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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】コークス炉炉蓋
(51)【国際特許分類】
   C10B 25/16 20060101AFI20240215BHJP
【FI】
C10B25/16
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021149763
(22)【出願日】2021-09-14
(65)【公開番号】P2023042461
(43)【公開日】2023-03-27
【審査請求日】2022-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】521406167
【氏名又は名称】瓜生 博一
(74)【代理人】
【識別番号】110003122
【氏名又は名称】弁理士法人タナベ・パートナーズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瓜生 博一
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-258646(JP,A)
【文献】特開平07-258643(JP,A)
【文献】実開平02-053954(JP,U)
【文献】特開2004-107444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 25/16
C10B 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉の炭化室の開口部に取付けられるコークス炉炉蓋であって、
炉蓋本体に取付けられるシールプレートと、
前記シールプレートの外周部に取付けられ、前記コークス炉の炉枠を押圧可能なナイフエッジと、
前記シールプレートの前記炭化室側の面において前記ナイフエッジよりも内側の周上に取付けられ、前記炭化室から前記ナイフエッジの周辺への石炭の流入を防止するための流入防止板と、
を有し、
前記流入防止板は、前記炉枠との間に所定の隙間を設けた状態で、前記シールプレートにおいて前記ナイフエッジよりも内側の周上全体のうち、前記炭化室の上方空間に面する位置を除いた位置に取付けられることを特徴とするコークス炉炉蓋。
【請求項2】
前記流入防止板には、更に、前記炭化室内で発生してガス道に導かれたガスが通過可能なサイズのスリット部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコークス炉炉蓋。
【請求項3】
前記流入防止板は、前記炉枠の内縁近傍に向かって取付けられることを特徴とする請求項1に記載のコークス炉炉蓋
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉において炭化室の開口部に設置されるコークス炉炉蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コークス炉において、炭化室の窯口(以下、「開口部」ともいう。)にはコークス炉炉蓋(以下、単に「炉蓋」ともいう。)が設置されている(例えば、特許文献1参照)。この炉蓋が炭化室を外気から遮断し、炭化室への外気の流入を防ぐとともに、炭化室内で石炭乾留時に発生する硫黄・コールタール・ピッチ等を含む石炭由来のガスが外部に流出するのを防いでいる。
【0003】
図9は、従来のコークス炉炉蓋のガスシール機構の一例を示す断面図である。
【0004】
図9に示す炉蓋100は、シールプレート110、ナイフエッジ120、耐火物130等を備え、炭化室300の開口部300Aに設置される。なお、ここでの開口部300Aは、炭化室300内で製造されるコークスの押出側又は排出側の開口部である。
【0005】
シールプレート110は、開口部300Aを外気から遮断し密閉するためのダイヤフラムである。ナイフエッジ120は、シールプレート110の外周部に溶接固定され、その刃先が炉枠400に押付けられてシールプレート110による密閉を確実にするためのものである。耐火物130は、炭化室300において石炭乾留時に炉蓋100の前面(図9では、下方の面)を高熱から断熱保護する耐熱煉瓦である。
【0006】
図9に示すように、耐火物130と開口部300Aとの間のガス道Rには、最低限の隙間Cが設けられている。これは、炉蓋100の装脱時に炉蓋100が上下方向に傾いた場合、左右方向に位置ずれした場合又は炉蓋100や炉枠400が湾曲した場合であっても、炉蓋100の装脱を確実に行うためである。この隙間Cは例えば約20~30mm程度である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】特開2004-107444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、従前このようなコークス炉で使用される石炭は外国から輸入される高品質なものが多かったが、最近では希少化、コスト高等により低品質なものへの見直し・検討が進められている。また、低品質な石炭から高品質なコークスを製造するために、石炭調湿・予熱乾燥・特殊添加剤配合等の特殊技術が採用されるようになってきている。例えば従来の石炭の水分含有率は7~14%程度であったが、最近では0~4%程度に調湿されている。
