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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】膜厚調整装置及び加飾容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/24 20060101AFI20240215BHJP
【FI】
C23C14/24 J
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023069936
(22)【出願日】2023-04-21
(62)【分割の表示】P 2022209206の分割
【原出願日】2022-12-27
【審査請求日】2023-04-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515094431
【氏名又は名称】株式会社クラフト
(74)【代理人】
【識別番号】110004163
【氏名又は名称】弁理士法人みなとみらい特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】丹下 康彦
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-2261207(KR,B1)
【文献】中国特許出願公開第102534491(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109518153(CN,A)
【文献】特開2012-067359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00 -49/80
B32B 9/00 - 9/06
B65D 23/00 -23/16、 25/34
C08J 7/04
C23C 14/00 -14/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空蒸着を行うための蒸着装置において、
蒸着粒子を放出する蒸着源と、蒸着される容器を支持する容器支持部と、前記容器支持部を回転させる支持回転機構と、を備える膜厚調整装置であって、
前記容器支持部は、高さ方向に伸びる幹部と、前記幹部から側方に伸びる枝部と、を有し
前記支持回転機構は、回転駆動する駆動部と、前記駆動部から伝達された動力を受けて回転する軸支歯車と、前記軸支歯車の歯と噛み合って回転する非円形の不均等歯車と、を含み、
前記幹部は、前記不均等歯車と協働して回転するように接続され、
前記不均等歯車は、前記幹部を高速で回転させる歯である高速回転部と、前記高速回転部と比較して前記幹部を低速で回転させる歯である低速回転部と、を含み、
前記不均等歯車の回転中心から前記高速回転部までの距離は、前記不均等歯車の回転中心から前記低速回転部までの距離よりも短い膜厚調整装置。
【請求項2】
前記不均等歯車は、楕円歯車であり、
前記高速回転部は、短軸の延長線の近傍に設けられ、
前記低速回転部は、長軸の延長線の近傍に設けられる請求項1に記載の膜厚調整装置。
【請求項3】
前記枝部は、前記幹部から延在して複数設けられ、前記容器を前記幹部から離間した位置に支持する請求項1又は2に記載の膜厚調整装置。
【請求項4】
前記支持回転機構は、回転台と、前記回転台を回転させる駆動部と、を備え、
前記回転台の中心は、くり抜かれて設けられており、
前記中心には前記蒸着源が立設して設けられ、
前記幹部は、前記回転台の中心から離間する位置に、前記蒸着源の周囲を公転するように設けられている請求項1又は2に記載の膜厚調整装置。
【請求項5】
前記支持回転機構は、前記回転台の回転による動力により回転する公転伝達歯車と、
前記公転伝達歯車の回転を前記不均等歯車に伝達する軸支歯車と、を有する請求項4に記載の膜厚調整装置。
【請求項6】
蒸着粒子を放出する蒸着源と、蒸着される容器を支持する容器支持部と、前記容器支持部を回転させる支持回転機構と、を備え、前記容器に蒸着を行うための膜厚調整装置によって、前記容器に真空蒸着を行う容器の製造方法であって、
前記容器支持部は、高さ方向に伸びる幹部と、前記幹部から側方に伸びる枝部と、を有し、
前記支持回転機構は、回転駆動する駆動部と、前記駆動部から伝達された動力を受けて回転する軸支歯車と、前記軸支歯車の歯と噛み合って回転する非円形の不均等歯車と、を含み、
