(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】核医学撮像装置
(51)【国際特許分類】
G01T 1/161 20060101AFI20240215BHJP
【FI】
G01T1/161 C
G01T1/161 A
(21)【出願番号】P 2021508928
(86)(22)【出願日】2020-03-05
(86)【国際出願番号】 JP2020009474
(87)【国際公開番号】W WO2020195685
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2019062544
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301032942
【氏名又は名称】国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】新田 宗孝
(72)【発明者】
【氏名】田島 英朗
(72)【発明者】
【氏名】山谷 泰賀
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/050496(WO,A1)
【文献】特開2001-159682(JP,A)
【文献】特開2016-080656(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109009198(CN,A)
【文献】国際公開第2008/035399(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00 - 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像対象物を囲む位置に配置される複数のコリメータ検出器と、前記撮像対象物との間で前記複数のコリメータ検出器をそれぞれ挟んで対向する位置に配置される複数のγ線検出部と、を有する複数の検出器ユニットを備え、
複数の前記検出器ユニットは、前記撮像対象物を挟んで対向する位置に配置される一対の前記検出器ユニットを少なくとも含み、
前記コリメータ検出器は、シンチレータ結晶素子からなるシンチレータブロックと、前記シンチレータブロックに取り付けられた光検出器と、を有し、
前記シンチレータブロックは、前記撮像対象物から出射したγ線が通過するホールを有し、
前記γ線検出部は、前記ホールを通過した前記γ線を検出
し、
前記コリメータ検出器は、複数層の前記シンチレータブロックが配列されたDOI(Depth Of Interaction)検出器である、
核医学撮像装置。
【請求項2】
撮像対象物を囲む位置に配置される複数のコリメータ検出器と、前記撮像対象物との間で前記複数のコリメータ検出器をそれぞれ挟んで対向する位置に配置される複数のγ線検出部と、を有する複数の検出器ユニットを備え、
複数の前記検出器ユニットは、前記撮像対象物を挟んで対向する位置に配置される一対の前記検出器ユニットを少なくとも含み、
前記コリメータ検出器は、シンチレータ結晶素子からなるシンチレータブロックと、前記シンチレータブロックに取り付けられた光検出器と、を有し、
前記シンチレータブロックは、前記撮像対象物から出射したγ線が通過するホールを有し、
前記γ線検出部は、前記ホールを通過した前記γ線を検出し、
前記シンチレータブロックを貫通する貫通孔の壁部に取り付けられた後付部を有し、
前記後付部は、前記シンチレータブロックの厚さ方向に対して傾斜する傾斜面を有し、
前記傾斜面は、前記ホールの内壁面の少なくとも一部を構成する
、
核医学撮像装置。
【請求項3】
前記シンチレータブロックは、複数の前記ホールを有する、
請求項1又は2に記載の核医学撮像装置。
【請求項4】
前記検出器ユニットは、前記撮像対象物から離れるに従って広がる台形状とされている、
請求項1~3のいずれか一項に記載の核医学撮像装置。
【請求項5】
前記コリメータ検出器は、他の核医学撮像装置に取り付け可能とされている、
請求項1~4のいずれか一項に記載の核医学撮像装置。
【請求項6】
前記光検出器は、前記ホールの径方向に沿ってシート状に広がった形状を有する、
請求項1~
5のいずれか一項に記載の核医学撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、PET検査及びSPECT検査を行う核医学撮像装置に関する。
本出願は、2019年3月28日の日本出願第2019-062544号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、核医学撮像装置としては、PET(Positron Emission Tomography)装置、及びSPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置が知られている。SPECT装置では、シングルフォトン放射性同位元素を含む放射性薬剤を被検体に投与し、核種から放出されるγ線をγ線検出器で検出する。PET装置では、ポジトロン放射性同位元素を含む放射性薬剤を被検体に投与し、核種から放出されるポジトロンによる消滅γ線をγ線検出器で検出する。
【0003】
特許文献1には、SPECT機能とPET機能とを持つ検出器が共通化されている核医学診断装置が記載されている。被検体には、シングルフォトンを放出する核種を用いた第1の薬剤と、ポジトロンを放出する核種とを用いた第2の薬剤とが投与される。核医学診断装置は、これらの薬剤の位置を同時に撮像する。この核医学診断装置は、複数のγ線検出器と、コリメータと、コリメータ位置検出手段と、同時計測手段とを備える。複数のγ線検出器は、環状に配置されると共に入射したγ線を電気信号に変換する。コリメータは、γ線検出器よりも被検体側において回転可能であると共にシングルフォトンの一部を遮蔽する。コリメータ位置検出手段は、コリメータの位置を検出する。同時計測手段は、複数のγ線検出器から同時に出力される電気信号を同時計測信号として出力する。