【0009】
これにより、石炭の流動性が向上するようになったが、一方で、炭化室300の内部で発生するガスの圧力が2000mmaq前後に上昇、すなわち従前のガス圧力(400~600mmaq)よりも大幅に増圧し、各種の問題が発生するようになった。
【0010】
図10は、従来のコークス炉炉蓋のガスシール機構におけるガス道の閉塞状況を示す断面図である。図11は、従来のコークス炉炉蓋のガスシール機構において炉枠とナイフエッジ間に発生する隙間を示す図である。図11では、図10の矢印Lの方向から炉蓋100を見た図を示している。
【0011】
なお、以下の説明においては、図9と同様の構成要素については同一の符号を付して重複する説明を適宜省略する。
【0012】
図10に示すように、ガス道Rを通って炉蓋100側に流出した石炭やコールタールの流動体Fがシールプレート110とナイフエッジ120の周辺に燃結固着し、さらにナイフエッジ120の押付圧により流動体Fの圧密も増大し、ガス道R1を閉塞している。これにより、ガスの逃げ道がなくなり、炭化室300内の圧力上昇が顕著になる。また、炭化室300内の圧力上昇や炉内の熱の影響により、図10の第一領域110aに示すように、シールプレート110の変形(弾性変形を経て塑性変形)が発生し、更に、第一領域110aや、シールプレート110とナイフエッジ120の溶接接合面である第二領域110bにクラックが発生する危険性が生じてしまう。
【0013】
また、ナイフエッジ120が炉枠400を押圧する部分にまで石炭固化物が生成され、ナイフエッジ120が炉枠400を十分に押圧できなくなる。その結果、図11に示すように、ナイフエッジ120と炉枠400との間に隙間C1が発生する。
【0014】
そうすると、この隙間C1からガス漏れが発生してしまい、環境面での問題になっていた。一方で、隙間C1から炭化室300内に空気が流入することにもなり、炭化室300内の石炭が空気に触れて酸化劣化したり、化学反応で品質が低下したりする問題があった。また、空気の流入は炭化室300における炉壁損傷の原因にもなっていた。
【0015】
これらの問題に対し、炉蓋100を取外す度にガス道を自動クリーナーによって除去したり、炉蓋100を取外したオフライン状態で人手により除去作業を行ったりする方法がある。しかしながら、石炭が高温固化しているため完全除去は難しく、長い除去時間を要するため、生産性の低下、労働作業面での問題が生じていた。
【0016】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであって、簡易な構成により、炭化室からナイフエッジ周辺への石炭の流入及びナイフエッジ周辺における石炭の燃結固着を防止するとともに、ガス道を確保可能なコークス炉炉蓋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するために、本発明に係るコークス炉炉蓋は、コークス炉の炭化室の開口部に取付けられるコークス炉炉蓋であって、炉蓋本体に取付けられるシールプレートと、前記シールプレートの外周部に取付けられ、前記コークス炉の炉枠を押圧可能なナイフエッジと、前記シールプレートの前記炭化室側の面において前記ナイフエッジよりも内側の周上に取付けられ、前記炭化室から前記ナイフエッジの周辺への石炭の流入を防止するための流入防止板と、を有し、前記流入防止板は、前記炉枠との間に所定の隙間を設けた状態で、前記シールプレートにおいて前記ナイフエッジよりも内側の周上全体のうち、前記炭化室の上方空間に面する位置を除いた位置に取付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、簡易な構成により、炭化室からナイフエッジ周辺への石炭の流入及びナイフエッジ周辺における石炭の燃結固着を防止するとともに、ガス道を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態に係るコークス炉炉蓋の構成例を示す断面図である。
図2】本実施形態に係るコークス炉炉蓋を側面から見た図である。
図3図2の断面SSを正面から見た図である。
図4】本実施形態に係る流入防止板の第1具体例を示す断面図である。
図5】本実施形態に係る流入防止板の第1具体例の変形例を示す断面図である。
図6】本実施形態に係る流入防止板の第2具体例を示す断面図である。
図7】本実施形態に係る流入防止板の第2具体例の変形例を示す断面図である。
