(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】基材にデジタル印刷するためのヘッド、機械、及び方法
(51)【国際特許分類】
B05C 5/00 20060101AFI20240215BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240215BHJP
B41J 2/17 20060101ALI20240215BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20240215BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20240215BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20240215BHJP
B05D 3/02 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B41J2/01 301
B41J2/01 129
B41J2/17 103
B41M5/00 100
B05C11/10
B05D1/26 Z
B05D3/02 Z
(21)【出願番号】P 2022503435
(86)(22)【出願日】2020-07-10
(86)【国際出願番号】 ES2020070448
(87)【国際公開番号】W WO2021009400
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2022-06-28
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516277439
【氏名又は名称】バルベラン ラトーレ, イエズス フランシスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100158920
【氏名又は名称】上野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】バルベラン ラトーレ, イエズス フランシスコ
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-172526(JP,A)
【文献】特開2011-201125(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/151553(US,A1)
【文献】カナダ国特許出願公開第2552820(CA,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/104946(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/021549(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00 -21/00
B05D 1/00 - 7/26
B41J 2/01,
2/165- 2/20,
2/21 - 2/215
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に印刷するためのデジタル印刷ヘッドであって、
-生産物を前記基材に射出するための射出器(1.1)と、
-前記基材に射出された前記生産物が乾燥するように前記生産物に作用するための乾燥部(1.2)と
、
-射出された前記生産物が噴霧によって前記乾燥部(1.2)に直接到達するのを防ぐ遮蔽手段
と
を含み、前記乾燥部(1.2)は、前記生産物が射出された際に、前記乾燥部(1.2)によって乾燥される
ようにして、前記射出器(1.1)に対応して配置され
、前記遮蔽手段は、噴霧生産物が射出された時に前記噴霧生産物が到達するようにして前記乾燥部(1.2)に対応して配置された障壁部(2.1)を含み、前記障壁部(2.1)は、プラスチック材料で作られて弾性変形可能に構成され、前記障壁部(2.1)は、前記乾燥部(1.2)に対応して、配置及び除去のそれぞれのために、巻きを解くことよって供給されること及び巻き取られることができるように構成されていることを特徴とする、デジタル印刷ヘッド。
【請求項2】
前記乾燥部(1.2)は、UV、UV-LED、又は赤外線の放出源である
、請求項1に記載のデジタル印刷ヘッド。
【請求項3】
前記遮蔽手段は、
前記噴霧生産物が射出された時にそれが硬化部(1.2)から逸らされる
ように空気を噴射するための空気ポンプを含む
、請求項1又は2に記載のデジタル印刷ヘッド。
【請求項4】
