(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】5-ベンジルアミノサリチル酸誘導体を含む化粧品組成物及びその局所使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/41 20060101AFI20240215BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20240215BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240215BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20240215BHJP
A61K 8/55 20060101ALI20240215BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240215BHJP
A61Q 19/02 20060101ALI20240215BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
A61K8/41
A61K8/06
A61K8/34
A61K8/39
A61K8/55
A61Q19/00
A61Q19/02
A61Q19/08
(21)【出願番号】P 2022501164
(86)(22)【出願日】2020-07-08
(86)【国際出願番号】 KR2020008962
(87)【国際公開番号】W WO2021006637
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-03-01
(31)【優先権主張番号】10-2019-0081887
(32)【優先日】2019-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0084014
(32)【優先日】2020-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】505274379
【氏名又は名称】ジーエヌティー ファーマ カンパニー, リミテッド
【住所又は居所原語表記】(Hagal-dong)23,Yonggu-daero 1855beon-gil,Giheung-gu,Yongin-si,Gyeonggi-do 17096 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100101340
【氏名又は名称】丸山 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100205730
【氏名又は名称】丸山 重輝
(74)【代理人】
【識別番号】100213551
【氏名又は名称】丸山 智貴
(72)【発明者】
【氏名】シン,チン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】カク,ピョン チュ
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,ソン ミ
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特公昭49-020197(JP,B1)
【文献】特開2012-153704(JP,A)
【文献】特表2010-540624(JP,A)
【文献】特表2003-535051(JP,A)
【文献】特開2004-137212(JP,A)
【文献】特表2019-510770(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0286046(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 31/00-31/80
A61P 17/00-17/18
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2-ヒドロキシ-5-[2-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-安息香酸(化合物2)またはこの美容学的に許容可能な塩を含み、
前記
2-ヒドロキシ-5-[2-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-安息香酸(化合物2)の美容学的に許容可能な塩は、
組成物の総重量に対して、0.001~1重量%を含み、
ナノ乳化化粧料組成物であり、前記ナノ乳化化粧料組成物は、0.02~0.1重量%の
下記化学式Iの化合物、30~60重量%のグリセリン、5~20重量のポリグリセリル-10オレエート、1~5重量の1,2-ヘキサンジオール、1~10重量%の水添レシチンを含む、抗炎症、抗酸化、皮膚美白および抗老化用化粧品組成物。
化学式I
前記化学式Iで、
Xは、CO、SO
2
または(CH
2
)
n
であり、
R
1
は、水素またはC
1
-C
6
アルキルであり、
R
2
は、水素またはC
1
-C
6
アルキルであり、
R
3
は、水素またはC
1
-C
5
アシルであり、
R
4
は、フェニル、フェノキシ、C
6
-C
10
アリールまたはC
5
-C
10
ヘテロアリールであり、前記アリールまたはヘテロアリールは、ニトロ(nitro)、ハロゲン(halogen)、C
1
-C
6
アルキル、C
1
-C
6
ハロアルキル、C
1
-C
5
アルコキシ、及びC
1
-C
5
ハロアルコキシ基で選択される1種以上の置換基で置換されてもよく、nは1~5の整数である。
【請求項2】
請求項1の化粧品組成物を含む機能性化粧品。
【請求項3】
しわの改善のために、レチノール、パルミチン酸レチノール、アデノシン及びポリエトキシル化レチンアミドの中で選択された少なくとも一つを含む請求項2に記載の機能性化粧品。
【請求項4】
美白のために、コウゾ抽出物、アルブチン、エチルアスコルビン酸、油用性甘草エキス、アスコルビルグルコシド、リン酸L-アスコルビルマグネシウム、ナイアシンアミド、α-ビサボロール、アスコビルテトライソパルミテートの中で選択された少なくとも一つを含む請求項2に記載の機能性化粧品。
【請求項5】
