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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】川裏用簡易ゲート
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/44 20060101AFI20240215BHJP
   E02B 7/54 20060101ALI20240215BHJP
   E02B 7/20 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
E02B7/44
E02B7/54 A
E02B7/20 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020160588
(22)【出願日】2020-09-25
(65)【公開番号】P2022053779
(43)【公開日】2022-04-06
【審査請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】500174328
【氏名又は名称】中大実業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104330
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 誠二
(72)【発明者】
【氏名】桑原 直樹
(72)【発明者】
【氏名】御囲 彩織
(72)【発明者】
【氏名】寺島 尚宏
(72)【発明者】
【氏名】細谷 靖拓
(72)【発明者】
【氏名】小堆 信治
(72)【発明者】
【氏名】押谷 直樹
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-025610(JP,A)
【文献】特開2020-153196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/44
E02B 7/54
E02B 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項4】
水位を表示するための量水標をさらに備え、
前記量水標が、川裏用ゲートと連通する筒状の量水標本体と、前記量水標本体の内部に上端から下端まで延びるように配置されたシャフトと、前記シャフトに沿って昇降するようにそれぞれ配置された下側浮体及び上側浮体とを有し、前記上側浮体には、一旦上昇すると、端部が前記シャフトに引っかかるように配置されたバネ鋼材片が配置されている、ことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された川裏用簡易ゲート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川樋門や河川樋管の川裏側に設置される川裏用簡易ゲートに関する。ここで、川裏とは、堤防の河川側と反対の側を意味する。
【背景技術】
【0002】
河川には、洪水時等において水位を調整するためのゲートが設置されている。従来、このようなゲートは、堤防の河川側である川表側に設置されており(図13(a)参照)、これらの中には自動化されているゲートがあるものの、大多数のゲートは、依然として操作員による操作を必要とする非自動化ゲートである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、川表側に設置された非自動化ゲートでは、図13(b)に示されるように、操作員が川表に近づいて監視や操作をしなければならないため、洪水時に操作員が逃げ遅れたり、緊急時に作動用エンジンが動かなかったり、操作用ハンドルが回らなかったりする等の不都合が生ずるおそれがあるという課題がある。一方、非自動化ゲートを自動化ゲートに改修するには、多額の費用が必要になるという課題がある。
【0004】
