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特許7437052使用済み衛生用品の回収方法およびこの回収方法に用いられる回収具
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  • 特許-使用済み衛生用品の回収方法およびこの回収方法に用いられる回収具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】使用済み衛生用品の回収方法およびこの回収方法に用いられる回収具
(51)【国際特許分類】
   B65F 1/14 20060101AFI20240215BHJP
   B65F 5/00 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
B65F1/14 G
B65F5/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021523317
(86)(22)【出願日】2020-09-14
(86)【国際出願番号】 JP2020034692
(87)【国際公開番号】W WO2022054272
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2021-05-26
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】507394639
【氏名又は名称】株式会社サムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪田 勇
(72)【発明者】
【氏名】岡野 公美
(72)【発明者】
【氏名】鴨沢 卓郎
(72)【発明者】
【氏名】阪田 乾仁
(72)【発明者】
【氏名】阪田 光子
(72)【発明者】
【氏名】山田 稔
【合議体】
【審判長】窪田 治彦
【審判官】関口 哲生
【審判官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-113950(JP,A)
【文献】国際公開第2015/129127(WO,A1)
【文献】特開2019-34268(JP,A)
【文献】特開2009-172599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65F1/14
B65F5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛生用品を使用する使用場所で複数の使用済み衛生用品を集積し、集積した前記使用済み衛生用品を処理施設に搬送して回収する使用済み衛生用品の回収方法であって、
紙製又は生分解性のプラスチックからなり前記使用済み衛生用品が収容される回収袋と、この回収袋を収納するとともに内部が-20℃~-60℃の温度の低温状態とされる冷凍集積庫とからなり、前記冷凍集積庫が、前記回収袋が収納される冷凍庫本体と、該冷凍庫本体内に冷気を供給する冷却装置とで形成された回収具内で、低温状態でかつ密封状態で前記使用済み衛生用品が集積され、
前記冷凍庫本体には、冷凍庫本体内の前記回収袋に前記使用済み衛生用品が投入される集積開口と、この集積開口を開閉し、前記冷凍庫本体内を密封状態とする密封蓋とが形成され、
前記集積開口の外形より小さく前記使用済み衛生用品が集積された前記回収袋の折り畳んだ状態の延長部を押圧板が押圧し、
前記押圧板と前記密封蓋の裏面側との間に設けられ、一側が前記密封蓋に固定されるとともに他側が前記押圧板に連結されたダンパによって、前記密封蓋で前記集積開口が閉められると前記押圧板が前記冷凍庫本体の底部分との間で前記回収袋を前記延長部が折り畳まれた状態で押圧して圧縮し前記回収袋を押圧した状態を維持して前記回収袋を冷凍パック状態とし、
冷凍パック状態とされた前記使用済み衛生用品は、前記回収袋内に収容された状態で冷凍回収車で回収されて前記処理施設に搬送され、当該処理施設において使用済み衛生用品を素材ごとに分離する分離機内に冷凍パック状態でそのまま投入されて当該分離機内で解凍されて各種の素材に分解処理されてパルプ回収装置によってパルプが回収されることを特徴とする使用済み衛生用品の回収方法。
【請求項2】
