IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧

<>
  • 特許-排気浄化システム 図1
  • 特許-排気浄化システム 図2
  • 特許-排気浄化システム 図3
  • 特許-排気浄化システム 図4
  • 特許-排気浄化システム 図5
  • 特許-排気浄化システム 図6
  • 特許-排気浄化システム 図7
  • 特許-排気浄化システム 図8
  • 特許-排気浄化システム 図9
  • 特許-排気浄化システム 図10
  • 特許-排気浄化システム 図11
  • 特許-排気浄化システム 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】排気浄化システム
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20240215BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
F01N3/08 B
F01N3/24 N
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019239069
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021107700
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-03-15
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 敏史
【合議体】
【審判長】河端 賢
【審判官】青木 良憲
【審判官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-100628(JP,A)
【文献】特開2013-24191(JP,A)
【文献】特開平8-165920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/08
F01N 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気経路に設けられており、排気ガス中に噴射された反応液と前記排気ガスが混合された混合気が流入されて、前記反応液と前記排気ガスを反応させる排気浄化装置を備える排気浄化システムであって、
前記排気浄化装置と、
前記排気浄化装置よりも上流側の排気管に設けられた液体添加弁と、
前記排気浄化装置よりも上流側の前記排気管に設けられた分散装置と、
を備え、
前記液体添加弁は、前記反応液を前記分散装置へ向けて噴射し、
前記分散装置は、前記液体添加弁から噴射された前記反応液を、微粒化した微粒状反応液にして前記排気ガス中に分散するとともに、分散された前記微粒状反応液と前記排気ガスとが混合された前記混合気の流れを、前記排気管の軸線回りに旋回する旋回流とし、
前記排気浄化装置は、
触媒を有する浄化本体部と、
前記分散装置よりも下流側の前記排気管と前記浄化本体部とを連結する流入側配管と、を有しており、
前記流入側配管は、
前記旋回流とされた前記混合気を、前記流入側配管の内壁面から離間させて剥離させる剥離促進構造を有し、
前記流入側配管の前記剥離促進構造は、
上流側から下流側に向かうにつれ拡径する円錐台状部であり、
前記円錐台状部における前記排気管の前記軸線に対する内壁面の傾斜角度は、前記旋回流とされた前記混合気に含まれる前記微粒状反応液が前記流入側配管の前記内壁面へ付着することを抑制する角度である剥離促進角度に設定されており、
前記傾斜角度は、
前記円錐台状部の全体に亘って一定であり、
前記排気経路における、前記分散装置から前記円錐台状部までの区間及び前記円錐台状部から前記浄化本体部までの区間のそれぞれは、
内径が一定である、
排気浄化システム。
【請求項2】
請求項1に記載の排気浄化システムであって、
前記剥離促進角度は、50°以上90°未満である、
排気浄化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気経路に設けられており、排気ガス中に噴射された反応液と排気ガスが混合された混合気が流入されて、反応液と排気ガスを反応させる排気浄化装置を備える排気浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関を搭載した車両の中には、内燃機関の排気経路に設けられており、排気ガス中に噴射された反応液と排気ガスが混合された混合気が流入されて、反応液と排気ガスを反応させる排気浄化装置を備えているものがある。例えば、内燃機関としてディーゼルエンジンを搭載した車両の排気経路に設けられており、排気ガス中に噴射された反応液である尿素水と排気ガスとが混合された混合気が流入されて、選択還元触媒(SCR:SelectiveCatalytic Reduction)を用いて反応液である尿素水と排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を反応させる排気浄化装置がある。ここで、尿素水と排気ガスに含まれるNOxとの反応は、NOxを還元して浄化する反応である。
【0003】
そして、例えば特許文献1には、内燃機関の排気経路の、上流側から下流側へと並ぶ、尿素水を排気ガス中に噴射する尿素水添加弁(液体添加弁)と、噴射された尿素水を排気ガス中で微粒化させる拡散装置と、円柱状の選択還元触媒を内部に有する排気浄化装置と、を備える排気浄化システムが記載されている。ここで、尿素水添加弁は、排気管内にて分散装置へ向けて尿素水を噴射する。分散装置は、排気ガスの上流から下流へ向かう方向に対して斜めを向いた複数の羽根を備え、複数の羽根はプロペラのように排気管の軸線に対して回転対称に並べられており、分散装置を通過する排気ガスを排気管の軸線周りに旋回させて、旋回流を発生させる。尿素水添加弁から噴射された尿素水は、分散装置の羽根に当たって、微粒化された微粒状尿素水となり、排気ガス中に分散され、分散された微粒状尿素水(微粒状反応液)と排気ガスとは混合した混合気となる。
【0004】
ここで、微粒状尿素水は、分散装置により旋回流とされた混合気の流れによって、排気浄化装置の有する円柱状の選択還元触媒(触媒)へと運ばれる。排気浄化装置は、選択還元触媒を有する浄化本体部と、分散装置よりも下流側の排気管と浄化本体部とを連結する流入側配管とを有している。流入側配管は、旋回流とされた混合気を分散装置の下流側の排気管から浄化本体部内の選択還元触媒の流入側端面へと導く。流入側配管は、上流側から下流に向かうにつれ拡径する円錐台状に形成されており、排気管の軸線に対する、内壁面の傾斜角度が、混合気の旋回流が流入側配管内で徐々に径方向外側に広がりやすいように、比較的緩やかな約45°に設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-100628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