【0004】
核医学診断装置は、エネルギー弁別手段と、第1の位置特定手段と、第2の位置特定手段とを備える。エネルギー弁別手段は、複数の電気信号を、第1の薬剤から放出されるシングルフォトンに起因する第1の信号と、第2の薬剤から放出されるポジトロンに起因する第2の信号とに弁別する。第1の位置特定手段は、第1の信号及びコリメータの位置に基づいて第1の薬剤の位置を特定する。第2の位置特定手段は、上記同時計測信号及び第2の信号に基づいて第2の薬剤の位置を特定する。第1の位置特定手段が第1の薬剤の位置を特定し、第2の位置特定手段が第2の薬剤の位置を特定することにより、シングルフォトンを放出する核種を用いた第1の薬剤の位置、及びポジトロンを放出する核種を用いた第2の薬剤の位置の同時特定が行われる。
【0005】
特許文献2には、SPECT撮影及びPET撮影を行う2つの検出器を具備するガンマカメラシステムが記載されている。2つの検出器のそれぞれには、シングルフォトン核種から放出される低エネルギーのガンマ線をコリメートするコリメータが設けられている。SPECT撮影は所定の空間分解能で行われる。一方、PET撮影では、ポジトロン核種に起因して発生するガンマ線のうち入射角が大きいものがコリメータを透過しないことにより、検出器の中央付近に対する視野角が実質的に狭められる。そして、当該視野角と検出器の辺縁付近の視野角との差が小さくなる。その結果、検出器の中央付近と辺縁付近との検出感度の差が軽減されるので、PET撮影における広い視野の確保を図りつつ、SPECTとPETとの同時撮影を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2008/035399号公報
【文献】特開平11-72566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、PET撮影とSPECT撮影を同時に行う場合、SPECT装置においてPET核種から一対に放出される高エネルギーのγ線を低エネルギーのγ線とは別のものとして扱い、SPECTと同一の原理でコリメータを用いて撮像する方法が挙げられる。しかしながら、この方法では、PET核種から放出されるγ線のほとんどをコリメータにおいてカットするため、純粋なPET装置と比較して感度が低下するという問題が生じうる。この場合、必要な画質を得るための測定時間が長くなったり、投与する薬剤の量を増やさなければならなくなったりする問題が生じる。
【0008】
本開示は、PETの感度の低下を抑制することができると共に、PETとSPECTの同時計測を行うことができる核医学撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る核医学撮像装置は、撮像対象物を囲む位置に配置される複数のコリメータ検出器と、撮像対象物との間で複数のコリメータ検出器をそれぞれ挟んで対向する位置に配置される複数のγ線検出部と、を有する複数の検出器ユニットを備える。複数の検出器ユニットは、撮像対象物を挟んで対向する位置に配置される一対の検出器ユニットを少なくとも含む。コリメータ検出器は、シンチレータ結晶素子からなるシンチレータブロックと、シンチレータブロックに取り付けられた光検出器と、を有する。シンチレータブロックは、撮像対象物から出射したγ線が通過するホールを有し、γ線検出部は、ホールを通過したγ線を検出する。
【0010】
この核医学撮像装置では、コリメータ検出器がシンチレータ結晶素子からなるシンチレータブロックを有し、シンチレータブロックは撮像対象物から出射したγ線が通過するホールを有する。シンチレータブロックのホールを通過したγ線は、コリメータ検出器から見て撮像対象物の反対側に位置するγ線検出部によって検出される。コリメータ検出器ではPET計測を行う。コリメータ検出器のシンチレータブロックのホールを通過したγ線をγ線検出部で検出することにより、γ線の到来方向が決定されるので、SPECT計測を行うことができる。従って、PET核種の計測と、SPECT核種の計測とを同時に行うことができる。その結果、この核医学撮像装置ではPET計測及びSPECT計測を同時に行うことができるので、患者及び臨床現場の負担を軽減させることができる。この核医学撮像装置では、PET計測を行うことができるコリメータ検出器自体をSPECT核種計測のためのコリメータとして機能させる。これにより、従来の方法では必須であったPETの感度の低下を招くSPECT計測用のコリメータをPET計測を行う検出器の前方に追加で配置する必要がない。従って、PETの感度の低下を抑制することができる。
【0011】
前述した核医学撮像装置において、コリメータ検出器は、複数層のシンチレータブロックが配列されたDOI(Depth Of Interaction)検出器であってもよい。この場合、γ線の検出位置をシンチレータブロックの深さ方向を含めて3次元で特定することができる。
【0012】
前述した核医学撮像装置において、シンチレータブロックは、複数のホールを有してもよい。この場合、シンチレータブロックが複数のホールを有することにより、γ線検出部が検出するγ線が増える。その結果、SPECT装置の視野を広げたり、感度を向上させたりすることができる。
【0013】
前述した核医学撮像装置において、検出器ユニットは、撮像対象物から離れるに従って広がる台形状とされていてもよい。この場合、例えば複数の検出器ユニットを環状に配置した場合において、複数の検出器ユニットのそれぞれが撮像対象物から離れるに従って台形状に広がることで、SPECT撮像の視野を広げることができる。シンチレータブロックが台形状とされていることにより、PETの感度を最大化することができる。
【0014】
前述した核医学撮像装置において、コリメータ検出器は、他の核医学撮像装置に取り付け可能とされていてもよい。この場合、コリメータ検出器を既存の核医学撮像装置に取り付けることができるので、既存の核医学撮像装置においてPETとSPECTとの同時計測を行うことができる。光検出器は、ホールの径方向に沿ってシート状に広がった形状を有していてもよい。
