(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】操船支援システム
(51)【国際特許分類】
B63B 49/00 20060101AFI20240215BHJP
B63B 21/56 20060101ALI20240215BHJP
B63B 35/68 20060101ALI20240215BHJP
B63H 21/22 20060101ALI20240215BHJP
B63B 35/70 20060101ALI20240215BHJP
G08B 5/22 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
B63B49/00 Z
B63B21/56 Z
B63B35/68
B63H21/22 Z
B63H21/22 B
B63B35/70
G08B5/22 Z
(21)【出願番号】P 2019184623
(22)【出願日】2019-10-07
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】檜野 武憲
(72)【発明者】
【氏名】原田 芳輝
(72)【発明者】
【氏名】絹川 悠介
(72)【発明者】
【氏名】古賀 毅
(72)【発明者】
【氏名】坂田 健太郎
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/167888(WO,A1)
【文献】特開2006-137309(JP,A)
【文献】特表2019-515829(JP,A)
【文献】実開昭61-105298(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第101612983(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 49/00
B63B 21/56
B63B 35/68
B63H 21/22
B63B 35/70
G08B 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの推進機を含む本船が少なくとも1隻のタグボートでアシストされる際に使用される操船支援システムであって、
画面を有する少なくとも1つの表示装置と、
前記本船の位置および方位に関する本船位置方位情報、ならびに前記少なくとも1隻のタグボートの位置および方位に関するタグボート位置方位情報を取得し、前記本船の位置および方位を示す本船外形線、ならびに前記少なくとも1隻のタグボートの位置および方位を示す少なくとも1つのタグボート外形線を前記画面上に表示する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記本船の少なくとも1つの推進機の目標推進ベクトル、および前記少なくとも1隻のタグボートの目標推進ベクトルを算出し、前記本船の少なくとも1つの推進機の目標推進ベクトルおよび前記少なくとも1隻のタグボートの目標推進ベクトルを前記画面上に表示する、操船支援システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記本船の転心位置を通る直線上での前記本船の計画推進ベクトルおよび前記転心位置回りの前記本船の計画旋回モーメントを算出し、前記計画推進ベクトルおよび前記計画旋回モーメントを前記画面上に表示し、
前記本船の少なくとも1つの推進機の目標推進ベクトルと前記少なくとも1隻のタグボートの目標推進ベクトルは、前記計画推進ベクトルおよび前記計画旋回モーメントを分解したものである、請求項1に記載の操船支援システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記本船の所定時間後の予想位置および予想方位を算出し、前記予想位置および前記予想方位を示す本船予想外形線を前記画面上に表示する、請求項1または2に記載の操船支援システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記本船の仕様に関する本船情報、および前記少なくとも1隻のタグボートの仕様に関するタグボート情報、を格納するデータベースを含み、気象情報および/または海象情報を含む環境情報と、前記本船位置方位情報と、前記タグボート位置方位情報と、前記本船の転心位置を通る直線上での前記本船の計画推進ベクトルおよび前記転心位置回りの前記本船の計画旋回モーメントに関する本船推力計画情報と、前記本船の少なくとも1つの推進機の使用方法および前記少なくとも1隻のタグボートのアシスト方法を含む操船パターンに関する操船パターン情報と、前記データベースに格納された情報と、に基づいて、前記本船の少なくとも1つの推進機の目標推進ベクトルと前記少なくとも1隻のタグボートの目標推進ベクトルを算出する、請求項1~3の何れか一項に記載の操船支援システム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの表示装置は、前記本船および前記少なくとも1隻のタグボートとは独立した端末装置に含まれる端末表示装置を含む、請求項1~
4の何れか一項に記載の操船支援システム。
【請求項6】
前記少なくとも1つの表示装置は、前記本船に搭載される本船表示装置と、前記少なくとも1隻のタグボートに搭載される少なくとも1つのタグボート表示装置のうちの少なくとも一方を含む、請求項1~
5の何れか一項に記載の操船支援システム。
【請求項7】
本船が複数隻のタグボートでアシストされる際に使用される操船支援システムであって、
画面を有する少なくとも1つの表示装置と、
前記本船の位置および方位に関する本船位置方位情報、ならびに前記複数隻のタグボートの位置および方位に関するタグボート位置方位情報を取得し、前記本船の位置および方位を示す本船外形線、ならびに前記複数隻のタグボートの位置および方位を示す複数のタグボート外形線を前記画面上に表示する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記本船の転心位置を通る直線上での前記本船の計画推進ベクトル、ならびに前記転心位置回りの前記本船の計画旋回モーメントを算出し、前記計画推進ベクトルおよび前記計画旋回モーメントを前記画面上に表示する、操船支援システム。