本発明は、このような状況に鑑みて開発されたものであって、比較的低コストで操作員の安全確保を実現する等の新規な特徴を備えた川裏用簡易ゲートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願請求項1に記載された、一対の逆L形状の柱材、前記柱材の各々の頂部を連結する頂板、及び前記柱材と前記頂板によって形成されるフレームと、前記フレームに垂直方向に延びるように配置された少なくとも3基の扉体とを備え、前記各扉体が、外枠及び前記外枠の開口を閉鎖するための本体を有し、川表側から水圧が作用しないときに川表側に僅かに開放するように構成された、河川樋門又は河川樋管の川裏側に設置される川裏用ゲートは、前記各扉体のうち最下段に設置される最下段扉体の外枠が門形であり、かつ、前記最下段扉体の本体が、川表側の方に徐々に折れ曲がった複数の部分によって形成され、前記本体の下端が、前記本体の閉鎖時に川裏用ゲートの底面に接触するようになっており、前記外枠の川表側には、前記本体の閉鎖時に前記本体に合致するように形作られた受け部が設置されていることを特徴とするものである。
【0006】
本願請求項2に記載された川裏用簡易ゲートは、前記請求項1の川裏用ゲートにおいて、前記各扉体の本体の川表側に、前記各扉体の本体よりも大きく形作られた左右端及び下端を有する遮水シートが取り付けられていることを特徴とするものである。
【0007】
本願請求項3に記載された川裏用簡易ゲートは、前記請求項1又は2の川裏用ゲートにおいて、前記各扉体のうち少なくとも1基の本体の川裏側にフロートが取り付けられていることを特徴とするものである。
【0008】
本願請求項4に記載された川裏用簡易ゲートは、前記請求項1から請求項3までのいずれか1項の川裏用ゲートにおいて、水位を表示するための量水標をさらに備え、前記量水標が、川裏用ゲートと連通する筒状の量水標本体と、前記量水標本体の内部に上端から下端まで延びるように配置されたシャフトと、前記シャフトに沿って昇降するようにそれぞれ配置された下側浮体及び上側浮体とを有し、前記上側浮体には、一旦上昇すると、端部が前記シャフトに引っかかるように配置されたバネ鋼材片が配置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の川裏用簡易ゲートによれば、最下段の扉体の外枠に戸当たりを設けず、最下段の扉体の本体の下端がコンクリート底面に直接接触するように構成されているため、本体の下端に泥等が溜まるのが回避され、良好な止水性を得ることができる。また、最下段の扉体を折れ曲がり構造にしたため、一層良好な止水性を得ることができる。また、扉体の本体の川裏側にフロートを取り付けたため、ゲート前後の水位の上昇が緩慢な場合であっても本体を確実に閉鎖させることができ、扉体の本体に遮水シートを取り付けたため、より良好な止水性を得ることができる。また、川裏用簡易ゲートに量水標を設置することにより、危険の少ない川裏側で現在の水位及び過去の最高水位を知ることができる。さらに、本発明の川裏用簡易ゲートの構成部品が分割式(一対の柱材、頂板、各扉体)であり、本発明の設置方法を用いて各構成部品を組み立てて川裏用簡易ゲートを設置することにより、クレーン等の重機を使用せずに、簡単な工具のみで人力で川裏用簡易ゲートを設置することができる。本発明の川裏用簡易ゲートは、比較的簡単な構造であるため、廉価なコストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の好ましい実施の形態に係る川裏用簡易ゲートを示した斜視図である。
図2図1の川裏用簡易ゲートの各構成要素を分解して示した分解斜視図である。
図3図3(a)は、第1扉体を川表側から見た斜視図、図3(b)は、開放状態にある第1扉体の側面図、図3(c)は、閉鎖状態にある第1扉体の側面図、図3(d)は、第1扉体を最下段以外に使用する場合の形態を示した図3(a)と同様な図、図3(e)は、図3(b)の部分3eの拡大図、図3(f)は、部分3eの変形形態を例示する図である。
図4図4(a)は、第2扉体を川表側から見た斜視図、図4(b)は、開放状態にある第2扉体の側面図、図4(c)は、閉鎖状態にある第2扉体の側面図、図4(d)は、図4(b)の部分4dの拡大図である。
図5図5(a)及び図5(b)は、第1扉体に取り付けられる遮水シートを示した図、図5(c)及び図5(d)は、第2扉体に取り付けられる遮水シートを示した図である。
図6】第1扉体にフロートが取り付けられている形態を示したものであって、図6(a)は、開放状態にある第1扉体を示した図、図6(b)は、閉鎖状態にある第1扉体を示した図である。
図7図7(a)は量水標を示した正面図、図7(b)は図7(a)の線7b‐7bに沿って見た図、図7(c)は図7(a)の線7c‐7cに沿って見た図、図7(d)は第1浮体を示した拡大断面図、図7(e)は第2浮体を示した拡大断面図、図7(f)は第2浮体を示した拡大底面図である。