【0015】
前述した核医学撮像装置は、シンチレータブロックを貫通する貫通孔の壁部に取り付けられた後付部を有し、後付部は、シンチレータブロックの厚さ方向に対して傾斜する傾斜面を有し、傾斜面は、ホールの内壁面の少なくとも一部を構成してもよい。この場合、ホールを有するシンチレータブロックが後付部を有することにより、シンチレータブロックにおけるγ線が通過する部分の形状及び大きさを調整することができ、γ線の遮蔽能力を向上させることができる。
【0016】
前述した核医学撮像装置は、撮像対象物の画像を処理する画像処理部を備えてもよい。この場合、画像処理部が撮像対象物の画像処理を行うことにより、より高精度なPET画像及びSPECT画像を取得することができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、PETの感度の低下を抑制することができると共に、PETとSPECTの同時計測を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本開示の実施形態に係る核医学撮像装置を示す図である。
【
図2】
図1の核医学撮像装置のコリメータ検出器とγ線検出部とを示す図である。
【
図3】本開示の別の例に係る核医学撮像装置を示す図である。
【
図4】
図3の核医学撮像装置における一対のコリメータ検出器と一対のγ線検出部とを示す図である。
【
図5】
図4のコリメータ検出器及びγ線検出部を拡大させた図である。
【
図6A】
図5のコリメータ検出器におけるシンチレータブロックの例を示す図である。
【
図6B】
図5のコリメータ検出器におけるシンチレータブロックの変形例を示す図である。
【
図7】
図5のコリメータ検出器のシンチレータブロックの別の変形例を示す図である。
【
図8】
図7のシンチレータブロックとγ線検出部とを示す図である。
【
図9】
図5のコリメータ検出器におけるシンチレータブロックの更に別の変形例を示す図である。
【
図10A】シンチレータブロックの更なる変形例を示す図である。
【
図10B】シンチレータブロックの更なる変形例を示す図である。
【
図11A】シンチレータブロックの更なる変形例を示す図である。
【
図11B】シンチレータブロックの更なる変形例を示す図である。
【
図12A】シンチレータブロックの更なる変形例を示す図である。
【
図12B】シンチレータブロックの更なる変形例を示す図である。
【
図13A】シンチレータブロックの更なる変形例を示す図である。
【
図13B】シンチレータブロックの更なる変形例を示す図である。
【
図13C】シンチレータブロックの更なる変形例を示す図である。
【
図14】シンチレータブロックの更なる変形例を示す図である。
【
図15】本開示の更に別の変形例に係る核医学撮像装置を示す図である。
【
図16】本開示の更に別の変形例に係る核医学撮像装置を示す図である。
【
図17】本開示の更に別の変形例に係る核医学撮像装置を示す図である。
【
図18】本開示の更に別の変形例に係る核医学撮像装置を示す図である。
【
図19】
図18の核医学撮像装置のコリメータ検出器とγ線検出部とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、図面を参照しながら、本開示に係る核医学撮像装置の実施形態について説明する。本発明は、以下の例に限定されるものではなく、請求の範囲に示され、請求の範囲と均等の範囲における全ての変更が含まれることが意図される。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。図面は、理解の容易のため、一部を簡略化又は誇張している場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0020】
図1は、本実施形態に係る核医学撮像装置1を模式的に示す図である。核医学撮像装置1は、PET(Positron Emission Tomography:ポジトロン断層撮影)検出器とSPECT(Single Photon Emission Computed Tomography:単一光子放射断層撮影)検出器としての機能を併せ持つ装置である。
【0021】
SPECTは、放射性核種であるSPECT核種Sにおいて標識された化合物から放出される数十keV~百数keVの低エネルギーγ線であるγ線L1を様々な角度から検出することによって当該化合物の分布を画像化する撮像手法である。SPECTでは、コリメータの穴を通過し、シンチレータと光検出器、又は半導体放射線検出器等からなるγ線検出部12に到達したγ線L1を検出することによって、γ線L1の到来方向を特定する。
【0022】
核医学撮像装置1は、例えば、撮像空間Kに配置された撮像対象Tを環状に囲むように設けられる複数の検出器ユニット10と、撮像対象Tの画像を処理する画像処理部100とを備える。複数の検出器ユニット10は、複数のコリメータ検出器11と、コリメータ検出器11の外側においてγ線L1を検出する複数のγ線検出部12とを備える。複数のコリメータ検出器11は、撮像対象Tを囲む位置に配置される。複数のγ線検出部12は、撮像対象Tとの間で複数のコリメータ検出器11をそれぞれ挟んで対向する位置に配置される。複数の検出器ユニット10は、撮像対象Tを挟んで対向する位置に配置される一対の検出器ユニット10を少なくとも含んでいる。
【0023】
核医学撮像装置1では、複数のコリメータ検出器11、及び複数のγ線検出部12が共に環状に配置されている。本開示において、「環状」とは、あるものを囲むことが可能な形状を示しており、円環状だけでなく、楕円状、半円状、半楕円状及び多角形状等、種々の形状を含んでいる。「撮像対象物を囲む」とは、撮像対象物の全周を囲む場合、及び撮像対象物の一部を囲む場合、の両方を含む。