選択還元触媒を用いてより高い浄化効率を得るためには、選択還元触媒の流入側端面に付着する尿素水量を、流入側端面において均一にすることが望ましい。このために、浄化本体部の選択還元触媒の流入側端面に導かれる微粒状尿素水の、旋回流とされた混合気中の密度を、旋回の中央部から外周部までほぼ均一の密度とする必要がある。
【0007】
特許文献1において、旋回流とされた混合気は、排気浄化システムの流入側配管(円錐台状の流入側配管)の内壁面よりもさらに径方向外方に広がろうとする場合がある。しかし、流入側配管の内壁面が、比較的緩やかな傾斜角度(排気管の軸線に対して約45°の傾斜角度)であるため、旋回流とされた混合気の径方向への広がりは、流入側配管の内壁面によって抑え込まれる場合がある。この場合、混合気中の微粒状尿素水は、旋回の中央部よりも外周部の密度が高くなり、微粒状尿素水の混合気中の密度は、旋回の中央部から外周部まで均一とはならない。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、微粒状反応液と排気ガスとが混合された混合気を、旋回の中央部から外周部まで微粒状反応液の密度がほぼ均一に維持された状態で、排気浄化装置の触媒の流入側端面へと導くことができる、排気浄化システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、第1の発明は、内燃機関の排気経路に設けられており、排気ガス中に噴射された反応液と前記排気ガスが混合された混合気が流入されて、前記反応液と前記排気ガスを反応させる排気浄化装置を備える排気浄化システムであって、前記排気浄化装置と、前記排気浄化装置よりも上流側の排気管に設けられた液体添加弁と、前記排気浄化装置よりも上流側の前記排気管に設けられた分散装置と、を備え、前記液体添加弁は、前記反応液を前記分散装置へ向けて噴射し、前記分散装置は、前記液体添加弁から噴射された前記反応液を、微粒化した微粒状反応液にして前記排気ガス中に分散するとともに、分散された前記微粒状反応液と前記排気ガスとが混合された前記混合気の流れを、前記排気管の軸線回りに旋回する旋回流とし、前記排気浄化装置は、触媒を有する浄化本体部と、前記分散装置よりも下流側の前記排気管と前記浄化本体部とを連結する流入側配管と、を有しており、前記流入側配管は、前記旋回流とされた前記混合気を、前記流入側配管の内壁面から離間させて剥離させる剥離促進構造を有している、排気浄化システムである。
【0010】
次に、第2の発明は、上記第1の発明に係る排気浄化システムであって、前記流入側配管の前記剥離促進構造は、上流側から下流側に向かうにつれ拡径する円錐台状部であり、前記円錐台状部における前記排気管の前記軸線に対する内壁面の傾斜角度は、前記旋回流とされた前記混合気に含まれる前記微粒状反応液が前記流入側配管の前記内壁面へ付着することを抑制する角度である剥離促進角度に設定されている、排気浄化システムである。前記傾斜角度は、前記円錐台状部の全体に亘って一定であっても良い。加えて、前記排気経路における、前記分散装置から前記円錐台状部までの区間及び前記円錐台状部から前記浄化本体部までの区間のそれぞれは、内径が一定であっても良い。
【0011】
次に、第3の発明は、上記第2の発明に係る排気浄化システムであって、前記剥離促進角度は、50°以上90°未満である、排気浄化システムである。
【0012】
次に、第4の発明は、上記第1の発明から第3の発明に係る排気浄化システムであって、前記流入側配管の前記剥離促進構造は、前記流入側配管の上流側から下流側へと前記混合気を導く前記流入側配管の前記内壁面から径方向内方へと周方向に連続して突出する環状突出部を含む、排気浄化システムである。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明によれば、流入側配管の剥離促進構造が、旋回流とされた混合気を流入側配管の内壁面から離間させて剥離させる。これにより、旋回流とされた混合気の流れは、旋回の中央部から流入側配管の内壁面まで広がることが抑制されるとともに、流入側配管の内壁面よりもさらに径方向外方に広がろうとすることが抑制される。このため、旋回流とされた混合気中の微粒状反応液の密度が、旋回の外周部にて高くなることが抑止される。その結果、排気浄化システムは、微粒状反応液と排気ガスとが混合された混合気を、旋回の中央部から外周部まで微粒状反応液の密度がほぼ均一に維持された状態で、排気浄化装置の触媒の流入側端面へと導くことができる。
【0014】
第2の発明によれば、流入側配管の剥離促進構造は、内壁面の傾斜角度が、旋回流とされた混合気に含まれる微粒状反応液の流入側配管の内壁面への付着を抑制する角度である剥離促進角度に設定されている円錐台状部である。これにより、微粒状反応液が流入側配管の内壁面へ付着することを抑止したうえで、微粒状反応液を浄化本体部の触媒に導くことができる。
【0015】
第3の発明によれば、剥離促進角度は、50°以上90°未満であることにより、より確実に、旋回流とされた混合気を流入側配管の内壁面から離間させて剥離させることができる。
【0016】
第4の発明によれば、剥離促進構造に含まれる、流入側配管の内壁面から径方向内方へと周方向に連続して突出する環状突出部が、旋回流とされた混合気を流入側配管の内壁面から離間させて剥離させる。これにより、旋回流とされた混合気の流れは、旋回の中央部から流入側配管の内壁面まで広がることが抑制されるとともに、流入側配管の内壁面よりもさらに径方向外方に広がろうとすることが抑制される。このため、旋回流とされた混合気中の微粒状反応液の密度が、旋回の外周部にて高くなることが抑止される。その結果、排気浄化システムは、微粒状反応液と排気ガスとが混合された混合気を、旋回の中央部から外周部まで微粒状反応液の密度がほぼ均一に維持された状態で、排気浄化装置の触媒の流入側端面へと導くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の排気浄化システムを備えた内燃機関システムの構成の例を説明する図である。
図2】第1の実施の形態の排気浄化システムの周辺の要部の概略斜視図である。
図3】第1の実施の形態の排気浄化システムの周辺の要部の概略斜視図である。
図4図3におけるIV-IV断面図である。
図5図4におけるV部の拡大図である。
図6】第1の実施の形態の排気浄化システムの触媒の流入側端面における微粒状反応液の密度分布を説明する説明図である。
図7】従来の排気浄化システムを説明する説明図である。
図8図7におけるVIII部の拡大図である。
図9】従来の排気浄化システムの触媒の流入側端面における微粒状反応液の密度分布を説明する説明図である。
図10】比較例の排気浄化システムを説明する説明図である。
図11】第2の実施の形態の排気浄化システムの断面図である。