図8】川裏用簡易ゲートの好ましい設置方法を説明するための斜視図である。
図9】第1設置具を示した一連の図であって、図9(a)は第1設置具の斜視図、図9(b)は第1設置具の作動を説明するための図、図9(c)は第1設置具の構成要素の分解図、図9(d)は第1設置具とブレース材との接合個所を示した図、図9(e)は柱材とブレース材との接合個所を示した図である。
図10】第2設置具を示した一連の図であって、図10(a)は第2設置具の全体図、図10(b)は中央部材と左側部材との接合個所を示した拡大図、図10(c)は第2設置具の構成要素の分解図、図10(d)は図10(a)の部分10dの拡大図である。
図11図11(a)は、川裏用簡易ゲートが堤防の川裏側に設置されている状態を示した図、図11(b)は、図11(a)の線11b‐11bに沿って見た図である。
図12】本発明の好ましい実施の形態に係る川裏用簡易ゲートの作動を示した図であって、図12(a)は通常時、図12(b)は出水時を示したものである。
図13】堤防に設置される従来のゲートを示した図であって、図13(a)は通常時、図13(b)は出水時を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(全体構成)
次に図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態に係る川裏用簡易ゲートについて説明する。図1は、本発明の好ましい実施の形態に係る川裏用簡易ゲートを川裏側から見た斜視図、図2は、図1の川裏用簡易ゲートの各構成要素を分解して示した(中段の第2扉体18のみ取り付け状態で示されている)分解斜視図である。図1において全体として参照符号10で示される川裏用簡易ゲートは、一対の柱材12を備えている。各柱材12は、垂直部材12aと水平部材12bからなる逆L形状を有している。図示されている垂直部材12a及び水平部材12bとして山形鋼が用いられているが、他の適当な鋼材を用いてもよい。
【0013】
各柱材12の水平部材12bは、頂板14により連結されており、一対の柱材12と頂板14によって、川表側又は川裏側から見て、門形のフレームが形成されている。頂板14の中央には、開口部14aが設けられており、開口部14aに、後述する量水標22が設置される。
【0014】
柱材12と頂板14によって形成される門形フレームには、下段に第1扉体16が設置され、第1扉体16の上方の中段と上段に第2扉体18がそれぞれ設置されている。図示されている形態では、2基の第2扉体18が設置されているが、川裏用ゲートの必要高さによっては、3基以上の第2扉体18を設置してもよい。なお、柱材12と頂板14、及び柱材と扉体16、18は、ボルト等の締結具によって堅固に固定されている。
【0015】
図3(a)は、第1扉体16を川表側から見た斜視図である。第1扉体16は、一対の垂直部材16a1と垂直部材16a1の上端同士を連結する水平部材16a2によって形成された門形の外枠16aと、外枠16aの開口を閉鎖するための本体16bとを有している。本体16bは、通常時は川表側に僅かに開放し、洪水時には完全に閉鎖するように構成されている。すなわち、図3(e)に示されるように、本体16bの上端に、本体16bと直交するように延びたアーム部16cが設けられ、水平部材16a2から川表側に延びた回転ヒンジ部16dのヒンジ16d1にアーム部16cの端部を回転可能に取り付けることにより、本体16bに殆ど水圧が作用しない通常時には、川表側に僅かに開放し(図3(b)参照)、本体16bに水圧が作用する洪水時には、完全に閉鎖する(図3(c)参照)ようになっている。このように作動するゲートであれば、図示された構成以外の他の構成(図3(f)に例示)を採用してもよい。通常時に川表側に僅かに開放するようになっているのは、川裏側から川表側への排水を妨げないためである。このような型式のゲート自体は公知であり、フラップゲートと呼ばれている。
【0016】