【0024】
図1及び
図2に示されるようにコリメータ検出器11は、消滅放射線L2を、撮像空間Kを挟んで互いに対向するシンチレータブロック13で同時検出することによってPET撮像を行う。本開示において「シンチレータブロック」とは、一塊となったシンチレータを示している。シンチレータブロックの形状は、例えば直方体状であるが、直方体状に限られず適宜変更可能である。PETは、極微量の陽電子放出核種であるPET核種Pで標識した化合物を投与し、陽電子が電子と対消滅を起こしたときに互いに反対方向に放出される2本の消滅放射線L2を同時検出することによって当該化合物の分布を画像化する撮像手法である。
【0025】
すなわち、PETでは、陽電子崩壊によってPET核種Pから放出された陽電子が周囲の電子と対消滅することによって生じる一対の511keVの消滅放射線L2をコリメータ検出器11で同時計測することによって撮像を行う。消滅放射線L2は、略180°反対方向に放出され、PET核種Pの位置を、消滅放射線L2が通る一対のコリメータ検出器11を結ぶ線分上の位置として特定することが可能である。
【0026】
SPECT撮像及びPET撮像では、共に、3次元の画像再構成手法によって放射性核種分布を画像化する。SPECT撮像及びPET撮像では、共に、糖代謝、酸素分布、神経受容体の状態、及び血流分布等をイメージングすることが可能である。SPECT撮像及びPET撮像は、病理の客観的な診断に有効である。
【0027】
例えば、SPECT撮像及びPET撮像は、脳の機能情報を取得し、パーキンソン病又は認知症等の診断に用いられることがある。認知症には、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、血管性認知症又は前頭側頭型認知症等、様々な認知症が存在する。それぞれの鑑別は、治療方針を決定する上で非常に重要である。
【0028】
上記のように、脳に関する病理の診断には、SPECT撮像及びPET撮像は有用である。一方、従来から臨床の現場では、病理の鑑別のため、SPECT撮像及びPET撮像の両方を行うことがある。確実な診断のためには複数回の撮像が必要なことがあり、複数回の撮像を行う場合には特に患者Mの負担が大きくなる。すなわち、従来の方法では、患者Mは、PET撮像及びSPECT撮像の両方を受けるために少なくとも複数回核医学撮像装置による撮像を受ける必要があり、患者Mにかかる負担が大きかった。
【0029】
これに対し、本実施形態に係る核医学撮像装置1は、一度の検査でPET撮像及びSPECT撮像の両方を受けることができるため、患者Mの負担を大幅に軽減できる。γ線を放出するSPECT診断薬及びPET診断薬による同時撮像により、治療と診断を融合したセラノスティクス(Theranostics)の高度化にも寄与することが可能である。
【0030】
以上のように、核医学撮像装置1はPET核種PとSPECT核種Sの同時計測を行う。本実施形態に係る核医学撮像装置1のように、PETとSPECTの同時撮像によってPET検査及びSPECT検査の両検査を同時にできれば、検査時間が短縮できる上、両画像の位置合わせも不要とすることができる。その結果、患者Mの負担軽減、及びワークフローの改善が可能となる。
【0031】
更に、核医学撮像装置1では、SPECT検査の結果と、PET検査の結果との両方を同時に取得できるので、複数の機能情報の相関関係を取得することも可能である。核医学撮像装置1は、例えば、複数の機能情報の取得が望まれる小動物又は植物の動態イメージングの解析にも応用できる。核医学撮像装置1では、検出器ユニット10がコリメータ検出器11及びγ線検出部12を備えることによってPET核種P及びSPECT核種Sの同時撮像を行う。
【0032】
検出器ユニット10は、例えば、撮像対象T(撮像空間K)から離れるに従って広がる台形状とされている。すなわち、検出器ユニット10は、外側に向かうに従って広がる台形状とされ、γ線検出部12の撮像対象T側を向く面12bの面積は、コリメータ検出器11の撮像対象T側を向く面11bの面積よりも広い。複数の検出器ユニット10の間に遮蔽壁16が介在してもよい。遮蔽壁16は、γ線検出部12への視野外からの放射線を遮蔽するために設けられる。
【0033】
コリメータ検出器11は、シンチレータ結晶素子13bからなるシンチレータブロック13と、シンチレータブロック13に取り付けられた光検出器14と、を備える。シンチレータ結晶素子13bは、一例として、1.5mm×1.5mm×5.0mmの直方体状とされている。コリメータ検出器11は、例えば、複数層のシンチレータブロック13が深さ方向である方向D1に沿って配列されたDOI(Depth Of Interaction)検出器である。シンチレータブロック13は、低エネルギーγ線であるγ線L1が通過できない厚みを有する一方、これを通過させる部分(ホール15)を有する。なお、本開示で述べる「ホール」とは、SPECT撮像用の低エネルギーγ線を透過する部分を指し、望ましくはシンチレータブロックに穿たれた穴として形成される。
【0034】
例えば、光検出器14は、シンチレータブロック13のγ線検出部12側に配置される。光検出器14は、コリメータ検出器11とγ線検出部12とが対向する方向D1に対して直交する方向に沿って面状に広がった形状を有する。換言すると、光検出器14は、ホール15の径方向に沿ってシート状に広がった形状を有する。ホール15及び光検出器14を通過したγ線L1はγ線検出部12によって検出される。コリメータ検出器11がホール15を備えることにより、ホール15を通ったγ線L1がγ線検出部12に投影される。γ線検出部12に投影された像からSPECT撮像の原理によってγ線L1の線源分布が得られる。
【0035】