前記幹部は、前記非円形歯車と協働して回転するように接続され、
前記不均等歯車は、前記幹部を高速で回転させる歯である高速回転部と、前記高速回転部と比較して前記幹部を低速で回転させる歯である低速回転部と、を含み、
前記不均等歯車の回転中心から前記高速回転部までの距離は、前記不均等歯車の回転中心から前記低速回転部までの距離よりも短く設けられ、
前記駆動部を回転させる工程を含む容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空蒸着を行うための装置に利用され、不均一な膜を生成するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
真空蒸着装置とは、真空にした器具の中に、蒸着を行う対象である基板と、薄膜材料を中に入れた状態で加熱する蒸発源を入れ、蒸発させた薄膜材料を基板に付着させることによって基板上に薄膜を形成するための装置である。
【0003】
ここにおいて、基板として容器を用いることで意匠性を高めることができることは例えば特許文献1に記載されている。また、特許文献2に記載されているような手段を用いることによれば、所定位置の膜厚を調整して容器にグラデーションを作ることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-15867号公報
【文献】特開2020-83448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、加飾容器の分野においては、ばらつきが少ない同一の製品よりも、容器ごとに色合いが異なる複雑な模様の製品の方が独自性のあるものとして好まれる場合も多い。
特許文献に記載の発明では、容器の所定の位置に所定の色合いが形成されるように、装置の工夫や金属種の選定を行うものであるため、同じ製造方法で同時に製造された製品は略同一の性状を示し、性状(蒸着膜の分布)の異なる製品を製作しようとした場合には、設計や装置の洗浄等の手間がかかる。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑み、製造者が容易に、製品ごとに加飾の性状が異なり、複雑な模様や色彩を呈する加飾容器を製造できる装置、製造方法及びそれにより製造される容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本願発明は、真空蒸着を行うための蒸着装置において、蒸着粒子を放出する蒸着源と、容器を支持する容器支持部と、を備え、前記容器に不均一な蒸着を行うための膜厚調整装置であって、前記容器に対する前記蒸着源の相対角度を調整可能な角度調整部を有する膜厚調整装置である。
このような構成によって、蒸着粒子が容器に侵入する角度を簡単に調整することができるようになるため、種々の複雑な模様を呈する容器を容易に製造できるようになる。
【0008】
本発明の好ましい形態では、前記蒸着源は、前記蒸着粒子を格納する格納部を有し、前記角度調整部は、前記格納部を回動可能に支持する格納支持部と、前記格納支持部を所定の位置で係止する格納係止部を含む。
このような構成によって、容器に対する蒸着粒子の飛行角度を調整することができるようになるため、より複雑な蒸着膜分布を有する容器を製造することができる。また、傾斜によって格納部内の蒸着粒子への熱の伝わり方が時々刻々と変化することで、同一ロットで異なる性状を示す容器を容易に製造することができる。
【0009】
本発明の好ましい形態では、前記角度調整部は、前記容器支持部を回動可能に支持する容器支持部と、前記容器支持部を所定の位置で係止する容器係止部を含む。
このような構成によって、基盤である容器に対する蒸着粒子の侵入角度を容易に調整することができるようになるため、より簡単に同一ロットで異なる性状を示す容器を製造することができる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記蒸着源は、前記蒸着粒子を格納する格納部を有し、前記格納部は高さ方向に間隔を空けて複数設けられる請求項1に記載の膜厚調整装置。