【請求項8】
前記制御装置は、前記複数隻のタグボートの目標推進ベクトルをタグボートごとに算出し、前記目標推進ベクトルを前記画面上に表示し、
前記複数隻のタグボートの目標推進ベクトルは、前記本船の計画推進ベクトルおよび計画旋回モーメントを分解したものである、請求項
7に記載の操船支援システム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記本船の所定時間後の予想位置および予想方位を算出し、前記予想位置および前記予想方位を示す本船予想外形線を前記画面上に表示する、請求項
7または
8に記載の操船支援システム。
【請求項10】
前記制御装置は、前記本船の仕様に関する本船情報、および前記複数隻のタグボートの仕様に関するタグボート情報、を格納するデータベースを含み、気象情報および/または海象情報を含む環境情報と、前記本船位置方位情報と、前記タグボート位置方位情報と、前記本船の転心位置を通る直線上での前記本船の計画推進ベクトルおよび前記転心位置回りの前記本船の計画旋回モーメントに関する本船推力計画情報と、前記複数隻のタグボートのアシスト方法を含む操船パターンに関する操船パターン情報と、前記データベースに格納された情報と、に基づいて、前記複数隻のタグボートの目標推進ベクトルを算出する、請求項
7~
9の何れか一項に記載の操船支援システム。
【請求項11】
前記少なくとも1つの表示装置は、前記本船および前記複数隻のタグボートとは独立した端末装置に含まれる端末表示装置を含む、請求項
7~
10の何れか一項に記載の操船支援システム。
【請求項12】
前記少なくとも1つの表示装置は、前記複数隻のタグボートに搭載される複数のタグボート表示装置を含む、請求項
7~
11の何れか一項に記載の操船支援システム。
【請求項13】
使用者が前記本船推力計画情報を入力するための入力装置をさらに備える、請求項4または
10に記載の操船支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本船が少なくとも1隻のタグボートでアシストされる際に使用される操船支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば港湾内では、本船が少なくとも1隻のタグボートでアシストされることが多い。本船は、少なくとも1つの推進機を含む自力走行可能船である場合もあるし、推進機を含まない又は推進機が故障した自力走行不能船である場合もある。
【0003】
一般的に、港湾内では、水先案内人または本船の船長などの指揮者が、本船および/またはタグボートをどのように操船すべきかを指揮する。例えば、タグボートのアシスト方法としては、押し、曳き、並走などがあり、指揮者は、タグボートへ適時アシスト方法を指示する。
【0004】
例えば、特許文献1には、画面を有する携帯式の曳船指示装置が開示されている。その画面には、本船を示す船形図形と、複数隻のタグボートのそれぞれの本船に対する相対位置および相対方位を示す矢印図形とが表示される。このため、画面を見た者は、タグボートが本船に対して押しと曳きのどちらを行うのかと、その位置および方向を把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された曳舟指示装置のように、画面上に本船に対する各タグボートの相対位置および相対方位を示す矢印図形が表示されるだけでは、画面を見た者は本船がどのように動くのかを明確に把握することができない。
【0007】
そこで、本発明は、表示装置の画面を見た者が本船の動きを明確に把握することができる操船支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の1つの側面からの操船支援システムは、少なくとも1つの推進機を含む本船が少なくとも1隻のタグボートでアシストされる際に使用される操船支援システムであって、画面を有する少なくとも1つの表示装置と、前記本船の位置および方位に関する本船位置方位情報、ならびに前記少なくとも1隻のタグボートの位置および方位に関するタグボート位置方位情報を取得し、前記本船の位置および方位を示す本船外形線、ならびに前記少なくとも1隻のタグボートの位置および方位を示す少なくとも1つのタグボート外形線を前記画面上に表示する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記本船の少なくとも1つの推進機の目標推進ベクトル、ならびに前記少なくとも1隻のタグボートの目標推進ベクトルを算出し、前記本船の少なくとも1つの推進機の目標推進ベクトルおよび前記少なくとも1隻のタグボートの目標推進ベクトルを前記画面上に表示する、ことを特徴とする。
【0009】
上記の構成によれば、タグボートの目標推進ベクトルだけでなく本船の推進機の目標推進ベクトルも画面上に表示される。従って、表示装置の画面を見た者が、本船自体に備わった推進機の推力を勘案することができ、本船の動きを明確に把握することができる。
【0010】
また、本発明の別の側面からの操船支援システムは、本船が少なくとも1隻のタグボートでアシストされる際に使用される操船支援システムであって、画面を有する少なくとも1つの表示装置と、前記本船の位置および方位に関する本船位置方位情報、ならびに前記少なくとも1隻のタグボートの位置および方位に関するタグボート位置方位情報を取得し、前記本船の位置および方位を示す本船外形線、ならびに前記少なくとも1隻のタグボートの位置および方位を示す少なくとも1つのタグボート外形線を前記画面上に表示する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記本船の所定時間後の予想位置および予想方位を算出し、前記予想位置および前記予想方位を示す本船予想外形線を前記画面上に表示する、ことを特徴とする。
【0011】
上記の構成によれば、表示装置の画面を見た者が、所定時間後までの本船の位置および方位の変化をイメージすることができる。従って、表示装置の画面を見た者が本船の動きを明確に把握することができる。
【0012】