図3は、変形例に係る核医学撮像装置21の構成を模式的に示している。核医学撮像装置21は、環状に配置された複数の検出器ユニット22を備える。例えば、各検出器ユニット22はコリメータ検出器23、γ線検出部24及び遮蔽壁28を有する。コリメータ検出器23、γ線検出部24及び遮蔽壁28の構成は、例えば、前述したコリメータ検出器11、γ線検出部12及び遮蔽壁16の構成と同様であってもよいし、異なっていてもよい。一例として、コリメータ検出器23はシンチレータブロック25及び光検出器26を備える。光検出器26はシンチレータブロック25の撮像空間K側に設けられる。
【0036】
図4に示されるように、核医学撮像装置21では、一対のコリメータ検出器23が撮像対象Tを挟むように配置される。一対のγ線検出部24が一対のコリメータ検出器23を挟むように配置される。コリメータ検出器23のシンチレータブロック25には、前述と同様、ホール27が形成されており、光検出器26及びホール27を通過したγ線L1をγ線検出部24が検出する。γ線検出部24のエネルギー分解能は、一例として、13%である。
【0037】
核医学撮像装置21では、前述した核医学撮像装置1と同様、SPECT核種Sにおいて標識された化合物から放出される低エネルギーのγ線L1が光検出器26及びホール27を通過してγ線検出部24によって検出される。陽電子破壊によってPET核種Pから放出された陽電子が周囲の電子と対消滅することによって生じる一対の511keVの消滅放射線L2は、コリメータ検出器23によって同時計測される。
【0038】
図5は、コリメータ検出器23を拡大した図である。シンチレータブロック25は、例えば、3層構造とされており、3層のそれぞれにホール27が形成されている。但し、シンチレータブロック25は、3層構造でなくてもよく、1層、2層構造、又は4層以上の構造であってもよい。
【0039】
コリメータ検出器23及びγ線検出部24が並ぶ方向D1に沿って撮像空間K側から見たホール27の形状は、例えば、正方形状とされている。以降の説明では「方向D1に沿って撮像空間K側から見た」を単に「方向D1に沿って見た」と記載することがある。例えば、方向D1に沿って見たn-1層目(nは2以上の自然数)のシンチレータブロック25におけるホール27の一辺の長さW1と、方向D1に沿って見たn+1層目のシンチレータブロック25におけるホール27の一辺の長さW2とは、互いに異なっている。例えば、長さW2は長さW1より長くてもよい。この場合、方向D1に直交する平面でホール27を切断したときのホール27の面積は、γ線検出部24に向かうに従って広くなる。
【0040】
シンチレータブロック25の撮像対象T側(撮像空間K側)を向く面は、一例として、正方形状とされており、当該面の一辺の長さは49.5mmである。シンチレータブロック25の厚さtは、例えば、4mm以上且つ6mm以下である。但し、シンチレータブロック25の当該面の形状及び面積、並びにシンチレータブロック25の厚さtの値は適宜変更可能である。
【0041】
γ線L1が入射するホール27の入射面(方向D1に沿って見た1層目のシンチレータブロック25におけるホール27の上面)からγ線L1が入射するγ線検出部24の上面までの距離は、一例として、80mmである。しかしながら、当該距離の値も適宜変更可能である。
【0042】
図6Aに示されるように、一例として、方向D1に沿って見た3層目のシンチレータブロック25におけるホール27の一辺の長さW2は、方向D1に沿って見た1層目のシンチレータブロック25におけるホール27の一辺の長さW1の5倍であってもよい。
図6Bに示されるように、方向D1に沿って見た2層目のシンチレータブロック25におけるホール27の一辺の長さが、方向D1に沿って見た3層目のシンチレータブロック25におけるホール27の一辺の長さW2と同一であってもよい。
【0043】
以上のように、シンチレータブロック25に形成されるホール27の大きさは、適宜変更可能である。方向D1に沿って見たホール27の形状は、正方形に限られず、例えば、長方形等の他の四角形、六角形等の他の多角形、又は円形状等であってもよく、適宜変更可能である。
【0044】
本実施形態に係る核医学撮像装置において、シンチレータブロックに形成されるホールの数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。
図7は、複数のホール27が形成された例示的なシンチレータブロック35を示している。シンチレータブロック35は、前述したシンチレータブロック13又はシンチレータブロック25から置換することも可能である。
【0045】
図7及び
図8に示される例において、核医学撮像装置は、検出器ユニット10,22と同様の検出器ユニット30を備える。検出器ユニット30はコリメータ検出器31、γ線検出部12及び遮蔽壁16を備える。前述したシンチレータブロック35はコリメータ検出器31に設けられている。シンチレータブロック35は、例えば、コリメータ検出器31及びγ線検出部12が並ぶ方向D1に直交する方向D2に延在する面35bに沿って配置された複数のホール27を有する。
【0046】
シンチレータブロック35が複数のホール27を有することにより、例えば、患者Mの体軸方向のSPECT撮像の視野拡大が可能となる。一例として、シンチレータブロック35において、複数のホール27は分散して配置されている。「分散して配置」されることは、格子状に配置されている状態、千鳥状に配置されている状態、及び同心円状に配置されている状態を含んでいる。
【0047】
一例として、
図7では、複数のホール27が格子状に配置されている状態を示している。但し、複数のホール27の配置態様(配置位置)は適宜変更可能である。シンチレータブロック35のホール27の数は、一例として、12(3×4)であるが、適宜変更可能である。
【0048】
図9は、変形例に係るシンチレータブロック45を示す図である。シンチレータブロック45は、前述したシンチレータブロック13,25,35から置換することも可能である。シンチレータブロック45はγ線L1が通過するホール47を有する。シンチレータブロック45は、当該シンチレータブロック45を貫通する貫通孔45bの壁部に取り付けられた後付部48と、貫通孔45bにおける開口端の周縁部に取り付けられた後付部49と、を有する。後付部48,49は、例えば、後付けコリメータであり、鉛又はタングステンによって構成されている。例えば、貫通孔45bは、
