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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】制動装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/24 20060101AFI20240215BHJP
   F16F 15/023 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
F16F9/24
F16F15/023 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023148802
(22)【出願日】2023-09-13
【審査請求日】2023-09-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517357826
【氏名又は名称】株式会社シェルタージャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196106
【弁理士】
【氏名又は名称】杉田 一直
(72)【発明者】
【氏名】矢野 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】寿福 誠
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-271862(JP,A)
【文献】特開2014-159689(JP,A)
【文献】実開平07-023108(JP,U)
【文献】特公昭47-046838(JP,B1)
【文献】特開2004-204458(JP,A)
【文献】特開2001-012527(JP,A)
【文献】特開平11-014767(JP,A)
【文献】特開2013-170600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/24
F16F 15/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体が充填される流体室と、大気に連通する大気室とが設けられるシリンダと、
前記シリンダの内部に摺動可能に挿入されて、前記流体室と前記大気室を画定するピストンと、を有する制動本体部と、
前記流体室に接続する流体制御部と、
前記流体制御部に接続して、作動流体を貯留するとともに、作動流体の流入によって、内部に存する貯留気体が加圧されるアキュムレータと、を備え、
前記流体制御部は、第1制御管路と、前記第1制御管路に並列して設けられる第2制御管路と、を有し、
前記第1制御管路は、前記流体室から前記アキュムレータに向けての作動流体の流れを許容するとともに前記アキュムレータから前記流体室に向けての作動流体の流れを阻止する第1逆止弁と、作動流体が通過する過程で前記ピストンに減衰抵抗力を生じさせるためのオリフィスが設けられ、
前記第2制御管路は、前記アキュムレータから前記流体室に向けての作動流体の流れを許容するとともに前記流体室から前記アキュムレータに向けての作動流体の流れを阻止する第2逆止弁が設けられ、
前記アキュムレータに貯留できる作動流体の容量は、前記流体室に貯留される作動流体の体積の最大容量を超え
前記流体制御部は、複数の前記制動本体部を接続することができる本体接続部を有する
ことを特徴とする制動装置。
【請求項2】
前記流体室に貯留される作動流体の体積が最大許容量となるとき、前記貯留気体の圧力は、少なくとも大気圧を超えることを特徴とする請求項1に記載の制動装置。
【請求項3】
前記ピストンは前記大気室に配置されたバネによって、前記流体室から前記大気室の方向に付勢されることを特徴とする請求項1に記載の制動装置。
【請求項4】
前記大気室の方向への前記ピストンの移動を制限するストッパが設けられることを特徴とする請求項1に記載の制動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の急激な移動を抑制する目的で用いる制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地震等の外力により構造物が振動して部材に引張り力や圧縮力が発生する場合、ピストンロッドに曲げ力が加えられることのない伸び方向片利きの制振用オイルダンパが提案されている。
【0003】
特許文献1は、シリンダ内にピストンを介してピストンロッドが移動自在に挿入され、ピストンはシリンダ内にロッド側油室を区画し、ロッド側油室は伸側油路と圧側油路を介してアキュムレータに接続され、伸側油路にはロッド側油室からアキュムレータに向けて作動油の流れを許容する調圧弁を開閉自在に設け、圧側油路にはアキュムレータからロッド側油室に向けて作動油の流れを許容する逆止弁を開閉自在に設けたオイルダンパが提案されている。
【0004】