前記空気ポンプは、送風又は吸引によって空気の流れを発生させるように構成されている
、請求項3に記載のデジタル印刷ヘッド。
【請求項5】
前記遮蔽手段は、
前記噴霧生産物が射出された時にそれが硬化部(1.2)から逸らされる
ように静電荷を発生させるための電荷発生器を含む
、請求項1から4のいずれか一項に記載のデジタル印刷ヘッド。
【請求項6】
前記障壁部(2.1)は、射出された前記生産物の噴霧を受けると共に、前記基材に射出された前記生産物に対して前記乾燥部(1.2)が作用することができるように構成されている
、請求項
1から5のいずれか一項に記載のデジタル印刷ヘッド。
【請求項7】
前記遮蔽手段は、前記障壁部(2.1)を保持するための、基部(1.3)に支持されて配置されたフレーム(2.2)を含む
、請求項
1から6のいずれか一項に記載のデジタル印刷ヘッド。
【請求項8】
前記障壁部(2.1)は、閉じた経路により供給されることができるように構成されている
、請求項
1から7のいずれか一項に記載のデジタル印刷ヘッド。
【請求項9】
前記遮蔽手段は、
前記噴霧生産物を受けるために配置された物質を含み、該物質は、除去可能に塗布される
、請求項1から
8のいずれか一項に記載のデジタル印刷ヘッド。
【請求項10】
請求項
8に記載のデジタル印刷ヘッドと、前記障壁部(2.1)に対して射出された
前記噴霧生産物を除去するように構成された洗浄手段とを含む、基材に印刷するためのデジタル印刷機。
【請求項11】
請求項1から
9のいずれか一項に記載のデジタル印刷ヘッドを用いて基材にデジタル印刷する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル印刷技術による基材への印刷に関係する産業、より具体的には、射出及びその印刷物の乾燥に関係する産業に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル印刷は、今日では基材になされることが知られており、その基材はパネルによって構成され、例えば木材(パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)、高密度繊維板(HDF)、合板)、プラスチック(PVC)、セルロース系材料(紙又は段ボール)、及び金属から選択されることができる材料からなる。
【0003】
印刷品質、すなわち画像解像度に関してより良い結果を得るのと同時に、速い印刷速度を提供することができるように、今日では生産物の射出器及び硬化部の両方を有する印刷ヘッドが使用されている。硬化部は、例えばUV、UV-LED、赤外線などの放射物放出源である。
【0004】
したがって、硬化部は、射出器によって射出された生産物がその生産物の少なくとも部分的な硬化を直ちに受けるように、射出器に対して近接して配置される。
【0005】
しかしながら、この配置は、まさに射出器と硬化部の上記近接の結果として、重大な欠点を伴う。
【0006】
生産物が印刷ヘッドによって射出器を通じて射出される時、この射出は、直線的に、すなわち、その射出器によって定められる方向に従って行われる。しかしながら、射出器による射出は射出された生産物の噴霧を伴い、非常に低い割合であり、人間の目にはほとんど分からないが、噴霧が生じる。この噴霧は、射出の直線経路に対する、数ピコリットルの体積の微小液滴の離脱又は逸脱によって定義されることができる。
【0007】
この噴霧により、各射出での射出地点に対応する場所以外の場所に望ましくない汚れが生じる。また、その噴霧は、上述した硬化部に配置される生産物を生じる。
【0008】
これによると、硬化部は更に射出物の硬化を行う部分であることで、硬化部には、基材の射出地点での硬化又は乾燥が効果及び均一性の観点から損なわれるような、噴霧生産物による望ましくない染色又は被覆が生じる。
【0009】
印刷速度及び印刷品質は、硬化部の汚れ、硬化部の使用中に提供される効果及び均一性、並びに硬化部を洗浄するために必要な運転又は印刷の停止によって直接的に左右される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
今日存在する方法の上述した欠点又は制限を考慮し、射出ノズルに対して硬化部を近接して配置することを可能にすると同時に、長い期間に亘って効果及び均一性を提供し、更に硬化部を洗浄するために必要な印刷の停止を排除する方法が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成し、これまでに述べた技術的問題を解決し、加えて以下から分かり得る追加の利点を提供するために、本発明は、基材に印刷するためのデジタル印刷ヘッド及びそのデジタル印刷ヘッドを含むデジタル印刷機と、そのデジタル印刷ヘッド及び/又はそのデジタル印刷機を用いたデジタル印刷方法を提供する。