図9に示すように、段付きの貫通孔であり、後付部49が取り付けられている前記壁部は、実質的には貫通孔45bの内壁部(内壁面)である。
【0049】
後付部48は、例えば、第1後付部48bと第2後付部48cとを含んでいる。第1後付部48bは、方向D1に沿って見た1層目のシンチレータブロック45の貫通孔45bの壁部に取り付けられている。第2後付部48cは、方向D1に沿って見たn層目のシンチレータブロック45の貫通孔45bの壁部に取り付けられている。第1後付部48bは、例えば、貫通孔45bに面接触する外側面48dと、γ線L1が通過する孔48kを画成する内側面48fとを有する。後付部49は、シンチレータブロック45の撮像対象T(撮像空間K)との反対側に設けられており、γ線L1が通過する孔49bを有する。
【0050】
第1後付部48bの内側面48fは、撮像空間K側に位置する第1傾斜面48gと、撮像空間Kとの反対側に位置する第2傾斜面48hと、第1傾斜面48g及び第2傾斜面48hの間において方向D1に延びる頂面48jとを含む。方向D2に沿って切断した孔48kの開口面積は、第1傾斜面48g及び第2傾斜面48hのそれぞれから頂面48jに向かうに従って徐々に小さくなる。すなわち、方向D2に沿って切断した孔48kの開口面積は、頂面48jにおいて最も小さい。
【0051】
第2後付部48cは、例えば、方向D1に沿って見たn層目のシンチレータブロック45の貫通孔45bに面接触する外側面48mと、γ線L1が通過する孔48qを画成する内側面48pとを有する。内側面48pは、方向D1に沿って見た1層目のシンチレータブロック45から離れる(γ線検出部に向かう)に従って孔48qが拡大する方向に傾斜する傾斜面とされている。よって、方向D2に沿って切断した孔48qの開口面積は、方向D1に沿って見た1層目のシンチレータブロック45から離れるに従って広くなっている。つまり、
図9に示すように、シンチレータブロック45が有するγ線通過用のホール47は、シンチレータブロック45の貫通孔45bの壁部にそれぞれ取り付けられた後付部48における第1後付部48bの第1傾斜面48g、第2傾斜面48h、及び頂面(非傾斜面で構成された内壁面)48jと、第2後付部48cの内側面(傾斜面)48pと、後付部49の孔49bの内壁面(非傾斜面)と、で包囲される空間によって構成されている。換言すれば、後付部48を構成している第1後付部48bの第1傾斜面48g、第2傾斜面48h、及び第2後付部48cの内側面(傾斜面)48pは、ホール47の内壁面の少なくとも一部を構成している。
【0052】
後付部48は、例えば、第1後付部48bの第2傾斜面48hと第2後付部48cの内側面48pとが連続するようにシンチレータブロック45の貫通孔45bに取り付けられる。後付部48は、方向D1に沿って見たn層目のシンチレータブロック45の内側面48pと、方向D1に沿って見たn+1層目のシンチレータブロック45の内側面48pとが連続するように貫通孔45bに取り付けられてもよい。以上のように、シンチレータブロック45に後付部48,49が取り付けられることにより、γ線が通過するホールの開口面積の調整、及びγ線の遮蔽能力の向上が可能となる。
【0053】
以下では、
図10A~
図14を参照しながらコリメータ検出器の種々の変形例を順を追って説明する。
図10A及び
図10Bに示されるように、コリメータ検出器は、モノリシック型のシンチレータブロック51と光検出器52(受光素子)とを備えていてもよい。
【0054】
シンチレータブロック51は、前述したホール15,27,47と同様のホール53を有する。ホール53は、例えば、光検出器52に向かうに従って徐々に縮小するテーパ面53bによって画成される。ホール53の数は、
図10Aに示されるように1つであってもよいし、
図10Bに示されるように複数であってもよい。
【0055】
図11A及び
図11Bに示されるように、コリメータ検出器は、積層型のシンチレータブロック56と光検出器57とを備え、シンチレータブロック56は視野角傾斜型のホール58を有してもよい。ホール58は、例えば、コリメータ検出器及びγ線検出部が並ぶ方向D1に対して傾斜する方向に延びている。このホール58の数は、
図11Aに示されるように1つであってもよいし、
図11Bに示されるように複数であってもよい。
【0056】
図12A及び
図12Bに示されるように、コリメータ検出器は、シンチレータブロック61と光検出器62と遮蔽材63とを備えてもよい。シンチレータブロック61、光検出器62及び遮蔽材63は、この順で撮像空間Kからγ線検出部に向かう方向に沿って並んでいる。例えば、シンチレータブロック61、光検出器62及び遮蔽材63は互いに接触している。遮蔽材63は、例えば、鉛又はタングステンによって構成されている。
【0057】
シンチレータブロック61はγ線L1が通過するホール64を有する。遮蔽材63はγ線L1が通過するホール65を有する。シンチレータブロック61、光検出器62及び遮蔽材63を備えるコリメータ検出器において、シンチレータブロック61は、
図12Aに示されるような積層型であってもよいし、
図12Bに示されるようなモノリシック型であってもよい。
【0058】
図13Aに示されるように、コリメータ検出器は、一層検出器積層型であってもよい。すなわち、コリメータ検出器は、シンチレータブロック66及び光検出器67を含む複数の組C1を備えていてもよい。複数の組C1のそれぞれにおいてシンチレータブロック66はγ線L1が通過するホール68を有する。一例として、方向D1から見たn-1層目の組C1のホール68は、方向D1から見たn層目の組C1のホール68よりも大きい。
【0059】