図12図11におけるXII部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態の排気浄化システム700について、図面を用いて説明する。本実施の形態にて説明する排気浄化システム700は、本発明の排気浄化システムの一例として、内燃機関10の排気経路12に設けられており、排気ガス中に噴射された尿素水(反応液)と排気ガスが混合された混合気が流入されて、尿素水(反応液)と排気ガスを反応させる排気浄化システムである。なお、図中に前後方向、左右方向、上下方向が記載されている場合、上下方向は鉛直上方に向かう方向及び下方に向かう方向を示しており、前後方向は内燃機関10を搭載した車両の前後方向を示し、左右方向は内燃機関10を搭載した車両の左右方向を示している。
【0019】
●[内燃機関システム1の全体構成(図1)]
図1を用いて、本発明に係る排気浄化システム700を備えた内燃機関システム1の全体構成について説明する。なお図1における内燃機関10は、内燃機関の1つの例としてディーゼルエンジンである。ここで、内燃機関10は、排気ガスと一緒に、粒子状物質(PM:Particulate Matter)、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)等を排出する。以下、図1に示す内燃機関システム1を、吸気側から排気側に向かって順に説明する。
【0020】
吸入空気流量検出装置31は、例えば吸気流量センサであり、内燃機関10の吸気通路11に設けられて内燃機関10が吸入した空気の流量に応じた検出信号を制御装置50に出力する。アクセル開度検出装置33(例えば、アクセル開度センサ)は、運転者が操作するアクセルの開度(すなわち、運転者の要求負荷)に応じた検出信号を制御装置50に出力する。回転検出装置34は、例えば回転センサであり、内燃機関10のクランクシャフトの回転数(すなわち、エンジン回転数)に応じた検出信号を制御装置50に出力する。
【0021】
インジェクタ14A~14Dは、図示省略した燃料配管が接続されて内燃機関10のシリンダ毎に設けられており、制御装置50からの駆動信号に応じて各シリンダ内に、所定のタイミングで所定量の燃料を噴射する。
【0022】
内燃機関10の排気ガスは、内燃機関10に接続された排気管12Aに流れる。内燃機関10から下流側に向かって、排気管12Aと、排気管12Bと、排気管12Cとが連結されており、排気管12A、12B、12Cにて排気経路12が形成されている。
【0023】
排気管12Aには、上流側から、制御装置50から駆動される燃料添加弁21と、排気温度検出装置36A、第1酸化触媒42(DOC:Diesel Oxidation Catalyst)を有する第1排気浄化装置41、排気温度検出装置36B、粒子状物質除去フィルタであるDPF43(DPF:DieselParticulate Filter)、差圧センサ35が設けられている。
【0024】
燃料添加弁21は、内燃機関10の排気ガスを浄化するために排気ガスに反応させる燃料(反応液)を排気ガス中に噴射する液体添加弁である。
【0025】
排気温度検出装置36Aは、例えば排気温度センサであり、第1酸化触媒42の上流側の排気ガスの温度に応じた検出信号を制御装置50に出力する。排気温度検出装置36Bは、例えば排気温度センサであり、第1酸化触媒42の下流側(かつDPF43の上流側)の排気ガスの温度に応じた検出信号を制御装置50に出力する。
【0026】
第1排気浄化装置41は、筒状に形成されており、内部に第1酸化触媒42が設けられている。第1酸化触媒42は、セラミック製の円柱状等に形成されたセル状筒体からなり、その軸方向には多数の貫通孔が形成され、それぞれの貫通孔の内面に白金(Pt)等の貴金属触媒がコーティングされている。そして、第1酸化触媒42は、所定の温度下で多数の貫通孔に排気ガスを通すことにより、排気ガスに含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)等が酸化されて、除去される。
【0027】
粒子状物質除去フィルタ(以下、「DPF」という。)43は、セラミックス材料等からなる多孔質な部材によって円柱状等に形成されている。多孔質のDPF43は、流入する排気ガスを通すことで粒子状物質(PM)を捕集して、排気ガスから粒子状物質(PM)を除去する。DPF43に粒子状物質(PM)が堆積するにつれ、DPF43が排気ガスを通しにくくなり、捕集機能が低下する。
【0028】
差圧センサ35は、第1酸化触媒42の下流側、かつ、DPF43の上流側の排気圧力(排気管内圧力)と、DPF43の下流側の排気管内圧力と、の差圧(圧力差)に応じた検出信号を制御装置50に出力する。ここで、差圧(圧力差)は、DPF43に粒子状物質(PM)が多く堆積すると変化する。制御装置50は、DPF43に粒子状物質(PM)が多く堆積して、DPF43が排気ガスを通しにくくなっており、DPF43に堆積した粒子状物質(PM)を除去してDPF43を回復(再生)させる必要があるか、あるいは否かを、差圧センサ35が出力した検出信号に基づいて推定できる。
【0029】
制御装置50は、DPF43を回復(再生)させる必要があると推定したら、DPF43に堆積した粒子状物質(PM)を除去するために、燃料添加弁21に燃料(反応液)を排気ガス中に噴射させる。排気ガス中に噴射された燃料(反応液)と排気ガスは混合されて混合気となり、第1排気浄化装置41に流入されて、第1排気浄化装置41が有する第1酸化触媒42の流入側端面74Aへと導かれる。燃料は、第1酸化触媒42にて、排気ガス中に残った酸素により酸化される。そして、酸化による発熱により排気ガス温度が上昇し、排気ガスは高温になる。この高温になった排気ガスによりDPF43の床温が上昇して、床温が所定温度以上(例えば、590[℃]以上)になると、DPF43内に堆積した粒子状物質(PM)が燃焼焼却されて、DPF43の捕集機能が回復(再生)される。この様に、第1排気浄化装置41は、内燃機関の排気経路12に設けられており、排気ガス中に噴射された燃料(反応液)と排気ガスが混合された混合気が流入されて、燃料(反応液)と排気ガスを反応させる排気浄化装置の一種である。
【0030】
排気管12Bは、DPF43の下流側に接続されており、排気管12Bには、排気温度検出装置36C、NOxセンサ37A、尿素水添加弁61、排気管インシュレータ12B1、排気浄化システム700等が設けられている。
【0031】
排気温度検出装置36Cは、例えば排気温度センサであり、DPF43の下流側の排気ガスの温度に応じた検出信号を制御装置50に出力する。NOxセンサ37Aは、選択還元触媒74の上流側の排気ガス中のNOxの濃度に応じた検出信号を制御装置50に出力する。排気管インシュレータ12B1は、排気管12Bの尿素水添加弁61よりも上流側に設けられている。排気管インシュレータ12B1は、筒状に形成されており、排気管12Bの熱が尿素水添加弁61に伝わりにくくなるよう、排気管12Bの一部を覆う。
【0032】
尿素水添加弁(液体添加弁)61は、排気管12Bにおいて、排気管12AのDPF43の下流側、かつ分散装置64および排気浄化装置70よりも上流側の、排気管12Bに設けられている。尿素水添加弁61は、制御装置50から駆動されて、排気浄化装置70よりも上流側に設けられた分散装置64へ向けて、排気ガス中で尿素水(反応液)を噴射(吐出、添加)する。尿素水添加弁61は、尿素水供給管62、尿素水ポンプ63を介して尿素水タンク65に連結され、尿素水タンク65から尿素水が供給される。
