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特許7437040発泡性清酒の製造方法及び発泡性清酒の注出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】発泡性清酒の製造方法及び発泡性清酒の注出方法
(51)【国際特許分類】
   B67D 1/04 20060101AFI20240215BHJP
   C12G 3/022 20190101ALI20240215BHJP
【FI】
B67D1/04 B
C12G3/022 119J
C12G3/022 119Z
C12G3/022 119K
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021060786
(22)【出願日】2021-03-31
(62)【分割の表示】P 2020171153の分割
【原出願日】2020-10-09
(65)【公開番号】P2022032945
(43)【公開日】2022-02-25
【審査請求日】2023-06-26
(31)【優先権主張番号】P 2020135763
(32)【優先日】2020-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518339711
【氏名又は名称】クリップクリエイティブ合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100185270
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 大
(72)【発明者】
【氏名】茨木 幹人
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-538632(JP,A)
【文献】特許第6751877(JP,B1)
【文献】信濃毎日新聞朝刊 6ページ, 2018.12.28 [検索日 2021.04.02], インターネット:<URL:https://t21.nikkei.co.jp/g3/CMN0F12.do>
【文献】菊田大志official blog, 日本酒サーバー「ケグドラフト」, 2019.12.09 [検索日 2021.04.02], インターネット<URL:https://ameblo.jp/moromi-ya/entry-12555140804.html>
【文献】森正 隆太郎, 生酒を酸化させずにグラス売りできるサーバー誕生!海外への輸出も視野に [クリップクリエイティブ], 2019.10.30 [検索日 2021.04.02], インターネット<URL:https:// foodfun.jp/archives/3483>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67D 1/04
C12G 3/022
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質包材により構成され、かつ、混合酒が充填される貯留パックと、前記貯留パックを収容するとともに、前記貯留パックの周囲に所定の流体を密封可能に構成された圧力容器と、前記圧力容器が収容され、かつ、内部を所定の低温に保持する冷蔵庫と、を備え、前記貯留パック内で前記混合酒を二次発酵させることで炭酸ガスを含有させた発泡性清酒を得る製造方法であって、
原酒と醪とが混合された混合酒を生成する混合工程と、
前記圧力容器内の圧力が大気圧よりも高い所定の圧力となるように、前記冷蔵庫内の温度と略同一の温度を有する流体を、前記圧力容器内の前記貯留パックの周囲に密封する密封工程と、
前記混合工程で生成された前記混合酒を前記貯留パックに充填する工程であって、前記混合酒を攪拌しながら前記所定の圧力よりも高い圧力で前記貯留パック内に充填する充填工程と、
前記貯留パック内に充填された前記混合酒を二次発酵させて前記発泡性清酒を得る発酵工程と、
前記貯留パック内の前記発泡性清酒を前記圧力容器内の圧力によって押し出す注出工程と、
を有する、発泡性清酒の製造方法
【請求項2】
前記充填工程は、前記貯留パックに充填される前記混合酒の量に応じて、前記圧力容器内で前記貯留パックの周囲に密封されていた前記流体を前記圧力容器の外へ放出する、請求項1に記載の発泡性清酒の製造方法
【請求項3】
前記密封工程は、前記冷蔵庫の外の流体を、前記冷蔵庫内の温度と同一の温度になるように冷却して、前記圧力容器内における前記貯留パックの周囲に密封する、請求項1または2記載の発泡性清酒の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性清酒の製造方法及び発泡性清酒の注出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、清酒に窒素ガスを吹き込むことで該清酒のバブリング処理を行う技術が開示されている。この技術によれば、長期間の保存においても、保存安定性に優れた清酒が提供される。また、特許文献2には、ボトルに貯留された飲料を冷却して注出するためのボトル飲料サーバーに関する技術が開示されている。この技術によれば、保冷庫、ペルチェ素子、および冷却管の一部が収容された筐体の外部に、該冷却管に冷却水を流通させるためのポンプ及び冷却水を冷却するための冷却装置が配置されることで、ボトルの交換が容易な飲料サーバーにおいて、効率良く飲料が冷却される。
【0003】
また、発泡性清酒の製造方法として、従来から、清酒に炭酸ガスを吹き込む方法や、容器内で清酒を二次発酵させて清酒に炭酸ガスを含有させる方法が知られている。ここで、特許文献3には、上槽により得られた清酒と、酵母を含み発酵活性のある醪を粗漉して得られた懸濁清酒との混合清酒を、密閉した容器内で二次発酵させることで得られる発泡性清酒において、前記清酒と懸濁清酒との混合割合を4:1~19:1の範囲にすることが開示されている。これによれば、滓の量をコントロールしつつ十分な炭酸ガスを得ることができる。更に、特許文献3に記載の発泡性清酒の製造方法には、容器内の混合清酒の二次発酵を停止させた後に、滓引工程を行うことが記載されている。この滓引工程では、少なくとも滓部分を冷やすことにより、容器内の空気を収縮させるとともに、酵母の働きを弱め、開栓時に滓のみをすみやかに出すことができるようにしている。そのため、滓引工程における炭酸ガスの噴出しが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-262082号公報