記冷凍庫本体は、前記冷凍装置から切り離されて移動可能であることを特徴とする請求項1に記載の使用済み衛生用品の回収方法。
【請求項3】
前記回収袋は、前記使用済み衛生用品を分解処理して回収されたパルプから形成した再生紙で形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の使用済み衛生用品の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、介護施設や一般家庭等において使用された紙おむつ等の使用済み衛生用品を回収する使用済み衛生用品の回収方法およびこの回収方法に用いられる回収具に関する。
【背景技術】
【0002】
病院や介護施設、一般家庭等で使用された後の使用済み紙おむつ等の使用済み衛生用品は、可燃ごみ用の袋に集積されて他の可燃ゴミとともにごみ回収業者によって回収され、ごみ処理場に運ばれて焼却処分又は埋め立て処分されている。
【0003】
ところが、使用済み衛生用品を可燃ごみ用の袋等に集積した状態では、使用済み衛生用品に付着している細菌が可燃ごみ用の袋内で繁殖(増殖)したり、臭気が外部に拡散する。また、他の可燃ごみと一緒に集積すると他の可燃ごみの水分を使用済み衛生用品のポリマーが吸収して使用済み衛生用品の重量が大きくなる。
【0004】
そこで、特許文献1では、使用済み衛生用品である使用済み紙おむつを紙おむつ回収機によって回収することが提案されている。この紙おむつ回収機は、回収機本体と、この回収機本体内に収容され使用済み紙おむつが集積される容器と、回収機本体内の空気を循環させるファンとで形成されている。
【0005】
回収機本体には、容器を収容する容器収容室と、使用済み紙おむつを容器に投入する投入口と、投入口を開閉する上蓋と、容器の口を開閉する中蓋と、容器の出入口を開閉する扉が設けられている。容器には、容器の口を開閉する中蓋が設けられている。
【0006】
この紙おむつ回収機によれば、ファンによって回収機本体内の空気を容器収容室から脱臭・殺菌室を経由して容器収容室内へ戻すように循環させているので、各種病原菌が外部へ放出されるおそれがなく、回収機本体内部に臭気や病原菌がこもることがなく、極めて衛生的となる。
【0007】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2004-121468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記紙おむつ回収機では、回収機本体内部に臭気がこもることを防止できたり、病原菌の増殖を防止できても、この回収機を設置した周囲には、使用済み紙おむつが集積された容器を回収機本体内から取り出す際に、回収機本体内部から排出された臭気や病原菌が外部に放出することになり、回収機を設置する設置場所は通気の良い場所に限られてしまう。このため紙おむつ回収機の設置場所が制限され設置場所の自由度がないという問題を有している。
【0010】
また、回収機本体内に回収された使用済み紙おむつに病原菌が含まれている場合には、容器に集積され回収機本体に回収された状態で繁殖(増殖)してしまうおそれがある。
【0011】
さらに、使用済み紙おむつを外部に搬出する場合、使用済み紙おむつ収容用の容器を回収機本体の容器収容室内から取り出すときに、臭気や各種病原菌が外部に放出され、搬出作業の後に紙おむつ回収機を設置している場所を殺菌・消毒する必要がある。
【0012】
そこで、本発明は、介護施設等の使用場所で使用済み衛生用品を集積し、集積した使用済み衛生用品を搬出する際に、臭気や各種病原菌が外部に放出するのを抑制し、設置場所の自由度が高く、集積した状態で各種病原菌が繁殖(増殖)させることなく使用済み衛生用品を回収することができる使用済み衛生用品の回収方法およびこの回収方法に用いられる回収具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の第1の態様は、衛生用品を使用する使用場所で複数の使用済み衛生用品を集積し、集積した前記使用済み衛生用品を処理施設に搬送して回収する使用済み衛生用品の回収方法であって、紙製又は生分解性のプラスチックからなり前記使用済み衛生用品が収容される回収袋と、この回収袋を収納するとともに内部が-20℃~-60℃の温度の低温状態とされる冷凍集積庫とからなり、前記冷凍集積庫が、前記回収袋が収納される冷凍庫本体と、該冷凍庫本体内に冷気を供給する冷却装置とで形成された回収具内で、低温状態でかつ密封状態で前記使用済み衛生用品が集積され、