図13Bに示されるように、コリメータ検出器は、方向D1に沿って積層された複数のホール73付きのシンチレータブロック71と、複数のシンチレータブロック71を方向D1から挟み込む一対の光検出器72とを備えていてもよい。すなわち、シンチレータブロック71の方向D1の両面に光検出器72が配置された両面読み出しのコリメータ検出器であってもよい。
図13Cに示されるように、コリメータ検出器は、方向D1に沿って積層された複数のシンチレータブロック71と、複数のシンチレータブロック71を方向D1に直交する方向D2から挟み込む一対の光検出器74を備えていてもよい。
【0060】
図14に示されるように、コリメータ検出器は、積層された複数のホール78付きのシンチレータブロック76と光検出器77と遮蔽材79を含む複数の組C2と、複数の組C2の間に形成された隙間Xとを有する検出器であってもよい。すなわち、コリメータ検出器は、シンチレータブロック76、光検出器77及び遮蔽材79を含む組C2の間に隙間Xが形成された検出器間隙コリメータ方式であってもよい。
【0061】
次に、変形例に係る核医学撮像装置81について
図15を参照しながら説明する。
図15に示されるように、核医学撮像装置81は、PET装置82と、前述した複数のコリメータ検出器23とを備える。核医学撮像装置81は、例えば、心臓Yを含む撮像対象Tを撮像するために用いられる。PET装置82は、例えば、他(既存、又は従来型)のPET装置である。複数のコリメータ検出器23がPET装置82に組み込まれている。
【0062】
複数のコリメータ検出器23は、環状とされたPET装置82の内側において、撮像空間Kを囲むように半楕円状に配置され、前述と同様、γ線L1を透過するホール27付きのシンチレータブロック25を有する。撮像空間Kを挟んで互いに対向するコリメータ検出器23及びPET装置82のそれぞれにおいて消滅放射線L2が同時検出される。従って、他のPET装置82にコリメータ検出器23が取り付けられた核医学撮像装置81では、PET核種P及びSPECT核種Sの両方を同時計測可能であり、PET撮像及びSPECT撮像の双方の高感度化を実現する。
【0063】
図16は、別の変形例に係る核医学撮像装置86を示している。核医学撮像装置86は、放射線源Rを挟む一対のコリメータ検出器23と、一対のコリメータ検出器23を挟む一対のγ線検出部24とを備える。放射線源Rには粒子線治療ビームBが照射される。放射線源Rに粒子線治療ビームBが照射されると、γ線L3が放射線源Rから放出される。γ線L3は、サブMeV~数MeVのエネルギーを有しており、コリメータ検出器23を透過すると共にγ線検出部24によって検出される。
【0064】
核医学撮像装置86では、前述と同様、SPECT核種Sにおいて標識された化合物から放出された低エネルギーのγ線L1の検出による画像化、及びPET核種Pにおいて標識された化合物から放出された511keVの消滅放射線L2の同時検出による可視化と共に、サブMeV~数MeVのγ線L3の検出による可視化を行うことができる。
【0065】
従って、核医学撮像装置86では、粒子線治療ビームBによるモニタリングを行うことが可能となる。すなわち、粒子線治療のビームモニタリングによって、陽電子放出核種分布、制動放射線の分布、及び即発γ線の分布のそれぞれをPET、SPECT及びコンプトンカメラの原理を用いて取得することができる。
【0066】
図17は、更に別の変形例に係る核医学撮像装置91を示している。核医学撮像装置91は、撮像対象Tを挟む一対のコリメータ検出器23と、コリメータ検出器23を挟む一対のγ線検出部24と、撮像対象TにX線L4を照射するX線管92と、これを投影するX線検出器93とを備える。核医学撮像装置91において、撮像対象Tは、例えば、ラット、ウサギ又はサル等、大きめの動物であり、核医学撮像装置91は動物用である。
【0067】
核医学撮像装置91は、PET撮像と同時にX線CT撮像及び蛍光X線撮像を同時に行うことが可能である。撮像対象Tに蛍光X線CTのトレーサとして数十~90keVの蛍光X線を放出する金粒子又はヨウ素を投与した上で、X線L4の照射によって撮像対象TのX線CT撮像が行われる。そして、X線L4により励起されたトレーサから、脱励起によって放出されコリメータ検出器23のホール27を透過した蛍光X線L5をγ線検出部24により計測し、SPECT撮像と同様の原理で蛍光X線CTの撮像を行う。この核医学撮像装置91でも、核医学撮像装置86等と同様、SPECT撮像及びPET撮像の両方を同時に行うことが可能である。
【0068】
次に、本実施形態に係る核医学撮像装置の作用効果について詳細に説明する。
図1及び
図2に示されるように、核医学撮像装置1では、コリメータ検出器11がシンチレータ結晶素子13bからなるシンチレータブロック13を有し、シンチレータブロック13は撮像対象Tから出射したγ線L1が通過するホール15を有する。シンチレータブロック13のホール15を通過したγ線L1は、γ線検出部12によって検出される。
【0069】
コリメータ検出器11ではPET計測を行う。コリメータ検出器11のシンチレータブロック13のホール15を通過したγ線L1をγ線検出部12で検出することにより、γ線L1の到来方向が決定されるので、SPECT計測を行うことができる。従って、PET核種Pの計測と、SPECT核種Sの計測とを同時に行うことができる。
【0070】
その結果、核医学撮像装置1ではPET計測及びSPECT計測を同時に行うことができるので、患者M及び臨床現場の負担を軽減させることができる。核医学撮像装置1では、PET計測を行うことができるコリメータ検出器11自体をSPECT核種計測のためのコリメータとして機能させる。これにより、従来の方法では必須であったPETの感度の低下を招くSPECT計測用のコリメータを、PET計測を行う検出器の前方に追加で配置する必要がない。従って、PETの感度の低下を抑制することができる。以上の効果は、核医学撮像装置1だけでなく、核医学撮像装置21等、前述した本実施形態の核医学撮像装置の全てから得られる。