【文献】特開2019-94120号公報
【文献】特許第4422195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
清酒は、酸化しやすく、また、環境の変化が味と香に大きな影響を及ぼしてしまうことがわかっている。例えば、酸化や日光の照射、温度変化等によって、清酒の品質が劣化してしまうと、清酒本来の味と香が損なわれてしまう。
【0006】
また、清酒に炭酸ガスを吹き込むことにより製造した発泡性清酒では、泡のきめが粗くて炭酸ガスが抜けやすいため、発泡性清酒本来の味や喉ごしが損なわれてしまうという問題があった。一方、容器内で清酒を二次発酵させて清酒に炭酸ガスを含有させる方法によれば、泡のきめが細かく口当たりが良い発泡性清酒が得られるものの、該発泡性清酒の製造における二次発酵工程や、製造された発泡性清酒が消費者に提供されるまでに、やはり二次発酵工程で発生した炭酸ガスがある程度清酒から抜けてしまう事態が生じ得る。そして、発泡性清酒の製造における二次発酵工程で発生した炭酸ガスが清酒から抜けてしまう事態を抑制し、消費者に対して発泡性清酒本来の味などを提供する技術については、未だ改良の余地を残すものである。
【0007】
本発明の目的は、容器内での発酵により発生させた炭酸ガスについて、発泡性清酒から該炭酸ガスが抜けてしまう事態を可及的に抑制することができる発泡性清酒の製造方法及び発泡性清酒の注出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願開示の発泡性清酒の製造方法は、軟質包材の第1容器と、前記第1容器を包含するとともに、該第1容器の周囲に所定の流体を密封可能に構成された第2容器と、を含んだ流通用容器内で清酒を二次発酵させることで清酒に炭酸ガスを含有させる発泡性清酒の製造方法である。そして、原酒と醪とが混合された混合酒を生成する混合工程と、前記第2容器内の圧力が大気圧よりも高い所定の圧力となるように、前記第2容器内の前記第1容器の周囲に前記流体を密封する密封工程と、前記混合酒を前記流通用容器に充填する工程であって、その周囲に前記流体が密封された前記第1容器に該混合酒を攪拌しながら充填する充填工程と、前記第1容器内に前記混合酒が密閉された前記流通用容器内で該混合酒を二次発酵させる発酵工程と、を有する。
【0009】
また、本願開示は、発泡性清酒の注出方法の側面から捉えることができる。すなわち、本願開示の発泡性清酒の注出方法は、発泡性清酒が貯留された軟質包材の第1容器と、前記第1容器を包含するとともに、該第1容器の周囲に所定の流体を密封可能に構成された第2容器と、前記第2容器内の前記第1容器の周囲に前記流体を供給する供給手段と、前記第1容器に貯留された発泡性清酒を注出する注出ノズルと、前記注出ノズルを流通する発泡性清酒の流量を検出する流量センサと、を備えた清酒サーバーからの発泡性清酒の注出方法である。そして、前記注出ノズルの注出口を開口するステップと、前記第2容器内の圧力が大気圧よりも高い所定の圧力に維持されるように、前記流量センサの出力値に基づいて算出される前記注出ノズルからの発泡性清酒の注出量に応じた量の前記流体を、前記供給手段によって、前記第2容器内の前記第1容器の周囲に供給するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本願開示によれば、容器内での発酵により発生させた炭酸ガスについて、発泡性清酒から該炭酸ガスが抜けてしまう事態を可及的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態に係る清酒サーバーの一部断面図である。
図2】第1の実施形態に係る清酒サーバーの一部断面図において、ユーザによるレバーの操作によって、注出ノズルから清酒が注出される態様を説明するための図である。
図3】第1の実施形態の変形例1に係る清酒サーバーの一部断面図において、ユーザによるレバーの操作によって、注出ノズルから清酒が注出される態様を説明するための図である。
図4】第1の実施形態の変形例2における圧力調整装置が、圧力容器内の圧力を大気圧よりも高い所定の圧力にするために行う処理についてのフローチャートである。
図5】第2の実施形態に係る清酒サーバーの一部断面図において、ユーザによるレバーの操作によって、注出ノズルから清酒が注出される態様を説明するための図である。
図6】第3の実施形態における発泡性清酒の製造方法のステップの一例を示すフロー図である。
図7】第3の実施形態における発泡性清酒の製造方法において用いられる流通容器を説明するための図である。
図8】第3の実施形態における発泡性清酒の製造方法において混合酒を流通容器に充填する方法を説明するための図である。
図9】第4の実施形態における発泡性清酒の注出方法のステップの一例を示すフロー図である。
図10】第4の実施形態における清酒サーバーの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて、本願開示の実施の形態を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本願開示は実施形態の構成に限定されない。