特許文献2で提案されているブレース装置は、建築物や土木構造物の耐震用として用いられるものであって、ブレース母材の断面積を必要以上に大とせずに座屈を防止し、簡単な構成で地震や強風等の振動から建築物を保護することを目的としたものである。具体的には、ブレース装置は油圧シリンダにて形成され、油圧シリンダには圧力油が充填されると共に、油圧シリンダはロッド側油室とボトム側油室とを逆止弁を介して連結され、逆止弁によって油圧シリンダに介装されているロッドが伸長側のみを規制されているブレース装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-271862号公報
【文献】実開平7-23108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2で提案される装置はブレースの制振を目的としたものであり、構造物が特定の方向に大きく変位することに対応できないと考えられる。また、仮に、ブレース以外の構造物に用いて、構造物が特定の方向に大きく変位したとき、特許文献1、2で提案されているオイルダンパは、元の位置に復帰することは困難である。
【0007】
本発明は、これらの問題点に着目してなされたものであり、構造物が大きく特定の方向に急激に変位しようとしたときに、構造物の変位速度を低減することができるとともに、変位後は、元の位置に復元が容易な制動装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための発明は、制動装置であって、作動流体が充填される流体室と、大気に連通する大気室とが設けられるシリンダと、シリンダの内部に摺動可能に挿入されて、流体室と大気室を画定するピストンと、を有する制動本体部と、流体室に接続する流体制御部と、流体制御部に接続して、作動流体を貯留するとともに、作動流体の流入によって、内部に存する貯留気体が加圧されるアキュムレータと、を備え、流体制御部は、第1制御管路と、第1制御管路に並列して設けられる第2制御管路と、を有し、第1制御管路は、流体室からアキュムレータに向けての作動流体の流れを許容するとともにアキュムレータから流体室に向けての作動流体の流れを阻止する第1逆止弁と、作動流体が通過する過程でピストンに減衰抵抗力を生じさせるためのオリフィスが設けられ、第2制御管路は、アキュムレータから流体室に向けての作動流体の流れを許容するとともに流体室からアキュムレータに向けての作動流体の流れを阻止する第2逆止弁が設けられ、アキュムレータに貯留できる作動流体の容量は、流体室に貯留される作動流体の体積の最大容量を超えることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、作動流体が流体室から第1制御管路を経由してアキュムレータに流入するとき、すなわちピストンが大気室から流体室の方向に向かって移動するとき、オリフィスの減衰効果によって、ピストンは速度に比例した抵抗力を受ける。一方で、作動流体がアキュムレータから第2制御管路を経由して流体室に流入するとき、すなわちピストンが流体室から大気室の方向に向かって移動するとき、ピストンはオリフィスの減衰効果の影響を受けることなく移動する。すなわち、一方向にのみ減衰効果を発揮してピストンを移動させることができる。また、この構成によれば、アキュムレータに貯留できる作動流体の容量は、流体室に貯留される作動流体の体積の最大容量を超えるので、ピストンの移動に伴って作動流体をアキュムレータ以外から新たに補給する必要はない。これにより、極めて簡便な構成とすることができる。
【0010】
好ましくは、流体室に貯留される作動流体の体積が最大許容量となるとき、貯留気体の圧力は、少なくとも大気圧を超えることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、流体室に貯留される作動流体の体積が最大容量となるとき、貯留気体の圧力は、少なくとも大気圧を超えるので、作動流体はキャビテーションを起こすことなく安定して流体室とアキュムレータの間を往来する。
【0012】
好ましくは、ピストンは大気室に配置されたバネによって、流体室から大気室の方向に付勢されることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、ピストンは大気室に配置されたバネによって、流体室から大気室の方向に付勢されるので、オリフィスによる減衰力による制動に加えて、バネによって直接にピストンに制動力を負荷することができる。
【0014】
好ましくは、大気室の方向へのピストンの移動を制限するストッパ設けられることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、大気室の方向へのピストンの移動を制限するストッパ設けられるので、ストッパをシリンダに装着することで流体室の最大容量を簡単に決定できる。
【0016】