このような構成によって、蒸着粒子が複数の場所から放出されるようになるため、同一ロットで異なる性状を示す容器を容易に製造することができる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記容器支持部は、高さ方向に伸びる幹部と、前記幹部から側方に伸びる枝部と、を有し、前記膜厚調整装置は、前記幹部を中心に回転させる支持回転機構をさらに有し、前記支持回転機構は、前記幹部を高速で回転させる高速回転部と、前記高速回転部と比較して前記幹部を低速で回転させる低速回転部と、を含む。
このような構成によって、容器支持部が高速回転する際には薄い膜が、低速回転する際には厚い膜が形成されるようになるため、同一ロットで異なる性状を示す容器を容易に製造することができる。
【0012】
上記課題を解決する本願発明は、蒸着粒子を放出する蒸着源と、容器を支持する容器支持部とを備え、前記容器に不均一な蒸着を行うための膜厚調整装置によって、前記容器に真空蒸着を行う容器の製造方法であって、前記膜厚調整装置により、前記容器に不均一な蒸着を行うための膜厚調整工程を含み、前記膜厚調整工程は、膜厚調整装置が有する角度調整部によって前記容器に対する前記蒸着源の相対角度を蒸着前に調整する角度調整工程を含む容器の製造方法である。
このような構成によって、蒸着粒子が容器に侵入する角度を調整工程によって簡単に調整することができるようになるため、種々の複雑な模様を呈する容器を容易に製造できるようになる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記蒸着源は、蒸着粒子を格納する格納部と、前記格納部を加熱する加熱部と、前記加熱部を制御する制御部と、を有し、前記膜厚調整工程は、前記温度制御部により、前記加熱部の温度を高温にする状態と、低温にする状態と、を繰り返す温度変動工程を含む請求項6に記載の容器の製造方法である。
このような構成によって、高温時には膜厚が大きくなり、低温時には膜厚が小さくなるため、より簡単に同一ロットで異なる性状を示す容器を製造することができる。
【0014】
本願発明は、上記製造装置によって製造される複数の加飾容器からなる容器ロットであって、複数の前記容器は、段階的に色彩が変化するグラデーション領域をそれぞれ有し、前記グラデーション領域の呈する色及び位置は、各前記容器ごとに異なる容器ロットであり、前記加飾容器の表面に硫化亜鉛の膜が形成され、容器底面の縁部に、段階的に色彩が変化するグラデーション領域を有する。
上記の製造方法により、異なる性状を示す独自性のある容器を容易に得られる。
【発明の効果】
【0015】
上記課題を解決する本発明は、製造者が容易に、製品ごとに加飾の性状が異なり、複雑な模様や色彩を呈する加飾容器を製造できる装置、製造方法及びそれにより製造される容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る、蒸着装置及び膜厚調整装置の外観を表す図である。
図2】本発明の実施形態に係る、蒸着源の一部を拡大した斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る、蒸着源の一部の、側面図、平面図、正面図である。
図4】本発明の実施形態に係る、蒸着源の角度調整を表す模式図である。
図5】本発明の実施形態に係る、容器支持部の一部の側面図である。
図6】本発明の実施形態に係る、支持回転機構の説明図である。
図7】本発明の実施形態に係る、製造された加飾容器の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて、本発明の各実施形態に係る蒸着装置Xについて説明する。説明は、実施形態の構成、実施の方法、他の実施例の順に詳述する。
なお、以下に示す各実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の各実施形態に限定するものではない。
【0018】
蒸着装置Xは、図1に示すように、容器Bに蒸着粒子1Aによる加飾を行うための、真空蒸着を行う筐体装置である。また、膜厚調整装置Yは、蒸着を行う際に膜厚を調整するために用いる装置の総称で、蒸着装置Xの内部に設けられ、蒸着粒子1Aを放出する蒸着源1と、基板である容器Bを所定位置に支持する容器支持部2と、容器支持部2を所定の態様で回転させる支持回転機構3と、筐体内部を真空にするための真空装置4と、を備え、さらに容器Bに対する蒸着源1の相対角度を調整可能な角度調整部を有する。
【0019】