【0013】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る清酒サーバーについて、図1を参照しながら説明する。図1は、清酒サーバー1の一部断面図である。なお、本願開示の清酒サーバー1は、飲料としての清酒を注出するための装置であって、清酒サーバー1によって注出される清酒とは、米、米こうじ、水および清酒かす等を原料として発酵させてこしたものである。本実施形態に係る清酒サーバー1は、清酒が貯留された貯留パック10と、貯留パック10を包含する容器であって、該容器内の圧力が大気圧よりも高い所定の圧力になるように、該貯留パック10の周囲に空気が密封された圧力容器20と、貯留パック10を包含した圧力容器20を収容する冷蔵庫30と、圧力容器20内の貯留パック10の周囲に空気を供給する流体供給ポンプ40と、圧力容器20内の圧力によって押し出される清酒を注出する注出ノズル50と、を備える。
【0014】
貯留パック10は、清酒を貯留するための軟質包材の容器であって、例えば、袋の形状に成型されたパウチや、バッグインボックスである。ただし、貯留パック10は、外圧によって比較的容易に変形できるものであれば、その形状は問わない。このような貯留パック10は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフラレート、ナイロン等の高分子材料や、アルミニウム等の材質を必要に応じて張り合わせてなる軟質包材により構成される。
【0015】
ここで、清酒は酸化しやすく、仮に、酸化によって清酒の品質が劣化してしまうと、清酒本来の味と香が損なわれてしまう。そこで、本実施形態の貯留パック10では、該貯留パック10内で清酒が脱酸素状態にされる。詳しくは、本実施形態の貯留パック10では、該貯留パック10内が真空にされる。これにより、酸化によって清酒の品質が劣化してしまう事態が可及的に抑制される。なお、貯留パック10内で清酒が脱酸素状態にされる態様は、該貯留パック10内が真空にされる態様に限定されない。例えば、貯留パック10内に窒素ガスが充填されることによって、該貯留パック10内で清酒が脱酸素状態にされてもよい。
【0016】
圧力容器20は、開口部を有するボトル形状の容器であって、該開口部がアダプタ21によって封止されることで、貯留パック10を包含した状態で内部を気密状態に維持することができる。なお、上述したように、貯留パック10は軟質包材の容器である。そのため、圧力容器20の開口部を通過できる程度にまで畳まれた状態で、貯留パック10が圧力容器20内に配置され得る。そして、圧力容器20に包含された状態で貯留パック10内に清酒が注入されることで、清酒が貯留された貯留パック10が圧力容器20に包含されてもよい。また、ボトル形状の圧力容器20において、その底面部が開閉可能に構成されることで、清酒が貯留された貯留パック10が底面部から圧力容器20内に配置されてもよい。
【0017】
また、本実施形態では、圧力容器20内の貯留パック10の周囲に空気が密封され、該容器内の圧力が大気圧よりも高い所定の圧力にされる。これについて、以下に説明する。
【0018】
図1に示すように、貯留パック10を包含した圧力容器20を収容する冷蔵庫30には、流体供給ポンプ40が配置される。流体供給ポンプ40は、圧力容器20内の貯留パック10の周囲に空気を供給する装置であって、流体供給ポンプ40の吐出口と、アダプタ21に設けられた逆止弁43とが、チューブ42によって繋がれることによって、チューブ42および逆止弁43を介して、流体供給ポンプ40から吐出された空気が圧力容器20内の貯留パック10の周囲に供給される。ここで、逆止弁43は、流体供給ポンプ40と接続されたチューブ42側から、圧力容器20内に連通された導入パイプ44側へと空気を流通させるが、その逆には空気を流通させないように構成された弁である。したがって、圧力容器20の開口部がアダプタ21によって封止されることと、流体供給ポンプ40から吐出された空気が逆止弁43を介して圧力容器20内に供給されることと、によって、圧力容器20内の圧力が大気圧よりも高い所定の圧力にされる。ここで、圧力容器20内の圧力とは、圧力容器20内の貯留パック10の周囲において気密状態に維持された空気の圧力であって、例えば、ボトル形状の圧力容器20の任意の位置、または、圧力容器20の開口部を封止するアダプタ21に圧力センサを配置することで、該圧力容器20内の圧力を検出することができる。また、所定の圧力とは、圧力容器20内の圧力を受けて注出ノズル50から注出される清酒の注出流量が、清酒サーバー1を操作するユーザにとって扱い易い流量となるように設定される圧力である。
【0019】
また、冷蔵庫30は、庫内を所定の低温に保持する装置であって、上述したように、貯留パック10を包含した圧力容器20を収容する。ここで、清酒は、日光や照明器具の光の照射や、不十分な温度管理によって、味と香が変質してしまう。そこで、本願開示の清酒サーバー1では、貯留パック10を包含した圧力容器20が、冷蔵庫30に収容される。
【0020】
注出ノズル50は、圧力容器20内の圧力によって押し出される清酒を注出するノズルであって、冷蔵庫30の前面に前方に突出するように取り付けられている。そして、注出ノズル50は、貯留パック10内に連通されたチューブ11を介して、貯留パック10に貯留された清酒が流通可能となるように構成されている。また、注出ノズル50は、レバー51の操作により該ノズルの注出口の開閉が可能となっており、清酒サーバー1のユーザによるレバー51の操作によって該注出口が開かれると、注出ノズル50から清酒が注出されることになる。
【0021】
以上に述べた清酒サーバー1によれば、貯留パック10内で清酒が脱酸素状態にされることで、清酒の酸化が抑制される。そして、貯留パック10を包含した圧力容器20が冷蔵庫30に収容されることで、清酒が日光や照明器具の光に曝されることが抑制される。また、冷蔵庫30内が所定の低温に保持されることによって、貯留パック10内の清酒が冷却され、清酒本来の味と香を再現することが可能となるように思われる。ただし、圧力容器20内の貯留パック10の周囲には空気が密封されているため、仮に、流体供給ポンプ40によって外気温の空気がこの貯留パック10の周囲空間に供給される場合には、貯留パック10内の清酒を十分に冷却することができない事態が生じ得る。
【0022】
そこで、本実施形態に係る清酒サーバー1では、流体供給ポンプ40が、冷蔵庫30内の空気を圧力容器20内の貯留パック10の周囲に供給する。これについて、図2を参照しながら説明する。