【0033】
尿素水ポンプ63は、制御装置50から駆動される電動ポンプである。尿素水タンク65内には、尿素水タンク65内に貯留されている尿素水67の残量(水位)に応じた検出信号を制御装置50に出力するレベルゲージ(残量検出装置)68が設けられている。また、尿素水タンク65内には、尿素水タンク65内に貯留されている尿素水67の濃度に応じた検出信号を制御装置50に出力する濃度センサ69が設けられている。
【0034】
分散装置64は、詳細は後述するが、排気管12Bにおいて、排気浄化装置70よりも上流側に設けられている。分散装置64は、尿素水添加弁(液体添加弁)61から、噴射された尿素水(反応液)を、微粒化した微粒状反応液にして排気ガス中に分散するとともに、分散された粒状反応液と排気ガスとが混合された混合気の流れを、排気管の軸線回りに旋回する旋回流とする。そして、混合器の旋回流は、排気浄化装置70へと流れる。
【0035】
排気浄化装置70は、詳細は後述するが、筒状に形成されており、内部に円柱状の選択還元触媒74が設けられている。排気浄化装置70は、内燃機関10の排気経路12に設けられており、排気ガス中に噴射された尿素水(反応液)と排気ガスが混合された混合気が流入されて、尿素水(反応液)と排気ガスを反応させる排気浄化装置の一種である。
【0036】
旋回流とされた混合気に含まれる微粒状尿素水は、分散装置64から選択還元触媒74の流入側端面に到達するとともに、排気ガスの熱によってアンモニアに改質される。選択還元触媒74は、排気ガス中の窒素酸化物(NOx)をアンモニアと反応させて(NOxを還元させて)浄化する触媒である。選択還元触媒74にて浄化された排気ガスは、排気浄化装置70から排気管12Cに流入する。
【0037】
排気管12Cは、排気浄化装置70の下流側に接続されており、排気管12Cには、排気温度検出装置36D、NOxセンサ37B、第2酸化触媒47が設けられている。排気温度検出装置36Dは、例えば、排気温度センサであり、排気浄化装置70の下流側の排気ガスの温度に応じた検出信号を制御装置50に出力する。NOxセンサ37Bは、排気浄化装置70の下流側の排気ガスのNOxの濃度に応じた検出信号を制御装置50に出力する。第2酸化触媒47は、排気浄化装置70にて窒素酸化物(NOx)と反応しきれなかったアンモニア等が流入し、流入したアンモニア等を酸化させて除去する触媒である。
【0038】
制御装置50は、CPU、RAM、ROM、タイマ、EEPROM等を備えた公知のものである。CPUは、ROMに記憶された各種プログラムやマップに基づいて、種々の演算処理を実行する。また、RAMは、CPUでの演算結果や各検出装置から入力されたデータ等を一時的に記憶し、EEPROMは、例えば、内燃機関10の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する。
【0039】
そして、制御装置50は、入力された検出信号に基づいて内燃機関10の運転状態を検出することができる。また、制御装置50は、検出した内燃機関10の運転状態や、アクセル開度検出装置33からの検出信号に基づいた運転者からの要求に応じて、各インジェクタ14A~14Dから内燃機関10のシリンダ内に噴射する燃料量や、燃料添加弁21から添加(噴射)する未燃燃料量、尿素水添加弁61から添加(噴射)する尿素水添加量を制御する制御信号を出力する。
【0040】
●[第1の実施の形態の排気浄化システム700A(図2図10)]
次に、図2図10を用いて、図1に示す排気浄化システム700の第1の実施の形態である排気浄化システム700Aについて、車両に取り付けられたときの状態、構成、効果について説明する。
【0041】
●[第1の実施の形態の排気浄化システム700Aが車両に取り付けられたときの状態(図2図3)]
まず、図2及び図3を用いて、排気浄化システム700Aが車両に取り付けられたときの状態について説明する。図2は、排気浄化システム700Aの周辺の要部の下側から視た概略斜視図である。図3は、図2における排気浄化システム700Aの周辺の要部をIII方向から視た概略斜視図である。
【0042】
図2に示すように、本実施の形態にて説明する車両では、右前のタイヤ81(及び図示省略した左前のタイヤ)の前方に内燃機関10が搭載されている。また図2には、図1に示す排気管12A、燃料添加弁21、第1排気浄化装置41、DPF43、排気温度検出装置36D、NOxセンサ37B等の図示を省略している。図2に示すように、排気浄化システム700Aが取り付けられた排気管12Bは、内燃機関10から後方及び下方に引き出され、排気管12Bの端部に尿素水添加弁61、分散装置64、排気浄化システム700Aが設けられている。排気浄化システム700Aの下流側には、排気管12Cが接続されている。また、排気管12Bの一部には、排気管インシュレータ12B1が取り付けられている。
【0043】
そして、本実施の形態にて説明する車両では、図2に示すように、尿素水添加弁61、分散装置64、排気浄化システム700Aは、一列に並ぶように排気管12Bに設けられており、図3に示すように、排気管12Bは、尿素水添加弁61の右前側から後側にかけて尿素水添加弁61の周囲に設けられている。また、図3に示すように、排気管12Bは、尿素水添加弁61の右側前方から尿素水添加弁61の右側にある第1屈曲部12BAまで延び、さらに、第1屈曲部12BAから尿素水添加弁61の後方にある第2屈曲部12BBまで延びている。ここで、第2屈曲部12BBの前側に尿素水添加弁61が取り付けられている。以上の配置により、尿素水添加弁61から排気ガスの流れる方向(下流)に分散装置64があり、尿素水添加弁61が尿素水添加弁61に向けて尿素水を噴射すれば、尿素水添加弁61は、排気ガス中にて、尿素水を排気ガスの流れる方向に噴射することができる。
【0044】
また、排気管12Bの熱が尿素水添加弁61に伝わりにくいよう、排気管12Bは、尿素水添加弁61の周囲と間隔を開けた配置にされている。さらに、図3に示すように、排気管12Bから尿素水添加弁61への熱が伝わることを抑止するために、排気管12Bの尿素水添加弁61の右側にある部分を、管状の排気管インシュレータ12B1で覆っている。そして、尿素水添加弁61は、冷却するために空冷フィン61Aを備えている。
【0045】
●[第1の実施の形態の排気浄化システム700Aの構成(図4)]
次に、図4を用いて、排気浄化システム700Aの構成を説明する。図4は、図3における排気浄化システム700AのIV-IV断面図である。図4に示すように、排気浄化システム700Aは、上流側から下流側に向かって並ぶ、尿素水添加弁(液体添加弁)61分散装置64と、排気浄化装置70A(70)とを備えている。
【0046】
尿素水添加弁(液体添加弁)61は、上述したように、分散装置64および排気浄化装置70Aよりも上流側の、排気管12Bに設けられている。尿素水添加弁61は、排気浄化装置70よりも上流側に設けられた分散装置64へ向けて、排気ガス中で尿素水(反応液)を噴射(吐出、添加)する。
【0047】