容器Bは、光透過プラスチックで形成された容器であって、容器端部に設けられる開口で蓋を取り付け可能な入れ口B1と、側面部B2と、底面部B3と、を有する。材質としては、アクリル、ポリカーボネート、ABSなどの樹脂が挙げられるがガラスであってもよい。
【0020】
蒸着粒子1Aは、容器Bの表面を被覆することで、容器Bの表面に干渉を生じさせることでグラデーション領域B4を形成する。蒸着粒子1Aとしては、蒸着装置Xの内部が低温であっても適切な蒸着を行える硫化亜鉛(ZnS)を用いることが好ましい。
【0021】
蒸着源1は、底面から立設して電力供給を行う通電棒11と、通電棒11から側面方向に張り出す延設棒12と、蒸着粒子1Aを格納する容器を支持する格納支持部13と、蒸着粒子1Aを格納する格納部14と、位置の固定に用いるネジ部15と、加熱の制御を行う制御部1B(図示せず)を備えている。
【0022】
通電棒11は、蒸着装置の筐体内部において立設している導電性の柱体であり、好ましくは銅製である。図2に示すように所定の間隔で通電孔11Hが設けられることによって、複数の格納部14の位置調整を可能にしている。通電棒11は間隔を空けて複数設けられており、隣接する通電棒11には異なる電荷が蓄積されている。
【0023】
延設棒12は、通電棒11に対して直角に伸びている導電性の部材であって、延設棒本体121と、通電棒11と延設棒本体121とを接続する延設取付部122と、格納支持部13を挿入できる格納係止部123と、格納支持部13を回転可能に支持する角度調整孔124と、を有する。
【0024】
延設棒本体121は、角柱型の部材であって、一端に延設取付部122をねじ込むことができる孔が設けられ、他端に格納係止部123が設けられる部材である。
実施形態においては、延設棒本体121として種々の長さのものが異なる高さに同時に支持されているが、伸縮できるように設けられていてもよい。
【0025】
延設取付部122は、図3に示すように、通電孔11Hの径よりも外径が小さい円柱部材であって、少なくとも端部及び軸部にネジ切り加工が施されている。延設取付部122の一端は通電孔11Hに貫入し、通電棒11を挟み込むようにして導電性のナットで固定される。
【0026】
また、延設取付部122の一端は雄ネジとなっており、延設棒本体121に設けられる孔にねじ込まれることで、延設取付部122(ロール方向)を軸に回転できる角度調整部としての機能も有する。
この場合、通電棒11が有するそれぞれの延設棒12は、異なる高さにある通電孔11Hに取り付けられることとなる。
【0027】
格納係止部123は、角度調整部の一部として、延設棒本体121において二股に分かれて延在し対向して設けられる材であって、2つの材の間に格納支持部13の一部を挟み込むことができるような空隙を形成している。
【0028】
角度調整孔124は、角度調整部の一部として、格納係止部123を構成する2つの材を同時に貫通するように設けられている孔部であって、角度調整孔124を貫通するネジ部15とナットによって格納係止部123の空隙の間隔を縮小できるようにしている。これによって、格納支持部13を所定の角度で簡単に係止できる。好ましくは、角度調整孔124の軸は、格納係止部123の材の略中心で垂直に貫通している。
【0029】
格納支持部13は、格納係止部の一部として、格納部14を回動可能に支持するための導電性の部材であって、格納部14を下面から支持する挟持台131と、格納係止部123に挿入できる挿入部132と、格納部14を上面から支持する挟持板133と、を有する。
【0030】
挟持台131は、一部に格納部14の一部を載置することができる平面を有する棒状の部材であって、当該面に垂直に貫通するネジ切りされた挟持孔13Hを有する。
【0031】
挿入部132は、挟持台131の端面から伸びる部材であって、その高さは格納係止部123の高さと略同一に設けられ、その幅は格納係止部123の空隙の幅と略同一か少し短く設けられる。その長さは格納係止部123の材の長さと略同一に設けられる。
【0032】
また、挿入部132には、角度調整孔124と略同一の大きさで、ネジ部15で同時に貫入することができる孔が設けられている。この孔にネジ部15が通った状態において、挿入部132の先端と延設棒本体121の間及び格納係止部123の先端と挟持台131の間に隙間が空くように設けられ、格納支持部13が延設棒12に対し角度変更できる。
【0033】