好ましくは、流体制御部は、複数の制動本体部を接続することができる本体接続部を有することを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、流体制御部は、複数の制動本体部を接続することができる本体接続部を有するので、複数個の制動本体部は、本体接続部を介して1つの流体制御部、アキュムレータに接続できる。このように接続することで、流体制御部、アキュムレータのそれぞれを省略できる。また、複数個の制動本体部それぞれに作用する粘性抵抗を揃えることができる。オリフィスを通過する作動流体の粘性抵抗を一定に保つためには、オリフィスの加工精度を高めて、誤差を極力少なくする必要があり、コストアップの要因となるが、オリフィスを共用することで、労せずして粘性抵抗を同一とすることができることから、精度向上のためのコストアップを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態における制動装置の概要図である。
図2】本実施形態における制動装置を用いた昇降台の正面図である。
図3】同、平面断面図である。
図4】制動装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1を参照して本発明の制動装置の実施形態を詳述する。
【0020】
図1に示す通り、制動装置1は、制動本体部10、流体制御部20、およびアキュムレータ30を備えている。制動本体部10は、作動流体HLが充填される流体室11と、大気OAに連通する大気室12とが設けられるシリンダ13と、シリンダ13の内部に摺動可能に挿入されて、流体室11と大気室12を画定するピストン14を有している。流体制御部20の一端は流体室11に接続し、他端はアキュムレータ30に接続している。アキュムレータ30は、作動流体HLと貯留気体Gが貯留されており、貯留気体Gは制動本体部10から流入、流出する作動流体HLによって、加圧、減圧される。なお、制動本体部10の個数が複数個のときは、本体接続部25を介して、流体制御部20に接続することが好ましい(図4参照)。
【0021】
流体制御部20は、第1制御管路21と、第1制御管路21に並列して設けられる第2制御管路22とを有し、第1制御管路21は、流体室11からアキュムレータ30に向けての作動流体HLの流れを許容するとともにアキュムレータ30から流体室11に向けての作動流体HLの流れを阻止する第1逆止弁31と、作動流体HLが通過する過程でピストン14に減衰抵抗力を生じさせるオリフィス35が設けられ、第2制御管路22は、アキュムレータ30から流体室11に向けての作動流体HLの流れを許容するとともに流体室11からアキュムレータ30に向けての作動流体HLの流れを阻止する第2逆止弁32が設けられている。本実施形態では、第1制御管路21と第2制御管路22は、一つの管路から分岐して並列接続しているが、流体室11およびアキュムレータ30に並列接続してもよい。
【0022】
制動装置1は、シリンダ13とピストン14を有している。シリンダ13は、円筒形状の円筒壁13aと、円筒壁13aの両端部に設けられた第1端壁13b、および第2端壁13cを一体に有し、これらの3つの壁によって、シリンダ13の内部空間が画定されている。第1端壁13bには、第1取付金具MB1が取り付けられている。第1取付金具MB1は、第1端壁13bに直接に固定して取り付けてもよいが、自在継ぎ手を介して第1端壁13bに取り付けてもよい。
【0023】
ピストン14は、シリンダ13内に軸線方向に摺動可能に設けられており、シリンダ13の内部空間を流体室11と大気室12に画定している。流体室11には作動流体HLが充填されている。作動流体HLは、所定の粘度を有する一般的なものである。
【0024】
ピストン14は、ピストンロッド15が同心状に一体に取り付けられている。ピストンロッド15は、ピストン14から軸線方向に第2端壁13cの方向に延びており、第2端壁13cに設けられたロッド案内孔15aを液密に貫通して、外方に延びている。ピストンロッド15の先端部には、第2取付金具MB2が取り付けられている。第2取付金具MB2は、ピストンロッド15に直接に固定して取り付けてもよいが、自在継ぎ手を介してピストンロッド15に取り付けてもよい。
【0025】
第1端壁13bの近傍の円筒壁13aに大気室12と大気OAが連通するための孔12aが設けられている。これにより大気室12は空気が充填される。本実施形態では、孔12aを円筒壁13aに設けたが、これに限らず、第1端壁13bに設けてもよい。
【0026】
大気室12の内部に、ピストン14の動きに追従して伸縮するバネ16が配置されている。バネ16の一端は、第1端壁13bに、また他端はピストン14に接着している。バネ16は金属製の引張コイルバネである。
【0027】