また、本発明のさらに別の側面からの操船支援システムは、本船が複数隻のタグボートでアシストされる際に使用される操船支援システムであって、画面を有する少なくとも1つの表示装置と、前記本船の位置および方位に関する本船位置方位情報、ならびに前記複数隻のタグボートの位置および方位に関するタグボート位置方位情報を取得し、前記本船の位置および方位を示す本船外形線、ならびに前記複数隻のタグボートの位置および方位を示す複数のタグボート外形線を前記画面上に表示する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記本船の転心位置を通る直線上での前記本船の計画推進ベクトル、ならびに前記転心位置回りの前記本船の計画旋回モーメントを算出し、前記計画推進ベクトルおよび前記計画旋回モーメントを前記画面上に表示する、ことを特徴とする。
【0013】
上記の構成によれば、本船の転心位置を基準とした動きが視覚化される。従って、表示装置の画面を見た者が本船の動きを明確に把握することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、表示装置の画面を見た者が本船の動きを明確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る操船支援システムの概略構成図である。
【
図2】前記操船支援システムにおける端末装置の表示装置の画面の一例である。
【
図4】ある操船パターンを説明するための図である。
【
図5】別の操船パターンを説明するための図である。
【
図6】さらに別の操船パターンを説明するための図である。
【
図8】表示装置の画面の別の変形例を示す図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る操船支援システムにおける端末装置の概略構成図である。
【
図11】本船が推進機を含まない場合の表示装置の画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
図1に、本発明の第1実施形態に係る操船支援システム4を示す。この操船支援システム4は、本船1が少なくとも1隻のタグボート2でアシストされる際に使用されるものである。
図1では、例示として、タグボート2が2隻である場合を描いている。
【0017】
本実施形態では、タグボート2による本船1のアシストが港湾内で行われることを前提とする。ただし、タグボート2による本船1のアシストは外洋で行われてもよい。また、本実施形態では、操船支援システム4が、水先案内人が携帯するか陸上設備に設置される、本船1および少なくとも1隻のタグボート2とは独立した端末装置3を含む。さらに、本実施形態では、本船1および少なくとも1隻のタグボート2が有人船であることを前提とする。
【0018】
本船1には、制御装置11、表示装置12(本発明の本船表示装置に相当)および通信装置13が搭載されている。同様に、少なくとも1隻のタグボート2には、制御装置21、表示装置22(本発明のタグボート表示装置に相当)および通信装置23が搭載されている。これらの機器は、端末装置3と共に操船支援システム4を構成する。例えば、本船1の制御装置11および表示装置12は本船1のブリッジコンソールに組み込まれ、タグボート2の制御装置21および表示装置22はタグボート2のブリッジコンソールに組み込まれる。
【0019】
端末装置3は、
図1および
図3に示すように、入力装置35、制御装置31、表示装置32(本発明の端末表示装置に相当)および通信装置33を含む。例えば、端末装置3は、ポータブルタブレットコンピュータであってもよいし、ノートブックコンピュータであってもよい。
【0020】
制御装置31は、例えば、ROMやRAMなどのメモリと、HDDなどのストレージと、CPUを有し、ROMまたはHDDに記憶されたプログラムがCPUにより実行される。本船1に搭載される制御装置11および少なくとも1隻のタグボート2に搭載される制御装置21も同様の構成を有する。
【0021】
詳しくは後述するが、本実施形態では、端末装置3の制御装置31が少なくとも1隻のタグボート2のアシスト方法を含む操船パターンなどを決定する。このため、制御装置31は、
図3に示すように、各種の情報を格納するデータベース34を含む。
【0022】
ただし、操船パターンなどの決定は、本船1に搭載された制御装置11、または1隻のタグボート2に搭載された制御装置21で行われてもよい。この場合、データベース34は、操船パターンを決定する制御装置(11または21)に含まれてもよい。あるいは、操船パターンの決定が本船1に搭載される制御装置11または1隻のタグボート2に搭載される制御装置21で行われる場合でも、データベース34が端末装置3の制御装置31に含まれ、データベース34に格納された情報が後述する無線通信により操船パターンを決定する制御装置(11または21)へ送信されてもよい。
【0023】
端末装置3の通信装置33は、本船1の通信装置13および少なくとも1隻のタグボート2の通信装置23と無線通信可能なものである。この無線通信は、AIS(Automatic Identification System:自動船舶識別装置)を介した通信であってもよいし、船間同士の直接通信であってもよいし、地上基地局を介した船陸間通信であってもよい。
【0024】
本船1の制御装置11には、本船1の位置および方位に関する本船位置方位情報がリアルタイムで記憶される。本船1の位置は、GNSS(Global Navigation Satellite System)により測定され、本船1の方位は、本船1に設けられた方位計により測定される。本船位置方位情報は、本船1の通信装置13から端末装置3の通信装置33へ送信される。
【0025】
少なくとも1隻のタグボート2の制御装置21には、当該タグボート2の位置および方位に関するタグボート位置方位情報がリアルタイムで記憶される。タグボート2の位置は、GNSSにより測定され、タグボート2の方位は、タグボート2に設けられた方位計により測定される。少なくとも1隻のタグボート位置方位情報は、タグボート2の通信装置23から端末装置3の通信装置33へ送信される。
【0026】
端末装置3の制御装置31は、通信装置33を介して上述した本船位置方位情報およびタグボート位置方位情報を取得する。
【0027】