図8】本実施形態に係る流入防止板の第3具体例を示す断面図である。
図9】従来のコークス炉炉蓋のガスシール機構の一例を示す断面図である。
図10】従来のコークス炉炉蓋のガスシール機構におけるガス道の閉塞状況を示す断面図である。
図11】従来のコークス炉炉蓋のガスシール機構において炉枠とナイフエッジ間に発生する隙間を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0021】
図1は、本実施形態に係るコークス炉炉蓋の構成例を示す断面図である。図2は、本実施形態に係るコークス炉炉蓋を側面から見た図である。図3は、図2の断面SSを正面から見た図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係る炉蓋1は、炉蓋本体11、耐火物12、シールプレート13、スライドプレート14、ナイフエッジ15、冷却空間16、圧接ロッド17、調整ネジ18、皿バネ19、炉蓋閂20、流入防止板21等を有し、炭化室30の開口部30Aに設置される。なお、ここでの開口部30Aは、炭化室30内で製造されたコークスを押出側又は排出側の開口部分である。
【0023】
炉蓋1は、炭化室30の開口部30Aに取付けられる装脱式の蓋である。この炉蓋1は炭化室30を外気から遮断し、炭化室30内で発生した石炭由来のガスが外部に流出しないように密閉する。この炉蓋1は、炭化室30からコークスを取り出す際に脱着される。
【0024】
炉蓋本体11は、炉蓋1の本体部分であり、スライドプレート14を介して耐火物12やシールプレート13等が取付けられる鋳鉄製の剛性体フレームである。
【0025】
耐火物12は、炉蓋本体11に取付けられる耐熱煉瓦であり、炉蓋本体11を石炭乾留時の高熱から断熱保護する。併せて、炭化室30の内部温度を保持し、石炭乾留に要する熱量の低減に寄与する。
【0026】
シールプレート13は、スライドプレート14を介して炉蓋本体11に取付けられるダイヤフラムである。このシールプレート13と後述するナイフエッジ15とにより、炭化室30の開口部30Aは密閉される。このシールプレート13は柔軟に湾曲する部材、例えばSUSで形成される。これにより、炉枠40に曲りや前後方向の変位が生じた場合であっても、ナイフエッジ15が炉枠40に密着するよう圧接ロッド17でナイフエッジ15を追従させ、炭化室30の密閉性を確保することができる。なお、図1に示すシールプレート13は段差なしのフラットタイプであるが、このタイプに限定されるものではない。段差ありのプレスタイプであっても良い。
【0027】
ナイフエッジ15は、シールプレート13の外周部に溶接固定され、圧接ロッド17を介して炉蓋本体11に取付けられる。このナイフエッジ15の刃先は炉枠40を押圧可能であり、刃先が炉枠40に押付けられることによって、シールプレート13による炭化室30の密閉を確実なものにする。また、ナイフエッジ15は炉枠40に付着した異物をその刃先で切断する。このナイフエッジ15は、高張力鋼板(ハイテン鋼)、SUS、ジュコール鋼等で形成され、剛性が要求される。
【0028】
冷却空間16は、シールプレート13の裏面と炉蓋本体11との間に設けられた空気冷却スペースである。この冷却空間16が設けられることによって、炭化室30の内部熱によって生じる炉蓋本体11の熱変形を防止することができる。
【0029】
圧接ロッド17は、ナイフエッジ15の圧接力を調整するためのネジである。調整ネジ18は、炉蓋本体11と耐火物12、シールプレート13及びスライドプレート14との位置を調整するためのネジである。皿ばね19は、炭化室30内の石炭からの押圧(図中、W)、石炭のガス圧(図中、P)、ナイフエッジ15の押圧の反作用の力(図中、f)を足し合わせた力と釣り合う力(図中、F)を、炉蓋本体11から炭化室30側に付与する。
【0030】
炉蓋閂20は、炉側に設けられた専用のブラケット20Aに係合し、炉蓋1を炭化室30側に押付け支持するための固定バーである。
【0031】
流入防止板21は、シールプレート13の炭化室30側の面においてナイフエッジ15よりも内側(炉枠40の内縁近傍)の周上に、溶接・ネジ・リベット等によって固定設置される。この流入防止板21が取付けられることによって、炭化室30からナイフエッジ15の周辺への石炭の流入及びナイフエッジ15周辺における石炭の燃結固着を防止することができる。
【0032】
また流入防止板21は、炉枠40との間に所定の微小な隙間を設けた状態で取付けられる(図4等参照)。この隙間を介して、石炭由来のガスのみが炭化室30からナイフエッジ15側に透過可能である。すなわち、炭化室30内で発生してガス道Rに導かれたガスを、ナイフエッジ15と流入防止板21とで囲まれたガス道R1に導くことができる。
【0033】