【0012】
基材に印刷するためのデジタル印刷ヘッドは、基材に生産物を射出するための射出器と、基材に射出された生産物に、それが乾燥又は硬化されるように作用するための乾燥部とを含む。
【0013】
本発明のデジタル印刷ヘッドは、射出された生産物が噴霧によって乾燥部に直接到達するのを防ぐための遮蔽手段を更に含む。
【0014】
これによれば、乾燥部は、生産物が射出された時に生産物が乾燥部によってもたらされ得る乾燥又は硬化を受けることができるようにして、射出器に対応して配置される。
【0015】
好ましくは、乾燥部は、UV、UV-LED、又は赤外線の放出源である。
【0016】
遮蔽手段は、空気を噴射するか又は気流を発生させるための空気ポンプを含むことができ、それにより噴霧生産物が射出された時に、それは硬化部から逸らされることができる。これによれば、空気ポンプは、送風又は吸引によって空気の噴射又は気流を生じるように構成される。
【0017】
空気ポンプに加えて又は空気ポンプの代わりとして、遮蔽手段は、噴霧生産物が射出された時に、噴霧生産物が硬化部から逸らされることができるような静電荷を発生させるための電荷発生器を含むことができる。
【0018】
空気ポンプ及び/若しくは電荷発生器に加えて、又はその代わりとして、遮蔽手段は、噴霧生産物が射出された時に噴霧生産物が到達し得るようにして乾燥部に対応して配置された障壁部を含むことができる。
【0019】
障壁部は、好ましくは、射出された生産物の噴霧を受けると共に、基材に射出された生産物に対して乾燥部が作用することができるように構成される。
【0020】
任意で、遮蔽手段は、障壁部を保持するための、基部に支持されて配置されたフレームを含む。
【0021】
障壁部は剛性であり、水晶、ガラス、プラスチックから選択されることができる材料で作られる。あるいは、障壁部は、プラスチック材料、好ましくはポリエチレンテレフタレート(PTET)で作られており、弾性変形可能であるように構成される。
【0022】
障壁部の弾性変形能力に応じて、障壁部は、乾燥部に対応して配置及び除去されるために、それぞれ巻きを解くことよって供給されること及び巻き取られることができる。あるいはまた、障壁部の弾性変形能力に応じて、障壁部は、閉じた経路により供給されることができるように構成される。
【0023】
空気ポンプ、電荷発生器、及び/又は障壁部に加えて、あるいはその代わりとして、遮蔽手段は、噴霧生産物を受けるために配置された物質を含むことができ、その物質は除去可能に塗布されることができる。
【0024】
好ましくは、障壁部が閉経路に従って供給されることができるように構成される場合、上述のデジタル印刷ヘッドを含む基材に印刷するためのデジタル印刷機は、障壁部に対して射出された噴霧生産物を除去するように構成された洗浄手段を更に含む。これによれば、その洗浄手段は、連続的に、すなわち、障壁部が硬化部に対する連続した移動の間に洗浄されるようにして障壁部の移動に従って、その除去を行うように構成される。
【0025】
基材に印刷をデジタル印刷するための本発明の方法は、デジタル印刷ヘッド及びデジタル印刷機について上述したようにして、デジタル印刷ヘッド及び/又はデジタル印刷機を使用する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】一実施形態による、本発明のデジタル印刷ヘッドに含まれる硬化部及び遮蔽手段の概略図を示す。
【
図2A】デジタル印刷ヘッドに含まれる複数の射出器と、複数の硬化部のうちの1つの側面概略図を示す。
【
図2B】
図2Aの底面概略図を示し、別の実施形態により、硬化部が遮蔽手段によって覆われている。
【
図3】追加の実施形態による、デジタル印刷ヘッドに含まれる遮蔽手段の概略図を示す。
【
図4】デジタル印刷ヘッドの部分的な底面概略図を示し、追加の実施形態による遮蔽手段を見ることができる。
【
図5】デジタル印刷ヘッドの部分的な底面概略図を示し、別の追加の実施形態による遮蔽手段を見ることができる。
【
図6-7】硬化部の正面概略図を示し、硬化部は、2つの配置の選択肢により、更なる追加の実施形態での遮蔽手段によって覆われる。
【
図8】デジタル印刷ヘッドの部分的な概略図を示し、更なる追加の実施形態による遮蔽手段を見ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、基材に印刷するためのデジタル印刷ヘッド、このデジタル印刷ヘッドを備えたデジタル印刷機、及びそのデジタル印刷機、したがって基材に印刷するための上記のデジタル印刷ヘッドを使用して基材にデジタル印刷する方法に関する。