【0023】
図2は、第1の実施形態に係る清酒サーバー1の一部断面図において、ユーザによるレバー51の操作によって、注出ノズル50から清酒が注出される態様を説明するための図である。ここで、上記の図1に示した状態では、注出ノズル50の注出口が閉じられており、貯留パック10は、圧力容器20内における該貯留パック10の周囲の空気から圧力を受け変形しようとするものの、注出ノズル50の閉じられた注出口が栓となって、貯留パック10内の清酒が外部に注出することはない。そのため、貯留パック10は、大きくは変形しない。一方、図2に示すように、注出ノズル50の注出口が開けられると、圧力容器20内の圧力を受けて貯留パック10が収縮し、該貯留パック10内の清酒が押し出されることで、注出ノズル50から清酒が注出されることになる。
【0024】
そして、注出ノズル50から清酒が注出されると、その注出量だけ貯留パック10内の清酒の貯留量が減少することになる。ここで、上述したように、貯留パック10は、軟質包材の容器であって、圧力容器20内の圧力を受けて収縮することで、該貯留パック10内の清酒を押し出すように構成されている。そのため、貯留パック10内の清酒の貯留量が減少すると、その減少量に相当する分、圧力容器20内において貯留パック10が占める割合が減少する。言い換えれば、圧力容器20内における貯留パック10の周囲の空気の体積が増加することになる。そうすると、圧力容器20内の貯留パック10の周囲において気密状態に維持された空気の圧力が減少し、圧力容器20内を所定の圧力に維持できなくなる事態が生じ得る。なお、本実施形態では、圧力容器20に、該圧力容器20内の貯留パック10の周囲の空気の圧力を検出する圧力センサが備えられており、該圧力センサによって検出された圧力容器20内の圧力が、冷蔵庫30の前面に配置された表示パネル31に表示される。
【0025】
清酒サーバー1のユーザは、冷蔵庫30の表示パネル31に表示された圧力容器20内の圧力の値が、予め定められた下限値よりも低下したことを確認すると、流体供給ポンプ40を作動させて、圧力容器20内の貯留パック10の周囲に空気を供給することができる。つまり、流体供給ポンプ40によって、圧力容器20内の圧力が大気圧よりも高い所定の圧力になるように、圧力容器20内の貯留パック10の周囲に空気が供給される。このとき、流体供給ポンプ40は、冷蔵庫30内の空気を圧力容器20内の貯留パック10の周囲に供給する。詳しくは、上述したように、本実施形態では、流体供給ポンプ40が冷蔵庫30内に配置されていて、流体供給ポンプ40の吸入口41も冷蔵庫30内に存在する。そのため、流体供給ポンプ40が作動されると、冷蔵庫30内の空気が、吸入口41から流体供給ポンプ40内に吸い上げられ、流体供給ポンプ40の吐出口からチューブ42および逆止弁43を介して、圧力容器20内の貯留パック10の周囲に供給される。つまり、流体供給ポンプ40によって、所定の低温に保持された冷蔵庫30内の冷気が、圧力容器20内の貯留パック10の周囲に供給されることになる。そうすると、貯留パック10内の清酒を十分に冷却することができ、清酒本来の味と香を再現することが可能となる。
【0026】
以上に述べたように、本願開示の清酒サーバー1によれば、清酒本来の味と香を損なうことなく清酒を注出することができる。
【0027】
(第1の実施形態の変形例1)
上記第1の実施形態の第1の変形例について、図3に基づいて説明する。上述した第1の実施形態では、流体供給ポンプ40によって、冷蔵庫30内の冷気が圧力容器20内の貯留パック10の周囲に供給される例について説明した。これに対して、本変形例では、流体供給ポンプ40によって、冷蔵庫30内に配置されたボトルに貯められた冷却水が、圧力容器20内の貯留パック10の周囲に供給される例について説明する。
【0028】
図3は、第1の実施形態の変形例1に係る清酒サーバー1の一部断面図において、ユーザによるレバー51の操作によって、注出ノズル50から清酒が注出される態様を説明するための図である。図3に示すように、本変形例では、上述した第1の実施形態の構成に加えて、冷蔵庫30内にボトル45が配置される。そして、ボトル45には、冷却水が貯められている。この場合、流体供給ポンプ40が作動されると、ボトル45に貯められた冷却水が、吸入口41から流体供給ポンプ40内に吸い上げられ、流体供給ポンプ40の吐出口からチューブ42および逆止弁43を介して、圧力容器20内の貯留パック10の周囲に供給される。つまり、流体供給ポンプ40によって、所定の低温に保持された冷蔵庫30内で冷やされた冷却水が、圧力容器20内の貯留パック10の周囲に供給されることになる。そうすると、貯留パック10内の清酒を十分に冷却することができ、清酒本来の味と香を再現することが可能となる。
【0029】
以上に述べた清酒サーバー1によっても、清酒本来の味と香を損なうことなく清酒を注出することができる。
【0030】
(第1の実施形態の変形例2)
上記第1の実施形態の第2の変形例について、図4に基づいて説明する。本変形例に係る清酒サーバー1は、上述した第1の実施形態の構成に加えて圧力調整装置を備える。圧力調整装置は、圧力容器20内の圧力に基づいて、流体供給ポンプ40の作動を制御する制御装置であって、CPU、RAM、ROM等から構成される電子制御ユニットを有する。CPUは、演算処理装置であって、後述する図4に示す各処理を実行する。RAMは、CPUによって実行されるプログラムや、当該制御プログラムが利用するデータが展開されるメモリである。ROMは、CPUにおいて実行されるプログラムや、当該制御プログラムが利用するデータが記憶される装置である。
【0031】
そして、図4は、本変形例における圧力調整装置が、圧力容器20内の圧力を大気圧よりも高い所定の圧力にするために行う処理についてのフローチャートである。先ず、S101では、圧力容器20内の圧力が取得される。圧力調整装置は、ボトル形状の圧力容器20の任意の位置、または、圧力容器20の開口部を封止するアダプタ21に配置された圧力センサによって検出された、圧力容器20内の貯留パック10の周囲の空気の圧力を取得する。そして、S101の処理が終了すると、S102へ進む。