入力装置35は、使用者が、本船1の出発点および終着点を含む本船経由点情報を入力するためのものである。この入力により、制御装置31は本船経由点情報を取得する。例えば、入力装置35は、タッチパネルであってもよいしキーボードであってもよい。
【0028】
本船経由点情報は、出発点の位置だけでなく、出発点での本船1の方位および速さを含む。同様に、本船経由点情報は、終着点の位置だけでなく、終着点での本船1の方位および速さを含む。本船経由点情報は、中間点(中間点の位置、ならびに中間点での本船1の方位および速さ)を含んでもよい。
【0029】
さらに、制御装置31は、港湾内の風情報などの気象情報、および/または港湾内の波情報や潮流情報などの海象情報を含む環境情報も取得する。例えば、制御装置31は、通信装置33およびインターネットを介して、気象庁やNOAA(National Ocean and Atmospheric Administration)等の外部機関から環境情報を取得する。あるいは、制御装置31は、本船1に搭載された風向風速計から環境情報のうちの風情報を取得してもよい。
【0030】
データベース34は、本船1の仕様に関する本船情報、本船情報に応じて設定されたタグボート台数に関する組合せ情報、および少なくとも1隻のタグボート2の仕様に関するタグボート情報を格納する。本船1の仕様とは、例えば、本船1の形状、重量および喫水、推進機の数、位置および能力、タグボート接続可能位置などである。
【0031】
アシストに使用するタグボート2の台数は本船1の種類、港湾規則、海象条件などによって予め定められる。組合せ情報は、この台数に関するものである。タグボート2の仕様とは、例えば、タグボート2の形状、推進機の数および能力などである。
【0032】
データベース34に格納される情報は、港湾内に本船1が入港する度に、その本船1に関する情報(本船情報、組合せ情報およびタグボート情報)に更新されてもよい。あるいは、データベース34には、入港が想定される全ての本船1に関する情報が予め格納されてもよい。
【0033】
制御装置31は、取得した本船位置方位情報およびタグボート位置方位情報に基づいて、
図2に示すように、本船1の位置および方位を示す本船外形線10と、少なくとも1隻のタグボート2の位置および方位を示す少なくとも1つのタグボート外形線20を表示装置32の画面上に表示する。
【0034】
例えば、本船外形線10は、本船1の形状を近似した多角形(
図2では五角形)の輪郭線であり、タグボート外形線20は、タグボート2の形状を近似した多角形(
図2では三角形)の輪郭線である。
【0035】
本実施形態では、制御装置31が上述したように操船パターンを決定する。タグボート2が本船1を曳く場合、制御装置31は、本船1とタグボート2とを接続するタグライン15も表示装置32の画面上に表示する。
【0036】
上述したデータベース34は、岸壁61の形状を含む陸地情報も格納してもよい。この場合、制御装置31は、陸地情報をデータベース34から読み込み、本船1の位置が岸壁61に近いときに岸壁61も表示装置32の画面上に表示する。
【0037】
本実施形態では、制御装置31が、本船1の転心位置51を通る直線上での本船1の計画推進ベクトル53と、転心位置51回りの本船1の計画旋回モーメント54を算出する。このため、制御装置31は、転心位置51ならびに算出した計画推進ベクトル53および計画旋回モーメント54も表示装置32の画面上に表示する。
【0038】
図2に示す例では、計画推進ベクトル53が、転心位置51を起点とする直線状の矢印で表示されている。ただし、計画推進ベクトル53は、本船外形線10から離れた位置を起点とする矢印で表示されてもよい。あるいは、計画推進ベクトル53は、矢印の代わりに長尺状の三角形で表示されてもよいし、一直線上に並ぶ複数の三角形(この場合、三角形の数がベクトルの大きさを示す)で表示されてもよい。また、計画推進ベクトル53は、その方向および大きさが文字及び数字で表示されてもよい。この点は、後述するベクトルの表示でも同様である。
【0039】
また、
図2に示す例では、計画旋回モーメント54が、本船1の転心位置51を中心とする円弧状の矢印で表示されている。ただし、計画旋回モーメント54は、必ずしも矢印で表示される必要はなく、例えば、その方向および大きさが文字及び数字で表示されてもよい。
【0040】
さらに、本実施形態では、本船1が少なくとも1つの推進機を含み、制御装置31が、本船1の少なくとも1つの推進機の目標推進ベクトルと、少なくとも1隻のタグボート2の目標推進ベクトルを算出する。このため、制御装置31は、算出した本船1の少なくとも1つの推進機の目標推進ベクトルおよび少なくとも1隻のタグボート2の目標推進ベクトルも表示装置32の画面上に表示する。
【0041】
本船1の少なくとも1つの推進機の目標推進ベクトルおよび少なくとも1隻のタグボート2の目標推進ベクトルは、上述した本船1の計画推進ベクトル53および計画旋回モーメント54を分解したものである。換言すれば、本船1の計画推進ベクトル53および計画旋回モーメント54は、本船1の少なくとも1つの推進機の目標推進ベクトルと、少なくとも1隻のタグボート2の目標推進ベクトルを合成したものである。
【0042】
なお、計画旋回モーメント54の分解に関しては、計画旋回モーメント54は、本船1におけるタグボート2の作用点(押し曳きされる点)を通る、本船1の転心位置51を中心とする円に接する直線であって、タグボート2の押し方向または曳き方向に延びる直線上の力に変換される。
【0043】
図2は、
図4~
図6に示すように本船1が主推進機1aおよびラダー1bならびにサイド推進機1cを含む場合の表示装置32の画面の一例である。
図2に示す例では、本船1が3隻のタグボート2でアシストされる。3隻のタグボート2のうちの1隻が本船1を押し、残りの2隻がタグライン15を介して本船1を曳く。
【0044】
図2に示す例では、本船1の主推進機1aの目標推進ベクトル71が、本船外形線10内の主推進機1aの位置を起点とする矢印で表示されているとともに、本船1のサイド推進機1cの目標推進ベクトル72が、本船外形線10内のサイド推進機1cの位置を起点とする矢印で表示されている。さらに、