【0028】
印刷又は処理される基材は、不連続の又は連続した形態を有する。すなわち、それらは、個別に独立した方法で、又はそれらが例えば巻かれた若しくは折り畳まれた形態から延ばされる又は引き出されるような連続した方法で、本発明の印刷械に供給されることができる要素である。
【0029】
また、基材は、木材(例えば、中密度繊維板(MDF)、高密度繊維板(HDF)、及びパーティクルボードによって)、HPL、プラスチック、複合材、及び例えば紙や段ボールなどのセルロース誘導体から好ましくは選択される材料を含む、様々な材料で作られることができる。
【0030】
対応する基材を処理又は印刷するために、本発明は、好ましくは少なくとも1つの生産物、より好ましくは少なくとも2つ、更により好ましくは少なくとも3つの生産物を射出することを含む。基材に射出される生産物は、例えば「下塗り」のための白塗料、パテ、ワニス、接着剤、印刷インク、ワニス、及びラッカーから選択されることができる。
【0031】
それらの生産物の1つ又は複数を塗布又は射出することによって対応する基材を処理又は印刷するために、本発明の印刷機は、少なくとも1つの印刷ヘッド、好ましくは1つに加えて、印刷ヘッドの数が2つ、3つ、4つ、又はそれ以上であり得るような複数の印刷ヘッドのセットを含む。そして、各印刷ヘッドは、対応する生産物を基材に射出するための少なくとも1つの射出器(1.1)を有する。
【0032】
基材に印刷又は基材を処理する際に高解像度の結果と高品質の仕上がりを得るために、デジタル印刷ヘッドは、射出器(1.1)によって射出された生産物を少なくとも部分的に乾燥又は硬化するように構成された乾燥部(1.2)を有する。
【0033】
また、対応するデジタル印刷ヘッドは、印刷される基材の表面に面して又は平行に配置された基部(1.3)を有する。射出器(1.1)及び乾燥部(1.2)は、基部(1.3)に対して突出しているか、又は基部(1.3)から突出している。
【0034】
乾燥部(1.2)は、好ましくは、赤外線、UV(紫外線)、又はUV-LEDの放射物放出源である。あるいは、乾燥部(1.2)は、超音波、又は電子線照射(EBI)若しくは電子線処理の形でベータ線を使用する放射物放出源である。そのため、乾燥部(1.2)は、好ましくは、光拡散器又は電球などによるガラス若しくはプラスチックでのランプ又は電球である。
【0035】
射出器(1.1)に対する乾燥部(1.2)の配置によれば、生産物が対応する射出器によって射出された瞬間から、その射出された生産物は、対応する乾燥部(1.2)の作用によって完全又は部分的に乾燥されることができる。したがって、各射出器(1.1)の射出物は、所望の状態により基材に配置されることができる。
【0036】
射出された生産物の所望の状態の1つは、半乾燥又は半硬化状態と言われることもある、中間の乾燥又は硬化状態に対応する。言い換えれば、対応する射出器(1.1)によって射出された生産物は、それがゲル化するように、全体が硬化又は完全に硬化することなく、部分的に硬化又は乾燥される。
【0037】
射出された生産物の所望の状態の別のものは、完全に乾燥又は完全に硬化した状態と言われることもある、最終的な乾燥又は硬化状態に対応する。言い換えれば、対応する射出器(1.1)によって射出された生産物は、全体が乾燥又は固化されるように、全体的に若しくは完全に硬化又は乾燥される。
【0038】
生産物が印刷ヘッドによって射出器(1.1)を通じて射出される時、この射出は、直線的に、すなわち、そのノズル(1.1)によって定められる方向に従って行われる。しかしながら、射出器(1.1)による射出は射出された生産物の噴霧を伴い、非常に低い割合であり、人間の目にはほとんど分からないが、噴霧が生じる。この噴霧は、射出の上述した直線的な経路に対する、数ピコリットルの体積の微小液滴の離脱又は逸脱によって定義されることができる。
【0039】
この噴霧により、基材に定められることができる射出地点に対応する場所以外の場所に望ましくない汚れが生じる。これによれば、噴霧生産物は、硬化部(1.2)、より具体的にはそれらの光拡散器又は電球に到達することがあり、それにより硬化部(1.2)は、射出の間に部分的に又は完全に覆われる。
【0040】
また、硬化部(1.2)の作用を受けて、噴霧生産物は、その場で硬化部(1.2)によって硬化される。これは、噴霧生産物が完全に硬化するように行われる。更にその硬化は、1秒以下、すなわち10分の1秒又は1000分の1秒でさえ起こり得るので、ほぼ即時と考えることができる方法で起こる。