前記機能性化粧品は、ペースト、ゲル、クリーム、ローション、パウダー、固形石けん、水石けん、シャンプー、リンス、溶液、懸濁液、乳濁液、ミネラル化粧料、粉末香水、界面活性剤含有クレンジングまたは界面活性剤非含有クレンジング、オイル、粉末ファウンデーション、乳濁液ファウンデーション、染毛剤、ワックス、柔軟化粧水、栄養化粧水、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、パック、ベース、アイクリーム、香料、軟膏、クレンジングウォーター、ワックスファウンデーション、スプレーの何れか一つの形態で用いられることを特徴とする請求項2に記載の機能性化粧品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5-ベンジルアミノサリチル酸誘導体またはこの美容学的に許容される塩を含む抗炎症、抗酸化、皮膚美白及び抗老化用化粧品組成物に関する。
【0002】
本発明は、5-ベンジルアミノサリチル酸誘導体またはこの美容学的に許容される塩;及び局所投与に適した美容学的に許容される賦形剤を含む化粧品組成物を皮膚に適用して、皮膚老化及び皮膚損傷の主要危険因子である酸化ストレス及び炎症を予防して減少させることに関する。
【0003】
本発明は、5-ベンジルアミノサリチル酸誘導体またはこの美容学的に許容される塩;及び局所投与に適した美容学的に許容される賦形剤を含む化粧品組成物を皮膚に適用して、皮膚の粗さ、しわ、色素沈着及び乾燥を含む皮膚老化現象を改善することに関する。
【背景技術】
【0004】
皮膚老化及び損傷は、内因性(遺伝、細胞代謝、ホルモン、代謝)と外因性(光露出、汚染、イオン化、放射線、化学物質及び毒素)要因の複合的作用により発生し、皮膚組職で多様なシグナル伝達経路を通じて発生する。このような要因は、皮膚の見掛けだけでなく、各皮膚層に累積された構造的、生理的変化と退行的変化を招来して、皮膚老化及び損傷に寄与する。皮膚老化が進行されるにつれて、しわ、粗さ、乾燥、色素沈着病変などが主要特徴として発生される。
【0005】
反応性酸素種(reactive oxygen species、ROS)によって誘発された酸化ストレスは、内因性及び外因性皮膚老化及び損傷過程に重要な役割を果たす。内因性老化は、年を取るにつれて徐々に皮膚細胞活性が低下されて現われるが、皮膚細胞内で代謝過程で過剰に生成される反応性酸素種などによって発生する。外因性老化は、UVによる光老化、公害、微生物などの外部環境要因によって発生する。特に、紫外線が皮膚に吸収されることで現われる反応性酸素種を経由した二次的反応によって皮膚老化及び損傷が誘発されると知られている。また、反応性酸素種は、基質金属蛋白質分解酵素(matrix metalloproteases、MMPs)によって結合織成分であるコラーゲン合成を減少させ、皮膚纎維を攻撃して老化を加速させたりする。
【0006】
抗酸化剤は、長い間抗老化化粧品に用いられて来た。現在、抗酸化剤成分として、トコフェロール及びその誘導体が市販中の287個の製品の86%に用いられており、ビタミンC誘導体が30%の製品に用いられている。すなわち、抗酸化剤成分として特定抗酸化剤が制限的に用いられていて、抗酸化作用と安定性が立証された新規抗酸化剤の開発に対する必要性がある。α-トコフェロールよりも安定性の高いα-トコフェロールアセテート(ビタミンEアセテート)が化粧品成分として用いられたが、皮膚アレルギーや発疹を起こしたりし、皮膚での効果も明確でないという問題点が発見された。ビタミンC(アスコルビン酸塩)の抗老化効果は既に立証されたが、皮膚浸透力が低く、安定性が低くて、化粧品成分として用いるのに困難がある。ビタミンC誘導体が開発されて化粧品成分として用いられているが、皮膚組職に吸収されて効果を表すという結果はほとんどない。したがって、皮膚老化を遅延させて正常な細胞機能を保持するためには、安定性と安全性を備えた抗酸化物質を発掘することが重要であると言える。
【0007】
炎症媒介因子であるプロスタグランジンE2(PGE2)は、内因性、外因性老化要因に関する皮膚損傷で重要な役割を果たす。PGE2合成に必要な酵素であるCOX-2(cyclooxygenase-2)の発現は、内因性及び外因性老化とともに線維芽細胞(fibroblast)と角化細胞(keratinocyte)で増加する。培養した線維芽細胞にPGE2を処理すると、プロコラーゲンの量が60%減少し、COX-2抑制剤を処理すると、PGE2が減少し、プロコラーゲンの量が2倍まで増加する。また、PGE2は、皮膚でメラノソーム(melanosome)をケラチノサイトに移動するのに関与するメラノサイトの樹状突起 (melanocyte dendrite)を刺激するので、COX-2を抑制すれば、UVによって刺激されたケラチノサイトでの色素形成(pigmentation)を防ぐことができる。
【0008】
代表的なCOX-2抑制剤であるサリチル酸(salicylate)及び誘導体であるサリチル酸ブチルオクチル(Butyloctyl Salicylate)、カプリロイルサリチル酸(Capryloyl Salicylic Acid)、サリチル酸イソセチル(Isocetyl Salicylate)、サリチル酸マグネシウム(Magnesium Salicylate)、サリチル酸ナトリウム(Sodium Salicylate)、サリチル酸TEA(TEA-Salicylate)、サリチル酸トリデシル(Tridecyl Salicylate)、サリチル酸アミル(Amyl Salicylate)、サリチル酸ヘキシル(Hexyl Salicylate)、サリチル酸イソトリデシル(Isotridecyl Salicylate)などは、特定の濃度で化粧品に用いることが安全であると報告された。しかしながら、これらCOX-2抑制剤を局所的に用いると、皮膚乾燥、紅斑、刺激性、感覚異常、掻痒症、胃腸障害などの副作用が報告されていて、化粧品成分として用いるには制限がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ミクロソームプロスタグランジンE合成酵素(prostaglandin E synthases 1、mPGES-1)は、PGH2(Prostaglandin H2)でPGE2の生成に直接関与する最終段階の酵素であり、この阻害剤は、既存のCOX-2抑制剤とは違って、胃腸管及び心血管損傷などの副作用を誘発しないと報告されている。mPGES-1の発現は、紫外線の刺激を受けた皮膚組職と老人の皮膚で70%増加されている。よって、皮膚組職で局所的にmPGES-1の活性を抑制すると、安全に抗炎効果と抗老化効果を得ることができることと予想される。