図2に示す例では、3隻のタグボート2の目標推進ベクトル81~83のそれぞれが、タグボート外形線20内の中心を起点とする矢印で表示されている。
【0045】
また、本実施形態では、制御装置31が、本船1の所定時間後の予想位置および予想方位を算出し、算出した予想位置および予想方位を示す本船予想外形線55も表示装置32の画面上に表示する。
【0046】
次に、
図3を参照して、端末装置3の制御装置31が行う処理について説明する。なお、以下の処理は、リアルタイムで逐次行われる。
【0047】
まず、制御装置31は、取得した本船経由点情報および環境情報、ならびにデータベース34に格納された情報に基づいて、少なくとも1隻のタグボート2のアシスト方法を含む操船パターンおよび本船1の最適航路を決定する。本実施形態では、上述したように本船1が少なくとも1つの推進機を含む。このため、操船パターンは、本船1の少なくとも1つの推進機の使用方法を含む。
【0048】
図4~
図6に、本船1が着岸するときの異なる3つの操船パターンを示す。
図4および
図6は本船1が2隻のタグボート2でアシストされるときの一例を示し、
図5は本船1が1隻のタグボート2でアシストされるときの一例を示す。なお、
図4~
図6では、本船1の推進機およびタグボート2のうちの使用するものを実線で示し、使用しないものを破線で示す。
【0049】
図4~
図6に示す例では、本船1が主推進機1aおよびサイド推進機1cを含む。また、
図4~
図6に示す例では、主推進機1aの軸方向が変更不能であり、本船1がラダー1bを含む。ただし、本船1は、サイド推進機1cを含まずに、主推進機1aのみを含んでもよい。また、ラダー1bが設けられずに、主推進機1aの軸方向が変更可能であってもよい。
【0050】
図4に示す例は、本船1の速さが十分に低くなったときにサイド推進機1cを使用する例である。具体的に、
図4に示す例では、岸壁61から遠い位置では、本船1の主推進機1aおよびラダー1bのみで適切な航行が可能であるため、タグボート2は本船1に並走する。本船1が岸壁61に近づいてくると、本船1の主推進機1aおよびラダー1bのみでは適切な旋回性能および減速性能が得られないため、2隻のタグボート2が両側から本船1を押す。
【0051】
その後、本船1の主推進機1aを停止し、本船1を行脚で走行させる。本船1の速さが十分に低下すると、2隻のタグボート2が移動して本船1を片側から岸壁61に向かって押しながら、本船1のサイド推進機1cが使用される。
【0052】
図5に示す例では、
図4に示す例と異なり、本船1のラダー1bは操作しない。
図5に示す例では、本船1が岸壁61に近づいてきたときに、1隻のタグボート2が片側から本船1を押す。このとき、タグボート2と本船1とをタグライン15により接続しておく。
【0053】
その後、本船1の主推進機1aを停止し、本船1を行脚で走行させる。このとき、タグボート2がタグライン15を介して本船1を曳きながら、本船1の行脚および方位を制御する。
【0054】
図6に示す例では、本船1が岸壁61に近づいたときから、2隻のタグボート2が片側から本船1を曳きながら本船1を着岸させる。
【0055】
図3に戻って、制御装置31は、まず、環境情報に基づいて本船1に作用する外力(前後方向の外力、左右方向の外力および旋回方向の外力)を算出する。ついで、制御装置31は、そのような外力が本船1に作用したときに、タグボート2のどのようなアシスト方法が最善であり、本船1の少なくとも1つの推進機(例えば、主推進機1aおよびサイド推進機1c)のどのような使用方法が最善であるかを判定しながら、操船パターンおよび最適航路を決定する。
【0056】
例えば、制御装置31は、本船1と少なくとも1隻のタグボート2を1つの仮想船体と見做し、この仮想船体が岸壁や他船との接触といった危険を回避しつつ、所要時間が極力短く、かつ、燃焼消費が極力抑えられるように、操船パターンおよび最適航路を決定してもよい。具体的に、制御装置31は、仮想船体の消費エネルギー量に関する評価値および仮想船体の安全性に関する評価値を含む評価関数を用い、この評価関数が最小となるような最適値探索アルゴリズムを実行して操船パターンおよび最適経路を決定する。これにより、仮想船体の消費エネルギー量を抑制しつつ安全性を確保するように操船パターンおよび最適航路を決定することができる。
【0057】
例えば、制御装置31は、複数の操船パターンおよび複数の航路での仮想船体に必要な推力を求め、仮想船体の推力の変化率二乗値V1と、仮想船体の推力の二乗和算値V2と、仮想船体と岸壁や他船などの障害物との距離に応じた第1危険度評価値V3と、前記障害物に対する仮想船体の相対速度に応じた第2危険度評価値V4の合計値S(=V1+V2+V3+V4)を評価関数としてもよい。
【0058】
さらに、制御装置31は、本船1が最適航路に沿って航行するときの本船1の計画推進ベクトル53および計画旋回モーメント54を算出し、算出した本船1の計画推進ベクトル53および計画旋回モーメント54を表示装置32の画面上に表示する。
【0059】
制御装置31は、算出した本船1の計画推進ベクトル53および計画旋回モーメント54に関する本船推力計画情報を記憶する。そして、端末装置3は、当該端末装置3をサーバ、本船1および/または少なくとも1隻のタグボート2をクライアントとする、サーバクライアントシステムを構築する。
【0060】
すなわち、本船1の制御装置11は、本船推力計画情報を端末装置3から取得可能である。制御装置11が本船推力計画情報を取得すると、端末装置3の制御装置31が本船1の制御装置11を介して表示装置12の画面上に、本船1の計画推進ベクトル53および計画旋回モーメント54を表示する。
【0061】
同様に、少なくとも1隻のタグボート2の制御装置21は、本船推力計画情報を端末装置3から取得可能である。制御装置21が本船推力計画情報を取得すると、端末装置3の制御装置31がタグボート2の制御装置21を介して表示装置22の画面上に、本船1の計画推進ベクトル53および計画旋回モーメント54を表示する。
【0062】