【0041】
生産物に関して上述されたように、それは噴霧されて硬化部(1.2)で硬化されて、それにより硬化部(1.2)の作用を妨げる。硬化部(1.2)への複雑で制限されたアクセス性に加えて、硬化部(1.2)に対する噴霧生産物の除去が複雑な問題である。射出された生産物の噴霧は、射出回数の増加に従って硬化部(1.2)が放射する放射物がより大きく妨げられる又は遮断されることを考えると、汚れ、又は基材での印刷結果を最適化することに対する障害を伴う。
【0042】
基材に印刷又は基材を処理する時に高解像度の結果と高品質の仕上がりを得ることを最適化するために、デジタル印刷ヘッドは遮蔽手段を含む。これらの遮蔽手段は、噴霧生産物の一部が射出中に硬化部(1.2)に到達したり、硬化部(1.2)に直接衝突したりするのを防ぐように構成及び配置されている。
【0043】
第1の好ましい実施形態によれば、遮蔽手段は、噴霧生産物を受けて保持するための少なくとも1つの障壁部(2.1)を含み、障壁部(2.1)は、基材に射出された生産物が硬化又は乾燥されることができるよう、硬化部(1.2)によって放射される放射物を通過させるように更に構成される。これによれば、障壁部(2.1)は、好ましくは硬化部(1.2)によって放射される放射物に対して部分的に透過性であり、より好ましくは完全に透過性であるように構成される。
【0044】
また、障壁部(2.1)は、硬化部(1.2)を覆うように構成される。それによれば障壁部(2.1)は、硬化部(1.2)の代わりに噴霧生産物を受けるために、硬化部(1.2)を覆って配置される。
【0045】
第1の好ましい実施形態によれば、障壁部(2.1)は剛性要素である。つまり、弾性的に変形可能でない。障壁部(2.1)は完全な剛性であることは決してなく、したがって人間の目には分からないものの、障壁部(2.1)に作用する負荷の作用下で変形するので、障壁部(2.1)の支配的な性質に従って剛性と定義される。これによると、この力学の分野は物体に作用する外力を考察せずに、物体を考察するだけであることにより、運動学研究のための理想化の観点からは剛性であると見なされる。
【0046】
したがって、障壁部(2.1)は、例えば配置、取り外し、及び清掃される時に、耐衝撃性及び摩擦耐性を有する。言い換えれば、障壁部(2.1)は、少なくとも硬化部(1.2)よりもその取り扱いを大幅に容易にするように構成される。
【0047】
障壁部(2.1)のこの剛性の構成又は構造は、デジタル印刷ヘッドに、より具体的にはデジタル印刷ヘッドの基部(1.3)に支持されて配置される際に、必要とする接触がより少なくて済む。
【0048】
障壁部(2.1)は、好ましくは結晶、ガラス、プラスチックから選択される材料で作られ、より好ましくは水晶又はPET(ポリエチレンテレフタレート)で作られる。
【0049】
第2の好ましい実施形態によれば、遮蔽手段は、噴霧生産物を受けて保持するための障壁部(2.1)を含み、この例では、障壁部(2.1)はまた、基材に射出された生産物が硬化又は乾燥されることができるよう、硬化部(1.2)によって放射される放射物を通過させるように更に構成される。これによれば、障壁部(2.1)は、好ましくは硬化部(1.2)によって放射される放射物に対して少なくとも部分的に透過性であるように構成される。
【0050】
また、第1の好ましい実施形態のように、障壁部(2.1)は硬化部(1.2)を覆うように構成される。これによれば、障壁部(2.1)は硬化部(1.2)を覆って配置される。
【0051】
しかしながら、この第2の好ましい実施形態によれば、障壁部(2.1)は弾性変形可能である。つまり、第1の好ましい実施形態について説明したような剛性ではない。障壁部(2.1)は、好ましくはプラスチック材料で作られる。これによれば、障壁部(2.1)は、好ましくはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、及びポリエチレンテレフタレート(PET)から選択される材料で作られる。
【0052】
弾性変形は、障壁部(2.1)の取り扱いと使用に一定の柔軟性を提供する。これにより、障壁部(2.1)は巻かれること及び折り畳まれること、並びに巻き及び折り畳みから広げることも可能である。
【0053】
第1の好ましい実施形態及び第2の好ましい実施形態の両方によれば、遮蔽手段は、好ましくは取り付け又は接着により、障壁部(2.1)を保持するためのフレーム(2.2)を含んでもよい(
図1)。これにより、フレーム(2.2)は、障壁部(2.1)をデジタル印刷ヘッド、より具体的には基部(1.3)に配置するために使用される。好ましくは、フレーム(2.2)は金属材料で作られるが、代わりにプラスチック材料で作られることもできる。