【0032】
S102では、S101の処理で取得した圧力容器20内の圧力が、下限値未満であるか否かが判別される。ここで、上記の下限値とは、ユーザが清酒サーバー1を用いて清酒を給仕する際の、注出ノズル50からの清酒の必要注出流量に基づいて定められる閾値であって、清酒サーバー1のユーザによって予め定められる。そして、S102で肯定判定されると処理はS103へ進み、S102で否定判定されると処理はS101へ戻る。
【0033】
S102で肯定判定された場合、次に、S103では、流体供給ポンプ40の作動が開始される。圧力調整装置は、流体供給ポンプ40に対して作動開始の指令を送信することで、流体供給ポンプ40の作動を開始させることができる。そして、S103の処理が終了すると、S104へ進む。
【0034】
S104では、圧力容器20内の圧力が取得される。なお、S104の処理は、上記のS101の処理と実質的に同一である。そして、S105では、S104の処理で取得した圧力容器20内の圧力が、所定値に達したか否かが判別される。ここで、上記の所定値とは、圧力容器20内の圧力を受けて注出ノズル50から注出される清酒の注出流量が、清酒サーバー1を操作するユーザにとって扱い易い流量となるように設定される圧力の値であって、該ユーザによって予め定められる。そして、S105で肯定判定されると処理はS106へ進み、S105で否定判定されると処理はS104へ戻る。
【0035】
S105で肯定判定された場合、次に、S106では、流体供給ポンプ40の作動が終了される。圧力調整装置は、流体供給ポンプ40に対して作動終了の指令を送信することで、流体供給ポンプ40の作動を終了させることができる。
【0036】
以上に述べた処理によれば、清酒サーバー1のユーザの操作によらずとも、注出ノズル50からの清酒の注出流量が、該ユーザにとって扱い易い流量に自動的に制御される。そのため、ユーザが清酒サーバー1を用いて清酒を給仕するにあたって、清酒の空気への曝露といった清酒に対する環境変化が可及的に小さくされ、以て、清酒本来の味と香を損なうことなく清酒を注出することができる。
【0037】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について、図5に基づいて説明する。上述した第1の実施形態では、流体供給ポンプ40が冷蔵庫30内に設けられ、該流体供給ポンプ40によって、冷蔵庫30内の冷気が圧力容器20内の貯留パック10の周囲に供給される例について説明した。これに対して、本実施形態では、流体供給ポンプ40が冷蔵庫30の外に設けられ、流体供給ポンプ40内に吸い上げられ吐出口から圧送された外気が、冷蔵庫30の外に設けられた冷却装置によって、冷蔵庫30内の温度と略同一の温度になるように冷却される例について説明する。
【0038】
図5は、第2の実施形態に係る清酒サーバー1の一部断面図において、ユーザによるレバー51の操作によって、注出ノズル50から清酒が注出される態様を説明するための図である。本実施形態では、図5に示すように、冷蔵庫30の外に流体供給ポンプ40および冷却装置46が配置される。この場合、流体供給ポンプ40が作動されると、冷蔵庫30の外の空気である外気が、吸入口41から流体供給ポンプ40内に吸い上げられ、流体供給ポンプ40の吐出口から冷却装置46、チューブ42、および逆止弁43を介して、圧力容器20内の貯留パック10の周囲に供給される。ここで、冷却装置46は、流体供給ポンプ40から圧送された空気の温度を、冷蔵庫30内の温度と略同一の温度になるように調整する装置である。このような構成によると、流体供給ポンプ40が外気を吸入するような場合でも、冷却装置46によって冷却された冷気が、圧力容器20内の貯留パック10の周囲に供給されることになる。また、流体供給ポンプ40の作動によって空気にエネルギーが与えられ、仮に、流体供給ポンプ40の吐出口から圧送される空気の温度が、流体供給ポンプ40に吸い上げられる空気の温度よりも上昇するような場合でも、冷却装置46によって、流体供給ポンプ40から圧送された空気の温度を、冷蔵庫30内の温度と略同一の温度になるように好適に調整することができる。そうすると、貯留パック10内の清酒を十分に冷却することができ、清酒本来の味と香を再現することが可能となる。
【0039】
以上に述べた清酒サーバー1によっても、清酒本来の味と香を損なうことなく清酒を注出することができる。
【0040】
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係る発泡性清酒の製造方法について、図6を参照しながら説明する。図6は、本実施形態における発泡性清酒の製造方法のステップの一例を示すフロー図である。なお、本願開示では、軟質包材の第1容器(貯留パック10)と、前記第1容器を包含するとともに、該第1容器の周囲に所定の流体を密封可能に構成された第2容器(圧力容器20)と、を含んだ流通用容器(後述する流通容器100)内で清酒を二次発酵させることで清酒に炭酸ガスを含有させる。また、流通用容器内に製造された発泡性清酒は、その容器のまま流通され所定の清酒サーバーに取り付けられることで、流通用容器内に製造された発泡性清酒が消費者に提供される。
【0041】
<原酒と醪とを混合する方法>
図6に示す発泡性清酒の製造方法においては、先ず、原酒と醪とを混合する(図6のステップS1)。そして、この混合工程によって、原酒と醪とが混合した混合酒が得られる。
【0042】
ステップS1における原酒と醪とを混合する具体的な手法としては、特に限定されないが、例えば、通常の清酒の製造工程において取り出した原酒を所定のタンクに貯留し、そこに醪の一部を濾したもの(これには、酵母と米が溶けたものが混在している。)を添加することで、原酒と醪とを混合してもよい。この場合の醪の添加割合は、例えば5%~30%である。なお、本開示の混合工程とは、原酒と醪とが混合された混合酒を生成する工程であって、上述したように原酒と醪とを混合することで混合酒を生成する態様に限定されない。例えば、原酒に対して少量の醪が含まれる無濾過生原酒を混合酒として生成してもよい。