さらに、制御装置31は、本船1の計画推進ベクトル53および計画旋回モーメント54を算出後、取得した環境情報、本船位置方位情報およびタグボート位置方位情報、ならびに決定した操船パターンに関する操船パターン情報、上述した本船推力計画情報、およびデータベース34に格納された情報に基づいて、本船1の少なくとも1つの推進機の目標推進ベクトルと、少なくとも1隻のタグボート2の目標推進ベクトルを算出する。これにより、本船1の計画推進ベクトル53および計画旋回モーメント54を本船1の少なくとも1つの推進機と少なくとも1隻のタグボート2(1隻のタグボート2は1つの推進機と仮定)とで配分することができる。
【0063】
例えば、制御装置31は、以下の評価関数Jが最小となるように、本船1の少なくとも1つの推進機の目標推進ベクトルと、少なくとも1隻のタグボート2の目標推進ベクトルを算出する。
【0064】
【数1】
r:合算推力指令(本船1の計画推進ベクトル53および計画旋回モーメント54)
u:本船の推進機およびタグボートの推力合計値
v
0:本船の推進機およびタグボートの所定の推力(船体の前後・左右方向)および
旋回モーメント(要素数は推力発生源の数の3倍と等しい)
v:本船の推進機およびタグボートの発生すべき推力(船体の前後・左右方向)およ
び旋回モーメント(同上)
W
1,W
2:重み行列(3×3)
W
3:重み行列(正方行列、要素数は推力発生源の数の2倍と等しい)
T:評価期間(数秒~数百秒)
【0065】
式1の右辺第一項は、本船操船必要推力に船体外力を加味した合算推力指令と配分後の推力を合わせたものの差を小さくするものである。式1の右辺第二項は、計算実施時点(t=0)から所定時間Tまでの間について、配分後の推力の合算値の重み付け二乗和をとったものであり、発生推力自体を小さくするものである。式1の右辺第三項は、配分後の各推進機の推力を、予め与えた所定値からの差を小さくするためのものである。
【0066】
制御装置31は、算出した本船1の少なくとも1つの推進機の目標推進ベクトルと、算出した少なくとも1隻のタグボート2の目標推進ベクトルを、表示装置32の画面上に表示する。
【0067】
さらに、制御装置31は、本船1の所定時間後の予想位置および予想方位を算出し、上述した本船予想外形線55を表示装置32の画面上に表示する。例えば、制御装置31は、本船1の船体モデル(排水量、船形などを含む)、上述した本船推力計画情報、環境情報、および水面下地形などに基づいて、本船1の所定時間後の予想位置および予想方位を算出する。
【0068】
なお、制御装置31は、本船推力計画情報だけでなく、上述した本船1の少なくとも1つの推進機の目標推進ベクトルに関する本船発生推力情報、および少なくとも1隻のタグボート2の目標推進ベクトルに関するタグボート発生推力情報などを、通信装置33および本船1の通信装置13を介して本船1の制御装置11へ送信してもよい。この場合、本船1の表示装置12の画面は、
図2と同じであってもよい。
【0069】
同様に、制御装置31は、本船推力計画情報だけでなく、本船発生推力情報およびタグボート発生推力情報などを、通信装置33およびタグボート2の通信装置23を介してタグボート2の制御装置21へ送信してもよい。この場合、少なくとも1隻のタグボート2に搭載された表示装置22の画面は、
図2と同じであってもよい。
【0070】
以上説明したように、本実施形態の操船支援システム4では、タグボート2の目標推進ベクトルだけでなく本船1の推進機の目標推進ベクトルも表示装置32の画面上に表示される。従って、表示装置32の画面を見た者が、本船1自体に備わった推進機の推力を勘案することができ、本船1の動きを明確に把握することができる。
【0071】
しかも、本実施形態では、本船1の計画推進ベクトル53および計画旋回モーメント54も表示装置32の画面上に表示され、本船1の転心位置51を基準とした動きが視覚化される。従って、表示装置32の画面を見た者が本船1の動きをさらに明確に把握することができる。
【0072】
また、本実施形態では、本船予想外形線55も表示装置32の画面上に表示される。従って、表示装置32の画面を見た者が、所定時間後までの本船1の位置および方位の変化をイメージすることができる。
【0073】
<変形例>
前記実施形態では、端末装置3の制御装置31が、表示装置32の画面上に、本船1の少なくとも1つの推進機の目標推進ベクトルと少なくとも1隻のタグボート2の目標推進ベクトルだけでなく、本船1の計画推進ベクトル53および計画旋回モーメント54ならびに本船予想外形線55も表示した。しかし、
図7に示すように、本船1の計画推進ベクトル53および計画旋回モーメント54ならびに本船予想外形線55の表示は省略されてもよい。
【0074】
あるいは、
図8に示すように、本船予想外形線55のみが表示装置32の画面上に表示され、本船1の少なくとも1つの推進機の目標推進ベクトルと、少なくとも1隻のタグボート2の目標推進ベクトルと、本船1の計画推進ベクトル53および計画旋回モーメント54の表示が省略されてもよい。この場合でも、表示装置32の画面を見た者が、所定時間後までの本船の位置および方位の変化をイメージすることができる。従って、表示装置32の画面を見た者が本船1の動きを明確に把握することができる。
【0075】
なお、これらの変形例は、第2実施形態にも適用可能である。
【0076】
(第2実施形態)
次に、
図9を参照して、本発明の第2実施形態に係る操船支援システムを説明する。本実施形態では、端末装置3が
図9に示すような制御装置31’を含む。また、端末装置3は、第1実施形態で説明した操船パターン情報を使用者が入力するための第1入力装置36と、同じく第1実施形態で説明した本船推力計画情報を使用者が入力するための第2入力装置37を含む。
【0077】
例えば、第1入力装置36は、タッチパネルであってもよいしキーボードであってもよい。例えば、第2入力装置37は、
図10に示すように、計画旋回モーメント54の向き(左旋回TLか右旋回TRか)および大きさを入力するための回頭ダイアル37aと、計画推進ベクトル53の向きおよび大きさを入力するためのジョイスティック37bを含んでもよい。なお、ジョイスティック37bに関しては、回頭ダイアル37aとジョイスティック37bが並ぶ方向の一方側および他方側がそれぞれ本船1の左舷方向Lおよび右舷方向Rであり、それと直交する方向の一方側が本船1の船首方向Fである。
【0078】