【0054】
フレーム(2.2)に関する第1の取り得る構成によれば、フレーム(2.2)は、貫通穴を有するように構成される。障壁部(2.1)の1つが各貫通穴に配置されて、貫通穴を覆っている。
【0055】
図5に示されるように、各貫通穴の障壁部(2.1)は、好ましくは、デジタル印刷ヘッドに含まれる硬化部(1.2)の1つを覆うように構成される。あるいは、各貫通穴の障壁部(2.1)は、デジタル印刷ヘッドに含まれる複数の硬化部(1.2)を覆うように構成される。
【0056】
フレーム(2.2)に関する第2の取り得る構成によれば、フレーム(2.2)は、それが単一の貫通穴を有するように構成される。障壁部(2.1)は、各フレーム(2.2)の単一の貫通穴に配置されて、フレーム(2.2)を覆っている。
【0057】
対応する単一の貫通穴の障壁部(2.1)は、この場合には、デジタル印刷ヘッドに含まれる少なくとも1つの硬化部(1.2)、好ましくは複数の硬化部(1.2)を覆うように構成される。複数の硬化部(1.2)を覆うための単一の貫通穴の構成及び配置によれば、その複数の硬化部(1.2)は基部(1.3)に整列されている。
図4を参照されたい。
【0058】
第1の好ましい実施形態及び第2の好ましい実施形態の両方によれば、デジタル印刷ヘッドは、基部(1.3)に対して取り外し可能に遮蔽手段を設置及び支持するための配置手段を備える。
【0059】
デジタル印刷ヘッドにおける、より具体的にはデジタル印刷ヘッドの基部(1.3)に対する障壁部(2.1)の配置及び支持に関する第1の選択肢によれば、配置手段は、少なくとも1つの平らな又は同様の部分を含む。図示されないその配置手段は、それらがデジタル印刷ヘッドに、より具体的には基部(1.3)に、好ましくはねじ込み式の構成によって直接固定されることができるように構成される。
【0060】
更に、第1又は第2の取り得る構成によるフレーム(2.2)を含む遮蔽手段では、そのフレーム(2.2)は、フレーム(2.2)と、フレーム(2.2)によって保持される障壁部(2.1)の両方が支持されるようにして、基部(1.3)に対して上述した配置手段によって保持されるように構成される。
【0061】
遮蔽手段にフレーム(2.2)がない場合、障壁部(2.1)は、上述した配置手段によって基部(1.3)に障壁部(2.1)を支持するための機械加工(2.1’)を含むことができる。これによれば、障壁部(2.1)の機械加工(2.1’)は、好ましくは障壁部(2.1)の厚さを有する窪みで構成されて、上述した平らな又は同様の部分を受けるものである。
図2Bを参照されたい。
【0062】
デジタル印刷ヘッドにおける、より具体的にはデジタル印刷ヘッドの基部(1.3)に対する障壁部(2.1)の配置及び支持に関する第2の選択肢によれば、配置手段は溝(3.1、3.2)、特に基部(1.3)に溝(3.1、3.2)を含む。溝(3.1、3.2)による障壁部(2.1)の配置及び支持は、対応するフレーム(2.2)がない直接的なもの、又はフレーム(2.2)が溝(3.1、3.2)でデジタル印刷ヘッドと接し、障壁部(2.1)が対応するフレーム(2.1)によって保持される間接的なもののいずれかである。この第2の選択肢によれば、溝は開いた溝(3.1)又は閉じた溝(3.2)を意味することができる。
【0063】
図6の開いた溝(3.1)の場合、この開いた溝(3.1)は、基部(1.3)に対する垂直方向の動きによって障壁部(2.1)を溝に配置できるように構成され、より具体的には基部(1.3)に対するその垂直方向の動きのみが必要とされる。好ましくは、開いた溝(3.1)は、それが「U」字型の断面を有するか、又は溝の底に対して90°以上の角度を形成する側面を有するように構成される。
【0064】
また、少なくともこの第2の選択肢の場合、配置手段は、それぞれの開いた溝(3.1)に対して、少なくとも1つの、好ましくは少なくとも2つの固定要素(1.3’)を追加で含む。対応する固定要素(1.3’)は、開いた溝(3.1)で障壁部(2.1)を支持するように配置されている。このために、固定要素(1.3’)は、配置及び除去のそれぞれが、好ましくは嵌め込むこと及び力で分離させることによって、より好ましくはねじ込みシャフトをねじ込むこと及びそのねじ込みを外すことによってされるように構成される。この固定要素(1.3’)は、好ましくは金属板によって、より好ましくは細長い金属板によって構成される。
【0065】