前記冷凍庫本体には、冷凍庫本体内の前記回収袋に前記使用済み衛生用品が投入される集積開口と、この集積開口を開閉し、前記冷凍庫本体内を密封状態とする密封蓋とが形成され、前記集積開口の外形より小さく前記使用済み衛生用品が集積された前記回収袋の折り畳んだ状態の延長部を押圧板が押圧し、前記押圧板と前記密封蓋の裏面側との間に設けられ、一側が前記密封蓋に固定されるとともに他側が前記押圧板に連結されたダンパによって、前記密封蓋で前記集積開口が閉められると前記押圧板が前記冷凍庫本体の底部分との間で前記回収袋を前記延長部が折り畳まれた状態で押圧して圧縮し前記回収袋を押圧した状態を維持して前記回収袋を冷凍パック状態とし、冷凍パック状態とされた前記使用済み衛生用品は、前記回収袋内に収容された状態で冷凍回収車で回収されて前記処理施設に搬送され、当該処理施設において使用済み衛生用品を素材ごとに分離する分離機内に冷凍パック状態でそのまま投入されて当該分離機内で解凍されて各種の素材に分解処理されてパルプ回収装置によってパルプが回収されることを特徴とする。
【0015】
本発明の第の態様は、前記冷凍集積庫は、前記回収袋が収納されるとともに内部が所定の温度の低温状態とされる冷凍庫本体と、該冷凍庫本体内に冷気を供給する冷凍装置とからなり、前記冷凍庫本体は、前記冷凍装置から切り離されて移動可能であることを特徴とする。
【0016】
本発明の第3の態様は、前記回収袋は、前記使用済み衛生用品を分解処理して回収されたパルプから形成した再生紙で形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、介護施設等の使用済み衛生用品の使用場所で複数の使用済み衛生用品は、内部が所定の温度の低温状態にされた回収具内で低温状態でかつ密封状態で集積され、回収具内の使用済み衛生用品は低温状態で処理施設に搬送されるので、臭気や各種病原菌が外部に放出するのを抑制され、設置場所の自由度が高く、使用済み衛生用品は冷凍状態となっているので、集積した状態で各種病原菌が増殖することがない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る使用済み衛生用品の回収方法を示す説明図。
図2図2は、本発明の実施の形態に係る使用済み衛生用品の回収方法に用いられる回収具を示す分解斜視図。
図3図3は、本発明の実施の形態に係る使用済み衛生用品の回収方法に用いられる回収具の内部を示す断面図。
図4図4は、回収袋に集積されて冷凍状態となった使用済み紙おむつを示す斜視図。
図5図5は、回収具の他の例を示す断面図。
図6図6は、回収具の他の例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態に係る使用済み衛生用品の回収方法およびこの回収方法に用いられる回収具について説明する。本実施の形態に係る使用済み衛生用品の回収方法(以下「回収方法」という)は、紙おむつ等の衛生用品を使用する介護施設、老人ホーム、病院、一般家庭等の使用場所で複数の使用済み衛生用品を集積し、集積した使用済み衛生用品を処理施設に搬送して回収する。なお、本実施の形態では、使用済み衛生用品として使用済み紙おむつを例にとって説明する。
【0023】
図1に示すように、本実施の形態に係る回収方法では、使用場所1で複数の使用済み紙おむつ2は、内部が所定の温度の低温状態にされた回収具3内で低温状態でかつ密封状態で集積され、回収具3内の使用済み紙おむつ2を低温状態で処理施設13に搬送する。この場合、回収業者14によって使用場所1から回収された使用済み紙おむつ2は、ラックまたはカゴ台車等によって回収車15内に収容され、処理施設13に搬送される。
【0024】
処理施設13には、分離機16と、パルプ回収装置17とが設置されており、使用済み紙おむつ2は分離機16によって各種の素材に分解処理され、パルプ回収装置17によってパルプが回収される。そして、回収されたパルプは、段ボール原料、固形燃料、再生紙、紙おむつ等のパルプを用いる製品に再利用される。また、分離機16によって使用済み紙おむつ2を分解処理した後の処理液(排液)は栄養分を含んでいるので、固形肥料、液体肥料が製造されて再利用される。さらに、使用済み紙おむつ2から分離されたプラスチックも固形燃料等の原料として再利用される。
