(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】櫛目ごて
(51)【国際特許分類】
E04F 21/16 20060101AFI20240215BHJP
【FI】
E04F21/16 E
(21)【出願番号】P 2021126686
(22)【出願日】2021-08-02
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】591051209
【氏名又は名称】株式会社日本陶業
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】猪子 博次
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-060217(JP,A)
【文献】実開昭51-034214(JP,U)
【文献】実開昭61-098577(JP,U)
【文献】独国実用新案第202012011049(DE,U1)
【文献】独国実用新案第202009004665(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 21/16
B05C 7/00-21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
こて板の側縁に一定の間隔で櫛歯を設けた、櫛目ごてであって、
隣り合う前記櫛歯の間から、前記櫛歯に対して所定の角度をつけて立ち上げる角度規定片と、
前記角度規定片の先端から、前記櫛歯と略平行に立ち上げる爪と、を有する、
櫛目ごて。
【請求項2】
こて板に固定可能な固定板を有し、
前記固定板に前記角度規定片を設けることを特徴とする、
請求項1に記載の櫛目ごて。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、櫛目ごてに関し、特に接着剤によりタイルを張りつける際に用いる櫛目ごてするものである。
【背景技術】
【0002】
壁面をタイル張りで仕上げた建物は高級感があり人気である。
近年、壁面にタイルを配置する工法としては、壁面に接着剤を塗布し、接着剤面にタイルを張り付ける接着剤張りタイル工法が広く普及してきている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
日本建築学会の「建築工事標準仕様書・同解説 JASS19 陶磁器質タイル張り工事」では、接着剤によるタイル貼り工事を行う際には、櫛目ごてを使用し、かつ接着剤の塗布量を確保するために、壁面に対して櫛目ごてを60°の角度を保ってくし目を付けることが規定されている。
しかし、従来の櫛目ごてには角度の目安とするものがないため、壁面に対する櫛目ごての角度は職人の技量に依るところとなり、職人次第で品質にばらつきが生じ易いという問題があった。
【0004】
本発明は、職人の技量に依らず、可視化することにより高い精度で品質の均一を確保することができる櫛目ごてを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためになされた本願発明は、こて板の側縁に一定の間隔で櫛歯を設けた、櫛目ごてであって、隣り合う前記櫛歯の間から、前記櫛歯に対して所定の角度をつけて立ち上げる角度規定片と、前記角度規定片の先端から、前記櫛歯と略平行に立ち上げる爪と、を有する、櫛目ごてを提供する。
こて板に固定可能な固定板を有し、前記固定板に前記角度規定片を設けてもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、上記した課題を解決するための手段により、次のような効果の少なくとも一つを得ることができる。
(1)櫛歯に対して所定の角度を付けた角度規定片によって、壁面に対して櫛目ごてを所定の角度を合わせることができる。
(2)櫛目ごての角度が所定の角度の場合、角度規定片の先端から立ち上げた爪が接着剤の表面に溝を形成するため、櫛目ごての角度を所定の角度に保つことができる。
(3)溝によって、櫛目ごての角度が所定の角度に保たれていることが分かるため、職人の技量に依らず、可視化することにより高い精度で品質の均一を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】本発明の櫛目ごての櫛歯と角度規定片の拡大図
【
図6】その他の実施例にかかる本発明の櫛目ごての斜視図
【
図7】本発明の櫛目ごての櫛歯と角度規定片の拡大図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0009】
<1>全体構成
本発明の櫛目ごては、
図1に示すように、鋼板からなるこて板1、こて板1の右側縁と上縁から等間隔に突設する櫛歯2、こて板1の右側縁の隣り合う櫛歯2間から立ち上がる角度規定片3、こて板1の中央に設けたリブと支柱からなるこて首4及びこて首4の先端に設ける把柄5からなる。
【0010】
<2>櫛歯
櫛歯2は、高さ5mm、幅5mmの平面視矩形の板状である。隣り合う櫛歯2の間隔は5mmとする。
【0011】
<3>角度規定片
角度規定片3は、隣り合う櫛歯2間から立ち上がる板状の部材である(
図3)。
角度規定片3は、櫛歯2に対して60°の角度で立ち上げるが、これは後述する接着剤塗布時の壁面に対してこて板1を保ちたい角度であり、各規定に合わせて変えてもよい。
角度規定片3の先端中央には、所定の幅の爪31を突設する。
爪31は、櫛歯2と略平行に突設する。
なお、本実施例においては、角度規定片3は、こて板1の右側縁の長辺の全ての櫛歯2間に設けたが、職人が施工時に確認しやすい手前側(後端側)の一箇所のみや、先端と中央と後端の三箇所、短辺の櫛歯2間等、適宜、角度規定片3を設ける位置を定めることができる。
【0012】
<4>角度が規定通りの場合
接着剤6を壁面7に塗布する時、JASS19の規定に合わせてこて板1を壁面7に対して60°とすると、櫛歯2が60°の角度で壁面7に当接する(
図3(a))。このとき、角度規定片3は櫛歯2に対して60°の角度で立ち上がるため、角度規定片2と壁面7は平行となる。そして、60°の角度を保ってこて板1を動かすと、JASS19の規定どおり、幅w(本実施例においては5mm)、厚さt(本実施例においては、約4.33mm)で接着剤6が壁面7に塗られることとなる(
図3(b))。
本発明の櫛目ごては、角度規定片3の先端に、櫛歯2と平行な爪31を有する。このため、幅Wで塗られた接着剤6の中央に、爪31によって溝Gが形成される。このように溝Gが形成されていれば、こて板1は壁面7に対して60°の角度が保たれていることとなる。
【0013】
<5>角度が規定通りではない場合
こて板1の壁面Wに対する角度がJASS19の規定の60°よりも小さい、例えば50°の場合(
図4(a))、幅W(本実施例においては5mm)、厚さは櫛歯2の谷の位置が壁面7に近づくため、規定のt(本実施例においては、約4.33mm)よりも低いt1で接着剤6が壁面7に塗られることとなる(
図4(b))。このとき、角度規定片3は壁面7から離れる方向となり、爪31が接着剤6から離れてしまうため、溝Gは形成されない。
また、こて板1の壁面7に対する角度がJASS19の規定の60°よりも大きい、例えば70°の場合(
図5(a))、角度規定片3と爪31が櫛歯2の谷よりも壁面7に近づいてしまうため、接着剤6に角度規定片3と爪31が接着剤6を押さえつけることで、幅w(本実施例においては5mm)よりも大きなW1、厚さは規定のt(本実施例においては、約4.33mm)よりも低いt2で接着剤6が壁面に塗られることとなる(
図4(b))。このとき、溝Gは形成されるが、上面が角度規定片3により押さえつけられているため、幅方向の側面が不均一となる。
このように、接着剤6の幅方向の見た目や、溝Gの有無によって、櫛目ごての角度が所定の角度に保たれていることが分かるため、職人の技量に依らず、可視化することにより高い精度で品質の均一を確保することができる。
【0014】
[その他の実施例]
<1>固定板による角度規定片の固定
上述の実施例においては、角度規定片3はこて板1と一体に設けたが、こて板1の表面に貼りつける固定板8に角度規定片3を設けてもよい(
図6、7)。
固定板8に角度規定片3を設けることで、従来の櫛目ごてに角度規定片3を後付けすることができる。
【符号の説明】
【0015】
1 こて板
2 櫛歯
3 角度規定片、31 爪
4 こて首
5 把柄
6 接着剤
7 壁面
8 固定板