IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ネクサスジャパン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-電気溶解炉用ヒーター 図1
  • 特許-電気溶解炉用ヒーター 図2
  • 特許-電気溶解炉用ヒーター 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】電気溶解炉用ヒーター
(51)【国際特許分類】
   F27D 11/02 20060101AFI20240215BHJP
   F27B 3/20 20060101ALI20240215BHJP
   F27B 14/14 20060101ALI20240215BHJP
   F27D 21/00 20060101ALI20240215BHJP
   B22D 41/015 20060101ALI20240215BHJP
   B22D 17/28 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
F27D11/02 A
F27B3/20
F27B14/14
F27D21/00 G
B22D41/015
B22D17/28 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023121826
(22)【出願日】2023-07-26
【審査請求日】2023-07-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521387040
【氏名又は名称】ネクサスジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(72)【発明者】
【氏名】眞畑 進
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/235474(WO,A1)
【文献】実開昭50-007959(JP,U)
【文献】特開2022-090646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 7/00-15/02
H05B 3/02- 3/18
H05B 3/40- 3/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパイラル形状を有する筒状発熱体と、
前記筒状発熱体を収容し、保護する保護管と、
を備え、
前記筒状発熱体と前記保護管の間に少なくとも電極側に保護管全体の長さの1/4以上の長さの範囲に挿入されたガラスウール又はガラススリーブと、
前記筒状発熱体の内側に少なくとも電極側に保護管全体の長さの1/4以上の長さの範囲に挿入されたガラススリーブと、
を備え、
前記筒状発熱体の内側に挿入された前記ガラススリーブは、撚り糸状態までほぐしたものであることを特徴とする電気溶解炉用ヒーター。
【請求項2】
スパイラル形状を有する筒状発熱体と、
前記筒状発熱体を収容し、保護する保護管と、
を備え、
前記筒状発熱体と前記保護管の間に少なくとも電極側に保護管全体の長さの1/4以上の長さの範囲に挿入されたガラスウール又はガラススリーブと、
前記筒状発熱体の内側に少なくとも電極側に保護管全体の長さの1/4以上の長さの範囲に挿入されたガラススリーブと、
を備え、
前記筒状発熱体と前記保護管の間に挿入された前記ガラスウール又はガラススリーブの溶湯側端部はヘミサル碍子で蓋がされていることを特徴とする電気溶解炉用ヒーター。
【請求項3】
前記電気溶解炉用ヒーターは、電気溶解炉の壁面に埋設されてなり、前記筒状発熱体と前記保護管の間に挿入された前記ガラスウール及びガラススリーブは、壁面の部分全体に挿入されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気溶解炉用ヒーター。
【請求項4】
前記筒状発熱体の内側に挿入された前記ガラススリーブは、スパイラル形状部分以外に挿入されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気溶解炉用ヒーター。
【請求項5】
前記筒状発熱体は、炭化ケイ素筒状発熱体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気溶解炉用ヒーター。
【請求項6】
前記ガラススリーブ内に熱電対が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気溶解炉用ヒーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気溶解炉用ヒーター、特に、筒状発熱体と使用した電気溶解炉用ヒーターの断熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミニウム等の電気溶解炉に使用されるヒーター(以下「電気溶解炉用ヒーター」という。)に、炭化ケイ素等を使用した筒状の発熱体を使用した電気溶解炉用ヒーターが使用されている。電気溶解炉用ヒーターは、図3に示すように、主として、炭化ケイ素からなる筒状発熱体210、保護管220及び熱電対230からなる(特許文献1)。
【0003】