【0025】
なお、処理施設13には、分離機16、パルプ回収装置17以外に、使用済み衛生用品から分離したプラスチックおよびこのプラスチックに付着したパルプを乾燥させることでプラスチックとパルプを分離・回収する選別機を設置しても良い。
【0026】
介護施設、老人ホーム、病院、一般家庭等の使用場所1には、使用場所1で使用された使用済み紙おむつ2が投入されて集積される回収具3が、使用場所1の床24上に脚部25を介して設置されている。この回収具3は、図2に示すように、冷凍集積庫4と、この冷凍集積庫4内に収納されて使用済み紙おむつ2が投入される回収袋5とで形成されている。
【0027】
冷凍集積庫4は、冷凍庫本体6と、冷凍集積庫4内を密封状態とする密封蓋7と、冷却装置8とで形成されている。冷凍庫本体6は、箱状で上部が開口されて集積開口9が形成されている。この集積開口9は、冷凍庫本体6の上部開口縁部に回動可能に連結された密封蓋7によって開閉可能となっている。
【0028】
冷凍庫本体6の内部には冷却装置8によって冷却された冷気が吹き込まれて、冷凍庫本体6の内部が所定の温度の低温状態に保たれている。なお、冷凍庫本体6の内壁には、冷却装置8からの冷気が冷凍庫本体6内に吹き込まれる吹出口20が設けられている。冷凍庫本体6の内部の温度は-20℃~-60℃に設定され、集積された使用済み紙おむつ2が数時間で冷凍可能な低温状態に保たれている。
【0029】
ここで、冷凍庫本体6内の温度変動について説明する。
使用機器は、株式会社ダイレイ製スーパーフリーザー DF-140e
有効容量は約130L
外寸法はW723mm×D694mm×H848mm
内寸法W560mm×D440mm×H640mm(最大長)
性能は、庫内平均空気温度-60℃(±3℃)
投入量は、使用済み紙おむつ、重量19kg、枚数77枚
以上の条件にて使用済み紙おむつを集積した冷凍庫本体6内の温度の変動幅を調査した。その結果、冷凍庫本体6内に使用済み紙おむつを投入後10分で、庫内温度は-20℃まで上昇し、その後徐々に温度が下がっていった。このように、冷凍庫本体6内に使用済み紙おむつを投入した直後は庫内温度は上昇するが、零度以下の状態は維持することができ、その後は-60℃まで徐々に下がって行くことが実証された。
【0030】
密封蓋7には、ロック部18が設けられ、このロック部18は、冷凍庫本体6の集積開口9の縁部に設けられた係合部19と係合する。これにより、密封蓋7は、集積開口9を閉塞した状態で冷凍庫本体6内は密封状態となる。また、冷凍庫本体6を形成する壁体10は断熱構造に形成されている。これにより、冷凍庫本体6内が所定の温度の低温状態に保たれている。この冷凍庫本体6内に回収袋5が収納される。
【0031】
回収袋5は、紙又は生分解性のプラスチックで形成された袋で、開口11の縁部から延設された延長部12が折り畳まれる。これにより、開口11から投入されて集積された使用済み紙おむつ2を回収袋5によって包み込むことができる。この状態で回収袋5は、冷凍庫本体6内に収納されることで所定の温度の低温状態に晒されて冷却され、回収袋5内に集積された使用済み紙おむつ2が冷凍状態とされる。
【0032】
なお、この回収袋5は、紙又は生分解性のプラスチック以外の材質のものでも良い。この場合、使用済み紙おむつを処理する際の処理液や水等により溶解するものであれば好ましい。
【0033】
回収袋5に集積され、回収袋5ごと冷凍庫本体6内に収納された使用済み紙おむつ2は、冷凍庫本体6内に密封状態で保管される。
【0034】
使用済み紙おむつ2が、冷凍庫本体6内に所定の温度の低温状態で、かつ密封状態で保管されることにより、使用済み紙おむつ2は冷凍状態となり、臭気が外部に放出されることはなく、例えば、使用済み紙おむつ2を冷凍庫本体6内に排気する際に、密封蓋7を開放しても使用済み紙おむつ2の臭気が集積開口9から外部に放出されることがない。
【0035】
また、回収袋5に集積されて冷凍庫本体6内に収納されて保管された使用済み紙おむつ2は、所定の温度の低温状態となっているので、各種菌類の繁殖(増殖)が抑制される。さらに、使用済み紙おむつ2が冷凍されることで、いわゆるフリーズドライ状態となって乾燥されることで使用済み紙おむつ2が分解し易くなる。