さらに、挿入部132は、図4に示すように格納係止部123に対して少なくとも0°~90°の回転が自在にできるように形成されており、延設棒12と干渉しないように、挿入部132と干渉しうる部分には面取り、丸め加工がなされている。なお、所定の角度(蒸着源がこぼれる略直角以上)以上に回動させようとすると、挟持台131の干渉によって係止される。
【0034】
挟持板133は、挟持台131と協働して格納部を挟持する板状部材であり、少なくとも一面に平面を有し、この面に垂直になるように挟持孔13Hが設けられる。挟持台131及び挟持板133の挟持孔13Hにネジ部15が貫入固定されることで、一部の面同士が近接あるいは当接できるようにしてある。
【0035】
格納部14は、蒸着粒子1Aを格納する部分であって、実際に蒸着粒子1Aを格納する格納容器141と、格納容器141を支持する被挟持部142と、を有する。
【0036】
格納容器141は縁を有する舟型の容器であり、伝熱性の高い部材により設けられる。格納容器141の底面には、制御部1Bによって温度操作がされる加熱部143が設けられている。
【0037】
被挟持部142は、格納容器141の対向する縁からそれぞれ延在して設けられる導電性の平板部材であって、挟持孔13Hと同一形状の孔を有し、ネジ部15によって両側が挟持台131と挟持板133に挟まれて支持される。
好ましくは、被挟持部142の長さは、挟持台131の載置する部分よりも長くなるように設けられ、さらに長孔が設けられていてもよい。これによって通電棒11同士の幅や選択する通電孔の距離に制限されずに格納部14を取り付け可能にする。
【0038】
加熱部143は導通することで熱が発生する抵抗であり、発生した熱によって蒸着粒子1Aを蒸発させる。加熱部143は導電性の他の部材を介して通電棒11と電気的に接続されており、流れた電圧の大きさにより発生する熱が変化する。
【0039】
ネジ部15は、蒸着源1に設けられる各孔に対応して各部材を固定するための雄ネジであって、実施形態においては蝶ねじが設けられる。また、ナットと組み合わせて固定されていてもよい。
【0040】
制御部1Bは、通電棒11にかかる電圧(又は電流)を制御することによって、加熱部143の加熱の度合を制御する。すなわち、加熱部143を高温にする状態と、加熱部143を低温にする状態と、を交互に切り替えることができるようにしてある。
【0041】
容器支持部2は、底面から立設して設けられる幹部21と、幹部から側面方向に伸びる枝部22と、枝部22に設けられて容器を支持する容器支持体23と、を有する。
【0042】
幹部21は、下端が支持回転機構3に挿入されて立設している柱状の部材であって、所定間隔で側面を貫通する幹孔21Hが設けられている。
【0043】
枝部22は、図5に示すように幹部21から水平に延在する部材であって、容器Bを幹部21から離間した位置に支持する。枝部22は、延設棒本体121と略同一の構造である枝部本体221と、延設取付部122と略同一の構造である枝取付部222と、格納係止部123と略同一の構造である容器係止部223と、を有し、容器係止部223は角度調整孔124と同様に孔を有する。
【0044】
容器支持体23は、容器係止部223に挿入できる枝挿入部231と、容器Bを支持可能な容器支持台232と、容器支持台232に設けられて容器を篏合して支持する篏合部233と、を有する。
【0045】
枝挿入部231は、挿入部132と略同一の構造であり、角度調整部の一部として設けられる。すなわち、格納部の角度調整部と同様にして、枝挿入部231が容器係止部223を構成する2つの材の間に挿入され、図4に示すように容器支持台232が少なくとも0°~90°の範囲で回転できるように設けられている。
【0046】
容器支持台232は、容器係止部223によって係止される位置になるように回転可能であり、容器Bを支持する台であって、少なくとも入れ口B1を支持できる大きさの面を有する。また、篏合部233に連通する孔が設けられて圧力調整されていてもよい。
【0047】
篏合部233は、入れ口B1をねじ込むことによって篏合できるように設けられている部分であって、好ましくは容器Bの蓋と略同一形状である。これにより、容器Bを安定して支持できるとともに、入れ口B1に蒸着粒子が付着することを防ぐ。
なお、篏合の方法はねじ込みに限られず、篏合部233に設けられた爪に引っ掛けて入れ口B1を係止する樹脂式篏合や、上記の爪にばねを用いるばね式篏合でもよい。