本体16bは、川表側の方に徐々に折れ曲がった3つの部分、すなわち第1部分16b1、第2部分16b2、及び第3部分16b3によって形成されており、最も下に位置する第3部分16b3の下端は、本体16bの閉鎖時に川裏用ゲート10の底面に接触するようになっている(図3(c)参照)。一方、外枠16aの各垂直部材16a1の川表側には、本体16bの閉鎖時に第1部分16b1、第2部分16b2、及び第3部分16b3に合致するように形作られた受け部16eが設置されている。受け部16eの少なくとも本体16bが接触する側は、ゴム等の弾性材料で形成されている。或いは、本体16bの側にゴム等の止水材(図示せず)を取り付け、本体16bの閉鎖時に受け部16eが前記止水材に食い込むように構成してもよい。
【0017】
第1扉体16の外枠16aの下端に水平部材が設けられていないため、当該下端周辺での泥等の貯留やコンクリート底面の経年劣化による不陸等によって本体16bの閉鎖が不完全になることを回避することができる(外枠16aの下端に水平部材(いわゆる戸当たり)を設けると、戸当たりの川表側に泥等が溜まりがちになる)。また、本体16bを折れ曲がり構造にしたため、本体16bに作用する水圧が高くなる程、止水性が向上する。すなわち、図3(c)において矢印で示されるように、水圧が高くなると、斜め下方に差し向けられる力が大きくなるので、止水性が向上することとなる。
【0018】
本体16bの川表側には、遮水シート16fが取り付けられている(図5(a)、図5(b)参照)。遮水シート16fの左右端と下端は、本体16bよりも大きく形作られている。遮水シート16fは、ゴム、ポリエチレン、シリコン等で形成されている。遮水シート16fの取り付けは、リベット、ボルト、接着剤等の適当な方法によって行われる。
【0019】
遮水シート16fを取り付けたことにより、本体16bの閉鎖時に、外枠16aの垂直部材16a1と本体16bの左右端との間の隙間、及び本体16bの下端とコンクリート底面との間が遮水シート16fで被覆されることになるので、より良好な止水性を得ることができる。
【0020】
図4(a)は、第2扉体18を川表側から見た斜視図である。第2扉体18は、一対の垂直部材18a1と垂直部材18a1の上端同士、下端同士を連結する一対の水平部材18a2によって形成された矩形の外枠18aと、外枠18aの開口を閉鎖するための本体18bとを有している。本体18bは、通常時は川表側に僅かに開放し、洪水時には完全に閉鎖するように構成されている。すなわち、本体18bの上端に、本体18bと直交するように延びたアーム部18cが設けられ、水平部材18a2から川表側に延びた回転ヒンジ部18dのヒンジ18d1にアーム部18cの端部を回転可能に取り付けることにより、本体18bに殆ど水圧が作用しない通常時には、川表側に僅かに開放し(図4(b)参照)、本体18bに水圧が作用する洪水時には、完全に閉鎖する(図4(c)参照)ようになっている。このように作動するゲートであれば、図示された構成以外の他の構成(図3(f)に例示)を採用してもよい。通常時に川表側に僅かに開放するようになっているのは、川裏側から川表側への排水を妨げないためである。このような型式のゲート自体は公知であり、フラップゲートと呼ばれている。
【0021】
本体18bは、1枚の矩形の平板によって形成されている。一方、外枠18aの各垂直部材18a1の川表側には、本体18bの閉鎖時に本体18bに合致するように形作られた受け部18eが設置されている。受け部18eの少なくとも本体18bが接触する側は、ゴム等の弾性材料で形成されている。或いは、本体18bの側にゴム等の止水材(図示せず)を取り付け、本体18bの閉鎖時に受け部18eが前記止水材に食い込むように構成してもよい。
【0022】
本体18bの川表側にも、本体16bと同様に、遮水シート18fが取り付けられている(図5(c)、図5(d)参照)。遮水シート18fの左右端と下端は、本体18bよりも大きく形作られている。遮水シート18fは、ゴム、ポリエチレン、シリコン等で形成されている。遮水シート18fの取り付けは、リベット、ボルト、接着剤等の適当な方法によって行われる。
【0023】
遮水シート18fを取り付けたことにより、本体18bの閉鎖時に、外枠18aの垂直部材18a1と本体18bの左右端との間の隙間、及び外枠18aの水平部材18a2と本体18bの下端との間の隙間が遮水シート18fで被覆されることになるので、より良好な止水性を得ることができる。
【0024】