【0036】
図3に示すように、冷凍庫本体6内に集積された使用済み紙おむつ2は、回収袋5内に収納された状態で冷却される。この場合、使用済み紙おむつ2を冷凍庫本体6内に廃棄した後に、延長部12を畳み込んでおくことにより、使用済み紙おむつ2は回収袋5、冷凍庫本体6に二重に密封された状態で保管される。
【0037】
この場合、回収袋5を用いることなく、使用済み紙おむつ2を冷凍庫本体6内に直接集積すると、冷凍庫本体6の内壁に付着する霜には、一般細菌、大腸菌、黄色ブドウ球菌等の細菌が含まれている。回収袋5内に使用済み紙おむつ2を収納した状態で冷凍庫本体6内に集積することで、使用済み紙おむつ2の水分や、この水分に含まれる細菌類が回収袋5内に閉じ込められる。これにより、冷凍庫本体6の内壁や、回収袋5の外表面に生じる霜には、一般細菌、大腸菌、黄色ブドウ球菌等の細菌類が含まれることがない。
【0038】
そして、回収業者14が、使用場所1にて集積された使用済み紙おむつ2を回収する際には、図4に示すように、回収袋5の延長部12を折り畳んだ、いわゆる冷凍パックした状態で冷凍庫本体6内から回収袋5を取り出し、ラック等に載せた状態で回収車15の冷凍荷台に回収する。この状態で処理施設13に搬送される。
【0039】
処理施設13に搬送された冷凍パック状態の使用済み紙おむつ2は、解凍した後に分離機16によって分解処理される。回収袋5内に収納された冷凍状態の使用済み紙おむつ2は、解凍装置(不図示)によって常温状態に解凍される。冷凍パック化された使用済み紙おむつ2を解凍する方法は、電子レンジのように電磁波を照射する方法、熱湯を掛ける方法、その他様々な方法で冷凍状態の使用済み紙おむつ2を解凍する方法がある。
【0040】
なお、上記の実施形態では、処理施設13に搬送された冷凍パック状態の使用済み紙おむつ2は、そのまま処理施設13の分離機16内に投入され、分離機16内で解凍しても良い。分離機16内で解凍する場合には、例えば高温の蒸気を噴射したり、処理液の温度を高温にすることにより冷凍パック状態の使用済み紙おむつ2を解凍しても良い。
【0041】
また、上記の実施形態では、回収袋5は紙製又は生分解性プラスチックで形成された例を示したが、使用場所1から回収され、分解処理されて回収されたパルプから製造した再生紙で形成しても良い。回収したパルプから製造した再生紙によって回収袋5を形成することで、分離機16内で分解処理する際に再びパルプとして回収することができるので、回収袋5を形成するために他の紙を用いる必要がなく、回収袋5を繰り返して用いることができる。
【0042】
また、上記処理施設13は、使用済み紙おむつ2を専門に処理する処理業者が所有する敷地内に設置しても良く、種々の工場からの廃液、下水等を処理する民間の下水道処理施設に隣接して設置しても良く、公共の下水道処理施設内に設置しても良い。分離機16によって使用済み紙おむつ2を分解処理する際には、特に公共の下水道処理施設で処理し、河川、海洋に放出される処理済みの下水を用いることで、上水(新水)を用いる必要がない。さらに、処理施設を公共の下水道処理施設内に設けることによって、分離機16によって使用済み紙おむつ2を分解処理した後の排液を、市中に配管されている下水道管を通さずに下水処理施設内で処理できるので、使用済み紙おむつを分解処理した後の排液によって市中の下水道管を損傷させることがない。
【0043】
[変形例1]
次に本実施の形態に係る回収具3の変形例1について図5を用いて説明する。変形例1では、回収具3の密封蓋7に圧縮機構21が設けられている。圧縮機構21は、集積開口9の外形より小さい押圧板22と、この押圧板22と密封蓋7の裏面側との間に設けられ、一側が密封蓋7に固定されるとともに他側が押圧板22に連結されたダンパ23、23とで形成されている。
【0044】
そして、使用済み紙おむつ2が集積された回収袋5の延長部12を折り畳んだ状態で密封蓋7で集積開口9を閉めると、押圧板22が冷凍庫本体6の底部分との間で回収袋5を押圧することで使用済み紙おむつ2が圧縮される。これにより、複数個の使用済み紙おむつ2間の空気が放出され、複数個の使用済み紙おむつ2の嵩が小さくなる。この場合、押圧板22はダンパ23によって使用済み紙おむつ2を押圧した状態が維持される。押圧板22によって冷凍庫本体6の底部分との間で使用済み紙おむつ2が押圧された状態で、冷凍庫本体6内に冷却装置8から冷気が供給されることで、回収袋5内に集積された使用済み紙おむつ2が冷凍される。