【0048】
支持回転機構3は、図6に示すように、容器支持部2を蒸着源1に対して公転させ、さらに容器支持部2を自転させるための機構であって、駆動する駆動部31と、容器支持部2を公転させる台である回転台32と、回転台32の下方で固定される台である固定台33と、容器支持部2を自転させる自転歯車34と、を有する。
なお、図6(a)は歯車の配置を表した模式図であり、図6(b)支持回転機構3の断面模式図であり、図6(c)は自転歯車34の説明図である。図面においては容器支持部2が1つだけ設けられることとしているが、複数設けられることが好ましい。
【0049】
駆動部31は、電動モータ等の回転を生じさせる固定されている駆動源であって、回転軸には駆動を伝達する駆動歯車311が設けられる。好ましくは、駆動部31は、固定台33の下方から回転軸が突出して設けられており、さらに好ましくは本体が筐体の外側に設けられていることで、蒸着装置Xの内部にゴミが発生しないようにしている。
【0050】
回転台32は、中心がくり抜かれている回転する台であり、断面視でフランジ様の形状となるように設けられ、固定台33の上にスペーサと軸受けによって回転可能に支持されている。くり抜かれている部分には通電棒11が立設している。回転台本体321は、おり、回転台本体321の下方の外周面には、公転歯車322が設けられ、駆動部31の動力によって回転できるようにしてある。
【0051】
固定台33は、筐体内部の下面に固定されている台であって、通電棒11や駆動部31を貫通させるための孔部が設けられている。また、固定台33の上に固定される、固定歯車331が設けられている。
【0052】
自転歯車34は、回転台32の回転を、容器支持部2の自転に変換するための機構である。自転歯車34は、回転台32の回転から動力を生み出す公転伝達歯車341と、公転伝達歯車341を軸支する軸支部342と、公転伝達歯車341と協働して回転する軸支歯車343と、軸支歯車343の動力を受けて回転する不均等歯車344と、を有する。
【0053】
公転伝達歯車341は、固定歯車331と同一の高さに設けられている歯車であって、中心軸で回転自由に支持されている。
軸支部342は、回転台32に設けられている孔に篏合する部分であって、軸受けによって中心軸を回転自由に支持されている。
軸支歯車343は、公転伝達歯車341と協働して回転するように接続されている歯車であって、中心軸で回転自由に支持されている。
上記3つの部材は、中心軸に棒状の部材が貫通している。これにより、回転台32が回転すると固定台33に対する3つの部材の相対位置が変化(公転)し、公転伝達歯車341が固定歯車331によって回転する。該回転は軸支歯車343に伝達される。
【0054】
不均等歯車344は、軸支歯車343によって伝達された回転によって、高速回転と低速回転を繰り返すように回転する。実施形態においては、軸支歯車343及び不均等歯車344はいずれも楕円形の歯車であり、長軸の歯と短軸の歯が噛み合うことによって等速でない回転を行うようにしている。図6(c)のように、不均等歯車344において、長軸の延長線の近傍に設けられる歯は低速回転部345として機能し、短軸の延長線の近傍に設けられる歯は高速回転部346として機能する。
【0055】
不均等歯車344の上には、容器支持部2を不均等歯車344の回転と協働して回転させる嵌め込み部347が設けられており、これによって容器支持部2が1の駆動部31によって公転をしつつ等速でない自転をする。
【0056】
真空装置4は、蒸着装置Xの筐体が密閉している状態において真空引きを行う装置であって、装置の下部に設けられている。
【0057】
以下、図を用いて、本発明の実施の方法について詳述する。本発明は、容器Bの蒸着を行う使用者によって実施される。また、以下に示す実施の方法は膜厚調整工程の一例であり、実施の方法はこれに限られず、順番は前後してもよい。
【0058】
まず、使用者は容器Bを容器支持部2に取り付ける。すなわち、幹部21に枝部22を取り付け、容器の入れ口B1を篏合部233に嵌め込む。この際、角度調整工程として、それぞれの容器支持体23を好みの角度に回転させ、容器係止部223によって係止することが好ましい。この際、調整工程として、使用者は枝取付部222によって、枝部本体221の軸を中心に回転させてもよい。
【0059】
