を左方に曲げる程度を、左方誘導モーメントの大きさで調整し、右方誘導状態でユーザの進路を右方に曲げる程度を、右方誘導モーメントの大きさで調整する誘導制御を例示した。
【0108】
左方誘導モーメントが右方誘導モーメントよりも大きければ、ユーザを左方に旋回させることができるので、左方誘導状態において、右方誘導モーメントの大きさは必ずしもゼロでなくてもよい。同様に、右方誘導モーメントが左方誘導モーメントよりも大きければ、ユーザを右方に旋回させることができるので、右方誘導状態において、左方誘導モーメントの大きさは必ずしもゼロでなくてもよい。
【0109】
以下、左方誘導モーメント及び右方誘導モーメントがアシストモーメントである場合について具体例を述べる。
【0110】
図11に、本実施形態に係る誘導制御のフローチャートを示す。本実施形態においてCPU121は、まず、身体装着具200に、既述の左方移動促進制御と右方移動促進制御とを開始させる(ステップS61)。
【0111】
これにより、ユーザに左方誘導モーメント及び右方誘導モーメントが並行して付与される状態となる。但し、CPU121は、ステップS61の段階では、左方移動促進制御においてユーザに付与される左方誘導モーメントの大きさと、右方移動促進制御においてユーザに付与される右方誘導モーメントの大きさとが等しくなるように、身体装着具200を制御する。つまり、ユーザは、直進する方向への移動がアシストされた状態となる。
【0112】
本実施形態では、ユーザを左方に旋回させることを、左方誘導モーメントを右方誘導モーメントよりも大きく設定することで実現する。左方への旋回角度は、左方誘導モーメントから右方誘導モーメントを差し引いた値である不均衡度によって調整する。また、ユーザを右方に旋回させることは、右方誘導モーメントを左方誘導モーメントよりも大きく設定することで実現する。右方への旋回角度は、右方誘導モーメントから左方誘導モーメントを差し引いた値である不均衡度によって調整する。
【0113】
そこで、CPU121は、ステップS33では、図7に示した移動ベクトルV1を理想移動ベクトルV2に平行な方向に修正するために必要な旋回方向と旋回角度とを特定するのみならず、特定した旋回角度に応じて、左方誘導状態又は右方誘導状態における左方誘導モーメントと右方誘導モーメントとの大きさの差である不均衡度ΔMを求める。
【0114】
そして、CPU121は、既述のステップS35で旋回方向が左方である場合(ステップS35;左方)、ユーザを左方に旋回させるべく、左方誘導モーメントが右方誘導モーメントよりも、ステップS33で求めた不均衡度ΔMだけ大きく設定された選定状態を、身体装着具200に実現させる(ステップS62)。
【0115】
一方、CPU121は、既述のステップS35で旋回方向が右方である場合(ステップS35;右方)、ユーザを右方に旋回させるべく、右方誘導モーメントが左方誘導モーメントよりも、ステップS33で求めた不均衡度ΔMだけ大きく設定された選定状態を、身体装着具200に実現させる(ステップS63)。
【0116】
以上、左方誘導モーメント及び右方誘導モーメントがアシストモーメントである場合を想定して誘導制御の具体例を述べたが、上記実施形態2で述べたとおり、左方誘導モーメント及び右方誘導モーメントは負荷モーメントであってもよい。左方誘導モーメント及び右方誘導モーメントが負荷モーメントである場合も、図11のフローと同じフローで誘導制御が実現できることは当業者に理解できるであろう。
【0117】
[実施形態4]
上記実施形態1では、右半身用モーメント付与機構216が右大腿部CRに装着され、左半身用モーメント付与機構226が左大腿部CLに装着される構成を例示した。以下では、右半身用モーメント付与機構及び左半身用モーメント付与機構の装着位置を変更した具体例を述べる。
【0118】
図12に示すように、本実施形態に係る身体装着具300は、ユーザの右腕に取り付けられる右半身用身体装着具310と、ユーザの左腕に取り付けられる左半身用身体装着具320とを有する。
【0119】
右半身用身体装着具310には、右半身用モーメント付与機構が内蔵されている。その右半身用モーメント付与機構は、ユーザの右肩関節の周りに、右腕の振りの動作をアシストすることにより左方への移動の動作を促進する左方誘導モーメントを付与する。
【0120】
左半身用身体装着具320には、左半身用モーメント付与機構が内蔵されている。その左半身用モーメント付与機構は、ユーザの左肩関節の周りに、左腕の振りの動作をアシストすることにより右方への移動の動作を促進する右方誘導モーメントを付与する。
【0121】