しかし、従来の電気溶解炉用ヒーター200は、筒状発熱体210と保護管220との間及び筒状発熱体210の内側250を通じて上方の電極方向へ熱が伝達しやすく、ヒーターの熱が外部へ逃げてしまい効率が悪いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-257056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、このような課題を踏まえてなされたものであり、筒状発熱体と使用したヒーターにおいて、より高い断熱性を有し、より効率的に溶湯に熱を伝達可能な電気溶解炉用ヒーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の目的を達成するために、以下の手段を採った。
【0007】
本発明にかかる電気溶解炉用ヒーターは、
スパイラル形状を有する筒状発熱体と、
前記筒状発熱体を収容し、保護する保護管と、
を備え、
前記筒状発熱体と保護管との間にとも電極側から保護管全体の長さの少なくとも1/4以上の長さの範囲に挿入されたガラスウール又はガラススリーブと、
前記筒状発熱体の内側に電極側からに保護管全体の長さの少なくとも1/4以上の長さの範囲に挿入されたガラススリーブと、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明にかかる電気溶解炉用ヒーターは、筒状発熱体と保護管との間と筒状発熱体の内側とに、それぞれガラスウール又はガラススリーブの断熱材が挿入されているので、先端のスパイラル形状部によって発熱した熱が電極側から外部に放熱されることを低減し、効率よく溶湯に熱を伝達することができる。また、より高熱になる筒状発熱体の内側にもガラススリーブを使用することによって、筒状発熱体の内側の空間から熱が外部に放熱されることも防止している。そのため従来と比較してより高い断熱性を有しより効果的に溶湯に熱を伝達することができる。
【0009】
また、本発明にかかる電気溶解炉用ヒーターにおいて、前記電気溶解炉用ヒーターは、電気溶解炉の壁面に埋設されてなり、前記ガラスウール及びガラススリーブは、壁面の厚さ部分全体に挿入されていることを特徴とするものであってもよい。電気溶解炉の壁面に配置される場合には、壁面が存在する厚さ以上にガラスウール又はガラススリーブが存在するように配置することで、壁面への熱の放熱を低減することができ、より効果的に溶湯へ熱を伝達することができる。
【0010】
さらに、本発明にかかる電気溶解炉用ヒーターにおいて、前記ガラススリーブは、スパイラル形状部分以外の部位に挿入されていることを特徴とするものであってもよい。スパイラル形状部分は、最も高熱となる部分であるので、かかる部位を避けて配置することで、ガラスウール及びガラススリーブの劣化を低減させることができる。
【0011】
さらに、本発明にかかる電気溶解炉用ヒーターにおいて、前記筒状発熱体の内部に挿入された前記ガラススリーブは、撚り糸状態までほぐしたものであることを特徴とするものであってもよい。かかるガラススリーブを採用することによって、ガラススリーブのまま挿入する場合と比較して、より高い密度で均一に挿入することができるため、より高い断熱効果を発揮させることができる。
【0012】
さらに、本発明にかかる電気溶解炉用ヒーターにおいて前記ガラスウール又は前記ガラススリーブのいずれか一方又は両方の溶湯側端部はへミサル碍子で蓋がされていることを特徴とするものであってもよい。かかる構成を採用することによって、熱せられた気体が直接ガラスウール又はガラススリーブに接することを防止することができるため、断熱性に優れることに加え、ガラスウール又はガラススリーブの耐久性を向上させることができる。
【0013】
さらに、本発明にかかる電気溶解炉用ヒーターにおいて、前記筒状発熱体は、炭化ケイ素筒状からなる発熱体であることを特徴とするものであってもよい。炭化ケイ素筒状発熱体は、炭化ケイ素筒状発熱体は、高温に耐える能力があり、効率的に熱を発生させることができる。
【0014】
さらに、本発明にかかる電気溶解炉用ヒーターにおいて、前記炭化ガラススリーブ内に熱電対が設けられていることを特徴とするものであってもよい。ガラススリーブ内に熱電対を設けることによって、熱電対の耐久性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる電気溶解炉用ヒーターによれば、ガラススリーブと、ガラスウールの断熱材が挿入されているので、先端のスパイラル形状部によって発熱した熱が電極側から溶解炉の外部に放熱されることを低減し、効率よく溶湯に熱を伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施形態にかかる電気溶解炉用ヒーターの模式図である。
図2図2は、実施形態にかかる電気溶解炉用ヒーターを溶解炉の壁面に取り付けた状態を示す模式図である。
図3図3は、従来にかかる電気溶解炉用ヒーターの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明にかかる電気溶解炉用ヒーターの実施形態について、図面に沿って詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではない。また、各図において対応する構成要素には同一又は類似の符号が付されている。
【0018】
本実施形態にかかる電気溶解炉用ヒーター100の側面模式図が図1に示されている。電気溶解炉用ヒーター100は、図1に示すように、主として、筒状発熱体10、この筒状発熱体10を収容する保護管20及び筒状発熱体10内に配置される熱電対30及び保護管20内に挿入されるガラスウール40又はガラススリーブ50とを備えている。
【0019】