図7の閉じた溝(3.2)の場合、この閉じた溝(3.2)は、基部(1.3)に平行な動きによって障壁部(2.1)を溝に配置できるように構成され、基部(1.3)に対する垂直方向の動きによって溝に障壁部(2.1)が配置されることができないようにする。好ましくは、開いた溝(3.1)は、その側面又はその側面の一部が、溝の底に対して90°未満の角度を形成するように構成される。
【0066】
これにより、その閉じた溝(3.2)は、障壁部(2.1)が阻害部、又は溝の底部に対して90°未満又はより小さい角度を形成する側面若しくは側面の一部によって支持されるように構成される。言い換えると、閉じた溝(3.2)は、上述の固定要素(1.3’)のような追加の要素を必要とせずに、障壁部(2.1)を収容及び支持するように構成される。好ましくは、閉じた溝(3.2)は、それが蟻継ぎ形状の断面を有するように構成される。
【0067】
デジタル印刷ヘッドにおける、より具体的にはデジタル印刷ヘッドの基部(1.3)に対する障壁部(2.1)の配置及び支持に関する第3の選択肢によれば、配置手段は、取り外し可能に固定するためのねじ(3.3)を含む。これによれば、遮蔽手段はフレーム(2.2)を含み若しくは含まずに、ねじ(3.3)はフレーム(2.2)又は障壁部(2.1)のいずれかを通って基部(1.3)にねじ込まれて配置される。
図3を参照されたい。
【0068】
この第3の選択肢は、上述の第2の選択肢と組み合わされることができる。これにより障壁部(2.1)は、溝(3.1、3.2)にねじ(3.3)を配置してねじ込むことによって、直接的に又は間接的に支持される。
【0069】
第1の好ましい実施形態によれば、遮蔽手段、すなわち障壁部(2.1)及び任意で遮蔽手段がフレーム(2.2)を追加で含む場合にはフレーム(2.2)もまた、好ましくは不連続な形態を有する。これにより、その不連続形態によれば、その遮蔽手段は、デジタル印刷ヘッドに対して個別に分離された方法で設置及び除去されることができる。
【0070】
第2の好ましい実施形態によれば、上記の遮蔽手段、すなわち障壁部(2.1)及び任意で遮蔽手段がフレーム(2.2)を追加で含む場合にはフレーム(2.2)もまた、不連続な又は連続な形態を有する。すなわち、それらは個別の分離された方法で、又は連続的な移動又は周期的な移動のいずれかによるその移動によって、デジタル印刷ヘッドに対して設置及び除去されることができる。
【0071】
特に、遮蔽手段が上記の連続形態を有する場合、本発明の印刷機は、好ましくは、その遮蔽手段の移動を自動化するための移動手段を、そのような移動が連続的な移動による場合と周期的な移動による場合の両方で備える。その移動手段は、遮蔽手段が移動するように動きをもたらして伝達するためのモーター、好ましくは電気モーターを含み、印刷速度及び/又は遮蔽手段の汚れの程度に応じて移動手段を作動させるために、それぞれの周期的な移動をいつ行うか、そしてそれぞれがどれくらい続くべきかを定めるための制御器もまた任意で含む。
【0072】
上述した連続形態を考慮した好ましい形態によれば、遮蔽手段、すなわち障壁部(2.1)及び任意で遮蔽手段がフレーム(2.2)を追加で含む場合にはフレーム(2.2)もまた、射出の間に噴霧生産物の一部が硬化部(1.2)に到達すること又は直接衝撃を与えることを防ぐために動かされて巻きが延ばされ、そして再び巻かれる。したがって、遮蔽手段は、例えば後でのその使用、洗浄、又は廃棄のために、回収されるように巻かれることができる。
図8を参照されたい。
【0073】
上述した連続形態を考慮した別の好ましい形態によれば、遮蔽手段、すなわち障壁部(2.1)及び任意で遮蔽手段がフレーム(2.2)を追加で含む場合にはフレーム(2.2)もまた、閉経路に従って、すなわち無限又は閉ループモードで移動される。
【0074】
少なくともこの他の好ましい形態によれば、好ましい方法では、本発明の印刷機は、上記の遮蔽手段を洗浄するための洗浄手段を更に備える。これによれば、その洗浄手段は、その洗浄を連続的に、すなわち遮蔽手段の移動に従って行うように構成される。
【0075】
洗浄手段は、図示されないが、障壁部(2.1)及び任意で遮蔽手段がフレーム(2.2)を追加で含む場合にはフレーム(2.2)もまた、対応する硬化部(1.2)に対してのその各部分の各移動後に、その各部分は、新しい射出においてより多くの噴霧生産物を受けるために、衝突して保持された噴霧生産物が清掃される。
【0076】
これらの洗浄手段は、対応する生産物を遮蔽手段から除去する、取り除く、又は排除するように構成される。それにより、その洗浄手段は、溶媒を塗布するように、そして好ましくは、例えばローラー及びブロワーなどにより、その後に洗浄及び乾燥するようにも構成される。加えて又は代わりに、その洗浄手段は、噴霧生産物が遮蔽手段から機械的に離されるよう、スクレーパーを使用するように構成される。これらの上述された構成の一方若しくは両方に加えて、又はその代わりに、洗浄手段は超音波を適用するように構成される。