円筒壁13aに第2端壁13cから第1端壁13bに向かう方向のピストン14の摺動を拘束するためのストッパ17が取り付けられている。これにより、ピストン14が摺動できる範囲は、第2端壁13cからストッパ17までに限られる。
【0028】
流体制御部20は、第1制御管路21と、第2制御管路22を有している。第1制御管路21は、流体室11からアキュムレータ30に向けて作動流体HLの流れを許容するとともにアキュムレータ30から流体室11に向けての作動流体HLの流れを阻止する第1逆止弁31と、作動流体HLの圧力を調整するオリフィス35を有している。第1逆止弁31は流体室11に、オリフィス35はアキュムレータ30に接続している。また、第1逆止弁31とオリフィス35は直列接続している。
【0029】
第2制御管路22は、第1制御管路21と並列に配置されており、一端は流体室11に、他端はアキュムレータ30に接続している。また、アキュムレータ30から流体室11に向けての作動流体HLの流れを許容するとともに流体室11からアキュムレータ30に向けての作動流体HLの流れを阻止する第2逆止弁32を有している。
【0030】
本実施形態では、オリフィス35を有しているのは第1制御管路21のみであるが、これに限らず第2制御管路22についてもオリフィスを設ける構成としてもよい。
【0031】
アキュムレータ30は、貯留気体Gによって加圧された作動流体HLが貯留されている。アキュムレータ30の作動流体HLの最大貯留量は、少なくとも流体室11に充填される作動流体HLの最大量を貯留できることが好ましい。また、貯留気体Gの圧力は、流体室11に充填される作動流体HLが最大量となったとき、大気圧を超える圧力を確保することが好ましい。より好ましいのは、アキュムレータ30の作動流体HLの最大貯留量は、流体室11に充填される作動流体HLの最大量の2倍を超えることである。
【0032】
制動装置1の動作について説明する。
【0033】
ピストンロッド15が流体室11から外部空間に向かって突出するとき、作動流体HLは流体室11から押し出され、第1制御管路21に流入した後にアキュムレータ30に貯留される。作動流体HLは、第2制御管路22にも流入しようとするが、第2逆止弁32によってその流入は阻止される。すなわち、作動流体HLは、第1制御管路21のみを経由して、アキュムレータ30に貯留される。アキュムレータ30に存する貯留気体Gは、作動流体HLの流入により加圧された状態となる。
【0034】
作動流体HLがオリフィス35を通過するとき、粘性抵抗による粘性減衰効果が発揮されることで、オリフィス35を通過する作動流体HLの流速に比例した減衰力がピストン14に付加される。また、バネ16が伸長することで、ピストン14に流体室11から大気室12に向かう力が付勢される。ピストン14が停止するとオリフィス35を通過する作動流体HLの流速はゼロとなることから、ピストンに減衰力は作用しなくなる。しかし、この場合でも、バネ16の付勢力は維持される。
【0035】
ピストンロッド15が、外部空間から流体室11に向かって押し込まれる方向に変位するとき、アキュムレータ30に貯留されている作動流体HLは、第2制御管路22に流入した後に、流体室11に流入する。作動流体HLは、第1制御管路21にも流入しようとするが、第1逆止弁31によってその流入は阻止される。すなわち、作動流体HLは、第2制御管路22のみを経由して、流体室11に流入する。アキュムレータ30に存する貯留気体Gは、作動流体HLの流出により減圧される。第2制御管路22はオリフィス35が配置されていないことから、ピストン14に減衰力が付加されることはない。また、バネ16が引張状態にあるので、ピストン14に流体室11から大気室12に向かう力が付勢される。
【0036】
上述の通り、制動装置1は、ピストンロッド15が流体室11から外部空間に向かって突出するとき、大きな制動力を発揮するが、ピストンロッド15が、外部空間から流体室11に向かって押し込まれる方向に変位するとき、制動力が発揮されることはない。
【0037】
昇降台100を例に挙げて、制動装置1の使用について、図2~4を参照して説明する。
【0038】
図2、3に示す通り、昇降台100は荷物を載せる荷台102が壁170に固定されたガイド101に沿って昇降する構造である。荷台102はガイド101に摺動可能に接続するとともに、昇降装置110に接続している。また、一端が天井150に固定される2個の制動本体部10に接続している。なお、2個の制動本体部10は、図示は省略しているが、本体接続部25を介して1つの流体制御部20、アキュムレータ30に接続している。
【0039】
昇降装置110は昇降ジャッキ111とチェーン115を有している。チェーン115の一端は、床160に接続し、中間部は昇降ピストン112の先端部に設けられる歯車113に噛み合っており、他端は荷台102に接続している。昇降ジャッキ111を動作して昇降ピストン112を上昇させると、チェーン115の一端は昇降ピストン112の上昇距離の2倍の距離を床160から天井150に向かって昇降移動する。