更に流入防止板21は、図2及び図3の点線で示すように、具体的にはナイフエッジ15よりも内側の周上全体のうちの炭化室30の上方空間31に面する位置31Aを除いた位置において取付けられている。すなわち、鉛直方向上部を開放した態様で部分的に取付けられている。そのため、ガス道R1に導かれたガスは炉蓋1の上方、すなわち図3の矢印方向に導かれ、その後炭化室30の上方空間31に誘引される。炭化室30の上方空間31に誘引されたガスは、上方空間31に設けられた上昇管32を通り、吸引、集積されて、化成工場で処理後、化成品や熱源等として活用される。これにより、コークス炉外部へのガス漏れを防止することができる。
【0034】
炉枠40は、炭化室30側に形成される金型であって、ナイフエッジ15が押付けられることで炉蓋1とのシール部分を構成する。
【0035】
以上に示す構成により、本実施形態に係る炉蓋1では、流入防止板21が、炭化室30からナイフエッジ15への石炭の流入を防止するとともに、炉枠40との間の微小な隙間を介して石炭由来のガスのみを透過させる。このような簡易な構成により、ナイフエッジ15周辺への石炭の流入及びナイフエッジ15周辺における石炭の燃結固着を防止するとともに、ナイフエッジ15と流入防止板21との間のガス道R1を確実に確保することができる。これに伴い、流入防止板21はシールプレート13の熱変形を防止することができ、ナイフエッジ15からのガス漏れ(図11参照)も防止することができる。更に、流入防止板21は補強材としても好適である。
【0036】
[流入防止板の第1具体例]
図4は、本実施形態に係る流入防止板の第1具体例を示す断面図である。図4では、図1の領域Aを拡大して示している。
【0037】
図4に示す流入防止板21は、薄い板厚のSUS板等を略T字状に折曲して重ね合わせたものを、溶接・ネジ・リベット等によりシールプレート13に固定したものである。略T字状に折曲して重ね合わせることによって、薄い板厚の流入防止板21の強度を向上させるとともに、炭化室30の内部熱による流入防止板21の熱変形を防ぐことができる。
【0038】
また流入防止板21は、シールプレート13から炉枠40の内縁近傍40aの位置に向かって取付けられている。これは、ガス道R1を可能な限り広く確保できる位置で炭化室30からナイフエッジ15への石炭の流入を防止するためである。
【0039】
また、流入防止板21のシールプレート13下面からの突き出し量(図中の流入防止板21の縦長)は、ナイフエッジ15のシールプレート13下面からの突き出し量よりも短く構成されている。すなわち、流入防止板21と炉枠40との間には微小の隙間が設けられている。この隙間は、石炭の粒度に応じて設定され、石炭が流入できず且つ石炭由来のガスのみが透過可能な程度の隙間であり、例えば下限値を1mm程度とし、2mm前後であることが好ましい。但し、隙間の幅はこれら具体的数値に限定されるものではない。また流入防止板21は、耐熱性に優れ、石炭やタールの付着しにくい材料や熱膨張率が小さい材料、例えばSUS等のシールプレート13と同じ材質であることが好ましい。流入防止板21とシールプレート13とを同じ材質にすることによって、熱膨張率の違いによる両者間の歪み等の発生を防止することができる。
【0040】
図5は、本実施形態に係る流入防止板の第1具体例の変形例を示す断面図である。
【0041】
図5では、図4に示す段差なしのフラットタイプのシールプレート13の代わりに、段差ありのプレスタイプのシールプレート13aを設けた場合を示している。このようにシールプレート13、13aの形態は各種態様をとることができる。なお、シールプレート以外の各構成要素の構成及び作用は前述と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0042】
[流入防止板の第2具体例]
図6は、本実施形態に係る流入防止板の第2具体例を示す断面図である。図6では、図1の領域Aを拡大して示している。
【0043】
図6に示す流入防止板21aは、第1具体例に係る流入防止板21と異なり、薄い板厚のSUS板等を略T字状且つ下方が略円状の態様で折曲して重ね合わせたものを、溶接・ネジ・リベット等によりシールプレート13に固定したものである。また流入防止板21aは、シールプレート13から炉枠40の内縁近傍40aのやや内側の位置に向かって取付けられている。
【0044】
このように流入防止板21aの形状や取付位置は、前述の第1具体例に示す形状や取付位置に限定されるものではなく、例えば第2具体例に示す形状や取付位置であっても良い。また、ナイフエッジ15周辺への石炭の流入及びナイフエッジ15周辺における石炭の燃結固着を防止するとともに、ナイフエッジ15と流入防止板21aとの間のガス道R1を確実に確保するという効果を奏する上では、その他の形状、取付位置並びに板厚であっても良い。例えば、図4図6に示すように薄板を折曲して重ね合わせることなく、一枚の厚板、すなわち流入防止板21、21aよりも厚い板厚でL字状等の形状の流入防止板を設けても良い。同様に、流入防止板21、21aの材質についてもSUSに限定されるものではない。