以上の実施形態では、最下段の扉体が折れ曲がり構造(第1扉体)、中段と上段の扉体が平板構造(第2扉体)であるが、最下段の扉体を折れ曲がり構造(第1扉体)とし、中段の扉体と上段の扉体を状況に応じて折れ曲がり構造(第1扉体)又は平板構造(第2扉体)のいずれにしてもよい。中段以上の扉体を折れ曲がり構造(第1扉体)にした場合には、図3(d)に示されるように、外枠に下側の水平部材16a3を設けて矩形形状とし、下側の水平部材16a3から川表側に延びるように水平材16a4を取り付け、本体の閉鎖時に本体の下端と前記水平材とが接触して外枠の開口が閉鎖されるように構成されている。なお、設計条件に応じて、扉体の設置基数を4基以上にしてもよい。
【0025】
(フロート)
好ましくは、図6(a)に示されるように、第1扉体16の本体16bの川裏側の面に、取付具20aを介してフロート20が取り付けられている。或いは、第1扉体16の本体16bの川裏側の面に、ボルト、接着剤、両面テープなどによって直接、フロート20を取り付けてもよい。フロート20は、塩化ビニル樹脂等の軽比重材料、又は内部に空間が設けられるように閉塞した鋼材等で形成されている。なお、フロート20は、円形に図示されているが、円形以外の他の形状でもよい。
【0026】
フロート20を取り付けることにより、水位上昇時に本体16bを確実に閉鎖させることができる。より詳細に説明すると、水位の上昇が緩慢な場合、フロート20が取り付けられていなければ、本体16bに作用する水圧が不十分なので、本体16bは閉鎖しにくい。一方、フロート20が取り付けられていれば、水位の上昇が緩慢な場合であっても、川裏側の水位が上昇するとフロート20に浮力が作用するので、本体16bがヒンジ16d1を中心として川裏側に回転し、本体16bは確実に閉鎖することとなる。一旦、本体16bが閉鎖すると、川表側と川裏側とに水位差が生じ、本体16bの川表側の面に作用する水圧により、本体16bは、確実に閉鎖し続けることになる(図6(b)参照)。フロート20は、本体16bの開度を保持するバランスウェイトになるという副次的な効果も有する。本体16bの重量が軽いため、フロート20の重量を変えることにより、本体16bの開度の調整を行うことができる。
【0027】
フロート20は、第2扉体18の本体18bの川裏側の面に取り付けてもよく、第1扉体16の本体16bの川裏側の面と第2扉体18の本体18bの川裏側の面の両方に取り付けてもよい。
【0028】
(量水標)
好ましくは、川裏用簡易ゲート10は、量水標22を備えている。量水標22は、一対の対向配置された溝形鋼22a1及び溝形鋼22a1のウェブ同士をそれぞれ連結する透明アクリル板22a2によって形成された角筒形の量水標本体22aを有している。なお、図示されている量水標本体22aは角筒形であるが、円筒形等の他の筒形の形状にしてもよい。
【0029】
量水標本体22aの上端には、キャップ22a3が取り付けられ、量水標本体22aの下端には、開口付きのベースプレート22a4が取り付けられている。量水標22は、量水標本体22aのベースプレート22a4を頂板14の開口部14aが設けられている個所にボルトで固定することにより取り付けられており、開口部14a及びベースプレート22a4の開口を介して、量水標本体22aの内部と開口部14aの下方部分(従って、川裏用ゲート10)が連通している。
【0030】
量水標22はまた、量水標本体22aの内部に上端から下端まで延びるように配置されたシャフト22bと、中央開口22c1にシャフト22bが通された下側浮体22cと、中央開口22d1にシャフト22bが通された上側浮体22dとを有している。シャフト22bの上端はキャップ22a3に、シャフト22bの下端はベースプレート22a4にそれぞれ固定されている。シャフト22bの外面には、雄ねじ22b1が切られている。下側浮体22c及び上側浮体22dは、塩化ビニル樹脂等の軽比重材料で形成されている。
【0031】
上側浮体22dの下面には、図7(e)及び図7(f)に示されるように、一端がシャフト22bの雄ねじ22b1に引っかかった状態で、他端を上側浮体22dの下面に接着剤で固体した複数枚(図面では6枚)の薄いバネ鋼材片22d2が固定されている。これにより、一旦、上側浮体22dが浮力を受けて上昇すると、バネ鋼材片22d2の一端がシャフト22bの雄ねじ22b1に引っかかっているので、浮力がなくなっても、上側浮体22dが下降することはない。なお、キャップ22a3を取り外し、シャフト22bごと上側浮体22dを量水標本体22aから取り出すことができる。したがって、取り出した上側浮体22dをシャフト22bから一旦外し、シャフト22bの下端に再び取り付けることにより、過去の最高水位の履歴を消し去ることができ、上側浮体22dを繰り返し使用することが可能である。