【0077】
第3の好ましい実施形態によれば、遮蔽手段は、静電荷を発生させるための図示されない電荷発生器を含む。この静電荷は射出された生産物の噴霧を硬化部(1.2)から逸らせるために、対応する生産物の極性に応じた極性で発生される。言い換えれば、その静電荷は、硬化部(1.2)に対する噴霧生産物を誘導するために発生され、それによりその噴霧は、基材に加えて、硬化部(1.2)以外の印刷ヘッドの又は本発明の印刷機の予め選択された部分で受けられて保持される。
【0078】
第4の好ましい実施形態によれば、遮蔽手段は、空気を噴射するか又は気流を発生させるための、図示されない空気ポンプを含む。この気流又はこの噴射される空気は、射出された生産物の噴霧を硬化部(1.2)から逸らせるためのものである。言い換えれば、気流又は噴射される空気は、硬化部(1.2)から噴霧生産物が逸れるように発生される。また、空気ポンプによってもたらされるこの逸れによって、その噴霧は、基材に加えて、硬化部(1.2)以外の印刷ヘッドの又は本発明の印刷機の予め選択された部分で受けられて保持される。
【0079】
これによれば、空気ポンプは、好ましくは吸引によって作用するように構成される。あるいは、空気ポンプは送風によって作用するように構成される。また、気流又は噴射される空気は、射出物の直線経路に対して、好ましくは少なくとも実質的に平行に、より好ましくは平行に発生される。あるいは、気流は、好ましくは、射出物の直線経路に対して少なくとも実質的に垂直に、より好ましくは垂直に発生される。
【0080】
第5の好ましい実施形態によれば、遮蔽手段は、遮蔽手段に衝突する射出された生産物の噴霧を受けて保持するように配置又は塗布されるための、図示されない物質を含む。これにより、射出された生産物の噴霧は、その物質によって直接受けられて保持される。この物質は、例えばラッカー又はワニスである。
【0081】
この物質は、素早く簡単に塗布して、そこに含まれる生産物の噴霧と一緒に素早く簡単に除去するように選択される。それにより、硬化部(1.2)によって、より具体的には硬化部(1.2)の光拡散器又は電球によって噴霧生産物を直接受けて保持するのと比較して、硬化部(1.2)に噴霧生産物を近付けないより高い能力が、その物質によって提供される。
【0082】
本発明のデジタル印刷ヘッドは、第1又は第2の好ましい実施形態による遮蔽手段を含み、その実施形態は、第3及び/又は第4の好ましい実施形態と、独立して組み合わされることができる。
【0083】
あるいは、本発明のデジタル印刷ヘッドは、第3の実施形態、第4の実施形態、第5の実施形態、又はこれらの好ましい実施形態の2つ以上の任意の1つの組み合わせによる遮蔽手段を含む。
【0084】
第1及び第2の実施形態は独立して、第5の実施形態と組み合わされることができ、任意で他の実施形態の1つ以上と共に組み合わされることができる。このために、硬化部(1.2)は障壁部(2.1)で覆われて配置され、同時に上記物質は障壁部(2.1)に塗布されて配置される。
【0085】
それにより、障壁部(2.1)が硬化部(1.2)とその物質の間に配置されると、その物質は噴霧生産物を受けて保持することができ、そこではその物質のみが、又はその物質と障壁部(2.1)が、硬化部(1.2)に対する噴霧生産物の除去又は排除のために除去されることができる。したがって、生産物の噴霧は、間接的ではあるものの、障壁部(2.1)に到達し得る。
【0086】
基材に印刷するための現在のデジタル印刷機は、1つ又は複数のデジタル印刷ヘッドを備える。デジタル印刷ヘッドが1つである場合、上述したようにして、その印刷ヘッドは、実施形態のいずれか1つに従って構成及び配置されることができる。デジタル印刷ヘッドの数が少なくとも2つの複数である場合、上述したようにして、それらのすべては同じに構成されることができる。あるいは、デジタル印刷ヘッドの数が複数である場合、上述したようにして、各デジタル印刷ヘッドは、好ましい実施形態のいずれか1つに従って構成されることができる。
【0087】
基材にデジタル印刷する方法は、上述されたデジタル印刷ヘッドの1つ又は複数を使用する。また、基材にデジタル印刷するためのその方法は、上述したデジタル印刷機を使用する。
【符号の説明】
【0088】
1.1 射出器
1.2 乾燥部
1.3 基部
1.3’ 固定要素
2.1 障壁部
2.2 フレーム
3.1 溝
3.2 溝
3.3 ねじ