【0045】
図7は、本実施形態に係る流入防止板の第2具体例の変形例を示す断面図である。
【0046】
図7では、図6に示す段差なしのフラットタイプのシールプレート13の代わりに、段差ありのプレスタイプのシールプレート13aを設けた場合を示している。すなわち、前述の第1具体例の変形例と同様に、シールプレート13、13aの形態は各種態様をとることができる。
【0047】
[流入防止板の第3具体例]
図8は、本実施形態に係る流入防止板の第3具体例を示す断面図である。図8では、図1の領域Aを拡大して示している。
【0048】
図8では、前述の図5図7に示す変形例と同様に、段差ありのプレスタイプのシールプレート13bが設けられている。但し、このシールプレート13bは、図5図7に示す変形例と異なり、段差部分13cが炉枠40の内縁近傍40aに位置するよう設置される。
【0049】
また図8に示す流入防止板21bは、前述の流入防止板21、21aと異なり、3.0~4.0mm程度の板厚の一枚の厚板により構成されるSUS板等を溶接等により段差部分13cの側壁に固定したものである。この流入防止板21bの炉枠40側にはスリット部21cが形成されていることが好ましい。このスリット部21cは、炭化室30内で発生してガス道Rに導かれたガスを、ナイフエッジ15と流入防止板21とで囲まれたガス道R1に導き、併せて炉枠40との追従性向上を図るためのものである。なお、前述の流入防止板21(図4参照)等と同様に、流入防止板21bと炉枠40との間には微小の隙間が設けられている。この隙間は、石炭の粒度に応じて設定され、石炭が流入できず且つ石炭由来のガスのみが透過可能な程度の隙間であり、例えば下限値を1mm程度とし、2mm前後であることが好ましい。但し、隙間の幅はこれら具体的数値に限定されるものではない。
【0050】
このような第3具体例に係る流入防止板21bによれば、ナイフエッジ15周辺への石炭の流入及びナイフエッジ15周辺における石炭の燃結固着を防止するとともに、ナイフエッジ15と流入防止板21bとの間のガス道R1をできるだけ広くすることができ且つ確実に確保するという効果を奏する。また、流入防止板21bはシールプレート13の熱変形を防止することができ、ナイフエッジ15からのガス漏れ(図11参照)も防止することができる。更に、流入防止板21bは補強材としても好適である。なお、前述と同様に、流入防止板21bの材質はSUSに限定されるものではない。
【0051】
以上説明してきたように、本実施形態に係る炉蓋1によれば、簡易な構成により、ナイフエッジ15周辺への石炭の流入及びナイフエッジ15周辺における石炭の燃結固着を防止することができる。また、ナイフエッジ15と流入防止板21、21a、21bとの間のガス道R1を確実に確保し、炭化室30内で発生するガスを炉蓋1の上方に上昇させ炭化室30の上部空間31に誘引し、炉蓋1から外部へのガス漏れを防止することができる。すなわち、従来よりもガスシール性の向上に優れたシール機構を実現することができる。
【0052】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものであり、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0053】
例えば、上記実施形態においては、流入防止板21が炉枠40との間に隙間を設けた状態で取付けられる形態について説明を行ったがこの場合には限らない。例えば、流入防止板21と炉枠40との間の隙間を押圧等により設けることなく、流入防止板21にガスのみが通過可能なサイズのスリットを設ける構造としてもよい。
【0054】
また例えば、図8に示す例では、段差ありのシールプレート13bの段差部分13cの側壁に流入防止板21bを取り付ける形態について説明を行ったが、この場合には限らない。例えば、シールプレート13bのうち段差部分13cより内側の部分を段差なし(又は段差あり)のシールプレートに置き換えるとともに、シールプレート13bのうち段差部分13cより外側の部分と流入防止板21bとナイフエッジ15とを一体化させた枠体として構成してもよい。この場合、置き換えられたシールプレートと枠体とは溶接等により固定されることとなる。
【0055】
この場合、シールプレート製作時の特殊加工・溶接等の加工負担や加工に係るコストを少なくし、シールプレートの剛性を下げつつ炉枠40への追従性を向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0056】
1 炉蓋
11 炉蓋本体
13 シールプレート
15 ナイフエッジ
21、21a 流入防止板
30 炭化室
40 炉枠
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11