分散装置64は、上述したように、排気管12Bにおいて、排気浄化装置70よりも上流側に設けられている。分散装置64は、例えば、排気ガスの上流から下流へ向かう方向に対して斜めを向いた複数の羽根(不図示)を備え、複数の羽根はプロペラのように排気管の軸線に対して回転対称に並べられている公知の分散装置であり、分散装置64を通過する排気ガスを排気管12Bの軸線周りに旋回させて、旋回流を発生させる。
【0048】
また、分散装置64は、尿素水添加弁(液体添加弁)61から、噴射された尿素水(反応液)を、微粒化した微粒状反応液にして排気ガス中に分散するとともに、分散された粒状反応液と排気ガスとが混合された混合気の流れを、排気管の軸線回りに旋回する旋回流とする。ここで、尿素水(反応液)は、分散装置64の複数の羽根(不図示)にて微粒化された微粒状尿素水(微粒状反応液)にされるとともに排気ガス中に分散される。そのうえで、排気ガスと分散された微粒状尿素水とは混ざって混合気となる。分散された微粒状反応液と排気ガスとが混合された混合気の流れは、分散装置64によって、上記の様に、排気管の軸線回りに旋回する旋回流とされて、排気浄化装置70Aへと流れる。
【0049】
排気浄化装置70A(70)は、流入側配管71と、浄化本体部72と、流出側配管73とが連結されており、浄化本体部72は円柱状の選択還元触媒74を有している。
【0050】
流入側配管71は、分散装置64よりも下流側の排気管12Bと浄化本体部72とを連結している。これにより、流入側配管71は、分散装置64によって旋回流とされた、微粒状尿素液(微粒状反応液)と排気ガスとの混合気を、分散装置64の下流側の排気管12Bから浄化本体部72へと導く。
【0051】
ここで、浄化本体部72の内径は約200[mm]で、排気管12Bの内径は流入側配管71の上流側で流入側配管71に接続されている部分では約100[mm]である。このため、流入側配管71は、上流側から下流に向かうにつれ、約100[mm]から約200[mm]へと拡径する円錐台状部71Aを有している。
【0052】
流入側配管71は、旋回流とされた混合気(図4の旋回流501参照)を、流入側配管71の内壁面71AAから離間させて剥離させる剥離促進構造70AAを有している。本実施の形態の排気浄化装置70Aにおいては、流入側配管71の剥離促進構造70AAは、上流側から下流に向かうにつれ拡径する円錐台状部71Aであり、円錐台状部71Aは、排気管12Bの軸線C12B(排気管12Bの分散装置64の周囲の部分の軸線C12B)に対する、円錐台状部71Aの内壁面71AA(稜線L70AA)の傾斜角度θ71が剥離促進角度θAに設定されている(傾斜角度θ71=剥離促進角度θA)。
【0053】
ここで、剥離促進角度θAとは、旋回流とされた混合気(図4の旋回流501参照)に含まれる微粒状反応液の流入側配管71の内壁面71AAへの付着を抑制する角度である。剥離促進角度θAは、50°以上90°未満(50°≦傾斜角度θ71=剥離促進角度θA<90°)である。図4においては、円錐台状部71Aの内壁面71AAの傾斜角度θ71は、剥離促進角度θAの一例として60°とした。
【0054】
浄化本体部72は、流入側配管71と流出側配管73とを連結しており、内部に円柱状に形成された選択還元触媒74を有している。選択還元触媒74は、直径が約200[mm]で、長さが約200[mm]である。分散装置64によって旋回流とされた、微粒状尿素液(微粒状反応液)と排気ガスとの混合気は、流入側配管71によって分散装置64の下流側の排気管12Bから浄化本体部72へと導かれる。ここで、微粒状尿素水は、旋回流とされた混合気(図4の旋回流501参照)に含まれるため、微粒状尿素水は、混合気により、分散装置64の下流側から選択還元触媒74の流入側端面74Aへ運ばれる。そして、図1を用いて上述した様に、微粒状尿素水は、排気ガスの熱によってアンモニアに改質される。選択還元触媒74にて、排気ガス中のNOxはアンモニアと反応して(NOxを還元させて)浄化される。
【0055】
流出側配管73は、浄化本体部72と排気管12Cとを連結しており、選択還元触媒74を通過して、流出側配管73に流入した排気ガスは、流出側配管73から排気管12Cに流入する。流出側配管73は、上流側の内径が浄化本体部72の内径である約200[mm]で、下流側の内径が排気管12Cの内径である約100[mm]である。流出側配管73は、上流側から下流側に向かって内径が約200[mm]から約100[mm]へと徐々に小さくなるテーパ形状に形成されている。
【0056】
●[第1の実施の形態の排気浄化システム700Aの作用効果について(図5図10)]
次に、図5図10を用いて、排気浄化システム700Aの作用効果を説明する。図5は、図4におけるV部の拡大図である。図6は、排気浄化装置70Aの選択還元触媒74の流入側端面74Aにおける、微粒状尿素水(微粒状反応液)の密度分布のシミュレーション結果に基づく、微粒状尿素水(微粒状反応液)の概略分布図の一例である。図7は、従来の排気浄化システム100を説明する排気浄化システム100の断面図である。図8は、図7におけるVIII部の拡大図である。図9は、従来の排気浄化システム100の選択還元触媒74の流入側端面74Aにおける、微粒状尿素水(微粒状反応液)の密度分布のシミュレーション結果に基づく、微粒状尿素水(微粒状反応液)の概略分布図の一例である。図10は、比較例の排気浄化システム200を説明する説明図である。
【0057】
上述したが、図5の旋回流501に例を示すように、微粒状反応液と排気ガスとが混合された混合気の流れは、分散装置64によって、排気管12Bの軸線C12B(排気管12Bの分散装置64の周囲の部分の軸線C12B)回りに旋回する旋回流とされる。旋回流とされた混合気は、分散装置64よりも下流側の排気管12Bから流入側配管71に流入して、浄化本体部72の選択還元触媒74の流入側端面74Aへと導かれる。
【0058】
流入側配管71は、旋回流とされた混合気を、流入側配管71の内壁面71AAから離間させて剥離させる剥離促進構造70AAを有している。剥離促進構造70AAでは、上流側から下流に向かうにつれ拡径する円錐台状部71Aの内壁面71AA(稜線L70AA)の傾斜角度θ71が剥離促進角度θAに設定されている(50°≦傾斜角度θ71=剥離促進角度θA<90°)。詳細は後述するが、従来の流入側配管の内壁面の傾斜角度は、混合気の旋回流が流入側配管内で徐々に広がりやすいように、比較的緩やかな約30~45°に設定されている。これに対して、本実施の形態の流入側配管71は、円錐台状部71Aの内壁面71AAの傾斜角度θ71が、従来の30~45°よりも大きな剥離促進角度θA(50°≦傾斜角度θ71=剥離促進角度θA<90°)に設定されている。
【0059】