次に、使用者は蒸着源1に蒸着粒子1Aを配置する。すなわち、隣接する2つの通電棒11に、延設棒12をそれぞれ取り付け、格納部14の被挟持部142の両端を格納支持部13の挟持板133に挟持させる。その後、格納容器141の内部に蒸着粒子1Aを格納する。この際、角度調整工程として、使用者はそれぞれの格納支持部13を好みの角度に回転させ、格納係止部123によって係止する。
【0060】
次に、使用者は蒸着装置Xを密閉し、真空引きを行う。
十分に減圧がされたら、使用者は駆動部31を起動させ、容器支持部2の自転及び回転を開始させる。駆動部31は定速で運動させても自転の周期が変動するが、好ましくは間欠的に駆動させてもよく、また低速運転と高速回転を繰り返すようにしてもよい。
【0061】
次に、使用者は容器Bに蒸着を行う。すなわち、制御部1Bを用いて、加熱部143の温度制御を行う。
すなわち、使用者は加熱部143に接続している2本の通電棒11のうち、一方を正極となるように、他方を負極となるように通電することで、加熱部143を起動させる。
このとき、使用者は、温度変動工程として、制御部1Bを用いて通電棒11にかかる電圧を上下させることによって、前記加熱部の温度を高温にする状態と、低温にする状態とを繰り返す。
【0062】
所定の時間蒸着を行った後、通電棒11への通電及び駆動部31の動作を終了し、真空状態を解除して、蒸着装置Xを開放し、加飾された加飾容器B’を取り出す。
【0063】
これによって、図7に示すように加飾容器B’の側面部B2と底面部B3とがまたがる領域にも段階的に色彩が変化するグラデーション領域B4を形成することができる。
さらに、同時に製造される複数の加飾容器B’からなる容器ロットRにおいて、それぞれの加飾容器B’のグラデーション領域の色及び位置は、加飾容器B’毎に異なるように設けることができる。
すなわち、製造者が容易に、製品ごとに性状が異なる複雑な模様や色彩を呈する加飾容器を製造できる装置、また製造方法、製造される容器を提供することができる。
【0064】
なお、不均等歯車の例としては、楕円歯車以外の非円形の歯車であってよく、例えばらせん歯車やトコロイド歯車を用いてもよい。なお、低速回転部は、回転速度が0になる構成であってもよく、不均等歯車の構成要素に、一部の歯が欠けた歯車を使用してもよい。
【0065】
なお、幹部21は、蒸着装置Xの内部であればどこに設けられていてもよく、蒸着装置Xの天面から吊り下げられていても、内周壁の側面から突出する構成でもよく、支持回転機構3の外側に取付られていてもよく、これらを組み合わせてもよい。幹部21の支持を様々なところで行えるようにする構成により、複雑な模様の形成も容易になる。
【符号の説明】
【0066】
X 蒸着装置
Y 膜厚調整装置
1 蒸着源
11 通電棒
11H 通電孔
12 延設棒
121 延設棒本体
122 延設取付部
123 格納係止部
124 角度調整孔
13 格納支持部
131 挟持台
132 挿入部
133 挟持板
13H 挟持孔
14 格納部
141 格納容器
142 被挟持部
143 加熱部
15 ネジ部
1A 蒸着粒子
1B 制御部
2 容器支持部
21 幹部
21H 幹孔
22 枝部
221 枝部本体
222 枝取付部
223 容器係止部
22H 支持孔
23 容器支持体
231 枝挿入部
232 容器支持台
233 篏合部
3 支持回転機構
31 駆動部
311 駆動歯車
32 回転台
321 回転台本体
322 公転歯車
33 固定台
331 固定歯車
34 自転歯車
341 公転伝達歯車
342 軸支部
343 軸支歯車
344 不均等歯車
345 低速回転部
346 高速回転部
347 嵌め込み部
4 真空装置
B 容器
B’ 加飾容器
B1 入れ口
B2 側面部
B3 底面部
B4 グラデーション領域
【要約】
【課題】
製造者が容易に、製品ごとに加飾の性状が異なり、複雑な模様や色彩を呈する加飾容器を製造できる装置等を提供することを目的とする。
【解決手段】
上記課題を解決する本願発明は、真空蒸着を行うための蒸着装置Xにおいて、蒸着粒子を放出する蒸着源1と、容器Bを支持する容器支持部2と、を備え、前記容器に不均一な蒸着を行うための膜厚調整装置Yであって、容器Bに対する蒸着源1の相対角度を調整可能な角度調整部を有する膜厚調整装置Yである。
【選択図】図2

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7