なお、右半身用モーメント付与機構が、右腕の振りの動作を妨げることにより右方への移動の動作を促進する右方誘導モーメントをユーザに付与し、左半身用モーメント付与機構が、左腕の振りの動作を妨げることにより左方への移動の動作を促進する左方誘導モーメントをユーザに付与してもよい。
【0122】
また、右半身用身体装着具310に内蔵される右半身用モーメント付与機構、及び左半身用身体装着具320に内蔵される左半身用モーメント付与機構が、図3に示したものと同じ構成のもので実現できることは当業者に理解できるであろう。他の構成及び効果は、実施形態1と同様である。
【0123】
[実施形態5]
上記実施形態1では、ジャイロ効果によってモーメントを生成する右半身用モーメント付与機構216及び左半身用モーメント付与機構226を例示したが、回転の反作用によってモーメントを生成してもよい。以下、その具体例を述べる。
【0124】
図13に示すように、本実施形態に係るモーメント付与機構は、リアクションホイールよりなる体幹軸用モーメント付与機構410によって構成される。なお、図14は、体幹軸用モーメント付与機構410が装着されたユーザを上方からみた上面図である。
【0125】
体幹軸用モーメント付与機構410は、ユーザの胸部の背面、即ち背中BCから、ユーザにとって後方に向かって延在しているアーム411と、アーム411の基端をユーザの背中BCに固定する固定具412と、アーム411の先端に回転自在に取り付けられたフライホイール413と、フライホール413を回転させるモータ414と、フライホール413の回転を止めるブレーキ機構415と、モータ414及びブレーキ機構415を制御する下位制御器416とを有する。
【0126】
図示しないが、フライホイール413の回転軸は、上下方向に延びている。以下、フライホイール413の回転方向について時計回り/反時計回りとは、フライホイール413を上方からみた場合の回転方向を指すものとする。
【0127】
モータ414がフライホイール413を時計回りに回転させ始めた瞬間、又は半時計回りに回転中のフライホイール413の回転をブレーキ機構415が停止させた瞬間に、右肩が前に出る向きにユーザの身体をねじるモーメントMが、ユーザに付与される。このモーメントMは、ユーザの左方向への移動をアシストするので左方誘導モーメントである。
【0128】
また、モータ414がフライホイール413を半時計回りに回転させ始めた瞬間、又は時計回りに回転中のフライホイール413の回転をブレーキ機構415が停止させた瞬間に、左肩が前に出る向きにユーザの身体をねじるモーメントMが、ユーザに付与される。このモーメントMは、ユーザの右方向への移動をアシストするので右方誘導モーメントである。
【0129】
従って、下位制御器416は、図1に示した統括制御部100からの指令に応じて、ユーザに左方誘導モーメントを付与する左方誘導状態と、ユーザに右方誘導モーメントを付与する右方誘導状態とを選択的に実現させることができる。
【0130】
また、下位制御器416は、モータ414がフライホイール413に与えるトルクを制御することによって、左方誘導モーメント及び右方誘導モーメントの各々の大きさを調整できる。モータ44がフライホイール413に与える時計回りのトルクと、反時計回りのトルクとを各々独立に制御できるので、左方誘導モーメントと右方誘導モーメントとの大きさを異ならせることもできる。従って、本実施形態でも、図8に示した誘導制御と同様の制御が可能である。
【0131】
なお、ユーザの身体には、ユーザの疾走の動作の周期を特定可能な物理量として加速度を検出する物理量検出器としての加速度検出器420が取り付けられる。下位制御器416は、角速度検出器420の検出結果を用いて、左方誘導モーメント及び右方誘導モーメントの付与の周期がユーザの疾走の動作の周期と一致するように、モータ414及びブレーキ機構415を制御する。他の構成及び効果は、実施形態1と同様である。
【0132】
[実施形態6]
上記実施形態1では、上位制御器120のメモリ122に理想経路データ122aが予め格納されている構成を例示したが、理想経路データ122aは上位制御器120によって逐次に取得されてもよい。以下、その具体例を述べる。
【0133】
図14に示すように、本実施形態では、伴走体としての伴走者U2が、ユーザU1と並んで疾走する状況を想定する。伴走者U2には、伴走者U2の移動方向をリアルタイムに検出する伴走体用移動検出器としての伴走者用移動検出器500が取り付けられている。
【0134】
本実施形態では、図1に示した上位制御器120が、伴走者用移動検出器500から、伴走者U2の移動方向の検出結果を表す移動方向データを理想経路データ122aとしてリアルタイムに無線で取得する。