本実施の形態の排気浄化システム700Aでは、円錐台状部71Aの内壁面71AAの傾斜角度θ71が、従来の排気浄化システムの傾斜角度よりも比較的大きな剥離促進角度θAに設定されており、内壁面71AAの傾斜角度θ71が従来の傾斜角度よりも比較的大きく、円錐台状部71Aは、下流に向かうにつれ内径がより一層急に大きくなる。このため、旋回流とされた混合気を、円錐台状部71A(流入側配管71)の内壁面71AAから離間させて剥離させることができる。そして、例えば、図5の循環流502の様に、旋回流501と、円錐台状部71Aの内壁面71AAとの間に循環流が発生し、旋回流とされた混合気を内壁面71AAから剥離させる。そして、例えば、図5の循環流502の様に、旋回流とされた混合気の径方向への広がりは、混合器が内壁面71AAから離間させて剥離されることにより、稜線L70AAから稜線L501までのΔ502程度抑え込まれる。
【0060】
また、例えば、図5の旋回流501のように、円錐台状部71Aの径方向外側に向かって広がるように流れても、円錐台状部71Aは、従来の排気浄化システムよりも下流に向かうにつれ内径がより一層急に大きくなる。これにより、円錐台状部71A(流入側配管71)内において、旋回流とされた混合気が径方向外側へ広がっても、円錐台状部71A(流入側配管71)の内壁面71AAに達することが抑止されている。この様に、円錐台状部71A(流入側配管71)の内壁面71AAに旋回流とされた混合気が達することが抑止されていることで、旋回流とされた混合気に含まれる微粒状反応液の流入側配管71の内壁面71AAへの付着を抑制する。
【0061】
ここで、流入側配管71の剥離促進構造70AAが、旋回流とされた混合気を流入側配管71の内壁面71AAから離間させて剥離させる。これにより、旋回流とされた混合気の流れは、旋回の中央部から流入側配管71の内壁面71AAまで広がることが抑制されるとともに、流入側配管71の内壁面71AAよりもさらに径方向外方に広がろうとすることが抑制される。このため、旋回流とされた混合気中の微粒状尿素水(微粒状反応液)の密度が、旋回の外周部にて高くなることが抑止される。その結果、排気浄化装置70Aは、微粒状尿素水(微粒状反応液)と排気ガスとが混合された混合気を、旋回の中央部から外周部まで微粒状尿素水(微粒状反応液)の密度がほぼ均一に維持された状態で、排気浄化装置70Aの選択還元触媒(触媒)74の流入側端面74Aへと導くことができる。
【0062】
また、流入側配管71の剥離促進構造70AAは、内壁面71AAの傾斜角度θ71が、旋回流とされた混合気に含まれる微粒状尿素水(微粒状反応液)の流入側配管71の内壁面71AAへの付着を抑制する角度である剥離促進角度θAに設定されている円錐台状部である。これにより、微粒状尿素水(微粒状反応液)が流入側配管71の内壁面71AAへ付着することを抑止したうえで、微粒状尿素水(微粒状反応液)を浄化本体部の選択還元触媒(触媒)74に導くことができる。
【0063】
また、剥離促進角度θAは、50°以上90°未満であることにより、より確実に、旋回流とされた混合気を流入側配管71の内壁面71AAから離間させて剥離させることができる。
【0064】
図6には、選択還元触媒74の流入側端面74Aにおける微粒状尿素水の密度分布のシミュレーション結果の一例を、概略分布図で示した。図6の流入側端面74Aにおいて、微粒状尿素水の密度は、高密度領域R1>中密度領域R2である。また、図6に示すように、微粒状尿素水は、高密度領域R1が選択還元触媒74の下側端部に存在するものの、選択還元触媒74の多く部分では中密度領域R2となっている。詳細は後述するが、従来の従来の排気浄化システム100と比較して、本実施の形態の排気浄化システム700Aでは、選択還元触媒74の流入側端面74Aにおいて微粒状尿素水の分布は、より均一になっている。
【0065】
なお、シミュレーション条件は、例えば、次の様に設定した。円錐台状部71Aの内壁面71AAの長さL1(図5の長さL1に相当)を19.4[mm]とした。円錐台状部71Aの内壁面71AAの下流側端から選択還元触媒(触媒)74の流入側端面74Aまでの長さL2(図5の長さL2に相当)を35[mm]とした。分散装置64の後端から円錐台状部71Aの内壁面71AAの上流側端までの長さL3(図5の長さL3に相当)を41.1[mm]とした。また、排気管の内径D1(図5の内径D1に相当)を70.6[mm]とし、円錐台状部71Aの内壁面71AAの下流側端の内径D2(図5の内径D2に相当)を162.7[mm]とした。さらに、排気ガスの条件については、出口側の排気圧を大気圧にした。さらに、排気ガスを、温度345℃で、流速が30g/secに設定した。あるいは、排気ガスを、温度465℃で、流速90g/secに設定した。
【0066】
選択還元触媒74の流入側端面74Aにおいて、微粒状尿素水の密度が比較的高い高密度領域R1では、微粒状尿素水が改質されたアンモニアの密度が比較的高くなるめ、アンモニアが排気ガス中のNOxと反応しきれずに選択還元触媒74を通過して排気浄化装置70Aよりも下流へ流出しやすいと考えることが出来る。仮に、微粒状尿素水の密度が、中密度領域R2よりも低い領域である低密度領域R3(後述、図9参照)が、流入側端面74Aに存在するとしたとき。このとき、低密度領域R3では、尿素水が改質されたアンモニアの密度が低いため、排気ガス中のNOxは、尿素水が改質されたアンモニアと反応しきれずに選択還元触媒74を通過して排気浄化装置70Aよりも下流へ流出しやすいと考えることが出来る。
【0067】
以上の様に、微粒状尿素水の密度が比較的高い高密度領域R1ではアンモニアが排気管12C(図4図1参照)へ流出しやすいと考えることが出来、微粒状尿素水の密度が比較的低い低密度領域R3(後述、図9参照)では排気ガス中のNOxが排気管12B(図4図1参照)へ流出しやすいと考えることができる。従って、選択還元触媒(触媒)74の流入側端面74Aにおいて微粒状尿素水の分布が均一にならない程、多くアンモニアおよびNOxが、排気浄化装置70Aよりも下流へ流出しやすくなると考えることができる。換言すれば、選択還元触媒(触媒)74の流入側端面74Aにおいて微粒状尿素水(微粒状反応液)の分布がより均一になるほど、尿素水(尿素水から生成されるアンモニア)と排気ガス中のNOxとの反応の効率は高まると考えることができる。
【0068】
一方、従来の排気浄化システム100は混合気の剥離が抑制されている。従来の排気浄化システム100の断面図を図7に示した。図7に示す従来の排気浄化システム100は、排気浄化装置70Aと同様の浄化本体部72、流出側配管73及び選択還元触媒74を備えており、流入側配管71に替えて流入側配管101を備えている。流入側配管101は、円錐台状部101Aを備えている。円錐台状部101Aは、排気管12Bの軸線C12B(排気管12Bの分散装置64の周囲の部分の軸線C12B)に対する、円錐台状部101Aの内壁面101AAの(稜線L101の)傾斜角度θ101は、30°以上45°以下(30°≦傾斜角度θ101≦45°)に設定されており、本実施の形態の排気浄化装置70Aの流入側配管71の傾斜角度θ71(50°≦傾斜角度θ71=剥離促進角度θA<90°)よりも小さい。なお、図7では、流入側配管101の傾斜角度θ101を例として30°とした。
【0069】
図8には、図7におけるVIII部の拡大図を示した。従来の排気浄化システム100において、流入側配管101の内壁面101AAの傾斜角度θ101は、本実施の形態の排気浄化装置70Aの流入側配管71の傾斜角度θ71よりも小さく、比較的緩やかな傾斜角度に設定されている。このため、流入側配管101にて、旋回流とされた混合気の流れは、図8の旋回流503に例を示す様に、流入側配管101の内壁面101AAから剥離することなく、流入側配管101内を広がるように流れる。