筒状発熱体10は、図1に示すように、中腹部分から先端に向かってスパイラル(らせん)状に巻かれ、全体として筒状の形状をしており、電気抵抗加熱を利用して熱を発生させるものである。スパイラル状の形状は、大きな表面積を提供し、均一な熱分布を得ることができるため、効率的な加熱を実現することができるという効果を有する。また、スパイラル状とすることによって、一方側(溶解炉に設置した際の壁面側)に電極を集中させることができる。材料としては、好ましくは、非常に高い耐熱性と電気的な特性を持つセラミックス材料である炭化ケイ素を使用するとよい。炭化ケイ素は高温に耐えることができるため、スパイラル型の炭化ケイ素からなる筒状発熱体10は熱処理炉の高温環境での使用に適している。
【0020】
保護管20は、溶湯内に配置される筒状発熱体10を保護するものであり、筒状発熱体10を囲うように形成される。保護管20の材料としては、高温に耐える性質を有し、化学的に安定しており、溶解炉200内の腐食や酸化から筒状発熱体10を保護する機能が高いセラミック保護管を使用するとよい。
【0021】
熱電対30は、温度を測定するために使用されるセンサーの一種であり、特にその構成は限定するものではなく、既知の熱電対を使用することができる。この熱電対30は、筒状発熱体10内に挿入されたガラススリーブ内に配置される。
【0022】
ガラスウール40又はガラススリーブ50は保護管20内に配置されて筒状発熱体10の熱を外部に放熱することを低減するためのものである。ガラスウール40又はガラススリーブ50は、保護管20内のうち、筒状発熱体10と保護管20の間であって、保護管20の電極側から保護管20の少なくとも1/4の長さの範囲に挿入される。ガラスウール40及びガラススリーブ50は、耐熱性が高く断熱性が高いことから、先端側の筒状発熱体10と保護管20の間の熱が伝わることを低減することができる。また、筒状発熱体10の内側であって、電極側から保護管20の少なくとも1/4の長さの範囲には、ガラススリーブ50が挿入される。筒状発熱体10の内側にガラススリーブ50を使用するのは、保護管20内でも最も高い温度にさらされる部位であり、ガラスウールであると、溶融温度に達してしまう可能性がある上、劣化が早くなるからである。ガラススリーブ50は、一般的に数百度以上の高温環境での使用に耐える能力を持っており、かつ高い断熱性を有していることから、高温環境下で安定して作動することができる。このように、筒状発熱体10と保護管20との間にガラスウール40又はガラススリーブ50及び筒状発熱体10の内側にガラススリーブ50を設置することによって、先端側の筒状発熱体10で熱せられた高温の気体がガラスウール40又はガラススリーブ50で断熱され、電極側に熱が伝達して外に熱が逃げることが低減され、溶湯に効率的に熱を伝達することができる。
【0023】
また、ガラスウール40及びガラススリーブ50は、図2に示すように、溶解炉200の壁面210に電気溶解炉用ヒーター100が設置された場合、壁面の厚さα分に相当する範囲に挿入することが好ましい。この範囲にガラスウール40及びガラススリーブ50を設けることによって、この範囲の保護管20の温度が高温になることを低減することができ、壁面210の耐久性が向上する。また、壁面210への熱の放熱を低減することができ、より効果的に溶湯へ熱を伝達することができる。
【0024】
さらに、ガラスウール40及びガラススリーブ50は、前記ガラススリーブは、スパイラル形状部分以外に挿入されていることを特徴とするものであってもよい。スパイラル形状部分は非常に高温になるため、ガラスウール40及びガラススリーブ50が耐熱性に耐えられない可能性があるからである。
【0025】
また、ガラススリーブ50は、ガラススリーブ50を編んでいる又は織っている撚り糸の状態までほぐした物を使用するとよい。ほぐして使用することによって、より均一に挿入することができ、安定した断熱効果を発揮することができる。
【0026】
さらに、ガラスウール40又はガラススリーブ50の先端側(溶湯側)の端面には、セメントとガラス繊維やアラミド繊維等を混合した断熱板であるヘミサル碍子で蓋60を設けてもよい。かかる構成を採用することによって、熱せられた気体が直接ガラスウール又はガラススリーブに接することを防止することができるため、断熱性を向上させることができる。また、ガラスウール又はガラススリーブの耐久性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
上述した実施形態で示すように、溶解炉のヒーターとして産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0028】
10…筒状発熱体
20…保護管
30…熱電対
40…ガラスウール
50…ガラススリーブ
60…蓋
100…電気溶解炉用ヒーター
200…溶解炉
210…壁面
【要約】      (修正有)
【課題】筒状発熱体と使用したヒーターにおいて、より高い断熱性を有し、より効率的に溶湯に熱を伝達可能な電気溶解炉用ヒーターを提供する。
【解決手段】本発明の電気溶解炉用ヒーター100は、スパイラル形状を有する筒状発熱体10と、筒状発熱体10を収容し、保護する保護管20と、を備え、筒状発熱体10と保護管20の間に少なくとも電極側に保護管20全体の長さの1/4以上の長さの範囲に挿入されたガラスウール40又はガラススリーブ50と、前記筒状発熱体の内側に少なくとも電極側に保護管全体の長さの1/4以上の長さの範囲に挿入されたガラススリーブ50と、を備えたことを特徴とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3