【0010】
そこで、本発明者らは、抗酸化作用とmPGES-1抑制作用を保有した化合物を利用して、人の皮膚に安全に用いることができるとともに、皮膚に対する抗老化作用のある化粧品組成物を製造することを目的とする。
【0011】
本発明の目的は、老化、各種ストレスまたは公害などによる皮膚の刺激を緩和させ、皮膚に対する抗酸化、抗炎症、美白及び抗老化作用をする物質を提供することを目的とする。
【0012】
本発明の他の目的は、フリーラジカルを除去し、ミクロソームmPGES-1活性を阻害する有効成分を用いることにより、しわ改善と美白効果を有し、皮膚トラブルを改善させることができる化粧品組成物を提供することを目的とする。
【0013】
本発明は、人間皮膚の老化過程で発生する酸化ストレスと炎症を予防して減少させるための化粧品組成物を提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、人間の皮膚老化防止及び軽減のための化粧品の使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、下記化学式Iの5-ベンジルアミノサリチル酸誘導体またはこの美容学的に許容可能な塩を含む抗炎症、抗酸化、皮膚美白及び抗老化用化粧品組成物を提供する。
【0016】
[化学式I]
前記式で、
Xは、CO、SO
2または(CH
2)
nであり、
R
1は、水素またはC
1-C
6アルキルであり、
R
2は、水素またはC
1-C
6アルキルであり、
R
3は、水素またはC
1-C
5アシルであり、
R
4は、フェニル、フェノキシ、C
6-C
10アリールまたはC
5-C
10ヘテロアリールであり、前記アリールまたはヘテロアリールは、ニトロ(nitro)、ハロゲン(halogen)、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6ハロアルキル、C
1-C
5アルコキシ、及びC1-C5ハロアルコキシ基で選択される1種以上の置換基で置換されることができ、
nは、1~5の整数である。
【0017】
本発明は、前記化学式Iの5-ベンジルアミノサリチル酸誘導体またはこの美容学的に許容可能な塩を含む人の皮膚老化過程で発生する酸化ストレス及び炎症を減少させる化粧品組成物を提供する。
【0018】
本発明は、前記化学式Iで表示される5-ベンジルアミノサリチル酸誘導体またはこの美容学的に許容される塩を含む人間の皮膚老化を改善するための化粧組成物の用途を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明で、下記化学式Iの5-ベンジルアミノサリチル酸誘導体またはこの美容学的に許容可能な塩を含む組成物は、人間皮膚の老化過程で発生する酸化ストレス及び炎症を減少させるという効果を奏する。
【0020】
本発明の組成物を局所的に用いると、皮膚組職の抗炎症、抗酸化効果があり、美白効果があり、しわが減少するなどの老化改善効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】低温走査電子顕微鏡(Cryo-SEM)でナノ乳化組成物の粒子を確認した結果である。
【
図2】ELS(Electrophoretic light scattering)を利用してナノ乳化組成物のサイズを3回測定した結果である。
【
図3】臨床での皮膚明るさに対する改善効果を確認した結果である。
【
図4】臨床での皮膚メラニンに対する改善効果を確認した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、下記化学式Iの5-ベンジルアミノサリチル酸誘導体またはこの美容学的に許容可能な塩を含む抗炎症、抗酸化、皮膚美白及び抗老化用化粧品組成物を提供する。
[化学式I]
前記式で、
Xは、CO、SO
2または(CH
2)
nであり、
R
1は、水素またはC
1-C
6アルキルであり、
R
2は、水素またはC
1-C
6アルキルであり、
R
3は、水素またはC
1-C
5アシルであり、
R
4は、フェニル、フェノキシ、C
6-C
10アリールまたはC
5-C
10ヘテロアリールであり、前記アリールまたはヘテロアリールは、ニトロ(nitro)、ハロゲン(halogen)、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6ハロアルキル、C
1-C
5アルコキシ、及びC1-C5ハロアルコキシ基から選択される1種以上の置換基で置換されることができ、nは、1~5の整数である。
【0023】
本発明は、前記化学式Iの5-ベンジルアミノサリチル酸誘導体またはこの美容学的に許容可能な塩を含む人の皮膚老化過程で発生する酸化ストレス及び炎症を減少させる化粧品組成物を提供する。
【0024】
本発明者らは、抗酸化作用とmPGES-1抑制作用を保有した5-ベンジルアミノサリチル酸誘導体を利用して、人の皮膚に安全に用いることができる化粧品組成物を製造し、5-ベンジルアミノサリチル酸誘導体が人の皮膚で抗老化効果があるかを検証して、本発明を完成した。
【0025】
本発明の組成物は、前記化学式Iの5-ベンジルアミノサリチル酸誘導体またはこの美容学的に許容される塩で構成される。
【0026】
一実施様態において、前記化学式Iの化合物は、Xが(CH2)nであり得る。
【0027】
一実施様態において、前記化学式Iの化合物は、R4が非置換フェニルまたはニトロ(nitro)、ハロゲン(halogen)、C1-C6アルキル、C1-C6ハロアルキル、C1-C5アルコキシ、及びC1-C5ハロアルコキシ基から選択される1種以上の置換基で置換されたフェニルであり得る。
【0028】
一実施様態において、前記化学式Iの化合物は、R4がニトロ、ハロゲン、C1-C6アルキル、C1-C6ハロアルキル、C1-C5アルコキシ、及びC1-C5ハロアルコキシ基から選択される1種以上の置換基で置換されることができるC6-C10アリールであり得る。