【0043】
<圧力容器に流体を密封する方法>
次に、圧力容器に流体を密封する方法について説明する。本実施形態では、後述するように、圧力容器に流体が密封された状態で、該圧力容器に包含される貯留パックに上記の混合酒が充填される。ここで、図7は、本実施形態における発泡性清酒の製造方法において用いられる流通容器を説明するための図である。図7に示すように、流通容器100は、軟質包材の貯留パック10と、貯留パック10を包含するとともに、該貯留パック10の周囲に所定の流体を密封可能に構成された圧力容器20と、を有する。
【0044】
貯留パック10は、上記の混合酒を充填するための軟質包材の容器であって、例えば、袋の形状に成型されたパウチや、バッグインボックスである。ただし、貯留パック10は、外圧によって比較的容易に変形できるものであれば、その形状は問わない。このような貯留パック10は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフラレート、ナイロン等の高分子材料や、アルミニウム等の材質を必要に応じて張り合わせてなる軟質包材により構成される。
【0045】
圧力容器20は、開口部を有するボトル形状の容器であって、該開口部がアダプタ21によって封止されることで、貯留パック10を包含した状態で内部を気密状態に維持することができる。なお、上述したように、貯留パック10は軟質包材の容器である。そのため、圧力容器20の開口部を通過できる程度にまで畳まれた状態で、貯留パック10が圧力容器20内に配置され得る。また、ボトル形状の圧力容器20において、その底面部が開閉可能に構成されることで、貯留パック10が底面部から圧力容器20内に配置されてもよい。
【0046】
そして、圧力容器20のアダプタ21には、逆止弁43と、該逆止弁43に接続されるとともに圧力容器20内に連通された導入パイプ44と、が設けられている。図6に示す発泡性清酒の製造方法においては、次に、圧力容器20に流体を密封する(図6のステップS2)。そして、この密封工程によって、圧力容器20内の圧力が大気圧よりも高い所定の圧力にされる。なお、本実施形態における上記の流体とは気体であって、空気や窒素等が例示される。また、大気圧よりも高い所定の圧力とは、例えば1.5~3.5バール(絶対圧)である。
【0047】
ステップS2における圧力容器に流体を密封する具体的な手法としては、コンプレッサーや圧縮空気が充填されたエアボトルから供給される空気が流通するチューブが、逆止弁43に繋がれることによって、該チューブ、逆止弁43、および導入パイプ44を介して、コンプレッサーやエアボトルからの空気が圧力容器20内の貯留パック10の周囲に供給される。ここで、逆止弁43は、コンプレッサーやエアボトルと接続されたチューブ側から、圧力容器20内に連通された導入パイプ44側へと空気を流通させるが、その逆には空気を流通させないように構成された弁である。したがって、貯留パック10を包含した状態で圧力容器20の開口部がアダプタ21によって封止されることと、コンプレッサーやエアボトルからの空気が逆止弁43を介して圧力容器20内に供給されることと、によって、圧力容器20内の圧力が大気圧よりも高い所定の圧力にされる。ここで、圧力容器20内の圧力とは、圧力容器20内の貯留パック10の周囲において気密状態に維持された空気の圧力である。そして、圧力容器20内の圧力は、例えば、ボトル形状の圧力容器20の任意の位置、または、圧力容器20の開口部を封止するアダプタ21に圧力センサを配置することで検出することができる。
【0048】
なお、図6に示すフロー図では、先ず原酒と醪とを混合し(図6のステップS1)、次に圧力容器に流体を密封する(図6のステップS2)態様を例示したが、これに限定する意図はない。例えば、先ず圧力容器に流体を密封し、次に原酒と醪とを混合してもよい。
【0049】
<混合酒を流通容器に充填する方法>
次に、混合酒を流通容器に充填する方法について説明する。図8は、本実施形態における発泡性清酒の製造方法において混合酒を流通容器に充填する方法を説明するための図である。本実施形態では、図6のステップS1において説明した混合酒がタンク200に貯留される。ここで、タンク200は攪拌機を備えていて、タンク200内の混合酒は該攪拌機によって撹拌される。そして、タンク200内の混合酒は、攪拌機によって撹拌されながらポンプ300に導かれる。
【0050】
そして、図6に示す発泡性清酒の製造方法においては、次に、混合酒を流通容器に充填する(図6のステップS3)。この充填工程では、その周囲に流体が密封された貯留パック10に混合酒を攪拌しながら充填する。
【0051】
ステップS3における混合酒を流通容器に充填する具体的な手法としては、撹拌しながらポンプ300の吸入口に導いた混合酒を該ポンプ300の吐出口から圧送することで、貯留パック10に混合酒を攪拌しながら充填することができる。ここで、貯留パック10には、一方の端部が貯留パック10内に連通され、他方の端部が圧送チューブに接続可能に構成されたジョイント12が設けられていて、該圧送チューブによってポンプ300の吐出口とジョイント12とが繋がれている。
【0052】
なお、図6のステップS2において説明したように、圧力容器20内の圧力(圧力容器20内の貯留パック10の周囲において気密状態に維持された空気の圧力)は、大気圧よりも高い所定の圧力にされる。また、貯留パック10は、軟質包材の容器であって、外圧によって比較的容易に変形する。そのため、混合酒が充填される前の貯留パック10は、圧力容器20内の圧力によって押しつぶされていて(このとき、貯留パック10内の空気が押し出されている。)、このような貯留パック10に混合酒を充填するためには、該圧力に打ち勝つように混合酒を貯留パック10に押し込む必要がある。そこで、本実施形態では、ポンプ300の吐出圧が圧力容器20内の圧力よりも高くなるように設定される。これにより、貯留パック10に混合酒を充填することが可能となる。