【0040】
図4に示す通り、2個の制動本体部10は、本体接続部25を介して1つの流体制御部20、アキュムレータ30に接続している。このように接続することで、流体制御部20、アキュムレータ30を省略できる。また、制動本体部10の制動力を容易に揃えることができる。オリフィス35を通過する作動流体HLの粘性抵抗を一定に保つためには、オリフィス35の加工精度を高めて、誤差を極力少なくする必要があり、コストアップの要因となるが、オリフィス35を共用することで、労せずして粘性抵抗を同一とすることができる。これにより、精度向上のためのコストアップを回避できる。
【0041】
昇降ジャッキ111を動作して昇降ピストン112を上昇させると荷台102は天井150の方向に向かって上昇する。このとき、アキュムレータ30に貯留されている作動流体HLは、第2制御管路22のみを経由して、それぞれの流体室11に流入する。すなわち、昇降装置110が上昇するとき、作動流体HLがオリフィス35を通過するときの粘性抵抗を受けることはない。また、引張状態にあるバネ16は、ピストン14を天井150の方向に付勢し続ける。
【0042】
昇降ピストン112を下降させると荷台102は床160の方向に向かって下降する。このとき、それぞれの流体室11に存する作動流体HLは、第1制御管路21のみを通過してアキュムレータ30に貯留される。作動流体HLがオリフィス35を通過する過程で、粘性抵抗による粘性減衰効果が発揮されることで、作動流体HLがオリフィス35を通過するときの流速に比例した減衰力がピストン14に付加される。さらに、バネ16が伸長することで、バネ16は付整力を増大させながらピストン14を天井150の方向に付勢する。制動装置1の動作によって、荷台102が下降するときの昇降ジャッキ111の負荷を低減することができ、さらに、荷台102の円滑な降下が可能となる。
【0043】
荷台102が上昇した状態で、仮に、チェーン115が破断したとき、荷台102には急激に降下しようとする力が作用する。この場合において、流体室11の作動流体HLは、流速を速めてオリフィス35を通過して、アキュムレータ30に流入する。流速を速めた作動流体HLがオリフィス35を通過するとき、作動流体HLの粘性抵抗によって、作動流体HLがオリフィス35を通過するときの流速に比例した減衰力がピストン14に付加される。すなわち、荷台102の落下速度に比例した粘性減衰効果が発揮される。これにより、荷台102の急激な降下を阻止できる。この場合において、制動装置1は、荷台102の急激な落下を阻止する落下安全装置として機能する。
【0044】
本実施形態は例示であり、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で改変できることは勿論である。例えば、制動装置の昇降台への適用は、あくまでも一例であり、状況に応じて他の構造物に適宜適用してもよい。例えば、重量扉を昇降するときの落下安全装置としての適用が考えられる。また、制動装置のみならず、構造物の耐震性を向上させることを目的とする制振装置として用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係る制動装置は、重量構造物の制動装置として、あるいは構造物の制振装置として幅広く適用できることから産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0046】
1 :制動装置
10 :制動本体部
11 :流体室
12 :大気室
13 :シリンダ
14 :ピストン
16 :バネ
17 :ストッパ
20 :流体制御部
21 :第1制御管路
22 :第2制御管路
25 :本体接続部
30 :アキュムレータ
31 :第1逆止弁
32 :第2逆止弁
35 :オリフィス
HL :作動流体
OA :大気
G :貯留気体
【要約】
【課題】構造物が大きく特定の方向に急激に変位したときに、構造物の変位速度を低減することができるとともに、変位後は、元の位置に復元が容易な制動装置を提供する。
【解決手段】制動装置1は、作動流体HLが充填される流体室11と、大気OAに連通する大気室12とが設けられるシリンダ13と、シリンダ13の内部に摺動可能に挿入されて、流体室11と大気室12を画定するピストン14と、を有する制動本体部10と、流体室11に接続する流体制御部20と、流体制御部20に接続して、作動流体HLを貯留するとともに、作動流体HLの流入によって、内部に存する貯留気体Gが加圧されるアキュムレータ30と、を備える。流体制御部20は、第1逆止弁31と、作動流体HLが通過する過程でピストン14に減衰抵抗力を生じさせるオリフィス35と、が設けられた第1制御管路21と、第2逆止弁32が設けられた第2制御管路22とを有している。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4