【0029】
5-ベンジルアミノサリチル酸誘導体の好ましい例として、5-ベンジルアミノサリチル酸、2-ヒドロキシ-5-フェネチルアミノ-安息香酸(化合物1)、2-ヒドロキシ-5-[2-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-安息香酸(化合物2)、2-ヒドロキシ-5-[2-(3-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-安息香酸(化合物3)、5-[2-(3,5-ビス-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-2-ヒドロキシ-安息香酸(化合物4)、2-ヒドロキシ-5-[2-(2-ニトロ-フェニル)-エチルアミノ]-安息香酸(化合物5)、5-[2-(4-クロロ-フェニル)-エチルアミノ]-2-ヒドロキシ-安息香酸(化合物6)、5-[2-(3,4-ジフルオロ-フェニル)-エチルアミノ]-2-ヒドロキシ-安息香酸(化合物7)、5-[2-(3,4-ジクロロ-フェニル)-エチルアミノ]-2-ヒドロキシ-安息香酸(化合物8)、5-[2-(4-フルオロ-2-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-2-ヒドロキシ-安息香酸(化合物9)、5-[2-2-フルオロ-4-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-2-ヒドロキシ-安息香酸(化合物10)、2-ヒドロキシ-5-[2-(4-メトキシ-フェニル)-エチルアミノ]-安息香酸(化合物11)、2-ヒドロキシ-5-(2-o-トリル-エチルアミノ)-安息香酸(化合物12)、2-ヒドロキシ-5-(3-フェニル-プロピルアミノ)-安息香酸(化合物13)、2-ヒドロキシ-5-[3-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-プロピルアミノ]-安息香酸(化合物14)、5-[3-(4-フルオロ-フェニル)-プロピルアミノ]-2-ヒドロキシ-安息香酸(化合物16)、2-ヒドロキシ-5-(3-p-トリル-プロピルアミノ)-安息香酸(化合物17)、2-アセトキシ-5-[2-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-安息香酸(化合物18)、5-[2-(2-クロロ-フェニル)-エチルアミノ]-2-ヒドロキシ-安息香酸(化合物19)、5-ベンジルアミノサリチル酸(化合物20)、5-(4-ニトロベンジル)アミノサリチル酸(化合物21)、5-(4-クロロベンジル)アミノサリチル酸(化合物22)、5-(4-トリフルオロメチルベンジル)アミノサリチル酸(化合物23)、5-(4-フルオロベンジル)アミノサリチル酸(化合物24)、5-(4-メトキシベンジル)アミノサリチル酸(化合物25)、5-(4- ペンタフロオロベンジル)アミノサリチル酸(化合物26)、5-(4-ニトロベンジル)アミノ-2-ヒドロキシエチルベンゾエイト(化合物27)、5-(4-ニトロベンジル)-N-アセチルアミノ-2-ヒドロキシエチルベンゾエイト(化合物28)、5-(4-ニトロベンジル)-N-アセチルアミノ-2-ヒドロキシエチルベンゾエイト(化合物29)、5-(4-ニトロベンジル)アミノサリチル酸(化合物30)、5-(4-ニトロベンゼンスルホニル)アミノサリチル酸(化合物31)、5-[2-(4-ニトロフェニル)エチル]アミノサリチル酸(化合物32)及び5-[3-(4-ニトロ-フェニル)-n-プロピル]アミノサリチル酸(化合物33)を挙げることができるが、本発明はこれに限定されない。
【0030】
特定の好ましい実施様態において、化学式Iの化合物は、化合物2-ヒドロキシ-5-[2-(4-トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ]安息香酸(TFM、化合物2)またはこの美容学的に許容される塩である。
【0031】
一具体例において、前記化学式Iの化合物は、下記化学式IIの化合物であり得る。
[化学式II]
本発明の5-ベンジルアミノサリチル酸誘導体またはこの美容学的に許容可能な塩は、米国特許第6,573,402号に記載された反応式を含めて、多様な公知の方法によって製造されることができる。
【0032】
以下に説明される用語に対する定義は、用語自体の使用または他の用語との組合に適用可能である。
【0033】
「アルキル」基(ハロアルキルの「アルキル」を含む)または「アルカン」は、完全飽和された直鎖または分岐鎖非芳香族炭化水素である。典型的に、直鎖または分岐鎖アルキル基は、別に定義されない限り、1~約20個の炭素原子、好ましくは、1~約10個の炭素原子を有する。C1-C6直鎖または分岐鎖アルキル基は、また「低級アルキル」基と指称される。一実施様態において、アルキルは、C1-C6アルキル、より好ましくは、C1-C3アルキルである。より具体的には、好ましいアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル及びtert-ブチルを含むが、これに限定されるものではない。
【0034】
また、明細書、実施例及び特許請求範囲の全般にわたって用いられた用語「アルキル」(または「低級アルキル」)は、「置換されないアルキル」及び「置換されたアルキル」を全部含むことに意図され、「置換されたアルキル」は、アルキル残基炭化水素主鎖の一つ以上の炭素上の水素が置換された置換基を有する。このような置換基は、別に明示されない限り、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミルまたはアルキルC(O)のようなアシル)、チオカルボニル(例えば、チオエステル、チオアセタートまたはチオホルマート)、アルコキシ、ホスホリル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、シリルエーテル、スルフヒドリル、アルキルチオ、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミノ、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキルまたは芳香族またはヘテロ芳香族残基である。