【0053】
ここで、貯留パック10に混合酒が充填される過程においては、圧力容器20内の圧力によって押しつぶされていた該貯留パック10が徐々に膨らんでいくことになる。そうすると、圧力容器20内の圧力が上昇するため、ポンプ300の吐出圧と圧力容器20内の圧力との差圧が減少し、貯留パック10に混合酒を充填し難くなる。そこで、本実施形態では、貯留パック10に充填された混合酒の量に応じて、圧力容器20内の貯留パック10の周囲に密封されていた流体を圧力容器20の外へ放出してもよい。例えば、圧力容器20には、圧力容器20内に密封されていた空気を外へ放出することで該圧力容器20内の圧力を減圧させる減圧弁と、圧力容器20内の貯留パック10の周囲の空気の圧力を検出する圧力センサと、が備えられている。なお、減圧弁は、例えば、調整ねじを備えた周知の手動式減圧弁である。そうすると、作業者は、貯留パック10に充填された混合酒の量に応じて上昇する圧力容器20内の圧力を減圧するために、圧力センサの出力値に基づいて減圧弁の調整ねじを操作することで、圧力容器20内に密封されていた空気を外へ放出することができる。これによれば、ポンプ300の吐出圧と圧力容器20内の圧力との差圧が一定になるように比較的容易に制御することができ、貯留パック10に混合酒を安定して充填することが可能となる。
【0054】
そして、圧力容器20内の圧力に打ち勝つように、ポンプ300によって混合酒を貯留パック10に押し込んでいった結果、貯留パック10への混合酒の充填が完了すると、貯留パック10内の混合酒の圧力が大気圧よりも高い圧力となる。例えば、図6のステップS2の密封工程によって、圧力容器20内の圧力が大気圧よりも高い所定の密封圧力にされたとして、図6のステップS3の充填工程において、減圧弁の操作により圧力容器20内の圧力が該密封圧力に制御される場合には、上記の貯留パック10内の混合酒の圧力をこの密封圧力と略同一にすることができる。なお、貯留パック10内の混合酒の圧力は、例えば1.5~3.5バール(絶対圧)にされる。
【0055】
以上に述べた混合酒を流通容器に充填する方法では、ポンプ300によって、混合酒を圧力容器20内の圧力よりも高い圧力で貯留パック10に圧送する例について説明したが、混合酒を貯留パック10に圧送する手段はポンプ300に限定されない。例えば、混合酒が撹拌されながら貯留されているタンク200内の圧力を利用して、混合酒が貯留パック10に圧送されてもよい。この場合、タンク200は密閉容器によって構成され、且つ、その内部に二酸化炭素や窒素等が充填されることで加圧状態が維持されている。そうすると、加圧されたタンク200の内圧によって、圧力容器20内の圧力に打ち勝つように、混合酒を貯留パック10に押し込んでいくことができる。
【0056】
<流通容器内で混合酒を二次発酵させる方法>
図6に示す発泡性清酒の製造方法においては、次に、流通容器内で混合酒を二次発酵させる(図6のステップS4)。そして、この発酵工程によって、清酒に炭酸ガスを含有させた発泡性清酒が得られる。
【0057】
ステップS4における流通容器内で混合酒を二次発酵させる具体的な手法としては、貯留パック10内に混合酒が密閉された流通容器100内で該混合酒を二次発酵させる。詳しくは、上記の流通容器100を室温(5℃~15℃程度)で数日間安置する。そして、その後に流通容器100を冷蔵庫内に移動させ所定の低温状態(例えば、5℃以下)におくことで、二次発酵を停止させる。なお、この発酵工程において、貯留パック10内の液体圧力を計測してもよい。そして、計測された圧力に基づいて、清酒に含有する炭酸ガス量を算出してもよい。この場合、貯留パック10内の液体圧力が予め定められた所定値以上となると(該圧力に基づいて算出される上記の炭酸ガス量が所定量以上となると)、流通容器100が所定の低温状態にされる。
【0058】
発酵工程では、酵母発酵により炭酸ガスが発生する。そして、この炭酸ガスが清酒に溶け込むことで発泡性清酒が得られる。ここで、酵母発酵により発生した炭酸ガスは、貯留パック10内の圧力が高いほど清酒に溶け込むガス量が多くなる傾向がある。詳しくは、炭酸ガスが発生した瞬間において貯留パック10内に液体(清酒)と気体(炭酸ガス)が存在することになるが、本実施形態では、貯留パック10内が大気圧よりも高い圧力(例えば、上記の密封圧力)にされているため、貯留パック10内が大気圧の場合と比較して多くの炭酸ガスが清酒に溶け込むことになる。従来の発酵工程によれば、酵母発酵により発生した炭酸ガスは、発酵期間中にある程度清酒から抜けてしまう事態が生じ得る。これに対して、本願開示の発泡性清酒の製造方法によれば、貯留パック10内が大気圧よりも高い圧力にされているため、酵母発酵により発生した炭酸ガスが発酵期間中に清酒から抜けてしまう事態が可及的に抑制される。
【0059】
また、上述したように、流通容器100内に製造された発泡性清酒は、その容器のまま流通され所定の清酒サーバーに取り付けられることで、流通容器100内に製造された発泡性清酒が消費者に提供される。そして、この流通過程においても、貯留パック10内が大気圧よりも高い圧力にされているため、酵母発酵により発生した炭酸ガスが消費者に提供されるまでに清酒から抜けてしまう事態が可及的に抑制され、以て、消費者に対して発泡性清酒本来の味などを提供することができる。
【0060】
以上に述べた発泡性清酒の製造方法によれば、容器内での発酵により発生させた炭酸ガスについて、発泡性清酒から該炭酸ガスが抜けてしまう事態を可及的に抑制することができる。
【0061】
(第4の実施形態)