【0135】
そして、上位制御器120は、まず移動方向データを用いて、伴走者U2の移動方向を表す移動ベクトルV3を特定する。次に、上位制御器120は、移動ベクトルV3をユーザの現在の位置PPに平行移動させた理想移動ベクトルV4を特定する。
【0136】
次に、上位制御器120は、ユーザの移動方向を表す移動ベクトルV1を理想移動ベクトルV4に一致させるために必要な旋回方向と旋回角度とを特定する。本実施形態ではこのような処理が、図8のステップS33において行われる。
【0137】
図14では、移動ベクトルV1を理想移動ベクトルV2に一致させるためには、ユーザを、進行方向に対して左方に旋回角度θだけ旋回させる必要がある場合を例示した。なお、ユーザの現在の位置PPと移動ベクトルV1との特定方向は、図7を参照して説明したとおりである。他の構成及び効果は、実施形態1と同様である。
【0138】
以上、実施形態1-6について説明した。以下に述べる変形も可能である。
【0139】
上記実施形態1では、上位制御器120がユーザの身体に装着される構成を例示したが、上位制御器120の位置は特に限定されない。上位制御器120は、無線を通じて遠隔から下位制御器218及び228を制御することができる。従って、上位制御器120は、地上の任意の場所に固定されていてもよい。
【0140】
上記実施形態5では、体幹軸用モーメント付与機構410をユーザの胸部に装着する構成を例示したが、体幹軸用モーメント付与機構410は、ユーザの頭部又は腰部に装着してもよい。ユーザの頭部又は腰部をねじるモーメントをユーザに付与することによっても、ユーザの左方又は右方への移動の動作がアシストされる。
【0141】
上記実施形態1-5を相互に組み合わせることも可能である。例えば、図2に示した右半身用身体装着具210及び左半身用身体装着具220と、図13に示した右半身用身体装着具310及び左半身用身体装着具320とを併用してもよいし、さらに、図14に示した体幹軸用モーメント付与機構410を併用してもよい。
【0142】
上記実施形態6では、ユーザと並んで移動することにより規範となる移動方向を示す伴走体が、人である場合を例示した。伴走体は、例えば、自動車、自転車、ドローン等の回転翼機であってもよい。
【0143】
図1に示す誘導制御プログラム122bをコンピュータにインストールすることで、そのコンピュータに、移動検出器110の検出結果を取得する取得機能と、取得した検出結果と理想経路データ122aとを用いて、進行すべき方向へのユーザの移動が促進されるように身体装着具200を制御する制御機能とを実現させることができる。誘導制御プログラム122bは、通信ネットワークを介して配布してもよいし、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布してもよい。
【符号の説明】
【0144】
100…統括制御部、
110…移動検出器、
120…上位制御器(制御装置)、
121…CPU、
122…メモリ、
122a…理想経路データ、
122b…誘導制御プログラム、
200…身体装着具(モーメント付与機構)、
210…右半身用身体装着具、
210A…本体部、
210B…ベルト、
211…フライホイール、
212…自転用モータ、
213…保持部材、
214…基枠、
215…揺動用モータ、
216…右半身用モーメント付与機構、
217…角速度検出器、
218…下位制御器、
219…バッテリ、
220…左半身用身体装着具、
220A…本体部、
220B…ベルト、
226…左半身用モーメント付与機構、
227…角速度検出器、
228…下位制御器、
229…バッテリ、
300…身体装着具、
310…右半身用身体装着具(右半身用モーメント付与機構)、
320…左半身用身体装着具(左半身用モーメント付与機構)、
410…体幹軸用モーメント付与機構、
411…アーム、
412…固定具、
413…フライホイール、
414…モータ、
415…ブレーキ機構、
416…下位制御器、
420…加速度検出器、
500…伴走者用移動検出器(伴走体用移動検出器)、
600…誘導装置、
BC…背中、
CL…左大腿部、
CM…重心、
CR…右大腿部、
IW…理想経路、
i-AX…仮想揺動軸、
j-AX…仮想自転軸、
k-AX…仮想回転軸、
NL…仮想中立線、
PP…ユーザの現在の位置、
U1…ユーザ、
U2…伴走者(伴走体)、
V1,V3…移動ベクトル、
V2,V4…理想移動ベクトル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14