【0035】
適切な場合、炭化水素鎖で置換された残基がそれ自体で置換基を有することができるということは、当業者に理解され得るはずである。例えば、置換されたアルキルは、置換体として、エーテル、アルキルチオール、カルボニル(ケトン、アルデヒド、カルボキシレート及びエステルを含む)、-CF3、-CN、アミノ、アジド、ホスホリル(ホスホネート及びホスフィネート含む)、スルホニル(スルフェート、スルホンアミド、スルファモイル、及びスルホネートを含む)またはシリル基の置換及び非置換形態を含むことができる。一例として、置換されたアルキルは以下に記載されている。シクロアルキルは、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルキルチオ、アミノアルキル、カルボニル-置換されたアルキル、-CF3及び-CNなどでさらに置換されることができる。
【0036】
アシル、アシルオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアルコキシのような化学残基とともに用いられる時、用語「Cx-Cy」は、鎖でx~y炭素を含有する基を含むことを意味する。例えば、「Cx-Cyアルキル」と言う用語は、置換または非置換された飽和炭化水素グループを意味し、トリフルオロメチル及び2,2,2-トリフルオロエチルのようなハロアルキルグループを含む鎖で、x~y炭素を含有する直鎖アルキル及び分岐鎖アルキルグループを意味する。C0アルキルは、基が末端位置にある場合には水素を示し、内部の場合には結合を示す。用語「C2-アルケニル」及び「C2-アルキニル」は、長さ及び加増した置換基が前記記載されたアルキルと類似するが、それぞれ一つ以上の二重または三重結合を含有する置換または非置換された不飽和脂肪族基を意味する。
【0037】
アシル、アシルオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアルコキシのような化学残基とともに用いられる場合、用語 「低級」は、置換体に10個以下の非-水素原子があるグループを含むことを意味する。好ましくは、6個以下である。例えば、「低級アルキル」は、10個以下の炭素原子、好ましくは、6以下を含有するアルキル基を示す。特定の実施様態において、本願で定義されたアシル、アシルオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアルコキシ置換体は、これらが単独で存在するか、または他の置換体、例えば、ヒドロキシアルキル及びアラルキル(この場合、アリール基内の原子はアルキル置換基内の炭素原子を計数する時にカウントされない)とともに存在するかにかかわらず、低級アシル、低級アシルオキシ、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニルまたは低級アルコキシである。
【0038】
用語「アルカノイル」または「アシル」は、HC(O)またはヒドロカルビル-C(O)-を意味し、ヒドロカルビル-C(0)-は、好ましくは、アルキル-C(0)-で示すグループを示す。好ましくは、アルカノイルは C2-C10アルカノイルで、より好ましくは、C3-C6アルカノイルである。より具体的には、好ましいアルカノイルはこれに限定されるのではないが、エタノイル、プロパノイル及びシクロヘキサンカルボニルを含む。
【0039】
用語「アルコキシ」(ハロアルコキシの『アルコキシ』を含む)は、酸素が付着されたアルキル基、好ましくは、低級アルキル基を意味する。一具体例において、好ましくは、アルコキシは、C1-C5アルコキシ、より好ましくは、C1-C3アルコキシである。より具体的には、好ましいアルコキシは、メトキシ、エトキシ及びプロパノオキシを含むが、これに限定されるのではない。
【0040】
用語「アミン」及び」「アミノ」は、当業界に公知されている非置換及び置換されたアミン及びこの塩を意味する。例えば、下記化学式IIIまたは化学式IVで表されるアミン基を含む。
【0041】
[化学式III]
-N(R5)2
[化学式IV]
-N(R5)3
+
R5は、独立的に水素またはヒドロカルビル基を表すか、2個のR5は、これらが付着されたN原子とともに環構造内に4~8個の原子を有する複素環を形成する。
【0042】
本願で用いられた用語「アリール」は、環の各原子が炭素である、置換または非置換芳香族基を含む。好ましくは、環は六員~十員環、より好ましくは、六員環である。
【0043】
本願で用いられた用語「ヘテロアリール」は環にN、O及びSで選択される1個以上のヘテロ原子を含む置換または非置換ヘテロ芳香族基を含む。好ましくは、環は五員~十員環である。
【0044】
用語「アリール」または「ヘテロアリール」は、2個以上の炭素が2個の隣接した環に共通の2個以上の環を有する多環式の環系を含む。この時、環の一つ以上は芳香族であり、他の環式環は芳香族でなくてもよく、例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール及び/またはヘテロシクリルであり得る。
【0045】
本発明のアリールまたはヘテロアリールは、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、フェノール、アニリンなどを含む。アリール基に対する例示的な置換基として、例えば、ハロゲン、トリフルオロメチルのようなハロアルキル、ヒドロキシル、カルボニル(カルボキシ、アルコキシカルボニル、ホルミルまたはアルキルC(0)のようなアシル)、アルコキシ基、ホスホリル基、ホスホネート基、ホスフィネート基、アミノ基、アミジン基、イミン基、シアノ基、ニトロ基、アジド基、シリルエーテル、スルフヒドリル、アルキルチオ、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキルまたは芳香族残基またはヘテロ芳香族残基を挙げることができる。
【0046】
本願で用いられた用語「ハロ」及び「ハロゲン」は、ハロゲンを意味し、クロロ、フルオロ、ブロモ及びヨードを含む。
【0047】