第4の実施形態に係る発泡性清酒の注出方法について、図9を参照しながら説明する。図9は、本実施形態における発泡性清酒の注出方法のステップの一例を示すフロー図である。なお、本願開示では、発泡性清酒が貯留された軟質包材の第1容器(貯留パック10)と、前記第1容器を包含するとともに、該第1容器の周囲に所定の流体を密封可能に構成された第2容器(圧力容器20)と、前記第2容器内の前記第1容器の周囲に前記流体を供給する供給手段(流体供給ポンプ40)と、前記第1容器に貯留された発泡性清酒を注出する注出ノズル(注出ノズル50)と、前記注出ノズルを流通する発泡性清酒の流量を検出する流量センサ(後述する流量センサ60)と、を備えた清酒サーバー(清酒サーバー1)から発泡性清酒が注出される。なお、上記の第1容器および第2容器は、第3の実施形態で述べた流通容器100によって実現される。
【0062】
<注出ノズルの注出口を開口するステップ>
図9に示す発泡性清酒の注出方法においては、先ず、注出ノズルの注出口を開口する(図9のステップS11)。そして、このステップによって、注出ノズルから発泡性清酒が注出されることになる。
【0063】
ここで、本実施形態では、第3の実施形態で述べた流通容器100が清酒サーバーに取り付けられる。図10は、本実施形態における清酒サーバーの概略構成を示す図である。図10に示すように、清酒サーバー1は、発泡性清酒が貯留された貯留パック10と、該貯留パック10の周囲に空気が密封された圧力容器20と、流通容器100を収容する冷蔵庫30と、圧力容器20内の貯留パック10の周囲に空気を供給する流体供給ポンプ40と、圧力容器20内の圧力によって押し出される発泡性清酒を注出する注出ノズル50と、注出ノズル50を流通する発泡性清酒の流量を検出する流量センサ60と、を備える。
【0064】
流体供給ポンプ40は、圧力容器20内の貯留パック10の周囲に空気を供給する装置であって、流体供給ポンプ40の吐出口と、アダプタ21に設けられた逆止弁43とが、チューブ42によって繋がれることによって、チューブ42および逆止弁43を介して、流体供給ポンプ40から吐出された空気が圧力容器20内の貯留パック10の周囲に供給される。これにより、圧力容器20内の圧力が大気圧よりも高い所定の圧力にされる。また、注出ノズル50は、レバー51の操作により該ノズルの注出口が開閉可能にされる。更に、注出ノズル50は、貯留パック10内に連通されたチューブ11を介して、貯留パック10に貯留された発泡性清酒が流通可能となるように構成されている。
【0065】
そして、図9に示す発泡性清酒の注出方法におけるステップS11では、ユーザによるレバー51の操作によって、注出ノズル50の注出口が開けられると、圧力容器20内の圧力を受けて貯留パック10が収縮し、該貯留パック10内の発泡性清酒が押し出されることで、注出ノズル50から発泡性清酒が注出される。
【0066】
<圧力容器に流体を供給するステップ>
図9のステップS11において、注出ノズル50から注出された発泡性清酒の量に応じて貯留パック10が収縮すると、その収縮の度合いに応じて圧力容器20内の圧力が低下する。ここで、本実施形態における清酒サーバー1では、圧力容器20内の圧力により貯留パック10を外側から圧縮することで、炭酸ガスが清酒から抜けてしまう事態を可及的に抑制している。したがって、圧力容器20内の圧力が低下すると、炭酸ガスが清酒から抜け易くなる虞がある。
【0067】
そこで、本実施形態では、圧力容器に流体を供給する(図9のステップS12)。詳しくは、図9のステップS12では、圧力容器20内の圧力が大気圧よりも高い所定の圧力に維持されるように、流量センサ60の出力値に基づいて算出される注出ノズル50からの発泡性清酒の注出量に応じた量の空気を、流体供給ポンプ40によって、圧力容器20内の貯留パック10の周囲に供給する。そうすると、注出ノズル50から発泡性清酒が注出されても圧力容器20内の圧力が低下せず、貯留パック10が所定の圧力で外側から圧縮され続けることになるため、炭酸ガスが清酒から抜けてしまう事態が可及的に抑制される。
【0068】
ここで、本実施形態に係る清酒サーバー1は、圧力調整装置を更に備える。圧力調整装置は、流量センサ60の出力値に基づいて、流体供給ポンプ40の作動を制御する制御装置であって、CPU、RAM、ROM等から構成される電子制御ユニットを有する。CPUは、演算処理装置である。RAMは、CPUによって実行されるプログラムや、当該制御プログラムが利用するデータが展開されるメモリである。ROMは、CPUにおいて実行されるプログラムや、当該制御プログラムが利用するデータが記憶される装置である。
【0069】
圧力調整装置は、流量センサ60の出力値を取得する。そして、取得した出力値に基づいて、注出ノズル50からの発泡性清酒の注出量を算出する。ここで、圧力調整装置のROMには、注出ノズル50からの発泡性清酒の注出量と、それに応じた圧力容器20への空気の供給量と、の相関が、マップまたは関数として記憶されている。圧力調整装置は、この相関に基づいて流体供給ポンプ40の必要作動時間を算出し、流体供給ポンプ40に対して作動指令を送信する。その結果、流量センサ60の出力値に基づいて算出される注出ノズル50からの発泡性清酒の注出量に応じた量の空気が、流体供給ポンプ40によって、圧力容器20内の貯留パック10の周囲に供給され、圧力容器20内の圧力が大気圧よりも高い所定の圧力に維持されることになる。
【0070】
なお、本実施形態では、冷蔵庫30内の空気が圧力容器20内の貯留パック10の周囲に供給される。これによれば、所定の低温に保持された冷蔵庫30内の冷気が、圧力容器20内の貯留パック10の周囲に供給されることになるため、貯留パック10内の発泡性清酒を十分に冷却することができ、清酒本来の味と香を再現することが可能となる。また、貯留パック10内の発泡性清酒を低温に保持することで、発泡性清酒に含まれる炭酸ガスの圧力をコントロールし易くなる。
【0071】
以上に述べた発泡性清酒の注出方法によっても、発泡性清酒から炭酸ガスが抜けてしまう事態を可及的に抑制することができる。
【符号の説明】
【0072】
1・・・・・清酒サーバー
10・・・・貯留パック
20・・・・圧力容器
30・・・・冷蔵庫
40・・・・流体供給ポンプ
50・・・・注出ノズル
60・・・・流量センサ
100・・・流通容器
200・・・タンク
300・・・ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10