【0032】
量水標22を設置することにより、現在の水位と過去の最高水位を把握することができる。すなわち、川裏用ゲート10と量水標本体22aの内部とが連通しているため、川裏用ゲート10の水位に応じて開口部14aから量水標本体22aの内部に水が流入する。川裏用ゲート10の水位が第1水位になったとすると、下側浮体22cと上側浮体22dがシャフト22bに沿って、第1水位まで上昇する。一方、川裏用ゲート10の水位が低下して第2水位(<第1水位)になったとすると、下側浮体22cは、第2水位まで下降するが、上側浮体22dは、バネ鋼材片22d2がシャフト22bの雄ねじ22b1に引っかかっているため、第1水位の位置を保持して下降しない。第1水位より上方の第3水位になると、上側浮体22dは、上昇する下側浮体22cに押し上げられて第3水位まで上昇する。このようにして、下側浮体22cの位置により現在の水位を、上側浮体22dの位置により過去の最高水位を知ることができる。
【0033】
(設置方法)
図8図10を参照して、川裏用簡易ゲート10の好ましい設置方法について説明する。この設置方法では、堤防の水路に通常設けられている角落とし溝を利用し、第1設置具24と第2設置具26を使用する。図8は、第1設置具24と第2設置具26によって柱材12が設置されている状態を概略的に示した図である。図8において、Xは水流方向、Yは水流と直交する方向を示す。
【0034】
第1設置具24は、柱材12(従って、川裏用簡易ゲート10)をX方向に移動しないように固定するための部材である。第1設置具24は、図9(c)に示されるように、左右一対の座金24a、24bと、座金24a、24bの内面に溶接でそれぞれ固定され、互いに逆ネジが切られたナット24c、24dと、ナット24c、24dにそれぞれねじ込まれる軸部分24e1、24e2が設けられた調節具24eとを有している。一方の座金24bには、座金面に直交するように、ボルト穴付きの取付部24b2が設けられている。軸部分軸部分24e1、24e2のネジはそれぞれ、ナット24c、24dのネジに適合する向きに切られている。これにより、図9(b)に示されるように、調節具24eを一方向(白抜き矢印)に回転させると、座金24a、24bが互いに遠ざかる方へ移動(伸長)し、調節具24eを他方向(黒矢印)に回転させると、座金24a、24bが互いに近づく方へ移動(縮小)するようになっている。座金24a、24bの外面にはそれぞれ、ゴム片24a1、24b1が取り付けられている。なお、座金24a、24bの「内面」とは、互いに面する側を意味し、「外面」とは、内面と反対の側を意味する。
【0035】
設置に際して、第1設置具24を角落とし溝の所定位置に配置し、調節具24eを回転させて伸長させ、角落とし溝に堅固に固定する。次いで、座金24bの取付部24b2にブレース材24fの一端をボルト止めし、ブレース材24fの他端を柱材12の所望個所にボルト止めする。これにより、柱材12は、水流に抗して、X方向に堅固に固定される。なお、図8では、3本のブレース材24fが用いられているが、ブレース材24fの本数は、これに限定されるものではない。また、図示される例では、角落とし溝を利用して第1設置具24が配置されているが、適当な角落とし溝がない等の理由で角落とし溝が利用できない場合には、アンカー(図示せず)を用いて第1設置具24を壁面に固定してもよい。
【0036】
第2設置具26は、左右一対の柱材12(従って、川裏用簡易ゲート10)を所定個所に固定するための部材である。第2設置具26は、図10(a)に示されるように、中央部材26aと、左側部材26bと、右側部材26cとを有している。図10(c)は、中央部材26aと左側部材26bとの接合個所を示した分解拡大図である。中央部材26aと左側部材26bの対向する端部には、互いに逆ネジが切られた孔26a1、26b1が設けられている。第2設置具26は、孔26a1、26b1にそれぞれねじ込まれる軸部分26d1、26d2が設けられた調節具26dをさらに有している。軸部分26d1、26d2にはそれぞれ、孔26a1、26b1のネジに適合する向きにネジが切られている。これにより、図10(b)に示されるように、調節具26dを一方向(白抜き矢印)に回転させると、中央部材26aと左側部材26bが互いに遠ざかる方へ移動(伸長)し、調節具26dを他方向(黒矢印)に回転させると、中央部材26aと左側部材26bが互いに近づく方へ移動(縮小)するようになっている。中央部材26aと右側26cの接合個所も、中央部材26aと左側部材26bとの接合個所と実質的に同一の構成を有している。左側部材26bの端部には、突起26b2が設けられている(図10(d)参照)。