用語「置換された」は、主鎖の一つ以上の炭素上に水素を置換する置換基を有することを意味する。「置換」または「置換された」は、そのような置換が置換された原子及び置換基の許容された原子価により、置換が、例えば、自発的に発生しない安定した化合物を生成するという暗示的条件を含むということに理解し得るはずである。本願で用いられた用語「置換された」は、有機化合物の全て許容可能な置換基を含むことと考慮される。広い側面で、許容可能な置換基は、有機化合物の二環式及び環式、分岐鎖及び直鎖、炭素環式及び複素環式、芳香族及び非芳香族置換体を含む。許容可能な置換体は適切な有機化合物に対して一つ以上であり得、二つ以上の場合、これらは同一または相異し得る。本発明の目的のために、窒素のようなヘテロ原子は、水素置換基及び/またはヘテロ原子の原子価を満足させる本願に記載された何れの置換体、例えばハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシル、カルボニル(カルボキシ、アルコキシカルボニル、ホルミルまたはアシル)、チオカルボニル(チオエステル、チオアセタート)、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキルまたは芳香族またはヘテロ芳香族残基である。適切な場合、置換基自体が置換されることができることは当業者に理解され得る。「置換されない」と具体的に言及されない限り、本願の化学残基に対する言及は、置換された変異体を含むことに理解される。例えば、「アリール」基または残基は、暗示的に置換及び非置換された変異体を全部含む。
【0048】
本発明の「美容学的に許容可能な塩」と言う用語は、非毒性またはほとんど毒性のない酸または塩基による生成された塩を意味する。本発明の化合物が酸性の場合、本発明の化合物の塩基付加塩は、化合物の自由塩基を十分な量の好ましい塩基及び適切な不活性溶媒と反応させることで製造されることができる。美容学的に許容可能な塩基付加塩は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、マグネシウムまたは有機アミノによって製造された塩を含むが、これに限定されない。
【0049】
本発明の化合物が塩基性の場合、化合物の自由塩基は、十分な量の好ましい酸及び適当な不活性溶媒と反応させて化合物の酸付加塩を製造することができる。美容学的に許容される酸付加塩は、プロピオン酸、イソ酪酸、シュウ酸、りんご酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸、塩酸、臭素酸(bromic acid)、窒酸、炭酸(carbonic acid)、一水素炭酸、リン酸、一水素リン酸、硫酸、一水素硫酸、ヨウ化水素または亜リン酸(phosphorous acid)の塩である。また、本発明の美容学的に許容可能な塩は、アルギン酸(arginate)のようなアミノ酸の塩及びグルクロン酸(gluculonic)またはガラクツロン酸(galacturonic)のような有機酸の類似体を含むが、これに限定されない。
【0050】
例えば、本開示の好ましい一例である2-ヒドロキシ-5-[2-(4-トリフルオロメチルフェニル)-エチルアミノ]-安息香酸(化合物2)の美容学的に許容可能な塩は、下記の反応方法で製造されるが、本発明の範囲がこれに制限されるのではない。
<反応式1>
前記反応式で、Mは、美容学上許容される金属または塩基性有機化合物、例えば、ジエチルアミン、リチウム、ナトリウムまたはカリウムである。
【0051】
より具体的には、ジエチルアミン塩は、化合物をアルコールに溶解させ、ジエチルアミンを滴加し、混合物を撹拌し、真空化で蒸溜させ、エーテルを添加して、残留水を結晶化させることで製造されることができる。アルカリ金属塩は、アルコール、アセトン、アセトニトリルのような溶媒の中で水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのような無機試薬で好ましい塩を製造した後、凍結乾燥することにより製造されることができる。また、リチウム塩は酢酸リチウムで、ナトリウム塩は2-エチルヘキサンナトリウムまたは酢酸ナトリウムで、カリウム塩は酢酸カリウムで製造することができる。
【0052】
本開示内容の化合物の一部は水和された形態であり得、溶媒化されたり非溶媒化された形態で存在することができる。本発明に係る化合物の一部は、結晶形態または非晶質形態で存在し、任意の物理的形態で本発明の範囲に含まれる。また、本発明の一部化合物は、一つ以上の非対称炭素原子または二重結合を含むことができ、したがって、ラセミ体、鏡像異性体、部分立体異性体、幾何異性体などのような2個以上の異性体形態で存在する。本発明はこれら化合物の個別異性体を含む。
【0053】
<組成物>
本発明は、また前記化学式Iで表示される5-ベンジルアミノサリチル酸誘導体またはその美容学的に許容される塩と美容学的に許容される賦形剤または添加剤を含むことができる組成物を提供する。前記化学式Iで表示される5-ベンジルアミノサリチル酸誘導体またはこの美容学的に許容される塩は単独で投与されることができる。一具体例において、前記化学式Iで表示される化合物を含む組成物は適切な賦形剤、希釈剤などを含むことができる。
【0054】
前記賦形剤または添加剤は、当業界で化粧品組成物の製造に用いられる賦形剤または添加剤であれば、制限されることなく何れも使用可能であり、好ましくは、セラミド、非イオン界面活性剤、高級アルコール、コレステロール、エステルオイル、プロピレングリコール、β-シトステロール、植物性オイルなどを挙げることができる。
【0055】
一具体例において、本発明の化粧品組成物は、化学式Iの化合物またはこの美容学的に許容可能な塩を組成物の総重量に対して、0.001~1重量、好ましくは、0.01~0.1重量%、さらに好ましくは、0.02~0.1重量%含む。このように含まれる場合、抗酸化、皮膚鎮静性の増進、抗炎症、美白またはしわ改善効果を得ることができる。
一具体例において、本発明の化粧品組成物は、5-ベンジルアミノサリチル酸誘導体またはその美容学的に許容される塩の皮膚吸収率を高めて、皮膚での高い効果を得るために、ナノ大きさに乳化させて含有するナノ乳化化粧料組成物であり得る。
【0056】