【0071】
本実施形態に係る核医学撮像装置において、コリメータ検出器11は、複数のシンチレータブロック13が配列されたDOI(Depth Of Interaction)検出器であってもよい。この場合、γ線の検出位置をシンチレータブロック13の深さ方向(方向D1)を含めて3次元で特定することができる。
【0072】
本実施形態に係る核医学撮像装置において、
図7に例示されるように、シンチレータブロック35は、複数のホール27を有してもよい。この場合、シンチレータブロック35が複数のホール27を有することにより、γ線検出部12が検出するγ線L1が増えるので、SPECTの感度向上や視野の拡大が可能となる。
【0073】
本実施形態に係る核医学撮像装置において、
図1及び
図2に例示されるように、検出器ユニット10は、撮像対象Tから離れるに従って台形状に広がっていてもよい。この場合、例えば複数の検出器ユニット10を環状に配置した場合において、複数の検出器ユニット10のそれぞれが撮像対象Tから離れるに従って台形状に広がる。これにより、PET感度を最大化し、SPECT撮像の視野を広くすることができる。
【0074】
図18及び
図19に示されるように、検出器ユニット110のシンチレータブロック113が台形状であることにより、PETの感度を更に高めることができる。更に、シンチレータ結晶素子113bを含むシンチレータブロック113が台形状に配置される場合、コリメータ検出器111の素子を多く配置することができ、PETに対する高感度化も可能となる。すなわち、シンチレータブロック113が台形状に配置される場合、PET計測可能な検出器の素子数を、シンチレータブロックが直方体状に配置される場合と比較して増やすことができる。
【0075】
図15に例示されるように、本実施形態に係る核医学撮像装置において、コリメータ検出器23は、他のシングル測定が可能なPET装置82に取り付け可能とされていてもよい。この場合、コリメータ検出器23を既存のPET装置82に取り付けることができるので、既存のPET装置82においてPETとSPECTの同時計測を行うことができる。
【0076】
図9に例示されるように、本実施形態に係る核医学撮像装置において、ホール47を有するシンチレータブロック45は、シンチレータブロック45を貫通する貫通孔45bに面して取り付けられる後付部48を有してもよい。後付部48は、シンチレータブロック45の厚さ方向(方向D1)に対して傾斜する傾斜面(例えば、第1傾斜面48g、第2傾斜面48h及び内側面48p)を有してもよい。この場合、ホール47が後付部48を有することにより、シンチレータブロック45におけるγ線L1が通過する部分の形状及び大きさを調整することができ、γ線の遮蔽能力を向上させることも可能となる。
【0077】
図1に例示されるように、核医学撮像装置1は、撮像対象Tの画像を処理する画像処理部100を備えてもよい。この場合、画像処理部100がPET撮像による画像とSPECT撮像による画像とを共に処理することにより、高精度なPET画像及びSPECT画像を同時に取得することができる。
【0078】
以上、本実施形態では、種々の例の核医学撮像装置及びコリメータ検出器等について説明した。本開示において、前述した例示的な各核医学撮像装置及び各コリメータ検出器は適宜組み合わせることが可能である。本開示に係る核医学撮像装置は、前述した実施形態の各例に限定されることなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲において適宜変更することが可能である。すなわち、核医学撮像装置の各部の形状、大きさ、数、材料及び配置態様は、前述した各例に限られず適宜変更可能である。
【0079】
例えば、
図15に例示される核医学撮像装置81では、他のPET装置82に取り付け可能なコリメータ検出器23について説明した。しかしながら、本開示に係る核医学撮像装置は、他のSPECT装置に取り付け可能なコリメータ検出器を備えていてもよい。このように、コリメータ検出器が取り付けられる核医学撮像装置の種類は適宜変更可能である。
【0080】
前述した実施形態では、
図9に例示されるように、第1傾斜面48g、第2傾斜面48h及び内側面48pを有する孔48k,48qを備えた後付部48について説明した。しかしながら、後付部に形成された孔の形状、大きさ、数及び配置態様は適宜変更可能である。
【0081】
前述した実施形態では、
図1に示されるように、複数の検出器ユニット10が撮像対象Tを囲むように環状に配置される例について説明した。しかしながら、複数の検出器ユニットは、例えば、撮像対象物の一部を囲むように配置されてもよく、環状以外の配置とされていてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1,21,81,86,91…核医学撮像装置、10,22,30…検出器ユニット、11,23,31…コリメータ検出器、12,24…γ線検出部、13,25,35,45,51,56,61,66,71,76…シンチレータブロック、13b…シンチレータ結晶素子、14,26,52,57,62,67,72,74,77…光検出器、15,27,47,53,58,64,65,68,73…ホール、16…遮蔽壁、35b…面、45b…貫通孔、48…後付部、48b…第1後付部、48c…第2後付部、48d…外側面、48f…内側面、48g…第1傾斜面、48h…第2傾斜面、48j…頂面、48k…孔、48m…外側面、48p…内側面、48q…孔、53b…テーパ面、63,79…遮蔽材、82…PET装置、92…X線管、93…X線検出器、100…画像処理部、B…粒子線治療ビーム、C1,C2…組、D1,D2…方向、K…撮像空間、L1…γ線、L2…消滅放射線、L3…γ線、L4…X線、M…患者、P…PET核種、R…放射線源、S…SPECT核種、T…撮像対象(撮像対象物)、X…隙間、Y…心臓。