【0070】
そして、旋回流とされた混合気は流入側配管101の内壁面101AAまで広がり、さらに内壁面101AAよりもさらに径方向に外側に広がるように流れると考えられる。そして、旋回流とされた混合気の径方向への広がりは、流入側配管101の内壁面101AAによって抑え込まれて、混合気中の微粒状尿素水は、旋回の中央部よりも外周部の密度が高くなると考えられる。その結果、選択還元触媒74の流入側端面74Aにおいて微粒状尿素水の分布が外周側に偏り、尿素水(尿素水から生成されるアンモニア)と排気ガス中のNOxとの反応の効率は低下すると考えられる。
【0071】
図9には、従来の排気浄化システム100の選択還元触媒74の流入側端面74Aにおける微粒状尿素水の密度分布のシミュレーション結果の一例を、概略分布図で示した。図9の流入側端面74Aにおいて、尿素水量の密度は、高密度領域R1>中密度領域R2>低密度領域R3である。また、図9では、高密度領域R1は選択還元触媒74の外周を輪状に一周しており、中密度領域R2は高密度領域R1よりも幅が狭い輪状になっている。そして、選択還元触媒74の流入側端面74Aの中央部は、ほぼ低密度領域R3となっている。このように、図9の例の概略分布図では、尿素水量は、選択還元触媒74の流入側端面74Aの外周側に集中しており、従来の排気浄化システム100では、尿素水は選択還元触媒74の流入側端面74Aにおいて、尿素水量が均一にならない分、選択還元触媒74での尿素水と排気ガス中のNOxとの反応の効率が低下する。
【0072】
さらに、排気浄化装置70Aにおいて、流入側配管71の様々な傾斜角度θ71に対する排気ガス流の浄化率をシミュレーションして評価した結果、下記の表1の様になった。表1において、浄化率を大まかに「〇」、「△」、「×」で評価した、下記の表1に示す。下記の表1で「〇」は浄化率が良好で高いことを示し、「△」は浄化率が良好といえるほど高くないが不良といえる程低くないことを示し、「×」は浄化率が不良といえるほど低下していることを示す。比較参照するために、傾斜角度θ71を、剥離促進角度θAではない、30°、45°および90°の場合を比較例として浄化率を評価した。
【0073】
【表1】
【0074】
上記の表1に示すように、傾斜角度θ71が、剥離促進角度θAである(傾斜角度θ71=50°~80°)実施例1~4では、全ての場合において、浄化率は良好な「〇」となった。一方、表1に示すように、傾斜角度θ71が、剥離促進角度θAではない30°比較例1、45°である比較例2では、従来の排気浄化システムの傾斜角度となっており、浄化率は不良といえるほど低下している「×」となった。この浄化率の低下は、図8を用いて上述した様に、従来の排気浄化システムでは、流入側配管の内壁面が、比較的緩やかな傾斜角度(排気管の軸線に対して約30~45°の傾斜角度)であるため、旋回流とされた混合気の径方向への広がりは、流入側配管の内壁面によって抑え込まれたと考えられる。そして、混合気中の微粒状尿素水は、旋回の中央部よりも外周部の密度が高くなり、選択還元触媒(74の流入側端面74Aにおいて微粒状尿素水の分布が外周側に偏り、その結果、尿素水(尿素水から生成されるアンモニア)と排気ガス中のNOxとの反応の効率は低下したと考えられる。
【0075】
傾斜角度θ71が、剥離促進角度θAではない90°である比較例3では、浄化率は「△」となり、浄化率が良好といえるほど高くないが不良といえる程低くなかった。この理由は次の様に考えることができる。傾斜角度θ71が90°である比較例3における流入側配管71の概略拡大断面図を図10に示した。図10の旋回流504に一例を示すように、分散装置64と選択還元触媒74との間の距離が短いため、旋回流とされた混合気は、稜線L504に示すように流入側配管71の径方向に広がっても、選択還元触媒74の流入側端面74Aの外周部に届きにくいため、旋回流とされた混合気は選択還元触媒74の流入側端面74Aの中央部に集中して導かれる。これにより、選択還元触媒(触媒)74の流入側端面74Aにおいて微粒状尿素水の分布が中央側に偏り、さらに、尿素水(尿素水から生成されるアンモニア)と排気ガス中のNOxとの反応の効率は低下したと考えられる。
【0076】
また、傾斜角度θ71が、剥離促進角度θAではない90°以上となると、図10に示すように、流入側配管71の円錐台状部71Aは段差状となる。そして、流入側配管71の円錐台状部71Aが段差となると、車両の振動などにより段差状の円錐台状部71Aにおいて、局所的に応力が集中して亀裂などが生じやすくなる。このため、本実施の形態の排気浄化装置70Aでは、流入側配管71を段差がない形状とした。また、図4に示すように、排気浄化装置70Aは、上流側の流入側配管71から下流側の流出側配管73にかけて、内壁面は滑らかな面に形成されている。
【0077】
●[第2の実施の形態の排気浄化システム700B(図11図12)]
次に図11を用いて、図1に示す排気浄化装置70の第2の実施の形態である排気浄化システム700Bの詳細について説明する。図11は、図4と同様の第2の実施の形態の排気浄化システム700Bの断面図である。
【0078】
第2の実施の形態の排気浄化システム700Bは、以下に詳細を説明するが、第1の実施の形態の排気浄化システム700Aが有する流入側配管71の剥離促進構造70AAに換えて、流入側配管171が流入側配管171の内壁面171AAから径方向内方へと周方向に連続して突出する環状突出部171ACを有する剥離促進構造170BAを備えている。以下の第2の実施の形態の排気浄化システム700Bの説明において、第1の実施の形態との相違点について主に説明し、同様の点については説明を省略する。
【0079】
排気浄化システム700Bは、排気浄化システム700Aと同様の浄化本体部72及び流出側配管73を備えており、排気浄化システム700Aの流入側配管71の代わりに流入側配管171を備えている。流入側配管171が排気浄化装置70Aの流入側配管71と異なる点は、流入側配管171は、その円錐台状部171Aに、周方向に連続して径方向内方向に凹んでいる環状凹部171ABを有する点と、円錐台状部171Aの傾斜角度θ171が、図7に示す従来の排気浄化システム100と同様に、30°以上45°未満(30°≦傾斜角度θ171≦45°)に設定されている点にある。なお、図11では、流入側配管171の傾斜角度θ171を例として30°とした。流入側配管171の剥離促進構造170BAは、流入側配管171の上流側から下流側へと混合気を導く流入側配管171の内壁面171AAから径方向内方へと周方向に連続して突出する環状突出部171ACを有している。
【0080】