前記ナノ乳化化粧料組成物は、5-ベンジルアミノサリチル酸誘導体とともに水相成分として、グリセリン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)三ナトリウム塩、ジプロピレングリコール、水添レシチン、ビタミン類、ペプチド類などを含み、油相成分として、植物性スクワラン、フェニルトリメチコン、シクロペンタシロキサン、オクタン酸セチル、メドウフォーム種子油、ジメチコーン、 トコフェリルアセタート、ワックスなどを含むことができる。
【0057】
前記ナノ乳化化粧料組成物は、0.02~0.1重量%の化学式Iの化合物、30~60重量%のグリセリン、5~20重量のポリグリセリル-10オレエート、1~5重量の1,2-ヘキサンジオール、1~10重量%の水添レシチンを含むことができる。
【0058】
本発明のナノ乳化組成物を作る方法を説明すれば下記の通りであるが、これに制限されるのではない。
【0059】
本発明は、前記化学式Iの化合物を美容学的製品に商品化するために、最終化粧料組成物を基準として、0.02~0.1重量%の前記化学式Iの化合物水溶液、及び乳化剤として2~10重量%の水添レシチンと、5~15重量%のポリグリセリンを含有する水相成分混合物を別途の溶解槽で準備する。その後、化学式Iの化合物の水溶液をポリグリセリン含有水相成分混合物に投入して、ホモミキサーまたはパドルミキサーで予備混合することにより、1次予備乳化組成物を得る。前記予備乳化組成物をマイクロフルイダイザーに入れて、1000barで3回、2次的に乳化させ、化学式Iの化合物含有ナノ乳化化粧料組成物を製造する。
【0060】
本発明で乳化剤として用いたレシチン(lecithin)は、動物の細胞膜系を構成する主要リン脂質成分の一つで、ホスファチジルコリン(phosphatidyl choline)とも呼ばれる物質であるが、グリセロールの一方にリン酸及びコリンなどの親水性成分が結合され、他方には疎水性のアシル基が結合された構造をしていて、界面活性を有する物質である。このようなレシチンは、皮膚の脂質成分と類似する組成を有していて、皮膚親和性が高く、化粧料の経皮吸収過程で角質層の皮膚透過性を促進することができる。
【0061】
本発明のナノ乳化化粧料組成物は、平均粒径が100~150nMの微細で均一な粒子を構成する。したがって、本発明のナノ乳化化粧料組成物を含んで化粧品を製造する場合、製剤の品質が優れ、有効成分の経皮吸収率及びそれによるしわ改善及び美白効果が大きく向上された化粧料を提供することができるようになる。
【0062】
化学式IIの化合物を含有したナノ乳化化粧料組成物の水相成分としては、グリセリン、ポリグリセリル-10オレエート、1,2-ヘキサンジオール、水添レシチンを用いる。
【0063】
<機能性化粧品>
本発明は、前記組成物を含む機能性化粧品を提供する。本発明の化粧品は、美容学的製品に商品化されて皮膚に局所的に用いられることができる。本発明の美容学的製品は、顔または体のために、アンプル、マスク、クリーム、セラム、バーム(balm)またはゲル形態であり得る。
【0064】
本発明の機能性化粧品は、抗酸化用、皮膚鎮静性の増進用、抗炎症用、美白用またはしわ改善用であり得る。本発明の機能性化粧品は、前記効果のために、有効成分として前記化学式Iの化合物を0.0001~0.1重量%含有し得る。
【0065】
本発明の化粧品は、しわの改善のために、前記化学式Iの5-ベンジルアミノサリチル酸誘導体またはこの美容学的に許容可能な塩とともにレチノール、パルミチン酸レチノール、アデノシン及びポリエトキシル化レチンアミドの中で選択された少なくとも一つを含むことができる。
【0066】
本発明の化粧品は、美白のために、コウゾ抽出物、アルブチン、エチルアスコルビン酸、油用性甘草エキス、アスコルビルグルコシド、リン酸L-アスコルビルマグネシウム、ナイアシンアミド、α-ビサボロール、アスコビルテトライソパルミテートの中で選択された少なくとも一つを含むことができる。
【0067】
本発明の機能性化粧品は、ペースト、ゲル、クリーム、ローション、パウダー、固形石けん、水石けん、シャンプー、リンス、溶液、懸濁液、乳濁液、ミネラル化粧料、粉末香水、界面活性剤含有クレンジングまたは界面活性剤非含有クレンジング、オイル、粉末ファウンデーション、乳濁液ファウンデーション、染毛剤、ワックス、柔軟化粧水、栄養化粧水、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、パック、ベース、アイクリーム、香料、軟膏、クレンジングウォーター、ワックスファウンデーション、スプレーの何れか一つの形態で用いられることができる。
【0068】
本発明は、また人間皮膚の老化過程で、酸化ストレス及び炎症を予防及び減少させるための5-ベンジルアミノサリチル酸誘導体またはその美容学的に許容される塩の用途を提供する。すなわち、本発明は、前記化学式Iで表示される5-ベンジルアミノサリチル酸誘導体またはこの美容学的に許容される塩を含む、人間の皮膚老化を改善するための化粧品組成物または前記組成物を含む化粧品を提供する。より具体的には、5-ベンジルアミノサリチル酸誘導体またはその美容学的に許容される塩を含む化粧品組成物または化粧品は、皮膚質感、しわ、着色及び乾燥を含んで、人間の皮膚老化を改善させるのに用いられることができる。
【0069】
一具体例において、本発明の組成物は、人間の皮膚老化プロセスを改善させるための化粧品の製造に用いられる。一具体例において、本発明の組成物は、酸化ストレス及び炎症の薬理学的抑制を通じた皮膚老化プロセス改善のための化粧品の製造に用いられる。一具体例において、本発明の組成物は、酸化ストレス及びプロスタグランジンE2合成を抑制することにより、皮膚老化プロセスを改善するための化粧品の製造に用いられる。一具体例において、本発明の組成物は、酸化ストレス及びミクロソームプロスタグランジンE合成酵素-1の抑制を通じて皮膚を改善させるための化粧品の製造に用いられる。
【0070】
以下、一実施例によって当業者が本開示内容を理解することができるように詳細に説明される。しかし、下記実施例は、説明の目的で提供され、本発明の範囲を制限しようとするのではない。要するに、本発明の思想及び範疇を逸脱したり全ての物質的利点を犠牲しない範囲内で多様な変化が施されることができることは明白である。
【0071】
<実施例>
実施例1.人間の皮膚に対する安全性評価