【0045】
[変形例2]
次に本実施の形態に係る回収具3の変形例について図6を用いて説明する。上述した実施形態では、冷凍庫本体6を床24上に脚部25を介して設置した例を示したが、本実施形態の変形例2では、冷凍庫本体6は、冷凍装置8から切り離されて移動可能となっている。
【0046】
図6に示すように、冷凍庫本体6の底部26には、4個のストッパ付きのキャスター27、27、27、27が取り付けられている。また、冷凍庫本体6の一側面には、冷凍庫本体6を移動させる手押しバー28が設けられている。ストッパ付きキャスター27は、床面上で回転可能なコロと、このコロを支持する支持フレームとで形成されており、支持フレームは、コロを回転自在に支持するとともに鉛直方向を中心に回転可能となっている。このため、冷凍庫本体6を任意の方向に向けて移動させることができる。
【0047】
変形例2の冷凍庫本体6は、冷却装置8から切り離されて移動可能となっているので、紙おむつを交換する被介護者等の近くまで手押しバー28を操作して冷凍庫本体6を移動させることができる。そして、被介護者の紙おむつを新規なものと交換して直ぐに、使用済み紙おむつを冷凍庫本体6内に収容することができる。このため、使用済み紙おむつが被介護者のいる室内等にむき出しのまま置かれることがなく、紙おむつを交換した後に使用済み紙おむつを素早く冷凍庫本体6内に収容することで、臭気や各種病原菌が外部に放出するのを抑制することができる。また、被介護者から交換した使用済み紙おむつを、介護者等が集積場所まで運ぶ手間を省くことができる。
【0048】
以上説明したように、本実施の形態に係る回収方法および回収具3によれば、介護施設等の使用済み紙おむつ2等の使用済み衛生用品の使用場所1で複数の使用済み衛生用品は、内部が所定の温度の低温状態にされた回収具3内で低温状態でかつ密封状態で集積され、回収具3内の使用済み衛生用品を低温状態で処理施設13に搬送されるので、臭気や各種病原菌が外部に放出するのを抑制し、設置場所1の自由度が高い。また、使用済み衛生用品は冷凍状態となっているので、集積した状態で各種病原菌が増殖することがない。
【0049】
また、本実施の形態に係る回収方法および回収具3によれば、回収袋5内に使用済み紙おむつ2を集積するので、冷凍庫本体6の内壁に霜が発生しても、この霜に細菌類が含まれることがない。
【0050】
さらに、本実施の形態によれば、回収袋5を、使用済み紙おむつ2から回収したパルプによって製造することにより分離機16内に回収袋5ごと使用済み紙おむつ2を投入すれば、再びパルプ回収装置17によってパルプとして回収されるので、回収袋5にかかるコストを低減することが可能となる。
【0051】
また、本実施の形態によれば、回収袋5内に使用済み紙おむつ2を集積するので、使用場所1から回収袋5に集積された使用済み紙おむつ2を回収する際に回収する作業者が細菌類に触れることがなく衛生的に回収することができる。この場合、冷凍状態の回収袋5が結露して表面に水滴が発生しても、この水滴内には細菌類が付着していない。
【0052】
また、本実施の形態によれば、回収袋5内に使用済み紙おむつ2を集積し、回収袋5ごと使用場所1から回収するので、回収する際に細菌類が外部に漏れることがなく、これによって回収具3の設置場所を風通しの良い場所以外でも設置することができ、回収具の設置場所の自由度が向上する。
【0053】
上述の通り、本発明の実施の形態を開示したが、当業者によって本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が請求項に含まれることが意図されている。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係る回収方法は、使用済み紙おむつ2以外に、尿取りパッド、ペットシート等の他の衛生用品の回収にも用いることができる。
【符号の説明】
【0055】
1 使用場所
2 使用済み紙おむつ
3 回収具
5 回収袋
13 処理施設
図1
図2
図3
図4
図5
図6