本実施形態の制御装置31’が第1実施形態の制御装置31と異なるのは、操船パターンおよび最適航路の決定を行わない点と、本船1の計画推進ベクトル53および計画旋回モーメント54の算出を行わない点である。
【0079】
具体的に、制御装置31’は、第1入力装置36を使用した入力によって操船パターン情報を取得するとともに、第2入力装置37を使用した入力によって本船1の計画推進ベクトル53および計画旋回モーメント54に関する本船推力計画情報を取得する。そして、制御装置31’は、第1実施形態と同様にして、環境情報、本船位置方位情報、タグボート位置方位情報、操船パターン情報、本船推力計画情報、およびデータベース34に格納された情報に基づいて、本船1の少なくとも1つの推進機の目標推進ベクトルと、少なくとも1隻のタグボート2の目標推進ベクトルを算出する。
【0080】
本実施形態でも、表示装置32の画面は
図2と同じである。すなわち、制御装置31’は、第1実施形態と同様に、表示装置32の画面上に、転心位置51ならびに本船1の計画推進ベクトル53および計画旋回モーメント54を表示する。また、制御装置31’は、本船1の少なくとも1つの推進機の目標推進ベクトルおよび少なくとも1隻のタグボート2の目標推進ベクトルも表示装置32の画面上に表示する。さらに、制御装置31’は、本船予想外形線55も表示装置32の画面上に表示する。
【0081】
本実施形態でも、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態では、第2入力装置37が採用されているので、使用者が表示装置32の画面を確認しながら入力すべき本船推力計画情報を変更することができる。
【0082】
(その他の実施形態)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0083】
例えば、本船1は推進機を含まなくてもよい。この場合、
図11に示すように、端末装置3の制御装置(31または31’)が少なくとも本船1の計画推進ベクトル53および計画旋回モーメント54を表示装置32の画面上に表示すれば、本船1の転心位置51を基準とした動きが視覚化される。従って、表示装置32の画面を見た者が本船1の動きを明確に把握することができる。
【0084】
なお、本船1が推進機を含まない場合、本船1は複数隻のタグボート2でアシストされる。この場合、操船パターンは複数隻のタグボート2のアシスト方法を含む。また、制御装置(31または31’)は、環境情報、本船位置方位情報、タグボート位置方位情報、操船パターン情報、本船推力計画情報、およびデータベース34に格納された情報に基づいて、複数隻のタグボートの目標推進ベクトルをタグボートごとに算出する。
【0085】
上記の場合、制御装置(31または31’)は、
図11に示すように、複数隻のタグボート2の目標推進ベクトルを、本船1の計画推進ベクトル53および計画旋回モーメント54と共に表示装置32の画面上に表示してもよい。
図11に示す例では、3隻のタグボート2の目標推進ベクトル84~86のそれぞれが、タグボート外形線20内の中心を起点とする矢印で表示されている。また、
図11に示す例では、本船1の所定時間後の予想位置および予想方位を示す本船予想外形線55も表示されている。なお、
図12に示すように、複数隻のタグボート2の目標推進ベクトルおよび本船予想外形線55の表示が省略され、本船1の計画推進ベクトル53および計画旋回モーメント54のみが表示されてもよい。
【0086】
複数隻のタグボート2の目標推進ベクトルは、本船1の計画推進ベクトル53および計画旋回モーメント54を分解したものである。換言すれば、本船1の計画推進ベクトル53および計画旋回モーメント54は、複数隻のタグボート2の目標推進ベクトルを合成したものである。
【0087】
また、第1実施形態で説明したように、本船1の操船パターンなどの決定が本船1に搭載された制御装置11または1隻のタグボート2に搭載された制御装置21で行われる場合、その制御装置(11または21)が、図
3に示す制御装置31または
図9に示す制御装置31’と同様に構成される。この場合、操船支援システム4は端末装置3を含まなくてもよい。ただし、第1実施形態または第2実施形態のように操船支援システム4が端末装置3を含めば、指揮者が本船1またはタグボート2に乗船することなく端末装置3の表示装置32の画面を見ながら操船指揮を行うことがきる。
【0088】
また、本船1は無人船であってもよい。この場合、本船1に搭載される表示装置12は不要である。また、タグボート2も無人船であってもよい。この場合、タグボート2に搭載される表示装置22は不要である。
【0089】
(まとめ)
本発明の1つの側面からの操船支援システムは、少なくとも1つの推進機を含む本船が少なくとも1隻のタグボートでアシストされる際に使用される操船支援システムであって、画面を有する少なくとも1つの表示装置と、前記本船の位置および方位に関する本船位置方位情報、ならびに前記少なくとも1隻のタグボートの位置および方位に関するタグボート位置方位情報を取得し、前記本船の位置および方位を示す本船外形線、ならびに前記少なくとも1隻のタグボートの位置および方位を示す少なくとも1つのタグボート外形線を前記画面上に表示する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記本船の少なくとも1つの推進機の目標推進ベクトル、ならびに前記少なくとも1隻のタグボートの目標推進ベクトルを算出し、前記本船の少なくとも1つの推進機の目標推進ベクトルおよび前記少なくとも1隻のタグボートの目標推進ベクトルを前記画面上に表示する、ことを特徴とする。
【0090】
上記の構成によれば、タグボートの目標推進ベクトルだけでなく本船の推進機の目標推進ベクトルも画面上に表示される。従って、表示装置の画面を見た者が、本船自体に備わった推進機の推力を勘案することができ、本船の動きを明確に把握することができる。
【0091】