化合物2の安全性は、33名の人間志願者のパッチテストによって評価された。この時、試験部位に0.0544mg/mlの化合物2を含む組成物で処理されたパッチを付着した後、24時間経ってから、パッチを引き離して位置を表示した。1時間後に反応度を判定して記録し、さらに24時間が経過した後、反応度と皮膚刺激指数を評価して表2と表3に示した。皮膚反応度の判定基準は下記の表1の通りである。
【0072】
【表1】
皮膚反応度は、33名を対象とした評価値の平均に25をかけて得、この値を評価回数で割って皮膚刺激指数を求めた。
試験物質の皮膚刺激程度は、皮膚刺激指数表(表1)を参照して判定した。
【0073】
【0074】
【表3】
前記表3を参照すると、化合物2を用いる間に、特別な皮膚異常反応に対する報告はなく、皮膚科専門医による医学的検査上でも異常所見は観察されなかった。
【0075】
実施例2.ナノ乳化組成物の製造
化合物2の経皮吸収率を高めるために、最終化粧料組成物を基準として、0.05重量%の化合物2、50重量%のグリセリン、10.00重量%のポリグリセリル-10オレエート、2.00重量%の1,2-ヘキサンジオール、5.00重量%の水添レシチン及び水を、ホモミキサーで予備混合して1次予備乳化組成物を得、これをマイクロフルイダイザーに入れ、1000barで3回、2次的に乳化させて、平均粒径が100~150nMの、微細で均一な粒子で構成されたナノ乳化組成物を製造した。
【0076】
低温走査顕微鏡を通じてリポソームの形成を確認し、ELS(Electrophoretic light scattering)を利用して、ナノ乳化組成物のサイズを測定した。その結果は、各
図1及び
図2に示した。
【0077】
実施例3.試験製品及び対照製品の製造
試験製品として、0.064重量%の実施例2のナノ乳化組成物(化合物2は0.0032重量%)、30重量%のグリセリン、28.5重量%のカタツムリ粘液ろ過物、5.0重量%のブチレングリコール、3.0重量%のイソペンチルジオール及び精製水を含んでアンプルを製造した。
対照製品として、本発明のナノ乳化組成物を除いた残り成分を含む製品を製造した。
【0078】
実施例4.臨床でのしわと美白に対する改善効果
化合物2を含有するアンプルのしわと美白に対する効果を確認するために、22名の30~55歳の健康な韓国女性(以下、「被験者」)を対象として実験した。前記対象者に化合物2を含有するアンプル(試験製品)を朝夕2回ずつ適量を目もとしわを含んだ顔内側から外側へ肌のきめに沿って吸収させるようにして、2ヶ月間連続的に塗るようにした。
【0079】
しわの程度と着色の程度の測定対象部位は、被験者の目もとと頬部位で、顔を半分に分けて、左側と右側を特定部位にして、顔の半分は試験製品を塗り、残り半分は対照製品を塗るようにした。しわと着色程度の測定のために、被験者は、室内温度20~25℃、湿度40~60%の恒温恒湿条件の待機室で30分間安定を取って、皮膚表面の温度と湿度を測定空間の環境に適応するようにし、安定する間の水分攝取は制限した。客観的に測定するために、研究者1人が測定し、製品の使用前(訪問1)、製品使用4週(訪問2)、そして8週(訪問3)後に、各測定時に同じ部位を測定することができるようにした。
【0080】
(1)しわ改善効果
各被検者のしわ改善効果を試験製品の使用前と使用後4週、そして8週に試験製品と対照製品を適用した部位に対して製作した皮膚模似板をビジオメータ(Visiometer)SV700(Courage_Khazaka electronic GmbH、Germany)を利用して、透明形状測定分析(transparancy profilometry analysis)を実施して分析し、しわのパラメータとしては、R1、R2、R3、R4、R5を利用した(R1:Skin roughness、R2:Maximum roughness、R3:Average roughness、R4:Smoothness depth、R5:Arithmetic average roughness)。その結果は、下記表4及び表5に示した。
【0081】
【0082】
【表5】
試験製品(化合物2を含むアンプル)を用いた実施例で、皮膚しわパラメータであるR1、R2、R3、そしてR5で有意的に確実な減少を見せ、R4を減少させる傾向を見せることから皮膚しわ改善効果が非常に優れることを確認した。
【0083】
(2)美白効果
皮膚明るさの測定は、スペクトロメータ(Spectrometer)CM700-d(Konica Minolta、Japan)を利用して、測定を3回実施した後、平均値を皮膚明るさ評価資料として用い、測定変数の中でL*値で皮膚明るさを評価した。皮膚メラニンは、メグザメータ(Mexameter)MX18(courage+Khazaka electronic Gmbh、Germany)を利用して測定した。メグザメータ(Mexameter)は、狭帯域反射率分光光度計(Narrow-band reflectance spectro-photometer)でプローブ(probe)で568nm(Green)、660nm(red)、880nm(infared)の光を放出して皮膚で反射される光を測定し、単位はM.I(Melanin Index)を利用した。その結果は、
図3及び
図4に示した。
【0084】
試験製品(化合物2を含むアンプル)を用いた実施例で、皮膚明るさを示すL*値が確実に増加し、M.I数値も減少することから皮膚美白に対する効果が非常に優れることを確認した。
【0085】
以下、身体または顔の皮膚上に局所的に用いるために製剤化された本発明の化粧品の非限定的な製造例を記載する。
【0086】
製造例1.ナノ乳化組成物
ナノ乳化組成物の成分は表6の通りである。
【0087】
【0088】
製造例2.アンプルの製造
下記表7の組成でアンプルを製造した。
【0089】
【0090】
製造例3.トーナーの製造
下記表8の組成でトーナーを製造した。
【0091】
【0092】
製造例4.ローションの製造
下記表9の組成でローションを製造した。
【0093】
【0094】
製造例5.マスクシートの製造
下記表10の組成でフェイスマスクシートを製造した。
【0095】
【0096】
産業上の利用可能性
本発明の5-ベンジルアミノサリチル酸誘導体またはこの美容学的に許容される塩を含む抗炎症、抗酸化、皮膚美白及び抗老化用化粧品組成物は、化粧品の製造に用いられることができる。