図12には、図11におけるXII部の拡大図を示した。図12の旋回流505に一例を示すように、流入側配管171に流入する旋回流とされた混合気は、流入側配管171の径方向に広がって、環状突出部171ACよりも上流側で円錐台状部171Aの内壁面171AAに沿って流れたとしても、環状突出部171ACの下流側に、例えば循環流506が発生する。ここで、循環流506は、旋回流とされた混合気を、円錐台状部171A(流入側配管71)の内壁面171AAからΔ506程度離間させて剥離させる。そして、旋回流とされた混合気は、旋回流505に一例を示すように、内壁面171AAから内側にΔ506程度離間されている稜線L505よりも、流入側配管171の径方向内側を流れる。
【0081】
以上の様に、剥離促進構造170BAに含まれる、流入側配管171の内壁面171AAから径方向内方へと周方向に連続して突出する環状突出部171ACが、旋回流とされた混合気を流入側配管171の内壁面171AAから離間させて剥離させる。これにより、旋回流とされた混合気の流れは、旋回の中央部から流入側配管171の内壁面171AAまで広がることが抑制されるとともに、流入側配管171の内壁面171AAよりもさらに径方向外方に広がろうとすることが抑制される。このため、旋回流とされた混合気中の微粒状尿素水(微粒状反応液)の密度が、旋回の外周部にて高くなることが抑止される。その結果、排気浄化装置70Bは、微粒状尿素水(微粒状反応液)と排気ガスとが混合された混合気を、旋回の中央部から外周部まで微粒状尿素水(微粒状反応液)の密度がほぼ均一に維持された状態で、排気浄化装置70Bの選択還元触媒(触媒)74の流入側端面74Aへと導くことができる。
【0082】
●[他の実施の形態]
本発明の排気浄化システムは、上述した第1~2の実施で説明した排気浄化システム700A~700Bの構成、形状、構造等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、排気管12Bの内径、浄化本体部72の内径、選択還元触媒74の形状等は、上述した実施の形態にて説明した形状やサイズ等に限定されるものではなく、適宜変更できる。
【0083】
上述した第1~2の実施の形の排気浄化システム700A~700Bは、排気ガスを浄化するために尿素水(反応液)と排気ガスを反応させる排気浄化システム700である。他の排気浄化装置に、第1~2の実施の形態の排気浄化システム700A~700Bを適用してもよい。例えば、図1を用いて上述した様に、第1排気浄化装置41は、内燃機関の排気経路12に設けられており、排気ガス中に噴射された燃料(反応液)と排気ガスが混合された混合気が流入されて、燃料(反応液)と排気ガスを反応させる排気浄化装置の一種である。第1~2の実施の形態の排気浄化システム700A~700Bを、第1排気浄化装置41に適用してもよい。
【0084】
上述した第1の実施の形態の排気浄化システム700Aでは、剥離促進構造70AAとして、円錐台状部71Aの傾斜角度θ71を、剥離促進角度θAである50°以上90°未満とした(50°≦剥離促進角度θA<90°)。剥離促進角度θAである50°以上90°未満以外の角度であっても、旋回流とされた混合気を、流入側配管71の内壁面71AAから離間させて剥離させる角度であれば、第1の実施の形態の円錐台状部71Aの傾斜角度θ71としてもよい。
【0085】
上述した第2の実施の形態では、排気浄化システム700Bは、剥離促進構造170BAは、流入側配管171の環状突出部171ACを含んでいる。第2の実施の形態の排気浄化装置70Bにおいて、流入側配管171の円錐台状部171Aの傾斜角度θ171は、図6に示す従来の排気浄化システム100と同様に、30°以上45°未満(30°≦傾斜角度θ171≦45°)に設定した。一方、剥離促進構造170BAは、旋回流とされた混合気を、流入側配管171の内壁面171AAから離間させて剥離させる構造であればよい。そこで、実施の形態2の排気浄化システム700Bにおいて、剥離促進構造170BAに替えて、旋回流とされた混合気を、流入側配管171の内壁面171AAから離間させて剥離させる構造を、適宜剥離促進構造として設けてもよい。
【0086】
また、上述した第2の実施の形態では、排気浄化システム700Bの円錐台状部171Aの傾斜角度θ171を30°以上45°未満に設定したが、傾斜角度θ171はこれに限らず適宜設定できる。例えば、傾斜角度θ171を第1の実施の形態1の剥離促進角度θAである50°以上90°未満にしてもよい。これにより、流入側配管171の内壁面171AAからの混合気の剥離をより確実に促進できる。
【0087】
上述した第2の実施の形態では、排気浄化システム700Bにおいて、図11に示すように、環状突出部171ACは、環状凹部171ABの内壁面171AA側の壁面として形成されている。環状突出部171ACは、流入側配管171の上流側から下流側へと混合気を導く流入側配管171の内壁面171AAから径方向内方へと周方向に連続して突出していればよい。必ずしも、環状突出部171ACを、環状凹部171ABの内壁面として形成しなくともよい。例えば、図7に示す従来の流入側配管101の内壁面に、環状の部材を、例えば溶接等により接合して、内壁面171AAから径方向内方へと周方向に連続して突出する環状突出部171ACを形成してもよい。
【0088】
上述した第1~2の実施の形態にて説明した本発明の排気浄化システム700A~700Bは、一般車両、産業車両、発電システム等、種々の用途、種々の燃料の内燃機関に適用することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 内燃機関システム
10 内燃機関
11 吸気通路
12 排気経路
12A、12B、12C 排気管(排気経路)
12BA 第1屈曲部
12BB 第2屈曲部
12B1 排気管インシュレータ
14A~14D インジェクタ
21 燃料添加弁(液体添加弁)
31 吸入空気流量検出装置
33 アクセル開度検出装置
34 回転検出装置
35 差圧センサ
36A~36D 排気温度検出装置
37A、37B NOxセンサ
41 第1排気浄化装置
42 第1酸化触媒(触媒)
43 粒子状物質除去フィルタ(DPF)
47 第2酸化触媒
50 制御装置
61 尿素水添加弁(液体添加弁)
61A 空冷フィン
62 尿素水供給管
63 尿素水ポンプ
64 分散装置
65 尿素水タンク
67 尿素水
68 レベルゲージ
69 濃度センサ
700、700A、700B 排気浄化システム
70、70A、70B 排気浄化装置
70AA、170BA 剥離促進構造
71 流入側配管
71A 円錐台状部
71AA 内壁面
171 流入側配管
171A 円錐台状部
171AA 内壁面
171AB 環状凹部
171AC 環状突出部
72 浄化本体部
73 流出側配管
74 選択還元触媒(触媒)
81 タイヤ
100、200 排気浄化システム
101 流入側配管
101A 円錐台状部
101AA 内壁面
C12B 軸線
L70AA、L501、L504、L505、L101 稜線
θ71、θ101、θ171 傾斜角度
θA 剥離促進角度
501、503~505 旋回流
502、506 循環流
R1 高密度領域
R2 中密度領域
R3 低密度領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12