【0037】
設置に際して、左右一対の柱部材12を所定位置に配置し、第2設置具26を左右一対の柱部材12間に配置し、調節具26dを回転させて左側部材26b及び右側部材26cを伸長させ、これにより左右の柱部材12を所定位置に固定する。次いで、柱部材12に頂板14及び第1扉体16、第2扉体18を取り付けることにより、川裏用簡易ゲート10が設置される。なお、図8では、第2設置具26が水平部材12bの両端、垂直部材12aの第1扉体16と中段の第2扉体18との間、及び中段の第2扉体18と上段の第2扉体18との間の計4カ所に設けられているが、これは例示的なものであり、第2設置具26の設置基数をこれ以上にしても又はこれ以下にしてもよい。
【0038】
角落とし溝を利用し、第1設置具24と第2設置具26を使用して、川裏用簡易ゲート10を設置することにより、クレーン等の重機を使用せずに、簡単な工具のみで川裏用ゲート10を設置することができる。すなわち、川裏用簡易ゲート10は大別すると、一対の柱材12、頂板14、第1扉体、及び所要基数の第2扉体18から構成されるが、これらは、レンチ等の簡単な工具を用いて人力で組み立てて設置することができる。
【0039】
(川裏用ゲートの作動)
次に、主として図12を参照して、以上のように構成された川裏用簡易ゲート10の作動について説明する。通常時は、川裏用簡易ゲート10の第1扉体16の本体16b、第2扉体18の本体18bは、川表側に僅かに開放しているので、川裏側から川表側への水の流れが妨げられないようになっている(図12(a)参照)。一方、洪水等の出水時には、河川から川表側ゲートを通して水が逆流し、川裏用簡易ゲート10に達する。すると、第1扉体16の本体16b、第2扉体18の本体18bが閉鎖し、これにより川裏側が浸水するのが回避される。
【0040】
なお、川裏用簡易ゲート10の量水標22で水位を観測することができるので、洪水時に危険な川表側ゲートの監視個所に行く必要がなくなる。また、量水標22により、過去の最高水位を知ることもできる。
【0041】
本発明は、以上の発明の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0042】
たとえば、前記実施の形態では、第1扉体16の本体16bの折れ曲がりが3段として説明されているが、複数段であれば、他の段数でもよい。また、第2設置具26が3つの部材26a、26b、26cからなるものとして説明されているが、同様な接合個所の構成(軸部材及び調節ナット)を有する2つの部材からなる設置具を採用してもよい。さらに、図示されている各構成要素の寸法や細部の形状等は例示的なものにすぎない。
【符号の説明】
【0043】
10 川裏用簡易ゲート
12 柱材
12a 垂直部材
12b 水平部材
14 頂板
14a 開口部
16 第1扉体
16a 外枠
16b 本体
16b1 第1部分
16b2 第2部分
16b3 第3部分
16c アーム部
16d 回転ヒンジ部
16e 受け部
16f 遮水シート
18 第2扉体
18a 外枠
18b 本体
18c アーム部
18d 回転ヒンジ部
18e 受け部
18f 遮水シート
20 フロート
20a 取付具
22 量水標
22a 量水標本体
22a1 溝形鋼
22a2 アクリル板
22a3 キャップ
22a4 ベースプレート
22b シャフト
22b1 雄ねじ
22c 下側浮体
22c1 中央開口
22d 上側浮体
22d1 中央開口
22d2 バネ鋼材片
24 第1設置具
24a 座金
24b 座金
24c ナット
24d ナット
24e 調節具
24f ブレース材
26 第2設置具
26a 中央部材
26b 左側部材
26c 右側部材
26d 調節具
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図10
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図13