前記制御装置は、前記本船の転心位置を通る直線上での前記本船の計画推進ベクトルおよび前記転心位置回りの前記本船の計画旋回モーメントを算出し、前記計画推進ベクトルおよび前記計画旋回モーメントを前記画面上に表示し、前記本船の少なくとも1つの推進機の目標推進ベクトルと前記少なくとも1隻のタグボートの目標推進ベクトルは、前記計画推進ベクトルおよび前記計画旋回モーメントを分解したものであってもよい。この構成によれば、本船の転心位置を基準とした動きが視覚化される。従って、表示装置の画面を見た者が本船の動きをさらに明確に把握することができる。
【0092】
前記制御装置は、前記本船の所定時間後の予想位置および予想方位を算出し、前記予想位置および前記予想方位を示す本船予想外形線を前記画面上に表示してもよい。この構成によれば、表示装置の画面を見た者が、所定時間後までの本船の位置および方位の変化をイメージすることができる。
【0093】
例えば、前記制御装置は、前記本船の仕様に関する本船情報、および前記少なくとも1隻のタグボートの仕様に関するタグボート情報、を格納するデータベースを含み、気象情報および/または海象情報を含む環境情報と、前記本船位置方位情報と、前記タグボート位置方位情報と、前記本船の転心位置を通る直線上での前記本船の計画推進ベクトルおよび前記転心位置回りの前記本船の計画旋回モーメントに関する本船推力計画情報と、前記本船の少なくとも1つの推進機の使用方法および前記少なくとも1隻のタグボートのアシスト方法を含む操船パターンに関する操船パターン情報と、前記データベースに格納された情報と、に基づいて、前記本船の少なくとも1つの推進機の目標推進ベクトルと前記少なくとも1隻のタグボートの目標推進ベクトルを算出してもよい。
【0094】
本発明の別の側面からの操船支援システムは、本船が少なくとも1隻のタグボートでアシストされる際に使用される操船支援システムであって、画面を有する少なくとも1つの表示装置と、前記本船の位置および方位に関する本船位置方位情報、ならびに前記少なくとも1隻のタグボートの位置および方位に関するタグボート位置方位情報を取得し、前記本船の位置および方位を示す本船外形線、ならびに前記少なくとも1隻のタグボートの位置および方位を示す少なくとも1つのタグボート外形線を前記画面上に表示する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記本船の所定時間後の予想位置および予想方位を算出し、前記予想位置および前記予想方位を示す本船予想外形線を前記画面上に表示する、ことを特徴とする。
【0095】
上記の構成によれば、画面を見た者が、所定時間後までの本船の位置および方位の変化をイメージすることができる。従って、画面を見た者が本船の動きを明確に把握することができる。
【0096】
例えば、前記少なくとも1つの表示装置は、前記本船および前記少なくとも1隻のタグボートとは独立した端末装置に含まれる端末表示装置を含んでもよい。また、前記少なくとも1つの表示装置は、前記本船に搭載される本船表示装置と、前記少なくとも1隻のタグボートに搭載される少なくとも1つのタグボート表示装置のうちの少なくとも一方を含んでもよい。
【0097】
本発明のさらに別の側面からの操船支援システムは、本船が複数隻のタグボートでアシストされる際に使用される操船支援システムであって、画面を有する少なくとも1つの表示装置と、前記本船の位置および方位に関する本船位置方位情報、ならびに前記複数隻のタグボートの位置および方位に関するタグボート位置方位情報を取得し、前記本船の位置および方位を示す本船外形線、ならびに前記複数隻のタグボートの位置および方位を示す複数のタグボート外形線を前記画面上に表示する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記本船の転心位置を通る直線上での前記本船の計画推進ベクトル、ならびに前記転心位置回りの前記本船の計画旋回モーメントを算出し、前記計画推進ベクトルおよび前記計画旋回モーメントを前記画面上に表示する、ことを特徴とする。
【0098】
上記の構成によれば、本船の転心位置を基準とした動きが視覚化される。従って、表示装置の画面を見た者が本船の動きを明確に把握することができる。
【0099】
例えば、前記制御装置は、前記複数隻のタグボートの目標推進ベクトルをタグボートごとに算出し、前記目標推進ベクトルを前記画面上に表示し、前記複数隻のタグボートの目標推進ベクトルは、前記本船の計画推進ベクトルおよび計画旋回モーメントを分解したものであってもよい。
【0100】
前記制御装置は、前記本船の所定時間後の予想位置および予想方位を算出し、前記予想位置および前記予想方位を示す本船予想外形線を前記画面上に表示してもよい。この構成によれば、表示装置の画面を見た者が、所定時間後までの本船の位置および方位の変化をイメージすることができる。
【0101】
例えば、前記制御装置は、前記本船の仕様に関する本船情報、および前記複数隻のタグボートの仕様に関するタグボート情報、を格納するデータベースを含み、気象情報および/または海象情報を含む環境情報と、前記本船位置方位情報と、前記タグボート位置方位情報と、前記本船の転心位置を通る直線上での前記本船の計画推進ベクトルおよび前記転心位置回りの前記本船の計画旋回モーメントに関する本船推力計画情報と、前記複数隻のタグボートのアシスト方法を含む操船パターンに関する操船パターン情報と、前記データベースに格納された情報と、に基づいて、前記複数隻のタグボートの目標推進ベクトルを算出してもよい。
【0102】
例えば、前記少なくとも1つの表示装置は、前記本船および前記複数隻のタグボートとは独立した端末装置に含まれる端末表示装置を含んでもよい。また、前記少なくとも1つの表示装置は、前記複数隻のタグボートに搭載される複数のタグボート表示装置を含んでもよい。
【0103】
上記の操船支援システムは、使用者が前記本船推力計画情報を入力するための入力装置をさらに備えてもよい。この構成によれば、使用者が表示装置の画面を確認しながら入力すべき本船推力計画情報を変更することができる。
【符号の説明】
【0104】
1 本船
10 本船外形線
12 表示装置(本船表示装置)
2 タグボート
20 タグボート外形線
22 表示装置(タグボート表示装置)
31 制御装置
32 表示装置(端末表示装置)
34 ベータベース
4 操船支援システム
51 転心位置
53 計画推進ベクトル
54 計画旋回モーメント
55 本船予想外形線
71,72,81~83 目標推進ベクトル